超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス   作:環 藍河

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※一部、キャラクターストーリーの内容への言及があります。
(ブライドエスカレイヤー、ブライドライカ、、ブライドハルカリバース、神騎アルゴル)
※2021年6月イベント「宇宙花嫁ゾンビVSサメとチェーンソー」に関する言及もあります。
いずれもネタバレレベルでは無いはずですが、念のためご承知おきください。


第5章 街を包むライスシャワー! 超昂戦士に天使の祝福を

先刻まで空虚だった披露宴会場を、アカリの大切な人たちが、我も我もと埋め尽くしていく。

先ほどの凍える孤独から一転、アカリは胸を激しく熱く焦がし…

 

「あ…あわわっ…わわっ…!」

 

新婦控え室で、動転していた。

 

「アカリちゃん…披露宴を挙行すること、気づかなかった?」

「…はい…それどころじゃ、ありませんでした…!」

 

同級生の制服姿はともかく。ご近所のみなさんは平服ながらもきちっとフォーマル。

そして親族は…礼服。

ユーノはアマツの出で立ちから羽衣と冠を下ろしたような和装。

そしてトキサダは…タキシード。

上品なアイボリーホワイトにシルバーのラペルをあしらい、ネクタイ代わりのスカーフは調和のエメラルドグリーン。チタンブロンドのオッドベストが映え、主役の新婦を引き立てる凛然たる風格。

…頭のベルトさえ無ければ、だが。

 

「理由は2つね。

ひとつ、敵コマンダーの孤独の披露宴を打ち破るのに、こちらは祝福の宴が必要だった。でも、招待客の皆さんに『敵は全滅しましたので解散します、ご協力ありがとうございましたー』じゃ…あんまりでしょ?

もうひとつ。この会場…ダイビート協賛企業の結婚式場なのよ。連絡とったら、是非ともエスカルビーの披露宴風景、宣伝素材にお願いしますーっ! …ですって。」

「えええええーーーーーっっっっ!?」

既にライカと春霞がさんざん協力したのに、このうえさらに…?

 

「みんな、アカリちゃんのために馳せ参じてくれたのよ。

だから、その感謝の気持ちで、おもてなしをするだけでいいの。」

「はうう…っ!」

「それとも…トキサダが相手は、イヤ?」

…!!

「い…いえいえいえいえっ! ぜんぜんっ、イヤじゃないですうううっ!!

 …ただ、そのっあのっ、長官がご迷惑じゃなければ、って…!」

 

(迷惑だったら、タキシードなんか着ないわよねえ…。)

 

にこっ。

「アカリちゃんが…エスカルビーが幸せな様子を、みんなが見たがっているの。

もちろん、模擬披露宴だから…トキサダを独り占めして、ダイビートのみんなとの関係が壊れる、とかは無いわよ。みんなもわかってる。

だから…あなたは今宵かぎりのシンデレラさん。魔法のドレスで、王子様との舞踏会をお過ごしあれ。」

「ユーノさん…!」

 

「いよーし、そうと決まれば衣装替えっ!」

「わああーーーっ!?」

割って入ったのは、ダイビートの天才スタイリスト。

 

「さやかさん…!

(…はっ。)

ま…まさかっ、あのウェディングドレスですかあーーーーっっ!!?」

 

アカリの脳裏によぎる、【あの】ドレス。

それは2年前、宇宙ゾンビの侵略を受けたダイビート基地で、超昂戦士たちをことごとく襲った悪夢。

アカリもまた、夢を先取りするウェディングドレスにその身も心も奪われ…

 

 「長官~…、キスう…、キスうっ…!!」

 

トキサダのみならず、仲間たちを…

男女かまわず無差別に襲うキス魔と化し、基地中をさまよい歩いたのであった。

……

「ダ…ダメええええっっ!! いくら花嫁衣装でも、アレはあっ、アレだけはああああーーーっ!!!」

 

「…何言ってるの? アレのわけがないじゃん。」

「…ほへっ?」

 

「さーすがにさやかさんも、そのくらいのデリカシーは持ってるよー。

大体、アレじゃブライドフォームにできないしねえー。」

「そ…そうなんですか?」

「本人がイヤがるフォームは、ねえ。

そんなわけで、急遽披露宴の決まったアカリちゃんに贈る、完全新作・さやかさんのウェディングドレスを食らええええっっ!!」

 

ぽちっ。…しゃあっ。

「えっ…えええええっっ!?」

 

ADDDでぱぱっと変身…ではなく、さやかのスイッチで降りたカーテンの向こうには。

トルソーに掛けた、普通の…アカリだけの花嫁衣装。

 

……

《会場の皆さまにお知らせいたします。

新婦さまのお色直しですが、イチからのため、お時間を頂戴します。

心ばかりですが、お食事を用意しておりますので、しばしご歓談くださいませ。》

 

急ごしらえながら、ダイビート食堂の調理師たちが腕を振るい、オードブルを振る舞う。

 

「披露宴はアカリちゃんに先を越されちゃったなあ。

(…長官さんとの披露宴は…VRだし…あ、あんなの誰にも言えないっ!)

…わ、私も絶対、恭ちゃんとゴールするんだからあっ!」

「ふはははっ! 今宵は正妻の寛大な度量で、トキサダを貸して進ぜよう!

 なあに、本日アカリに施す求愛行動、後日私にももれなく求めてくれるのだろう?」

「トキサダ様が何を何回施したか…ハグやキスはもとより、掛かる吐息の数まで、私が漏らさずカウント致します。」

(わ…私もっ、トキサダさんのっ、妻です…けど…、今日は、今日だけ、アカリさんに…。)

ブライドフォームを持つ4人…エスカレイヤー・ニル・レイヴン・ちまは自重しながら、微妙なマウント合戦。

 

「…私は…。」

(《〔!!!〕》)

(は…春霞さんっ!? お…落ち着いて…?)

気配も無く同席していた…平服の春霞。

基地の誰もが、この1ヶ月…トキサダが贈ったウェディングドレスを肌身離さなかった春霞を知っている。

 

 ゆえに…戦慄する。

 (ま…まさかっ、アカリさんを…暗殺っ!?

  アカリさあーーーーんっ! 逃げてええええーーーーっ!!)

 ちまちゃん、半狂乱。

 

「頭領のくれる愛は、変わらないから。

いっぱい愛を教わって、これからも愛をくれるから。

だから、大丈夫。アカリ…おめでとう。」

 

 【{(〔………ほお~~~っ………。〕)}】

 誰もが胸をなで下ろし、安堵のため息。

 

「はあ…血飛沫舞うジューンブライドの惨劇は、危うく回避されたか…」

「ライカー、ノープロブレム。

そもそも、トキサダ頭領との結婚が許せなければ、真っ先に殺されるのはライカー。」

「ぶ…物騒なこと、言うんじゃないっ! 結婚でホントに墓場に入る気はないんじゃあーーーっ!!」

……

 

「この式場は何じゃーー! 和式! 和式の祝言ではないのかーーっ!?

ええいっ、文金高島田と三三九度の盃を用意せーい、注連縄も真榊も清め札も大盤振る舞いじゃあ!

そして我に結納金を納めるのじゃーーっ!!」

「結納金は、神職に払う玉串料じゃねえだろうが…この金欠駄々っ子。」

正月のあれこれ以来、妙に結託する機会が増えた、のののとユカ。

(アカリ、いつかちゃんとあの野郎とっ捕まえて、模擬じゃねえ披露宴、挙げるんだぞ。

…挙げたくてもできなくなって、それから悔やんだって遅えんだ…。)

ユカは独りごちながら、カクテルを傾ける。

 

「うらら。天界神騎の皆さん、いないの?」

「ああ、キリカさん。それがね。

エリス師匠が、参列していいかアズエルさんに聞いたんですよ。そしたらさ、

 『あのねえ。天界神騎が特定の地上人物を総出で祝福なんかしたら、大変なことになるでしょうが。

  世界中の人類の幸福バランスが崩れまくって、どこにどんな反動が出ることか…!

  介入は禁忌です。せいぜいご盛会を祈念するに留めなさい。』

だってさー。」

「あ…アズエル様のマネ、上手いね…神罰落ちないようにね。」

「うっ…自重します。でも、あんだけバリバリ地上人生活エンジョイしといて、いまさら冷たいですよねー。」

「あはは…アズエル様らしいや。仕方ないかな。」

 

(そっか、だからエリスも欠席か。

…今日の風景、あとで描いてエリスに見せてあげよっ。エリスにはちゃんと地上の結婚式を教えておかないと…!)

継彦が妄想する結婚式を先に吹き込まれたら、とんでもないことになる…。

 

『参列者の皆様、大変長らくお待たせ致しました。只今より、戦部家・園崎家によります、模擬結婚式披露宴を執り行います。新郎・トキサダ様、新婦・アカリ様が入場されます。皆様、盛大な拍手でお迎えください!』

正面扉が厳かに開く瞬間から、式場を包む拍手は割れんばかり。

スモークの中から現れる、主役の二人…タキシードのトキサダと、その隣を固めるアカリ。

 

 わああ……っ…!

 

拍手の余韻も冷めぬうち、参列者の誰もが、新婦の晴れ姿に息を呑む。

(ふふ~ん、どうよどうよ、このドレスっ!)

 

さやかの自信作のフォルムは、温かみを含んだシルクホワイトのマーメイドライン。

式場の壮大さからはスカートが小さく映るも、かえってアカリの慎ましさや、スレンダーなありのままの新婦を引き立て、誠実さを見る者すべてに惜しみなく伝えるウェディングドレス。

差し色のリストコサージュは情熱のルビーを思わせるヴァーミリオンレッド。

そしてルージュのキャンドルを手にした新婦役のアカリ。

 

「さやかはん…もしかしてあの衣装、アレで作らはりました?」

「そだよー。ADDDでデザインしたフォームを、解析して即座に通常の衣装にコンバートしちゃうの。」

「…うちの社長が打診してたアレ、もう実装してましたか…!」

それはNAUの各ブランドが大いに勢いづく、夢のシステム。

「弟子よ…ミゴーには…」「当面…ナイショにしときまひょ。」

真っ先に使いこなして、真っ先に世界を邪神系に染めかねない。

ルカとプカルルの暗黙の了解だった。

……

 

「と…突然呼んじゃって、すみませんでした…。」

「アカリちゃん! そんなキャンドルサービス、聞いたことねえぜっ!」

「そうそう! 新婚さんが言うこと、もっとあんだろ?!」

「えっ? …あ、あわっ、あわわっ…?」

 

「…これからも、俺たちをよろしく、お願いします…。」

(…っ!!!)

「おうおうおうっ! 長官さんよお、アカリちゃん泣かせたら承知しねえぞっ!!」

(!!っ? …は…はうううっ…!!)

トキサダの返しに、不意に高鳴る心臓。

(ダ…ダイビートを、エスカルビーをよろしく、って意味、だよね…?)

 

「…アカリ、その…。今日は、とりあえず頑張れ。」

「ヒビキちゃん! うららちゃん! 無事だったんだね!」

「あ~、あたしも負けてたらなー。長官に助けられてたら、今ごろ主役だったのかなあー。

ルビーはいいな~、また新フォームだしい、ずーるーいーなーーー?」

「う…うららさん、今日はそういう冗談の空気じゃないですよ…!」

「甘いっ! 瑠璃、ヒーローたるもの新フォームはいかなるときも貪欲に求めるもの!

あんただって欲しいでしょ? ブライド・リルカの新フォーム!」

「は…はあああっ?! …はうっ…。」

自らのウェディングドレス姿を…相手を、トキサダを想像し…瑠璃は燃え尽きた。

 

「あれっ? エリーちゃんは?」

「…まだ、あの後会っていないが…」

「あーんなコマンダーにやられるとは思えないし、後でちゃんと来るんじゃない? 大丈夫よ!」

 

……

新郎側参列者席にも、君枝やダイビート職員…特殊部隊から輸送部隊までもが席を埋めた。

総勢300人にも及ぶ大宴席だが、そのテーブルの一席一席に惜しみない感謝を添えつつ、2人のキャンドルサービスは進む。(本来はお色直し後のプログラムだが…時短で。)

そしてようやく、高砂席に着く2人。

 

『それでは早速ですが乾杯のご発声を、新郎の腹心の部下であり、新婦の信頼篤き上司であります、ダイビート副官・ユーノ様にお願い申し上げます。』

 

すっ。

「トキサダ、アカリちゃん、今日はおめでとう。いつか本当の結婚式が、もしかしたらこのペアで迎えられる日が来るかもね。

それでは、二人と、お集まりの皆様の弥栄を祈って、ご唱和願います。乾杯」

「【〘『乾杯!』〙】」

商店街の酒屋さんご提供のシャンパン(未成年にはノンアルコールシードル)と、ダイビート隊員食堂謹製のケータリングメニューが振る舞われ、歓談が弾む。

 

……

そして、改めてのウェディングケーキ入刀。

「あむっ、むふっ、んくっ…

 …んん〜っ!!」

幸せのお裾分けに、切り分けられたケーキにとろけるのは…食いしんぼ魔女・クラリス。

「私も知ってる、イギリス式のウェディングケーキなのに、クリームもフルーツも、スポンジまで…。

なんで日本人は、セレモニー用のケーキまで、全力で美味しく作っちゃうんですか〜!

ああっ、フォークが止まらない、ですう〜!」

「あーっ、クラ姉ばっかり、ズルいんだぞー! 」

わんぱくウルフ・由雅も参戦、競い合うようにケーキを流し込む。

『台座のケーキは幸せのお裾分けですので、どうか女子みなさまに行き渡りますよう、お一人様おひとつでお願いいたします。

おかわり希望の方にはケーキビュッフェがございますよ。』

「〔ええっ! やったあーっ!!〕」

…この2人の前では、それすら最後まで保つか怪しいところだが。

 

……

『それではここで、新郎新婦両名によります、マリッジリング交換を執り行います。』

「…えっ?」「…結婚、指輪…ですか?」

本来は披露宴に先立つ挙式で行うマリッジリング交換を、なぜ披露宴で…?

 

『それでは、プレゼンターのご入場です。新郎様とは業務提携中、新婦さまとはご学友。

NAU社長・雪城エリー様です! どうぞ拍手でお迎えください!』

 

 【{(〔なにいいいーーーーーっっっ!?〕)}】

 

「どうもどうもーっ、戦う学生社長、雪城エリー! 友の挙式にただいま参上っ!」

「エ…エリーちゃんっ!?」

(道理で、席にいないわけだ…)

その姿は、エスカアメイズ・ブライドフォーム…の本人コスプレ。

 

「それではセレモニーの前に、こちらの映像をご覧くださいませー。」

 

(大地が育む、10億年の奇跡・ダイヤモンド。

 掘り出す人々も、磨き上げる人々も、この石が笑顔にする2人を思い、今日も働く。

 NAUグループは、扱う全ての宝石を生産から販売まで厳格に管理。

 関わる全ての人が幸せになる輝石だけを、大切なお2人にお届けします。)

 

「マリッジリングは、心臓に連なる2人の左薬指を結びます。

まさに二人の永遠の愛を誓うプレシャス。だからこそ、ぜひとも確かな逸品を。

御用命はNAU正規代理店でー、てへっ。」

(わー…エリっち、すっかり日本で商魂たくましく…!)

ストナが少し引いてる。

 

アカリに填めてもらったリングは、白く清い輝きでトキサダを包む。

「…永遠の、愛か…。明日の命も知れなかった日々が、嘘みたいだな…」

「あっ…長官っ…!」

「…いや、すまない。だからこそ、この指輪が美しいんだ。ほら」

アカリの手を取り、平和の輝きを花嫁の左薬指に。

「長官…ありがとうございます…!」

さっきまでの孤独から、差し伸べられた強く温かい掌。

一組のプラチナシルバーが繋ぐ二人の鼓動が、会場すべての参列者に聴こえそうであった。

 

……

 

『宴もたけなわ、名残惜しいところですが、お二人の佳き日が次のどなたかの幸せに繋がりますよう、ガーデンにて新婦さまからのご挨拶と、ブーケトスを行い、本日の中締めと致します。皆様、順番にお進みくださいませ。』

……

 

主役もゲストもガス燈に照らされ、暮れなずむ紫紺の空に温かく浮かび上がる。

ガーデンナイトウェディングは、いよいよクライマックス…!

(アカリのブーケ…)

(すごーく、ご利益ありそうっ!)

今日のゲスト…特に女性陣が我も我もとアカリを囲む。

 

 (わかってるわね、あんたがジャンプで、こっちに打ち落とす!)

 (…ライカ、結婚は人生の墓場じゃなかった?)

 (う…うっさいっ! とりあえず願掛けはかけるだけタダ! ハズレて損なし!

  うまく行ったら食堂以外で食べ放題、オゴるからっ!)

 

 …ブライダル経験者も本気参戦だった。

 

「みんな…ホントにみんな。今日は私のために集まってくださって…ありがとうございました。

私は今日、初めて気がついたことがあります。」

 

 聴衆誰もが、固唾を呑む。

 

「私は…みんなを護りたいと思ってダイビートに入って、そのために強くなるんだって、全力で頑張ってきました。

でも今日、敵の罠に嵌められて、誰も私のそばにいない、みんなみんな離れていく幻を見せられて…。

そうしたら、何も出来なくて。

情けないくらい、自分は弱かったんです。」

 

 絆の力…それは、エスカルビーの一番のストロングポイントにして、最大の弱点だった。

 

「だから…護られているのは、私の方で。

ここにいる皆さんに護られて、私はここまで戦って来られたんだって。

私…まだまだなんです。

だから、もっとみんなにお返しできるように、私はもっと頑張ります!

明日から…長官と、また頑張ります。」

 

それは、ダイビートでこれからも頑張る、という意味にも。

そして、伴侶と手を取って、という意味にも受け取れて…。

 

「今日は、本当に…ありがとうございました!」

 

……

 

 ぱちぱちぱちぱち…

 

 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちどおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!

 

屋外でも響く万雷の拍手が、この花嫁たちの明日が幸多いものになりますように…と、2人におまじないをかける。

 

 ぺこりと一礼したアカリが、いよいよ手持ちのブーケを振り下ろし…

 

([【〈ほしいっ!!!〉】])

クラスメイトが、戦士たちが、魔女も神騎も閃忍も。

たった1%そこらの確率に賭け、身構える。

 

「せーのっ!」

 

夜空に弧を描く、次の花嫁に良縁を届ける花束は…

 

 びゅうううううううーーーーーっっ!!

 

刹那、天上人の悪戯に吹き流され。

緊急着陸したのは…

 

 ぽすっ。

 

 「あ…あれっ?」

 

 離陸した花嫁の掌だった。

 

(…え?)(…なっ…!)

 

 「【〘《なんじゃ、そりゃーーーーーっっっ!!!》〙】」

 

「…なあエリー、この場合、次のゴールインはアカリ、ということで、いいのか?」

「理論上は、ヒビキのその解釈で、正しいっ! 

だけど…だけどこんなの道義上も、女の子の夢の観点でも、絶対認めないわよーーーッ!!」

実際の結婚式でこの事態は、結婚式で新婦の再婚が確定してしまう、大変に縁起の悪い事態。

穏便にやり直すのが吉であるが。

 

そんな悪戯の張本人たちは…さらに、新郎新婦と参列者に祥あらんことを願い。

ガーデンに清々しい神気のつぶてを、季節外れの粉雪のように降り注がせた。

「うわっ…何だろう、コレ…?」

「ふわあっ、キレイ…ぽかぽかする…!」

「ライスシャワーみたい…!」

その幸せのお裾分けは、閂市すべてを包み…

誰もが星を見上げ、満ち足りたこの一夜に感謝した。

 

……

「メ…メイファールうううっ! ラブディエルうううっっ!

 …あああっ、ミカフィールまでえええっ!!!」

 

披露宴を辞退した、天界神騎たちを統べる天使長・アズエルは…

孤立の中、憤懣やるかたなしであった。

 

「何をしてくれてるのよおおおおっっ!?!

ブーケトスを妨害してっ、アカリさんにブーケ戻してっ、神気で包むなんてええええっ!?」

 

「ええっ、ナンノコトデスカー? たまたま、オルトロスを空砲発射してしまいましてー。」

「たまたま、アサシン隊で他の神騎から預かった神気を、たまたま、空砲に驚いて翼からこぼしてしまったんです。不可抗力なんです!

…アズエル様、あとで軍法会議シマスノデー。」

「たまたま、ルナティッククラッシュを素振りしなきゃ、という気持ちになりまして…。

…ナンデデショウネー?」

 

「こ…この神気もおっ! 天界神騎が揃いもそろってっ、かき集めてバラ撒くなんてえええっ!!

明日からここの参列者、みんなみんな、神騎の加護付きになっちゃうじゃないのおおおおーーーっ!?」

 

神気ライスシャワー散布実働部隊・アサシン隊は…。

(※後の軍法会議で、全員出勤停止1日の処分を受けるも、謹慎ではないので、ラブディエルの奢りで閂市内食い倒れ慰安ツアーを敢行したという。)

その一人ひとりが天界神騎から…各々の神気を預かっていた。

 

「ホントは直接ぎゅうってしたいのですが…アカリさんの温かさがこれからも続きますよう、私もぜひ癒やしの力を…!」

「ふむ、またアカリは強くなるな。今後に期待して、私の神気もカンパしよう。」

「地上人類の披露宴には、祝福の歌唱タイムがあると聞くが…歌えぬ無念、代わりにこの力で!」

「んん~っ、今すぐにも抱きしめたいわあっ、2人の愛を包んであげたいわあ~ん。私の抱擁力、この神気に惜しみなく込めちゃうわよん!」

 

セラフィールが、ゼブリエルが、イザナエルが、シャムエルが…惜しみなく祝福を。

 

「全くう、何で私のハープで祝えないのよおっ! 参加者みいんなラブラブメロメロにして、その場でカップル作りまくり、合同結婚式にだってしちゃうのにいっ!」

「ええ~っ、からあげ出ないのお!? じゃあ、ミモザちゃんの新曲『からあげちゃんと結婚します』! これでみんなもハッピーウェディング!」

「マ…マリエル様っ、ミモザちゃ~ん! 地上でお世話になってるアカリさんたちですよっ!」

マリエル・カノープス・ミモザも…最終的には祝福の神気を。

 

こうして、各々の神気を預かって空中待機の後、メイファールの号砲を合図に、最後の一息まで散布し尽くした。

 

そして。

「アサシン隊、撃ち方、止めーーーーっ!!」

ぴたっ。

「よーーしっ、速やかに撤退するっ!」

 

ばささっ。

 

「…うっ…ううっ…。」

「…アルゴル様?」

 

(あんな真っ直ぐな戦士のアカリさんが…魔王さんの隣で…あんなに…!)

 

「う…うううう~~っ!!」

冷酷無比と謳われたアサシン隊の名参謀は。

 

  「ゔえええええーーーーーんっ!」

 

(アルゴル様ぁ…!)

(…そっとしておきましょう。)

(アルゴル様、すっかり情が深くなられて…!)

(ああ…こんな上司も、いいじゃないか…!)

 

「アカリざんっ、キレイっ。人生で最高に、キレイ、だがらあ…。

幸せに、じあわぜに、なっでええええっ!! えぐっ、ぐずっ、ひぐっ…!!」

 

すっかり涙もろく、人間好きに感化されていた。

……

 

「ど…どうすんのよっ、祝福しまくり、地上に干渉しまくり、介入しまくりいいいいっっ!!

ああああああああっ、あなたたちっ、揃いも揃って魔王に、魔王に毒されてしまってえええ〜〜っ?! …はふん…」

 ばたん。

 

 天使長アズエル、失神。

 

こうして結局、天界神騎の祝福はアカリたちを強く優しく加護したのであった。

 

 

 

そして…2人が手を繋ぎ、花道から式場を後にする。

 

『皆さまにご案内申し上げます。お名残惜しいところですが、送迎バスの準備が整っております。本日はご臨席、誠にありがとうございました…。』

帰途に就く誰もが、今日の式の温かさと、主役の美しさを語っていた。

 

……

「アカリ…お疲れさま。」

「長官…ありがとうございました!」

大役からようやく解放され、安堵する2人。

 

「あれ? まだ終わりじゃありませんよ?」

「『…えっ?』」

式場でアカリの宣材スチルを収めまくっていたカメラマンの、予想外の一言。

 

「最後に…当式場イチオシ、新郎新婦さま専用・スイートルームの宣材写真をいただきます!」

「…スイート…」「ルーム…?」

「当式場はホテル併設なんです。遠方からの招待客をお泊めする他、新郎新婦さまの大切な一夜を、閂市の夜景を一望できる最高の1室でおもてなし…という推しポイントでして。」

 

(〔……!!〕)

 




…次回(最終章)、寝室からお届けします。
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