超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス 作:環 藍河
……
…
「お願いしまーす! 目線は遠く、街を眺めていただいて、うっとりと!
今日のステキな式の思い出を、お2人でしみじみと語って…あっ、いいです! その表情!!」
かしゃっ! かしゃかしゃかしゃっ!!
「ハイっ、撮れ高バッチリですうっ! アカリさん、長官さん、本当にありがとうございました!」
ウェディングドレスとタキシードのまま、2人は式場併設のホテル最上階・スイートルームでの撮影を終えた。
「…あ、こちらのお部屋は明日までお使いいただけますので、ご自由にどうぞ~!」
「…えっ? …あっ、ちょっと…?」「あ、あのっ、あのっ!?」
…ぱたん。
先ほどまでの、引きも切らない招待客のざわめきから一転…広いリビングに2人きりの静寂。
……
…
「…アカ『長か…』」
「…あっ…!」
躊躇いを振り切る言葉が、正面衝突。
「あ、あのっ、長官…。」
仕切り直して意を決し、アカリから。
「厚かましいんですけど、お願いがあります。」
「…ああ。」
「今日の式は、模擬の…。イデアの壁から助けてもらった成り行きで始まった、お芝居です。
でも…今夜だけ。
私…ホントの新婚さんみたいに、長官に甘えて…いいですか…?
もし…長官のお嫁さんになれたら…私…!」
「…!!」
耳まで熱く上気させ、とろけるおねだりの眼差し。
ぴたっ。
(んっ…?!)
続く告白を遮ろうと、指先で、ルージュに染まるアカリの唇を塞ぐ。
「先に言わせてしまったな。俺も…アカリの大切な人になりたい。」
(…やったあ…!)
左肩に耳を寄せ、体も心も預ける。
ソファは、ドレスをまとったままでもゆったり座れるゆとりのサイズ。
壁一面の窓越しに、街のカクテルライトと港の灯、そして満天の星が主役たちを讃える。
「…明日まで、2人きり…ですね。」
「…そうだ。」
宴の後の寂静感に重なる2人の心臓の拍動が、くっきりクリアに互いの耳に届きそう。
「…いつでしたっけ。山に登って、坂道から街を一緒に観ましたよね。」
「ああ、アカリが来たばかりの頃だったな。休みの日に、案内しますよ、って。」
「…どうしてでしょうね…?」
「アカリ…?」
「あのとき観た街と変わらないはずなのに…今日の夜景はずっと綺麗で…。」
「ああ…この街全部がアカリを祝ってくれているみたいだ。」
「…それなら、長官も一緒に、お祝いされて下さいね?」
「ああ…謹んで。俺もこの街が大好きだ。」
「…長官、今日は本当に、ありがとうございました。」
「アカリも、本当によく頑張った。突然だったのに、最後まで新婦を務め上げて…」
「…違うんです。」
トキサダの言葉を途中で制し。
「イデアの壁に閉じ込められて、ひとりぼっちで、もうダメだって絶望したとき…。
長官が来てくれて、『エスカルビーが独りなものか』って、何度も…。
力強くて、泣きたいくらい心強くて…」
はにかむアカリの瞳の奥には、筆舌に尽くしがたい孤独の辛苦が覗き見えた。
「長官の胸の中…私、大好きなんです。…初めて会ったあの日から…!」
樹から落ち、抱きとめられた始まりの日も。
高鳴る鼓動に闘志と勇気を満たされる日々も。
決戦に勝つも精魂尽き果て、天空から帰還したあの日も…そして今日も。
その抱擁はいつも、アカリの心に沁み渡る。
「いつも長官は…私が困ったとき、苦しいところに、必ず手を差し伸べてくれるんですね。
私に足りないもの、いちばん欲しいもの、また立ち上がるための力をくれるんです。
だから私…長官に会えて良かった。長官が今の私をくれたんです…!」
「…俺も今日、思い知ったことがある。」
「えっ…?」
「アカリ…俺も、君なしでは戦えなかった。」
「え…?」
その短い一言は。
「ええっ…ああっ…!?」
高鳴る胸の限界を超え、アカリのドキドキをさらなる高みに。
「あ…あわわっ…、そんな、大げさな…?」
今度はトキサダが、アカリの返事を遮り、首を横に振る。
「大げさなもんか。
俺は…市民に見放されて、そして敗れて、ここに来たんだ…。」
「あっ…!」
かつての未来。
強すぎる超昂戦士たちは、やがて護るべき市民とかけ離れた、ひどく孤高の存在となった。
結果、市民の期待はやがて他人事となり…徐々に強いられる苦戦の中、市民は失望し、超昂戦士は罵声のはけ口に。
やがて、遂に孤立無援となった戦士は…一人残らず、十字架の露と消えた。
だから、その過ちを二度と繰り返さない。
俺たちは、市民と共闘する集団でなくてはならない。
…そう心に決めて旗揚げしたダイビート。
だが、本当にそんなことができるのか。
何の力も無い一般人が、超人たちを隣人として受け止め。
危険と隣り合わせになっても、俺たちと手を繋ぎ続けてくれるのか…?!
「アカリが俺を…ダイビートを信じてくれた。
それは俺にとって…この時代で最初に見つけた、まぶしい希望だったのさ。」
あの日、呼びかけに応じてくれたアカリ。
戦闘経験も無く、わずかに高い身体能力と憧れを持つだけの、普通の少女が…決死の戦闘もDチャージもいとわず、共闘を誓ってくれた。
その決心が、献身が…どれほど俺を支えただろう。
アカリの純心に心打たれて何人もの新たな超昂戦士が誕生し、市民の応援は日増しに温かく。
時には敵のかたくなな心をも溶かした。
「今日集まってくれた一人ひとりが、君をかけがえなく思ってくれる。
そして…君が信じる俺とダイビートを、みんなも信じてくれる。
…今日集まった人たちの笑顔を、見せてやりたかったよ。俺に全てを託し、タイムゲートでここに送ってくれた、全ての人々に…。」
「長官…!」
今も悔恨はトキサダの胸を締め付ける。
それでも…やり直しを成し遂げ、その無念に報いた自負は、トキサダの誇り。
「今なら、俺たちは絶対誰にも負けやしない。負けるもんか。街の人々に…護るべき人々に愛されて、戦えるんだからな。
こんなに凄いダイビートは、俺だけでは作れなかった。アカリが…ルビーが、俺の願いを叶えてくれたんだ…!」
市民と超昂戦士とが共闘する…俺が願った以上のダイビートが、今ここに在る。
超昂戦士・エスカルビーと、一般市民・園崎アカリが導いてくれた、俺の誇れる仲間たちの場所。
「アカリは凄いな。いつもみんなの心を打ち…いつも俺の心を震わせる。」
「長官だって…私にいつだって力をくれるんです。困難に立ち向かう勇気も、迷いを振り切る正しさも…」
ぎゅっ…ふにっ。
(あっ…!)
「エナジーをくれる、ドキドキも…ですよ。」
差し出した両手で、アカリはトキサダの両手を掴み、ドレスが護る自分の胸元へ。
とくん…とくんっ、とくんっ…!
シルク越しに伝わる、控えめな膨らみの奥の拍動が…いつになく熱く、激しく。
「…伝わって…いますか…? 私の胸をこんなに高鳴らせてくれるのは…長官だけです。
だから私…誰にも負けません。
長官…これからもずっと、私のこと…見守ってください。
まだまだの私が、また迷ったとき…進む勇気を、これからもください…!」
「ああ…。俺も、アカリとずっと、繋がっていきたい。俺を俺にしてくれた、君と…!」
……
…
どちらともなく、寄せる唇。
(んっ…んうう…っ…)
(はむ…はふう…んっ…)
求め合う2つの心は、時空を超えても、最初から一つだったかのように重なる。
(何度も、したのに…。
長官のキス…初めてみたいに…とろけそう…。)
ちゅっ。れろっ。
(あ…舌…!)
ふちゅっ…はあっ…はふっ、れろっ…
「んうっ…んふっ、ふうっ…ああっ…!」
引いては寄せ、絡んでは離れ…
やがて2人の波濤が重なり合い。
「んうっ、く…ああっ、んう〜〜〜っっ…!」
ぴくっ、びくんっ、どくんっ、……!
…くたっ。
「ああっ…、あっ、…はあ…っ…」
「アカリ…」
「えへへっ…すみません、長官…。」
キスだけで達する高みに心を預け、ふわふわのソファに包まれる。
「いつもより…感じるみたいです…」
「…任せろ。」「えっ…?」
ふわっ。
左腕を肩の下から、右腕をヒップから。
抱き上げられ、アカリは再びトキサダの胸に。
「ちょ…長官? あのっ、私…重くて…、ドレスも…!?」
「可愛いよ。小さな人魚姫さまだ。」
「あっ…。」
頬を染め、思わず仰け反るアカリ。
その左手が空を切り…トキサダの左手を探り当てる。
重なる薬指には、世界に一組だけの…想いを繋ぐプラチナのデバイス。微かな金属音とともに、2人の心が共鳴した。
マーメイドラインのウェディングドレスに包まれた、腕の中の人魚姫を…そのままクイーンベッドにエスコートする。
「…はあ…っ…、あふ…うっ…」
胸の早鐘が鳴り止まない。恥じらい混じりに瞳は潤み、吐息は熱を帯びる。
脱がせて、抱きしめたい。裸の心で繋がりたい。
「アカリ…ドレスがもう、くしゃくしゃだ…。」
「…長官が、長官が熱くて…!」
ワンピースのドレスをベッドの縁で脱がせていく。長くすらっと伸びたスカートが、キスの間もアカリを焦らし続け…滴るように濡れそぼっていた。
コルセットを貞淑ごと解き放つと、引き締まったボディから汗と弾力が迸る。
互いの唇に響くキスの残り香と余韻が、続きを求め合い、再び重なり合う。
「…いいかい。」
…こくっ。
「んうっ…んくうううっ!!」
きゅっ…ぐぐぐっ…!
「ふうっ…うっ…!」
欲望混じりの想いのままに、正中を貫く心。
両手の指先まで、両足のつま先まで、痺れるままに体で受け止め…胸いっぱいに溢れる優しさを、心の隅々まで受け容れる。
「あっ…あはあ…あっ…!」
「…ちょっと早すぎたか?」
「んんっ…、いえ…欲しかった…ですっ…!」
パズルのピースを填めるように、求める心同士が、互いの隙間を埋めていく。
体温が、吐息が、触れる胸から弾ける拍動が、繋ぐ絆を確かめるように包み合う。
「くっ…熱っ…、ぐううっ…!」
「ああっ! 長官っ、長官もっ、私のっ、中でっ…!」
ぴちゃっ、くちゅっ、ぐちゅっ…
肌と肌、剥き出しの心と心が接続し、欲しいすべてを無言で贈り合う。
アカリが求める一瞬を一つも逃さず、思いの丈を体で伝える。
心の中まで見通したように、その抱擁で、体で応える。
言葉にならない、呼吸で繋がる喜びを確かめ、重なる熱さを受け止め…
互いに、もっと、もっと高みに。
(アカリ…アカリっ…)
(長官っ、ちょう…かん…!)
昂ぶる想い、込み上げる衝動。
覚えたての頃は…胸に抱いてはいけないものだと、秘めて閉じ込めようとさえ悩んだ、自分でも知らなかった情動。
今は違う。もう、迷わない。
誰よりも胸を熱くたぎらせ、勇気をみなぎらせる激しいビート。
…もっと、もっと高鳴れ、私のハート。
天をも貫く超昂戦士の鼓動は…
貴方だけがくれる、世界だって変えられる、私のエナジーなんだから…!
「あーーっ! あっ、あっ、あっ、いいっ…!」
「ぐうっ…!」
「あっあっあっ、ああっ…!
…っ!! …ああっ、あああーー〜〜っ!!!」
びくっ! どくんっ! どくっ!
ぎゅううう〜〜っ……!
その最高潮を、ほとばしるすべてを、どこまでも…。
繋がる心で、体で、残さず自分に溶かし込むように。
アカリは熱い抱擁でトキサダを求め…心の奥底から、体の芯まで満たされる。
(アカリ…、アカリっ…。)
(はあ…っ、はふっ…、…あっ…、あっ…。)
愛し、護り続けた故郷の夜景をゆりかごに。
求め、応えてくれる人のすべてに包まれて。
(…長官…。ずっと…一緒です…。)
花嫁は…幸せな眠りについた。
……
…
友を、街を愛する一人の平凡な少女は…
ある日、新たな世界に憧れ、小さな勇気でその身を投じた。
純白と紅のドレスに身を包み、その強き心でみんなを護る、優しき少女。
その道は平坦ではなかった。ときに迷い、泣き、そして倒れ…
それでも再び立ち上がり、その強き心で世界を救った。
少女にドレスを与えた、不思議な魔法使いは…
その孤独と悲しみを隠し、復讐を胸に秘めて戦に明け暮れた。
ときに絶望し、激昂し、その身を地獄の業火に焼かれ…
それでも、導き続けた少女との絆と、人の優しさに触れ。
やがてたくさんの仲間とともに、世界を救った。
そして…
いつしか魔法使いは、少女の夢の続きとなり。
いつしか少女は、魔法使いの凍てつく心を照らす太陽となった。
…戦いは未だ終わらず、二人が真に結ばれる日も、いまだ定かではない。
そして夜を越え、朝を迎え…魔法が解け、アカリは仮初めの花嫁から少女へ戻る。
それでも、アカリの心のいちばん真ん中に、確かに残る絆。
(…繋がっているんだ…。長官と私…確かに…!)
きっと、忘れない。
ドレスよりも確かな温もり、指輪よりも強く結ばれた心。
肌と肌、唇と唇を重ねて確かめ合った、心と未来。
……
…
(…よし。)
新しい力に身を委ね、アカリとトキサダは。
「エスカルビー、出動だ!」「はいっ、出番ですねっ!」
いつもの新しい朝に飛び込んでいった。
【超昂大戦SS 絆のブライダル! 虜囚の花嫁と明日へのブーケトス 完】
筆者・環藍河より、最後までお読み下さった皆さまに謝意を申し上げます。
1年前のリメイク・かつ7月突入後にジューンブライドネタという、旬を外した保存食ではございましたが、R-15アップコンバート版として、お楽しみいただけましたなら幸いです。
筆者のご都合主義優先で、むりやりアカリに模擬結婚式を挙げさせてしまったこのシリーズ。
…ですが、そもそも原作が大概、エスカチームも閃忍も魔女もムリヤリ花嫁大盤振る舞い。ただでさえ毎年6月はサメと歩むジューンブライドの超昂大戦ですもの。ちょっと便乗しても…いいですよねぇ?
1つチラシの裏を。
エリーとうららとヒビキの壁突破は、アカリと併せてブライダルのおまじない「サムシング・フォー」がモチーフ。
古い物(過去)と新しい物(未来)、青い物(幸運)と借りた物(ご縁)、花嫁がそんな4つを身につけ、幸あれと願うそうで、エスカチームに重ねてみました。
1年前の初回作では、展開や演出や込める理念に妙な個性を添えたがっていたように思い…赤面して悶えながらリメイクしてきました。
書き慣れてきて、文章量を増やして描写の解像度を上げ、伝わりにくさの解消などを狙いましたが、いかがでしたでしょうか?
R-15部分はまだまだ初心者ですので、拙さ爆発ですが。ご感想・叱咤激励等いただけますれば幸いです。
次回作は現在構想中(=ネタ切れ?)。
もう夏も間近、今日から超昂大戦は雪月花の復刻イベントですね。
至高の旧作イベントと期待の新作イベント、触発されてインスピレーションが迸って…そんな新作が書けると期待しております。
その際にはまた、お目汚しに伺います。少々お待ちを…!