私は○○○○   作:星のすみっこ

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迷い人のプレデュード

「○○○○!」

 

駆け寄ってくるのは人間の子供。

優しく呼ぶ声。

動かす手に合わせて頭を動かす二人だけの合図。

甘くておいしいちょこれいと、優しく撫でてくれるぽかぽか温かい手。

 

 

「…は僕のともだちなんだ!かえせーーー!」

 

迫りくる大きな手

 

別れの悲しみ。

 

苦痛の日々

 

再会

 

赤く染まる視界と青い闇

 

 

そして‥‥

 

 

『ーーーーっ!!!』

 

喉を震わせ、スナークは飛び起きた。

その動きで、体の下の廃棄物(ごみの山)がガラガラと音を立てるが、その音を気にも留めずに、汗で貼りつく髪を震える手でかき上げると、バクバクと激しく打つ鼓動を抑えるように身を丸めた。

 

 

(今のは…!?)

 

大きく息を吸い、吐く。何度か繰り返し落ち着いてきたスナークは大事に抱えた包みを見つめ、中を覗いた。

 

少女から貰った、青いもの(割れた風船)

擬態前につけられていたマスク型の装置。

 

そして、棘のような破片。

 

あの騒動の後、試行錯誤しながら擬態に成功したスナークが声を感じた場所を探し、見つけたのがこの破片だ。

発見した時には声が消えかかっており、追いかけられながらもスナークは本能的に自分の光を分け与えた。

その甲斐あって声は持ちこたえたが、疲弊しており上手く力の使えないスナークでは維持させるので精一杯であった。

擬態していなければ危なかっただろう。

 

 

破片にそっと触れると、途切れ途切れに先ほどの感情と光景がほんのり流れ込んでくる。

 

 

(そうか…今のは君の…。)

 

 

その感情の温かさと、強い想いにスナークは頷く。

 

 

(君も会いたい人がいるんだね。うん。一緒に探そう。)

 

 

 

そっと破片を撫で、スナークは自分の周りを見渡す。

消耗したまま彷徨ううちに、どうやら倒れてしまっていたらしい。

周囲は暗く、どれくらい眠っていたか察することは出来ない。

 

 

路地の隙間から明かりが見えたため、スナークはぼんやりと観察する。

 

街は色とりどりの光が灯り、沢山の人間がひしめきながらもそれぞれ移動していた。

建物の中では泡立つ液体を飲む人間や、あの時に見た四角いものに乗り込むその様子を驚く。

 

(なるほど。あの四角いのは、人間が入る乗り物だったんだ…。)

 

どの人間も小さな板を持っており、板に話しかけたり食い入るように見つめるその様子をスナークは奇妙に思った。

 

人達の喧騒や街頭の明かり、色んな音がごちゃごちゃと混ざり四角い箱からは変な音がひっきりなしに流れている。

慣れない環境の刺激に気圧されて、スナークは路地裏に戻ると腰を下ろした。

 

 

(これからどうしようか…。トレギアさんを探して、君の"ともだち"も探して…あ!寄生にきさんに会わないと!どこにいるんだろう…。誰かに聞いたほうがいいかな。)

 

あまり星が見えない空を寂しく思いながら悩むが一向に思いつかない為、とりあえず動こうとスナークはひょいと立ち上がり、尾が無いためふらりとするがぐっとこらえる。

 

 

周囲には地球の色々なものが廃棄されており、珍しい物達にスナークは興味をそそられ物色を始める。

擬態をしてから、空腹感の様なものが燻ってきたのを感じるのだ。

 

 

宇宙を旅していた経験から、地球も"カネ"というものが重要で、それがないと食べ物や物も入手できないらしい。観察するかぎりでは人間は狩りをしないようでスナークは不思議に思う。

あともう一つ、人間が牙をむきだして威嚇しあっていると思い影から様子を伺っていると、どうやらそれは嬉しいときの表情らしく、スレで聞いた笑顔というものらしい。

以前あった子供の人間のように口角をあげるのも笑顔のようで、人間の表情の奥深さにスナークは感心していた。

 

 

(さて…となにかあるかな。)

 

 

廃棄物の中で目を引いたのは、青いつるりとした容器(ポリバケツ)

持ちやすい取手も付いており、蓋もついてて手触りも良い。

荷物を入れていた袋が破けそうだったので代わりに使うことにした。

 

 

(綺麗な色!これなら丈夫そうでいいね。)

 

 

次に人間の顔の描かれた精巧な装飾の施された紙を見つける。

 

 

(これはシャシンってやつかな?でも色がついてない…。)

 

 

紙はくしゃりと柔らかく、これならいけそうだとスナークはパクリと口に入れた。

 

 

(うーん…?不思議な感じがする。)

 

 

あまり馴染みのない感覚(あじ)をゆっくり感じながら、生えていた小さな花もパクリと食べる。

 

 

(こっちの方がいいかな?)

 

 

ふと、視界に入った鮮やかな色に惹かれ、ボトルを手に取り振ってみる。

中には液体が入っておりブクブクと泡が出た。

人間が飲んでた泡立つ液体を思い出し蓋を開けてみると、ふわりと良い香り漂う。

 

(いい匂い。綺麗な色!)

 

期待しながらゴクリと口に含むと、思ったより粘度のあるそれは喉にへばりつくようで、良くない感覚にスナークは顔をしかめる。

 

「うぇ…」

 

思わず舌を出し首を傾げる。

 

 

(これは良くない…うわぁ。ぶくぶくする)

 

 

咀嚼するとどんどん泡立つ為、スナークは困ってしまった。

口内に収まらない泡を、シャボン玉の様にぷくぷく吐き出す。

 

 

(あ、これはちょっと楽しい。)

 

 

ふわふわとあたりに泡を浮かばせていると、カツンと足音がした。

 

 

「お前…何してんだ?」

 

 

「んぶっ!?」

 

 

背後からの声に驚いたスナークはゲホゲホと泡を溢しながら蒸せる。

声の方へふり向くと、1人の人間が此方を見ていた。

 

(なんか怖そうな人…?)

 

人間はスナークの持つ泡の出る液体をみて、呆れたように言う。

 

「これ洗剤じゃねぇか!」

 

『せんざい?』

 

(あっ!)

 

相手の言葉を理解するためテレパスを使ったのがまずかったのか、そのまま思わずテレパシーで答えてしまい、しまったとばかりに口を手で覆う。

 

「…お前も、宇宙人か。」

 

 

(えーっとこれはその…。)

 

 

ぶんぶんと音がしそうなほど首を振ると、人間は動揺するスナークをハッと鼻で笑う。

 

 

「誤魔化せてねぇぞガキが。さっさと家に帰れ。」

 

 

(家に帰る?)

 

 

家とは確か巣の事のはずだ。

 

 

『いえは、ない。』

 

 

スナークは巣を持たないのでそう言い、首を振ると人間は眉をひそめた。

 

 

「…訳ありか。」

 

 

じっと観察され、落ち着かなく感じていると、スナークは気付く。

 

 

(そういえば、「()()()」って言ってた!と言うことはこの人…)

 

尋ねようとした瞬間、通路の奥から慌ただしい声と足音が聞こえてくる。

 

 

 

「居たか!」

 

「こっちには居ねぇ!」

 

「あの野郎何処に行きやがった!!」

 

「おい!こっちを探すぞ!絶対に見つけ出せ!」

 

「あいつの仲間も、まだこの辺りに居るはずだ!」

 

 

 

ガシャガシャと硬質的な音も混じり、徐々に近づいてくる。

その様子に彼は、忌々しげな様子で舌打ちをすると、スナークの首根っこを掴み、ぐいと引っ張る。

 

「ぐえっ。」

 

「ちっ、追って来やがったか。…おいガキ!逃げるぞ!」

 

『にげる?なに…!?』

 

「話してる場合じゃねぇよ!さっさと走れ!」

 

そう怒鳴り駆けだす彼の首元で、空色のペンダントがキラリと光る。

 

その光を目印に、スナークは彼の後を追った。

 

 

 

======================

 

 

 

「食え。」

 

そう言い茶碗を机に置くと、青い瞳の青年は首を傾げる。

 

(白いつぶつぶがいっぱい…良い匂い。)

 

スナークはクンクンと匂いを嗅ぐと、あろうことかそのまま顔を突っ込み食べ始めた。

ぎょっとして「箸ぐらい使え!」と声を掛けようとすると、スナークは目を見開き固まる。

 

口内に広がる感覚に、これは一体なんだとスナークは驚いた。

前世で食べていた物のと言えば、トレギアに与えられていた餌や住んでいた星に落ちていたゴミであり、食に造詣の深い地球の食べ物はスナークにとっては全くの『未知』だったのだ。

 

 

「どうした?」

 

ただならぬ様子に男は眉を潜め訪ねると、キンキンと大きな思念で応えてきた

 

 

『凄い!こんなに素敵なものはじめてたべました!』

 

 

目を輝かせて頬張るその様子に、自分もかつて自分も食べた茶漬けを思いだし懐かしむように目を細めた男、ヴォルクは尋ねる。

 

 

「うまいか?」

 

 

『うまい?…はい!"うまい"です!ありがとうございます。えーっと…』

 

 

 

「ヴォルクだ。お前、箸ぐらい使えよ。」

 

 

初めての味に興奮しながらも箸に気付いたスナークは手に取ると尋ねた。

 

 

『箸…!お箸ですか?』

 

 

そうだと頷くと、箸を手に取りしげしげと眺める。

 

 

『これがあのお箸…!右の手で持つんですよね!』

 

 

得意気に箸を掲げるその様子に、一体どんな辺境から来たんだとヴォルクは呆れた。

 

親や家も無い様子に自分や住む星を追われた者達を思いだし、ふと端末の映像をみる。

そこには丸い形状の怪獣爆弾が写し出されていた。

 

 

(この計画、成功させてみせる)

 

 

ガツガツとあっという間に完食したスナークは満足げに息をつくとペコリと頭を下げる。

 

どことなくちぐはぐとした身のこなしや、常識知らずな様子から見るに、擬態慣れしていない宇宙人だろうかとヴォルクは目星をつけた。

スナークは、ヴォルクから何処か懐かしく、闇の混じったような匂いが微かにするのに気付きじっとヴォルクを見つめる。

 

 

 

あの後、隠れながらも追手から逃げるうちにすっかり夜は明け、町は再び賑わい始めていた。

 

『あの…』

 

スナークが発した声を遮るように、ピピピと通信機が音をたてた。

 

確認すると外事X課を探らせていた仲間からであり、ヴォルクは通信に応じる。

 

 

「なんだ?」

 

 

《X課のやつ、俺らを嗅ぎ回り始めました。どうやら警備会社に依頼したみたいです。》

 

 

「警備会社だァ?そんなもん」

 

 

《いえ、普通の警備会社ではなく、社員に…彼がいるんですよ。》

 

 

「何だと…!分かった。すぐに向かう。」

 

 

告げられたその名前にヴォルクは立ち上がった。

 

 

「じゃあな、ガキ。さっさとこの辺から離れた方がいい。巻き込まれるぞ。適当に出て行け。」

 

 

そう言い背を向けると、ヴォルクは外へ駆け出して行った。

 

残されたスナークは不思議な力が遠ざかっていくのを感じる。

 

(やっぱりヴォルクさんから、あの力は出てたんだ。多分…首に掛けてたやつから?)

 

そして"巻き込まれる"と言う言葉について考えていると、ドタドタと足音が近付いて来るのが聞こえ、荒々しい足音に危険を感じたスナークは窓から外に出ると室外機の陰に隠れる。

 

バン!と音を立てドアが開くと武器を持った男が入って来た。

 

そっと耳をすますと、なにやら喋っている様で、なんとか断片的に聞き取る。

 

 

「居ない」「ヴォルク」「始末」

 

 

(なんだって!?)

 

 

スナークは急いでその場を離れるとヴォルクの後を追った。

 

================================

 

「狸の居場所は?」

 

ヒロユキは先輩であるホマレとファントン星人との取引を見守っていた。

いつもと違うその様子を案じていると

 

「そこまでは言えない 帰ってくれ。」とファントン星人はそっぽを向く

 

「ただでさえ、裏の動きが活発になってるってのに…。深入りしない方がいいぜ。」

 

「何があった?」

 

訝しげにホマレが尋ねると、ファントン星人は気だるげに答える。

 

「知らないのか?…なんでも、商品が逃げ出したんだとよ。それでバタついているときに怪獣爆弾が盗まれたとあって、ご立腹ってワケだ。お陰でピリピリしていけねぇや…ん?客か?」

 

そうボヤくファントン星人の視線の先には男が立っている。

その男はヒロユキを見ると体を強ばらせた。

 

(あれ?片目が赤い?)

 

 

『ヒロユキ、知り合いか?』

 

 

尋ねるタイガに知らないと首を振ると、男は近づいてくる。

ファントン星人の飼う犬がうなり声をあげ吠えたてるが、男は表情を変えずにじっと此方を観察しており不気味さを感じさせた。

 

「情報がほしい。」

 

震えた声で男は尋ねると、鞄から一着のシャツを出す。

 

「お代はこれでどうだ?」

 

そのシャツは何とも言えない字でうちゅ~んと書いてある。

 

 

『うちゅ~ん?』

 

 

覗き込んだタイガが首を傾げると、隣のタイタスがスクワットをしながら頷く

 

 

『ふんっ!なかなか味のある。ふんっ!デザインだな。ふんっ!』

 

 

「こ!これはっ!あのうちゅ~んTシャツ!…良いだろう!ほら、商売の邪魔だ!」

 

しっしっと追いたてられるままに去ろうとするヒロユキ達。

 

 

「いや、アイツらが先客だろう?俺は後で構わない。」

 

男が制止するように声を掛けるがファントン星人は首を振る。

 

「いーや、アイツらとの取引はもう終わりだ。」

 

そう言い、ヒロユキとホマレへ向けたファントン星人の視線が、ぴたりとヒロユキを捉える。

 

「まて小僧、ポケットの中に何を持ってる?」

 

ヒロユキは立ち止まるとポケットの中のもの、ジュースの王冠を取り出した。

 

「これ?」

 

王冠を見せると、ファントン星人は興奮したように目玉をギョロギョロ動かす。

 

「それは!伝説のヒノデジュースの王冠ッ!ごく短期間で生産終了したハズ…!」

 

わなわなと手を震わせると身を乗り出す。

 

 

「我が星ではそれは、とてつもない価値があるのだ!いくらだ!?いくらだせばいい?」

 

 

凄い剣幕にヒロユキはたじろぐ。

 

 

「ちょっと何言ってるか…」

 

 

「いくらでも払う!!どんな情報でも言うから!それ頂戴~!」

 

 

その様子を見る、男は苦笑しながら、小さく呟いた。

 

「カレカレータ…」

 

 

 




覚悟していても星1はやはり少しショックというか堪えますね。精進できるように努めます。

一話の初めにも記載しておりますように、お目に適いませんでしたら、そっとブラウザバックをお願いします。


この作品に付き合ってくださる寛大な方は、ニワカ初心者がまーたなんか幻覚書いてるなと温かい目で見守っていただければ幸いです。
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