私は○○○○   作:星のすみっこ

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ありがとうございます。ひとつひとつ大切に読ませてもらってます。
初めてここすきを頂いてびっくりして飛び上がりました!


群狼のブルース

スナークは慣れない体でふらつきながらも走る。

虫の知らせとでも言うのか、胸のざわつきがスナークを焦らせた。

 

(えっと…こっちだ!)

 

地面に伏せ、力と匂いを辿るスナークに人間達の良いとは言えない視線が向けられる。

視線を投げ掛ける人間の方を見ると、目があった人間はそそくさと引っ込んだり、曖昧な笑みをうかべたりと遠巻きに此方を観察している。

今迄の星でもあったその様子に、居心地の悪さを感じながらもスナークは捜索を続けた。

 

 

 

痕跡を追い続けていると、古びた建物にたどり着く。

侵入者を阻むためか施錠がしてあった為、開け方の分からないスナークは壁をよじ登ると窓から身体を滑り込ませた。

やや狭く入り組んではいたが、スナークはどんどん進む。

進むごとにどなり声や、銃声が聞こえてきて空気が張り詰めてゆくのを感じたスナークは、心細くなり容器をぎゅっと抱える。

 

 

(大丈夫…大丈夫。)

 

 

自分に言い聞かせる様に、語りかけるように繰り返すとスナークは進んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「アンタは牙を抜かれちまったんだあぁぁ!!」

 

 

「うおおおお!」

 

 

吼えるような大声、その声を頼りにスナークはヴォルクを発見した。

 

険しい目付きの青い服の人間と激しく戦っており、奥にある謎の丸い装置が威圧感を放っている。

 

スナークはヴォルクを助けるべく身を乗り出し構える…と、もう一人の人間に気付いた。

 

 

(あれ?)

 

 

ヴォルクと戦う人間と同じ服を着た人間である。

彼は拘束されており、必死に鎖を解こうとしていた。

 

(この人…見たような気が…?)

 

 

どこか不思議な力を感じ、スナークは首を傾げる。

 

 

(敵…?さっきの人のなかま?捕まってる?いや、それよりまずはヴォルクさんをたすけないと!)

 

ブンブンと頭を振り、声をかけるべくテレパシーをつなげるとゴキッと固い音が響く。

ヴォルクと青い服の人間、お互いの一撃が交差したのだ。

 

 

「お前…つよくなったな」

 

 

「物事は変わる…!」

 

 

怒りや哀しみ、数多の複雑なものが混じった激情にスナークは息を飲む。

 

 

カシャン

 

 

ふと聞きなれない物音に目を向けると、そこにはヴォルクへ武器を向ける男の姿があった。

 

 

(あれは…!?危ない!!)

 

 

スナークは飛びかかろうと膝を曲げ、ハッと思い出した。

 

 

 そう、人間(この体)は飛行できないのである。

 

 

スナークは即座に持っていた容器の蓋をとると、男へ投擲する。

 

かなりの力を持って投げられたそれは、男の近くの壁に当たり怯ませたが惜しくも放たれた弾丸は肩を掠め、ヴォルクは膝をついた。

 

 

「ヴォルク!!…今のは!?」

 

戦っていた敵であるはずの男が、心配そうにヴォルクへ駆け寄る姿を見たスナークは混乱しつつも、皆が蓋に気をとられている隙に静かに物陰へ着地する。

 

 

(え?あれ?さっきまで戦ってたんだよね?いや、今はそれより…。)

 

 

ひたりと地面に手をつき身を伏せると気配を消し、這うような動きで静かに男へと忍び寄る。

これはかつての惑星に住む生物の、狩りの様子から学んだ物だった。

 

重心を手と足で緩やかに移動させながら進むと、二足歩行に比べて足音を立てにくく忍び寄るのに最適であり、四足歩行(こっちの方)がスナークにはしっくりきて動きやすいからだ。

 

(このままだとまた落としちゃうし、君も危ないよね。)

 

 

スナークは容器から破片とマスクを出すと服の内側に収納し、落ちないように風船の紐でぐるぐると巻き固定した。不恰好だが、落とす心配は無いのを確認すると静かに息を吐き集中する。

 

 

「ゾリンの差し金か!」

 

 

ヴォルクは肩を抑えながら忌々しげに男を睨み付けると銃を握り、男へと駆け出した。

男がカチリと再度、銃口を向けた瞬間

 

 

「がああああぁぁっ!!」

 

 

スナークは吼えながら男に飛び掛かると、強烈な一撃を食らわせる。

 

 

「お前…!?」

 

 

目を見開くヴォルクに、スナークは頷く。

 

『たすけ…きました!』

 

 

「何故来た!?ここは…」

 

 

「危ない!!」

 

 

拘束された人間の声で飛び退くと、先ほどまで居た場所に銃痕が刻まれる。

 

 

「クソッ!まだ居るのか!」

 

 

先ほどの男に似た風貌の二人組が入ってくると、武器を構えた。

 

 

「ヴォルク!爆弾の解除コードを教えろ!」

 

 

丸い物体に向かう男の言葉、その聞き取れた単語にスナークはぎょっとして振り返る。

 

 

(爆弾!?爆弾って確か、あのどかーんってする…!?)

 

 

襲い来る敵と戦いながらヴォルクは叫ぶ。

 

 

「無駄だよホマレさん!もうおしまいだぁ!」

 

 

「ホマレさん!もう駄目だ!逃げましょう!」

 

 

拘束された人間も口にする"ホマレ"の単語。

 

 

(ほまれ…?どこかで聞いたような。)

 

 

襲い来る相手の頭に容器を被せ視界を奪うと、勢いよく蹴り上げる。

その隙に、ヴォルクが追い打ちをかけた。

 

蹴り上げた勢いのまま後方へ、くるりと宙返りをすると拘束された人間と目が合う。

 

 

(この人はさっき助けてくれた…やっぱり見覚えがある気がする…。)

 

 

とても真っ直ぐな目をした人間。

 

その眼を見ていると、ほんのりと身に着けた破片が熱を持った気がした。

敵であれば先ほど撃たれそうな時に、警告したりはしないのではないか?と思い至りスナークは、ガシッと鎖を握り引っ張る。

 

 

「君は…?!」

 

 

鎖を握るスナークの手に光が瞬くと、鎖は弾けるようにちぎれる。

 

 

「ありがとう!」

 

 

自由になった人間はその鎖を振り回し、敵の振り上げた武器に絡めて奪いとった。

そのまま武器を振り上げ敵を倒すと駆けだしていく。

 

「ホマレさん!もう時間がないです!」

 

ホマレと呼ばれた男が、爆弾を触っていると大きな声をあげる。

 

 

「どうなってる…!?操作ができないだと?!ロックされてるのか!?」

 

 

その言葉にヴォルクは目を見開く、

 

 

「まさか…!」

 

 

爆風、閃光、衝撃。

 

 

全てがまぜこぜになり目の前が真っ白になった。

 

 

 

============================================

 

 

「ヴォルク…!しっかりしろ!」

 

 

ホマレは瓦礫をかき分け、ヴォルクを引っ張り出す。

 

 

「ゲホッ…!ホマレ…さん。」

 

 

足を引きずってはいるものの、無事に体を起こしたヴォルクにホマレはほっと息を吐く。

 

 

少し離れた場所ではタイガと怪獣爆弾から出現した怪獣が戦いを繰り広げており、その余波で地面が揺れていた。

 

ヴォルクは街を見渡すとガクリと膝をつく。

 

「…ヴォルク?」

 

項垂れたヴォルクはかすれた声で言う。

 

「…政府から金をせしめたら…俺みたいなガキの為に使って…やりたかった。」

 

「お前…。」

 

強くこぶしを握るとヴォルクは続ける。

 

「俺みたいな宇宙人のガキの為に…使ってやりたかったんだ。住む星を追われたやつらの為に!」

 

その目には涙が光っていた。

 

 

「だがなヴォルク…暴力じゃ何も解決しねぇんだ…手を染めて手にした金で、本当にガキたちが救われるのか?胸が張れるのか!?」

 

 

そう言うホマレの方にバッと振りむくとヴォルクは詰め寄る。

 

「分かってる!!! 本当は…気づいてんだよ…間違ってるって!こんな手段じゃいけねぇって!」

 

 

「だったら…!」

 

 

その先を言わせないかのように、ヴォルクは叫ぶ。

 

 

「アンタが俺を助けてくれたみたいに、誰かを助けたかった!アンタみたいに強くなりたかった!…だから力が欲しかった!」

 

 

「ヴォルク…。」

 

 

ホマレとヴォルク、お互いの目に熱い涙が流れる。

 

 

「なぁ、俺はどうしたらよかった…?帰る星も力もない俺は…。」

 

 

嗚咽まじりに言うヴォルクにホマレは手を伸ばし…

 

 

 

「あーあ。」

 

 

退屈そうな男の声が空気を震わせる。

 

 

「誰だ!」

 

 

コツコツと足音を立てて現れたのは、青いメッシュの特徴的な白と黒の服を纏う男。

 

 

男は嘲るように言う。

 

 

「いくら吠えたところで…所詮負け犬は負け犬か。」

 

 

 

============================================

 

気がつくと目の前は暗く、スナークは身体を動かそうとするが、圧迫されている様で上手く動かせない。

なんとか身を捩ると石の擦れるような音と焦げ臭さを感じ、自分が埋まってしまったのに気付き、スナークは息をのんだ。

 

(はやく 出ないと。)

 

暗い中、怪獣の咆哮と轟音が身体を揺らす。

誰かが戦っているのか凄まじいエネルギーを感じスナークは怖くなった。

崩壊に巻き込まれた際のダメージのせいで胸が痛んで上手く声が出せず、煙も目に染みる。

 

 

(痛い…。)

 

人間は目が柔らかい為か、目の上の皮膚(まぶた)を動かすことが出来る。

そうやって目を守るものだが、スナークはあまり目を閉じるのに慣れておらず、煙や砂でジワリと目から水が出たのに驚いた。

 

(やっぱ慣れてない体はちょっと難しい…。)

 

 

霞む視界の中、声の聞こえる方へ懸命に身体を動かす。

 

 

(誰か…?戦ってる?今の声は、ヴォルクさんと確か…ほまれって人?)

 

 

少しづつ瓦礫を動かすと光が見え、その光に向かってスナークは進む。

上手く息が吸えず、苦しくなり、無理に息を吸うと砂塵を吸ってしまった。

ゲホゲホと大きく何度も咳き込むと声が聞こえる。

 

「おい!ガキ!大丈夫か!?」

 

瓦礫の隙間から見えたヴォルクが、足を庇いながらも瓦礫をかき分ける。

 

ヴォルクに引っ張られながらも、なんとか出ることに成功したスナークは涙目になりながらも頷く。

 

 

「へぇ…。盗まれた商品と脱走した商品が一緒にいたなんてね。」

 

 

その声にスナークはバッと顔をあげた。

 

白と黒の衣服をまとったその男は、青い閃光でホマレを吹き飛ばす。

 

 

「ぐあっ…!」

 

 

「ホマレさん!」

 

 

倒れ込んだホマレに駆け寄ったヴォルクは、その男を睨みつけると怒りを帯びた声でその男の名を口にする。

 

 

 

「‥‥霧崎!」

 

 

霧崎と呼ばれた男は 嗤った。 

 

 




今回も閲覧いただきありがとうございます。

あとがきに毎回悩んでしまうので、簡易的な人物紹介を載せていこうかなと考えています。
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