私は○○○○   作:星のすみっこ

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遅くなり申し訳ありません。

作者は生きてます!








邂逅

『スナーク…?』

 

告げられたその名にトレギアはざわつき、そして怪しむ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()などいただろうか。

 

そもそもウルトラマンなのかすら怪しく、トレギアの持つ情報では、奴はヴィランギルドの商品であったはずだ。

 

久しぶりだと発言から、トレギアと面識があるようだが会った覚えなどなく。

なにより、こんな特徴的なやつを一度見たら忘れる訳がない。

ましてやその名前など…。

 

 

《ふむ…やはり初めて聞く名だな。》

 

インナースペースにて、タイタスが呟く。

その名を聞いて、変な名前だなとタイガは思った。

何故なら、光の国の言葉での意味は"小さきもの"。

ペットにつけるならまだしも、人物につけるにはやや違和感のあるニュアンスだからだ。

 

ふと、タイガの脳裏に、相棒の友達である怪獣の姿がよぎる。

 

《タイガ?》

 

黙りこんだタイガへ、ヒロユキが声を掛けると、タイガは違和感を飲み込み何でもないと応えた。

 

《目的が分からない以上、油断は禁物だぞ。》

 

『分かってるって旦那。』

 

注意を促すタイタスの声に、フーマは息をつくと応える。トレギアに煽られ昂っていたが、落ち着きを取り戻したようだ。

 

 

話し合うトライスクワッドを余所に、スナークと名乗った彼は、嬉しさが溢れださんばかりに尾を揺らめかせ、声をあげる。

 

『だいぶ探したんですよ!トレギアさんは姿が変わったんですね?姿が変わったのは私もなんですけど…あ!これってオソロイっていうんですよね。』

 

『なんだと…?』

 

キラキラと嬉しそうに瞳を輝かせながら話す彼。

 

以前のトレギアの姿を知っており、敵意ではなく好意を向けてくるその様子にますます疑問が募った。

 

 

一際目をひいたのは軟体生物のような独特の光沢をもつ長い尾。

その尾は、かつて光の国を出たトレギアが、命を生み出すという禁忌を侵し作った、小さな怪獣を思い出させる。

 

ゴミだらけの星で、トレギアはその小さな怪獣と静かに過ごしていたのだが、パンドラの箱とも言える生命倫理の根源に触れたその結末は暴走。

 

大量のゴミを取り込み巨大になった怪獣は災いの如く都市を襲ったのだ。

 

その小さな怪獣の名こそ…スナーク。

 

(馬鹿馬鹿しい。)

 

トレギアは自嘲した。

 

暴走を止めるためとはいえ、あの怪獣を手に掛けたのは紛れもなく自分なのだから。

 

作動させたDNAのバグで、悲鳴を上げながら様々な姿に変わり苦しみにのたうち、朽ちたあの光景が脳裏によぎる。

 

そして、その名を騙る目の前の存在にトレギアは苛立った。

 

スナークの名を知るものは、トレギア以外に居ないはず。偶然同じ名前というには、スナークという名は違和感があり、こちらを謀ろうとするほど、奴は頭が回るようには見えない。

誰ぞかの差し金だろうかと、奴の背後にいる第三者の存在をトレギアは懸念した。

 

恨みや怒りならいくらでも買ってきた。

敵なんぞ掃いて捨てるほどいる。

 

 

不可解なのは、スナークの戦闘力はお世辞にも強いとはいえず、トレギアを倒すために差し向けられたと考えられない事。

 

これなら普通に怪獣兵器を使った方がまだ良いだろう。

だとすれば精神的な揺さぶりであろうか。

 

 

『お前の背後にはだれがいる?』

 

その問いにスナークはきょとんとした様子で一度後ろを振り返ると、首を傾げた。

 

 

『はいご…?えっと…後ろには誰もいませんよ…?』

 

 

真っ直ぐに此方を見上げるその眼差しや仕草、そして小さく漏らした鳴き声が、かつての怪獣に重なる。

トレギアの心を幾重にも覆う闇のベールの一枚が僅かに揺らいだ。

 

そして、澄んだ空のような青い姿は、忌々しくもかつての自分と重なりトレギアの心はざらつき、ほの暗い感情が首をもたげた。

 

そして、トレギアは問う。

 

『その名を騙る、お前は何だ?何が目的だ?』 

 

剣呑な声色に空気が張り詰めたのを感じ、スナークはたじろぐ。

 

『かたる?え…?何って…私ですよ!忘れちゃったんですか?あの星で一緒に居たじゃないですか…?!』

 

スナークにとってトレギアは産まれた時から共にいる存在であり、それが当たり前であった。

 

 

故に、その問いの答えに足る言葉をスナークは持ち合わせていない。上手く言語化が出来ないのである。

 

戸惑い、泣き出しそうな声で語りかけるスナークに、冷えた声でトレギアは応える。

 

 

『私にも計画(やること)があるんだ。不確定要素は退場して貰おうか。』

 

混沌のエネルギーが放たれたその瞬間…

 

激しい感情がカッと身を焼くようにスナークを襲った。

 

誰かの…恐怖、悲しみ、怒り。

 

(あ!熱い!?これは…私の感情じゃない!?)

 

そして、ある光景がフラッシュバックする。

 

チョコレートが好きな彼の…最後にみた光景。

 

せまる混沌が。

 

彼を手にかけたのは…。

 

『あぶねぇっ!!』

 

フーマが鋭い声と共に光線を放ち、トレギアの攻撃を逸らせる。

ハッと我にかえったスナークは身をよじるが、脇腹を掠めたその一撃は、スナークに傷を負わせるには充分だった。

 

 

『うあっ…!』

 

 

痛みに呻きスナークは膝をついた。

 

 

『どうして…?!』

 

『どうして?私はただ証明したいだけさ。光も闇も…絆も、なんの意味もないと。』

 

『お前…!』

 

憤慨するフーマを一瞥すると、魔法陣と共に深い闇がトレギアの背後に溢れる。

 

『私は忙しいんでね。邪魔も入った事だ。この辺で失礼するよ。』

 

『えっ…ま、待って…!』

 

闇のゲートへ消えていくトレギアを引き留めようと駆け出すスナーク。

 

しかし、それを遮るように宇宙語の大きな怒号がスナークへ降り注いだ。

 

「なにやっとんじゃあああああ!」

 

眩しく光る金色の巨大な機体が降り立つ!

 

『あれは…!キングジョー!?新手か!?』

 

フーマが驚きの声をあげ、身構える。

 

金色のその機体…キングジョーは腕をおおきく振り上げると、スナークの頭にゴツンとゲンコツをおとした。

 

「こ の 馬 鹿 ナ メ ク ジ が ! 」

 

『い"ったぁ!?』

 

 

キングジョーは拳骨の痛みで悶えるスナークの腕をぐいと引く。

 

「ほら!退くぞ!やつらに見つかってんだよ!」

 

『その声は…!でも!追いかけないと!!やっと、会えた…のに!』

 

動揺しているせいか、テレパシーが安定せず途切れ途切れに響く。

 

「ちゃんと喋れ!出力安定してないからわかんねーっての!ヘタクソ!傷負ってんのに深追いするやつがいるか!」

 

声に怪獣のような鳴き声が混ざり始めたスナークの頭を、たしなめるように再度叩くキングジョーことセレブロ。

ガツンと硬質的な打撃音が響いた。

 

『ぎゃっ!?』

 

目を回すスナークをよっこいしょと担ぎ上げたキングジョーにフーマは慌てて問いかける。

 

『おい!あんたは?!』

 

「保護者みてーなもんです!!こいつがすいませんね!!!ったく…こら!尻尾気を付けろ!電柱が倒れるだろ!」

 

『いだだだだ!!尻尾いたい!ひっぱらないで下さい!離して…!』

 

「うるせぇ!!状況と状態をよく考えろ!尻尾固結びにするぞ!この馬鹿!アホ!もひとつオマケにマヌケ!」

 

ジタバタともがくスナークと共にキングジョーははやる気持ちで、そのまま飛び去って行く。

 

 

『な…なんだったんだあいつら…。』

 

 

嵐が過ぎ去った後のような静けさにつつまれ、フーマはやや呆然とした様子で呟く。

 

 

 

《とりあえず僕達も戻ろうか。》

 

カラータイマーの音が鳴る中、ヒロユキの声にトライスクワッド一同は頷くのだった。

 

 

 

=======================

 

とある薄暗い一室で、青い巨人たちが映されたディスプレイを見つめる影がゆらりと蠢く。

その後ろには檻や水槽が積まれており、幾つもの鳴き声が響く。その影は、数本の触手を歓喜にうねらせた。

 

「見つけたぞ!これを手に入れれば…ふふふ…ははははは!」

 

 

===================

 

「あ"~っ!!…疲れた。」

 

人間態となったスナークとセレブロは、路地裏で荒く息をつく。

 

「ったく!お前なぁ!いきなり飛びだすやつがいるか!!もっと周りを見て慎重にするとか!もっとこう…あるだろう!……おい?」

 

 

怒りの声をあげるセレブロだが、顔を伏せ小さく震えるスナークの様子に、気づくと肩を叩き呼び掛ける。

振り向いたスナークの青い瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちるとセレブロはぎょっとした。

 

『あのとき悪いことしたから…トレギアさんに嫌われちゃったのかなぁ…!忘れられちゃったのかなぁ…!どうしよう!!どうしよう?!うわああぁん!』

 

涙で顔をべしょべしょにして泣くスナークを前にセレブロは慌てた。

 

「えーと…?!まず落ち着け!!な?」

 

落ち着くように促すセレブロだったが、スナークはわんわんと子供のように泣きつづける。

 

 

(あーもー!ガキの相手とか世話ってわかんねぇよ!?)

 

セレブロは大きく息をつくと、ぐいと手をひいた。

 

「男がいつまでもメソメソすんじゃねえ!ほら!追っ手が来るかもしれねえ。行くぞ!」

 

泣きじゃくるスナークは手を引かれるままに歩き出す。

その心中は、混沌のように思考と感情が混ざり合い乱れていた。

変わってしまったトレギア、そしてその所業の一端。トレギアと戦っていたウルトラマン…

 

 

(掲示板のひとたちが言っていたのは…この事だったんだ。)

 

何故、どうして、とりとめのない感情や疑問が渦巻く中で、

 

"『物事は変わる。』"

 

スナークはその言葉を思い出していた。

 

 





キングジョー:寄生ニキの手札その1。寄生ニキの腕前でも操縦出来るように、ちょっと手を加えてるらしい。


不定期更新ですが温かく見守ってもらえると幸いです。
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