シャーレ前の駐在さん   作:そば粉うどん

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懲りずに流行りに手を出して済まない…
先駆者兄貴姉貴みたいにうまい文章書けないけど許し亭許して

≪追記≫

ちょっと展開的におかしいところの修正を行いました。


プロローグ 青春、スタート

「どこ行きやがったあのガキ!」

「リーダー、私あっち探してくる!」

 

(はは……これはかなり追い込まれてるな)

 

 できる限り冷静に、まずは学校で習った通り周囲確認。

 

 ……見える範囲に遮蔽物は多いものの、敵の気配はなし。とはいえ遠くから靴音と怒声が響いてるのを考えると、いずれこちらに来ることは確実だろう。

 

(弾薬は……と。うわ、あと2マガジンしかないじゃん。武器的にかなり弾数絞らざるを得ないとはいえ、使いすぎたな……)

 

 まあ、仕方ない。5マガジンのうち2個半は襲撃の序盤に使い果たした。そのうえ、今回の任務は早々に分断されてしまったため、付き添いの先輩方からの支援なんて見込めない。

 局長から言われた無駄撃ちの悪癖はこの数日じゃ当然だが治らず。訓練に付き合ってくれた局長にも悪いとは思っているけど、こればっかりは前からの癖だ、直そうにも直せそうになかった。

 

(無理言って持ち込んだ罠も全部使っちゃったし、これはまた補充が高くつくなぁ……。請求書ついでにまた局長のデスクに胃薬おいとこ……)

 

 なんて、無事に帰れたらの話をしているのも、銃弾が死に直結しないこの世界だからか。思い浮かべた局長の苦い顔に、なぜか笑いすら浮かんでくる。

 

(俺も随分とこっちの世界に染まっちゃったか? はは……)

 

 ダァン! 

 

「っ!」

 

 変なことを考えて緩んだ気を引き締めるように、真横の地面を銃弾が通り過ぎる。

 発射音から察するにハンドガン……とはいえ、地面に向かって撃ったあたり威嚇射撃だろう。相手方はこの廃墟を全部しらみつぶしに探してきたといったところか、ご苦労なことだ。

 

「居るのはわかってんだ! さっさと出てきやがれ!」

(……ま、ここ袋小路みたいなとこだし、他の場所にいなきゃここに来ないわけないよね)

 

 仕方なく、俺は不良生徒の前に姿を現した。相手の数は……ざっと見た感じは14人の大所帯、普通の公安局員一人じゃとても敵いそうにない人数。

 

「やあやあ、こんなにお揃いで。そんなに私のこと追っかけて、君たち私のファンだったり?」

「んなわけねェだろ! さっさとうちらから奪ったモン返してもらおうか!」

 

 おどけた様子で放った冗談に対して、リーダーらしきヘルメットガールから返ってきたのは怒声。当然だが、相当お怒りのご様子だ。

 俺は不意打ちを警戒しつつ、ちらりと手元のアタッシュケースを見た。情報通りなら、中身は『違法改造兵器の取引書類』、取引がばれたら全員纏めて更生局送りは免れないだろう。

 

「いやいや、君たち法的にいけない事しちゃってるし。私は公安、君たちは犯罪者。ならわざわざこれを返す義理も義務もないよね?」

「このクソガキがぁ……! お前ら、構えろ!」

 

 音が出そうなほど奥歯をかみしめ、こちらを睨む不良のリーダー。その号令で即座に周囲にいたヘルメット姿の連中が腰だめに銃を構えた。

 

(うん、美少女の顔が歪むのはたまらんね……なんて)

「あらら、沸点低いねえ……。まあ、そっちの方がやりやすいけども」

 

 頭をクリアにするべく深呼吸を一つ。大丈夫だ、この程度ならばあの訓練よりまし、順当にいけば簡単に制圧できるはずだ。俺の目的はあくまで書類の回収、ここからは逃げで問題ないが、

 

(別に、あいつらを倒してしまっても構わんのだろう?)

 

 俺は腰元のホルスターから愛銃(GLOCK26)を抜き去った。標準の銃より小さいが、こいつの方が自分の小さな手にはよく馴染む。そのまま片手で握りこんで構えた俺は、思い切り啖呵を切った。

 

「ヴァルキューレ公安局の権限において、実力を行使する!」

 

 さぁて、お仕事の時間だ。

 

 

 

 

 

 

 さて、現代日本じゃ絶対起こりえないこの状況になんで一般日本人だった俺が巻き込まれているのか。

 話は、1年程前にさかのぼる……。

 

 

 

 

 

 

「どういうことだってばよ……」

 

 顔を洗ってと前を見たら鏡に映る自分が女の子になっていることに気が付いた。何を言っているかわかんねーと思うが俺も何が起こったのかわからねぇ。しかも、頭の上にカラフル幾何学模様が浮いていらっしゃる。

 むしろ良くベッドから起きて顔洗うまで違和感を感じなかったな自分。よく考えればさっきまで政治学の講義……を話半分にメモしつつスマホでゲームの周回してただろうに。

 

「講義中に意識途切れて気が付いたら女の子になっていた件。……これ、ラノベ化できそうだな」

 

 なんて独り言を挟みつつ、自分の顔をまじまじと見つめてみる。

 

 赤髪ショートに碧眼の整った顔立ちは、俺の壊滅している美的センスでもわかる文句なしの美人さん。少し下に目を落とせばよく言えばスレンダー、悪く言えばぺったんこな胸。そして何より目を引くのは、赤と青の線が入り混じった天使のような光輪だ。

 

「これ、多分サンクタの奴じゃないよなぁ……。別にまぶしくもないし、そもそもこんな飾りのあるやつじゃないしな」

 

 頭の上の光輪を撫でようとしてそんなことをつぶやく。それは別段明るくもなく、ましてや発狂するほどの発光を伴うではない。ということは恐らく今の自分はサンクタではない。つまりアークナイツの世界へ来たわけでないということになる。

 

 ひとまず安心した。世紀末に説明なしかつ身一つで放り出されるのは御免被りたいし、あんなポストアポカリプスで鉱石病に罹らず生きるのは危機感が薄い俺には無理だ。

 では俺がいるこの世界はいったい何なのか……と言っても、アークナイツじゃない時点で答えは出ている。触ろうとしても手をすり抜け、眩しくもなく色のついた幾何学模様。そんなもの、自分の記憶には1つしかない。

 

「ってことはヘイローだよな、つまりここってキヴォトス?」

 

 キヴォトス。前世でそれなりにやっていたゲーム『ブルーアーカイブ』の舞台である学園都市である。

 この都市の特徴はいくつかあるが、一番大きいのは学園都市の生徒はみんな女の子であることと、それ以外の登場人物がロボだったりワンちゃんだったり人外であることだろう。そしてなにより……

 

「え、これから銃握ってドンパチ賑やかにやらなきゃいけないってこと? 噓でしょ?」

 

 登場人物の大半が日常的に銃を携行していて、いたるところで当然のように銃撃戦をやっているある意味世紀末な場所であることだ。

 

 

 

 キヴォトスに来てしまったという現実にしばらくフリーズしてから数分。氷が解けてからいろいろと今いる部屋を探してみたところ、この体及び現状についての情報がひとまず集まった。

 

 『(そそぎ)レンコ』。それが今の俺の名前……らしい。正直学生証を見てみただけではあまり実感はわかないが、スマホに入っていたモモトークの名前と一致していたのを見るに確定だろう。ちなみに所属はヴァルキューレ公安局の1年だった。……何でこう、情報がまだお出しされてない学校に来てしまったのか。これではなんとなくわかる程度にはあるブルアカ知識が活かしずらい。

 

 そして、重要なのが今のキヴォトスの状況だ。インターネットやSNSを確認した感じ、まだ先生はキヴォトスに来ていないようである。秘密裏に来ていたなら情報は漏れていないだろうが、連邦生徒会長に関する記事や本人の肉声が入った音声が直近1週間で見つかったあたり、そもそも連邦生徒会長の失踪自体がまだ起きていないようである。

 念のため動画サイトも確認してみたが、クロノススクールによる連邦生徒会についての特集やカイザーコーポレーションといった名前を目にすることこそあれど、「不法行為が増加している」だのと言った、先生が最初に聞くようなニュースは見受けられない。ついでと言っては何だが、百合園セイアの無事も確認できた。つまり、

 

(原作はまだ始まってないし、ミカはまだセイアに襲撃をかけていない……か)

 

 今日が非番なのを確かめて、冷蔵庫の作り置き総菜を電子レンジにかけながらそう考える。

 原作前の、つまり先生が赴任する前の状況やイベントについて、自分が持ちうる知識は微々たるものだ。

 ……そもそも先生が来る前の話なんて1.5周年から参加したライトユーザーの自分は知らないし、仮にイベントやメインストーリーであったにしても、エデン条約を3章24話、カルバノグを1章までしか読めていない以上、それ以降のメインストーリーで語られているのなら自分が知り得ているはずがない。

 

 だがこれは裏を返せば、この間に起きそうなイベントで重要なものはなく殆どは無視できるということにもなる。当然、ヴァルキューレが巻き込まれるイベントがあったならばそれにはほぼ強制参加になるだろうが、それ以外なら好きに動けるということだ。

 

 これは言わば原作開始までの準備期間。スムーズに世界が回って推しと先生の生活を見守るためにある程度準備しておくべきタイミングだと自分は受け取った。

 

(ある意味最高のタイミングかもな……)

 

 作り置きのナスの揚げびたしを白米とともに頬張りながら思う。

 準備と言っても本格的に介入するつもりは今のところない。過度な介入でこの青春の物語(Blue Archive)が木っ端みじんになっては本末転倒だし、何より自分の手で介入できる範囲にも限度がある。あくまで在りうるかもしれない原作との相違、いわゆるイレギュラーに対応するための介入だ。出番がないならそれに越したことはない。

 というかゲマトリア、特にあの永遠の淑女(笑)に捕捉されたが最後、自分が反転しかねないので下手に悪目立ちするのは悪手だろう。

 

 とはいえ、介入するにしても介入方法はどうするべきか。先生に取り入ったところで恐らく先生は一人でアビドスに向かうだろうし、そもそも、公安局が介入できる範囲によってはアビドスやミレニアムの事件に参戦できない可能性が高い。

 

(いっそのこと先生直属部隊とかになることができれば、それじゃなくともシャーレに常駐できればなぁ……)

 

 なんて、炭水化物で活性化した脳にぶっ飛んだ考えは浮かぶものの、そのアイデアの実現は公安局の1年生には厳しい。というよりシャーレ私設兵団とか絶対にいけすかない陰謀ピンク(不知火カヤ防衛室長)が認可しないだろうし。

 以上の点を踏まえると、取れる手は一つ。

 

(ゲマトリアやほかの学園に疑念を抱かれない程度に、偶然を装って先生に助太刀する。これしかないか)

 

「んくっ、んくっ……けぷっ。ごちそうさまでした」

 

 味噌汁を飲み干し、ぱちんと手を合わせて食材に感謝。そして今できることを再確認。

 目下の課題は、自分の実力の把握とそれ相応のレベルまでの強化。少なくとも銃に関しては元の世界でエアガンやガスガンをちょっと弄ってたくらいであり、実銃の反動とかわからないので慣れが必要だろう。それ以上に自分の体が前とはまるきり別なのだ、まずはこっちに慣れるところからか。なんにせよ、原作が始まるまでにどこまで強化できるかは、自分次第だ。

 

「……それはそうとこの総菜美味しかったな、あとで自分でも作ってみるか」

 




誤字脱字報告及び「ここストーリーで言及あったよ」っていう指摘は大歓迎です、むしろドゥンドゥンください
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