この素晴らしいエビマルに祝福を!   作:エビマルをすこれ

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デストロイヤーの終焉と最高の魔法使い

 

 

 倒したと思った敵の奥の手によって再び窮地になる。そんなよくある展開で、アクセルの冒険者達は阿鼻叫喚の地獄絵図に陥っていた。

 冒険者たちの間では、「もう街を捨てて逃げるしかねぇよ!!」だの「もうだめだぁ...みんなここで死ぬんだぁ...」といった全てを諦めた声や、「ずっとお前のことが好きだったんだ!!」「ごめんなさい。生理的に無理」「グハァッ!!」と儚く散っていく者の声で溢れていた。

 

 既に辞世の句を読み始めたものもいるそんな中、あるベテラン冒険者が高々と剣を掲げた。彼はレベル30を越え、もうすぐ40に届くにもかかわらずアクセルの街に残っている変わった冒険者だと女性たちの間で囁かれているものだった。

 

「お前ら聞けぇ!!!...俺は行くぞ!!この街には守るべきものがあるだろう!!!お前ら忘れたのか!!!」

 

 その言葉に、周囲の冒険者がハッとする。

 

「明日死ぬかも分からない、世間では荒くれ者と後ろ指指される俺たち冒険者を暖かく迎えてくれた!!毎日武器を持つ理由をくれた!!そんなみs..街を守らねえで何が冒険者だっ!!!」

 

 その言葉に多くの冒険者が、自身の得物を強く握り治す。

 

「ここが正念場だ!!勝って今日もいい夢を見るぞー!!!」

 

「「「「オオオオオォォォォォォ!!!」」」」

 

 今、アクセルの冒険者がひとつになった。

 

 

 

「やるしかないね、えび先輩」

 

「あぁ...はい」

 

 確かにとても良い演説だった...守りたいものが娼館でなければ。ただまあ、これでみなが一致団結するならば何ら問題は無い。俺もデストロイヤーに乗り込む準備をしよう。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「狙撃ッ!!」 「狙撃ィ!!」「狙撃!!」「ソゲキッ!!」

 

 狙撃スキルを持つものたちが次々とロープのついた矢をデストロイヤーの上へ放つ。それがしっかりと抜けないことを確認して前衛職のものたちがデストロイヤーへと乗り込んでいった。

 

 俺は師匠と共に最前列に陣取っていたため、一番乗りでデストロイヤーに搭乗することができた。 周囲を見渡すと、学校の校庭程の広さに戦闘用ゴーレムが一定間隔に並んでる。その奥からは多くのバリスタがこちらを向いており、その口から矢が一斉に発射された。

 

『リフレクト!!』

 

 しかし矢は師匠の前に展開された結界により跳ね返され、それぞれの砲身へと帰って行った。

 

「...今のは?」

 

「飛び道具を反射する魔法。今のでバリスタは全部破壊できたっぽいね」

 

「もっとムカつく主人公っぽく」

 

「飛び道具を反射する魔法で矢を跳ね返しただけだが?...ぼくまたなんかやっちゃいました?」

 

「60点」

 

「うるせえ、ゴーレム来てるよ」

 

 目の前からは右手にサーベル、左手に小弓、モノアイで4本足のゴーレムがこちらへ向かってきていた。

 

「...師匠あれ見た事あるんですけど」

 

「1ターンで2回行動してきそうだね」

 

 キラーゴーレムから放たれた弓を掴んで捨てる。接近してきた個体の回転斬りを躱して拳で殴り飛ばす。思っていたよりも固くない。弓矢にさえ気をつければアクセルの冒険者でも難なく倒せるだろう。

 

 背後からは続々と冒険者が登ってきており、その中には魔力切れで倒れているめぐみんを抜いたカズマパーティもいた。

 

「おいダクネス見ろ!!キラー〇シンだぞ!!あれ持って帰りたい!!」

 

「おいカズマ!?何めぐみんみたいなことを言ってるんだ!?今はアクセルの街を守るために集中してくれ!!」

 

「ちくしょう、こんな時に限って正論言いやがって!!おいエビオ!!何体かなるべく綺麗に壊してくれ!!アクアにくっつけてもらって飾るから!!!」

 

 まさかのダクネスに正論を説かれながらも、あのゴーレムをフィギュアとして飾ることは諦めていないカズマ。仕方なしに剣を抜き、何体かを別々の切り方で倒しカズマの方へ転がす。

 

「ありがとうエビオ!!やっぱりお前は良い奴だ!!」

 

 泣く程嬉しかったのだろうか。残っているゴーレムはそれぞれ各冒険者パーティーによって包囲されており、殲滅が完了するのも時間の問題だ。ならもう奥へ進んでもいいだろう。

 

「師匠、行きますよ」

 

「あいよ」

 

 内部へ続くドアを蹴破り中へ進む。中では再びゴーレムが待ち構えていたが、たまたま抜いていた剣で斬り伏せ奥へと進んで行く。

 

「...ぼくの仕事ないんだけど」

 

「火力高い魔法だと周り崩壊しそうじゃないですか」

 

 不満気な師匠を連れ中を探索する。

 操舵室やゴーレムの生産ライン、食料庫など多くの部屋があったが、そのどこにも人の気配はない。部屋の中は不自然なほどに整っており、どこにも人が触れた形跡がない。埃が溜まっていたり蜘蛛の巣があったりする訳では無いのが余計に不気味だ。

 

「エビ先輩、これ」

 

 師匠が指を指しているのは清掃用ゴーレムと思われる、円盤型のロボットだった。なるほど、これらのロボットが機内の環境を整備していたのか。それに円盤型のこれは日本の俺の部屋にも同じようなものがある。後で持って帰ろう。

 

「おーい、見つけたぞー!!!」

 

 少し離れたところから冒険者の声が聞こえた。

 

 

 広い空間を師匠と迷子になりながら声が聞こえた場所に向かう。

 たどり着いた時には多くの冒険者が集まっており、その全てが拳を握りしめ、表情に怒りを浮かべていた。

 

「....何があったんです?」

 

「.....」

 

 無言で一冊の手記をこちらに渡すカズマ。正直読みたくないが、師匠は気になっているようなので師匠に渡して読んでもらう。

 

「えーと...まう月まう日、 国のおえあいさんが」

 

 無言で師匠から手記を奪い取る。

 

「まって!!ちゃんとやるから!!」

 

 却下。気を取り直して俺が読み始める。

 

「〇月‪〇日、国のお偉いさんが________」

 

 

 

 

 読み終わる頃には師匠の顔にも怒りの感情が伺えた。俗に言うアルマルモッチーンである。

 

 手記の要点をまとめるとこうだった

 

 とある大国の研究者に機動要塞を作れとの命が下ったが、資金不足とやる気不足でやけくそになり、蜘蛛を叩き潰した紙を提出したところ採用された。

 

 なんだかんだで完成してしまった機動要塞だったが、この設計で動き出すかは責任者の著者でも不明だったようで、これまたやけくそで酒盛りをし、酔った勢いで動力源に根性焼きを入れた。

 

 結果暴走。機体は誰にも止められなくなり、世界を踏み荒らすデストロイヤーが完成。そんな中で著者はなんの未練もなく成仏していたそうだ。

 

「なめんなっ!!」

 

 師匠が怒りを堪えきれずに、金属製の壁を殴りながら叫ぶ。震えながら屈んだ。とても痛そうである。

 

「アクアさんにヒールもらいましょうね」

 

「自分でできらぁ.....」

 

 

 

 ◆◆◆◆◆◆

 

 

「ここが動力炉か」

 

 機動要塞デストロイヤーの最奥で煌々と光を放ち続ける伝説の宝珠コロナタイト。デストロイヤーの機能が停止した今、その熱エネルギーは行き場を失い膨張を続けていた。これをどうにかしない限り、デストロイヤーの爆発は止めることができない。

 

「どうにかしろったって...」

 

 現在この場には俺と師匠、全体の指揮を取っていたカズマに女神のアクア、そして魔法のスペシャリストとしてウィズが残っていた。他の冒険者達は既に脱出しており、外から様子を伺っている。

 

「なあエビオ、どうにかする手はないか?」

 

「俺にはちょっと厳しいですね..師匠どうです?」

 

「うーん...ぼくの氷魔法じゃ芯まで冷やすのは無理そうだし...封印も厳しそうかも....」

 

「アクア!!お前の女神的なパワーで何とかならんのか?」

 

「えぇ私!?悪いけど無理よ?悪しき者の力を抑えるとかならできるけどただの鉱石封印するのは専門外ね」

 

「なんだよ役たたず」

 

「なぁんですってぇ!?」

 

 こんな時にも仲良くケンカを始める2人を放っておき、視線をウィズに向ける

 

「ウィズさんはどうですか?」

 

「一応手がないことはないのですが...」

 

「ほんとかウィズ!?」

 

「テレポートでコロナタイトをどこかへ送ってしまう方法なんですが....今私が登録している場所はどちらにも人が多くいまして...ランダムテレポートだとどこへ飛ぶか不明なので危険なんですよ...」

 

「まじか....」

 

「師匠のテレポートは?狙ったところに飛べませんっけ?」

 

「予めマーキングしてれば行けるけど、してないなら近くにしか飛べないよ。できるのはここから外に出すくらい」

 

 うーむ.....ん?

 

「外に出てから思いっきり上に打ちあげればいいんじゃないですか?」

 

「おぉ!!...いや、爆発のタイミングが分からなくないか?」

 

「強い衝撃を加えたらすぐ爆発しそう....」

 

「じゃあダメかー...もうワンチャンランダムテレポートで良くないですか?」

 

「...そうだな。ウィズ、お願いできるか?」

 

「えぇ!?ですが..」

 

「大丈夫だ!全責任は俺が取る!俺って結構、運がいいんだぜ?」

 

「...分かりました。『テレポート』!!!」

 

 淡い光に包まれ、コロナタイトは姿を消した。ようやく一段落と言ったところだろうか。

 

「よし!!これで無事一件落着ね!!残ったデストロイヤーの残骸はギルドに何とかしてもらうとして、今度こそ帰って宴会をするわよ!!30億が手に入るんだがら高級シュワシュワ開けてもいいわよねぇ?」

 

「お前は...まあいいか。もう大丈夫だろ」

 

「2回目はさすがにないですよね」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....

 

 ...デストロイヤーが揺れ始めた。

 

 

「....なあエビオ。これなんだと思う?」

 

「地震じゃないですかね」

 

「そっかー。じゃあ早く机の下にもぐらないとなー」

 

「ん?この世界に地震はないわよ?砂漠地帯の砂の王が地下を通ってるとかならともかく」

 

 アクアがそんなことも知らないのかと言いたげにこちらへ説明をくれた。

 

「じゃあこの揺れはなんだ説明してみろ駄女神!!」

 

 カズマに怒鳴られ、ようやく顔を青くしていくアクア。

 

「とりあえず師匠、みんなを外に送って貰っていいですか」

 

「....あいよー。『テレポート』」

 

 

 

 師匠の魔法で外に出ると、多くの冒険者が不安そうにこちらを見ていた。

 

「おいカズマ無事か!!コロナタイトはどうなった!この揺れはなんだ!?」

 

「落ち着けダクネス、コロナタイトは何とかなったんだが揺れはわからん!」

 

 振り返ってデストロイヤーの残骸を見ると、数箇所の装甲が赤熱化しており、その範囲が徐々に拡大してきている。

 

「お、恐らくですが、デストロイヤー内部に溜まっていた熱エネルギーが外に漏れ出てきているんです。この調子だとアクセル一帯が火の海になるかと...」

 

 一難去って、また一難去ってまた一難。くどい。いい加減地球破壊爆弾の出番だろうか。

 

「エクスさん、魔力を分けてくれませんか?」

 

 ウィズさんが何かを決意した顔で俺に告げた。きっとドレインタッチで魔力を回復しあれを消し飛ばすのだろう。彼女に取ってこの決断は自身の秘密を明かし、もうこの街にはいられなくなることを承知してのものだ。彼女がどれだけこの街を愛しているのかが伺えるが...

 

「俺が死ぬので勘弁してください」

 

「えぇ!?」

 

 何を隠そうこのエクス・アルビオ、魔力が一切ない。0である。元いた世界でもドレイン系の魔物に何度殺されそうになったものか。魔力がないため初手から生命力を削ってくるドレイン系の魔法は、この英雄の数少ない弱点でもあるのだ。

 

「ウィズ!ドレインタッチなら俺も使える!!あっちの自称女神から吸ってウィズに送れば..」

 

「真打登場!!」

 

 突然背後から声が聞こえた。全員が驚き後ろを振り向くと...

 よく見かけるモヒカン頭の冒険者が立っていた。

 

「....あの、もう大丈夫です。下ろしてもらっていいですよ」

 

 その男の背中からめぐみんが降りてきた。

 

「聞けばアレを消し飛ばせる程の大魔法使いをご所望のようですね!!いいでしょう!!さあカズマ!私に魔力を..」

 

「却下」

 

「...へ?」

 

 美味しいところをかっさらいに来ためぐみんに待ったをかけたのは我らが師匠、アルス・ザ・ビッグであった。

 

「おい、今ぼくのことバカにしたか?」

 

「...なんの話ですか師匠」

 

「何を言うのですかアルス!!これは私の仕事で」

 

「カズマさんが皆の前で魔族のスキルを使うのはまずいんじゃない?わざわざそんなに危ない橋を渡る必要はないよ。アレを消し飛ばすくらいぼくにもできる」

 

「んな!?...とうとう正体を表しましたねっ!!美味しい所を持っていこうとしてもそうは行きませんよ!!カズマ!!何か言い返してやってください!!」

 

「残念ながらアルスが正しい。お願いできるか?」

 

「もちろん。皆下がってて」

 

 めぐみんがギリギリと歯を食いしばりながらカズマに引き摺られて行った。

 

「出番が来て良かったですね師匠。俺もあっちで見てます」

 

「....待って」

 

「はい?」

 

 師匠に呼び止められたが、デストロイヤーの方を向いたままこちらを見ようとしない。

 

「....お前はぼくの弟子なんだからそばで見てて」

 

「...分かりました師匠。頑張ってください!」

 

 師匠は近くにあった木の棒を拾い、それを軸に魔法陣を展開する。

 

「『必壊代償』『魔力増強』『威力強化』『爆発強化』『詠唱強化』『範囲増加』『耐久変換』『多重詠唱』...今できるのはこれくらいかな」

 

 ただの木の棒に8つものエンチャントを重ねがけする師匠。本来ならエンチャント容量を超えたエンチャントをすると、装備が崩れてしまうが、それを無理やり成立させるエンチャントが『必壊代償』だったはずだ。一度の使用の後崩壊するのを条件に無理やりエンチャント容量を増やすそれは、向こうの世界ではメジャーなものではあったが、使える者は限られていた。ここ数日で実用レベルまで理解を深めたのかと思うとなかなか恐ろしいものを感じる。

 

「アルス・アルマルが命ず。黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。

 

は?

 

 めぐみんのドスの効いた声が聞こえた気がした。師匠の周囲に魔力の風が吹き荒れ、周囲に魔法陣が乱立する。

 

覚醒の時来たれり 無謬の境界に堕ちしことわり 無業の歪みとなりて現出せよ....エビ先輩、先輩の師匠にできないことはないよ」

 

 イタズラっぽい笑みを浮かべこちらを振り向く師匠。

 つられて思わず笑ってしまう。

 

「穿てっ!!エクスプロージョン!!!!」

 

 即席の杖から放たれた光はデストロイヤーにぶつかり、一拍遅れて本日3度目の爆炎が立ち上る。それは前の2発に比べれば威力も範囲も劣るが、正真正銘の爆裂魔法だった。

 

「...エビ先輩、今の魔法は何点ですか?」

 

 師匠は立ち上る煙を見つめたままこちらへと問いかけた。

 

「百点満点 あげますよ。さすが俺の師匠です」

 

 百点満点の魔法使いは、百億万点の笑顔で振り返った。




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