この素晴らしいエビマルに祝福を! 作:エビマルをすこれ
騒々しいギルドの中、俺と師匠はテーブル席に向かいあって作戦会議をしていた。
「だから、師匠の魔導書はそこそこの値段で売れるはずなんですよ!」
「嫌に決まってるだろぉ!?第一、僕これがなかったらただの「顔が大きい」女の子...いまなんつったぁ!?」
理不尽にも目の前の師匠がキレながらつかみかかってくる
「ていうか、そもそもあの女神達がお金の説明もないままここ世界に送って来たのがおかしいと思うんですよ!ねえ!師匠!?1回落ち着いて!魔法の詠唱やめて!」
冒険者登録に手数料が必要なことが判明したのが数分前、冒険者登録しないと仕事を受けることが出来ないのに、どうやってお金を手に入れれば良いのか、長い間話し合っていた
「じゃあこうしましょう!じゃんけんで俺が負けたら師匠が近くの人にお金を借りてください!で、俺が勝ったら師匠が行きましょう!」
「やっぱ借りるしかないかなぁ〜...え?今なんて言った?」
「じゃあ行きますよ〜じゃーんけーん...」
「騙されねぇからな!?」
勘のいい魔法使いは嫌いだよ。
そんなアホなやり取りをしていると、1人の銀髪の少女が近寄ってきた
「初めまして!私はクリス!なにかお困りかな?」
初手からグイグイ来る感じ、これはあれだ。陽キャと言うやつだ。
「...」
「...」
「えーと....」
僕も師匠も喋れないで黙っていると、すごく居心地の悪そうにしたクリスが話を切り出した。
「登録料が払えなくて困ってるんだよね!?ここは冒険者の先輩として、クリスさんが払ってあげるよ!」
「えぇ!?いいんですか?ありがとうございます!」
「....」
大きな頭を下げながらお金を受け取る師匠。だがそれよりも気になることがあった。
「ほら、えび先輩もお礼いいなって!」
「...クリスさん前に1度会ってません?なんかどこかで見かけた気がするんですが...」
「えっ!?いや!?会ってるわけないよね!?ここで初めて会ったんだもん!?そ、それじゃ私は行くから!!良い冒険者ライフを!!」
急ぎ足でこちらをチラチラ見ながら早足で去っていったクリスは勢いよく柱にぶつかった後、姿を消した。
「行っちゃったね。えび先輩が変なこと言うから怖がって混乱しちゃってたじゃん!この世界に来たばっかなんだから会ったことある訳ないじゃん!」
大きな顔をさらにふくらませながら、師匠は冒険者登録に向かってしまった。
確信は持てないが、クリスからは微かに神格のようなものを感じた。それにあの銀髪....やはりどこぞの先輩女神よりもずっと女神をしてると思うのだが?
いつか恩を返さなくては
*****
「では、この水晶に手を置いてください、」
「こう?」
師匠が手を置くと、水晶は淡く光だし...
「はい!もう大丈夫ですよ!アルスさんは魔力が高いようですね、ウィザード向きのステータスですよ!」
「まあ、そんなもんでしょ。」
師匠の実力は初級冒険者以上中級冒険者未満といったところだろう。まだこの世界の冒険者のレベルを確認したわけでは無いが、この街にいる多くの冒険者が初級冒険者ならば、だいたいの見立ては合っていると思う。
元々師匠、アルス・アルマルは別の異世界の見習い魔法使いであり、魔法は師匠が持っている魔導書のページを消費することにより発動する。対してこの世界の魔法は一人一人の持つ魔力を消費することで発動できる。
つまりこの世界の魔法を覚えれば、師匠の一日に放てる魔法の量は倍近くまで増える。なかなかに頭のおかしい強化では無いだろうか。
「あれー?師匠しょぼくないっすか??」
「うるさいなあー別にいいだろぉー。」
まあ褒めないんですけど。
「では、エクスさんお願いします。」
エクスが水晶に手を置くと、水晶は眩い光を放ち..
「.....おや?冒険者カードのステータスの欄が...文字化けしてますね」
魔道具から出てきたカードを見ると、ほとんどの文字が文字化けしていた。唯一読み取れるのは名前くらいだろうか
その後何度か試して見たが結果は全て同じであった。仕方が無いので文字化けしたカードをそのままもらうことになった
「カードにつきましては、最新版の魔道具になった際に無料で交換させていただきます....大変申し訳ありませんでした..」
ギルド職員が申し訳なさそうに頭を下げるが、俺自身はあまり気にしていないためすごく気まずい。適当に相槌を済ませて退散した。
「それじゃあ師匠!早速クエストに行きましょう!」
「なんだかんだ楽しそうだねエビ先輩」
俺と師匠は、クエストボードの横で腕を組み意味深に笑いかける、モヒカンの先輩冒険者にならい、ジャイアントトードの討伐へ向かった
******
「師匠おおおぉぉぉぉ!?笑ってないで助けてええぇぇぇ!?」
「頼み方ってのがあるよなぁ〜?英雄さぁ〜ん?」
数多の敵をねじ伏せてきた英雄パンチを物ともせずに反撃を仕掛けてきたカエルから全力で逃げる。少し離れた丘の上にいる師匠に助けを求めが、全然助けてくれない。絶対に性格が悪い。
「いや、打撃効かないとか聞いてないって!ちょっ!?手がぬるぬるして剣が抜けない!?師匠ぉ!?アルス様ああぁぁ!!」
「しょうがないなあえび先輩は、『ボルト』!!」
師匠は魔法を唱えた。
使った魔法は雷の低級魔法ボルト、狙った範囲に発動する範囲攻撃である
そう、範囲攻撃である。
「いや、師匠その魔法って..ぎゃああああぁぁぁ!!??」
結果少し焦げた
「お前ほんと覚えとけよ!?」
「助けてもらってお礼も言えないのか、これだから英雄は、」
エクスは激怒した。かの邪智暴虐な魔法使いを必ず懲らしめねばと決意した。だが彼女の後ろに大きな影が見えた。
「え、あれって...師匠危ない!カエル来てます!!」
「そんな簡単に騙されるわけねぇだろうがよぉ!助けたお礼として今回の報酬の取り分は..ヒャブッ!!」
「あっ、」
頭からぱっくりいかれ、カエルの口から足が生えた謎の生物が生まれた。その足は激しく暴れていたがしばらくするとカエルの肉体に電撃が走り、カエルも足も動かなくなった。
「...」
自らの魔法で感電し、意識を失ったままカエルに刺さった師匠をを放置し残りのカエルを片付けることにした。
「これで最後っと..」
8体ものカエルを倒した後、普段よりも頭が大きくなったジャイアント師匠を普段の師匠に戻すことにした。
「師匠ー、引っ張りますよー」
粘液まみれで白目を向いている師匠が出てきた。非常に生臭い。背負って帰るのは論外だし、起こすのも面倒なのでカエルの回収に来たギルド職員に頼んで、荷車に一緒に乗せてってもらった。
*****
ギルドにて、報酬を受け取り軽く食事をつまんでるところに大衆浴場帰りのほかほかの師匠が帰ってきた。
「ふざけんなよお前ぇ!目が覚めたらカエルと一緒に運ばれてたんだけどぉ!?」
「まあまあ、落ち着いてくださいよ師匠、これ師匠の分の報酬です。師匠の分の料理も頼んどいたのでそろそろ来るはずですよ」
「お、おう?なんかやけに素直だなあ。でも報酬もちゃんと最初に計算した通り入ってるし....もしかして僕の魔法で性格が変わっちゃた?」
ブツブツとアホなことを言っている師匠には、俺の倒したカエルの状態が良かったため、少し多めに渡された報酬のことは黙っていよう。
「そんなことより、この後どうしますか?さすがにクエストをもうひとつ受けるのは時間が足りないと思いますし..」
「じゃあこの街を探検しようよ。これから過ごすわけだし、どんな場所があるのか知っておきたいんだよね。」
「あぁーいいっすね、じゃあそれで行きましょう。」
なお余談ではあるが、今の話の間にエクスはアルスの唐揚げを2つ盗み食いすることに成功している。
****
「今日はこの辺でいいんじゃないですか?もうだいぶ周りましたよ?」
「そうだねー、じゃあこの辺で...あ!待って最後にあそこだけ!」
そう言って駆けていく師匠の方向に目を向けると、『ウィズ魔道具店』の看板があった。
中に入ると綺麗な内装に様々なポーションや魔道具があり、魔道具の知識がない僕でも楽しめそうな店だ
「あれ?店員さんがいないねぇ。」
「ほんとだ。奥にいるのかな、こんばんエーーーーーーーックス!!」
「うるさ!!」
師匠に肩を殴られたが、甲冑を思いっきり殴ってしまった為、師匠は手を抑えながら縮こまる
少しして、奥からパタパタと1人の女性が出てきた
「はぁ〜い、すみません、在庫の管理をしてて..何か御用ですか?」
「いえ、特にないです。」
「??」
あからさまに頭にクエスチョンマークを浮かべる女性。そりゃ大声で呼び出されてなんでもないですと言われたら誰だってハテナを浮かべるだろう。
俺だって浮かべる。
「ええっと、ウィズさん?でいいんですか?」
目の端に涙を浮かべたままの師匠が尋ねる
「はい!ウィズ魔道具店店主のウィズです!」
「このポーションの効果を教えて欲しいんですけど..」
「そのポーションは、たとえ魔力を使い切っていても、魔力を全回復できる優れものなんです!!」
「えぇ!凄すぎませんか!?」
「変わりに飲んでから24時間は魔法は使えなくなりますけどね」
「....」
師匠はそっとそのポーションを置いた。この店がどんな店なのかを察したのだろう。
その後は軽く談笑をした後帰ることにしたのだが、
「師匠先に出ててください」
「え?なんで?」
「いえ気になる商品があったので」
「えぇ?じゃあ外で待ってるね?」
そう言って師匠が出てったのを確認した後、
ウィズの方へ向き直り、
「一応確認なんですけど、ウィズさんは人間ですか?」
「!?....気づいてたんですか?」
「はい、外にある看板はかなり年季が入っているのにウィズさんの見た目が若すぎるので何となく..まあ、あとは魔道具店の店主にしては強すぎるので」
店に入った時から感じていた違和感。始まりの街の魔道具店なのに、最難関ダンジョンのボス部屋にいるような感覚、目の前の女性がこの世界の魔王だと言われてもおかしいとは思わない。それでいてここは安全だと自分の勘は告げているもんだから頭がパニックになりそうだった。
「でもウィズさんは人を襲いませんよね?」
「..えぇ。私はこれまでも人を襲ったことはありませんし、これからもするつもりはありません。」
「じゃあ大丈夫です。あとさっきのポーション貰ってもいいですか?」
「あっはい!10000エリスになります!」
詳しい理由は分からないが、敵でないと言ってくれたので帰ることにしよう。
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外に待たせていた師匠と合流し、宿屋を探し始めたが...
「なぁんでどこも満員なんだよぉ..」
ウィズの店を出た時点で既に日は暮れていたため、宿屋はどこも空いていなかった。仕方なく先輩冒険者にならって馬小屋に泊まることにした。