この素晴らしいエビマルに祝福を!   作:エビマルをすこれ

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究極の魔法の使い手

 寝泊まりするために借りた馬小屋の窓から朝日が射し込む。

 馬房は少しづつ明るくなり、それに合わせて意識が徐々に覚醒していく。藁の中に埋まった体を引き上げ、大きく背伸びをすると全身からバキバキと景気のいい音が鳴った。

 

「...体痛ぁ...藁ってこんな寝心地悪いのか」

 

「...いや、甲冑着たまま寝たからじゃない?」

 

 隣を見ると師匠は既に目を覚ましており、寝癖なども直したあとのようだ。

 

「エビ先輩も早く準備してね。クエスト受けて、今日こそ宿に泊まるよ!」

 

 

 師匠が急かしてくるので、急いで準備をすることにした。

 

 

「まずはポーチからタオルと桶とドライヤー...あとはね〇ねるねるねかな」

 

「ちょっとまって!?今どっから取り出したの?!」

 

「腰のポーチが見えないんですか?」

 

「見えるからだよ!!そのサイズのポーチから桶とドライヤー出てくるのおかしいだろ!?あとなんでねるねる〇るね持ち歩いてんだよ!」

 

「あれ師匠、アイテムボックスって知らないんですか?装備とか食料はこの中に入れてるんですけど」

 

 あとねる〇るねるねは常備食だろ。

 

「そんなことできるの!?」

 

「英雄ですよ?できるに決まってるじゃないですか。魔王討伐するのにでかい袋持ってくわけにもいかないでしょう」

 

 

 納得のいかない顔でこちらを見続ける師匠を後目に準備を続ける。てかドライヤーはコンセントがないから使えないじゃん..

 

「師匠ー、この桶に水ください」

 

「ああはい。『クリエイトウォーター』」

 

 師匠の手からチョロチョロと水が注がれる。先日のカエル討伐で得たスキルポイントを使って初級魔法を覚えたのだ。師匠の世界の魔法は基本的に攻撃用の魔法なので、このようにちょうどいい量の水を出すことができない。最低値でハイドロポンプぐらいの威力だ。

 

 

 

 一通り準備を終えたので冒険者ギルドへと向かう。

 まだ朝が早いが通りには既に多くの人がおり、みなそれぞれの店の準備や仕事場への移動を始めていた。

 

 たまに路地に目を向けて見るとレンガの地面に気持ちよさそうに眠る冒険者を見つけることが出来る。遅くまで酒盛りをしていたのだろう。俺は酒が弱いので飲まないが、ああいう手合いはどこの世界にもいるようだ。

 

 酔いつぶれたかつての仲間が、翌日身ぐるみを剥がされ、髪型をモヒカンに整えられ、トゲトゲのカタパッドを装備させられた状態で発見されたのを思い出す。

 ちなみにカタパッドは呪われており1週間外れなかった。

 

 そう考えるとこの世界の治安はそこまで悪くないかもしれない。まだ始まりの街しか見てないのでなんとも言えないが。

 

 

 そんなこんなで冒険者ギルドに着いた。この時間からギルドにいる冒険者は少なく、いるのはこれから遠くへ遠征するのか多くの荷物を抱えた人達ぐらいだった。

 俺と師匠は空いている席に座り、俺はカエル定食を、師匠は朝摘みサンマ定食を注文した。

 

 

「朝摘みってどういうことだと思う?」

 

「新鮮ってことじゃないんですか?」

 

「この世界では魚を捕ることを摘むって言うのかね」

 

「おや知らないのですか。サンマは畑で採れるんですよ」

 

 

 ふいに横から声をかけられ、顔を向けてみるとそこには、 全体的に赤と黒を主調とし、目には眼帯、ショートカットでとんがり帽を被った赤い目の少女が、杖にしがみつきながら立っていた。

 

 サンマが畑で採れるとかいうとんでも発言も気になるが....

 

「ええっと..あなたは...?」

 

「フッフッフ、よくぞ聞いてくれましたね!我が名はめぐみん!紅魔族随一の魔法の使い手にして!爆裂魔法を極めし者!そしてここ2日程食べるものがなくそろそろ限界な者!」

 

 マントをバサリと翻し、かっこいいポーズを取りながら高らかに自己紹介を終え、そのまま倒れてしまった。

 ちょうど注文したメニューが到着したので仕方なくカエル定食を提供することにした

 

「ありふぁふぉうございふぁふ!!!」

 

 目にも止まらぬ速さでなくなっていくカエル定食。

 めぐみんは食べ終えて尚まだ食べ足りぬ顔をしていた。

 改めて俺のカエル定食とポテトの盛り合わせを注文する。

 

「それでめぐみんさんはなんで2日も絶食状態に?」

 

「偉大な魔法使いになるためこの街へ来たのはいいものの、なかなかパーティーを組むことができなくてですね..」

 

「ぼくの見立てではかなりの魔力を持ってるように見えるんだけど、それでもダメなの?」

 

「方向性の違いですね。今まで組んだ方とことごとく考えが合わなくてですね。そのまま悪い噂だけが広まったと言いますか..」

 

 酷い話があったもの。才能あるものが活躍出来る場のないまま歴史に埋まっていくのはよく聞く話だが、聞いていて気持ちのいいものでは無い。できることなら力になりたいが...

 

「あいにくこちらのちんちくりんな師匠も魔法使いでして...」

 

「おい、今なんつった?」

 

「それなら心配には及びません。恐らく私とししょーさんのできることは違うでしょうし」

 

 それを聞いて師匠が少しムッとした。めぐみんに悪気はないのだろうが言外にお前にできないことが私にはできるぞと言われたのだ。

 

「兎にも角にも1度でいいのでクエストに連れてってくれませんか?ここで断られてしまうとまた乞食生活に戻りそうで...」

 

「まあいいんじゃないですか?ねえ師匠」

 

「ぼくは構わないよ。ぼくとえび先輩がいれば大抵のクエストはどうにかなると思うし。めぐみんさん1人くらい連れて行ってもなんの問題もないよ」

 

 自信たっぷりに言い切る師匠。余程さっきのめぐみんの言葉を気にしているのだろうか。

 

「ほほう、それは我が究極魔法への挑戦と受け取っていいだろうか!ならばよろしい!見せてあげましょう!我が爆裂魔法を!!」

 

 椅子に上り、目を紅く輝かせながら杖を振り回しポーズをとるめぐみん。この世界の魔法使いはみんなこんな感じなのだろうか

 

「めぐみんさん!暴れるなら外でやってください!次ギルドの備品を壊したら弁償ですよ!」

 

「あっ!すみません気をつけます!」

 

 椅子に上がったままペコペコしだすめぐみん。この世界の魔法使いがみんなこんな感じなら、それはきっと愉快で楽しいことになりそうだ。

 

 

 ******

 

 

 馬車に揺られながら目的地まで向かう。

 今回受けたクエストは、マンティコアとグリフォンの同時討伐。報奨金は50万エリス。カエルの討伐報酬が一匹約1万エリスだと考えると破格の報酬設定になっていると感じるが、周りの冒険者に言わせればいくら何でも安すぎるらしい。

 

 というのもこのクエストは、アクセルの冒険者が受けるには危険度が高すぎるため、ギルド側があえて報奨金を低く設定しているらしい。

 

 故にこのクエストを受ける時にギルド側から書類にサインを求められた。このクエストは冒険者側の意思で受諾したものであり、ギルド側は一切の責任を持たないというものだ。

 

 マウントを取り合いながらこのクエストを持ってきた魔法使い2人は今顔を青くして震えている。

 威勢が良かったのはサインをした時までだった。

 

「か、帰るなら今のうちだよめぐみん...」

 

「な、それはこっちのセリフですよアルス...帰りたいなら言ってくださいね...」

 

「ほら2人とも、もう着きますよ」

 

 目的地周辺は木々がなぎ倒され、地面がえぐれている。依頼主によると、長い間この場で2匹が縄張り争いを続けているらしい。

 

 目的地手前で馬車を止めてもらい、遠くへと離れてもらう。討伐が完了した際は魔道具で合図を送ることになっており、日が暮れるまでに戻らなければ討伐失敗と判断し、帰ってもらうことになっている。

 

 周囲を警戒しながら山道を進むにつれ、倒れた木が目立つようになってきた。

 

「止まって」

 

 師匠の指示で足を止め、指をさす方へ目を向けると、巣らしきものの中で眠るグリフォンがいた。幸いこちらは風下であり、距離も離れているため気づかれていない。

 

「ここは私に任せてもらおう」

 

 目を輝かせながらめぐみんが1歩前へ踏み出し、杖を掲げる。

 まさかこの距離から魔法を放つのだろうか

 

『黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう』

 

 めぐみんが詠唱を始めると、あたり一帯がひりついたような空気に包まれ、全身に重圧のようなものを感じる

 

『覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!穿て!エクスプロージョン!!』

 

 寝ているグリフォンの真上に無数の魔法陣が浮かび上がった。周囲に溢れる魔力がより一層膨れ上がった瞬間、耳をつんざく轟音が辺りになり響き、遅れて熱風とそれに乗った土や石が飛んでくる。

 

 爆炎が収まった場所にグリフォンはいない。それどころか巣ごと消し飛ばされており、二十メートル以上のクレーターのみが残されていた。

 

 究極魔法とは大言壮語ではなかったようである。

 師匠も目を見開いてめぐみんの魔法を見ていた。

 

「あのー、そろそろ起こしてくれませんかー...魔力を使い果たして立てないのです。」

 

 放たれた魔法の方に目を取られていて気づかなかったが、めぐみんは地に伏していた。とりあえず起こして近くの倒木に座らせておく。

 

「フッフッフ、どうですかアルス!!これが我が爆裂魔法!ですよ!!」

 

 既に勝ち誇った表情をするめぐみんだが、自身の周りを覆うように現れた影に気づかない。見上げると、人の頭が付いた獅子の体にサソリの尾とコウモリの羽が付いた生物、マンティコアが滞空していた。

 

 空を飛ぶモンスターは、自身の羽を使って飛ぶものと、自身に魔法をかけて飛ぶものの2種類がいると言うが、マンティコアは後者である。そのため周囲に羽ばたく際に起こる風は起きない。

 

「どうしてもと言うのなら、教えてあげてもいいですよ!!まあ、我が爆裂道は簡単に極められるものではありません...が...?」

 

 めぐみん、ここで影に気づき上を見上げる。再びこちらへ目を向けると、その目の端には涙が浮かんでおり、顔を青くしながら口パクで「タスケテクダサイ」と繰り返している。

 

「オイオイ、オレっちのらいバるノグリふぉんをヤッたのはオマエらか?別に構ワねエがヨォ!!アイツが居ねえト人間が攻めてキチマウよなァ!!」

 

 カタコトの言葉でこちらを威嚇するマンティコア。めぐみんの顔色は青を通り越して白くなっていた。

 

「エビ先輩はめぐみんを助けてあげて。あいつはぼくがやるよ。」

 

「オイオイオイ、舐められてンなァ!!」

 

 激昂するマンティコアをよそ目に、存在感を消しながらめぐみんの元へ向かう。そのまま叫びそうになっているめぐみんの口を抑え、その場を離れる。

 

『ライトニングボルト!!』

 

「危ねエ!?」

 

 師匠の放った雷撃は一直線にマンティコアへ向かうが、紙一重で躱されてしまう。

 

『ライトオブアロー!!』

 

 雷撃が当たらないとわかった師匠は、速度重視の魔法へと切り替えた。光に近い速度で放たれた魔力の矢は、マンティコアの目へと一直線で向かった。

 

「イッデェェェ!?」

 

 視界を潰されたマンティコアは地に落ち、暴れ回るが、既に近くに師匠はおらず、俺とめぐみんさんの近くへと来ていた。

 

「こっちを舐めてたから楽に済んだね。そしてめぐみん、あの素晴らしい魔法のお礼に、ぼくの今出せる最大火力の魔法を見せてあげるよ」

 

 師匠が手を前に突き出すと、魔導書が宙に浮かび、ひとりでにページが開き出す

 

『大地を穿つ炎の星よ、我が力の元に降誕せよ。メテオ!!』

 

 師匠の詠唱が終わると同時に、暴れ回るマンティコアの頭上に美しく、巨大な炎の塊が出現し、マンティコアへと降り注いだ。

 

 炎に飲み込まれたマンティコアは、1秒とその姿を保つことは出来ず、灰と化した。

 

 本来森の中で炎魔法を放つのはタブーだが 、師匠の放った魔法が周りへと飛び火することはなく、落ちた場所で燃え続け、そのまま消滅した。

 

 師匠はめぐみんの紅く輝く視線を背に受けながら満足そうにその場に倒れた。

 

 

 

 お前もか。

 

 

 

 その後は、先程のマンティコアの番と思われるメスのマンティコアが乱入してきたので、殴り倒したのち、泥だらけで眠る二人を抱えて馬車まで戻り、アクセルでクエスト完了の報告をした。

 

 

 地形破壊の補償として30万エリス程取られた。




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