この素晴らしいエビマルに祝福を! 作:エビマルをすこれ
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チュンチュンと小鳥がなく声で目を覚ます。
いい加減藁に埋もれて眠るのも嫌になってきた。細かい藁が鎧の中に入り込みチクチク気になってしょうがない。
馬小屋を出ると師匠がいた。師匠が頑なに泊まっている宿を教えてくれないので、別行動をする日以外はこうして馬小屋まで来てくれるのだ。
「えび先輩もそろそろ宿借りたらぁ?」
「えー、なんか汚したら怒られそうじゃないですか。だったら2人で家買いません?」
「はぁ!?家っておま、二人で!?」
急に挙動不審になった。何かおかしいこと言ったかな?
「はい。こうやって待ち合わせるのめんどくさくないですか?」
「待ち合わせではないけどねこれ。でもぼくは困ってないしなあ」
「いやいや、ちなみに師匠の宿にお風呂は?」
「ないけど...」
「部屋で魔法の研究とかできます?」
「できないね...」
「両隣の人がたまにうるさいって愚痴ってませんでしたっけ?」
「そうだけど....」
「だったら家買った方良くないですか?」
「たしかに...一理ある...のか?」
顎に手を当て、俯きながら考える師匠。これは近々家を買うことになりそうだ。藁の寝床からの卒業に胸をはずませていると、隣からドスッと音がした。見れば師匠と金髪の男がぶつかっていた。
「痛ってええええええええ!!骨が折れちまったぜ!!見てくれよキース!」
「本当だ!こりゃ大変だなダスト!!今すぐプリーストに見せに行かないと取り返しがつかないことになっちまうぜ!!」
師匠とぶつかってから、間髪入れずにダストと呼ばれていた金髪赤目の男が叫び、キースがリアクションをとる。
あまりにも1連の流れがスムーズなため普段から練習しているのか、よく人にぶつかって怪我をしているのだろう。
「だがダスト、お前はギャンブルに負け続け、今までのカスみたいな行ないのせいでお前は金を持っていないし、お前に金を貸す奴は居ないっ...!!」
「おい本当のこと言うな。悲しくなるだろ。そこは妹が病気とかでいんだよ。てことでよおあんたら、慰謝料5万エリスを払ってもらおうか」
「ええっと...こういう時ってどうすればいいと思うえび先輩」
「俺に任せてください師匠」
師匠を庇うように前に出て二人を見下ろす。
「お?なんだぁ?やんのか?こっちはけが人だぞ?けが人をいたぶってお前の自尊心は傷つかないのか?」
「そうだぞ?見るからに高レベル冒険者のお前が俺らみたいな低レベル冒険者を甚振っても虚しいだけだぞ?」
急に逃げ腰になって反論しだす二人。というかキースと呼ばれていた方はともかく、ダストからは明らかに強いやつの気配がするのだが....?
ただまあそんなことよりも、許せないことがある。
「あなたたち、わざと師匠にぶつかりましたね?」
「なんだって?言いがかりだ!!」
「そうだそうだ!証拠はあんのか!?」
容疑を認めない二人だが、こちらには動かぬ証拠がある。
「そんなわけはないんですよ...普通に歩いてて師匠の頭が目に入ってこないわけないじゃないですか!!」
「「ハッ!?」」
「は?」
そう。普通に道を歩いていたのならば、師匠の頭が目に入らないはずがないのだ。
「たしかに...あのデカイ頭を見逃すのは不自然だったか!」
「俺達もまだまだ素人ってことか...」
悔しそうにこちらへ謝罪する2人に、俺は爽やかな笑みを浮かべ
「謝っていただければ何も言いませんよ。ねえししょ」
『ボルト』
「「「ギャアアアアアアア!!」」」
******
香ばしい焦げの匂いを漂わせながらギルドに着いてすぐ、先に中に入った師匠に物陰に引っ張られた
「あれ見て」
師匠が指を指す方向を見ると、自称女神のアクアらしき人が受付に並んでいる。なんでこんなところに?それに何やら揉めているようだが...
「あ、こっち来ますね」
慌てて死角へ回り込みながら、聞き耳を立てる
「...まあ見てなさい!....そこのプリーストのあなた!宗派を教えなさい!私はアクア!そう、アクシズ教徒の御神体、女神アクアよ!汝アクシズ教なら..お金を貸してくれると助かります...」
何やら上からなのか下からなのか分からない態度で、プリーストと思わしき初老の男性からお金を借りていた。
「お金を借りてるってことは、冒険者登録ですかね」
「でも、なんで女神様がわざわざ?」
「左遷されたとか?」
「一概に否定出来ない...」
お金を借りることに成功したものの、やけに落ち込んだ様子のアクアは、1人の少年の元へ歩いていった。
茶髪の中肉中背のごくごく普通の少年。しかし彼からはただならぬ物を感じる。強大な力とは違う、なにかこれから彼を中心に世界が変わっていくような....
「あ、少年が適正測ってますよ。女神様が連れてきたってことは結構すごい人だったりするんですかね。」
この英雄にそんなものを感じさせる少年なのだ。何か特別な力を持っていることでしょう。
「いや、受付のお姉さんの反応が微妙...男の子もすごく苦笑いしてるね。やっぱり神の名を語った偽物なのかな?」
「いや、アクアが測ったらお祭り騒ぎになってますね。あの少年は納得いかない顔してますが..」
「それじゃあ登録も終わったことだし、クエストに行きましょ!さっさとレベルをあげて、魔王を軽く捻って帰るのよ!」
「まあ待て駄女神、俺の今の格好を見ろ?ジャージだよ?ジャージ、こんなんでモンスターと戦えるわけがないだろ?まずはバイトでもして資金調達からだ。」
そう言うと彼らはおすすめのバイトを聞いて去っていってしまった。
「結局なんでここにいるのかは分からなかったね、やっぱり左遷なのかな?」
「魔王を倒して帰る..って言ってましたし可能性はありますね。他に考えられるのは....少年の特典として着いてきたとかじゃないですか。」
「そんなこと可能なの?」
信じられない、といった目つきで聞き返してくる師匠に俺の考えを説明する。
「あの少年多分僕らと同じ転生者だと思うんですよ。なのにそれっぽい装備もなければ、ステータスが高いわけでもなかったのでそれしか考えられないんですよね。」
「お前たまに推理力発揮するよな。そうとしか思えなくなってきたわ。」
「それでどうします?なにかクエストでも受けますかね」
そうしてクエストボードの前で悩むこと数分1枚の依頼書を手に取った
「山から畑に下りてきて作物を荒らす一撃熊の討伐の依頼。報酬が50万エリス。これにしましょうか」
「一撃熊だと!?」
突然後ろから女性の声がした。振り向くとそこには長身で全身を鎧に包んだ、金髪の美人がいた。
「今一撃熊の討伐に行くと聞こえたのだがっ!?」
明らかにテンションのおかしい女騎士の登場に、師匠が俺の後ろに隠れてしまう。
「ええっと、はい。そうですけど」
「それはなんともうらやまs....じゃなくて、見たところあなた達パーティーに見えるのだが、まさか2人だけでそのクエストへ行くつもりか?」
「そうなりますね」
「無謀がすぎるぞ!一撃熊と言えば、一撃が重く気持ちい....じゃなくて、威力が凄まじく並大抵の装備ではその爪で容易く引き裂かれてしまい、素肌が露出し恥辱の限りを...でもない!とにかく危険だ」
ところどころ危ないことを口走っていた気がする...師匠の教育に宜しくないのでやめてほしいが....
「どうしてもと言うなら私を連れて行ってくれ!」
「お断りします」
「くぅっ....初対面の相手にそこまで冷たい目で断られるとはっ...だが私は諦めないぞ!」
「ダアアアアクネエエエエエエエス!!!!!!」
ものすごい速さでこちらに走り、女騎士の頭を掴み無理やり頭を下げさせる白い影。
「うちのダクネスがご迷惑をおかけしてすみません!!」
「おいクリス!無理やり頭を下げさせられるプレイは嫌いじゃないが時と場をわきまえてやってくれ」
「うるさいよバカネス!一体何度言ったら人に迷惑をかけなくなるのさ!....ってエクスくん!?」
目線、腰の角度、間が完璧な礼を披露した白い影の正体は、冒険者登録の際にお金を貸してくれ、先日一緒にダンジョンを探索したクリスだった。
「それにそっちはアルスさん?だよね」
「クリスさん!あの時はどうもありがとうございました!」
「なんだクリス、2人と知り合いだったのか!ならちょうどいい、クリスからも2人に...」
「バカ言ってないでほかのクエスト行くよダクネス。だいたいダクネスがそんなに行きたがるって2人はどんなクエスト受けたのさ」
興味ありげにこちらを見るクリスに依頼書を渡すと、クリスの表情がみるみる変わっていく
「い、一撃熊?.....2人で?」
信じられない馬鹿なんじゃないのといった表情を向けられる。
そんなに難易度の高いクエストだったのだろうか
「うーん....たしかにエクス君は強そうだけど....ちゃんと戦ってるとこを見たわけじゃないし...やっぱり連れて行ってくれない?一応こっちのダクネスも上級職ではあるからさ...」
「まあクリスさんが着いてくるなら構いませんよ。ねえ師匠」
「うん...まあ得体の知れないヤバいやつから知り合いの知り合いのヤバいやつレベルにはなったから...」
「んんっ...この2人は師弟揃って容赦ないなっ....!」
「やめんかい」
クリスに突っ込まれハアハアしだすダクネス。本当に許可して大丈夫だったかな....早くも不安になってきた
全員で依頼書の内容を確かめている最中、ふとダクネスの方を見上げると、訝しげな表情でこちらを見つめていた。
そんな顔できたんですね。
「そういえばちゃんと名前を聞いていなかったと思ってな。エクスにアルスだったか?」
「ああはい。エクス・アルビオです。英雄です」
「アルス・アルマルです。一応ウィザードです」
名前を言った時、一瞬何かを考えるような顔をしたように見えた。
「私はダクネス。ただのダクネスだ。クルセイダーをやっている」
....何となく事情がわかった気がする。
まあそこまで嫌な予感はしないが注意しておこう。