この素晴らしいエビマルに祝福を!   作:エビマルをすこれ

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フンフン(・ω・三・ω・)フンフン


英雄とサキュバスとキャベツと家

 

 エリス様に天界に呼ばれてからしばらく経って、アクセルの街に新たな風物詩が生まれた。

 1日1回、耳を劈く轟音と、腹の底を震わせる振動がアクセル中に響き渡る。下手人は想像の通りめぐみんだ。

 

 初めの数回は魔王軍の襲来と勘違いした人々がパニックに陥ったものだが、最近は「ああ、いつものか。」といった反応だけですぐに日常へと戻っている。慣れとは恐ろしいものだ。

 

 ただまあ、1度だけ早朝にこれが鳴り響いた時は、

 住民ブチ切れからのギルドへ苦情殺到、

 パーティーリーダーの佐藤カズマの土下座、

 めぐみん真顔の「あまりに気持ちのいい朝だったので撃ちました。反省はしていますが後悔はしてません」発言、

 カズマ怒りのめぐみん解雇宣言からのめぐみんの土下座がスムーズに行われ、緊急時以外の早朝及び深夜の爆裂魔法の使用を禁止するという約束が制定されるという騒動も起こったが。

 

 むしろその程度で許されるあたりこの街の住民はとても穏やかで親切だと思う。

 

 先述の通りカズマはパーティーを結成した。パーティーを組むこと自体は、初心者冒険者のクエスト成功率をあげる効果もあり、パーティーメンバーがいない時は即席のパーティーを組むことをギルドも推奨している通り、非常に有効な一手ではあるのだが、問題はそのパーティーメンバーだろう。

 

 冒険者のカズマ

 アークプリーストのアクア

 アークウィザードのめぐみん

 クルセイダーのダクネス

 

 一見上級職が3人もいる勝ち組パーティーのように見えるが、その実態は問題があると言わざるを得ないくせ者揃いのパーティーだ。

 カズマの幸運値が高いとは嘘だったのだろうか。

 

 あんなに格好つけてエリス様に宣言してしまった手前カズマパーティーには頑張って欲しいのだがどうなることやら。

 ちなみにカズマの特有のオーラは未だに健在であるため彼の覇道は順調ではあるようだ....知らんけど

 

 

 今日は師匠が魔導書の翻訳作業でいないので街を適当に探索することにした。アクセルの街はそこそこ大きいため未だに訪れていない区画がそこそこ残っている。なにか面白いものが見つかれば師匠にお土産でも買っていこうと思ったのだが...

 

「...モンスターの気配?街中で?」

 

 不意に人では無い者の気配を感じた。脅威度的にはまあまあと言ったところなので冒険者なら余裕で対処出来ると思うのだが、アクセルの街には当然一般市民も多く暮らしている。

 

 気配の方向へと進んでいくと、ダストとキースにばったり出くわした。

 

「おお、エビオじゃねえか!なんでお前がこんなところにいんだよ!」

 

「そうだそうだ!エビオにはアルスさんがいるだろうが!!」

 

 なぜ彼らがエビオという呼び名を知っているかはさておき、師匠がいるのにとはどういうことだろうか?

 

「あ?お前その顔まさか...知らねえのか?」

 

「嘘だろ!?」

 

「散歩してたらモンスターの気配がしたので退治しようかと..」

 

「「絶対やめろ」」

 

 2人は今までに見たことの無いくらい真剣な眼差しを向けてきた。

 

「いいかエビオ。俺たち冒険者は日々命をかけて戦う職業だな」

 

「確かにお前は命をかけてギャンブルしているな」

 

「そんな職業だからよ、遺伝子を後世に残さなきゃねえって本能が働くわけだ。」

 

「お前の遺伝子は残さない方がいいんじゃないか?」

 

「だが周りの露出の多い女冒険者に手を出してみろ?死ぬよりも恐ろしい目にあうことは容易に想像が出来るよな?」

 

「前科二犯が言うと言葉の重みがちげえな」

 

「さっきからうるせえぞキース!今大事な話をしてるんだ!

 ...つまりよ、この先にある店で働いているサキュバスの姉さんがたに定期的にいい夢を見せてもらうことで、俺らは溜まったものを発散できる。女冒険者も襲われるリスクが減る。お姉さん達も安全に生きていけるんだ。わかってくれエビオ。」

 

 大まかには理解出来た。

 なるほど言われてみれば俺がいた異世界にも似たようなものがあったような気がする。2人から女性冒険者には秘密と言われたので、忘れることにしよう。

 

 俺のいた世界の場所は女性冒険者達と神官達の決起によって粉々にされていた事を思い出した。合言葉は我々の婚期を取り戻せ!だった。この世界も同じ末路を追わなければいいが....

 

『緊急クエスト!緊急クエスト!街の中にいる冒険者は至急冒険者ギルドに集まってください!繰り返します!街の中にいる冒険者は至急冒険者ギルドに集まってください!』

 

 街中に大音量のアナウンスが鳴り響く。この世界に来て初めての経験だ。魔王軍でも攻めてきたのだろうか。どちらにせよ暇だったので急いでギルドへ向かおう。

 

 

 

 

 *****

 

 

「皆さん、突然のお呼び出しすいません!今年もキャベツの収穫時期がやってまいりました!今年のキャベツは出来がよく、1玉につき1万エリスです!既に街中の住民のみなさんは家に避難して頂いております。ではみなさん、できるだけ多くのキャベツを捕まえ、ここに収めてください!くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしないようにお願いします!なお、人数が人数ですので、報酬は後日まとめてお支払いします!」

 

 師匠と合流しギルドに到着すると、ギルド職員が拡声器のような魔道具を使って説明していた。俺にはいまいち内容が理解できない。キャベツを収穫するのに住民の避難はいらないし、逆襲されて怪我をするとはどういうことだろう。

 

「1玉1万エリスだって!頑張ろうね!えび先輩!」

 

 横の師匠は理解出来たらしいので疑問点について聞いてみる

 

「え、えび先輩知らないの?この世界の野菜は飛ぶんだよ?」

 

「師匠って人より脳みそでかいはずなのにアホですよね?」

 

「殺す」

 

 確かにこの世界に来てから野菜は火を通したものしか食べていないし、生の野菜を見ていない。サンマが畑で採れる世界なのだから野菜が飛ぶというのもあながち嘘では無いのかもしれない。どちらにせよクエストが始まればどういうことなのか分かるはずだ

 

『大地を穿つ炎の星よ、我が力の元に...』

 

「それはまじで洒落にならないんで勘弁してください」

 

 周りから拍手が起こるほど完璧な土下座を披露することで許しを得ることが出来た。

 

 

 

 

「あれが全部....キャベツ?」

 

 はるか遠くから飛翔する緑の大群。その数は100や200ではきかないだろう。 ただまあ1玉につき1万エリスもの報酬が得られるのはでかい。久々に英雄の本気を見せるべく、軽く準備運動をしていると師匠が何か差し出してきた。

 

「先輩はキャベツ破壊しちゃうからこれで」

 

 師匠が手にしているのは..広告を折り畳んで作られた普通のハリセンのようだ

 

「これすぐ壊れません?」

 

「一応《耐久》のエンチャントはしてあるから多分大丈夫だよ。ちゃんと機能するかの実験も兼ねてるからよろしく」

 

 エンチャントの魔法はこの前ダンジョンから回収してきた魔導書に記載された魔法の1つである。ここ数日の間に実用可能なレベルまで理論を構築していたのかと素直に関心した。

 

 手のひらにぺちぺちと当ててみると確かに頑丈になっていた。

 

「じゃあ、ありがたく使わせていただきますね。」

 

「うい」

 

 とりあえずこれでキャベツを叩き落とせば師匠が風魔法で回収してくれるらしいので、無心でひたすらに叩き続けようと思う

 

『エクスプロージョン!!』

 

 突然キャベツの群れに爆裂魔法が叩き込まれ、緑のカーテンに穴が空く。その爆風で前の方にいた冒険者の何名かが吹っ飛ばされていた。彼らはめぐみんに文句を言ってもいいと思う。

 

 とうとうキャベツの群れが冒険者集団にぶつかり始めた。熟練冒険者と思われる盾持ちの男性がキャベツの突進をくらい大きく体勢を崩されている。本当にハリセンで大丈夫だろうか。

 

「おらあぁぁ!」スパーン!

 

 ハリセンから軽快な音がなり、キャベツが綺麗な状態で地に落ちた。ハリセンも壊れていない。

 この分なら多少本気を出してしまっても大丈夫そうだ。

 

「ちょ!?早いってえび先輩!回収が追いつかないって!」

 

 その後、ハリセン片手に目にも止まらぬ速さでキャベツを叩き落とす金髪の男はアクセルの都市伝説として語られた。

 

 

 *****

 

 

 後日報酬を受け取るためギルドにきたら何やら窓口の方から騒がしい声が聞こえた

 

「おかしいでしょ!?どういうことよ!!」

 

「そうは言われましても、アクアさんが捕まえたのは全てレタスでして...」

 

 どうやらアクアが回収したキャベツのほとんどがレタスだったらしく、ギルド職員に文句を言っているようだ..関わりたくないため、少し離れた席に座り軽食をとりながら順番を待つ。

 

「報酬いくらくらいになるかなあ..エビ先輩落とすスピード早くて数える暇なかったんだよね..」 

 

 大量に回収したのは確かなので回収したのがレタスじゃなければ3桁は硬いはずだ。

 

「ていうか今回の報酬次第ですけど、そろそろ家買いません?いい加減毎朝体ガチガチで起きるの辛くなってきたんですよね」

 

「なんでおめーは頑なに宿使わないんだよ」

 

 なんとなく今後の動向を決めながら、キャベツの大量収穫により安くなった野菜スティックを摘む

 

 \ヒョイッ/

 

 野菜スティックを摘む手が綺麗に躱された。

 ...活きがいい証拠でいいでは無いか。フェイントを交えつつ摘みに行く

 

 \ヒョイッ/

 

 ....ならば圧倒的な手数で勝負しようではないか!

 

 \スサササササ.../ 

 

 ダァン!「なめんな!」

 

「ちょ!えび先輩うるさい!台パンしないの!今年の野菜は活きがいいらしいんだから仕方ないじゃん!」 

 

 英雄の攻撃をここまで躱したのはこの野菜スティックが初めてかもしれない。...剣を抜きつつ次の攻防に入ろうかとしていると 

 

「エクスさーん!お待たせしました!受付にいらしてください!」

 

 ....この勝負はお預けにしといてやる。

 

 

 

「アルスさんの分も一緒にでいいとの事でしたので、こちら報酬の200万エリスとなります!」

 

 思っていたよりも少し報酬が多い。ハリセンでしとめたから状態が良かったのだろうか。

 

「...師匠、僕達が捕まえたのはレタスだったようで...分け前の20万エリスです。」

 

「おい袋見えてんだよ!」

 

 ちっ、勘のいい師匠は嫌いだね。報酬の100万エリスを渡し、再び野菜と戦おうとするが...

 

「師匠?ここにあった野菜スティックは?」 

 

「え?食べたけど...」

 

「...どうやって?」 

 

「ボルト使って動けなくした」

 

 それはずるくないだろうか...

 

「じゃあこの後どうしましょう?クエスト受ける時間はなさそうですし、不動産屋覗いてみます?」

 

「おー...本当に一緒に住むの?」

 

「え?嫌ですか?」

 

「嫌ではないけど...まあいいか。えび先輩だし」

 

 何やら師匠の様子が少しおかしいが、購入に対して意欲的ではあるようだ。気が変わる前に連れて行こう。

 

 

 

「いらっしゃいませ」

 

 不動産屋に入ると、人あたりの良さそうな中年の男性が座っていた。

 

「こんにちは〜」

 

「こんにちエーーーーーックス!」

 

 軽く挨拶を済ませ、事情を話す。

 

「なるほど、その場合活動の拠点はアクセルとして考えておられるのでしょうか?」

 

「そうですね。僕が転移魔法を使えるので、ほかの街へ行っても帰って来れるのでこの街に住む予定です。」

 

「でしたら...ここはいかがですか」

 

 店員さんが見せてきた資料には、2人で住むには少々大きすぎる屋敷が載っていた。

 

「この大きさでこの値段...?」

 

「実はですね...この屋敷は以前貴族様の別荘として使われていたものなのですが...売りに出した辺りから悪霊が住み初めまして....」

 

「チェンジで」

 

 悪霊と聞いた瞬間師匠がバッサリと切り捨てた。条件的にはかなりいい屋敷だとは思うがやはり広すぎるし他の所でもいいだろう

 

「さいですか...ではこちらなんていかがでしょう?」

 

 少々残念そうな顔をしながら別の物件の話をし始めた。

 師匠と店員さんが真面目に話し合っているので話に入る隙がない。不動産関係には少し疎いので自信のありそうな師匠に任せて良いだろう...多分。

 

 その後条件に当てはまる物件が見つかったようで内見から購入までスムーズに行われた。

 値段はそこそこするが、今までのペースで魔物を討伐していれば1年程で完済出来るだろう。

 

 

「じゃあここ俺の部屋で」

 

「ここはリビングだろうが!」

 

「師匠の部屋はそこで」

 

「トイレに住めってのか!」

 

「ここが寝室みたいですね」

 

「なんでベッドに枕2つ置いてあるんだよ...」 

 

「お風呂広くないですか!?師匠の頭が入り切るくらいでかいですよ!」

 

「おい表出ろ、師匠として引導を渡してやるよ」

 

「小さいけど庭もあるんですね、薬草とか育てれそう」

 

「表出ろってそういうことじゃねえんだよなぁ...」 

 

「お風呂気持ち良かった〜」

 

「広い風呂はいいねぇ〜」

 

「それじゃおやすみなさい!」 

 

「おやす...え?」

 

(一緒のベッドで寝るの!?)

 

 

 久々にふかふかしたベッドに横になることができ、急激に瞼が重くなっていく。師匠が隣で覚悟を決めたような顔をしているがどうかしたのだろうか。そんなことを考えているうちに、意識は深い闇の中へと落ちていった。

 

 




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