ロマサガ2リメイクはコレクターズエディション予約しちゃいました
理由?池袋です、はい。
パレッティア王国北部にあるその森は、普段よりもやたら鬱葱としているように見えた。
断じて樹木の数が急激に増えたわけではないが……そのような錯覚に陥るほど一帯には光がまるで感じられなかった。
近隣住民や辺境騎士団は口を揃えて『不気味な空気だから近づかないようにしている』としているが、それは仕方ないと言える。
あやふやな証言ではあるが、そこに糸口を見出して二人の男は現場に急行したわけだが……。
「これはこれは……アイツが見てたら『ビンゴ!』と歓喜しそうな舞台だな?」
「……笑っている場合か?この空気は明らかにそういうことだぞ、カルシオン」
「無駄骨よりかはよほどいいだろうがよ。真面目過ぎるのも程々にしておけよ、レオン君?」
結果的に言えば、紫髪のエルフ──カルシオンの言う通りだった。
身を潜めている彼らの視線の先には、それなりの数の異形が我が物顔で練り歩いている。
見た目こそはドマルガンやバジリスクに通ずる、トカゲの様な容貌ではあるが……。
「一丁前に兜やら盾つけてやがるぜ?一体どこの兵士だって話だ」
「……あの装備品からは魔力も感じられる。どう見てもただの魔物ではないな」
先ほど挙げたトカゲ型、特に二足歩行のドマルガンも人間の猿真似で槍を扱うことが多い魔物だ。
しかし、目の前にいる小柄のトカゲはますます人間臭い装備に身を包んでいる。
これだけで未知の異形と断ずるに値するだろう。
更に言うならば、その魔力の質が明らかに異なるもの……というより、邪に寄りがちであることも大きい。
そしてその性質は、この森林を覆う『イヤな気配』と同一だ。
黒い鎧を着た男──レオンが僅かながらも険しい顔をするのも頷けるというもの。
「……アポロン、ニケ。お前たちはどう見る?」
傍から見れば、グランロードともあろう人間が虚空に話しかけているように見えるであろう。
しかし、それも無理はからぬこと……今彼が話しかけているのは、常軌を逸したモノなのだから。
偉志ノ大陸においては、偉霊と呼ばれるであろう存在……その中でも上位に当たる。
便宜的には『契約精霊』と称される、ある意味破天荒王子とその周囲よりも吃驚箱な存在が現世に姿を現した。
「巨大な気配は感じられません。恐らく、あの者たちは境目から入り込んだだけでしょう」
「私もアポロンと同意見ね。ここまで負ける気がしないってことは、要するに大物はいないってことよ!」
こちらは勝利と栄光を司る上級精霊『ニケ』
どこかでは太陽神と恐れ敬われた『アポロン』
本来ならば人間と契約できるような存在ではないのだが、そこはまさに
ちなみに、この存在について認知している者は同僚のグランナイツを除けばマドラーシュとセラ、そしてプリシラのみである。
「──そういうことならば、正面から突っ込むぞ。一気に終わらせてやろう」
「おいおい、確証を得たからっていきなり脳筋全開になるな──って、そういうの聞くようなヤツだったら苦労しないよな!」
即断即決──それでこそかの破天荒の師匠であり、憧憬の大元であった。
一点特化の光属性適性を余すことなく用いたその初動突貫はまさに流星の如くである。
その勢いそのままに、グランロードの駆けつけ一杯と言わんばかりの『スティンガー』を放つ。
マドラーシュが得意として、王都であった防衛戦ではユフィリアも亜種として放った単純な術技だが……世界最強が放つものは一味違っていた。
突きを放つ方向だけでなく、その道すがらを遮るモノに対してもノックバックを引き起こしているのだから。
「おいおい、突きの勢いで発生した魔力流で吹っ飛ばしてくれるなんて酷いんじゃないかレオン君?」
「すまん、浄化も兼ねて魔力を多く込め過ぎたようだ」
「まあまあ、どうせ各個撃破狙いになるんだったら早めの方が都合いいでしょ?」
不意打ちできっちり入ったとはいえ、カルシオンが狙っていた一網打尽戦法がいきなり崩れる羽目にもなる。
しかし、こんな『やりすぎたテヘペロ』はグランロードにとってはある意味日常茶飯事である。
謝罪こそしているが、その表情はポーカーフェイスのまま……表情筋が動いていないだけとも言えるが。
どちらにせよ、カルシオンにとってはまだ修正舵可能範囲である。
「仕方ない、建築物に対してやらかしそうな分を1回消費したと思えば安いもんだってことにしておいてやるよ!」
彼の得物はカルトと同じく変幻自在のリーチを持つ鎖剣。
真骨頂はあまりの読みづらさで否応なく駆け引きに引きずり込むやり口で、マドラーシュの戦闘脳を鍛え上げた大元の一つでもある。
そしてこの場が多少は高低差のある足場に恵まれた森林であることも功を喫している。
闇属性魔力で鎖ごと補強しては、生きている大蛇の如く力強くしならせてはある程度のところを強引に纏め上げていく。
……が、初撃の吹っ飛ばし力が想定以上だったお陰で射程圏外にまで飛ばされた異形も何体か点在する。
更に言うなら、魔力を発して空中で姿勢を整え……あろうことか、カルシオンに向けて突貫まで敢行してきた。
「おっと、そういう風魔力の使い方はアイツらで散々見てきたからお見通しだぜ?」
並行で魔力感知と視覚聴覚の拡張は怠ることはまず有り得ない。
束縛作業をしながらも……というより、現在進行形で発せられている魔力鞭をも利用して不意打ちを軽く避けて見せるカルシオン。
しれっと弟分たちと比較しては酷評する辺り、余裕綽々とはこのことか。
とはいえ、いちいち邪魔されたら流石に面倒に思ったのか態勢を立て直すところに急接近。
そこに斬撃を叩き込みながら、闇と風の混合属性を纏った小規模の竜巻に閉じ込めて兜やら盾やら諸共ズタズタにしていく。
が、それでもまだトカゲ型異形の闘志は折れず懲りずに反撃を試みようとする……が
「どうせあの世行きなんだ、口なしでも大して変わらないだろ?」
魔力を帯びた咆哮でせめてカルシオンを引き離そうにも、発せられるのはか細い鳴き声だけ。
せめてもの抵抗……というより魔力の流動をも封じられる有様であった。
無慈悲という十八番を奪わんとするカルシオンだが……これでもまだまだ物足りないようで。
両腕の鎖剣では届かなそうなところに対しては、魔力による
手数をついでのようにレオンのフォローにも回す辺り、周辺視野についても流石はマドラーシュの第2の師と言うべきだろうか。
「後は纏めて毒蛇の餌になってもらおうかね!」
纏め上げれば後はこちらのもの。
本丸である巨大毒蛇を二匹呼び出して、哀れなトカゲを食らい尽くすのみである。
闇属性を主として、水属性も混ぜた魔力体にとっては暗く陰湿な森は良い条件が整っている。
そのお陰か、いつもの2割増しほどの豪快さで獲物を丸呑みにしてしまっていた。
「これでひとまずはよし。さてさて、あっちの方は──おっと、随分とまあ大暴れだな!」
一息つきながらあちら側に目をやろうとした途端に、目を覆わなければならないほどの光が発せられた。
耳を塞がなかったことでほんの僅かにイヤな耳鳴りが発せられるのは流石に想定外にも程がある。
その原因は、光属性の盾を上空から叩きつけてはスタングレネード染みた魔力衝撃波を拡散する『シールドオブアイギス』。
マドラーシュ達があの手この手と開発してなお、最凶の制圧力を持つそれはレオンの弛まぬ鍛錬からまだまだ研磨され続けている始末だった。
いくら未知の異形とは言え、この凶悪術技を回避以外の方法で逃げられるはずも無く……範囲内は全て無力化。
その様を以てヘイトを買ったのか、他にも色々な異形がレオンに対して群がる始末だ。
「ニケ、前方の有象無象は任せましたよ。カルシオン、私の光剣の後を追って後続処理を!」
「ごめんねーアポロン、残飯処理押し付けちゃって!その分きっちり働くから!」
「へいへい、太陽神様の御心のままに……ってか?」
「役割分担がきっちりしていて何よりだな!」
視覚と聴覚のダブルパンチを貰ったトカゲたちに複降り注がれたのは、アポロンの光属性魔力による矢の雨。
更には、向けられた敵意を基にした探知でカルシオンの追撃補助まで行う徹底サポートっぷり。
もう片割れに当たるニケは、光属性魔力で編まれた馬に変身してはレオンを乗せて縦横無尽に異形たちに立ち向かう。
追加で現れたのは、土が固まって形を成した文字通り『土蜘蛛』と言い表せる何か。
これまた禍々しい気を帯びたその口から放たれるのは、岩石による砲撃。
並の人間が当たったならば間違いなく粉砕されかねないところだが……
「そんなの、私たちにとっては唾にもならないわよ!」
「──光よっ!」
大剣を地面に突き刺し、光属性魔力を溢れさせることで強烈な壁とする。
更にニケがその場でレオンに対し概念的な鎧──『聖鎧』という形で加護を顕現させる。
二倍どころか二乗の堅牢っぷりを瞬時に発揮することで、質量と速度エネルギーによる暴力をあっさりと無力化。
例えドラゴンのブレスやどこぞのアーリマンの怒涛の魔法連撃であれど、この防壁の前では意味を為さないであろう。
グランロードが世界最強たるのは、この堅牢な防御もあってこそである。
相手の猛攻が無に帰し、一呼吸入れる空気を察するとレオンは即座に攻撃に転ずる。
「──確かに禍々しいですが、やはり魔力生物の亜種のようですね」
「ならばそこを突けばいい……アイツでもそうするだろう」
ここ暫くで幾度も当たってきたこの禍々しい異形たち。
そこで暫定的に得た知見の答えが、今しがたレオンが放った『シャインスプラッシュ』である。
魔力流動遅延を引き起こす光飛沫は、魔力に依存する体の存在にとっては脅威以外の何者でもないようで。
土蜘蛛の動きは見て分かる程に鈍くなり、そこに容赦なく突き刺さるのはアポロンが放つ光の矢。
装甲も一気に脆くなったのか、土蜘蛛の群れはあっさりとただの土砂に変わってしまっていた。
増援を片付け、さあこれで終わり──かと思ったところだった。
「──■■■!」
相手はまんまと欺いてやったと、その化生は勝機を疑わないまま飛び上がってきていた。
襲撃が終わったと思いこませたところの奇襲……シンプルながらも有効なやり口ではある。
……相手を見誤らなければ、だが。
「……このアポロン、契約者に指一本触れさせはしません」
どこからか現れた光属性魔力で編まれた剣に串刺しにさせられることで無為と化した。
そもそも、地面からの不意打ちなどグランロードには通用するはずがない。
彼に憑いているもう片割れの契約者──忘れ去られた太陽神にとって、この戦場を見渡すことなど造作もないことだから。
奇襲を失敗した者の末路など、わざわざ言うまでもないことだ。
「……ふむ、これで全てか?」
「──そのようですね。私の方も特に反応はありません」
「こっちも一通り走ってみたけど、イヤな気配は一切感じなかったわ!」
「流石にマッドレベルの隠密やらかすヤツはいないってことだな。こんな場所からはとっととおさらばと行こうぜ?」
相手が未知の存在でも、徹頭徹尾やることは変わらない。
『勝って兜の緒を締めよ』──マドラーシュ達次世代にも受け継がれた、至極当然の格言通りである。
二重三重に探知を施し……禍々しい気配の消失と共に森の空気がマシになっていくことも確認。
先ほどのトカゲや土蜘蛛が原因に一端と判断し、調査依頼はこれにて完了とすることとした。
──と、ここでレオンは足を止める。
「おいおい、いきなりどうしたレオン君?」
「……こいつらが仮に王都の方でも出ていたら、恐らくマッドやラスは真っ先に立ち向かうことになる。いや、この辺境の地よりもとんでもない存在が出て来ることすらも有り得るのではないか……?」
「あーはいはい。いつもの伯父バカからの過保護炸裂ですか……」
グランロードレオン、数少ない欠点は甥のラスについつい甘くなるところ。
しかし、彼らはマドラーシュ率いる次世代を裏で補佐するために王都を出た身である。
ここでとんぼ返りはあまりに早すぎるし、そもそも示しがつかなくなってしまう。
「……アポロン、ニケ。すまないが頼めるか?」
「伯父の威厳も大事だものねー……しょーがない、私もあのやんちゃ王子の顔見たくなってきたし引き受けてあげようじゃない!」
「では、私もそのように。──そろそろセラの作った菓子も恋しくなってきたところですので、渡りに船です」
そんな隠れ伯父バカが達した結論は……端的に言うならば『なら、自分が行かなくてもいいんじゃね?』であった。
女神遣いがなかなかに荒いことだが、そんな雑用を平然と引き受ける二人も二人。
相変わらずなその様子に、カルシオンはただただ苦笑を浮かべる以外なかった。
日が昇るかそうでないか、そんな頃合に彼女は目が覚めてしまった。
その必要はまるでないはずなのに、
何かに引き寄せられるような感覚があった気もしたが……もう既に後の祭りであった。
「……二度寝は性に合いませんので、とりあえずは起きますか」
寝足りないからと言って再度夢の世界にダイブするのは何となく癪でもあった。
しかし、普段より早起きをしたからと言って何をすればいいのか。
……そこで彼女──ユフィリアはこう思い至った。
(これぞまさに、『善は急げ』を実行する機会なのでは?)
どういう理屈だ、と言いたいところだがそこはさておき。
いざ思考が向いたこの時のユフィリアは、やたらと俊敏に動いていた。
向かう先は王城内部でこそあるが、それでも必要な身だしなみはそこそこ。
そんな手間を素早く確実に一人で勝手に終えると、誰にも見つからないよう素早く移動を始める。
気持ち早歩きで、しかしそう見せないよう魔力を絶妙に調整してあくまで涼し気に。
そんな無駄に洗練された無駄のない無駄な動きを披露しながら、ユフィリアは誰にも見つかることなく対極の離宮に辿り着いた。
本来ならばコソコソする理由はもうないのだが、3年で身に着いた癖はそう簡単には抜けないらしい。
それはさておき、彼女がこの日最初に見つけた人影は……まさかまさかのお目当てであった。
(まさか、マッド様の鍛錬する様子を目にすることになるだなんて……)
基本的に、マドラーシュ側の離宮全体の朝は早い。
その中で最も真っ先に起きるのは、意外なのかそうでもないか家主の破天荒王子その人である。
始まりは彼の最愛の、鍛錬狂い系兄貴分との共同鍛錬。
もはや顔を洗うのと同じような日課と化して久しいそれを、今日
その視線の先にいるのは、鞘付きの木刀で居合の動作を繰り返す破天荒。
あまりに地味極まりない動作をただただこなす……その姿は、どこか求道者染みた空気を思い起こさせるほど。
普段の軽薄な雰囲気はどこへやらで、表面的に彼を知る者は『他人の空似か?』と勘違いしてしまうほどだ。
無論、ユフィリアがそうなるわけはないのだが……背筋すら凍る程の感覚は確かにあった。
(型稽古ならばアニス様も行っていた。──同じことのはずなのに、ここまでの差があるだなんて)
アニスフィアはマナ・ブレイドを、マドラーシュは千紫万紅を想定した素振りだから差異が出るのは当然とも言える。
想定している武器種が異なるので、構えから振りまで変わるもの。
しかし、ユフィリアが感じている差異はそんな浅い領域のことではない。
(……マッド様、貴方は一体どこを見ているのですか……?)
傍目には素振りをしているだけだが、ユフィリアが注視しているのはその目線だ。
この場の、何ならこの世界にはない……見えない何かを見据えているような鋭き眼光。
少なくとも、この3年では見たことのない──一種の狂気すら窺えるような顔つきと素振りである。
思わず呑まれかけてしまうが、寸でのところで異常な空気は突如霧散していく。
「……ああ、おはようユフィ。朝の散歩にしては随分な遠回りだな?」
「お、おはようございますマッド様……えっと、気付いていたのですか?」
「むしろそこまで気配を駄々洩れにされて気付かねえのが無理難題ってもんだな」
自分なりにきっちり隠れていたつもりだったし、気配も消していただった。
それを片手間のように、事も無げに看破されては戸惑いを隠せないのも致し方なしか。
「それで?こんな朝っぱらから来る辺りよっぽど急な用事があると見受けられるが、一体どうした」
とはいえ、マドラーシュの口調はいつものソレに戻っていたことは幸いだ。
お陰でユフィリアもいつものペースを取り戻し、直球で重大事項をぶつけることが出来るのだから。
「……お父様、そして陛下と王妃様からマッド様と行動を共にすることが許されました。ひいては今日から本格的に並行通いとさせて頂きたいと思います」
「おい?本当かよそれ……何故あっさり通したグランツ公。とんだ誤算だぞこりゃあ」
朝から忙しなしなところにそんな事後報告を受けたマドラーシュは一気に渋い顔となる。
というのも、マドラーシュ的には流石に無理ゲーに寄っている事柄だと断じていたから。
だからこそそれなりに高みの見物だったのだが、あっさりと目論見は破られる。
見事に主導権をひっくり返されてしまっては、苦々しい顔になるのは当然であろう。
「ふふ、マッド様でも読み切れないことがあるのですね?」
「楽しそうにしてんじゃねえよ……ったく、絶対に『娘を死地に連れて行けるか』ムーブが飛んでくると思ってたのに。どんな手品を使いやがった?」
「至って普通に親子の会話をしただけですよ?さあ、これでおとなしく負けを認めてくれますよね?」
対するユフィリアは本調子に戻るどころか、やや喜色すら浮かんでいる。
これまでやり込められることも少なくなかったマドラーシュの思惑は分かった上できっちり看破した、これだけでも十分なのだろう。
その様を見て猶更苦渋に満ちた表情を浮かべる破天荒だが、ここまで来れば観念するほか無かった。
「ったく、その場合魔学の方と並行することになっちまうのか。二兎を追う者は~なんて事態は許さねえからな?」
「自分で選んだからにはそこは徹底させて頂きます。中途半端が本意でないことは重々承知の上ですよ」
いい加減付き合いも長いからか、梃子でも動かないと至るまでも迅速そのもの。
ユフィリアもユフィリアだが、マドラーシュもマドラーシュ……これぞお互い様と言えるか。
前者はオルタやラスとの以心伝心っぷりを羨んでいるが、傍から見ればそう大差はない。
だからこそクリスティーナは彼女に弟分の今後を託したのだが……隣の芝は青く見えるとはこのことだろう。
「なるほど……すなわち一歩前進、公認の通い妻というわけですね?」
「え──か、か、通い妻!?って、プリシラ貴女どこから出てきているのですか!」
「おや、想定以上の反応ですね……これはナイス不意打ちという賞賛不可避でしゅおか」
唐突に淡々に、僅かに愉悦が混ざった呟き。
いきなり現れると言うホラー染みた現象をあっさり喜劇に変えるのはぶっ飛び侍女のどちらかしか成し得ないだろう。
今回は気配遮断に秀でた地雷系ということで、ユフィリアに対してきっちりと不意打ちを成立させていた。
含まれた言葉に盛大に反応するという予想外の成果もあげているが、唯一気配を察していたマドラーシュはどこまでも冷静沈着で。
「見回りがてらに地雷系侍女発揮するなプリシラ。──ユフィもこの程度の不意打ちにはいい加減慣れておけ」
「朝から無慈悲なツッコミ、こちらの業界ではご褒美です」
つい昨日思いっきり提言されたり進言されたりなアレが関わっているのは言うまでもない。
そのことをまだ知らされていない、または感づかれていないことに対する安堵。
それと同時に、ほんの僅かでも察して欲しかったことへの僅かな落胆もあったりする。
ユフィリアにとっては初めて抱く、どこか面倒とも言える年頃の女心というものであった。
ただし、相変わらず無自覚という但し書きが付くのがやや悲しいところだが。
「しかし、こうなるとユフィも色々鍛えたり、連れてったりしなきゃならねえのか……?」
「……それは勿論。留守番なんて以ての外ですからね?」
「ああうん、知ってた。だからそんな獰猛なオーラを出すのは止めておけ」
そしてこれまた限定的な執念深さというか妙な執着というところを発揮してしまう。
そういうところを父は察して、あのようなこと進言をしたわけなのだが……気が付かない辺りはまだまだ無自覚なようで。
だからこそ、向けられた方も何のこっちゃかという心境になるのはさもありなん。
「ただ、今は暗部連中に打撃を与えたばっかでいわば小康状態……そうなると」
「あれ、ユフィリアだー!もしかしてこれアイビキってやつ?」
幼さすら残っているその声に全員は一斉に発生源の方を向くこととなった。
本人の属性を司るような赤い髪にミケ族特有の俗に言うケモミミ。
天災にして天才、爆弾発言と共に登場……そしてユフィリアは顔ファイヤームム化待ったなし。
「あ、逢引!?待ってください、何で急にそんな話になるのですか!?」
「え、だってトシゴロの男女がコソコソしてたらそうだってナマリエが言ってたよ?」
「キュイ、それはスイーツ脳知識だから忘れておけ……そして何故ユフィは俺を睨む」
こちら側の空気に慣れているか否か、という差も当然影響しているが……それ以上に今のユフィリアにその手の話題はナーバスそのもの。
対するマドラーシュはそのことを一切知らないことから、いつも通りの受け流し。
対照的が過ぎる反応の結果、ユフィリアの一人相撲のような様相となる。
そうなれば、キュイの言うトシゴロの女子がこれまた面倒くさい心境に至るのもさもありなん。
「ところで、キュイ様がこんな早くに起床なされるとは珍しいこともあるものですね?」
「何か不意に目が覚めて、早朝のコイン拾いにでも出かけよっかなーって」
「コ、コインを……拾う?……あの、マッド様?」
「まあ、コイツにとっては日課となってるあぶく銭稼ぎさ」
そこは言うまでもなく圧倒的価値観の違いである。
ユフィリアの反応はどこかおかしいものではないのは言うまでもなく。
むしろキュイの言い分に慣れきっている高貴な身分、要するにマドラーシュがズレているだけだ。
そしてそんなところに更なる地雷ならぬ爆撃が投下されることとなる。
「キュイ様、一足先の歓迎も込めてご日課にユフィリア様も連れては如何でしょう」
「歓迎?──あ、もしかしてここに通う許可貰えたってこと?よっしゃー、じゃあウチが先輩として歓迎してあげよう!」
「えっ……えええええええ?あのマッド様、何か勝手に話が決まってるのですが!?」
「へえ、コイン拾いに勤しむユフィとは……それは俺も是非見てみたいものだ。朝の日課も済んだし、俺も同行してやろう」
「やったー!マッドはカルト並みにコイン探し上手だから助かるよー!」
先ほどまでの仕返しも含んでいるのか、マドラーシュも天災に乗る始末だ。
無論、そんな対抗心が無かったとしても同じ結果だったのは言うに及ばず。
天災キュイの手綱を握ることが出来る唯一の人物でありながら、最高の悪友でもあるのがこの第二王子なわけなのだから。
「私はともかく、王族をはした金稼ぎに同行させるなんて非常識にも程があるのでは!?」
「へっへーん、相棒同様ウチだってジョーシキをチョウエツする存在だよ?そんな言葉で止まるつもりは無いよーだ!」
「こっちに来るってことはそういうことだと叩き込んでやるよ。胃薬用意するってんなら、早めの方がいいぜ?」
「ふふふ、キュイ様という最高の助力を得てイキイキしだすマッド様……何て尊い御姿でしょう」
まさに八方塞がりとはこのこと。
結果、朝っぱらからコイン拾いに勤しむ身分バラバラトリオが出来上がってしまった。
……拾うという行為自体はキュイに任せきりにしたことだけが、ユフィリアに出来る唯一の抵抗だった。
突拍子もない二足の草鞋デビュー早々、歓迎と称した野暮用に付き合わされてしまう。
誰がどう見てもいきなり受難を被った形であり、間違いなく理不尽の一端と言える出来事だ。
とはいえ、仮にもあの破天荒が集めた面々だ。
癖のある顔ぶれが揃っているであろうことは想像出来てはいた……のだが。
「こんな不意打ちは流石に想定出来ませんよ……」
「流石にユフィリア様にコイン拾いの付き添いは厳しいよね……」
「……見咎められないようにするので精一杯でした」
小銭拾いというみみっちい真似をする貴族がいたらそれこそあっという間に噂になる。
しかも唐突に連れ出されたので、当然お忍び的対策は一切施せず。
結果的にキュイが精力的にコインを探し、マドラーシュもそこそこに補佐する様を冷や冷やしながら見守るだけになったのは言うまでも無かった。
「アンタもアンタよバカ王子。こういう時こそストッパーになるべきなのに、何でで一緒になってはしゃぐのかしらねえ?」
「キュイという天災の意をも汲んでやってこそのお前たちの主だ。何ならユフィが見つからないようプリシラにフォローは入れさせたし、結果問題なしでいいだろうがよ」
キュイがコイン拾いに勤しむのは割と王都でも有名な話なので問題なし。
マドラーシュは『陰の鬼志』由来の気配の同調と遮断のブレンド技術で徹底的に誤魔化す。
そこに裏の補佐役エキスパートであるプリシラが混ざれば、まあ事無き事を得るのも容易である。
何だかんだの計算づく、冷静に狂っているとはまさにこのこと。
使う方も使われる方もどこかネジが外れているが、そんなことは前提知識の領域。
「それなら最初から阻止出来てたんじゃねえのか?仮にも公爵令嬢相手だってのに容赦の欠片もねえな、お前……」
「いや、そもそもそんな気が無かったんじゃないのかな……元々はもっと拗れると読んでたわけだし」
「あっさり許しを貰えたからってドヤ顔されたら何かムカついてな……キュイにお灸を据えてもらったってわけだ」
「相変わらずの人でなしっぷりで子供っぽい理由付けばかりですね!?」
案の定少しばかり調子に乗ってしまったが故の報復であったが、破天荒も些かやりすぎである。
要するに想定外が起きて、すんなりと自分の思惑が崩された腹いせでしかないのだから。
ほんの僅かばかり、そんな気もして罪悪感を抱いていたところもあったがそれもあっさりと吹き飛んでいくのは無理も無いだろう。
分かっていても若干『ないわー』というノリでラス、ナマリエ、カルトですら引いているほどなのだから。
「キュイちゃんもそうですけど、マッド様ももう少し手加減して上げるべきでは……?」
「変な幻想抱かせる方がもっとよろしくねえし、とっとと現実見せた方が手っ取り早い。初手で打ちのめされておけばそれ以上落ちようが無いからな」
「……ただのイグノックス流じゃないですか、それ」
「何て文句言いながらどうせ食らいついてくるのがユフィだろ?こちとら噛み痕塗れで満腹だがね……」
とはいえ、大なり小なりの差異あれどこの面々は皆そんなもの。
マドラーシュを筆頭に、何かかしらかの傷を持っている曲者揃い。
それは大先輩であり導でもあるグランナイツとて同じことで。
そんな集団に混ざるとあれば、四の五の言ってる場合では無い……改めてユフィリアはそう認識することとなる。
切っ掛けこそキュイの暴れようでこそあるが、ついて行くと決めた以上余計な泣き言は不要。
文句による主張くらいは当たり前のようにするが、むしろそれくらいの反骨っぷりはやる気の裏返し。
そこを重々理解している破天荒も少しだけ満足気な顔を浮かべ……何故か幼馴染の方に向き直る。
「そういうわけだ、暫くはこっちの日常を体験してもらうとするかね……特別近衛騎士たちの元でな」
「え、そこで俺にお鉢回しちゃうの!?」
「ユフィはまだまだひよっこだ、研修くらいいるだろ。新入りの面倒を見るのも正騎士の務めだ」
「……これは、マドラーシュ様の言うことも一理あるのか?」
「んなもんあるわけねえだろうが」
なかなかの無茶振りである。
これが本当に見習い……例えばレイニのような新たな弟子ならばその理屈も通用するだろう。
しかし今回はマドラーシュの友人枠、それも地位は貴族でも屈指のもので。
そんなこと知ったことかという扱い方は、冷血とかそんな言葉で示せるものだろうか。
「いやそれでもやっぱり最初くらいは……」
「俺はまだ面倒事が控えてるから手が空かねえんだよ。というわけで後はよろしく」
それだけ言うと、破天荒は鬼ダッシュでその場を後にする。
あまりに鮮やかな逃げ足っぷりに本気で頭を抱える面々も少なくない。
「あのバカ……自分が直に相手するの恥ずかしいからって私たちに押し付けたってことよね、これ」
「……まあ、特段間違ったことも言ってねえのが癪だな。アイツも色々後始末が残ってるのは事実だが」
「未来の嫁を優先しないってところが問題じゃないの!?ああもう、あんなだから女っ気が無いって改めて痛感させられるわ……!」
「ちょっと待ってくださいナマリエ、未来の嫁とはどういうことですか!?」
色々と唐突な主への文句大会が始まるかと思いきやの飛び火である。
今朝はプリシラとキュイに弄られ、今度は特別近衛騎士屈指のスイーツ脳からのストレート。
流れガン無視であるところも相まって、これまた顔面ファイヤームム化待ったなし。
外堀が埋まりつつあるのは、こちらでも似たようなものである。
「ナ、ナマリエさん?ユフィリア様の反応的にそれはこじつけが過ぎるんじゃあ……」
「どうもこうも、父親公認というのはそういうことでしょ。3年も隠れて友人として付き合い、後に隠す理由が無くなるなんて小説でも稀によく見るパターンそのものよ!」
「相変わらずその手の話になると支離滅裂全開だな?だからアイツにスイーツ脳言われるんだろうがよ」
「なあんですってえ!?題材として使われてるんだから立派な実例として成り立つでしょう!」
見かねたセリアードが止めるも、控えめな指摘で止まるナマリエではなく。
自称恋愛巧者がその手の臭いを嗅ぎつければ、まあさもありなんであろう。
「ユフィリア様がマッドの嫁云々は今更だからさておき……今はとにかく新人研修だよ。ユフィリア様何か要望あったりする?」
「リーダーだったらまず仲間の暴走を止めるべきなのでは!?ああもう、本気で恨みますよマッド様……!」
「あはは、結局キュイがいなくてもこうなっちゃうんだよねー……」
見事なまでのグダグダっぷりに早速先行き不安を覚えるユフィリア。
とはいえ、グランツやオルファンスにあそこまで豪語してしまった手前引き返しようがない。
何とか奇妙な流れを食い止め、かろうじて新人研修に日を跨ぐ必要は無くなったとか。
いい加減バトル書きたかったのとレオンとカルシオン出て無いなーと思って出演。
更に契約精霊(仮)という存在でアポロンとニケまで出すという地味な大盤振る舞いっぷりです。
後者は多分銃撃なあちらを浮かべる方が多いかと思いますが、一切関係ありません(ついでに作者は2日だけやってすぐ止めました)
ついでにここから先の展開用の裏話という感じで。
出てきたのは初代と4の中盤の雑魚イメージが強いブレイドとアサルト、後はエアレイド安定なサイクロプス。
魔物に混ざりつつしれっといてもおかしくないと思ってのチョイスです。
そしてユフィリア、いきなりコイン拾いに付き合わされたりとキュイ達に振り回される巻。
この軽快な掛け合いこそラス騎士団の楽しいところで、作者がグランサガを始めた最大の理由だったり。
端からボイス聞いてやりたくなるというのは現状このゲームだけで、そういう意味では原神をも上回ってるんですよね……(個人比です)
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)