後から書きたい場面がじゃんじゃか出てきて収拾がつかない状況ですね……。
転天サイドもこの辺りで出番欲しいなーってキャラまだいますし、あの辺とかあの辺りとか
モチベは落ちてないのが唯一の救いなのですが、それが文に繋がらないのがキツイところです。
『意気揚々と向かってくるのは勇気か蛮勇か……どちらにせよ、稀人ならではといったところか?』
最近よく見るなあ……そんな風に夢だと認識してすぐに聞こえてきたのは、威厳たっぷりの低い声だった。
ふと目を向けると、そこにいたのは……いつぞやか私を蚊蜻蛉のように払い落とした、憎き緑色のドラゴン。
あれ、ただこんな風に声を発してなかったような気がするんだけど──
なんてことを暢気に考えている内に、これまた見覚えのある景色が再生されていく。
……相手の慢心を突いたと思い込んで、そして好機を突いたと思って突貫したあの時だった。
これが追想であるなら、次に起こることも容易に想像はついてしまう。
『ふむ……精霊ありきの今の世界ならば、まあ常識の外になるのだろう。古き世を知る側としては、物足りんがな』
皮肉気たっぷりなお言葉と共に、呪詛混じりの咆哮を浴びせられる。
ああ、やはり……この時はもはや相手としてすら見なされていなかったということだ。
絶好の機会に自ら爪や牙を向けなかったのも、そこまでする価値も無いと判断されたから。
──そして映像は、別の人物がドレッド・ドラゴンと相対する場面に切り替わる。
勿論、その光景にも見覚えはあった……それはもうありありとね。
『やはり殺し合うなら、知性も理もきっちり備えている者に限るな』
『この空気で尚そのふてぶてしい面構え……それでこそ狂人だ』
あっさりと墜とされた私を救出したのは、最近評判の『無慈悲な主役』だった。
今ならば、私の最愛の末弟と同一人物だって知ってるんだけどね。
というか、あの一歩間違えば死ぬって状況でこんな会話してたわけ……?
……取るに足らない存在とまともに目を向けられなかった私とは、まるで大違いだ。
『……末弟の爪の垢を煎じて飲ませるべきでしょうか』
『マドラーシュまで事に当たってくれるのならば是非もなしだ』
……そんな末弟は、本来ならば陰に徹しなければならない存在だったはず。
それなのに、私やアルくんよりも父上と母上からの信頼を勝ち取っている節さえある。
ヴァンパイアの魔石絡みの件も、スムーズに行ったのはマッドくんの存在あってこその面があまりに大きかった。
挙句、魔力制御の臨時講師も担ってしまい……渦中のレイニもあちらを先生と呼び出してしまうほど。
──私が関わっている必要なんて、本当にあったのだろうか。
『まだまだ甘いですね王女殿下。相手を確実に仕留めたかどうかはしっかり確認しないと』
再び場面は変わって、映し出されるのは記憶に新しい失敗だ。
高笑いするモーリッツと、心臓を穿たれて倒れ伏すレイニ。
この後は怒りに身を任せながらモーリッツに斬りかかり、結局相手は更なる隠し玉を持っていて、私自身はガス欠で戦闘不能。
そのまま終わりかと思ったところで……
『ここから先は最終幕の血の饗宴、無理せずゆっくりご覧あれってね』
そこからはまさに主役の独壇場……というよりやりたい放題の極みだった。
しかし、モーリッツの妄執はそこで終わらず……更なる進化を果たすという最悪の事態にまで至ってしまったのだ。
大精霊と同格……かは分からないが、それでも常人では及ばないところまでモーリッツは到達していた。
本来ならば、ただの人間で抗える存在ではない……はずだったのに。
『そっちがクソな信仰を見せつけるなら、こっちは人魔調和の過程を見せてやる』
『てめえら如きがどれほどのヤツからどれだけ力を与えられようと……全部無駄なんだよ!』
相対するマッドくんにはまるで恐れなどなかった。
放つのはいつもの軽口、そしてその顔は仇敵を殴り飛ばせることに対する歓喜すら見受けられていた。
ユフィのように圧倒的な魔法の才能があるわけでもなければ、私のように魔石をその身に刻んでいるわけでもないのに。
ただの人の身一つで立ち向かうその様は、まさに……英雄のソレと言わざるを得なかった。
『本当に圧巻だったわよね~。魔法とか精霊って何それ美味しいの?ってさ!』
「……またアンタ?いちいち人の夢に出てこないで欲しいんだけど」
『夢の中で出て来るのに許可申請がいるの?そんなルール、聞いたことないんだけどなー』
いつの間にか回想シーンは終わり、聞こえてきたのは以前と同じあの声だった。
相変わらずイヤミ全開で、使えるものなら今すぐドラゴンの力で追っ払ってやりたいくらい。
無論、意味が無いからやらないけどね……ここは口を動かしてなんぼだ。
「随分と謎チョイスの回想上映だったけど、一体何のつもりなのさ」
『あれれー、これでもすっごい分かりやすくしてるんだけど。随分と察しが悪いというか……それとも例のお山の三猿状態?』
「あんな断片的な場面の数々だけで分かるわけないでしょうが……!」
ああダメだ、やはりコイツは何も教える気はないのだろう。
この嫌味な感じ、本当に癪に障ってしょうがない。
『まあ、この様子なら否でも分かる時は来るでしょうね。きっと手遅れになってるでしょうけど』
「それならここで教えてくれたっていいじゃないのよ。勿体ぶるんじゃないわよ!」
『私は別に攻略本とかじゃないし、そんな義理は無いっての。まあせいぜい推理は出来ましたくらいのバッドエンドには収めなさいよねー』
小馬鹿にした物言いに更なる反発を返そうとした時、私の意識は覚醒した。
何となく嫌な感じの上映会から脱したことに、思わず安堵の息を吐いてしまう。
がしかし、現実もまたそんなに優しい状況ではなかった。
「──しまった。まーたやらかしてるよ私……」
意識が覚醒すると共に襲来してくるのは無機質で硬い床の感触だった。
どうやらまた、作業の最中で寝落ちをかましてしまったようで。
要は、色々散らかっている工房の中で見事な雑魚寝……咎めない人間が一体何人いるのかと、そんな蛮行だ。
夢の世界に旅立っている間に現実の物損被害を起こしていないのは幸いと言えるが……
「……最悪の寝起きって、まさにこういうことだよね」
さっきまで見ていた夢が相当に胸糞悪かったのは言うまでもなく。
そうでなくても、新たな魔道具はまるで浮かばない。
まさしく八方塞がりなわけだけど、このままでは勿論ダメだ。
藻掻かなければならない……前に進み続けなければならない。
その先にこそ、誰にも認めて貰える王女の姿があるはずだから。
私、ユフィリア・マゼンタが見習いとして着任してから早2週間が経過した。
時間の流れとはやはり早いものだが……これまでになかった忙しなさがそうさせたのでしょう。
何せ、ラス達特別近衛騎士の誰かかしらかについてはその補助作業につきっきりだったのだから。
本日は珍しく、ラス達6人が揃ってやや遠方に出るとのことで同行させてもらっている。
ある程度慣れてきた馬での道中を終え、今は徒歩で目的地へ向かっている最中だ。
「それにしても、ユフィリアもすっかり板についてきたよね~」
「むしろ私の方が勝手に付いているだけなのですが……皆の邪魔になっていないか、そこだけが不安です」
新たに踏み出しの段階で標となってくれたのは彼らだ。
背中が見えかけたと浮足立った私に、地に足をつけることを教えてくれたのはとても大きかった。
そこに対する恩返しと、私自身の利の為にもこの激流の日々に食らいついているわけで。
……そこでまた独りよがりになっていないか、特別近衛騎士が揃っているこの機に伺ってみる。
「な~に水臭いこと言ってるのよ。不慣れなところはあるのは確かだけど、そこを差し引いてもアタシは助かってるわ」
「少なくとも、どこぞのバカのようなムチャクチャしでかさねえ分はまともだな」
「素直に褒めればいいのに、カルトってば相変わらずいばりんぼかつ捻ってるねー」
「うっせえよドチビ、これでも優しく言ってる方だろうがよ」
案の定というべきか、彼らの活動範囲は多種多様と言えるくらいには広かった。
ラスのように便利屋が如く困りごとを解決するという平和的なものから、ナマリエやカルトのような魔物ないしならず者を制圧する非日常的業務。
他にも護衛や救援と言った騎士ならではの任務もあり、その度に求められることがガラリと変わってくる。
あのマッド様が見出し、グランナイツに半ば認められている……言うなれば、この国きっての精鋭なのだ。
妨げになっていないと分かって、安堵の息を吐くのは当然ですよね?
「ウチとしては、報酬を貰いそびれてばっかりなのは良くないと思うから一言物申すよ!」
「別に私は金銭絡みで動いているわけではないのですが……」
「いくらお貴族様でも貰うものは貰わないとダメだと思うよ!そういうノリを理解できるように、ウチもキョーイクしてあげないとだね!」
「キュイちゃん、それは流石にマッド様に怒られるんじゃないかな……?」
このように、そこそこにがめついミケ族もいるのですが。
とはいえ、キュイも報酬ありきとはいえ仕事に対してはとことん真摯であることは疑う余地もなしだ。
いい加減にこなすどころか、むしろ必要十分以上を満たすことが多い。
その分、普段の問題行動が目に余って……既に幾度か巻き込まれたことも。
……物凄く物騒な言葉を聞き流しながら歩を進めると、目的地であるカル渓谷に足を踏み入れていた。
王国北東部所在のこの地は、以前にマッド様とラス達が神獣グリフォンの暴走の原因追求の為に訪れて、そして死闘を繰り広げたという場所だ。
それなりに危険な地域ではあるものの、遺跡や神殿の調査に赴く学者もまだまだ多いらしい。
「確か、魔物の動きが再度活性化したのでその調査と可能であるなら鎮圧……ですよね?」
「その様子だと、早速何か引っかかったようだね?」
「……ええ。この地の精霊からイヤな気配が漂っています」
アニス様の精霊に対する持論や顕魂術の理屈などで精霊に対して客観的姿勢は強まっている。
それは魔法と顕魂術の両立にも繋がっているが、思わぬ副作用として生まれたのがこの技能だ。
マッド様やプリシラが用いる感知能力と似通っているが、私なりに出来ることを模索した結果の一つとしてそう悪くは無いと自負している。
実際、この面々の動きについて行くために大いに役立っているのだから。
「……上の方と、あの遺跡の辺りが精霊のざわめきが強いですね」
「ボス級が2か所に分かれてるってわけね……キュイ、アンタは絶対に遺跡の方に行っちゃダメよ?」
「なんでさー!ウチ、ついでにお宝探しをする気満々だったのに!?」
調査任務中に何を考えているのですか……。
これで私より1つ年上なのですから、世の中は不条理だらけと実感できるものですね。
……アニス様も2つ年上と思えない行動も少なくないので、ある意味同類と言えますね。
「戦力調整とお目付け役も兼ねて、俺とセリアード、キュイにユフィリア様が頂上付近。ウィン、カルト、ナマリエは遺跡の方を頼めるかな?」
「それが妥当だろうな。ユフィリア様、大変心苦しいですが……その、キュイの見張りもお願いできますか?」
「適切な戦力配分なのは私でも分かることですからね……少々気が重いですが、やってやれないことはないはずです」
「どうか気を楽にしてください。私とラスも付いていますから!」
……ああ、何というかマッド様がセリアードを癒しと豪語する理由も理解できますね。
アクの強い面々の中、控えめかつ良心的と来ればさもありなんといったところ。
貴族ではないはずなのに、どこか品があるのは気になるところですが……。
そんなこんなで、私たちは二手に分かれて各々で調査を開始することとなった。
戦闘警戒の基本態勢として、ラスが先頭、私が中衛を担ってセリアードとキュイが後方から付いてくる形である。
「ぶーぶー、こっちじゃあお宝が無くてつまんないよ~」
「そもそもキュイ、ユフィリア様とセリアードに探索を任せきりというのはどうなのさ……?」
「こういうのはテキザイテキショだって相棒も言ってたよ?ちなみにウチはぶっ飛ばすの担当ってことで!」
「そこは殲滅担当にしてください。キュイの場合、吹き飛ばし行為に転ずるとロクなことにならないではありませんか」
正直、キュイのちゃっかり気質については既に諦観の姿勢でいる。
勿論最初は抵抗していましたが、結局あの手この手で出し抜かれてしまうので……。
無視しようにも、あの手この手で突っ込んでくるからどうしようもありませんし……マッド様が天災と称するのも理解できます。
まあ、その過程で同じく雑事を押し付けられがちだったカルトと意気投合出来たりなんてこともありましたが。
「これくらいはお安い御用ですのでお気になさらず。それに、キュイが細かい魔力制御が不得手なチビだというのはマッド様より常々伺っていましたので」
「しれっとウチをチビ呼ばわりな時点で絶対相棒のコメントじゃないよねそれ!?」
「ユフィリア様ってよくカルトさんとも早朝訓練していますからね……こればかりはキュイちゃんの身から出た錆になるんじゃないかな?」
「セリアードまでひどーい!というかユフィリア、それならロムのことはドチビって呼ばなきゃダメなんだからね!」
「ちょっとちょっとー!?関係ないあたしを巻き込まないでよー!」
確かにキュイがチビならばロムはドチビではありますが、流石にそれは酷いので自重しますよ?
……まあ、何か言われた時の牽制程度なら考え無くはないですけど。
「あはは、この2週間ですっかり溶け込んでるねユフィリア様」
「……正直、自分でも急激な変化に驚いています。やはりおかしいのでしょうか?」
「俺としては親しみやすさが増していいと思うよ?多分マッドも盛大に面白がってくれそうだし」
「結局あの人はそこなんですね……そろそろ不意打ちで顔を合わせて、上手いことはっ倒して意趣返ししてやりたいです」
「気持ちは分かりますが、一応ユフィリア様を思ってのことなので手加減して上げてくださいね……?」
セリアード、宥めているところ申し訳ありませんが……それは約束しかねますね。
ある程度視点を後ろに置けるようになって、この2週間が新たな冷却期間であることは理解できた。
婚約破棄疑惑が投げかけられた際にアニス様の元に預けたのも、視野が狭い私に対する荒療治も兼ねてのことだと今更ながら分かったのだ。
とはいえ、それを成し遂げる様を上から目線で面白そうにしているのは気に入らない。
だからこそ、今度は感謝と不満が同時に貯まるという不条理に苛まれているわけで……っ!
「──っ!ラス、セリアード……来ます!」
「人間の気配を察して向こうから来てくれたようだね……俺は前で囮役に回るよ!」
雑談の最中に降ってきた感覚をそのまま伝えると、3人は一気に臨戦体勢となる。
早速セリアードはいくつか補助術を全員にかけ、ラスは一気に魔物のど真ん中に突っ込んでいく。
その様はまさに、炎の竜巻……その道すがらにいた小型の魔物は軒並み吹き飛ばされている。
土属性の魔力で速度と突進性を増す辺り、力押しに見えてなかなかの技巧派な戦い方ですね。
「これは負けてられないね……それじゃあ、エリオ特製のマリョクユウドウバクダンでイチモウダイマジンだちゅどーん!」
「そんな大規模攻撃で崖が崩れたりしたらどうするのですか!?」
「ユフィリア様、風属性の防壁を!私は向かってくる魔物を水球に閉じ込めます!」
そんなラスに触発されて、キュイもいきなり大盤振る舞いをしでかすつもりのようで。
遠慮なしに即席大火力を放り投げる問題行動に対して、私は球体状の防壁『エアスクリーン』を拡散展開する。
ある程度水の魔力も注ぎ込み、更にセリアードが放った水の戒めの余波で過剰な爆発の影響を抑え込んで見せた。
これでいきなり崖が崩れるという最悪の事態は防ぎ切ったことを確認し、すぐさま第一波の殲滅に加わる。
「せっかくの補助を無駄にしてはいけませんからね!」
狙いは感電による効率的な撃破……使うのは当然雷属性である。
掃討戦は始まったばかりなので、あくまで得物に付与する程度に留めてはいますが……それでも一刀の下に伏すことは出来ている。
ちなみに、今私の手に握られているのは慣れ親しんだアルカンシェルではない。
先日の晴れ舞台で少しばかり無茶をさせ過ぎたので、アニス様を通じて今は鍛冶師に見てもらっているところだ。
代わりに一般のレイピアを用いていますが……やはり魔力の通りが怪しいところですね。
とはいえ、今は無いものねだりをする余裕などない……というより、してはならない。
「……この程度で弱音を吐くなど、あの人の耳に入ったら絶対に笑われますからね」
マッド様も顕魂術をカタチにするべく7年前ほどに同じことをしていたと、ラインヒルトも苦笑しながら語っていた。
いくつも剣を壊しながらの試行錯誤をする様は、私でも想像できるほどだ。
そんなあの人が今の私を見れば……恐らくは『出来る出来ないじゃない、やるだけだろうが』と嫌味な檄を飛ばすことでしょうね。
実際その通りの状況なので、反論のしようもないしするつもりもございませんが。
「すみません、ユフィリア様!何体か水縛から逃れてそっちに向かってます!」
「うわわ、予想以上に攻めっ気あるねこの子たち!」
キュイの言う通り、ここの魔物たちは随分と血気盛んに見える。
それに加えてこの数、通常戦力ならば間違いなく押し切られてしまっていただろう。
無論、私たちは少数であっても敷いてる布陣は決して質の低いものでは断じてありませんが。
特に、本来ならば攻撃に回らないはずのセリアードが放つ水属性束縛術は厄介極まるところでしょう。
キュイの猛攻の合間を縫ったところに引っかける辺り、控えめに見えてやはりマッド様の弟子であるところが窺える。
そこまでして尚止まらないのだから、今回の魔物の活発さはスタンピードのそれといい勝負かもしれない。
「しかも、その攻めっ気がより面倒になる類のご登場ですか……!」
第二陣として姿を現したのは、エキドナシャクガとモスリン……大まかな見た目こそ違えど、どちらも巨大な蝶と言える魔物だった。
どちらも私にとっては書物でしか見たことが無い初見の相手だが、この渓谷に赴くと知って予習は抜からず。
厄介なのは人体に有毒な成分を含んだ鱗粉、これをばら撒きながらの体当たりや風起こしがひたすら面倒極まる行動である。
「それなら、最小かつ最速の攻撃で着実に仕留めればいいだけのこと……『ライトニングピアス』!」
雷を纏った突貫で手頃のモスリンに一気に肉薄する。
やられる前にやる、そんな意図で放った私が持つ中でも最速の一撃である。
少なくとも手応えはあった……が、即座に感じ取ったのは相手の攻撃続行の意志だった。
どうやら、現状の火力不足は思った以上に顕著なのでしょうね。
「ならば手数で強引に補えばいいだけのことです。『サイドワインダー』!」
即座に切り替え、相手に行動の暇を与えない策に急遽変更していく。
もう片方のレイピアを空いた左で握り、少しでも軌道を曲げて一手一手を読ませないようにする。
右の方はその場で魔力を再度充填しては雷混じりの刺突を連なるように放つ。
どちらも勢いに欠ける分、初撃に比べれば威力は落ちるが……元々虫の息だったモスリンを脱落させるには十分だ。
エキドナシャクガに対してはあくまで牽制が主なので、これで特に問題は無い。
この戦い方は、両腕で鎖剣を扱うカルトから拝借して自己流で再現したものだ。
さて、足を止めているところに更なる追撃を……
「ナイス足止めー!ここで本命の爆発ぶっぱだーちゅっど~ん!」
「って、人が折角効率よく潰そうとしているところに割り込むの止めてもらえませんか!?」
しかも、見覚えのある魔力オーブだったのでその場から離脱せざるを得なかった。
あらゆるものを食らい尽くす、大食らいの悪魔を顕したその術で私が足止めをしていた蝶たちを一気に纏め上げる。
無力化と纏め上げを同時に執り行い、トドメとしてこれまた遠慮のない大火力の魔力砲撃……って!
「自滅する気ですかこのバカ猫!」
人がせっかく注意していたというのに、
その余波によって、懸念していた鱗粉があちこちに撒き散らされていた。
即座に『エアスクリーン』を複数展開することで何とか毒素の拡散を防ぐ。
更には察しのいいセリアードが即座に回復術を撒いたので、ひとまずは問題ありませんでしたが……。
「もう少し周りに気を遣ってください!セリアードがいたから最悪は回避しましたが、そうでなかったらどうするのですか!」
「へっへーんまだまだ甘いし温いし浅いよユフィリア!ウチをまともに使えないようじゃあ、相棒の隣なんて夢のまた夢だよ!」
「キュ、キュイちゃん?あんまり煽らない方が……」
……仲裁に入って頂いたところで申し訳ありません、セリアード。
今の言葉には自分でも分かるくらいにはカチンときてしまいました。
思いっきりマッド様の言葉を引用して……絶対に狙ってますよね、この爆弾ネコは。
ここまで言われて、黙っていられるほど……もう私はいい子ちゃんでいるつもりはございません。
いいでしょう、そうなったらこちらもなりふり構わずで行かせてもらいます。
「お、やっといい顔するようになったね。でも見習いコーシャクレイジョーがウチについてこれるかな~?」
「──その減らず口、すぐにでも閉じさせてやりますよ。負けても吠えないでくださいね?」
「それはこっちのセリフだよーだ!」
先制と言わんばかりに近くで暴れているハウラーに対して『フレイムウィップ』を放つ。
無論それだけでは手数が及ばないのは当然で、更に空いた左の手刀を凪いで『ウィンドカッター』を複数起こして遠くのグレイウルフを狙い撃ちする。
あえて遠方の相手を狙ったのは、キュイの視線から先読みしてのことだ。
こうすれば、相手を封じつつ私だけ一方的に撃破数を稼ぐことが出来る。
まさに一石二鳥という言葉の典型例というものです。
これなら口でどれだけ煽られたとしても、そよ風程度にしかならないはず……!?
「しょ~がない、ウチもちょっと本気を出して上げよう!それ行けプロトサマエル!さ~ら~に混ぜ混ぜ~!」
腹が立つほどに暢気な声と共に発したのは、まさに異様な光景だった。
よく分からない筒状のナニかが浮かんでは火属性由来の魔力を凝縮して放つ……まあこれだけならばギリギリ分からないでもない。
しかし、流石にもう1つの方は看過出来なかった。
──ムム種と括られる魔物が、あろうことかキュイの指令に従って動いているのだから。
更にはキュイ自身と連携もきっちり取れており、私の先制パンチもあっという間に帳消しにされてしまう。
「自分の魔力で魔物を召喚なんて、マッド様とアルガルド様だけではなかったのですか!?」
「むしろこれはウチが最初に考え付いたことだよ~だ!まあマッドにも手伝ってもらったから実質キョードーカイハツってやつなんだけどね!」
「……は?」
この爆発魔、たった今共同開発とか言いませんでしたか?
……私の事は放っておいて、その間楽しく仲睦まじくということですか?
なるほどなるほど、あの問題児は甘やかして私にはどこまでも厳しく行くと……
──私の中で新たに歯車がカチリと嵌まった。
「ちょっとちょっと!?ユフィリアが無表情のまま攻撃ペースを上げてて怖いんだけどー!?」
「とにかく邪魔にならないようにするしか……でも、万が一のことを考えて防御寄りの補助だけでも!」
「せめてラスが合流するまで持ち堪えないと……というかセリアード、冷静過ぎじゃないかな!?」
なんて遠くから聞こえてきたやり取りの後に、水属性を基軸とした魔力の防護膜が張られる。
ただ大暴れしているだけのネコ娘とは大違いですね……お陰で遠慮なく攻められるというもの
とはいえ、ふざけた口調ながらも本気を出したキュイの殲滅力は相当なものだった。
ファイヤームムで集団を釘付けにしつつ防壁として、自身は奇妙な物体やら何やらで一気になぎ倒していく。
明らかに分が悪いが……一度受けた勝負に背を向けるなど以ての外。
(利き手で顕魂術、逆で魔法……これでもう少しマシになるはず!)
主な攻撃は顕魂術の『フレイムウィップ』や『ライトニングピアス』を右のレイピアを基点で放つ。
足止めと牽制という役割に徹底させる形で、精霊を介した『ウォーターバレット』、『ファイアボール』は左のレイピアを媒体に放っていく。
双方で役割を明確化することで、二刀に不慣れな状況を少しでも緩和する形だ。
その場しのぎ全開で、火事場の何とやらにも近しいが……なりふり構ってなどいられない。
しかし、ここまでやっても私ばかりが獲物を潰せているわけではないのだ。
ふと視界を横にずらすと、ここぞとばかりにキュイも更に攻勢を強めている様子が直に映る。
奇妙な筒やらムムの召喚、更に自身の手から火球を放ったりと並行して放つ数は明らかに私より上だった。
(足りない……っ!威力も手数も、彼らの並にすら及ばない……!)
やっと見えたと思ったその背中をまた霞ませるなど以ての外だ。
こちら側に来た以上、居場所は自分で作って見せなければならない。
あの人がグランナイツの教え子足る人物に常時自分を押し上げたように、私だってそう在りたいのだ。
その為にも、これまでの殻を破らなけらばならないのだ──!
「ってユフィリアちょっと待ったー!武器をちゃんと見て!」
「ロム、変な戯言はそれくらいに──って、ええ!?」
思わずそのまま振ってしまい、あまりの軽さから柄がすっぽ抜けそうになってしまった。
一体何事かと手元を見やると、刀身が綺麗さっぱり無くなっていた。
まだこれからという時に、何という失態……しかも2本ともである。
どうしてこんな時に限って、こんな事故が……っ!
「た、多分ムキになりすぎて魔力を込めすぎちゃったんじゃないでしょうか……?」
「あー、そういえば相棒も昔よくやらかしてたね。そんなところまで真似するなんて、ユフィリアはやっぱりマッド大好きっ子だね!」
「どこをどうやったらそんな解釈になるのですか!?そもそも狙ってなど……っ!?」
キュイの戯言に口を尖らせていた、その時だった。
明確にこちらに向けられた濃密な殺気が、恐ろしいまでの勢いで突進してきたのを察知したのは。
強烈な寒気で震えが生じてしまうも、何とか己を奮い立たせてはその場から即離脱する。
『エサの分際で避けるか……おとなしく食われていればいいものを!』
「うわ、確かコイツがボスじゃなかったっけ。ええっと、名前は確か……」
「
白い牛の頭、巨大な斧を両手に掲げる二足歩行の狂暴な魔物。
元々発見例が少ないミノタウロス種ですが、光を主な属性とする辺りも稀有さに拍車をかけていると言ってもいい。
『まあいい、これほど上質なエサを逃す程オレは間抜けではない。地の果てまで追いかけ、食らい尽くしてくれる!』
「うわわ、ノウキンに見せかけて割とずる賢いよコイツ!ユフィリア、何とか避けてー!」
「言われずとも、分かっていますよ!」
キュイとセリアード、ロムには目もくれずにあくまで私狙いですか!
とはいえ、武器を破損させて明確に戦力が落ちているところを狙うのは論理的と言えなくもない。
的確に数を減らして相手の有利項目を削っていく……マッド様やイグノックスでも真っ先に考えてすぐに実行することでしょう。
しかし、どうにも違和感が拭いきれなかった。
その理由は、先ほどから響き渡る声にある。
(何故、私の胸の内もこんなにざわついて……いえ、恐怖を覚えているのですか!?)
それこそ、探知の段階で怯えていた精霊の様子がそのまま私に移ったかのように。
現状はその嫌な感じを何とか振り切って、回避に専念できているのが救いですが……いつまで持つか分からない。
そもそも、セリアードやキュイは果敢に横槍を入れているのだ。
爆弾魔であるキュイはまだしも、セリアードは補助と回復を担いながら更に相手の行動を妨げようと奮起しているほど。
(……マッド様ならば、心地よい殺気とさぞ笑っているところでしょうね)
それはもう、狂ったように笑い飛ばして回避と攻撃を両立させているはずだ。
半ば大精霊と化したモーリッツと相対した時など、まさに強大な敵に立ち向かう主演の立ち位置を楽しんですらいたのだから。
対する私は……何ともまあ無力で無様な姿を晒していることか。
捕食者然とした獰猛な殺気に僅かながらの怯えを抱きながら、ただただ避けて避けて。
どう見ても醜態窮まる自分に苛立ちすら覚えてきた……そんな時だった。
「いくらミノタウロスでも、あんまりしつこいのはどうかと思うよ!」
どこかで聞いたことのあるような軽口の次に、強烈な打撃音がその場に響き渡る。
人体ならば間違いなく聞こえてはいけない音を発したのは……言うまでも無く現特別近衛騎士団のリーダーだ。
合流がてらに放ったただの飛び蹴りなのだろうが、明らかにその威力は尋常ではない。
体格差もまるで気にならない程の強烈な一撃──不意打ちということもあるのだろうが、強烈な印象として暫くは頭に残りそうですね。
「おっそいぞラス-!遅刻の罰金を払いたいのかー!?」
「それに関しては本当にごめん!やっぱりマッドやオルタのように速攻殲滅ってわけにいかなくてさ!」
「一人で囮をこなして更に殲滅してる時点で大概だと思うのですが?」
そんなことを言われたら、こちらの立つ瀬がなくなってしまうのですが。
これでマッド様より遅いなんて、つくづくこちら側の魔境っぷりは凄まじい。
……しれっと聞き捨てならない名前を耳にしたが、まあそこは置いておきましょう。
「
指示よりも先にセリアードはラスの補助にすぐさま回っていた。
設置したのは頭部を蹴り上げたラスの高度を維持するための足場、そして周囲の魔力を高揚させる結界。
言えば単純な補助だが、どちらも魔法では実現されていない。
この顔ぶれの中でおとなしいから見落としがちだが、彼女もまた自分だけが持つものを徹底的に尖らせているようだ。
そんな補助を受けたラスは、宙に浮く足場を基点に一気に跳躍して──連続で踵を落としていた。
周囲には火属性魔力による円形の刃も展開されており、術者の回転に合わせてコルンバを切り刻む。
その術は、
まさか体術に応用するとは……更によくよく見ると土属性の魔力も扱い、一撃一撃をより重たくしているおまけつき。
「うっわー、ラスってば相変わらずえげつないね。流石はマッドお墨付きのバ火力!」
「ラスの癖に生意気だー!ウチだってあれくらいやってやれるのに……!」
「この状況でよく横入りする気になりますね……?」
そこからは腰に収めている両刃剣を取り出して、縦横無尽に切り裂いている。
一見すると派手さは無いように見えるが、魔力運用という観点に立つとなかなか興味深い。
彼の場合、術を剣に乗せて放っているというよりも魔力をそのまま物理的な力に置き換えているように見受けられる。
マッド様の扱う術よりも軒並み高威力に見えるのは、恐らくそこが理由なのだろう。
更には、コルンバの反撃の芽も悉く潰した立ち回りも当然のように抜け目なくである。
まるで相手の動きを予知しているが如く、先んじてかわしつつ斬りかかったり、時には強烈な斬撃で相殺して怯ませたり。
為す術もない状況に追い込む形で完全に格付けを済ませたから、トドメまではそう長くは無かった。
「ドラゴンには劣るだろうけど、今日はいい具合の夕食になりそうだ!」
獲物である両刃剣の切っ先を真下に向けながらの落下は、まさに一本の火矢とでも称するべきか。
もはや意識が朦朧としているミノタウロスの脳天に抉り込むように刃が入ると、抉り込むように炎刃を展開されて。
強固であろうその筋肉の塊を、あっさりと一刀両断してみせていた。
「よし、とりあえず上手くいった……ユフィリア様は大丈夫?」
「お恥ずかしいことに、回避に専念するのがやっとでしたので……手間をかけさせてしまい、申し訳ありません」
「いや、あの場面は後衛の方に行かせないように引き付けるのが定石だからむしろ助かったよ。マッドに会ったらその辺りを強調して報告しておくよ……武器のことは隠した方がいいよね?」
「……念のためお願いしておきますね」
きっとキュイ辺りから伝わって、大笑いされること間違いなしでしょうけど。
そもそも良かったところを伝えても、あの人の場合『ええー、本当にござるかー?』なんてふざけたことを抜かしそうですからね
……と、今はそれどころではありませんね。
私にしか聞こえなかったであろう、捕食者が獲物を前にしたような声について追加で報告をする。
「ユフィリア様にだけ聞こえた殺気混じりの声をこのコルンバが……?」
「ウチにはひたすらブモブモ五月蠅かったようにしか聞こえなかったよ?」
「私も……ただ、やたらユフィリア様ばかり狙っていたの確かでしたね」
「……ユフィリア、どこかで恨みでも買ってたりとか?」
「魔物相手で何故そうなるのですか……」
人間相手ならまだしも、ミノタウロスにそんな感情を向けられる覚えなどあるわけがない。
普段から無慈悲に魔物を狩りまくって魔石を収集している戦闘狂……要するにマッド様なら有り得なくもないでしょうけど。
「とにかく、3人も終わった頃だろうし合流しよう。あっちはあっちで別の原因があるかもしれない」
リーダーであるラスのその言葉を皮切りに、私たちは来た道を引き返していく。
周囲の警戒を怠らないままに、私はどうしても直に向けられた殺気を反芻させてしまう。
また何か、奥深くに未知の何かが潜んでいるというのでしょうか。
どうにも嫌な予感が拭いきれませんね……色々な意味で。
アニスフィアの方は原作とはちょっと違った感じに曇らせております。
本作ならではで、且つかなり個人的解釈ですが。
一応これまでに傾向を出していたので、原作と照らし合わせれば分からなくもない……はずです。
そしてユフィリアは仲良くラス達と討伐任務。
思いっきりキュイとバチバチに競い合ってますが、まあこれも書きたかったあれこれです。
ヒートアップの挙句武器壊しは、まあ似た者同士ですねえということで。
そろそろ冷却期間は終わらせたいところですが、果たしてどうなることやら。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)