というわけで、まさかまさかの遊戯王のシンクロモンスターVSDMCの上級悪魔というこれまたドリームマッチ勃発。
あれ、これ原作なんだっけ……一応前者は転天要素も絡めて出してるからセーフということで。
リアルファイトで遊戯王、要するにディアハっぽいのをやりたかったのが本音ですはい。
バトル執筆中の脳内BGMは完全に転倒王者モトキングのテーマ曲でした。
11/07:全体的に大幅修正しました
目の前のその光景は、どう切り取っても滅茶苦茶としか言いようがなかった。
魔物以上の明確な悪意と共にこちらに襲い掛かる未知の敵に、あろうことか顕魂術で対抗するガッくん含む魔法が不得手の兵たち。
その中には、美しき友人も混ざってすらいる。
己のアイデンティティと言えるソレをかなぐり捨ててまで食らいつくその姿は、もはや私の知っている彼女ではないようにすら見える。
そんな面々を束ね、更にその上を行かんとするのは……王族でありながら、知ったことかとやりたい放題を極める我が末弟。
(確かにこれまでも散々やらかしてたけど……今回ばかりは流石に度が過ぎてない?)
魔法が使えない、よって精霊の気配も感じ取ることが出来ない……これこそがこの世界の理だ。
だからこそ、私たちは王族として致命的な欠陥を抱えていては後ろ指を指され続けて……その結果、それぞれ魔学と顕魂術に至った。
私は精霊石に着目して、あっちは魂と魔力の関係を重視して……それでも魔法モドキから抜け出すことは無い。
どれだけ『本物』には近づけても、そのものにはなれやしない……まあ、私はだからこそ焦がれ憧れてしまうんだけれども。
それでも、弁えなければならないラインというものがある……はずなのに。
(そこのところをすんなり踏み越えた挙句にこんなの……色々と滅茶苦茶じゃん)
その光景に対して、真っ先に私が抱いたのは既視感だった。
……前世の記憶やら知識が唐突に降ってきたあの時と似た、頭がグチャグチャになる感覚もセットで。
そこから私はその答えに行き着いてしまった。
私自身は覚えがなくとも、あの『レッド・デーモンズ・ドラゴン』は、前世に近い何かの縁があるのだと。
勿論、偶然の可能性も大いに有り得る。
しかし、ただでさえ自力で精霊を感知するという荒業を見た直後だ。
疑いの目を向けてしまうのは仕方ない……が、それ以上に内に秘めるのは批判的な試行であった。
(何で、君はさぞ当たり前のように突き進めるの?壊すことをまるで厭わないの?)
魔法が使えないという不利を覆す、そこまでなら全然かまわないと思う。
だけど、目の前の末弟が行っているのは……まさに、既存の世界を壊しかねないような常識破壊だ。
それこそ、異なる世界のソレを押し付けるような
いくら新時代の先鋭を担っているからと、やりたい放題の化身だと認知されつつあっても限度というものがあるはず。
行き着くところまで行ってしまえば……その先は致命的な破綻が待ち受けているのでは?
そんなことすらも知ったことかと突っ走るなんて、あまりに自分本位が過ぎる。
もはや問題児なんて枠すら飛び越えた、あらゆる意味で暴虐的な災いになりかねない。
……そうなりかねない同胞として、こう結論づけざるを得なかった。
「そんなの、許されていいはずない……許されてはいけないんだよ」
その威容ある災害を前にして、私はボソリと呟いてしまった。
……この奇妙な熱気を前に、すんなりかき消されるのは承知の上だよ。
「ハーッハッハッハッハ!流石は俺、やれば出来るもんだな!」
当の主役兼やらかし要因は、それはもう悪役が如くの高笑い。
そんな主に呼応するかの如く、紅蓮の魔竜も再度咆哮を轟かせる。
その身からほとばしるのは苛烈な喜色、現世にその身を曝すことが出来たことがよほど効いているのだろう。
周りはいつものように『まるで意味が分からんぞ!』と言いたげだが、まさにお構いなしですらある。
そんな中、呆れ半分の苦笑を浮かべるのは上空観戦中の二柱の元神。
そして、それなりのワケ知りな義妹も平常運転を示すように溜息を吐く。
「よくもまあぶっつけ本番でここまで……全く、呆れたものね?」
「どこぞの不良令嬢がやってのけたってのに、この俺が出来ないとかあり得ない……そうだろ?」
「それにしたって、毎度のことながら期待を飛び越え過ぎなのよアンタは」
すまし顔でこそあるが、言っていることはなかなかに滅茶苦茶である。
詰まるところ、負けず嫌いなのはお互い様ということだが……マドラーシュのそれはやられたら三倍どころか三乗返しと言わんばかり。
ユフィリアとて、自分なりの対抗策──精霊による魔力増幅を更に返されるとは露にも思っていなかったのは言うまでもない。
とはいえ、ここで呆けて負けを認めたくないので……あえて口を尖らせることとした。
「……やはり私の思い付きの一部を盗用したと認めるわけですね?語るに落ちましたか、バカマッド様」
「オイコラ、あくまでお前のやり方から着想を得たってだけの話だ訂正しろバカユフィ。同じなのは精霊を使うところだけで、その精度は俺の方が遥かに上なのは否めまい?」
「……精霊を核とした使い魔に彫魂石に刻まれた魂の写し身由来の魔力。これらを合唱のように相互作用させたのは流石です。……が、それも私が先に精霊という新たな要素を顕魂術に放り込んだから出来上がったこと。偉そうにしていないで、まずは感謝してほしいところなのですが」
「お前だってどうせキュイのやり方を見たから辿り着いたんだろ?その大元に俺も噛んでるんだ、お前だって人の事言えねえぞ?」
再度始まる憎まれ口の応酬、何度やれば気が済むのやらかだ。
普通ならば戦場で何してるんだというところだが、周囲の悪魔やら悪魔憑きは
そのせいで一時休戦の空気となっており……
「前から思っていたが、王族と公爵令嬢の会話じゃないよなああれ……」
「ふむ、あの様子なら噂の信ぴょう性も増すものだ。長らくマドラーシュ殿下を見てきた一人としては安心できるが……レオナは残念だったな?」
「待ってお姉ちゃん、それはいくら何でも畏れ多いから!私もあくまで尊敬の最上級系であって……」
この場におけるやりたい放題度合い第1位と第2位のしょうもない痴話喧嘩。
ある程度の事情を知る者からすれば、これ以上に見て聞いて面白いものもそうないのは言うまでも無く。
それが若干の心の余裕すら与えていたのだが……あくまでここが戦場であることを忘れてはならない。
「まあやっぱ来るよな……早速仕事だ!」
痴話喧嘩で気が緩んでいるように見せかけて、きっちり警戒を怠らない。
厭味を言いたくなるほどの隙の無さ、それに伴い紅蓮の竜は意気揚々と炎のブレスを放つ。
結果、完全に不意打ちで飛んできていた巨大ファイアボールをきっちり相殺してみせていた。
「はいはーい小休止は終わり、みんなそろそろ気を引き締めるように」
指導員か何かのようなジュンの軽い忠告と共に、再度鳴り響く重い足音。
マドラーシュの背後に君臨する紅蓮魔竜とは趣こそ異なれど、その威圧感はまだまだ健在だった。
発生源である
更に連動するように、
常人ならば再度パニックに陥りそうなところだが、ここの顔ぶれはマドラーシュの教えの一部を直に継いでいる者ばかり。
「マドラーシュ殿下、せっかくだからその物騒なドラゴンで一発かましてやってくださいよ!」
「こちらもまだまだ余力はありますので、露払いならお任せを!」
この程度で揺れる程柔な精神は持っておらず。
むしろやる気が満ち溢れているほどで……というより、言われずとも既に各々で悪魔やら悪魔憑き魔物に立ち向かってすらいる。
その様を見てしまえば、この男が乗せられないはずもなく……
「『第一次龍の丘怪獣大決戦』の開催に憂いなし、それでこそ鍛えた甲斐があるというものだ。ジュンとユフィ、そっちは頼んだ」
「りょーかい。そっちはそっちで盛大なデビルハンターデビューを飾っちゃいなさいな」
内に溜めたニトロを燃やし尽くすには、中級悪魔が相手でもまるで足りやしない。
それに、せっかく常識破りついでにと召喚したならばどこまで通用するのか試したくなるのが人情というもの。
実際、頼んでおきながらもその獰猛な目線は大将首にしか向けられていなかった。
その狂気的な空気に対して、ユフィリアとしては不平不満は隠せないでいるが……。
「はあ……どうせそう仰ると思いました。大変不本意で物凄く癪に障りますが、ここは従ってあげましょう!」
「おいおい、そういう口調は流石に古いぞ……悪役令嬢なりたいならもうちょい精進しろっての」
「下らない批評は後で聞きますから、さっさと行ってくださいバカマッド様!」
見事なまでの芸が滑り、むしろ締まらない見送りと化してしまっていた。
とはいえ、ここでずっこけを発生させたことで腹の内が探られずに済んだのは僥倖とも言うべきか。
極めてしょうもない企みではあるが、それを悟らせない辺りは流石ユフィリアと褒め称えるべきだろう……例え偶発的であったとしても。
ユフィがガークやフィオナ指揮官と合流するのを傍目で確認しながら、こちらは筋肉ダルマの元へ。
せっかくだから、それっぽい演出をしてやろうと……俺は
別に一歩前を歩くだけでもいいのだが、こちらの方がより『ドラゴンを統べている』感が出ると思ってやってみた。
にしても、一応悪魔に近しい部分も具現化しているっていうのにウケがいいのは意外だった。
てっきりもっとビビり散らかされたり、新兵よりなら気絶も想定していたんだが……そこはやはり、俺の見込んだ面々。
一名だけなんか呆けてるのが居た気がするが……まあ、今となってはどうでもいい。
──まさに今、上級悪魔と精霊統べし紅蓮魔竜というトンデモバトルが開幕しようとしているのだから。
「餌同士が仲良く手を取って竜の形を為すとは、弱小且つ矮小な貴様らならではの発想だな!いっそ清々しくて笑いがこみ上げるぞ!」
「筋肉塗れで視力まで低下しちまったか?あくまで俺の掌中でまとめて調律しただけだ、馴れ合いとかじゃねえっての」
いくら俺とて、真正面からこんな筋肉自慢の上級悪魔と殴り合うなどやりたくもないしまず出来っこない。
そこはスペック雑魚という欠点を抱えた、人間のどうにもならない限界故にどうにもならないことだ。
だからといってこういう連中と渡り合うのを諦める必要もない……そんなのいくらだってやりようはある。
大昔はその為の手段を精霊に縋ることで得て、今ではそれこそが常識となってしまったようだが……俺はその外へ行く。
その結果の一つがこのドラゴン、どこぞのクソトカゲと一緒にされたらたまったもんじゃねえ。
「まあこの際何でもよい、貴様の餌としての価値がより高まっただけの事だからな!」
「得体の知れないドラゴンまで食うとは、これまた随分な悪食なこって……セリアードとどっちが上なんだか」
「黙って贄になれ、減らず口が!今度こそ捻り潰し、咀嚼しつくしてくれる!」
今度は手加減無し、そう言わんばかりの突進が眼前へと迫りくる。
試合開始のゴングなどありはしない、まさに仕掛けたもの勝ちのルールな殺し合い……いつものことである。
「それ、まずは腕力測定だ。召喚者を失望させるなよ
跳躍して掌から離脱して、エアハイクの連続展開でいつもの間合い取りに準じながら激を飛ばしてやる。
すると、そんな俺の減らず口に対して返答の咆哮を上げる……こういうところも召喚者譲りってか?
そこから目の前の筋肉ダルマを見据え、その突進に真正面から受けて立つが如く立ちふさがって見せる。
「ちぃっ……!人間如きにひれ伏すような弱者が、この俺に盾突く気か!」
「何だその解釈違い……やっぱ脳筋には難しすぎる話だったか」
見た目こそ悪魔の部位を持つドラゴンだが、大元を辿ればコイツはいわば俺の精神……というか、魂の一部を模した存在だ。
自分の魔力だけでも出来なくもないのだが、その為には尋常でないほどの圧縮率が必要になってしまう。
そんなところに、
アイツの場合は、あくまで顕魂術発動の糧にしたわけなんだが……それは魔学における精霊石の役割を置き換えたのと同義。
恐らく悪魔共にビビっている姿を無意識に自分と重ねちまって色々プツンと来たんだろうが……。
──ったく、これでアイツもすっかり異端入りになっちまったってわけか。
なんて、今も爆走しているであろうバカ令嬢のことはこの際置いておかねば。
「この、肉壁の後ろで暢気に構えやがって……!せめて共闘でもしたらどうなんだ!」
せっかく召喚した
これでも一応顕魂術の先頭を行く者──姉上と同じ役回りを担ってるんだから、やるべきことはやらんとだ。
ひとまずテストがてらに一旦は攻防を任せているが……まあ、ぱっと見は見合った感じか?
(ここまでやられる気配が無いってのが既に一つの答えを示してるわけなんだが……)
見た目に似合わず攻防のバランスは良い……というより、想像以上に技巧派思考をしているようで。
ゴリアテに攻撃を先出しさせた上でその悉くをいなして細かい反撃を刻むことの方が多いくらいだ。
俺の考えそうなことをそのまま後追いしているが、これも調和イメージの影響なのかね?
勿論その両腕には、『アブソリュート・パワー・フォース』ないし
そのお陰か、危なげなく均衡を保ちながらも相手にのみジリジリとダメージを与えていた。
「……これなら、俺もそろそろ攻め手に転じても良さげか?」
その剛腕を
至って単純明快、役割分担からの理路整然とした数の暴力である。
質など一切度返しの、ゼロには何をかけてもゼロにしかならないそれとはワケが違う。
当然ながらゴリアテもそのシンプルな狙いに気が付くが……力比べの天秤は傾く気配はまるでない。
むしろその僅かな隙に掌底打ちが腹部に刺さり、ますます追撃の機会に恵まれることに──っ!?
「こんなところで足踏みなどしていられん……俺は、未来の魔界の王になるのだからな!」
──耳をつんざく怒号がするや否や、俺はイヤな予感と共に追撃を中断せざるを得なくなった。
結果的には、その躊躇なき勇退は功を喫してくれたようだ。
『アブソリュート・パワー・フォース』が直撃したにも関わらず、ゴリアテは怯む気配を殆ど見せずに癇癪と共に地団駄を踏む。
するとどうか──火属性と闇属性の混合魔力の大爆発が引き起こされた。
緊急だからか、充填そのものは明らかに不十分──それでもかなりの威力だった。
ついでにとばかりに、余波によるノックバックも発生──更なる攻め手をかまそうとしていた
更にその僅かな隙を突くように、第二の口が開かれ──周囲に漂う魔力ごと、空気どころか俺たちも纏めて吸い込もうとすらしてやがっていた。
「流石にそれをやられるわけには行かねえが……チッ、脳筋の分際でやりやがる!」
兆候を察してすぐに俺は離れることは出来る。
が、同じく図体がデカい
元々の敏捷もそこまで早くないからか、その場で踏ん張るのが精一杯であった。
「まずは貴様の魂とやらを燃やし尽くして、残った骨を食らい尽くすとしよう!」
「迎撃しろ、レッド・デーモン!」
胴体のデカい口の方も魔力充填が完了、放たれるのは至って単純な巨大なファイアーボール。
なんて簡単に言ってみたが、腐っても上級悪魔だからかその魔力の濃さはとんでもない。
即座に迎撃の為の念を飛ばしたことが功を喫して、何とか紅蓮魔竜の方も炎のブレスが間に合わせることは出来た。
とはいえ、それは所詮付け焼刃ないし悪あがきに過ぎない。
あくまで出来るのは多少の拮抗までだが、最悪を逃れるには十分な時間稼ぎだ。
掠ってこそいるが、
「あっぶねー……っ!?おいおい、これは一体どういう……!」
すぐに立て直してやろうと息を入れ直そうとした、その時だった。
何故か身に覚えのない痛みが全身を駆け抜ける……ちぃっ、ジワジワと蝕むような感じが鬱陶しいことこの上ない。
それでも何とかアタリを付けるべく、これまでの戦況を巻き起こしていく。
(──俺は一切直撃を貰ってないし、掠るような立ち回りもしてない。そうなると、呪いのような何か……いや、まさか?)
呪いの線は俺が見る限り明らかに薄い、というかあの脳筋がそういうタイプには見えない。
そうなると、後は消去法……原因足りえるのは、未知の部分が多々ある存在。
ちょうど先ほどかすり傷を貰った
(そういや、コイツを召喚する時に彫魂石がやたら反応していたような……ああ、何か色々見えてきたな)
精霊に自分の魔力を叩き込んで使い魔を作り上げたところまでは意図していた──それこそが、あの一つ首の機光竜で放った『エヴォリューション・バースト』のわけで。
しかし、そこから先は完全にその場のノリで魔力を操ってたんだよな……殆ど無意識と言ってもいい。
なるほど、だからこその彫魂石ってわけか──パズルのピースがカチリと嵌まった気がした。
「ブツクサブツクサ、遺言なら食う直前に聞いてやるぞ!」
「人のシンキングタイムを邪魔するとは、案の定マナーがなってねえな!」
隙ありと飛び込んでくる脳筋に対し、俺と紅蓮魔竜は同時に
こうして俺の減らず口に呼応したり、命令を発さずともある程度意図通り動いてくれるのも……彫魂石さまさまってわけか。
だからって、痛覚まで共有するってのはやりすぎだと思うがな……流石に諸刃の剣が過ぎる。
俺の戦い方を考えても、こんなデカいドラゴンと感覚共有した上で従えるのはむしろマイナスがデカい。
思いつきでやるからこうなる、なんてカルトとかナマリエ辺りから口煩い説教が飛んできそうだね。
完全に自己責任が招いた不利だが、これもまた味わっての生というもの。
些細な恐怖で先を求めるのを止めたら、それは俺にとって『死』同然と言ってもいい。
先にある可能性を否定するなどという愚行は、固定観念に囚われた哀れな愚者に押し付けてやれ。
「要は、こういうのがあってのぶっつけ本番。これくらいのハンデがあった方が盛り上がるってもんだろ!」
表向きは軽やかなビッグマウス、裏では反骨心を火種に魂を荒ぶらせる。
それに呼応して
それでこそ我が魂を象徴するドラゴン、クソトカゲとは風格からして桁が違う。
「バカめ!何度向かってきても同じことだと分からんか!」
「そんなだからてめえは魔界の王に向かねえんだよなあ……!」
文字通り魂すら共有する
きっちりとした理を備え直してこそ反逆ってのは成り立つもの。
双方が並び立とうとしたその時には、既に千紫万紅とセイリオスを地面に突き立てていた。
「侵食しろ紅蓮の領域、『クリムゾン・ヘルガイア』!」
純粋なパワー勝負など愚の骨頂、こちらに出来るのは如何に能率よく叩き込むかを追求することのみ。
どれだけ強大な力を得ようが、その原点を忘れてはならないということでの妨害工作。
反骨的なノリに乗っている火闇混合魔力を、己の領域を作り上げるように地盤へと侵食させていく。
そこにラスとイグノックス兄さんが扱う炎柱のような派手さはない。
が、これでいい……そもそもこの術の狙いは攻撃にあらずだ。
「そんな温い結界で何を──ぐぬ!?」
こちらの攻撃に対し迎撃を試みようとするも、急に体勢を崩しかけるゴリアテ。
そこをこれ幸いにと
「おーおー急に可愛らしく転んでどうした?石ころでも踏んだか?」
「貴様、今度は一体どんな小細工を──ちぃっ!」
無論、その原因は先ほど放った『クリムゾン・ヘルガイア』にある。
この咄嗟に思いついて火事場の何とやらで組み上げた術、端的に言うならば……
本来ならばセリアードが得意とする直接補助系統、むしろ俺にとっては苦手極まる分野。
しかし、そこのところは対象との繋がりを逆に利用してみせて解決してやった。
お陰で
あちらさんもこっちを舐めてかかっていたお陰で、これでも効き目は十分だからな。
単純極まる搦め手でも、追加の攻め手によるしっぺ返しとしてなら悪くはない。
(で、そこをちょいと補強するのも今の俺の仕事だ)
慢心由来の動揺を突いた隙は相応に大きく、お陰で脳筋自身が勝手に長所を潰す羽目にまで陥っている。
ならばと、無理が生じぬ程度に追撃をかける──『ダーク・スピア』やら『エヴォリューション・バースト』辺りをそれこそ絶え間なく。
別に主役だからと常に真ん中に立つ必要はない、それこそ適材適所ないし臨機応変。
時には他を立ててこそ俺自身が最も輝くこともあるし、使えるものは何でも使ってやればそれでいい。
あっちにも俺を踏み台にしろと常日頃言ってるし、まあそれこそお互い様というわけだ。
「……さて、これだけ殴って穿ってぶっぱしてるわけなんだが」
「塵芥に等しい弱小生物の分際でやってくれたな……だが所詮は付け焼刃!殴り合いに持ち込めば俺の優位に変わりない!」
流石は上級悪魔、これだけやってもまだやれるか……害悪級なタフガイだ。
しかし、珍しく脳筋の言うことは間違っていない。
ヤツの第二の口経由で作られる魔力、そこから生み出されるのは強靭な腕力やら凶悪かつ自在な炎だけではない。
再度殴りかからせ、更に俺自身も攻撃を加えて分かったのは……しれっと
損傷を軽減しながらも怯むことなく、強引に攻め手を加えられるのと同義。
強引に殴り合いに持っていかれるという、俺にとっては最も面倒な状況に入ってしまっていた。
(そのままにしておけば、鍔迫り合いしてるだけで負けるなこりゃ。脳筋の分際でと褒めるべきか、それとも純粋な殴り合いだけの脳筋と揶揄するべきか……)
当然、こちらも素直に殴られてばかりではない。
攻め手を妨げない程度には捌き、何なら俺も迎撃に加わっているのだが……あちらの猪突猛進っぷりがここではプラスに働いている。
強引に攻めていけるのだから、それも当然なのだが……食らう側としてはたまったものではない。
(クソトカゲの魔力障壁なんざ遥か彼方に霞むなこりゃあ……)
あっちは単に魔法使いにとって厄介極まる壁なだけで、俺にとっては防御無視やら貫通やらやりようはいくらでもあった。
そんな薄っぺらい壁で満足するというアホ極まる慢心もまた好材料になったんだが……この脳筋は一味も二味も違う。
殴られることは当然として、そこを超えて殴り返してやるという至極単純、何なら頭が悪いとすら言える
しかし、言い方を変えればそれは長所のごり押し……傲慢な方向こそ違えど、どちらが面倒かは言うまでもないだろう。
姉上とマナ・ブレイド、更にドラゴンの刻印の組み合わせだとしても、ジリジリと追い込まれることは明白だろうよ。
(こういう泥臭い戦いは好まんのだが、まあ仕方ないか……?)
──内心で溜息を吐いたその直後だった。
ふと
その先を辿っていくと……散々掌底打ちやら何やらをぶつけた剛腕が。
(なるほどね……折れる気はさらさらないから合わせてみろって?)
傍から見ればまだまだやる気十分というだけにしか見えないが、俺にはその魔力の意図がきっちり分かる。
まあ、一言で言うなら……コイツ、想像以上に食わせ物暴君だ。
どこの誰の影響なんだかねと苦笑いを浮かべながら、俺たちは既に腹を括っていた。
「これこそが魔界の王足りえる力、軟弱な作りの貴様では到底至れないということを思い知るがよい!」
そんなほんの僅かな間、ここだけ攻勢を緩めたからかゴリアテはしめたとばかりに笑みを浮かべる。
やれやれ、よく回る汚い口だねえ……ここぞとばかりに唾を撒き散らしやがって。
そんな馬鹿丸出しな宣言と共に、軽くチャージしたファイアボールを腹部の口から放ってから拳を構えて大仰に飛び上がる。
トドメと言わんばかりの最大火力……なんだが、ここまで丸分かりだと白けるしかない。
やはり、脳筋如きにエンターテインメントなど荷が勝ちすぎている。
「ならば、その身にイヤというほど刻ませてやる──『クリムゾン・ヘル・セキュア』!」
もはやいつものような変調だが、相方も当然のように合わせてくれていた。
飛び上がったお陰で出来た余計な間は、即席の不意打ちで割り込む隙を与えるだけ。
その定石通り、俺たちは同時に炎刃で斬りかかってみせる。
単純に品を変えただけと思い込んでいるのか、ゴリアテは余裕綽々といった風に真正面から受けて立っていたが……異変はすぐさま起こった。
「なっ……なんだこれはグガァ!?」
狙い通り、脳筋に纏われていた強化魔力は根こそぎ破壊されていた。
本来ならばただの遠距離投擲も可能な炎刃でしかない『クリムゾン・ヘル・セキュア』。
しかし、先ほどの『クリムゾン・ヘルガイア』の効力はこちらにも及んでいたようで。
早い話、付与効果破壊が追加されていた……いわば、プリシラの得意分野の後付けである。
……バレたら後でナニを要求されるか分かったもんじゃねえから、あんま見せないようにしておきたいね。
「ご自慢の装甲が壊れて顔が真っ青だな?だが残念、ここから更に青アザ祭りだ!」
これぞ脳筋の末路とでも言ってやるべきか。
あえて不利を承知で殴り合いをさせ、俺たち側がダメージレースで追い込まれるように演出してみせる。
そこからの形成逆転……脳筋にとっては『泣きっ面に蜂』だが、その潮流を見極めてこそ殺し合いというものだ。
その辺りを怠ったハリボテの強者など、せいぜいその辺で道化をやってる方がお似合いだろうよ。
さあて、せっかくの無慈悲に仕掛けさせてもらおう……まずは、セイリオスを手に取り
攻撃と同時に距離を取る、保留ないし繋ぎの一撃としての俺の十八番だ。
そこから間髪入れずに即座に次弾の態勢……千紫万紅による居合の構えだ。
「でかい図体だからこそ、跪かせ甲斐があるよな!
不意に横殴り豪風を貰って、本能のまま回避をするゴリアテの逃げ道を塞ぐように次元斬を置いてやった。
魔力読みからの思考トレースをも含有した先回り染みた徹底追撃、これまた俺が
偉志ノ大陸でやったことがある追い込み漁が如く、更に主副を入れ替えて
デカブツとあっては一度引っかかったら後は芋づる式、そんな地獄絵図……。
「その程度のチマチマした温い手で、この俺がすんなりやられてたまるかぁ!」
「ああクソ、この程度じゃあ抜け出されるか……!」
案の定というべきか、脳筋側が強引に反撃に漕ぎつけてきやがった。
外さないだろうと細やかな攻撃を刻んでみたが、あのタフな体躯で耐え凌がれて逆に反撃機会を与えてしまった。
こうなるくらいなら多少手数が減ろうとも最初から大型術を使ってればと思う観客も多いと思う。
それは御尤なお言葉なんだが……残念、そうも行かない事情がある。
(ぶっつけ本番のしわ寄せが制御側にも来てるな……要改善点が多く出て来るなあ)
ぶっちゃけて言えば、イメージリソースの半分以上はあっちに持っていかれちまってるというのが現状である。
あれだけ仰々しいことをしでかしたんだから当然なんだが、その辺りの厳密管理が強みな俺にとっては結構致命的だったりも。
お陰で速攻で撃てるのはせいぜい『エヴォリューション・バースト』まで……ここが絶対的魔力量の少ない俺の欠点でもある。
姉上やらユフィ、アル兄さん辺りなら問題なく運用できるんだろうがなあ……ま、さっきも呟いた通り無いものねだりは後だ後。
俺に出来るのは、そういう良くない枝も想定して処理することだけなんだからな。
サイコロ回して頭も回して、稗も流れもクソでもそこを止めたら墜ちるのみなのだから。
「よって、脳筋程度は掌の上で回してなんぼってなあ!」
『もらった』と思ったそのバカ面を軽く捉えて、柳に風が如く受け流してやる。
怒りによる魔力爆発の勢いも織り交ぜてきた質量に対してあえて逆らわず、最小限でかわしながらむしろその流れを強めてやる。
これまた思わぬところからの横槍が入ったお陰で、ゴリアテの突進は空回りしては見事に制御不能に。
その際、俺自身もしれっと火の魔力で焼かれているのだが……これも所詮は軽い火傷なので流しておくとして。
空回りさせた先に控えているのは、やはりと言うべきかこの舞台の主砲である。
「貴様、どこを掴んで……!?」
「そこは『HA☆NA☆SE』一択だろうに……汚い上につまらねえ口は無理やり黙らせてやれ!」
流れ作業が如く、その剛腕で掴み甲斐のある尻尾をキャッチさせる。
そこから見世物のように、
何かの本で見た覚えがあるなあ……確か『ジャイアントスイング』だったか?
こうなってはされるがまま、上下に振って揺さぶられてもいるので見た目以上にダメージは大きかったりする。
人間同士でやっても相当感覚がやられてキツイが、今回はデカブツ同士……その豪快さとダメージは何乗になっているのやらかだ。
頃合いとばかりに宙に投げ出され──俺は既に適度な位置を確保済みであった。
「快晴裏の雷霆にはご注意を!」
扱うのは勿論雷と光の混合魔力……
制限された魔力リソースの中で最大出力を追求し、動きも止めないってなればこれが一番手っ取り早い。
一歩間違えれば火傷まみれないし真っ黒焦げだが、まあグリフォンの時に比べれば造作もないこと。
その状態でセイリオスを構え、いつものように
そしてその落下地点には、既に真紅の暴君が獄炎の掌底打ちを構え済みだ。
「暑苦しい筋肉対決なんざこれっきりだ!『アブソリュート・パワー・フォース』!」
まさに捻じ伏せてやるかと言わんばかり、その様はまさに絶対覇者。
魔力と共に圧倒的な気も纏った、まさしく乾坤一擲の一打──これには流石の脳筋もノックアウト待ったなしかと思ったが。
「魔界の王になるまで、俺は死なぬ……っ!」
ああうん、この手のヤツが無駄に生き汚いってのも経験済みだ。
主にどこぞのクソ暗部連中とか……そういうところで波長があったんだろうかねえ?
ま、だからこそ俺みたいなヤツに需要が回ってくるんだけど。
「晩節汚してる暇があったらとっととおネンネしてな」
念には念を、残った雷魔力を使い切っての一刀両断。
落雷を模すならば、やはり千紫万紅による一閃の方が心地良い。
見てそのままと言わんばかりに真っ二つにされた自称魔界の王候補は、着地直後の納刀と共に地にひれ伏すこととなった。
暫くその様を見下ろしていると、筋肉塗れな巨体は少しずつ塵と化していた。
無様で呆気ない最後だが、別に同情するつもりはこれっぽっちもありゃしない。
こっちのことを散々格下と見た愚行のツケだし、そもそもただの侵略者だからな……?
「ふむ、脳筋のクセして最後の最後でいい計らいだな。ちょっとは見直してやろう」
全部が無に帰ったのかと思いきや、特徴的なかぎ爪は残してくれていた。
上級悪魔の一部となれば、これまでの素材とはまるでワケが違う……戦利品としてきっちり貰わねばな。
素材として活用できるかは別問題だが、とりあえず収集することが大事だ。
「……さて、いい加減魔力がきつくなってきたからお前はとっとと還りな」
正直、
実のところ、結構空タンに近い状態だったりする……随分久しいからこそ、余計にキツイわけで。
名残惜しさを押し込め、そそくさと大食らいを還したところで……一気に脱力感と共に膝をついてしまう。
と、ここで更なる悲報……このギリギリっぷりは魔力枯渇だけが原因ではなさそうだった。
(一息ついた影響で一気に来やがったな……クソッタレめ)
さっきまでは殺し合いの最中ってこともあり、色々昂って誤魔化せていたが……流石に食らい過ぎたな。
致命的な傷こそ貰っていないが、それでも大型の殴り合いの影響がそっくり来るのは流石の俺でもキツイ。
とりあえず、魔力の乱れもあるからと一旦休もうと腰を落ち着けようとしたところで──見知った気配が背後に。
「あら、これはまた珍しいですねマッド様。主役たるもの、舞台の上では最後まで立ち続けるものでは?」
……しかも開口一番で塩を塗りたくってきやがる始末だ。
せめて痩せ我慢する時間くらいくれよな、コンチクショウ。
意外と苦戦しましたが、まあ流石に250円竜の勝利です。
ゴリアテ君は原作には無いものをあえて付け足してあげました。
まあ、DMCのボス悪魔は基本持ってるんですけどねスーパーアーマー。
前書きで書いた通り、ディアハっぽくするということで術者へのダメージのフィードバックも再現です。
これが無いとノーリスクが過ぎて、流石に強すぎるだろ案件というのとここからの改善で色々他の出番を増やせるよなあという目論見も。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)