転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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分割しているはずなのにどんどん1話1話が長くなっていく……
その関係もあって、切り方が少々怪しいことになっています。


16.破天荒は東へ西へ

 

さて、鬱屈問題児の方はあらかた解決したんだが……。

俺たちは揃いも揃って大事なことを忘れていた。

 

「ところで~……この誘拐犯とか違法研究貴族崩れはどうするの?」

 

クリスティーナ姉さんの問いに、残りは揃いも揃って『あっ』と間抜けな声を出してしまった。

プリシラの生い立ちやら処遇やらに完全に意識持ってかれてたんだ、仕方ないと言えばそれまでだが……。

ぶっちゃけ邪魔でしょうがないし、いい加減どうにかしねえとな。

 

「ならず者は辺境騎士団に引き渡せばいい。問題はこのゴミ共の方だな……」

「情報を引き出す必要はあるが、最終的に極秘に始末しなければならない。本来ならとっくに処刑されている存在だからこそ、変に明るみに出すべきではないだろう」

 

危なっかしい発言に聞こえるが、別に何も間違っちゃいない。

これが表の貴族がやらかしてたってだけならまだ良かった。

最近ここいらで頻発する拉致事件の実行犯ってことでまともな手順が踏めるわけだからな。

ただ、実際こいつらは俺から見たら伯父がかつて起こしたクーデターに与した連中なわけで。

本来ならば首が飛んでいなきゃいけないはずが、何故か生き延びてやがったという面倒つきだ。

どの段階で茶番に成り下がったかは知らねえが……それは今はどうでもいい。

こいつらが生き延びていることそのものが、王国にとっての大問題だ。

クーデター起こして処刑貰った連中が生き延びてるなんて発覚した日には……絶対大荒れだろうよ。

 

「情報を引き出すとなるとラインヒルトかルドミラだけど、どちらを呼ぶにしても時間がかかっちゃうわね……」

「だが、王都に連行するのは時間がかかる分論外だろう……やはり、早々に首を飛ばすしかないか」

 

その場で尋問するにも、王都に連行するにも時間がかかるってのは事実ではある。

ただ、俺にとっては魔法至上主義を潰すための貴重な手がかりでもあるからなあ……。

この機を逃すのは損切りにしてはスケールがデカすぎる。

どっちにしろ地獄には落ちてもらうが、ゴミにも使いようってものがあるからな。

しかし、ここは損失の大きさには目を瞑るしかないか……。

 

「……ちょっとした策を閃いたので、発言の許可を頂けないでしょうか」

 

半ば諦めていたが、助け舟は思わぬところからやってくるってか。

あれこれ悩んでいるところに聞こえてきたのは、つい先ほど奴隷を卒業したプリシラの申し立てだ。

別にそういう場じゃねえんだから適当に話を差し込めばいいってのに、律儀なことだ。

念のため3人の様子もうかがうが、特に異論はないのか揃って首肯を見せる。

総員の発言許可を得て一歩前に出るその姿は……今回は王都で留守番しているセラを彷彿とさせた。

確かに、プリシラって侍女と言うか秘書のイメージあるからな……。

 

「先ほどの地下施設を利用するのは如何でしょうか。薄気味悪いことを除けば、隔離場所としての条件としてはそう悪くないと見受けられます」

 

……その手があったか。

確かにあそこなら小屋の仕掛けを知らねえと辿り着けないし、隠密性という意味では合格だ。

収容性もあの場所の用途を考慮すれば言うほど問題はねえ。

生かさず殺さずの為の物資もそれなりにありそうだ。

んでもって、意趣返しになって俺たちも多少はスカッとするおまけつき。

 

「わ~、豪胆だけど合理的!これだけ頭が回るんだから、師匠なんていらないんじゃないかな」

「ここから動かす手間が省けるのも大きいな。既に二人が探索を行ったから構造も把握できているというおまけつきと来れば、反対する理由はない」

 

クリスティーナ姉さん、それは禁句だ。

ちょっと教えただけであっという間に開拓してしまうくらいに頭が回るのは認めるがね。

イグノックス兄さんも珍しく全力賛同してるし、レオン先生も無言ながら表情で反対してないのは分かる。

全く、これで自分は無価値だなどとよく言ったものだなこの屈折お嬢様め。

こっからたっぷり自己肯定感を増大させてやるからな?

 

「全く、想像以上にいい拾い者をさせてもらったね。早速自分で汚名返上を始めてんだ、レッテルが無くなる日もそう遠くねえな」

「この程度では、まだまだおこがましいことこの上ないでしょう……」

 

まあ、これまでの人生で褒められたことなんて一度も無かったんだから無理もない。

ハードルの上げ方もまだまだ過剰気味に見えるが……まあ止める程ではないね。

ただ俯いているだけの自分は終わらせようって努力は見受けられるだけマシだと思うべきだ。

さて……そんなプリシラに感化されたからか、俺もちょいと名案が浮かんだ。

 

「ねえ……嫌な予感しかしないのは私だけかな?ケルビムがすっごい悪い顔をしてるように見えるんだけど」

「カルシオンが何かやらかす時の顔に似ているのが癪だな……しかもそういう時は決まってえげつない妙案が出てくるというおまけつきだ」

「イグノックス兄さん、褒めるか貶すかどっちかにしてくれねえか?」

 

ちょっと口端上げただけで嫌な予感走らせるのも大概ひっでえけどな?

こういう時一緒に悪ノリしてくれるのはカルシオンとルドミラ姉さん、後はキュイの3人だけだから悲しくなるぜ。

皆の衆、もうちょいずる賢くなろうぜ?

 

「ああ……早速使うのですね?」

「ギャンブルな側面もあるが、上手く転べば色々いい具合になるかもしれねえからな」

 

まだ何にも教えてねえのに弟子の察しが良すぎて感涙ものだよ。

ついでにそのやり返してやる的な笑みも合格だ、実に愛らしい。

確かにラインヒルト先生辺りの到着を待つ方が確実なんだが、もう色々と想定外が続いてるんだ。

こういう場合、流れに乗って更なる高目を狙う方がいいというのが俺の経験則さ。

実際のギャンブルでもそこで荒波を乗りこなしてこそって教わったからな。

 

「そういうわけで、このどうしようもねえ連中は俺たちが一旦引き取るよ。お三方はこのならず者たちしょっ引いて、ラインヒルト先生に事情説明の方をよろしく」

「せめて一体何を企んでいるのかくらいは教えてくれないか?手間を省けるのはありがたいが、変なリスクをお前に背負わせるわけにはいかないからな」

 

いや、隠すようなことでもないんだがな?

このちょっとした推測エンタメを楽しんでほしかったが……これ以上焦らしたら水ぶっかけられそうだし、

 

「まあ、プリシラと同じ考え方ってだけさ。──要は、『使えるものはとりあえず使っておけ』ってことさ」

 

これだけ言えば、まあ大体分かってくれたようだ。

……ただ、この後もうちょい時間がかかってしまったよ。

まあ、俺もある程度譲歩することで、何とか丸く収めることは出来たから結果オーライで済んだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どこぞの第二王子のやりたい放題ついででパレッティア王国東部の開拓ペースは確かに上がっている。

それでも西側の隆盛具合と比べられ、田舎扱いされてしまうのはただ風習が抜け切れていないとかそういうわけではない。

数年程度の急激なペースアップ程度で元ある差は簡単に埋まらない、ただそれだけの話である。

特に、アーイレン帝国との国境に在るカルリーゼはその最たるところだろう。

長いこと帝国との密かな睨み合いを続けているこの地は、西側の守りと呼ばれるだけあり堅牢そのもの。

城塞都市という冠名は伊達ではない、ということだろう。

無論、その方向で開発が進むということは自然を切り開いていることと同義だ。

それ即ち、精霊資源が少ないことにも繋がる。

その手のものが入用な者にとっては寄り付く理由が全くない……奇天烈王女で定評のある第一王女がいい例であろう。

逆に、東から西という大横断という強行紛いなことをしでかすような変わり者も世の中にはいるわけで。

 

「やれやれ、最後に来た時のことなんて覚えちゃいねえがなかなかの混みっぷりで酔いそうだ。エリオ姉さん、俺の肩に乗っかるか?」

「いやいや待ってください、姉貴分を子供扱いするってどういう了見……っておわわ!?」

「危ない危ない……エリオ様、変な意地は張らない方がよろしいかと」

 

ミドルティーンほどの男女一組とミケ族の女性という奇妙なトリオだ。

今回もきっちり黒髪のオールバックを決め込み、『無慈悲な主役』に擬態するのはマドラーシュ。

そのお供は、小さな姉貴分エリオと先日新たに迎えた弟子のプリシラの2名。

この面々にとっては、東から西の強行軍など朝飯前……とまではいかなくとも、割と今更なことであった。

危うく人込みに飲まれかけるところを助けてもらう辺り、お供と主役がゴチャゴチャになっている気がする組み合わせでもあるが。

予定よりも早く到着しているので、軽く散策でもしようとマドラーシュが提案したのだが少々裏目に出ている様子。

早速起こった分断の危機を目の当たりにして、表通りを避けるプランに変更することとなった。

 

「ったく、どんだけデカくしてるんだかな。東と比べて流石にバランスが悪すぎやしねえか?」

「帝国の過激派がいつ爆発するか……そこを懸念した上での方策といったところでしょうね」

「確かに表向きも備える必要はありますが……やはり水面下も重視するべきでしょう。表向き引退をしたグランナイツだけに留まらず、最上級冒険者のケルビム様までそのような役回りなど……あのクソ伯爵共々、魔法至上主義は実に忌々しいですね」

 

怨嗟が大いに混ざっていることを除けば、プリシラの主張は特に間違ってはいない。

早い話、この王国では諜報方面を担当する人員が著しく欠けている。

そもそもグランナイツとマドラーシュの動きは、あくまで自発的なものだ。

王都で全体を見張るラインヒルトにも僅かな手勢は存在するが、練度の問題もあってまだ完全に裏向きの仕事を任せられるほどではない。

その背景を作り上げたのは、魔法至上主義及びそれを信仰する貴族……そして、それらに縛られている国そのものと言える。

……ごもっともなことを言っているのだが、エリオは全く別のところで眉を顰めていた。

 

「あのー……プリシラって、こんなことを言う娘でしたか?卑屈というか、鬱屈が無くなったのはいいことなのですが……少々口が悪くなっていません?」

「むしろその辺が無くなったからだろ。改めてこれまでのこと振り返れば、俺たちの同類になるのは別段おかしな流れじゃないだろ?俺としてはこれくらい素を出してくれた方が可愛げあると思うがな」

「この2週間のケルビム様から頂いたご指導ご鞭撻には本当に感謝しております。心身共に生まれ変わるとは、まさにこのことを言うのでしょうね」

 

行方が掴み切れないルドミラを除く面々は、それぞれ個人的にプリシラと顔を合わせている。

エリオについては、かの違法研究所摘発の日に顔を合わせていた。

それから2週間ほどしか経っていないのだが、それにしては変化が急すぎる。

口調の変化もそうだが、表情もかなり自然寄りになっていたのだから。

特筆すべきは、目をくり抜かれそうになった際に身に着いてしまった癖だ。

随時目を細めることでどこか歪な印象が強かったが、今はそれも緩和されている。

2週間を思い起こして浮かべるその微笑は、まさに別人そのものとすら言える。

これまでの環境や受けてきた仕打ちが原因で半ば屍を晒しかけていた、悲劇の庶子令嬢の姿はもうそこにはない。

どこか陰を感じさせる風貌も、ミステリアスな美少女という形でいい味を醸し出していた。

……そこまで寸評を済ませると共に、エリオは次なる疑問を弟分にぶつける。

 

「あの、ケルビム?この2週間で一体彼女に何をやらかしたのですか……?」

「最初は普通に顕魂術叩き込んでたんだがな……想定以上に面白い適性持ってたからついつい熱が入っちまった」

 

『熱が入った』という言葉を聞いて、エリオはその愛らしい顔を引きつらせる。

マドラーシュが顕魂術を伝える時の教育課程は大きく分けて2つ存在する。

片方は、触りだけを教えて後は各々に任せるという緩やかなやり方。

東部のクラマ族やミケ族、一部を除くグランナイツを筆頭としたテスターがこのパターンだ。

そしてもう1つが、対象の適性属性やイメージ適性を掘り下げした上での叩き込むやり方だ。

マドラーシュの青天井な好奇心と開拓欲求が徹底的に発揮される、もはや教えると言うより共同研究を行うパターンだ。

このパターンに当てはまるのがイグノックスとカルシオン、更にはキュイの3名と言えば分かりやすいだろう。

今回の生徒であるプリシラは後者のパターンに当たることはその口ぶりから明白だった。

 

「パーシモン子爵領での実戦は特に為になりましたね……『鬼にならねば見えぬ地平がある』、いい格言でございます」

 

そんなところに弟子からの楽しそうな回顧混じりの証言が入ってくる。

言うまでもないが、それは特大の爆弾である。

どこかで聞いたことのある内容であるおまけつきで、エリオは一瞬だけフリーズしてしまった。

 

「ま、ままま待ってください!イグノックスとカルシオン譲りのスパルタ実戦教育までしでかしたのですか!?」

「パーシモン子爵領内でフェンリルその他の間引きの手が回らなくてお困りだって聞いてな。実戦で鍛えるのもアリだなってことでそのまま連れてった」

「留守番するという選択も確かにありましたが、せっかくだから同行してしまおうかと思った次第ですが……何かおかしなことでも?」

「実戦経験は赤の扉を選ぶのとはワケが違うのですよ!?」

 

さも当然のように言い放つマドラーシュと同調するプリシラ。

そんな二人に対して、エリオはもう盛大に頭を抱えてしまっていた。

要するに、マドラーシュはイグノックスとカルシオンにくっついていった時と同じことをしでかしたということ。

『蛙の子は蛙』という諺は師匠と弟子の関係でも通用してしまうという嬉しくない証明まで為されてしまっていた。

血は繋がっていないのにそれを為す辺り、何だかんだでグランナイツへのリスペクトが強いマドラーシュらしいと言えばそれまでだが……。

 

「まあ、是非もないよね!ってことで。結果ここまで吹っ切れて愛らしくなったんだからいいじゃねえか」

「いやいやそういう是非はちゃんと考えてください!こんなとんでもないこと、絶対にクリスティーナの耳には入れないようにしないと……」

 

いつもの『やっちまったZE☆』……完全に後の祭りである。

クリスティーナもそうだが、デイジーの耳に入ったりしたら確実に半日説教コース突入なことは言うに及ばず。

余計な騒動にならないよう、今聞いたことは自分の胸の内で仕舞っておこうとエリオはそれはもう固く誓った。

 

「ところでケルビム様。使いの者らしき存在が網に入りましたが……如何いたしましょう」

「ああ、それならこのまま待つとするかね。にしても、随分範囲広げたな?」

「え、もしかしてずっと術を使っていたのですか?まるで分からなかったのですが……」

 

当の無自覚スパルタを受けた生徒は、技術面の躍進っぷりも大概であった。

4年ほど顕魂術を用いて、術の感覚についてはそれなりのものとエリオは自負している。

しかし、目の前にいる顕魂術歴2週間が展開していたらしい術をまるで感知出来なかったのだ。

発動の気配をまるで感じさせないこのやり口は、師とまるで同じ傾向にある。

エリオが驚愕したのは、たったの2週間でその方向に沿っていることに対してだ。

まさに、分かる者には分かる異端っぷり。

マドラーシュが直に目をかけて教育に熱を入れることも、僅かながらに理解を示してしまった。

先ほど聞いたスパルタを肯定するつもりは当然無いが。

 

「この日の為にと特に試行錯誤致しましたので。これが限度というのが歯痒いところですが……」

「いや、むしろ2週間でここまで自力で引き延ばせたな。こりゃあ2、3年したらどうなってるかが今から楽しみでしょうがねえ」

「……これはもう、かの公爵令嬢も手遅れということなのですか?うう、次期王妃がそんなことになったらもはや世も末ですよ……」

 

生まれ変わったと言うより、完全に朱に交われば何とやらだ。

その劇的ビフォーアフターっぷりは、かの専属侍女を思わせる変貌っぷりとも言える。

方向性こそ違えど、どこかすっ飛んでいるところも似てしまっていた。

それと共に、弟分の友人となった次期王妃のことも思い起こす。

もし彼女もにプリシラと同じようなことが起こってしまったら……そう思うだけでひたすら頭を抱える思いだった。

ちなみに同時刻、離宮で待ちぼうけを食らってどこか不満そうな顔をしながらくしゃみをする令嬢の姿が確認されたとか何とか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、わざわざ普段は寄り付かない西側に来たことはこれで無駄ではなくなりそうだ。

あれから2週間なんだが、あっちの忙しさを考慮すればこれでも早すぎる対応だろうよ。

ちょいと話した仲ってだけだったから、正直もうちょいおざなり対応をされると思ったが……。

いや、流石に気を抜くには早いな。

話が通じるだけマシだが、仮にも相手は人外だ。

警戒を怠るのは愚の骨頂だろうよ。

元々好感を持ちながらも胡散臭いとも思ってはいたから、特に良心も痛まねえしな。

まあ、腹の探り合いが出来るだけ最低限悪くない仲とも言えるんだが。

護衛兼お目付け役としてエリオ姉さんがついてきてくれているし、いざって時は何とかなるだろ。

王都の状況と、そこら辺のバランスを取っての人選らしいが……まあ、妥当なところだな。

単なる護衛ならイグノックス兄さんでも良かったんだが、今回は交渉事が発生することも有り得るから辞退したとのこと。

デイジー師匠やカルリッツ父さんは王都を離れるのが厳しくて、クリスティーナ姉さんはイグノックス兄さんが何とか止めたらしい。

カルシオンも最初は筆頭候補だったんだが……まさかのレオン先生に引きずられ別任務に行かざるを得なくなり泣く泣く辞退という憂き目に。

あのレオン先生がわざわざ戦力を増やすってことは、割と確実にこなさないとマズイことなんだろうし、仕方ないね。

ちなみに、忘れ去られそうな貴族崩れたちはあちらに処理を依頼した。

ついでにちょっとした楽しくなるブツを渡したから、それなりにwin-winにはなってるはず。

『使えるものはとりあえず使う』ってのはまさにこういうことさ。

プリシラを連れて来た理由も、この一環の中にあったりするんだぜ?

さて、案内役の足が止まったので俺たちも目前の建造物に目をやったのだが……。

 

「完全に人間側に溶け込んでいますね……普通にしているだけではまるで区別がつきません」

「木を隠すには森の中とは言ったものだが、堂々とし過ぎててもはや笑いすら出ねえな」

 

こういう暗躍イベントの場合、裏路地にあるようなところに案内されるって普通思うだろ?

それがまさか堂々と表通りのど真ん中にある建築物に入るよう促されたんだから、流石の俺も開いた口が塞がらなかったわ。

その豪胆さがあるからアレだけの規模で活動できるんだろうがな?

魅了の能力も使わないでここまで出来るのってマジですげえな。

さて、中に入ると……これまた何の違和感もない仕事場が俺たちの目に入ることとなった。

 

「これじゃあヴァンパイアなのか人間なのか、本当に区別がつきませんね」

「ここはやや人間の割合が多めの支部ですが、場所によっては半々だったりヴァンパイアが多めになったりですね」

 

うわー、あっちの師匠が聞いたら喜びそうな光景だ。

俺だったら亜人種も混ざった集団とかやってみてえものだ。

……東の方でそういう集まり、ケルビム名義で作っちまうか?

さて、目的地は地下にあるようなので俺たちは端にある階段を降りていく。

違法研究所のそれとは違って、こちらは一段降りる度に何があるのかと高揚感が沸いてくるな。

 

「地下に入ると一気に様相が変わりましたね……!?待ってください、あれはもしや……!」

 

真っ先に走り出したエリオ姉さん、そしてその先にあったものは俺にも見覚えがあった。

いつぞやか北東の方の遺跡だか神殿だかの調査の際に見た覚えがある。

見た目はパパラッシーみたいだが……確か古代文明の代物だったはず。

あの時見たのとは違って腕とか足の作りがより精巧で、状態も明らかにいい。

エリオ姉さんの助手経験からそっちの方も多少かじってるから、俺も何か気になっちまって近寄った。

プリシラも初めてお目にかかる代物に興味津々の模様だ。

見事なまでの寄り道だが、でも気になるもんは仕方ない。

半ば気分は社会科見学ってな!

 

「これは社長が道楽で集めたものを何とか実用化した搭乗兵器ですね。本来ならそれなりの機動力と複合防御壁の展開が売りなのですが……」

「……魔力駆動なんだが、現状ちょっとした固定兵器でしか使えないってところか?」

 

何となく魔力の気配がしたから詳しく視てみたが、すぐに違和感に気付いた。

コイツ自体は間違いなく高性能と言えるんだろうが、その為の動力が追いついていないって感じだ。

その為に魔力を変換しなきゃならねえんだろうが……なるほど、これは確かに本格実用化は難しそうだ。

機構が複雑で、単純な変換じゃあ間違いなく効率が大幅に落ちかねないぞ。

 

「おお、噂に違わぬ感知能力ですね。魔力の変換がまだまだ効率的とは言えない状況でして……」

「性能を制限すればいいのかもしれませんが、流石に勿体ないですよね。大容量の魔力貯蓄が出来る何かが必要ですが……」

「変換効率の方も何か手があるんじゃないか?魔力の変換は単純に見えて、意外な落とし穴が潜んでるものだからな」

「……これほど考察のし甲斐があるものも、魔法使いが主戦力の王国ではガラクタ扱いなのですね」

 

分からないなりにも食らいつくプリシラ、その姿勢は大変よろしい。

まあ、魔力貯蓄とか魔力変換って話は顕魂術にも通ずるところはあるからな。

知識を得たままにするんじゃなくて、更に発展していくべし……俺の教えがそのまんま生きている。

この分なら、手を離しても何ら問題はないだろうな。

 

「おっと、大変惜しいですが時間が危ないですね……続きはまたいずれということにしましょう」

「ケルビム。私はベリと共にここに通うと決意した次第です」

 

危うく先進的な議論が始まりかけたところだったが、先導役が時間に気付いて切り上げてくれた。

続けてもらっても良かったんだが、まあアイツにも都合ってもんがあるからな。

エリオ姉さんがすっかり燃え上がってるが、楽しそうで何よりだ。

結果的に完璧なまでに噛み合った人選だったな……通えるかは分からんが。

だが、これも交渉の糸口……って程ではないが、プラスの要素になり得るだろう。

さて、それからも時折面白そうなものを眺めながら歩みを進めて……現在いるのは一番上の階だ。

応接室と書かれた扉の先には……おお、何かこれまた異国の空間が広がってるな。

一番近しいとすれば、遥か昔に行ったことがある父上の執務室だろうが……より先鋭的だな。

そんな空間の支配者と言わんばかりに立っている主と相まみえるのも2週間ぶりか。

 

「ご苦労だったカドラン君。ちょうどいい時間調整だね」

「本当にジャストで私としては冷や汗ものでしたよ……では、私はこれにて失礼いたします」

 

カドランが一礼と共に部屋を出ると共に、俺たちは対面の椅子に座るように促された。

何だか、ますますそれっぽくなってきてちょいとばっかし楽しくなってきている。

これが国内の魔法至上主義に染まった貴族相手だったら一気に面白くなくなるんだろうがな。

 

「ケルビム君から話は聞いているだろうが、名乗らせてもらおう。私はヴィルジール・フォル・ヴィラルドワ、とりあえず長生きしているだけのしがないヴァンパイアだ」

 

またしがないとか詐欺めいたこと言いやがって……。

この二人がそんな戯言に騙されるわけないだろうが。

ったく、呼吸するように胡散臭くするんじゃねえ。

 

「いやいや、それはしがないという領域ではないでしょう……おっと失礼しました。私はエリオと申します」

「古代文明の研究者とグランナイツも兼任しているミケ族屈指の才女とは……これまた面白いところがお付きで来たようで」

 

俺のことを軒並み知ってるんだ、グランナイツのことを知らないわけがないよな。

まあエリオ姉さんはその筋でもちょっとした有名人だ。

他の面々よりは矢面に立つこともあるし、多くの情報が出てくるだろうよ。

 

「つい2週間前にケルビム様の直弟子となりました、プリシラ・ソーサラーと申します。家名はあってないようなものと思っていただければと」

「そうか、君が件の……ケルビム君、早速プリシラ嬢の話題から入っていいかね?」

「お、その様子だと盛大にかましてくれたようだな」

 

エリオ姉さんとプリシラは何のこっちゃって顔してるな。

このことはレオン先生とラインヒルト先生しか知らんからな。

特にプリシラ、お前にとっては朗報だから耳をかっぽじって聞いとけよ?

 

「とりあえず、ソーサラー伯爵の方には奴隷として虐げていた親子のことや違法研究所への資金面の協力等で色々お話はさせてもらったよ。更にエアーシップの窃盗及び隠蔽も関わっていたと吐いたから、それはもう色々便宜を図ってもらえるよう約束に漕ぎつけたやったさ」

「はっはっは、まさに叩けば埃が出るわ出るわってやつだな。で、『V3社』の王国進出本格化への便宜はめでたい話だが、それだけじゃねえだろ?」

 

確かに軽いお膳立てはしたが、あちらだけに丸儲けっていうのは癪だからね。

こんなクソガキが考える裏くらい、3秒で汲んでくれるという信用もあってのことだ。

やたら俺を買ってくれていると読んでのちょっとした賭けではあったが……あちらの様子を見るに、この橋は渡り切ったようだな。

 

「勿論だとも。プリシラ嬢のことについても実質上の奴隷という身柄から正式に解放すると書面も交わしたさ。奴隷所持とその凄惨な扱いについての告発は私からはしないとしか言ってないから、好きにしたまえ」

「そういうことだ。プリシラにはこの2週間、きっちり俺に食らいついてきた褒美として正式に奴隷からの解放の証明と身分上の自由その他を進呈する。お前はもう奴隷としてあの家に帰る必要は無くなったぞ」

 

要するに、俺はヴィルジールに強請りのネタを提供したのさ。

どちらの帝国でも猛威を振るったこの男なら、俺の手を借りずともこうなっていたかもしれない。

ただ、合理的に物事を進めることに理解があると踏んで手助けをしたがそれがドンピシャだったわけだ。

ラインヒルト先生経由でその手のリストを至急作ってもらった甲斐はあったね。

かなり無茶させちまったから、労いの品でもいくらか用意しておくとしよう。

え?国の情報をこんな得体の知れないヴァンパイアに渡すのは何事だ?

主目的は国内の膿の排除なんだが?

ついでにちょっと国益に繋げて俺もちょびっと得するように動いてるだけだが?

そもそも、クズだけ当然の報いとして大損させるように暗躍するのもかなり大変なんだからな?

目の前の俗世に染まった変わり者ヴァンパイアがいなければ考えもしなかったことだし。

巡り合わせの有効利用は、顕魂術の時にも役に立ったからな。

 

「追い詰めることは想定していましたが……私の負い目を払うだけでなく、復讐の機会まで残して頂けるなんて。弟子でしかない私如きに目をかけすぎではないでしょうか?」

「自分の足で立ってやろうっていう地を這う泥臭さを見せてくれた礼さ。絶望全開後ろ向き令嬢という最底辺から、よくここまで這い上がってくれたもんだ」

 

俺が与えたのは最初のきっかけとそこからの道筋のちょっとした始端だけ。

顕魂術を与えてからは、とにかく自身のアイデンティティを掴もうと必死だったからな。

ちょいとパーシモン子爵領では無茶させたかもしれねえが……きっちりと食らいついてきて俺が驚いたくらいだ。

無力な自分はもう卒業だと言わんばかりの姿勢は、かつてのセラを思い出したものだ。

己の境遇、何なら世界への抵抗……そんな人間の矜持であり、一種の意地。

俺がこの世で最も美しく、尊いと思っているものだ。

それを見せてくれたんだ、これでも褒賞としては足りないくらいさ。

さて、そんな可愛い弟子への褒賞はもう1つおまけがあったりする。

 

「母親についても、雑に土葬してあったのをまともな形にした上でアーイレンの支社の方に移させた。これで彼女についての報告は以上だが……何か他にあるかね?」

「120点付けられる文句ない結末だ。こりゃあ、俺のお返しも相応のものじゃないといけねえな……」

「私としても思うところが大いにあったからね。それに、人材確保の可能性も鑑みればこれくらいは無料サービスの範疇さ」

 

虐待してきた奴隷の遺体をまともに葬るとは思ってなかったからな。

せめてもの慰めとも取れるんだろうが、これは俺の自己満足でしかない。

事前に察知していれば、そうならずに済んだのかもしれない……が、もうそればかりは過去で変えようがない。

ならば、その娘に関わった一種の責任を果たさねえとなって思ったまでのことだ。

 

「……もう一生尽くしても返せないほどの恩となっていて、それこそ改めて身請けするべきなのでしょうが……ケルビム様はそれを望む方ではありませんからね。でしたら、その人材確保の勧誘はお受けいたしましょう」

「ちょっとした裏側研修と思って気楽に構えてくれ。ケルビム君も埋もれさせるには惜しいと間接的に推薦していたくらいだから、相応の扱いを約束しよう」

「おいそれどこで盗み聞きしやがった!?」

「相変わらず最後は締まらないんですね……でも、今回は終わり良ければ総て良しということで姉代わりとして満点を上げましょう!」

 

とか言いながら生暖かい目線を向けるなエリオ姉さん!

あーこら、プリシラまでここぞとばかりに静かに笑うんじゃねえ!

師として弟子の次の就職先見繕って何で笑われなければならないんですかねえ!?

 

「先日会ったばかりのヴァンパイアとちょっとした取引をするほどの豪胆な破天荒君も可愛いところがあるじゃないか。その人間臭さもますます気に入ったよ」

「うっせえ、可愛い言うな!とりあえず、これでこっちは一件落着だ次行くぞ次!」

 

無理やりにでも流れを戻さねえと、いつまでも続くからな。

イグノックス兄さんとかカルリッツ父さんがいないなら、俺が自分で動かすしかねえのが悲しいところだ。

ったく、何でどいつもこいつも隙を見せたら総じて弄りにかかるんだ。

 

「まあ、残すは質疑応答の時間だからね。割と時間の余裕もあることだし、想定より多めに答えることは出来そうだ」

「おお……ヴァンパイア相手に質疑応答なんてなかなかない機会ですね。では早速私からいいでしょうか?学者の観点で気になることなのですが……」

 

無茶ぶりであることは理解してたが、こればかりは受けてもらってかなり助かった。

あっちの妖怪と友好関係持ったときも同じことしてたし、ヴァンパイア相手でも聞きたいことはいくらでもある。

ちなみに、エリオ姉さんの質問内容は何となく読めたぞ。

 

「ヴァンパイアの始祖は魔法の真理を追究するがために不老不死を求めた。その結果他者の血を啜ることで寿命を得たという仮説を立てているのですが……」

「その仮説は一般的な同類についてなら模範解答そのものだ。ただ、私を含む異端については前提条件や根本思想が異なってね。基本的な作りは似たようなものだが……まあ異端なりに工夫しているのだよ」

 

工夫って言うと一気に涙ぐましくなるが、その結果が連中より更に異端になったってことだから笑うに笑えん。

……その言い分だと、ヴィルジール以外にもその手の異端がいるってことか。

やっぱ世界は広いねえ……それでいてとことんこちらを飽きさせるつもりがない。

偉志ノ大陸の方でも会えてない超常的存在も山ほどいるだろうし、まだまだ興味の種は尽きなくて楽しめそうだ。

 

「今のカンバスはどうだか知らないが、当時はどの民も上に倣う形で魔法の真理の探究だの、かつて自分たちを追放したパレッティア王国への復讐だの……それはもう退屈だった。挙句興味の無い者にも押し付ける始末で、本当に辟易したものだよ。当時私を含むその思想に嫌気が差していたのは3名いて、それぞれが適当に脱走させてもらったよ」

「そんな気持ち悪い状態じゃあ脱走の1つもしたくなるわ。素晴らしい即断即決で惚れ惚れするね」

 

上に倣うだけとかもはや個々の存在の意味が皆無じゃねえか。

魔法の探求にしろ、こっちへの復讐にしろやりたい奴が勝手にやればいいじゃねえか。

同じく離反した残り2名とも会ってみたいものだな。

 

「しれっとカンバス王国がヴァンパイアの国だと判明しましたが、それはさておき。──精霊信仰に置き換えてしまえば、今のパレッティア王国とカンバス王国は似ていますね」

「まあ、こちらは王国と銘打ってるだけで本質はただの擬態だがね。そういう中途半端も嫌になった要因さ……結局憎い相手と似たような在り方になってしまっているのだからな」

 

言いたい放題言ってるように聞こえるが、ヴィルジールの意見は別に普通だな。

永遠信仰に精霊信仰……まあ、勝手にやってろこっちに押し付けるなって意味では全く同じだな。

ってことは、カンバスでもそういうことを……レオン先生が前に言ってた『霧の要塞』って地域辺りでなら有り得そうだ。

まあ、今のところ幸いなのはカンバス側は完全な沈黙を保ってくれていることだな。

自国内で宗教ごっこをやってる分なら、勝手にやってろって感じさ。

──気に入らない事態になったら、思いっきり介入してやるけどな?

 

「そういえば、先ほどから異端と自称していますが、他のヴァンパイアとはどう根本思想が異なるのでしょう?」

「私は他の生物……特に人間の営みに興味が尽きなくてね。脱走してからは試行錯誤で擬態の精度を上げていった。固有能力である魅了を使わずとも、集団に溶け込む術を身に着けてきたのだよ」

 

そりゃあヴァンパイア……始祖からすれば異端の中の更なる異端だろうな。

本来なら自分たちの永遠を維持するための食糧でしかないはずの人間に興味を示すんだ、これほどに度し難いことはないだろうよ。

それを知ったことかと貫いて、集団から簡単に抜け出ることが出来るからこそ……ヴィルジールはこれ以上にないほどの『個』を確立していると言っていい。

 

「その結果の1つがこの組織で、それも種としての強みまで封じた上で成し遂げるとは……末恐ろしい上昇志向と行動力ですね」

「そんな大層なものではないさ。ただの過剰な探究心というやつだよ」

「わわ、そうやって割り切られてしまうと学者として立つ瀬が無いですよ……。是非とも見習わなければ」

 

エリオ姉さんの言う通り、俺たち人間としても見習うべき姿勢と言える。

ヴァンパイアとしてどれだけ高位だとしても、人間の立ち位置ってなったらもはやゼロからの再スタートだからな。

強みである魅了を封じたってのも、それで駆け上がるなんて面白くないって思考からだろうし。

全く、つくづく共感できるヤツだ。

だからこそ胡散臭いんだろうが……それも誉め言葉にしかならねえってのが本当に癪だよ。

 

「そんな私だが、今の世界には少々ばかりマンネリ化の流れを感じてきていてね……そろそろ急激な変化が欲しいと思っていたところなのだよ」

 

わーお、見事なまでに人外らしい主張がいきなり飛んできたぞ?

やっぱ長生きしてると、マンネリが一層辛いものなのかね。

世界の広さを堪能するが為に寿命をどうにかしたいって思ったこともないわけではないが、これはますますもって保留案件になるな。

いや、まだ12だからそんなこと考えるには早すぎる気もするのは分かってるんだがね。

……にしても、この流れでそんな空気で言うとか察してくれと言わんばかりだなこの究極の若作りめ……。

 

「要するに、世界を震撼するレベルの刺激が欲しいからやるだけやってみてほしい。それが俺への協力の対価ってことだろ?ったく、分かりやすい視線送りやがって……」

「本当に君は察しが良いな。それでこそ、種は違えど我が同胞と言える存在だ」

「あはは……双方の気質を見るに、確かに同胞と言えなくもないですよね……」

 

同胞とか何かむず痒くなるから止めろっての。

あくまで今のところは仕事上の交友レベルだろうが。

そしてエリオ姉さん、何で爆発物を眺めるように若干引き気味で認めてるんだコラ。

肯定するってんなら、せめてプリシラのように控えめなドヤ顔でしてほしいんだが?

 

「今回の後始末でケルビム様に協力したのは……これからもよろしく、という意図でよろしいのでしょうか」

「実質はそうなるね。元々ケルビム君の存在は3年ほど前から認知して、期待の目も向けていたのだよ。偶然にもこのような機会に恵まれたのは本当に幸運と言える」

「急激な変化と言いますと……黒龍を討伐したグランロードや魔学を提唱しているアニスフィア王女殿下も十分候補になり得そうですが、そこはどうなのでしょうか」

 

プリシラの疑問はごもっともだな。

特にレオン先生は、世界の危機を救ったという意味では間違いなく世界に激流をもたらしたと言えるんだが……。

姉上の魔学は、魔法に寄ってしまっているって点でパンチに欠ける面はあるが……革命であることに違いはないわけで。

別に俺に絞る理由は無いと思うんだろうが……ヴィルジールは首を横に振っていた。

 

「グランロード……というより、グランナイツはもう陰の立役者の位置にいると見ている。あの出来事は貴族や魔法省による愚かな圧力が背景にあるが、少し早い世代交代を表しているともとれなくはない。強引な解釈ではあるがね」

 

なんつうか、複雑な考えた方だよなそれは……。

俺の中に渦巻く魔法至上主義への怒りの原点の1つが、まさにそこだからな。

確かにそう捉えることは出来なくはないが、感情がそれを許せるかと言うと──

 

「そんな顔しなくてもいいのですよ。むしろ、その出来事があったからこそ今のケルビムがある……そう思ってるからこそ、今も胸を張って生きていられるのですから」

「エリオ様に頭を撫でられるケルビム様……これはこれでなかなか来るものがありますね。絵に残せないのがとても惜しいです」

 

ああこらエリオ姉さん、無理に頭撫でようとするためにみかん箱用意するなっての。

全く、構図としてはおかしく見えるが当人としてはしっくり来るから笑えてくるよ……。

……後、プリシラさん?その生暖かい視線は止めて欲しいんだが。

 

「血が繋がらずともそこに家族の絆、か……やはり君たちは面白いな。さて、続きを話すが……こちらは手短になるな。アニスフィア王女殿下については、とりあえず評価は保留としている」

「あれ、グランナイツの時と違って随分とお茶を濁すのですね……」

「裏でやりたい放題のケルビム君と違って、表立って動いている分逆に評価がしづらいのだよ」

 

とはいえ、消極的なのが薄っすらとだが見えてくるな。

どうやら……このヴァンパイアの御眼鏡に適うには色々なものが問われるようだ。

俺はかなりその条件に合致しているのだが……やっぱどこか癪に感じる。

ここいらでちょいと堂々とした宣言もかましてやるとしますかね。

 

「まあいい、お前の要求って言うか望みは理解したからな。……だが、思惑通りに動くだけなのは性に合わねえ。あくまで俺は俺の思うがままに……何なら人外の常識すらも超えてやるよ」

「──くっ、ははは!人類どころか超越種の常識すら超えると来たか!そうだ、君はそれでいいのだよ」

 

何だいきなり高笑いしだして、余計に胡散臭いぞ。

ったく、接すれば接するほどワケが分からんが……今はそれでいいか。

長い付き合いの中で、少しずつ未知の部分を理解していってやるとしよう。

このヴァンパイアのことだけじゃなく、世界そのものに対してもな。




ものすっごい長くなってしまった……。
ヴィルジールはティリスと同類で、カンバスのヴァンパイアからすれば同じ裏切り者ですね。
しかも見限った理由が『つまらないから』という自分勝手の極み。
だからこそ主人公と気が合うわけなのですがね。
ちなみに残り二人も同じようなものです。

そしてここで早期救済の成果が早速出ました。
web版と似たような経緯のプリシラ、ここに来て原作ブレイク工業状態に。
書籍版とはもはや似ても似つかないとんでもない状態ですね。
もはやキャラ崩壊というよりは魔改造です、はい。
この2週間の話はもし需要があったら短編で書くかもしれません(書くとは言っていない)

さて、長くなったこの一連の話も次で最後です。
詰め込み過ぎは注意しないとですね……直る見込みは無いですが。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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