まあ全員集合は滅多にないから、この苦悩を抱くことはそうない……はず。
唐突の緊急招集が為されてからはグランナイツ内はてんやわんやだった。
現構成員総数9名の内、マドラーシュの号令段階で王都に滞在しているのは、騎士団顧問であまり動かないラインヒルトは先ほどの通り。
後は普段は古代文明を研究しているミケ族1名と自身の息子と騎士団の指南役兼マドラーシュの第1の師匠の3人だけという有様。
普通の騎士では手に負えない魔物討伐に赴いていた者4名については、マドラーシュが上手いこと鉢合わせに成功させている。
問題は普段から行動範囲を更に広げている者。ちなみに2名いるが内片方はマドラーシュに実戦訓練を嬉々として施した兄貴分である。
単に強い魔物を求めてあちこち放浪しているのだが、こちらは兄貴分担当のもう片割れがこんな文面を送ることで対処した。
『弟分が楽しそうに何かをしようとする時にお前は遠出か?兄貴分として失格もいいところだな、無責任放浪者め』
見事なまでに煽り全開の文面である。
そんな書面を送られれば、対抗意識で物理的に有り得ないのではというスピードが帰還するのも必然だろう。
もう1名は思ったより早く、それこそ風のようにいつの間にか王都にいた。
曰く、『マッドが何かしているのは知っておったし、そろそろ成果でも出たのではと思ってのう』とのこと。
勘が鋭い御仁だが、この女性はエルフ。
そういう感覚というか勘が強いということで通しておこう。
何はともあれ、普段はバラバラに好き勝手動いていたグランナイツが久しぶりに全員王都集結となった。
しかし、知る者にとっては一大イベントとも言えるこの集まりは全くと言っていいほど王都では話題に上がっていない。
というのも、マドラーシュがこの集合については一切の周知をしないように注意を払っているからだ。
王位継承権こそ捨ててはいないが2番手としてしか見られていない末っ子王子と、元王妃直属近衛騎士団という組み合わせ。
平民や騎士団ならまだしも、王城内で知られようものなら絶対に面倒な詮索をされる顔ぶれだ。
関係性が教育係とその生徒だったとしても、確実に変な勘繰りを入れられるに違いないとマドラーシュは過度に警戒していた。
一番知られたくないの言うまでもなく貴族たち。
一部はまともでも、どこからでも洩れたら厄介だとしてこちらは特に徹底している。
そして血の繋がった実の家族。
絶賛魔学フィーバー中の姉にも、次期国王として研鑽中の兄にも、国王である父にも知られないようにした。
ちなみに母は外交業務で王都にいないことが多いから特に問題はない。
そんな慌ただしくも水面下な動きもようやく終息して、グランナイツ会館のサロンは久しぶりの小規模賑わいを見せていた。
「お、本当に全員集合してるねえ。久しぶりにこの場所もにぎやかになったな」
数年ぶりの会館での全員集合に感慨深い表情を見せる紫髪のエルフがカルシオン。
今回の招集で伝書鳩を使う羽目になった原因の一人で、その理由が遊びに魔物狩りに出るという傍から見れば戦闘狂の男。
その癖妙に礼儀正しかったり、一種の美を追求したりと、掴みどころがないグランナイツ屈指の曲者である。
マドラーシュの秘めた才を知るや否や真っ先にあちこち連れ出し実戦経験にと連れ出した、彼にとって第2の師匠兼悪ノリが強い兄ポジションに当たる。
「お前はあちこちフラフラな放浪生活を満喫して、全くここに寄り付かないからだろう。活動再開したかと思ったぞ、『紫の刃』」
カルシオンにストレートな皮肉をぶつける黒髪で目つきが鋭い男はイグノックス。
昔、魔物の襲撃でかろうじて幼馴染と共に生き残るも故郷を追われパレッティア王国に流れ着いた。
二度と同じようなことには遭わないようにと愚直に鍛錬を繰り返し、数々の戦いを経験した結果グランナイツにスカウトされている。
その気質からカルシオンとはやや反りが合わず、マドラーシュに変な影響を与えないためにと代わりに訓練に連れ出している内に第3の師匠となった。
マドラーシュにとってはこちらは生真面目で融通が利きづらい、でも論理的に話してくれて後はたまに抜けてて面白い兄とのこと。
「そういうお前さんは随分とお利口さんになったじゃないか、『青い炎』。グランナイツに入る前はあれだけ協調性が無かったっていうのにねえ」
「レオンやカルリッツとの共同作業も為になるからな。マッドとラスの面倒も見ることが出来るからまさに一石二鳥でもある。お前はもう少しあいつらの面倒を見るという気はないのか?」
「お前の場合は鍛錬が主で、あいつらの面倒を見るなんて二の次だろうが。俺はマッドを連れて行く場所を常に探しているだけだ、第二の師証兼兄貴分としてな」
「こーら、久々に顔を合わせたと思ったらすーぐ喧嘩して。邪魔になるから外でやりなさい!」
ロクでもない論争から得物を取り出しかねない二人を止める栗色の髪の女性、彼女がマドラーシュの第1の師匠デイジーだ。
今でこそ一児の母になって落ち着いているものの、かつてはお転婆でかつ剣を握らせたら大の男どころか大抵の魔物もひれ伏すグランナイツナンバー2。
マドラーシュにとっては実の母と親友と言うこともあって、もう一人の母と思っている節があったりする。
「あわわ、もはやいつものって感じですね。カルシオンもイグノックスも、もう少しマッドを見習って成長してほしいものですよ……」
「そ・れ・よ・り!私はマッドの話というのがどこか不安!いきなり世界征服するー!なんて言い出したら絶対あの二人のせいですよ~!そうなったらシルフィーヌ様にどう顔向けしたら……エリオお姉さんもそう思いません!?」
「いやいや、流石にそんなことで私たちを呼ばないでしょう……」
イグノックスとカルシオンのやり取りを遠めに見て呆れたりもう知らんと言わんばかりの態度を見せるのは二人の女性。
長い銀髪で、マドラーシュの重大な話の内容にどこかズレた不安を示している天然気味な女性がクリスティーヌ。
イグノックスとは同郷の幼馴染で、彼にとっては五月蠅いお目付け役だがどこか憎み切れない人物とのこと。
ある意味周囲が勘ぐりそうな関係性というか、大半が『はよくっつけ』と念じているほどだ。
マドラーシュに対しては過度な鍛錬をした時は叱り、時には甘やかし、時にはずる賢いことを教える良き姉ポジションを位置取っている。
ミケ族特有の、俗に言うケモミミを持つ小柄な女性はエリオ。
本来貴族・王族でしか使えないとされる魔法を平民の身分で使える奇才の一人で、古代文明の研究者としても界隈では名高い。
マドラーシュの行っていた研究の基礎部分に手を貸したり、資材・資料の調達も手伝ったこちらは研究方面の師匠兼姉と言うべきだろうか。
「あのマッドが話す重大事ねえ。もしや、王位継承についてだったりするのかね?」
「どうでしょう。2つ話があるとは言っていたので、片方が王位に関わる可能性も否定は出来ません。ただ今更興味を持つのかと言うと……」
「見たところ、侍女のセラと俺たち以外にはこの集まり自体知られていない。王位どころか、国が絡むようなスケールの話もあり得るぞ」
マドラーシュの招集理由を気にする内の一人は恐らくこの顔ぶれでは胃薬係になるであろうラインヒルトと他二人。
古めかしい口調で話す水色髪の長身エルフの女性はルドミラ。
グランナイツ内で最もフットワークが軽く、現役時代もシルフィーヌの外交官業務を影ながら多大なサポートをしてきた。
マドラーシュに外で生きる術や変装技術を仕込んだ、上述3人とはこれまた別方向の師である。
ちなみに師匠ではなく、姉さんと呼んでいるが呼ばせているわけでは断じてない。
もう一人の重々しい鎧を何の問題もなく着込んでいる、視覚情報から頼もしいと思える赤髪の大男がカルリッツ。
近衛騎士団こそ引退しても魔物退治や護衛などを一身にこなしていることから、今でも平民に顔を覚えられている勇猛な騎士だ。
デイジーより少し後にマドラーシュに稽古をつけ始め、イグノックスやカルシオンほどの無茶はしない程度に実戦に連れ出している。
イグノックスとカルリッツが兄ならば、こちらはマドラーシュが父性を最も感じている父親ポジションとなる。
ちなみに、ラインヒルトは苦労人感が伺える父親ポジションらしい。
「皆、静粛に。マッド……いや、マドラーシュ・リヴェ・パレッティア王子殿下の入場だ」
一人の男性の、大きくはないが覇気を感じさせる言葉が響く共に会館は瞬時に静まり返った。
この男性こそが、グランナイツのリーダーにして影の英雄と称する者も少なくない『グランロード』レオン。
ラインヒルトと共に家庭教師役を務めるだけでなく、教育方針をまとめる役も担っている。
その後ろには普段の活発さはどこへやら、いるだけでレオンより存在感を示すのは血筋なのか当人の気質なのか。
今回の招集者、マドラーシュ・リヴェ・パレッティアが登壇した。
こういう場での緊張は、我ながらガラではないと思っていた。普段ならノリと勢いで誤魔化しているところだからな。
しかし、今回ばかりは勢いだけで誤魔化せるようなことではない。
俺の目の前には、この5年間色々なことをこの身に叩き込んでくれたグランナイツのみんながいる。
恐らく、俺が何を言うのか興味津々だったり、心配だったりと色々なことを考えていることだろうな。
……正直、今から伝えることはそれなりに衝撃を与えることとなるかもしれない。
戻るなら……または方向転換するならこれが最後のチャンスかもしれない。
──戻る?方向転換?平穏な方向にか?
代替そのものの張りぼて継承権と共に、無難な生き方に今更戻るだと……?
……ふざけるなこの大馬鹿野郎が!
お前は何の為に血反吐を吐いてきた?
何の為に何度も自分を死の淵に追いやった?
何の為に憧れのグランナイツに対して死に物狂いで食らいついてきた?
この5年の道筋を忘れるな、そして偉大な先人たちの教えを無駄にするな。
その根源から目を背けるな。
「グランナイツの諸君、まずは急な招集にも関わらず迅速に集まってもらって感謝する」
とりあえず、無難な始まりから。
早すぎる呼吸整理になるが、自身の逃避を封じるために普段は放ってある王族の仮面を被るためだ。
今回ばっかりは真面目に話さないといけない案件だからな。
「知っての通り、俺はパレッティア王家の血を引くが何故か魔法が使えない。故に、その王位継承権は我が兄のアルガルドの代用品のような扱いとなっている。最初からそのような扱いを受けていたからこそ、俺は王位など特に気にしたことなど無かった。魔法が使えないこともどうでもいい。王国内の立ち位置がどのようであれ、生き方などどうとでもやりようがあるからだ。そんな風に今もそれなりに自由に生きている俺だが……実は今日まで胸の内にとある黒い衝動を抱えている。失望と怒り、破壊衝動が入り混じったものとでも言えばいいだろうか。その始まりは今から5年ほど前。諸君らと出会う前の頃……3歳まで遡る。俺は初めて、自分では使うことが出来ない魔法というものをこの目で見た。一般的には、魔法は精霊に祈りをささげ、その精霊が具現化させるものとなっている。当時は絵本を読み漁ることばかりしていた俺も、その程度の認識はあった。さぞ幻想的な光景だろう……子供ながらそれくらいには思っていたし、当時変化を求めていた俺にとっては確かに見たことのない光景ではあった」
まあ、実際『悪くない』ってだけでそれだけでは特に感慨は浮かばなかったがな。
絵本を読むことでその存在を知ったが、あくまで『魔法というものはそういうもの』という一般的知識を得ただけに過ぎない。
あの頃はとにかく空虚な中身を埋めるために色々知識を搔き集めていただけだった。
その知識が単に視覚的情報で確認出来た。本当にあの一瞬が来るまではその程度の認識だった。
まあ、その無味乾燥な状態は即座に反転するわけなんだけどな。
さて、グランナイツの面々は……良かった、ちゃんと聞いてくれてる。
俺の次に言いたいこと、何となく分かってくれてるのかね。
では、ここから急降下と行きますかね。上昇幅に対して果てしなく釣りあってないのは気にしないでくれよ?
「あらゆる物事には表と裏がある……これは1つの真理で、例え魔法でも例外はない。精霊に祈りを捧げ、内に描く空想を具現化する。その様を精霊と心を通わせていると俗世間では言われている。確かに聞こえはよくて、上手く切り取ればそれは綺麗な一般論だろう。だが、俺はその裏に潜む……誰もが目を背けている点に気が付いてしまった。『これは精霊に対する一方的な依存ではないのか』と。偉志の大陸には『虎の威を借る狐』という言葉があるが、全く同じことではないか?現に魔法が使える、ただそれだけのことに胡坐をかく者も少なくはない。精霊をただ崇め敬い、そして一方的に依存して魔法を扱う。これでは自ら精霊の奴隷に成り下がっているだけではないか。もはや人としての生き方から外れているのではないか。何故かはわからないが、俺の頭の中にこのようなものが流れて来た。それと同時に、何とも表現しがたい怒り、失望が空虚を埋めていった」
ただでさえ空虚だったからこそより鮮烈に感じてしまったんだよな。
結局あの後は襲い来る負の感情を悟られぬよう急いで部屋に戻ってどうやって発散しようかと苦慮したなあ。
まあ時間が時間だったから騒ぎ立てることも出来ずに、冷水引っ被って何とか落ち着かせたような記憶がある。
「このような疑問を抱いてしまったからには、出来る限り魔法のことを調べた。この怒りと失望をどうにかしたいと、使えもしないはずの魔法をあらゆる角度で解剖した。その際には突拍子もないことを皆には頼んでしまったがな……。そしてその調査の過程で、この世界には魔法至上主義という欺瞞が巣食っていることも理解した。俺の怒りの矛先は魔法という技術ではなく、その欺瞞へと向かった。魔法とは所詮は技術だ。使い手次第なので、そこに怒りを抱いても仕方ないからな。そして、怒りと失望を全て魔法至上主義という概念にぶつけた結果が……この野望だ」
『こんな欺瞞が正しいとされる世界など気に入らないから壊してしまいたい。胡坐をかいている連中をその座から引きずり降ろしてやりたい』
ああ言ってしまった。
まだセラにしか言っていない、俺がこの5年間抱えていた闇とも衝動とも言えるものの総まとめを。
あまりに大きすぎて、重たくて捨てたいと思うこともあった。
こんなもの抱えていたら、いつまでもバカやって過ごすことは出来ないことも分かってはいた。
だが、これを捨てたとしてここまで形成してきたマドラーシュ・リヴェ・パレッティアはどうなるのだ。
グランナイツや遠いあの大陸の友たちと築き上げてきたものを、よりにもよって自分の手で否定するのか。
そう思うと、捨てられるわけがなかった。また虚無な自分に戻りたくないってのもあったしな。
あんな無色な世界に戻るくらいならば、この負の感情と衝動を何とか抑える方がまだマシだと思ったよ。
さてここからは、グランナイツの皆にも関係することだ。
少々ばかりズルいやり口も混ざってしまうが、後でいくらでもお叱りは受けるつもりだ。
「ここからは諸君に関する話も混ぜていく。13年前の黒龍討伐戦と、その後のことだ。遅すぎるとは思うが、改めて黒龍討伐に最も貢献した諸君と、ここにはいないもう一人の英雄に感謝を贈りたい。そう、討伐戦の際にその獅子奮迅の武力を持って、特に防衛面で貢献してくれた騎士……ノヒルリア。彼が率いる部隊が命尽きるまで黒龍の眷属たちを食い止めていなければ、人間側が勝利を手繰り寄せることは出来なかっただろう。現地住民は今でも彼らの武勇を讃えていた。後から知った身ではあるが、俺はこのことをとても誇らしく思っている。そしてそんな彼らの献身と共に、諸君は無事黒龍を討伐した。世界そのものの未曽有の危機を回避することが出来たのだ。では、そこから先はどうなったか……」
『黒竜討伐戦』……今はおとぎ話の題材にすらなっている大戦だ。
その存在は、災害級と称される一般的なドラゴンとは一線を画す。
何せ放っておけば確実に世界そのものが滅ぶとさえ言われた魔物だ。
当時から世界的英雄の力を持つと言われていたグランナイツに白羽の矢が立つのは当然と言えた。
というか、そんな彼らでもノヒルリアが決死の防衛を敷いた上での電撃戦で辛勝したほどだ。
これほどの偉業、正直精霊契約なんか目じゃねえと思うぞ?
それなのに……!
「諸君は本来なら誰からも賞賛を受けるべき立ち位置にいた。そこに横槍を入れてきたのは……魔法至上主義を掲げる魔法省と貴族たちだ。魔法を使えないとされるグランナイツの圧倒的活躍を前に、自分たちが持つ既得権益の損失を恐れた。挙句諸君を脅威と判断するという愚を犯した。被害を抑えられなかったことを即時に圧力をかけ、諸君の武勇は記録から抹消され、挙句現役から退けるようにまで仕向ける。挙句の果てには、ノヒルリア殿が守り切ったものを自身の功績に全て書き換える始末だ!自分たちの力が黒龍とその眷属にまるで通じないと分かるや否やノコノコと逃げ帰って、震えて待っていただけの軟弱者共に讃えらえる要素などどこにある?魔法が使える、ただそれだけで魔法が使えない者の偉業を抹消することすらも許されるのか?自分たちにとって都合のいい歴史改編をしてもいいというのか?そんなふざけた話、あっていいわけないだろうが!魔法が使えるだけで神様を気取るつもりなのか!」
これこそがグランナイツの早期引退の真実。
俺の導となった者たちが負った、本来ならばあってはならない傷。
この下らない魔法至上主義の、最大級の被害者とすら言えるかもしれない。
ああ実にふざけている話だ……。
それを知った時、俺はどれほど怒り狂ったことか。
何とかレオン先生が抑えてくれたから起こさずに済んだものの……。
「こんな汚物のような権威主義など、徹底的に破壊してしまおう。敵がどれほどいるかは分からないが、権威の奴隷ならばその悉くを叩き潰してやる!魔法など使えずとも、精霊に依存などしなくても、生きる上での可能性を広げることが出来る世界に変えていきたい。理想が過ぎるかもしれないが……これこそが俺にとってのあるべき世界だ」
正直、こんなのズルいやり方ってのは百も承知だ。
俺の戯言は完全に破壊衝動と怒り、そして狂気で塗りつぶされた物騒な代物でしかない。
ハッキリ言ってしまえば、わざわざ付き合う道理などありはしないのだから。
……なのに、どこか淡い期待を抱いてこの話までしている。
結局グランナイツに甘えてしまっているのだ……はあ、弱すぎるな俺。
思わず自己嫌悪に陥りそうだが、何とか堪える。
「無論、感情に訴えてこそいるが、諸君に助力を強制するつもりは一切ない。世界に喧嘩を売ると言う愚行についてこいなんて、無情な命を課すなど出来るはずもない。ただ、俺が好みに宿す怒りや狂気は知っておいてほしかった。ノヒルリアも含む諸君の王国への、否世界への貢献は、俺だけは絶対に忘れることはないだろう。魔法の有無?地位が高いだ低いだ?知ったことか。行動した者こそが、本当に賛辞を受け取るべきだ。それを下らない優生思想と権威主義で辱めるなど、俺は絶対に許すつもりは無い。──これが、皆に伝えたかったことだ」
ふう……何とか言い切ることが出来た。
結構感情的になっちまったが、言いたいことは言えたからそれでいいや。
後はみんな次第……さっきも言ったが、強制なんて出来るわけがない。
ちなみに、黒龍討伐戦のことは母上から大まかに聞き、当時の激戦区に赴く機会もあったので軽い聞き込みをしたりもした。
激戦区となった地域の住民は、13年経った今でもグランナイツのことは忘れていなかった。
彼らもまた、改編された紛い物の真実には憤りを見せていたよ。
いざという時に何もせず偉そうにしてる魔法至上主義者よりも、やれることを真っ先にやる魔法が使えない騎士たちの方がよっぽど救世主だろう。
散々言っていることだが、魔法なんて所詮は人間の有する技能の1つでしかない。
その有無で優性劣勢を語るなど、愚かにも程がある。
挙句精霊への信仰に繋げるなどバカじゃないのかと思うね。
崇めたければ勝手にやってろってんだ。
少なくとも俺は魔法に羨望を抱いたこともないし、使えないことに絶望したこともない。
押し付けるのも大概にしてほしいもんだ。
魔法が使えない、いわば貴族や王族以外は負け組と扱われかねない世界って何なんだろうな。
この理不尽な世界に感じた怒り、破壊衝動……これこそが俺の原点だ。
さて、皆の反応は……どうなんだろうね。
この年頃特有の無謀かつ頭の悪い宣言だ。
流石に呆れてることだろうな。
あのカルシオンですらも無言だもんなあ。
こういう時一番辛い反応って無言なんだぞ?分かってるのか?
思わず自嘲の笑みを浮かべようとした、その時だった。
「あの傲慢極まりない連中の拠り所を壊しにかかる……それでこそお前だな。そういうことならば、俺が一番乗りとさせてもらおう」
兄貴分の一人が、真っ先に隣に立ってくれていた。
魔法至上主義周辺については更にあくどい感じになっています。
既得権益を守ろうとすると行き過ぎぎがちって、普通にあることな気がするので。
黒き竜についてもグランサガ原作からはだいぶズレています。
これは転天側に合わせた辻褄合わせですね。