転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけでプリシラ編後半です。
ちょっとバトルあります。


鬱屈庶子魔改造計画(後)

 

パーシモン子爵領までは可能な限りの速さですっ飛ばしていった。

とはいえ、開拓に伴った街道整備が為されているのでさほど無茶な道中でもない。

馬の負担を軽くするという方向で顕魂術の制御にも繋げられて、まさに一石二鳥と言える状態でしたね。

それでも多少時間を要しましたが、 日ほどで今回の依頼主でもあるパーシモン子爵の元に参上することが叶いましたね。

ケルビム様が魔物の間引きを行うと知った時の反応は、それはもうこの上なく感極まっていましたね……。

まあ、無理もありませんね……軽く探知を入れただけでもなかなかの数でしたので。

とりあえずその手の賞賛は終わってからにしてくれと、早速本題に入る様は本当に手慣れているようでした。

流石はグランナイツも認める次世代最強、12歳という年齢も気にならないほどの経験豊富なお方です。

まあ、その分年相応の部分がギャップとして際立つのも面白いところなのですが。

……さて、肝心の討伐依頼の話ですが案の定フェンリルが出没しているという話でして。

それもこれまで見たことのない強さの魔石持ちの出現例があり、ゴールドランクでもそれなりの顔ぶれでも歯が立たないとか。

『狩猟の略奪姫』(マローダー・プリンセス)クラスでないと厳しいのでは、何てそこそこ洒落にならない話も聞きましたね。

そのせいで間引きが滞ってしまい領内の被害も拡大していく悪循環、というわけですね。

なるほど、もしケルビム様が出張っていなかったらアニスフィア王女殿下にお鉢が回っていたかもしれないと……。

噂でしか聞いたことはありませんが……まあ、颯爽と飛んでくることはそれなりに想像できますね。

今回は残念ながら我が師の遊び場及び私の経験値にさせていただきますけれども。

 

「……それにしても、フェンリルという魔物は一種のカリスマ持ちなのでしょうか。これほどの異なる種の魔物の群れにするなど、尋常ではありませんね」

「確かにレアケースだが聞かない話じゃねえな。3年前くらいにはとある森林地帯を丸ごと支配してた愉快なオークもいたくらいだし、それに比べれば全然マシさ」

 

そんなわけで、私たち二人は早速間引き作業初日に突入している。

ここまでの道中は急ぎでこそあったが、子爵様のご厚意による客人として部屋の提供で休息は十分。

この1週間半で見出し、即席ながらも鍛えてきた探知の術で特に間引きの必要がある区画を割り出す。

一部見覚えのない魔力も感知しながらも、明らかに高密度となっている北部へ向かう。

──それにしても、このような森林地帯になるとケルビム様の戦闘技術がより輝きを見せますね。

気配を消し、まるで蜘蛛のように木々を足場にしては最小限最大効率の一撃で切り伏せる様はまさに暗殺者のそれです。

更には、奇襲に感覚を慣れさせたところで真正面から堂々と襲い掛かるという虚を交えることも忘れない。

盛大に術名を放った上での電撃ブレスは圧巻でしたね……。

そのやりたい放題っぷりを見ているだけで、思わず私もウズウズしてきてしまいました。

──サポート役としては、熱に浮かされるなど言語道断かもしれませんが、こればかりは仕方ないと思ってください。

これだけの所業を年相応の悪戯心全開で行う、その光景がこれまた愉快痛快以外の言葉で言い表せないもので。

豪傑揃いのグランナイツの皆さまが共に活動するのも頷けるほど、彼の一挙一動から目を離すことが出来なくなってしまっている。

が、私にも仕事があるので見とれているわけには行かないのが残念至極です。

 

「この魔力……そして、半ば変異体と化したグレイウルフやコカトリスが大半を占める状況。方角は問題ないようですね」

 

私が探知の術を用いて魔物の種類と数と方角を伝え、ケルビム様が的確に処理をする。

傍から見れば、ただの繰り返しに見えることでしょうね。

しかし、周囲の状況はそんな無味乾燥とは程遠い。

奥に進むほど、ある気配が濃密になっていくことは私如きでも肌で感じることが出来る。

属性変化という形で変異して、少々ばかり歯ごたえの増した下級魔物の比率が明らかに増えてきていた。

──明らかに、この場の雷と風の気が強くなっていますね。

 

「エリアボスの魔石持ちフェンリルは近いな。さっきから雷の魔力がバチバチきてて電撃マッサージでも出来そうだな」

「そのお陰で条件定義が楽に済みそうですね……いい実験台になりそうです」

 

探知だけでもケルビム様の補佐は十二分に務まるであろう。

その点、現状でも既にその役割は担えているのだが……。

……どうにも、これまで無欲でいさせられた反動は想定以上に大きいようです。

もっと私は、自分の出来ることを増やしたい。

目に見える天井を破壊して、その先を見てみたい。

あわよくば、ケルビム様のお役にもっと立てるようになりたい。

やれやれ、我ながら随分とまあ強欲になってしまったものですね……。

 

「わざわざこんなイカれた舞台に同行するんだ、その新たな策には自信アリってことでいいんだな?」

「地味なのが欠点と言えますが、分かる者にとっては華を添える程度の役割にはなるかと」

「なるほどね。んじゃ、お手並み拝見と行こうか」

 

魔力の流れから何となく察したのだろうか、ケルビム様は迎撃態勢とばかりに進行速度を緩めた。

二振りの剣も一旦鞘に納め、傍から見れば明らかに無防備な姿を晒している状態だ。

よほどのことが無い限り、一旦は手を出さないということですね……ありがとうございます。

 

(定義は既に浮かんでいる。後は……構築と範囲。これも距離的に間に合いますね)

 

探知する限り、魔石持ちは当然のように最奥に位置して、その周辺を影響下にあるフェンリルが固めている。

突撃を仕掛けてくるのは、軍門に下ったであろう他の下級と中級手前が少々といったところか。

要するに、小手調べの偵察部隊ということですね。

それらは堂々と手ぶらで歩くケルビム様を感知しては意気揚々と襲い掛かろうと迫っている。

これだけの魔力を帯びたからか、やや攻撃的になっているようですね。

その辺にいるグレイウルフですらもそれなりに凶暴な魔物と化していることは、素人に毛が生えた程度の私でも理解できるほどだ。

しかし、そのように得た力には代償という概念が常に付き纏うもの。

いきなり武器を収めたケルビム様に対し、何の疑いも見せずに突っ込んでくる。

それ即ち、知性が明らかに欠落しているということだ。

そのデメリットは私のような弱者には丁度いい隙となる。

──さあ、頭の悪い札付きへのお仕置の時間ですね。

 

「『ガイダンス・トゥ・フューネラル』、展開──碌に扱えないモノに溺れた自分を恨みなさいな」

 

頃合いと見て、ケルビム様と自身の周囲に起動用の魔力を叩きつける。

流石にこれほどの魔力を感知して反応を見せない魔物たちではないが……むしろ進軍スピードを上げていた。

そして、ケルビム様に飛び掛かろうとした瞬間にこの顕魂術は本格発動を見せた。

一帯に仕掛けられていた魔力は、標的に当たるものを全て縛り上げる。

そして、条件対象そのものを核として、私の魔力を導線に爆発を引き起こす。

見事に引っかかった下級集団は、次の瞬間には一切の例外なくただの肉片と化していた。

……あ、素材が勿体ないことに……。

少々威力が高過ぎましたか……ここは要調整といったところですね。

 

「『フェンリルの魔力で強化された』連中に対して発動する地雷……なるほど、発動条件を狭めることで威力強化を図ったってところか?」

「ご明察の通りです。皆さまのように武術の方でイメージ補強に至れないので、ならばと特定条件の相手を仕留める方面にシフトしたのですが……如何でしょう」

「顕魂術の性質をきっちり理解して、性能向上を図る辺りは満点そのもの。実戦で有用且つ応用の幅も広いと来れば、最高に面白いじゃねえか。ったく、随分飛び級な一人前もいたものだな?」

 

……それは流石に飛び級が過ぎると思うのですが。

あくまで私なりに色々と足掻き藻掻いた結果でしかありませんので。

まあ、こうしてケルビム様を湧き立たせることが出来ているのだから……少しくらいは自分を褒めてもよいのでしょうか。

 

「たったこれだけの期間で相当頭回してきて、生まれの貴賤とか血筋とかそういうので悩んできたのがバカらしくなってきたんじゃねえか?」

「要は考え方1つということですね。ただ俯いていた、それだけでどれほど視界を疎かにしていたか……別の意味で自己嫌悪に陥りそうです」

「んなもんこれから取り戻せばいいんだよ。──さて、折角作ってもらった花道だ。可愛い弟子の次は、師匠がいいとこ見せねえとな!」

 

ああ、そういえば奥にいるフェンリルの存在をコロっと忘れておりました。

全然来ないものですから、てっきり怖気づいたのかと思ったのですが……そうでもないようで。

ケルビム様が動き出すのと同時に迎撃にかかる辺り、前座が引き起こした惨状から警戒していたのでしょうか。

やれやれ、私如きを警戒したところで何にもならないでしょうに……?

 

「ケルビム様、お気づきかもしれませんが側面にトロールが1体潜んでおります!」

「まだ札を隠してるとは、随分狡猾なワンちゃんだな。コンクールに出れば受賞くらいは出来るんじゃねえか?」

 

その動きを見るに、狙いはケルビム様ではなく後衛の私ですね。

至って合理的な判断ではありますが……流石に詰めが甘すぎではないでしょうか。

魔力探知に加えて気配を探る術にも長けるケルビム様相手に対してあまりに雑過ぎて……少しばかり頭にきましたね。

徹底的にやってほしいので、勝手ながら独自にアシストさせていただきます。

 

「おお、喜劇ものみたいに盛大にコケやがった!早速応用編か、はええよプリシラ!」

「鈍間は足元の注意が疎かですので、案の定簡単に引っかかりましたね」

 

トロールは鈍間な魔物に類されるので、通過ポイントを予測して設置するだけで済むので罠に嵌めることは造作もない。

ただ、その見た目通りそれなりのしぶとさは備えている。

火力不足なのは百も承知、だから今回は徹底的に妨害全振りです。

魔法での適性属性でもあり、顕魂術でも2番目に得意とする水属性……その魔力を地面に浸透させる。

要するに、一部分だけ泥に変貌させることで足を取らせることが狙いだ。

ただの地面だと思って足を降ろした先が泥に変わっていたら、人間でも足を取られやすい。

それがトロールほどの巨体で、更に攻撃対象である私に意識を集中させていれば……まあ、結果は火を見るより明らかでしょう。

こんな単純なやり方だが、これまたケルビム様のお気に召したようで何よりです。

 

「キュイとはまた違った趣向の爆発をご覧頂くとしようか!」

 

取り巻きの通常フェンリルを足蹴にして、ケルビム様は宙を舞う。

トロールの上空を位置取ったかと思いきや、その軌道は唐突に垂直降下に様変わりしていた。

天井に魔力の天井を作ることで足場にする、ケルビム様の奇襲パターンの1つだが……今回は少々趣が異なるようですね。

遠目で見ても分かるほどに風属性の魔力を纏って加速し、剣には凝縮された火属性の魔力が込められている。

己が魔力、そして愛剣と一体化した一つの矢がトロールの腹部に突き刺さる……直前で爆発した。

突進フェイントからの風の散弾を空中降下で再現した、といったところでしょうか。

少し前にイグノックス様から見せて頂いた、火柱を起こす顕魂術のイメージも拝借しているようにも見受けられる。

それにしても、爆発で起こるノックバックすらも立ち回りに利用するとは……恐れ入りますね。

さほど手間をかけずに、魔石持ちフェンリルの近くまで戻ってきたのですから。

……派手さもありながら、まるで無駄がない。

遊撃と立ち位置修正を同時に行うその立ち回りは、見栄えと実用性が見事に調和されていて……美しい。

──っと、呆けていては邪魔になってしまいますね。

脇役は早急に持ち場を離れなければ。

 

「ったく、何でどいつもこいつも本気になるのがこうも遅えんだ?真面目にやれよな」

 

流石に魔石持ちとあれば魔力の量も尋常ではなく、突風と雷を自身を中心に巻き起こしていた。

普通ならば近づくことすらままならないが……ケルビム様がこの程度で臆するはずがない。

火と風の魔力を纏うことで突風の影響を相殺して、雷は神懸かり的な予測と二振りの剣でその悉くを切り払う。

……魔法障壁という厄介なものを持ちながら、更に猛攻を仕掛けてくるドラゴンを手玉に取る実力はやはり本物ですね。

これだけの猛攻をまるで意に介さず突き進む姿を見れば、当然フェンリルにも焦りが生じる。

そうなれば、一旦仕切り直しとばかりに一部魔力を守りに回すのは必然と言える。

 

「んなちゃちい防御で俺が止まるわけねえだろうがよ!」

 

が、そんなのは知ったこっちゃないと叩き割る辺りは流石ケルビム様。

火と闇の魔力を伴った右の掌底を叩きつけると、風の防壁はあっさりと崩れ去った。

防壁破壊の際に伴った衝撃が貫通という形でフェンリル本体にも影響を及ぼした結果、相応のダメージとなり集中を乱したといったところでしょうか。

……咄嗟の防御をも許さないこのえげつなさ。

もはや素晴らしい以外の言葉が浮かびませんね、思わずゾクゾクとしてしまいました。

防壁が本来の役割を果たせなかったことは、そのままフェンリルの敗因に直結するのは言うまでも無いでしょう。

最後の締めとなったのは、もう一振りの剣……いえ、刀から繰り出される空間そのものを斬るという空前絶後の魔技だった。

その直後に、トドメの一撃として首狩りの斬撃が放たれ……。

 

「……ふつくしい」

 

涼やかな納刀の音と、フェンリルが崩れ始めるタイミングは完全に一致していた。

ここまで来ると、もはや溜息すら出てしまうほどですね。

その後にかろうじて出た感嘆の言葉も、思わず一部呂律を忘れてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔石持ちさえ片付きさえすれば、残りの間引き作業はそれほど手間がかかることではない。

最も厳しい初戦で慣らしをこなせたことはかなり大きかったとケルビム様も仰っていましたね。

その反復と枝分かれ狙いでの実験も余裕をもってこなせたほどで、半ば物見遊山という状態でした。

あまりにすんなりと事が運び、本来1週間ほどを想定していた作業はたったの4日ほどでその過程を終えてしまった。

私が同行してくれたからこそ効率よく終わらせることが出来たと、ケルビム様も満足そうにしておりましたね。

褒めて頂けて恐悦至極に存じますが、まだまだ至らぬ点も多かったので……ひたすら精進ですね。

そんなこんなで依頼を早回しで片付けてしまった私たち師弟ですが、まだ子爵領に滞在させて頂いてる。

メインの依頼は片付いたのですが、今後も起こり得るイレギュラーへの対応もいっそのこと協議しておこうとのことです。

助けてはい終わり、とならない辺りがケルビム様らしいですね。

アフターサービス料も取らないとのことで、これでは足を向けて寝ることができなくなりそうですね。

まあ、今回はギリギリのタイミングで私たちが駆け付けることが出来たから事なきを得ましたが……毎度こう上手くいくとは限りませんからね。

そして、その会議の合間に更にもう一仕事……というより、可愛らしい要望を叶えることもしていたり。

 

「……二時の方角にグレイウルフ1体。こちらに感づいている様子無しですね」

「おう、こっちでも確認した。──というわけだシャルネ、まずは自分なりにぶっぱなしてみろ」

「ひゃ、ひゃい!うう、矢が、矢が震えてますぅ……」

 

私とケルビム様に守られながら弓を構えるのは、パーシモン子爵の一人娘に当たるシャルネ嬢だ。

先日とは異なり、どこか和やかな光景に見えるが……こうなった理由もまた微笑ましいものだったりします。

初日の魔石持ちとの戦いを終えた直後、目を輝かせながら一直線に飛んできたのが彼女とのファーストコンタクトでした。

曰く、今の自分とそう変わらない歳から冒険者をやっているケルビム様に強い憧れを抱いていると。

ケルビム様もそんなシャルネ嬢に少々気圧されながらも、まるで妹分のように接しておりましたね。

その日はパーシモン子爵の制止もあってか一旦お開きになりましたが、間引き作業が楽になった2日目以降はそれなりに話す時間を設けてあげました。

ケルビム様の武勇伝はそれこそ列挙に暇が無いが、その中でもシャルネ嬢が喜んだのは対ドラゴンの話でしたね。

まあ、魔法を使わずに空を舞っては障壁を容易く貫通してドラゴンを墜とし、挙句真っ向勝負で撃破とあれば……無理もないでしょう。

脚色を一切用いずともおとぎ話そのものが出来上がる辺り、私はとんでもない方に師事していると実感しますね。

そんな微笑ましい交流が続いたある時、ふとケルビム様からこんな提案が。

 

『せっかくだ、俺ら同伴でシャルネも狩りやってみねえか?』

 

この発言には、シャルネ嬢当人だけでなくたまたま耳にしたパーシモン子爵もびっくり仰天でしたね。

ちなみに、私はなかなか面白い提案だと思って早速賛同の意を示しました。

シャルネ嬢はまだ7歳ではあるが、弓術の基礎はそれなりに出来ていることは確認済み。

ケルビム様としては、将来的な子爵領内の戦力になってもらうべく少しでも実戦経験を積ませてあげたいのでしょう。

後は……憧憬の念を向ける微笑ましいお嬢様へのちょっとしたサービス精神といったところでしょうか。

シャルネ嬢も前者の理由は察したのか、それはもう全力で頷いては御父上に許可を求めていましたね。

普段の鍛錬の様子を見守ったりもしていましたが、やはり実戦はワケが違うといことでしょう、

そんな娘の熱意に押されるがままに、間引きが終わって魔物の発生自体が落ち着いた段階でという条件付きで了承を頂き……今に至るというわけです。

 

「うう、実戦はやっぱり違いますね……結局ケルビム様のお手を煩わせてしまいました」

 

震える手を何とか抑えて矢を放つも、惜しくもグレイウルフの足元を射る結果となった。

当然相手も奇襲に気付くが、そこは思慮が利くことでも定評があるケルビム様。

ほぼノータイムで放たれた闇属性の槍により、きっちりフォローを入れていた。

 

「鍛錬と実戦、その間にあるズレは必ず起こり得るものだ。その矯正の為にも失敗ってのは付き物、やらかしてなんぼ……その点、今のはそう悪くなかったぜ?」

「ケルビム様にもそういう時があったのですか?」

「俺の周りはグランナイツという化け物集団だったからな。背中を追うだけでも一苦労で、それこそ普通のやり方じゃあ間に合わなかった。ちょっと何か思いついたらすぐに黒の森やら東部に突っ込んでやらかしての繰り返しで、色々素っ頓狂な真似事も試したもんさ。んで、最後は説教食らうオチで終わってたな」

 

エリオ様やレオン様もそのようなことを仰っていましたね……遠い目をしていましたけれど。

最も説教の機会が多かったのは、母親的立場に当たるデイジー様とのことだ。

とはいえ、それだけの無茶苦茶をしでかしたのも全ては憧れに近づくため。

……そんなかつての自分の面影を重ねているからこその助言といったところですね。

自身の失敗談を恥と思わず曝け出す、これもまた見習いたいところだ。

 

「今度はさっきの失敗を思い返しながらやってみな。その繰り返しで失敗の引き出しを増やすのが今の段階だ……プリシラ、どうだ?」

「……ちょうど少し奥で似た大きさのグレイウルフを探知いたしましたね。早速向かいましょう」

「うええ!?プ、プリシラさんの探知早すぎません!?まだ心の準備が~……」

「そう遠くない内にコンビ組むことも有り得るかもしれねえだろ?今の内に慣れとけ!」

 

こんなやり取りのお陰か、徐々にシャルネ嬢の堅さも解れて弓の命中率も徐々に上がって行った。

グレイウルフ以外の魔物に関しても、初撃から暫くは空振りに終わってもめげずにその日の内に修正を図るように。

着実に、年相応の健気な成長を見せる彼女に私たちはただただ笑みを浮かべていた。

……妹がいたら、このような感じなのでしょうか。

 

「……シャルネ、いっそプリシラのこと姉っぽく呼んでみたらどうだ?あちらはお前のことを妹っぽく思ってるっぽいぜ?」

「えっ、ちょっと待ってくださいケルビム様いきなり何を言って」

「じゃあ、プリシラお姉さまとお呼びします!」

 

……それは不意打ちが過ぎますよお二方。

私には弟や妹がいなかったから、そう呼ばれるのは新鮮そのものだ。

ちなみに、ケルビム様のことは先生と呼ぶようなっていましたか。

同じ師の元での姉妹関係……ふふ、改めて考えてみると面白いものですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなパーシモン子爵領での短いながらも濃い日々を過ごした後、エリオ様と合流して西部の城塞都市カルリーゼを訪れる。

そこで人に紛れて活動するヴァンパイア、ヴィルジール様と会合を行い……密かにケルビム様が行っていたことにより深い感謝の念を抱くこととなる。

私に選択の自由を与えくださり、そして産みの母をせめて故郷に帰したいという願いまで叶えて下さったのだ、もはや一生かけてでも返さなければならない。

一時的な師弟関係はこの場を以て卒業となるも、私は改めてケルビム様に忠誠を誓うこととなった。

そしていずれ傍付きに足る存在になれるよう、今はヴィルジール様の元で修業中の身だ。

……それと並行するように、ずっと引っかかっていたことの調査を続けていた。

 

「……やはり、このやりたい放題っぷりは似通っていますね」

 

V3社アーイレン帝国支部にて宛がわれた自室にて、私はいくつも資料を広げていた。

その大半は、パレッティア王国……特に東部で起こった出来事の詳細だ。

ケルビム様の元を離れ、修行を兼ねてV3社の活動に混ざること約2年の月日が経過している。

──本当にあちこち飛び回っては、色々なことを為す濃密な日々でしたね。

カンバス王国内部の調査に行ったかと思いきや、その次は偉志ノ大陸に赴いて交易関連の視察に赴いたり。

適性を見込まれて、別の方の海を隔てて存在する帝国で軽い潜入任務も任されたこともあった。

見事なまでにあの2週間の延長線の日々で……まあ、退屈とはとことん無縁でしたね。

そんなことばかりをしていると、否が王にも世界の裏事情というものを目の当たりにする機会も増えてくる。

その中で、私がどうしても気になったのが……とある王族の存在でした。

パレッティア王国第二王子、マドラーシュ・リヴェ・パレッティア様。

奇天烈ながらも才を見せる長女アニスフィア様、そして次期国王と称されるアルガルド様の陰に隠れていて、代替品だの放浪王子だの言われたい放題の存在。

──というのはあくまで表向き。

その裏ではとんでもない人物であった……勿論良い意味で。

『有力家門に婿入りしてくれたら、それこそ世界すら変えそうだ』……偉志ノ大陸の民から聞いた話でしたか。

気になって詳しく聞いてみたところ、当時8歳の王子殿下がパレッティア王国と偉志ノ大陸間の国交を繋ぐカギになったとか何とか……。

他にも、祟りを放つ大妖怪を懲らしめるどころか友好関係を持って問題を解決したり、妖魔王と意気投合しては細かい問題を起こす下っ端妖怪を舎弟にしたり。

何ともまあやりたい放題の極みですが、結果人の為になっている……というところまで行き着いた時でしたね。

その突拍子の無い仮説が雷のように降りかかったのは。

 

「東部の開拓が唐突に再開されたのは7年前。これも偉志ノ大陸との交易を見据えてのことなら辻褄が合います。年齢と時期を考慮するとドラゴンの初討伐もこの時と考えるのが自然ですね……そして、これが決定的な情報と」

 

私が手にしたのは、潜入任務の際に得た情報を独自にまとめたものだ。

かの国の要注意人物兼引き抜き候補の中に、彼ら……グランナイツの構成員全員の名前があった。

そこには、表沙汰になっていない内容も記されており……その中で今回目を引いたのが、デイジー様についての記述だ。

 

「裏で王妃と親交がある……このことから、王子殿下が振り回しているとされる教育係はグランナイツの皆様と仮定すれば、自ずとケルビム様に繋げることが出来ますね」

 

この関連性だけではまだ仮説の域だが、先ほど挙げた偉志ノ大陸関係の情報まで繋げればより現実味を増していく。

特に後者は、個々で見るのではなく繋ぎ合わせることでようやく辻褄が合うような形になるのだから。

全く、貴方様は常に私の想定を超えていきますね。

……本当にやりたい放題で、それでいてなかなかに酷い人です。

 

「いいタイミングでその等号にたどり着いたね。まるで何かの思し召しの如くだ」

「そのタイミングすらも調整の上だったのでは?」

「確かに私は世界を股にかけるヴァンパイアではあるが、そこまで万能ではないさ。薔薇の予言も暫く届いていないからね」

 

いつの間にか部屋に入ってきている現在の雇い主ですが、この程度なら軽く流せる範疇です。

その手の神出鬼没っぷりはケルビム様……もといマドラーシュ様で慣れておりますので。

新天地となっても忙しさ以外の変化を感じられない辺り、やはりお二人の気質は似通っている面があるということだ。

それにしても、このタイミングで彼が来たということは……考え得る要件は一つでしょうね。

 

「察しの通り、近々与える任務について伝えに来た。依頼主は……グランナイツの参謀役だ」

「あ、それは絶対に謹んで御受け致しますので」

「はっはっは、やはり即答か。3年経ってもブレなくて何より、これは面白いことになるな!」

 

なるほど、先ほど仰っていたタイミングというのはそういうことでしたか。

──確かに、それこそ女神の思し召しとでも言いたくなってしまうほどの巡り合わせですね。

どうやら、誓いを果たす日はそう遠くはないようだ。

……ああダメだ、先のことを思ったら口端が勝手に吊り上がってしまう。

あちらに赴いてからは、そのような失態は犯さないようにしなければ……。

 

 





幕間と言ってるのにまーたフライング登場やらかしております。
元々この辺は書籍の5巻を読んで思いついて、後から『もう出しちゃえ』といつもの勢いとノリでやってしまった。
しかもシャルネは思いっきりケルビム=マドラーシュのファンという追加設定で、本作ならではというべきかただのやりたい放題というべきか。
そして最後は……まあ、こっちも原作合流ということで。

さて、次からはいよいよ第2章投下開始。
一応ストックは結構あるけど、ペース落とさないようにしたいが全ては筆次第。
現状まだまだ展開で苦慮しているもので。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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