転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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一難去ってまた一難、ボスが終わってもまたボス。
短めの前座は挟みますけど。



28.醜悪布教は傲慢と共に

 

ロムの先導の元、俺たちはフィゴルの森を駆け抜けている。

入った途端にブローチの気配を探知できたから、これまでの推測は全て当たっていたということだ。

ただ、どうしても1つだけ気になることがあった。

 

「何でアイツはわざわざアロマでオークを狂暴化なんてことをしたんだ……?足止めにしては確実性が無さすぎるし」

「ウガルーを復活させるための手順ってわけでもなさそうだからな……俺らのことを舐めてるで纏めるにしても、違和感が拭えねえ」

 

何というか、さっきのノヒルリア様含む亡者の件といいあの盗人のやり方は確実性に欠けている気がする。

亡者復活が実験なんだったら、あのアロマももしかしたらってことも有り得るわけで。

 

「オークの方も実験の一環だろうよ。──アイツが連中の配下ないし同類なら、まさにらしい手口とさえ言える」

 

マッドのボソリとした呟きが聞こえた気がする。

もしかして、マッドがたまに口にする例の『大当たり』のこと?

これも前から気になってたんだけど、一体何のことなんだろうか。

レオン様やイグノックス様と話しているところを耳にしたことはあるけど、詳細が分からない。

母さんに尋ねたこともあったんだけど、いずれ俺たちにも知らされるから待っててほしいって曖昧な答えだったし……。

さっきのノヒルリア様の時といい、いつもよりマッドに余裕が無い気がする。

カルリッツの前では疲労も多少あったのか、むしろいつも通りだったけど……それこそが妙な感じもした。

何というか、仮面が剥がれかけているような……そんな感覚だ。

 

「ほれひよっこ共、考えるのもいいが今は追跡中だ。頭を動かしながらきりきり走らねえとだぜ?」

「そういうカルシオンおじさんだってウチらと同じ速さじゃん。もしかして、もう歳なの?」

「キュイ、それはいくら何でもストレートすぎるんじゃない……?」

 

俺の背中を叩きながらカルシオンは軽口を叩いてきた。

それと共に、俺にだけ聞こえるように小声で囁かれる。

──『その時はいずれ来るから、今は目の前に集中しろ』、か。

カルシオンにそこまで言われてしまったら、そうせざるを得ない。

普段から揶揄ったりスパルタをしているけど、何だかんだで幼少期からマッドに懐かれていたのは伊達じゃないからね。

……いずれ俺もそんな存在になるためにも、現状に対して全力を注ぐのみだ。

 

「ハウラーとかクロボーが脱兎の如く逃げてるな……俺たちのことも眼中にない辺り、かなり必死に見える」

「フィゴルも普段よりおとなしいわね。まるで何かを恐れているみたい……これは近いのかしら」

 

ウィンとナマリエの言う通りだった。

さっきまでマッドに対する懸念ばかり抱いてて気にしていなかったけど、森に棲んでいるであろう魔物とすれ違うことがやけに多い。

俺たちが奥に進めば進むほどその頻度も上がっているのも分かる

それと共に、強大な気配が近くなっていた。

 

「ブローチのオーラもかなり強烈になってる……ウガルーってやつが復活間近、またはもう復活しちゃってるのかも」

「復活の阻止は無理だったか……これは骨が折れるな」

「ここはまだ復活間近ないしすぐってタイミングだから良かったって思おう。起き抜けだったら、より勝機を見出せる可能性もあるかもしれない……弱気になるにはまだ早いよ」

 

最善ではないけど、接敵までの時間がある分心の準備が出来ている。

事前に情報も精査していたことも、この場合はプラスに働く分マシと考えるべきだ。

何から何まで失敗してるってわけじゃないんだ、言うほど気を落とす理由もない。

 

「へえ、度が過ぎないポシティブを押したいい鼓舞だな。昔のレオン先生にちょっとばっかし似てたぞ?」

「お前らはまだまだひよっこなんだ。これだけ面倒な相手に手間かけさせて、こっちは次善策を最速で打てている、この状況を作れてるだけ上々さ」

 

マッドとカルシオンが見事に飴を寄越してくれた。

それにしても、いつまでひよっこなんだろうなあ、俺たちって。

カルトとナマリエもまた『ひよっこ言うな』って顔してるよ……っ!?

 

「この魔力……いやがるな。ちっ、駄々洩れすぎて下品極まりねえ」

 

マッドの舌打ちを含めた毒舌と共に俺たちは周囲を見渡す。

……いた、確かにセリアードのブローチを盗んだヤツだ!

フィゴルの一団が一目散に離れようとしているところに堂々と立っていた。

 

「あっ!ようやく見つけたよどろぼー!」

「先手必勝!ぶっ飛べどろぼー!」

 

ってキュイ!いきなりそれはやりすぎ!

完全に不意打ちの一撃だからあくまで小さな火球だけど、キュイの魔力凝縮はマッドの受け売りだ。

当たり所が悪いと、流石にとんでもないことに……と思ったが、杞憂に終わった。

 

「いきなりファイアボールもどきとは、随分無粋なおチビさんですね!」

「あ、こら!ブローチの力でホイホイ防ぐなんて、ズルだよズル!後誰がおチビさんだー!」

「挑発に乗るなよ……お前がチビなのは事実だろうが」

 

キュイの一撃を盗人は防いでいたから。

いくら不意打ち気味で火力が落ちているとはいえ、あんなにあっさり……。

いや、セリアードのブローチの力を使ったからかな。

マッドが発した苦言通り、魔力の制御がそこまで上手いってわけじゃないし。

 

「虎の威を借る何とやら、こういうことを言うんじゃないの?」

「貴方がたのように叡智を授けられなかった凡人に何を言われても響きませんね。せめてこれくらい出来るようになってもらわねば……ね!」

 

盗人の嘲りの言葉が発せられると共に、とんでもない地響きが俺たちを襲った。

森全体を覆っていた威圧感が、一気に

 

「ギリギリ間に合って何よりです。後は使役するだけなのですが……ひとまずは、貴方たちを相手に暴れてもらいましょう」

 

グランナイツ数人とマッドで抑えたって話のウガルーを、復活させるどころか使役だって!?

案の定とんでもない、傍から聞けば無謀とも言えることを企んでいた。

あのブローチの恩恵に与る形でそれを現実にしようとするなんて……どこまでもとんでもなかった。

さっきの物言いだとあの盗人はこの国の貴族に由来するのは間違いない。

……マッドが普段より怒気を強めていた理由の一端が分かった気がするよ。

 

「そう何度も逃がすものですか!」

 

ナマリエが牽制で発砲するけど、霊廟の時と同じくまるで意に介していなかった。

逃走に全力を注ぐことで、風の魔力弾をやり過ごしてから森の奥へ消えていく。

そのまま森の中にヤツが消えるのを追おうとするが……マッドから待ったの声がかかって全員止まることとなった。

 

「──あのクソ野郎は俺とカルシオンで追う。その代わり、復活したてのウガルーの相手をお前らに任せていいか?」

「俺たちが……ウガルーの相手を?」

 

てっきりマッドとカルシオンでウガルーを止めると思ってたからその提案は想定外だった。

マッドの事だから、またウガルーと戦いたがるのかと思ってたけど……。

──そんなマッドの目を見て、俺はすぐにその言葉の意図を理解した。

そうか、マッドはウガルーよりも盗人の方をより警戒しているんだ。

確かに、セリアードのブローチはまだヤツの手中にある。

あれだけ使いこなしていたから、もしかしたらウガルー並の隠し玉を持っているかもしれない……。

 

「戦ってみたいのはやまやまだが、今回ばっかりはこっちの方に多く戦力を割いた方がいいんじゃねえのか?」

「あの盗人、ブローチで色々変なことしてるけど逃げてばっかりじゃない。アンタまで行くこと無いと思うんだけど……」

 

カルトとナマリエの言うことも間違っていない。

……でも、こういう時のマッドの勘は大きく外れることはないんだよね。

実際、何か気にかかることがありそうな表情をしているわけだし。

俺も今回は、あえてセオリーから外れることを選ぼうと思う。

 

「いや、ここはマッドの言う通りにするよ。こういう時のマッドの勘はバカにならない。多分何か懸念事項があるんじゃないかな?」

「ウチと同じく天才の言うことだからね、ここは聞いた方がいいと思うよ」

 

キュイも俺の言葉に頷いてくれた。

こればかりは、長い付き合いじゃないと分かりづらいからしょうがないところもある。

マッドの直感は苛烈な実戦経験も相まって鋭いし、その上でリスク配分も考慮されていることが多い。

母さんやイグノックス様、ルドミラ様辺りが太鼓判を押すほどだ。

それに……俺にとってはもう1つ別の理由がある。

 

「だが、俺たちだけで抑えられるのか?せめてどちらかは残った方が……」

「ウガルーは確かに厄介だが、まだ起きて間もないから本来の力は発揮できないはずだ。それならお前たちひよっこでも十分抑えられるさ」

「ここはお前らに背中を任せる。主役は譲ってやるから、ここいらで次世代の英雄譚をちょっくら作ってこい見習い共!」

 

同じく一度ウガルーと戦ったカルシオンもこう言うなら、俺たちでも何とか出来る可能性は十分にあるのだろう。

そしてマッドにこう言われたら……ね。

要するに、これはマッドなりの俺たちに与える課題……または挑戦状だ。

きっと、『俺付きになるなら、これくらいやってのけてみせろ』という意図。

──ここぞとばかりにそういう煽りを入れてくるのは、ある意味反則だ。

そこまで言われたら、引き下がるなんてまずあり得ない。

 

「セリアードとロムはマッドとカルシオンについて行ってナビをお願い!俺たちでウガルーを再封印……いや、いっそ倒してやろう!」

「は、はい!皆さんお気をつけて!」

 

あちらの動向次第だけど、乱戦にもなるのは間違いない。

むしろ二人の方に行ってもらわないと、巻き込みかねないからね。

セリアードとロムを見送るや否や、どんどん近づいてくる雄たけびと地響き。

これまで俺たちが相手をしてきたどの魔物よりも大きい威圧感。

……考えてみたら、これほどの魔物と戦うのは初めての経験だ。

でも、マッドはこれだけの魔物と9歳で渡り合ってきたんだ。

もう17になる俺が恐怖する理由なんて、一体どこにあるというんだ?

 

「たまには俺が兄らしいことをしても罰は当たらないよね。弟分の邪魔をするなら、俺たちで倒すまでのことだ!」

「あらあら、リーダーがすっかりやる気になっちゃったわね。これは制御が大変よ、カルト」

「そんなの今更だろ。っていうか、制御なんているか?」

「お前までやる気になってるのか……なら、ここは俺も一発奮起だな!」

「よっしゃー!どこからでもかかってきなさいガルガル君!」

 

やる気になっていたのはどうやら俺だけじゃないみたいで何よりだ。

キュイの挑発に乗るように、巨大なオークはその巨体を堂々と晒す。

──グランナイツに、そしてマッドの背中を追うための試練としては申し分ないね。

気合も士気も十分、行くよみんな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちがかつて戦った相手だからか、案の定ラスはやる気が凄かったな。

全く、デイジー師匠とカルリッツ父さんが俺の轍を踏まないように稽古つけてたってのに……。

結局俺と似てるところが出て来てるじゃねえか……全く、困った幼馴染だ。

まあ、こればかりは面白いと言うべきなのかもしれないが。

実際あいつらの成長速度はなかなかのものだし、寝起きのウガルーくらいを任せることには何の不安もないのも事実だ。

むしろあいつらなら、この大一番を踏み台にして成長の糧にしてしまうのではないか。

そんな期待を込めた発破だったが、流れに乗ってくれて何より何より。

さて、俺とカルシオンはひったくり野郎と追いかけっこに興じてるわけだが……。

これがなかなか距離が縮まらないもどかしい状況が続き、いい加減飽きてきた。

 

「面倒だな……ここは俺が先回りして挟み撃ちと行こう。ああ、お嬢さんたちはちゃんと隠しておけよ!」

「ちょうどいいところがそこにあるな。二人はあの駐屯地跡に避難、方角はもう大丈夫だ!」

「マッド様、気を付けてくださいね!」

 

こういう時は地の利を生かしてこそってな。

あの場所ならば、もしもがあってもフィゴルとかが寄り付く心配はない。

割と離れることになるが、相手次第ではこれくらいの距離でもどうなるか分からねえからな。

二人の安全を確保したら、カルシオンとの挟撃に合わせる為に顕魂術で加速する。

ここまで楽させてもらったお陰で、消耗した分はだいぶ回復の兆しは見えている。

カルリッツ父さんにはああ言ったが……ここできっちり仕留め切ってやる。

今でも怒りは収まってねえし、抑えるつもりも毛頭ねえからな。

 

「……流石にこの場所ではそちらに地の利があるようですな」

 

カルシオンが立ちはだかることでようやく止まった盗人野郎。

さて、ようやくそのツラをまともに拝める時が来たわけだが……マジで誰だこいつは。

まあ、俺がこんな輩の顔をいちいち覚えてるかって言われたら有り得ねえんだけど。

他に覚えておくべきことくらいあるだろ?

つまりはそれくらいの価値しかねえってこった。

クーデターの生き残りの貴族崩れなんざ、大体その程度の評価で十分だ。

 

「盗人野郎、今こそ年貢だ。盗品じゃあ到底受け付けらんねえから……臓器で手を打つか。それとも腕一本でも貰ってやろうか?お情けで死に損なってるんだ、五体不満足くらい我慢できるだろ?」

「おいおい、それは流石に物騒が過ぎるしこんな奴の腕なんざこちとらゴメンだぜ?慈悲を与えたくないって点は果てしなく同意するがな」

「おやおや、仮にも第二王子ともあろうお方がたかが盗人に慈悲も与えないとは……パレッティア王家の血筋に泥を塗る気ですかな?」

 

おお、随分とノリがいい盗人じゃねえか。

無駄に口が回るのも元貴族だからかねえ……。

──この状況でこれは流石に余裕が過ぎるだろ。

こちらは俺とカルシオン人だけだが、量はともかく質はどう見ても不利だろうよ。

だからこれまで逃げの一手で誤魔化したんだろう。

……となると、当てにしているのはブローチか。

やはり、そのブローチを魔力がたんまり溜め込まれているだけと誤認してるアホではないらしい。

ナマリエとカルトの言ってた通り、亡者の復活とか魔物の狂暴化はブローチの力を意図的に発揮したってことだ。

──どうやら、マジの『大当たり』だな。

やれやれ、死に損ないが多くて本当に嫌になっちまう。

 

「流石は茶番の名脇役、ジョークが随分とお上手だな。名背景賞くらいは受賞出来そうだ」

「たかが異邦人所有の物品1つ程度で、そこまで執着なさる必要は果たして本当におありなのか。いくら代替品の王族とはいえ、他にやることがあるでしょうに」

「よりにもよってひったくったのがそれだってのが運の尽きさ。つくづく相変わらず掃き溜めのようにニオうな、お前らの信仰心ってやつは。埋めたとしても土地が腐りそうで処分に困っちまうね」

「あんまり鼻が曲がりそうな悪臭ばっか撒き散らしてると、ご自慢の精霊様にすら嫌われちまうぞ?」

 

むしろ敬われる精霊には同情しかねえよな。

こんな連中に狂気的な崇拝を向けられるなんていい迷惑だろうに。

ったく、精霊とは相容れない身の俺にここまで思わせるなんてよっぽどだ。

まあ、そもそもこっちの定義の精霊には基本意思は無いからそんなの関係ないんだがね。

 

「やれやれ、家門が堕ちても尚衰えぬ我々の信仰心をドブ扱いとは……持たざる者の嫉妬というのは、どこまでも醜いものですな」

 

嫉妬、ねえ……。

やっぱりこいつら、妄信のせいで相当頭が湧いてやがるわ。

ここまで話が平行線だと、匙の一つも投げたくなるね。

っていうか、もう投げつけてやろう……お望みは毒々球らしい。

 

「お前らみたいな生き方を人間と完全定義されているんだったら、俺は別に蝿でも構わんさ。思慮ある蝿であった方が、生きていて幸せって言うくらいだ」

 

だいぶ前に読んでいたものに書いてあった、個人的に気に入っている詩からの引用だ。

こういうところからも、顕魂術のインスピレーションと言うのは湧いて出てくるからな。

特にこいつは、己の存在的ちっぽけさを理解しその上で足掻こうという意志を再認識させてくれた。

そういう意味では、かなり気に入ってるぜ。

まあ、個人的解釈も多分に含まれてるが。

 

「おいおい、そんな言い回しが分かる顔に見えるのか?」

「死に損なった掃き溜めに理解なんて求めてねえっての。ちょっとそれっぽい言い回しがしたくなっただけさ……これでも二つ名主演だし」

「最近のマッド様はますます演者染みてるねえ……見ていて飽きないよ。まあ、こんな感性も狂信で侵されてるアホは到底理解出来ないか。全く、そっちの方がよっぽど哀れだ」

 

カルシオンもよく言ったものだな、これだからこういう掛け合いは止められねえ。

そして俺たちに割り込めない辺り、マジで言い回しを理解出来てねえんだろうな。

やれやれ、信仰になぞらえただけで何の餌にもならねえ教養なんてマジで受けなくて良かったぜ。

アル兄さんもさぞ苦痛だったろうな……色々な意味で。

 

「でしたら、蝿同然の貴方がたに見せて差し上げましょう。これこそが、我々の信仰の成果!魔法という叡智を授かったかどうかの、絶望的な差というものです!」

 

さて、いい加減本番突入のようだな。

セリアードのブローチが光り出すと共に、これまで何度も感知した魔力が解き放たれる。

ここで本来の使い方……まあ、運用効率はそっちの方がいいからな。

──ベースとなる魔石は特になしと。

これまで散々やらかしてた反省からか、それとも単に持たされなかったかは知らねえが。

まあ、そうなるとどう変化するかは使用者次第、変身先は完全に読めないな。

俺たちは知覚できないが、恐らく精霊も媒体にしてるから尚の事。

こんな森の奥地だから、気の流れだけで土と水、後は闇の精霊がわんさかいるであろうことは察するに容易いがね。

解き放たれた魔力と現地調達した精霊を糧に、盗人の肉体をどんどん変質していく。

何の特徴もない中肉中背の人型だったが、どんどん人ならざるモノの大きさに。

それと共に見た目は猿のような感じに退化している。

……あれだ、偉志の大陸の娯楽作品で出てきたあの造語──『逆進化』でも真似たのか?

つうか、キュイと一緒に読んだ悪魔辞典にこんなやついた気がするんだが。

 

「どうだ!私は人間の原初に近づきながらも進化した!貴方がたのような下賤な輩には到達し得ない領域だ!」

 

俺とカルシオンの目の前には、腕っぷしなら相当であろう巨大な猿……もとい、魔猿とでもいうべきなのか?

そう、SARU……いや、MASARU……石10個は捧げてねえぞ?

まあ鬣っぽい毛が生えてるから頭は獅子っぽいけどな。

……あーそうだ、その顔で思い出せたよ。

禁書の一種に当たる悪魔辞典に載っていたその名は確か……『オラングエラ』だったな。

それなりの上級悪魔だって記載されてたっけ……。

モチーフにしたのかは分からねえし、細かいところに差異はある。

まあ、大まかに似ているから亜種ってくらいにはなるのか?

面倒だから呼称は魔猿でいいと思うけどね。

しっかし、これはまあ何というか──

 

「なあ主演様。アイツにとっての進化って言葉はどういう意味なんだろうな?」

「とりあえず巨大化しておいて、形だけお願いマッスルしておけばいいってところじゃね?」

 

真っ当に色々と鍛えてる人間に謝ってほしいね。

俺のように頭を回して、技法を搔き集めては組み合わせてる泥臭いタイプにもな。

当然、そのデカいだけの醜い身体をカルシオンの美的感覚は受け付けていない。

俺は……もうナニモイウコトハナイ、って感じの棒読みでいいよな?

別に猿という生き物をバカにするつもりは毛頭ない。

むしろ人間のベースということで敬うべき動物だし、東部のビッグエイプなんかは生物としてはいい線行ってる魔物だと思っている。

無論、モチーフ疑惑があるオラングエラもバカにはしねえぞ?

書物には速度と力を兼ね備えた面倒な悪魔って書いてあったくらいだ。

実物と相対すればさぞ楽しめることだろうよ。

──要するに、目の前のこいつは単に力つけました!これ進化したよね!っていう頭の悪い素人考えしか持ってねえってことだ。

ただただ巨大なだけの魔猿は、その考えをただ発揮した姿でしかないってことさ。

俺たちが心底呆れ果てているのも当然だろ?

 

「これを見てそんな大口を吐けますかな!?」

 

きったねえ口を開いたと精いっぱい広げたかと思いきや、唐突に風の魔力が圧縮される気配がする。

へえ、見かけによらず風属性適性なのか。

そこから、割と短いチャージ時間で圧縮空気弾が放たれていた。

 

「おうおう、ありきたりだが手品なんか身に着けて、えらいはりきりモンキーだな!貴族じゃなくてもサーカス団員としてやっていけそうで将来安泰じゃねえか、良かったな!」

「ちょっとだけ面白かったし、ちょっとだけ餌をやるとしますかね。バナナは流石に無いから勘弁してくれよ!」

 

無論、そんな単純な奇襲をわざわざ正面から貰う俺たちじゃあない。

弾道など即座に見切って、褒美がてらと軽くそれぞれの得物で斬りつけてやる。

俺のはそれなりに効きそうな火属性魔力を、カルシオンはお得意の闇属性魔力を軽く付与済みだ。

あくまでジャブ程度の一撃だったが……切り傷もついてなさそうか。

見た目通りのフィジカル進化は伊達じゃないってことだな。

 

「顕魂術も魔学も魔法もどきでしかない、邪道にして邪法!そんなもので私に傷をつけられるとお思いとは、なんとおめでたい頭をしているのでしょうね。これもいい機会、世界の裏を歩みたどり着いた、魔法の真髄をその身に教授して差し上げましょう!」

「他の特技は他になし……って、今姉上にも喧嘩売りやがったな?罪状欄に一つ余罪として追加しておいてやるか」

 

そういう風に身内をバカにされると、流石の俺でもムカっ腹が立つものだ。

魔学と顕魂術を同列に扱うことは単なる間違いだから、そこはヨシとしてやってもいいが……。

どちらも魔法もどきなんて言われるのはねえ……。

世界への抵抗を鼻で笑うとか、本当に頭が沸いているな。

 

「こちとら魔法を使えないなりに辿り着いた境地ってものがあってね。お返しにそいつをたっぷり感じさせてやるよ……そのあるか分からねえ脳みそとアホ丸出しな身体で耐えられるか見物だけどな?──ああ、姉上に対する侮辱については別枠の罰金で支払ってもらおうかな!」

「普段はああ言っておきながら、何だかんだでマドラーシュ様は家族思いだな!本人が聞いたらどんな顔するものかね!」

 

はいはい喧しいぞ紫の刃、機会があったら好きに話せばいい。

さあて、巨大魔猿の調教タイムの始まり始まりだ。

おひねり貰えるようないい子ちゃんに仕立ててやるよ!

 

 





ボスとボスの感覚短すぎじゃないかって?
グランサガって割とそんなものですので……ほら、ハードの7章以降は特に(白目
そして、まさかのデビルメイクライからのゲスト出演です。
銃がべらぼうに強い2作目からオラングエラ。まあ今回はもどきですが。
そしてしれっと禁書なんて単語が出てきてますが、まあこのやりたい放題主人公なので……。
この辺も後々語る……はず?(ストックうろ覚え状態)
というわけで、次話はまた派手なバトル回となります。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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