というわけで、グランサガ1章の締めです。
ひったくり的盗人……貴族崩れを追うだけなのに滅茶苦茶駆けずり回らされる1日だった。
セリアードに王都案内をしていただけのつもりが、まさかの龍の丘に地下霊廟、オーク神殿にフィゴルの森くんだりまで。
ったく、散歩どころかパレッティア王国北東ちょこっとツアーになっちまうとは。
初っ端ハードモードが過ぎんだろうが……ついて来れたのはマジで偉い。
ガイド役統括としては何とか終わらせられて何よりってな。
まあ、余計なゴミカスのせいで色々醜態を見せたりしたが……セリアードとロムに引かれて無いかが心配だ。
ただ、あの腐れ狂信者は俺の怒りの琴線に触れ過ぎた。
ノヒルリアを含むグランナイツをバカにするわ、偉志ノ大陸全体を蛮族呼ばわりするわ……。
挙句姉上のことまで蔑むときたもんだ、許されるわけねえだろうがよ。
一刀両断してやったことはまるで後悔してない……というか今更過ぎるし。
ちなみに、あの状態の俺を知る者はほとんどいない。
直に見たことがあるのなんて、それこそグランナイツとセラだけさ。
いくらラス達でも、あんな憎悪に塗れた俺はあんまり見せたくはないのでね。
……地下霊廟で盛大にやらかしちまったから今更かもしれんけど。
何はともあれ、無事ブローチはセリアードの元に戻り、ひったくり事件自体は無事一件落着ってわけよ。
今回のラス達、貢献度どころか相当功績上げたよな……。
その辺の口添えもやっておきますかね、未来の上司として。
──封印から解放されて間もないとはいえウガルーを倒したって聞いた時は流石にびっくらこいたからな。
だいぶ守備的に立ち回ってたことに気付けたからってことだが……何にせよ、誇っていいと背中を叩いておいた。
勝ちは勝ち、それも俺好みの素晴らしい勝ち方って言ってやったら滅茶苦茶喜ばれたな……特にラスとキュイが。
そんなだからしょっちゅう俺たちはどっちが兄で弟なんだ論争が発生するだっての……ついつい笑みを浮かべる俺も悪いんだろうけど!
この戦果については、カルリッツ父さんも当然かなり驚いてた。
若者の成長は速くて何よりだし、俺も見習わんとだ。
……え、おっさん臭い発言だなって?
うっせえ、レオン先生の真似しただけだ。
その後カルリッツ父さんと連れてきた兵たちと合流してそのまま王都へ直帰。
俺とラス、そしてセリアードはカルリッツと共にこの盗難事件を含めた諸々の事情をこれから話し合うこととなった。
集まる場所はグランナイツ会館の一室となった。
屯場になってる俺の離宮は流石に俺が全力で拒否した。
だって、ユフィリアが電撃訪問なんてしてきてみろよ。
絶対面倒になるだろ……アル兄さんなら全く問題ないんだろうけど。
「ラス、帰って来たか。兵からマッドと共にひったくりを追っていたと聞いていたが、大丈夫だったのか?」
「はい、無事解決しましたよレオン様。特に怪我とかもしてないので……その、身体をペタペタするのは恥ずかしいというか……」
そんなこんなで会館に入ると、案の定いてくれた人物が1名と、意外にもいてくれた人物も1名。
俺たちの帰還を予知していたのであろうラインヒルト先生、そしてまさかの我らがグランロードレオン先生。
まさか、こんな絶妙なタイミングで帰ってくるとは……流石は加護持ち、というべきか?
そして、ラスも一緒に帰って来たと知った途端にそれは始まってしまった。
グランロード様の割と多くある欠点……何故かラスだけで俺には発生しないこの過保護暴走イベント。
早い話、レオン先生は相当の伯父バカだ。
端的に言えば、昔からラスにだけは滅茶苦茶甘い。
いやそりゃあ血縁で可愛い甥っ子だしだし?俺より優先するのは当たり前だとは思うよ?
そりゃあ可愛くてしょうがないだろうよ。
ただなレオン先生、セリアードとロムの前でそれは流石にイカンと思うぞ。
初対面の人間の前でそんなことしたら、グランナイツ全体のイメージに繋がるから抑えて欲しいんだよなあ……。
「レオンせんせーい、今は客人いるから程々にしておいた方がいいと思うんだが」
傍から見てるとそういう人に見えかねないからな?
ったく、22歳差なんて流石に貴腐人でも……いや、どうなんだろうな?
というか、思いっきりモチーフにしたそういう本って無かったか……?
貴腐人ってのは本当にワケ分かんねえインスピレーションしてるからねえ……。
……俺も被害に遭わんように気をつけねえとか?
「マドラーシュ王子の言う通りですよ、レオン。ラスはもう17です、貴方が甥離れしないでどうするのですか」
「あー、すまんなセリアード。彼はラスの伯父に当たるレオン、見ての通り甥っ子に対しては過保護なところがあってな。これでも一応グランナイツのリーダーだから、実力や実績は問題は文句のつけようがない。そこだけは信用していい」
「な、何だか色々と凄いですね……しれっと説明されてる血縁関係とか……」
「過保護って言うにもなかなかのレベルだね……」
ラインヒルト先生が苦言をぶつけ、カルリッツ父さんがフォローを入れる。
セリアードは何だかどこから突っ込んでいいのか分からんような顔してやがるぞ……そりゃそうだわ。
しれっとラスがなかなかの血筋だってことにも気づいてるし、目の付け所がいいな。
そしてロムの言うことはごもっともにも程がある。
何でこうなったんだと、俺もデイジー師匠も……何ならカルシオン以外のみんなも当初は頭を抱えてたよ。
今はもう諦めちまったけどな。
マジでどうにもならんからなーこの伯父バカだけは……。
というかレオン先生、セリアードには反応してほしいんだが……って矢先に動きが止まってくれた。
「……すまない。考えてみれば、マッドがついているならよほどの相手じゃなければ問題はなかったな」
「信用してくれるのは嬉しいんだが、反射的にラスに駆け寄るのだけは止めておこうな?」
「心配してくれるのは嬉しいんですけど、俺にも一応体面ってものがありますから……程々にしてくださると助かります」
「……分かった。程々にするよう善処する」
あ、これぜってー善処できないヤツだ。
やろうとしないんじゃなくて、もはや無意識レベルでやっちゃったZE☆ってタイプ。
この人脳筋なところもあるからなあ……もうそういうものだと付き合うしかないのかね。
「この伯父バカのことはさておき……盗難事件は解決したということで、次はセリアードさんについての相談で我々を尋ねたのですね?」
流石ラインヒルト先生、これまたストロング話題転換だ。
いきなり伯父バカ特急発動させてはいたが、レオン先生もいるのはちょうどいい。
アレとかソレについても色々と相談やら確認が取れるからな。
そんなわけで、会館の中でも特に防音性に優れる部屋にご案内。
俺たち6人と妖精1名はそこに詰めることとなった。
セリアードとロムのこともそうだが、貴族崩れの件も身内以外には聞かれたくないことだからな。
どこに目やら耳があるかもわかったもんじゃねえし。
「事情はセラから概ね聞いています。セリアードさんは記憶喪失で、何者かに追われていたところにラス達に助けられた……彼らとの馴れ初めはこのような感じで間違いはないですね?」
「は、はい。ブローチの件も含めて、本当に皆さんには最初からお世話になりっぱなしで……大変恐縮です」
「俺たちはやるべきことをやっただけだから、そんなに畏まらなくていいよセリアード。それこそが騎士の本懐だからね」
そうそう、このお人好しがそんな状況に出くわして見捨てるなんてことはまず有り得ない。
何なら、昔っからあっちこっちで人助け案件を持ってきてたくらいだ。
そしてあんまりに難度が高いと俺にお鉢が回ることも……。
その度に変装しては向かったから、結構付き合うのも疲れるんだぜ?
まあ、面倒に思うことも無いわけではないが悪い気もしない。
そんなラスだからこそ、特別近衛騎士として事前指名してるわけだからな。
これからもその性分は曇らないでいて欲しいものだ。
……たまにキュイと報酬の話で揉めるのは、もうちょい上手くやってほしいものなんだが。
「ただブローチの件は解決しても、セリアードには未だ記憶が無い。更にはデスナイトに追われていたことも気がかりだからな。そこで、王国の保護を受けたらどうだって話が出たんだが……」
「おいおいデスナイトって、随分な魔物に狙われてやがったな……つうか、今のでしれっと裏の深さが垣間見えたぞ」
「それほどの大物が出てくるということは、大事に巻き込まれている可能性も十分あり得る。俺たちとしても気にかかるところだ」
アンデッド系でもかなり上位種に分類される、王国内では発見例どころか存在すら認知されていない魔物だ。
当然、ただの飛行トカゲより遥か高みにいる存在だ。
……もし連中の差し金なら、そんなのまで使役できるようになってきてんのか?
今回のノヒルリア殿復活やらウガルーの解放の件もあるし、奴らも水面下でそれなりに進めてきてるってことなのか……。
あくまで仮定の話だが、こうなってくると、偉志ノ大陸とも連携したい。
なんだが、今絶賛嫌な感じで分断やられてるんだよなあ……。
ミココロとは連絡は取り合えてるのが唯一の救いなんだが、状況は好転させづらいらしい。
しかしそうなってくると、セリアードのことはより確実に守らないといけねえ。
ブローチの件もだが、セリアード自身の内に秘めた能力を考えると……連中の手中に落ちたら下手すりゃ即詰みだ。
記憶を読み取る能力はまだ全貌が明らかになってねえが、その範囲次第ではいくらでも使いようがあるだろうし。
「でも、私なんかに過ぎた扱いではないでしょうか……。結局ブローチを取り返すこともマッド様達に頼り切ってるのに」
まあそう言うだろうなあ……本当品がいいと言うか控えめというか。
それでいて割と責任感が強い……じゃなきゃわざわざついてこなかったもんな。
だがそこはこの俺、ちゃんとフォローする道は前々から用意してある。
どこぞの公爵令嬢とか現在出向中の愛弟子、後はバカ兄貴の軌道修正に比べれば、別に難しいことでもねえ。
「なら、切り口を変えていっそラス達の仲間入りって形ならどうだ?それなら俺も面倒見やすいし、自分の身を守る術くらいは提供しよう……見たところ、素質は十二分にありそうだからな。その上で力を貸してくれれば、対等な関係に近くなるだろ?」
セリアードならちょっと教えればあっさり顕魂術は使えるようになりそうだからな。
あの記憶を読み取る能力も強固なイメージに繋がるだろうし。
いっそのこと、セラも師匠役としてつけてしまえばいいし。
……いや断じて面白そうな人材だから何としてでも引き入れたいとかそういうわけでは無いからな?
あくまで保護を名目とした対等関係の構築だ……いや、多少俺の欲が無いと言えば嘘になるけど。
「その手があった!それなら俺たちもセリアードを守りやすくなるし、逆にセリアードの力も借りることが出来て、俺たちとしてもありがたいよ!」
「わ、私なんかで力になれるのかな……」
記憶喪失ってのもあるがなかなかシャイだねえ……。
品があると言い換えることも出来るが。
何というか、個人的感想としては新鮮味があるな。
俺の知り合い女性陣の顔ぶれを思い浮かべるとなおさらねえ……。
その中でユフィリアは唯一そうでもないと思われるが……それはあくまでぱっと見の話だ。
何だかんだでアイツも強かだったり負けん気が強かったりするし。
まあ、俺と会う前の環境を考慮すればそんな一面を抑圧しててもおかしくはなかったんだがな。
最近の俺に対しての当たりが妙と言うか、距離感が色々とおかしくなってるってのもあったか。
ああなってきたら、いよいよ令嬢っぽい貞淑さは迷子になってやがるな。
ユナも天ノ川家直系ってことで品はあるにはあるんだが……どこ吹く風と言わんばかりに見ていて危なっかしい。
ミココロは意外とステレオタイプにお転婆なところあって、カイトをそれなりに振り回してるからな。
え、ナマリエ?恋愛スイーツ脳スナイパーな困った姉貴分だな。
キュイ?天才にして天災、時には地図すら書き換えかねない問題児。
そして、呪い蒐集癖持ちというぱっと見ツッコミ入れたくなるのもいるからねえ……。
まあ要するに、こういうストレートなお淑やかタイプは極めて貴重だってことだ。
俺を弄るなんていう変なことを覚えさせないようにガードも徹底しないとだな……。
「そこまで謙遜をすることはない。君のお陰でノヒルリアの13年抱えていた無念を晴らすことが出来たと聞いた。戦う力は無くても危険を承知でマッド達についてきたという報告もあったし、これらのことから騎士として必要な立派な勇猛さを既に持っていると言えるだろう」
「今日のマッドとラス達の戦いについて来れたその気概は俺も太鼓判を押せる。基本世辞は言わないコイツがここまで推すということは、それだけ目をかけているということだからな」
「マッドもグランナイツのみんなもセリアードに期待しているんだ。もちろん俺たちもね。だから、リーダーとしてお願いしたい。俺たちの仲間になってくれ!」
レオン先生にカルリッツ父さんも推してくれ、ラインヒルト先生も口は開かずとも首肯で同調している。
さて、セリアードの様子は……ラスの改めての依頼もあってか、自信が僅かに出てきたか?
そうだそうだ、皆の言うことは正しいし俺だってその気質を持って期待している。
無力であることを言い訳にしない姿勢、その一種の反骨精神が成長を促すってもんだ。
きっとセラも喜んで妹弟子として迎え入れてくれることだろうよ。
「こんな私でも何か出来るのでしたら……そして、何かを皆さん、よろしくお願いします!」
「よし、ガッツのあるいい返事だ!手続き諸々はこっちでやっておくから心配ご無用だ」
「顧問役ではありますが、騎士団を代表してセリアードさんの入団を認可いたします。こちらこそ、なにとぞよろしくお願いいたします」
なーにが顧問役ではありますがだ、裏の顔め!
防衛省に顔が利くどころか、むしろあっちが頭上がらないっての知ってるからな?
まあ何にせよ、レオン先生、ラインヒルト先生、カルリッツ父さんまで絡んでしまえばその手の懸念は正面突破出来る。
全く、俺の張りぼて第二王子枠に比べて何と心強いことか。
「あ、後もう1つお願いが……。皆さんに取り戻して頂いたブローチなんですが、マッド様に預かって頂くことはできますか?」
「え、まさかの俺ご指名だと?」
グランナイツになら割と必然性あるけど、何故に俺?
そういう危なっかしいブツを研究者を兼ねてる俺に預けるのは流石に危ないと思うんだが?
「マッド様なら、このブローチを守りつついざという時に正しく使って貰えるんじゃないかって思ったんです。今日1日だけですが、一緒に行動をしてとても信頼出来る方だと……そう思いました」
「確かにこれを預けるならマッドが一番適任だと思うな。マッドが預かるってことはセラと俺たち、更にグランナイツの総動員で守れるってことでもあるし」
「なるほど。確かにマドラーシュ様の手元ならば不届き者も手は出しづらいですね。我々やラス達、更にはセラの眼まで欺くとなったらほぼ不可能と言っていい」
あ、これもう決まったって流れだ。
共にした時間は短いってのにここまで信用されるのはちょいとばっかりこそばゆいな。
俺としても当たり前のことをしたつもりだったんだが……これじゃあラスのこと言えないじゃねえか。
まああの石については俺も気がかりではあったから手元に置けるのはものすごいありがたいんだが……。
というかもう差し出されちまってるから既定事項ってか。
しゃあない、ここは信頼に応えるのが王族ってもんだよな。
「そこまで言ってもらえるなら、きちんと預からせてもらう。張りぼてではあるが、第二王子の威信に賭けて不届き者の手に渡らせないようにするよ。ああ、必要になったりしたらいつでも返却要望は受け付けるんで」
「はっはっは!お前からそのような言葉が出てくるとは、珍しいこともあるものだ!」
こらカルリッツのとっつぁん、そこ笑うところ違うだろ。
時にはらしくもないことも言うもんだって教えてくれたの、誰でもないあんただろうが。
「これからはそんな王族らしかったりそうでなかったりと色々面白いマッドもいっぱい見られるんだね。楽しみだね、セリアード!」
「えっと……ここはそうだねって言うべきところなのでしょうか」
「早い内にマッドのやりたい放題と破天荒ぶりを理解して、反面教師にしておくことを勧めておく」
おーいロムさんや。ふざけたこと抜かすとカルトみたいにドチビって呼ぶぞ。
レオン先生も生徒に対してひでえ言いようだな!
むしろ最近はキュイのフォローで手一杯で、問題行動何か起こしてる暇がねえってのに。
フォローって言えば、あの隕石ぶっぱをより精密な制御させるの急かされてるからやらねえとな……。
後はノヒルリア殿との戦いで見出したものを忘れないうちに色々試行錯誤しないとだ。
あれらはアドリブで終わらせるには勿体なさすぎる。
そうなると、まーたドラゴン……いや、レオン先生いるならそろそろ白星取りに行くべく挑みかかるべきか?
後は、あの時最後に放った大型顕魂術だ。
あれも完全にものにする必要も出てきたし……やるべきことが色々と増えてきやがった。
セリアードの顕魂術教練もあるし、タスクの山が積みあがり放題だ。
いいね、退屈とは無縁で最高じゃないか。
「いや、そういうところだからね?止まらないという意味ではキュイ以上だよ……」
「それでこそ、マドラーシュ様ですけれどね」
……ラスにまで思考を読まれるとは、何たる不覚だ。
っていうか一斉に頷いてるんじゃねえよ、セリアードも苦笑してるし。
だが俺は止まるつもりは毛頭ねえからな?
新たに見つけた成長の余地、放っておく理由がどこにあるんだって話さ。
所変わってマドラーシュ在住の離宮にある彼の工房。
あれからラスとセリアードは改めて加入の挨拶をということで無事に解散となった。
ラインヒルトはセリアードの加入手続きや根回しを早速始めている。
今ここにいるのは残った3人……マドラーシュ、レオン、カルリッツだ。
わざわざ二人がついてきたのはマドラーシュがちゃんとブローチを保管するのを見守るためという理由では断じてない。
先ほどまでの明るい空気はどこへやらと言わんばかりに重い空気を醸し出していた。
「あの少女、セリアードについてだが……マッドは覚えていたのか?」
「最初は朧気だったが、接してる内に思い出したよ。まさかあの時の娘と再会するなんて思ってもみなかったぜ」
先ほど保護が決まった少女のことを話すレオンとマドラーシュの表情はどこか暗い。
カルリッツは唯一事情を完全に把握できていないが、それでも空気で凡そは察することが出来た。
「連中がしでかした忌まわしい儀式に生き残りがいてくれたのは、幸いと言えるがな……というか、お前も面識があったのか」
「逃亡生活してた二人に出くわしてな……少しの間、生き抜く術とかその他諸々の面倒を見た。どっちかと言うと色々教えたのは姉の方で、妹であるセリアードとはあんまり話せなかったってのが実情だがね」
だからこそセリアードはマドラーシュを見ても特に思い出せなかった。
──と思うところだが実はそうでもなかったりする。
セリアードがマドラーシュに寄せた強い信頼は、道中の出来事を見たというだけでは少々強すぎるとも見受けられる。
しかし、記憶が残っていなくても無意識的な何かがあれば。
それこそ十分起こり得る範疇に様変わりである。
「とはいえ、いきなり話しても分からんだろ。更に言うなら、いきなりあの記憶を取り戻そうものなら……セリアードは壊れちまう可能性がある。だから知らぬ存ぜぬの初対面を貫いたってわけさ」
「そうか、違和感の正体はそういうことだったのか……ようやく色々合点が行ったぞ。今回の事件もお前が徹底的に関わった理由はそれだったのか……」
「連中の動きは徐々に大胆になっているからな。そうなった要因は間違いなく俺の行動なわけで、そんな状況で人に任せっきりなんて到底無理な話……死ななきゃ治らねえんだよ、バカってのはな」
マドラーシュの滅多に見せない顔に、二人は思わず口を噤みそうになっていた。
普段のフランクで軽薄な空気は当然影も形もなく、いざという時に出てくる王族としての顔でもない。
そこにあったのは、10年以上走り続けてなおも収まらない欺瞞への嘲りと憎悪。
それらを燃料として、ただただ世界に対する抵抗しか考えていない自称気狂い。
その様はまさに略称が精神を表すかの如く。
その口調こそ軽いが、あらゆる汚泥を引っ被りそうな狂気すら感じられる。
静かに醸し出されるその空気は、歴戦の強者のレオンとカルリッツですら飲まれかけてしまうほどであった。
「……そこまで言うならば、俺が止めても無駄だろう。だがこれだけは言わせて欲しい。──あまり背負いすぎるなよ」
「レオンの言う通りだ。確かにお前は俺たちと遜色無いほどに強くなったし、出来ることも明らかに増えた。だからこそ……俺たちグランナイツと、将来の特別近衛騎士たちがいることを忘れるなよ。自己責任とは言っても、限度があるしお前の場合はその範疇を超えがちだからな」
「スーパーマンを気取るつもりなんてないっての。まだまだみんなの手はいくらでも借りるさ」
セリアードのブローチは無事に保管され、それを見届けたレオンとカルリッツも会話を終えて会館へと戻っていく。
その様子はどこか後ろ髪を引かれる様子ではあったが。
それを知ってか知らずか、マドラーシュはセリアードに後日渡す彫魂石の調整を続ける。
しかし、一人になってもその表情を一切緩ませるつもりはなかった。
「──あくまで俺が勝手に先頭を陣取っておっ始めたことだ。その責任も、自分で引っ被ってこそだろうがよ」
誰にでもなく、あくまで自分にのみ言い聞かせるように呟いた。
そこには、普段の破天荒かつやりたい放題な面影は欠片も無い。
思うがままに力を得ては、旗を掲げてしまったことを重く受け止め、背負いこむ姿があるだけだった。
これで初期組合流完了。
長々とグランサガ1章を書きましたが、このメンバーをちゃんと書くにはこれが必要だからやったことです。
その分、次回からようやく転天サイドの話に入る予定。
2作品間の振れ幅がかなり激しいですが、この2章は『立体交差』ですので。
あのお方の出番まであと少しでございます。
マドラーシュはグランナイツサイドのキャラでもあるので、こういう未来へのフラグを立てやすいのが個人的ないい味判定です。
それでいてプレイアブル全員と合わせても最年少タイ、この奇怪なアンバランスさもらしいと言えばらしい。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
-
転天キャラでのNLとか他絡みを所望
-
グランサガの二次がレアすぎて
-
バトルハードモードに釣られた
-
ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
-
その他(そもそもの作風とか)