転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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ついにあの場面に突入。
とはいえ、原作とは似ているようで違う面も多めです。
そして頑張ったけど短めです、落差激しくてごめんなさい。


33.かつての波は揺れ戻る

 

アルガルド様との婚約解消の合意から2週間ほど経過した。

あれから特段何か特別なことをするまでもなく、平静を装う日々。

貴族学院の卒業祝いのパーティまで、それこそあっという間でした。

私が卒業するわけではないのですが……表向きはまだ婚約者であるアルガルド様が祝われる立場にある。

よって、私は同行することになっています。

ちょうど今は彼のエスコートで煌びやかなパーティ会場を歩いているところだ。

このようにアルガルド様の横を歩くことになるのは、恐らくこの場が最後になるだろう。

 

(もしかしたら、こんな機会はもう訪れないかもしれませんね……)

 

互いの合意の上での婚約関係解消であることをきちんと公表出来たとしても、確実にあることないことを囁く者はいるだろう。

私への妬みややっかみは元々少なくはなかったですからね……。

今はマッド様の助言の甲斐あって、特に気にすることはありませんけど。

アルガルド様の方も、アニスフィア様と比較すると表向きの明確な実績が無いことから資質や能力を疑う者もあちこちにいる。

尾ひれなどいくらでも付けようがある話題はまさに格好の獲物と言えるだろう。

そうなると私は傷つきの公爵令嬢という烙印を押され、更に陰から色々と言われることでしょう。

そんなことは承知の上ですけどね。

暫くは茨の道になるであろうことを納得ずくで、私はこの道を選んでいますから。

そもそも、あの日まで一切波風を立たせたことなどない……それこそ人生と言えるのかすら怪しい日々を過ごしてきた身でした。

そんな虚無を振り払うように、これまで無意識に避けてきたものにむしろ自分から近づいては触れてきて……糧にしてきました。

より人間らしくある生を……刺激溢れる躍動的な生き方に僅かにでも近づくために。

 

(もしあの時マッド様に鎖を壊すきっかけを与えてもらっていなかったら……私はどうなっていたのでしょうか)

 

……ふと至った考えだが、思わずゾッとしてしまった。

マッド様と出会わなかった場合……それが示すのは、あの虚無をこの3年も引きずっていたかもしれないということ。

きっと私のことだ、12年も15年も大して変わることなく維持していたことだろう。

自覚してしまった今では、とても正気の沙汰とは思えないですね……。

──まあ、その『もしも』の自分から見た今の私も同じに見えるのでしょうが。

我ながらつくづく難儀なものだ、思わず苦笑いを浮かべたくなります。

ちなみに、アルガルド様も少し前に同じことを仰っていましたね。

彼の場合は、双子喧嘩という形でぶつかりあったことで色々な鬱屈がある程度晴らすことが出来た。

もし、それが無かったら……きっとそのままレイニ嬢と仲を深めようとして、最悪な形で私を裏切ることになっていただろうと。

更に言うなら、レイニ嬢をも利用していた可能性すらも有り得たかもしれない。

自虐的な笑みと共にそう話すアルガルド様も、もしもの自分に恐怖を覚えていた風でしたね。

『今』に至るまでの道筋を紡いで歩めるようにしてくれたマッド様への親愛と感謝の念が絶えない様子でもありました。

普段は互いに憎まれ口や皮肉をぶつけてこそいますが……今では本当に仲の良い双子ですからね。

 

(……私だって負けるつもりはありませんけど)

 

無論、それは私も同じこと……いえ、アルガルド様よりもより強い情を持っていると断言してしまいたいほどだ。

この3年間、一体どれほど揶揄われたり振り回されたか……1年だけのアルガルド様とは年季が違います。

ええ、本当に困った破天荒放浪王子ですよもう。

……確かに、あの方は普段から王族とはとても思えない軽口やふざけた態度を見せつけてくれます。

しかし、普段の軽薄そのものな雰囲気の中には……間違いなく確固たる信念と誠実さが内包されている。

むしろ、普段はあえて空気を纏っているのではと思うほどです。

そのせいか、真面目な空気になった

時には迷う私を突き放す時もあるけど、見捨てるわけではなくあくまで私の選択を見守ることに徹している。

それに、私が怒りや恐怖に染まって不安定な時は……それらの負の感情を共有した上で必ず寄り添ってくれました。

アルガルド様がレイニ男爵令嬢の方に揺れかけた時も、今回の婚約解消の件でも。

人間らしくあろうと試み始めた矢先にぶつけられた妬みから来る悪意の数々を受けた時も……普段ではとても口にできない愚痴を共有しつつも受け止めてくれた。

この3年間、どれほど彼に助けられてきたのか……もはや数えられないでしょうね。

──ただ、そんなマッド様相手でも個人的にモヤモヤしてしまうところが1つだけある……それはもうどうしても。

 

(何故、あそこまで頑なに私との関係を『ただの』友人という括りに収めようとするのでしょうか)

 

平民の幼馴染が2名いるということは耳にしています。

その内一人は、それこそマッド様が離宮に隔離された頃からの付き合いとも。

ほぼ10年の付き合い……流石にこの方ほどの近しい関係性になるのは厳しいのは重々理解しております。

……それでも、もう友人としてやってきて3年ですよ?

それも、婚約者に隠れては離宮に通うという半ば共犯関係というおまけつき。

ただの友人という括りにされるのは、私としてはどこか納得が行きません。

吊り橋効果とまでは行かずとも、もう少し近づいてもいいのではないでしょうか。

……そもそもあの人の場合、私に対して異性として接しないよう徹底している気配すら見受けられます。

性別関係ないように接してくれていると言い換えれば、それはそれで悪い気はしないのですが……。

ただ、私の人間として羽化しかかっているであろう部分が不満を告げている気がしてならない。

セラとも相談して、せめて私が異性であることを認識させるために少しずつ動きに変化を加えていたりもするのですが……。

それすらも露骨に避けられ、上手いこと逃げられてしまう。

そうなると私も更にムキになってしまうわけで……。

……段々行動が大胆になっていってしまうのは、我ながらどうかと思っています。

マッド様が色々と面白い反応を見せるからそれで誤魔化せてはいますけど、私だって普通に恥ずかしいんですからね?

アルガルド様からの無罪判決を頂いたことが唯一の救いと言えるし、お陰でもう少し踏み込むことも可能になったのですが……。

そこまでしているというのに、あの見えない壁はなかなか崩せません。

突破というか破壊のし甲斐があるとも言えますが、それにしてもガードがあまりに堅すぎです。

──まさか、女性に興味がないなんてことはありませんよね?

または、教育係含む年長者との付き合いが多すぎて年上好きになっていたりとか……?

……人の好みや趣向に文句をつけるのはお門違いなのでしょうが、もし本当にそうだとしたら物凄く納得が行きませんね。

 

「──ユフィリア、何を考えているかは手に取るように分かるが、今は抑えろ。顔に出ているぞ」

「あっ……申し訳ありません、アルガルド様」

 

失礼、流石に気を緩めすぎましたね。

……何とか立て直してこの場に相応しい表情を取り繕う。

アルガルド様以外誰にも気づかれていないことが幸いでしたね。

……全ては見えない壁を作っては一定距離を保つ誰かさんのせいです。

パーティが終わってもし時間的余裕があったら……鬱憤晴らしの強襲と洒落込むとしましょう。

さて、そろそろパーティも終わりに差し掛かろうというところ。

アルガルド様が閉宴の言葉の為に壇上へ上がるので、私も一歩後ろを歩いてお供をする。

 

「アルガルド様!閉宴の言葉の前になってしまい大変恐縮ではございますが、私から一つよろしいでしょうか」

 

まるで先制をするかのような、そんな言葉が宴の場に響き渡った。

一体何事かとアルガルド様と共に壇上から場を見渡すと、声の主に当たる人物はすぐに見つかった。

確か彼は、シャルトルーズ伯爵家の……モーリッツ伯爵子息でしたか。

わざわざこんな時に一体何をしでかそうと言うのでしょうか。

マッド様ならば『最後の余興だ』で奇怪なことをしでかしてもおかしくはありませんけれど。

 

「貴方の隣に立つユフィリア様は、王妃の地位を確固たるものにするためこのレイニ・シアン男爵令嬢に対して目を覆う所業を繰り返してきたとんでもない悪女!アルガルド様の婚約者に相応しくありません!今すぐ婚約破棄することを進言いたします!」

 

……どうやら、嵐は向こうからやってくるようですね。

勿論彼の言うことに覚えなどあるはずがない。

要するに不当極まりない言い分をぶつけられているということ。

しかも、それは1年前の時点で有耶無耶になったことと記憶している。

それを今更掘り返すとは……明らかに妙な流れなことこの上ありませんね。

と、このように──私は何故か他人事のように感じてしまっていた。

あまりの事態のはずなのに、頭はどこまでも理性的に働いていて……。

 

(これは明らかに面倒事……そういう刺激は黙って送り返したいところですが、まあ無理ですよね)

 

──こういう時は本当に面倒なものですね。

マッド様が貴族社会を煩わしいと仰るのも、今ではとことん同調出来ます。

自分が置かれている状況にも関わらず、私はただただ吐きたい溜息を必死に抑えるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャルトルーズ伯爵子息、モーリッツのその発言によりざわめきが起こるのは必然だった。

宴の最後で俺とユフィリアが壇上に立ったその時であったのも効果あり、と言ったところだろうな。

……その発言内容は荒唐無稽極まりないが。

しかし……まさかここでレイニ関係の糾弾が来るとは思いもよらなかった。

何せあの愚弟もマークを外して、さほど警戒をしていなかったほどだ。

1年前の記憶の糸を巻き直し、ユフィリアがレイニにしたことを徐々に思い出していく。

──確か貴族のマナーや心構えについて注意……いや、むしろ助言をしていたか。

そこに責めるような意図は一切なく、むしろレイニのことを思ってのことだったはず。

最初は俺も勘違いというか過度に考えてしまっていたが……和解した後にユフィリア本人から聞いたからそこに間違いはない。

それ以外には特に思い当たる節は……まるで無いな。

ユフィリアの方もまるで見当がついていない……身に覚えはないということだな。

あれからもマッドの言う秘密兵器……カルシオンとルドミラ越しでたまに情報収集をしていたが、そんな様子はまるで無かったとのことだ。

ただこの場に限ると、そのことを分かっているのは俺たちだけ。

クソ、忘れかけていたところに余計なことをしてくれる。

強引ではあるが、こちらにも確たる証拠がないというか持っているわけがない。

相手が強硬に出るとなったら、泥沼化待ったなしか……。

 

「私の閉宴の言葉を遮ってまでの忠言だから耳を傾けたが、随分と大きく出たなシャルトルーズ伯爵子息。虚言だった場合の覚悟は出来ているのか?」

「ええ、大義は間違いなく我らにございます。虚言など有り得ません。この場で精霊に誓ってもよろしいですが」

 

せめてもの抵抗は、俺も強硬に出るくらいしか無い。

出来得る限りの威圧感を発して、可能な限りの脅し文句を添えてやったが……モーリッツは何食わぬ顔だ。

まあ、そうでなければそもそもこんな流れにはなりはしない。

 

「目を覆う所業と言われても心当たりがございません。祝いの場においてそのような進言をするなど、一体何のつもりなのでしょうかシャルトルーズ伯爵子息」

 

俺に合わせるようにユフィリアも毅然と返していく。

全く身に覚えのない、それこそ言いがかりといえど想定外かつ唐突の弾劾宣言だ。

少しは動揺も見せてもいいものだが……まるでその様子が見受けられない。

まるで身に覚えはないと、堂々と身の潔白を主張している。

やれやれ、俺も大概変わったと思っているが……こちらはそれ以上だな。

あの愚弟め、どれほどの影響をユフィリアに与えているんだ……無自覚なんだろうがな。

もはやお前くらいしか張り合える男はいないぞ。

こうなってしまえば、やはりお前が貰うのが筋ではないか?

 

「アルガルド様、我らも証言します!貴方の目が届かないところでのレイニ嬢への悪行の数々は間違いなく彼女が糸を引いております!」

「私は彼女が直に非道を働くところを目撃しました!同じく証言します!」

 

っと、そんな馬鹿なことを考えている暇が無くなって来た。

モーリッツだけでなく、お前たちも糾弾に加わるというのか……!

スプライト伯爵子息ナヴルと大商人の息子であるサラン。

どちらも古くからのレイニの取り巻きだ。

俺が道を誤っていた頃は、共にレイニを守っていたが……。

どうやら、完全に道は違えたようだ。

やれやれ、こうして見るとそうそうたる顔ぶれの守りになってしまったものだ。

──そこに俺がいなくて、心の底から安心してしまうほどにはな。

 

「待て、私も見たことがあるかもしれないぞ……」

「確かに、ユフィリア様はレイニ嬢に強く当たっているのは見たことあるような……」

 

……拙い、取り巻きだけでなく周囲の人間からも同調の声が聞こえてきたな。

こちらを擁護する声がまるで上がらない……これぞ四面楚歌というやつか。

ユフィリアはその優秀さから男から煙たがれている……かつての俺もそうだったからな。

同性からも羨望と嫉妬の半々と言ったところだった。

そして、性別関係なくその人並み外れた能力には大体恐れを抱く。

それでも最近は比較的人間味を見せてきて、そのような評判も緩和されているはず……たまたま当てはまらない顔ぶれだったというだけか。

ただ、それにしては明らかに妙な気がする。

ユフィリアに対するその手の負の要素だけで、証拠もない糾弾にここまで同調出来るものなのか?

見たところユフィリアも、この状況に違和感を感じているようだ。

 

「皆さまが何を見たのかは存じませんが、先ほども申した通り私に心当たりは一切ありません」

「そのような強がりがいつまで持ちますかな、ユフィリア様。いずれ明るみになるのだ、己の罪は早く認めた方が良いですよ」

 

お前たち、こいつはその程度の脅しで折れるような柔なご令嬢ではないぞ。

無理やりにでもへし折らせるなら、愚弟を連れてきた方が確実……いや、ユフィリアならアイツ相手だと引っ叩くなり脅すなりでこっちに付けるか。

しかし、絵に描いたような多勢に無勢……状況はかなり悪いぞ。

しかもマッドが不在のこの場面……俺たちだけで状況を打開しなければならない。

……さて、どうしたものか。

このまま俺とユフィリアがどれだけ否定しても、全く聞き入れてもらえる様子はないだろうな。

──何とか打開策をと、そう考え始めた時だった。

 

「……ァァァァァァァァ」

 

それは唐突に耳に入ってきた。

風を勢いよく裂いて突進してくるような音……それとこれは、悲鳴か?

ユフィリアにも聞こえているようで辺りを見回している。

他の者も、ユフィリアへの糾弾や嫌な視線を向けるのを一旦止めて、耳を澄ませている。

──刹那、嫌な感覚が俺の全身を走る。

マッドのやりたい放題を目の当たりにした時とはまた違う類のそれだ。

あの愚弟もこちらを呆れさせたり、嫌な予感を覚えさせることは確かに多い。

が、アイツには『確実に結果をもたらすことが多い』という意味では一種の信頼がある。

この1年、嫌と言うほど実感して来たからな……俺としては苦いところでもあるがな。

しかし、今もなお全身を張り巡らす警告はそういうものではなかった。

……この感覚を俺に与えられる人物に、俺は一人だけ心当たりがある。

 

「アアアアアアアアアアアアッ!?」

 

その悲鳴が鮮明になり、その主がようやくはっきりする。

……俺の嫌な予感は完全に当たったことを示してもいた。

いつだったか、愚弟は『全て壊すんだ』と言いながら窓を割りたいとか意味不明なことをほざいていたことがあった。

そんな感じで乱入しては、頭の悪い儀式や集会を妨害する……という、娯楽小説のようなことをやってみたいとか。

アイツが言っていたのは、まさに今目の前で起こっていることそのものではないだろうか。

確かに真面目にやったら面白い絵面ではある。

マッドがやっても嫌味なくらいに絵になるだろうが、カルシオンやルドミラがやってもさぞ映えることだろう。

しかし、目の前で起こったそれは……何というか。

 

(着地がまるでスマートではない……アイツの採点ならばきっと大幅減点だな)

 

見たところ、いつもの実験でやらかしたのだろうが……それにしたって無様である。

父上や母上が見ていたら、恐らくその王族らしからぬ立ち回りにその場で説教が始まることだろう。

そうでなくても、高貴な身分のものは大半が眉を顰めることだろう。

……現に、隣にいるユフィリアも目の前の現実に思考が追いついていないようだ。

アイツでそれなりに耐性がついているはずなのにこれだ、乱入者のやらかしっぷりは本当に末恐ろしさすら感じる。

──さて、現実逃避はこれくらいにしてひとまず目の前の状況を整理せねば。

悲鳴の主は窓を破壊した勢いをそのままに会場の真ん中に転がって行った。

俺とマッドと同じく白金色の髪を持つ、小柄な女子……まあ、年齢的にもそれでいいのか?

その髪色が見えた時点で大半が乱入者の正体に気付くことだろうな。

そもそもの話、事故(仮)とはいえここまでの暴挙をやらかす人物は国内ではそうそういないだろう。

一度会ったことがある天才兼天災ならあるいはだろうが。

……いや、あのミケ族は何だかんだで結果ヨシに持っていく辺り愚弟と同系列だ。

やれやれ、何でこうこんな予感ばかり当たってしまうのやらか。

 

「いたたた……ちょっと余所見しただけでこのザマとは。この子もまだまだじゃじゃ馬だね」

 

恐らくはあの箒の実験でもしていたのだろうが……。

じゃじゃ馬が窓を突き破って乱入するわけがないだろう、もう少し適切な表現をしてほしいものだ。

それと、破片を払うのはいいが、煤で汚れた様もどうにかした方がいいと思う。

しかしまあ……見事なまでに場の空気を凍らせてくれたな。

全く、ここまで見事な瞬間凍結は魔法どころか顕魂術でも難しいんじゃないか?

弾劾一辺倒の空気を塗り替えたという意味では感謝をするべきだろうが……。

最も感謝の念を向けられるであろう、冤罪の被害者にまで呆けさせては行きすぎだ。

ここは身内として、きっちり苦言を呈さなければならんな。

 

「まさか卒業祝いの場に殴り込みとは……相変わらず強烈なアピールだな姉上」

 

呆れを盛大に含みつつ、俺は目の前にいる自身の姉。

『王国一の変人奇人』アニスフィア・ウィン・パレッティアに対して静かに突っ込みを入れた。

かつては憎くて仕方ない相手だった。

己を縛る鎖を認め、受け入れ昇華することを決めた今では超えるべき者の一人。

思う所は当然あるが、こうして相対しても余計な激昂をせずに済んでいるのは愚弟さまさまだな。

さて、そんな俺の言葉は聞こえていないのかこの奇天烈姉上様はと言えば。

 

「おおアルくん、おっひさー!元気にしてた?」

「お陰でそれなりに人生は謳歌しているな。ところで、最近の流行は怪盗やコソ泥も真っ青な侵入だったりするのか?」

「そんな流行あったら怖いんですけど!?……あ、もしかして何かお取込み中のところで私お邪魔しちゃった?」

 

俺を見つけるや否や鮮やかな笑みと共にこう発していた。

頼むからもう少し周囲を見てから喋ってほしい。

だから奇天烈やら奇行王女やら言われるんだぞ……。

もしこの場に末弟がいたら、アイツが呆れ果てるという珍しい光景が見れたことだろうな。

 

「周囲を見れば嫌でも分かるだろうに……全く、少しは空気を読んで欲しいものだ」

 

まあ、今回ばかりはそのやらかしに感謝する必要がありそうだがな。

今の状況に限れば、恐らくマッドを上回る可能性すらある最強の変数になり得る存在だ。

それだけの滅茶苦茶っぷりを平然としでかすのが姉上という人間なのだから。

何をしでかすか分からない以上危険極まりない泥船にもなり得るのが玉に瑕だが……。

縋れるものならこの際藁でも構いやしない、先ほどまでほぼ詰みという状況だったからな。

出来得る限りの制御はやってやるが、こうなれば流れに身を任せてやろう。

これぞ、『可能性は混沌より生ずる』……で、いいのかマッドよ。

周囲が姉上に気を取られている今こそが、徹底的に思考を回す好機だ。

俺は即席で打開策を練り始める。

とにかく、俺とユフィリアが共倒れになりかねない状況だけは意地でも避けなければならない。

俺たちの完全敗北の回避……そこから最も頼もしいあの顔ぶれに繋ぐことまでが最低条件か。

 

(……方向は定まってきたな)

 

我ながら悪くはないやり方と思っている。

多少の賭けの部分も存在するが、コイツならば大丈夫だろう。

俺自身を導火線にしてしまえば、後はどうとでも繋いでくれるはずだ。

──そろそろ姉上が盛大に振り掛けた場を白けさせる魔法も解ける頃か。

その証拠に、少しずつ姉上への奇異な視線が増え始めてきている。

まるで新種の魔物が現れたような反応だが、同情する理由は無いな。

それにしても、随分とまあ強引な手段に出たものだ。

恐らくは俺を未だ凡愚だと侮り、いくらでも取り繕えるとでも思ってだろうが。

アイツが知ったら、どのような反応をするか……楽しみなようで怖いな。

まあいい、こちとら抵抗には慣れているからな。

今回も徹底的に牙を剥かせてもらう……それだけの話だ。

 

 





というわけで遂にアニスフィア様乱入にして初登場。
これまで主人公やらアルガルド辺りの名前のみ出演でしたが、やっとここまで漕ぎつけました。

そしてユフィリアさん、どっかで見たことのある怪文書モード。
どこぞの白鷺姫に似てる部分があるにはあるから違和感ないと言うか……。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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