転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

41 / 112

早速アニスフィア視点から入ります。
登場さえすればこのお方の出番は勝手に増える……はず。


34.そして奇天烈は動き出す

 

アルくんに言われるがままに周囲を見回す。

……なるほどなるほど、ある程度状況を理解出来たよ。

この会場にいるのは着飾った貴族の子息、子女と思われる子ばかりだ。

そして私が受けている視線はまさに奇異なものを見ているときのようなものだ。

うん、要するに珍獣扱いってやつだね。

……ってこれ、久しぶりに大失態やらかしてしまったのでは?

以前にも窓に突っ込んだことはあったけど……その時よりも遥かに許されないんじゃないのか、この状況は。

あ、そうだ『魔女帚』は大丈夫!?

これが壊れてたら、私はこの居た堪れない場に滞在しないといけなくなる。

それだけは絶対に勘弁願う!

魔力を軽く注ぎ込んで動作確認──よし、壊れてはいないようだね。

長年の改良によって耐久性を向上させた甲斐があったというものだ。

私にとっての最悪はこれで何とか回避、これならヨシ!

評判が落ちるくらいなら痛くも痒くもない、だって今更だし!

それにしても、一体この場はどういう状況なのだろうか。

アルくんは盛大に妨害をかましてくれたって言ってたけど、一体どういう──

 

「アニスフィア様。今はユフィリア嬢の悪行を糾弾しているところなので、お引き取り願えますでしょうか」

「アルガルド様もいい加減目を覚ましてください!そのような者が次期王妃など、あってはならないことです!」

 

え、何々いきなり……ユフィリア嬢が悪行?

待って待った待ちなさい一体どういうこと、まるで理解が追いつかないんだけど。

将来の王妃としてこの上なく立派なことこの上ない、あのユフィリア嬢でいいんだよね。

ええ、そんな彼女が悪行って……まるで意味が分からんぞ!

というか、アルくんにも取り入ってる時点ですっごい怪しく見えるのは気のせい?

見るからに糾弾を扇動している子息三人は……あの愛くるしい黒髪の娘の取り巻きか何か?

 

(えーっと、これはすなわち……俗に言う悪役令嬢イベント?)

 

ただ、それにしては奇妙な点がやたらあるというか……。

その手のイベントって、周りが婚約破棄を扇動するような話ではないような気がするんだけど……。

いや、まあ私の中にある前世の知識ありきだからそうとも言い切れない可能性もあるけどね?

うーん、それにしたってなんか違和感があるんだよなあ……。

状況がまるで追いつかないので、ひとまずアルくんの方に視線を移すと。

 

「……そういえば、俺も全く覚えがないわけでもなかったな。一方的に疑ってすまなかった」

 

そう言いながら壇上から降りて、取り巻き達の方へ歩を進めていた。

待って、この状況で婚約者の傍から離れるってどういう了見なの?

 

「アルガルド様!良かった、貴方ならば騙されないと信じておりました!」

「そうです、次期国王の貴方まで誑かされてしまったらこの国はどうなるのですか!」

 

周りも何か賞賛というか、安堵の空気だ。

ますますもっておかしいというか、何だか不気味さすら醸し出している。

──こういうのは前世でも感じたことある、俗に言う『同調圧力』ってやつだ。

っていうか何だ、国の行く末とかまで言い出したらもはや大げさが過ぎるでしょうに……いや、そうでもないのか?

アルくんもアルくんだ。まるで掌を返したかのように翻ってる。

まさかの裏切りにユフィリア嬢が完全に呆然としてしまってるし。

これはちょっと一言突っ込んでやらないとだね。

 

「ちょっとアルくん、何でユフィリア嬢じゃなくてそっちの女性の傍に行くの?妾ってわけじゃないだろうに、一体どういうつもり?」

「窓を破壊して乱入してきただけの、半ば部外者の貴女には関係ないことだ」

 

僅かながらの怒りも込められたような拒絶で返された。

いや、今は窓を破壊したくだりは関係ないよね!?

更に部外者って何さ、私は貴方の姉だよ!?

何というか最近のアルくんはこう、刺々しさが洗練されているというか、抉り方が冷徹っていうか……

前からこんな感じだったっけ……何か前は私を見た瞬間に憎悪すら向けられていた気がするけど。

──もしや、誰かが入れ知恵でもしてるのか?

それはさておき、このままでは埒が明かないね。

アルくんは氷のように対話拒否だし、周りはどこか気持ち悪いし。

これはもう一人の当事者に話を聞く方が手っ取り早そうだ。

 

「えっとユフィリア嬢?悪行とかって話があるけど、身に覚えはあるの?」

「いえ……ありません。断じて私はそのようなこと……」

 

何だか今にも泣きそうな顔だ……居た堪れなくなる。

これは、結局のところその手の話に沿ってきているってことでいいのかな?

こういう場での婚約破棄なんて、現実でも起きるものだったのね……。

 

「いいえ、貴女がこのレイニ嬢のイジメを裏で糸を引いたり、所持品の盗難に損害、挙句暗殺の企てまでしていることは調べがついているのです!」

 

うわ、何かすっごい言いがかりに聞こえる物言いだ。

勢い任せで言っておけば、何でも事実になるとでも思ってるのかな。

むしろそういうことすると、猶更怪しく聞こえてくるって分かってないんだろうなあ。

ただ、これが言いがかりかどうかを判別する術は私にはないんだよね……。

アルくんの言う通り、私は窓を破っただけの部外者……状況が殆ど分からないから当然証拠を啓示できない。

その当の弟は、ユフィリア嬢の擁護はしていないから……完全に袖を別ったってことでいいのかな?

何も言ってこないのも何か気がかりだが……まあ、沈黙は肯定ってことにしよう。

 

(ここはもう、心のままに行動するしかない状況だね……そうなれば)

 

喧嘩の詳細が分からないからどっちが正しいかは私には分からない。

しかし、私の目の前には見るからに孤立無援の女の子が一人いる。

これだけでも次の行動は決まったも同然だね!

 

「ユフィリア嬢、行こう。こんな敵だらけな場所から私が攫ってあげる」

「え?……攫うって、えっ?」

 

もはや気分は大怪盗、あの曲をかけたくなるよ!

そういえば王都にも結構名の知れた怪盗っていたような気がする。

とりあえず、今は怪盗のように鮮烈な逃走劇を演じることが命題だ!

魔女帚もご機嫌なのか、いつもの1割増しで出力が上がってる気がする!

私のやろうとしていることを察したのか、アルくんが何か言いたげな顔をしているが……知ったことじゃないね!

私を部外者と言って関係ないと言うなら、今からやることは君が部外者だ!

何かトンデモ理論な気がするけど、もうここまで来たら勢いで行ってしまおう。

ユフィリア嬢、肩に担ぐような抱え方になっちゃってごめん!

こうでもしないと逃げる算段が無くなっちゃうから、ちょーっと我慢してて!

 

「おい、姉上。そのまま飛んだらユフィリアが──」

「あーばよ、アルくんとその他大勢の皆さま方!」

「え、ちょっと──!?」

 

どうしたどうしたアルくん、今更ユフィリア嬢の心配したって遅いよ!

怪盗ならではの決め台詞と共に、私はぶち破った窓から飛び降りる。

そしてそこから魔女帚に魔力を注入!さあ、楽しい楽しい空の旅の続きだよ!

はっはっは、頭を抱えちゃって今更常識人ムーブしたって無駄だよアルくん!

むしろ後で家族会議にかけられるであろう自分の心配をするべきじゃないかな!?

 

「いやぁぁぁああああああああっ!!」

「空の旅へようこそお客様ってね!」

 

流石のユフィリア嬢もノーバンジージャンプとなっては元気いっぱいだ。

それはもうなかなかの悲鳴を上げてしまっているが……ごめん流石に構ってられない!

今の状況で下手に気をやったら、それこそ先ほどの惨事の繰り返しになっちゃうからね。

とりあえず、このまま父上のところへ行くとしましょうか!

それまでの辛抱だ、頑張って耐えてユフィリア嬢!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?何だ今の感覚は……」

 

それと共にユフィリアの悲鳴のようなものが聞こえた気がするんだが……?

何ていうか、『どうしたこうなったー!』的な感じの。

いやいや、アイツは今アル兄さんに付き添って卒業記念パーティーに出席しているはずだろ?

何でまた……セイリオスと千紫万紅がオカルト染みた能力ついたから俺自身もそういうところに敏感になったか?

まあ彫魂石なんて代物産み出したヤツが何言ってんだって話か。

ウィンがもしこの場にいたら、いつものポカーン顔待ったなしだな。

 

「おい、ボサっとしてねえでさっさと帰るぞ」

「おっと悪い。帰ってからもやること山積みだって急かしてるのは俺だってのにな」

 

何をしていたのかと言えば、セリアードの顕魂術初使用の場の付き添いってところだな。

同じく教師役のセラと、たまたま入り口で会ったカルトも同行している。

てっきりカルトは来ないものかと思ったが、セリアードの顕魂術適性が気になったとのことだ。

まあ、いずれ肩を並べることになるだろうからいち早く知っておきたいって心構えは素晴らしいね。

俺とカルト、セラというメンバーだったから研修場所は黒の森にした。

そこまでの道筋は馬で駆け抜けた。

こういう時の為に厩舎に馬を何頭も預けてあるのだよ、譲ってもらった子ばっかりだがな。

さて、我らが新たな弟子、セリアードについての評価だが……。

顕魂術適性は見事なまでに回復とサポートに特化していた。

更に改めてこの目で確認した水属性適性はかなりぶっ飛んでいて、下手すればクリスティーナ姉さんより上かもしれない。

初陣で相手が大したことないとは言っても、まだ熟練度が低いにも関わらずシールドが全く破られる気配が無かった。

その上その展開速度がなかなか早い。

相手によっては攻撃見てから余裕ですなんてレベルだったな。

しかも本人談では手間をかければ回復とシールドの両立も出来そうだとか。

末恐ろしいというか、流石と言うべきか……。

ラス達に混ざれば間違いなく生存率が大幅に上がるな。

ここまでサポート特化顕魂術使いは本当に稀少だから、想定以上の戦力アップだな。

ただ無いものねだりになるかもしれないが、攻撃手段がほとんどないのが現状の課題である。

キュイの火球のように水球をぶつけるくらいは出来るが、威力はそこまでではない。

 

「攻撃のイメージって、どうすればいいのでしょう……」

「セリアードの性格を考えると猶更難しいよね」

 

本人もその点は気にしているな。

その思考回路はいい傾向だ、不足を補う精神も顕魂術にとってはいい刺激になるし。

確かに心優しくお淑やかなセリアードに攻撃系は難しいかもしれない。

だがラス達と俺に同行するとなったら、不測の事態には対応してもらいたいところなんだよな。

遠距離大火力のキュイも近接戦はてんでダメってわけじゃないし、逆にラスやウィン、カルトも距離を補う手段はいくらかある。

チーム戦ばかり想定していては、何かの形で分断されたらデッドエンドだ。

将来的に俺の近衛になるならば、苦手部分があっても単騎想定で動けるようになってもらわないといけない。

 

「いっそ光の方で攻撃を考えますか?私のように心地良く殲滅できますよ」

「おいバカ止めろ。絶対に余計なことまで吹き込む気だろ」

 

ちなみにセラは圧倒的な光属性の適性を持ち、攻撃・補助・回復何でもござれ。

っていうか、ほぼワンマンアーミーっていうかワンマン機動要塞だ。

そして攻撃する時にやたらと変なことを口走るのが若干喧しい。

セリアードまでその道に引きずり込むのは絶対に阻止してやるからな。

貴重な純正お淑やか女子をおかしくしてたまるかってんだ。

俺の数少ない癒し処なんだ、このオアシスは絶対に奪わせないからな!

 

「あはは……いざという時は考えておきます」

 

セリアードもそんなセラを目の当たりにしたからか、若干引いてるな。

伊達に冒険者ギルド内でも『奇抜な発言が多い残念美女』なんて言われてるだけあるわ。

まあ本人貰い手なんていらんって豪語してて微塵も気にかけてない辺りが猶更残念だよな。

俺個人としては愛らしいとは思うがね、度が過ぎなければだけど。

 

「いっそ発想を逆転させたらどうだ?あのシールドで対象を閉じ込めてやるとか……攻撃と言えるかは微妙かもしれねえが」

 

お?顕魂術においての器用さ上位のカルトから意見が出てきたぞ。

っていうかそれ普通に……アリじゃね?

水属性だから相手の特性の影響は受けやすいが、シールド強度を考慮すれば間違いなくかなりの妨害になるはずだ。

しかも何より、新たなイメージを追加しなくていいエコっぷりで俺の好みだ。

 

「シールドで、閉じ込める……その手がありました!それならシールドの内部に仕掛けを加えたら攻撃にも出来ます!カルトさん、ありがとうございます!」

「流石は闇属性のイメージそのままの色々と搦め手ばっかり思いつくカルト!マッドといい勝負だね」

「おいドチビ、お前それ褒めてるのか?……まあ、この王子と暫く一緒にいれば、思考を真似したくもなるものだ。お前も行き詰ったら、周りのヤツ参考にしてみろ」

 

いやあお手柄だよカルト、流石はキュイやラスと並んで俺を脅かしかねない使い手だ。

ったく、俺より先に思いつかれると負けてられねえって気になるぜ。

そのシールドを攻撃転用するの何かに生かせねえものか……。

だが俺の場合適性がてんでダメで、無理やり作っても紙耐久だからな……。

 

「マッド様も負けていられませんね。では私と共に新たな破滅の光の道を……」

「お前は自分の主に『無慈悲な残念役者』なんて3つ目の二つ名つけさせる気か?」

 

全くブレねえぞこの侍女。やっぱ頭のネジを多少入れ直した方がいいかもしれん。

流石にあそこまで世紀末なセリフ吐けねえっての。

っていうか何だ破滅の光って、タロットカードをその場でくるくる回せってか?

そんなこんなで後は色々雑談やら何やらしながら王都へと帰還した我ら4人。

厩舎に馬を預けて、言うまでもなく早急に向かうは我が離宮である。

カルトもセリアードの顕魂術イメージ構築に付き合うということで、そのまま同行してくれる。

普段の言動で勘違いされがちだけど、何だかんだで面倒見いいというか付き合いいいんだよな。

ダークエルフの中では優しい方って自称しているが、個人的には人間全体で見ても結構優しいと思ってるし内外揃ってのイケメンだよ。

面と向かって言うと確実に照れ隠しな攻撃が飛んでくるから言わねえけどさ。

 

「マドラーシュ様!ようやくお帰りになりましたか」

 

おや、ラインヒルト先生……それにカルリッツ父さんまで。

わざわざこんな離宮の廊下で俺たちの帰りを待っているとは何事だ?

キュイが何かやらかしたか?それとも、トカゲと書いてサンドバッグでも出てきたか?

いや、そんないつものことが起こったような様子じゃねえな。

 

「今日、貴族学院の卒業祝いの宴があってだな……」

「は?貴族学院って、俺たちもそうだがこのバカ王子からしてもまるで関係ないんじゃねえか?」

 

カルトの言うことは普通ならごもっともだ。

だが、今回ばかりは話が違うんだよな。

何せそのパーティには俺にとって縁ある人物が参加しているのだから。

慌ただしかったのもこれで納得が行った。

 

「アル兄さんかユフィリアに何かあったのか?っていうかそれくらいしか浮かばねえんだが」

「その雰囲気だと、あまり楽しそうな報告ではなさそうですね」

 

何で愉悦を求めてるんだこの残念侍女、麻婆系でも食ってろ!

俺としてはかなり真面目に心配してるんだからな?

何せ二人は円満に婚約解消して互いに先に進めるかどうかの瀬戸際、一種の独り立ちのための大事な時期だ。

それにしても、何かあったっていうのにどこか言い淀んでいるのは何故だ?

既に俺の離宮にいるわけだから言いづらいってこともないだろうに。

 

「結論から言うと、パーティにアニスフィア様が意図せず乱入して……何故か流れのままにユフィリア嬢を攫って行きました」

 

あーなるほどなるほど、姉上が乱入してユフィリアを誘拐ね。

何だよ、いつも通りの奇行じゃねえか。

……いや、確かに奇行なんだけどさあ……流石にそれは何から何まで想定できねえだろうがよ。

 

「……あまりの素材欲しさに身代金の要求に走ったとかそういう狙いか?」

「えっと、パーティに乱入って時点で十分おかしい気がするんですけど、そっちはお咎めなしなのでしょうか……」

「残念だったなセリアード。その部分が何を今更で流されちまうような奇行人間がコイツの姉貴なんだよ」

 

そう、カルトの言ってることが王国民の総意じゃないのかってレベルで姉上は奇天烈だ。

遥か昔に読んだ絵本に書いてあったような、魔法の箒で空を飛ぶってのを再現してる様子を最近見たが……。

ああ、多分その検証で制御不能やらかしたってところか?

まあ以前にも壁に埋まったりだ何だ洒落にならねえことやらかしてるから、それ自体はまだいい方だ。

 

「何でまたユフィリアを攫った?いくら奇天烈でも道理が分からねえ人じゃねえはず……乱入直後がそうしたくなる状況だったってことか?」

 

姉上のやらかしたことに思考が向くところだが、まずはその理由とかから考えねえとだ。

少なくとも何となくって理由でそんなとんでも行動に出ることはまずない。

奇天烈ではあるが、あの人の根は基本善人であることくらいは殆ど接点がない俺でも分かってる。

そして乱入そのものは飛行用魔道具のテストの事故で偶然起こったに過ぎない。

発端が故意でないならば、次はその当時の周囲がどんな感じから探らなければな……。

 

「それについてだが……パーティの終わり際にユフィリア嬢が男爵令嬢に悪事を働かせていたということが発覚し、糾弾されていたらしいぞ」

「は?ユフィリアが男爵令嬢に悪事って要するにイジメってことか?随分とセンスのねえ依田話だな、言ったヤツ誰だぶっ飛ばしに行っていいか?」

 

あまりにつまらなさすぎて腹が立つんだが?

言ったヤツの座布団どころか心臓没収してやろうか?

元々は次期王妃としての義務感その他で自縛するほどの不器用なあのユフィリアだぞ?

俺に対しては色々変な行動したりもするが、基本真面目なアイツがそんなみみっちいこと考えすらしないだろ。

誰かおかしいと思わなかったのかねえ……それとも、何か仕掛けられてたのか?

 

「気持ちは分からんでもねえが落ち着けバカ王子。で、まさかそんな話で婚約破棄しろだのって進言したんじゃねえだろうな」

「流石はカルト。──そのまさかなんですよ」

「はあ?挙句の果てに俺がこれまでチリツモでやってきたこと崩しにきただって?ああもう処刑だ処刑、斬刑に処して……」

「おいおいマッド、いきなり処刑台に持っていくのは流石に出来んぞ?」

「そっちじゃないよカルリッツ!まずは目のハイライト無くなってるのすっごい怖いからそっちを止めるべきじゃないかな!?」

 

どこのどいつだ舐めた真似してくれてよマジでぶっ潰す。

斬刑が駄目なら……アイアンメイデンか?

王国ロッカー事件ねえ……これまた面白そうだなー?

よーし、早速手頃なロッカーを探しに……。

 

「公爵令嬢が心配なのはよーく分かったから戻ってこいこのバカ」

 

いてえ!……やばいやばい、これまでの苦労が台無しにされるのではと闇落ちしかけてしまった

的確にハリセンを入れてくれたカルトに免じて王国ロッカー事件は保留にしておくとしようか。

もうちょいまともな手段を考えておかねば。

 

「ってカルト君?ユフィリアだけじゃなくてちゃんとアル兄さんだって心配してるんだからな俺は」

「あっそ、別にどっちでもいいっつうかどうでもいいんだけどな」

 

ダークエルフの塩対応が染みますねえ!

……と、何かすっげえ脱線したからとりあえず真面目モードに戻らねえとな。

 

「で、でも流石に流れが強引すぎるような……アルガルド様は聞き入れてなかったんですよね?」

「その辺りがどうにも不明瞭でな。噂ではアルガルド様は完全にユフィリア嬢と袖を別ったと聞かされたが……」

「噂の広がり方にどこかデジャヴを感じるのですよ。少なくとも我々は一部都合がいい噂の出所は怪しいと睨んでおります」

 

ええー、アル兄さんがそんな荒唐無稽耳に入れるとも思えないんだが……。

っていうか、頭が冷えて思い出したことがあるんだが。

最初に出てきたイジメを受けたって男爵令嬢って……もしや。

思い出すのは言うまでもなく1年前の、アル兄さんとの喧嘩前後のことだ。

そしてこのタイミング……いや待て、無理やりかもしれねえが繋がっててもおかしくないぞこれ。

 

「──マッド様。恐らくこの状況は」

 

……セラの言わんとすることは分かっている。

白状してしまえば、やられたなこりゃ。

1年前から完全にこっちのマークから外してしまってたのが仇になった。

クソ、俺としたことが連中の外での暴挙ばかりに目が向けてしまってた。

我ながら盲目にも程があるだろうが、我ながら大失態だぞこれ。

ただ、その荒唐無稽滅茶苦茶な噂そのものはこれまでの情報が使える。

過去にアル兄さんやユフィリアと話した内容が、そのまま解明材料になるのが救いではあるな。

 

「アル兄さんのそれは十中八九演技だ。最初に出てきた男爵令嬢は、恐らく以前話題に少し上がったレイニ・シアン男爵令嬢じゃねえか?」

「え、演技?っていうかそのダンシャクレイジョーの名前も何ですんなり出てきちゃったの?」

「レイニ嬢は学院で浮いていたところをアルガルド王子に色々手助けしてもらっていた過去があってな。そこを境目に妙に取り巻きが増えたり、アルガルド王子もお熱なのではという疑惑が出たりと妙なことが多発して、マッドが調べていたことがあった。まさかここでその名前が出てくるのは想定外だが……」

 

そこで何かかしらかの魅了のような能力があるって仮説は立てたが、結局アル兄さんを正気に戻す方向性で妥協したんだよな。

それ以来特にアル兄さんからもユフィリアからも学院内でおかしなことは聞いてないから、完全に警戒を緩めちまった。

いつまでもルドミラ姉さんとかカルシオンを縛り付けるわけにもいかなかったってのもあるし。

ついでにレイニ嬢の立ち位置も保留にしていたが、これだと黒寄りに戻さざるを得ないのか……?

いや、まだ早いな。魅了持ちとはいっても能動的に使ったかなんて証拠は出てきづらいし。

 

「今のアルガルド様はそうそう冷静さを失う方ではないはずです。顕魂術に副作用で魅了などの精神干渉系魔法の効力はないはず。あえて相手に合わせた応答をすることで自分だけ引っ被り、何とかユフィリア嬢を逃がせないか動くのはおかしいことではありませんね」

 

大体ラインヒルト先生の言ってくれたな。

今のアル兄さんはかなり精神的にはタフになってるし思考も論理的かつ柔軟になってるし顕魂術の副作用で精神干渉耐性は強固だ。

レイニ嬢が仮に能動的に魅了の能力を使ったとしても、違和感を覚えて引っかからないだろうよ。

……あ、そうなるともう1つハッキリすることも出て来るな。

 

「……ユフィリアが姉上に攫われたってのも二人の計算の内だったりしてな?」

「え?二人って要するにアルガルド様だけじゃなくて、ユフィリア様の……?」

「二人して芝居を打ったってこと?そんなこと、咄嗟に出来るの?」

「……十分有り得るな。公爵令嬢様がアルガルド王子に合わせられるって仮定の上だが……バカ王子が言うなら出来るんだろうな」

 

何だよその含みのある言い方は……まあいいや。

よりにもよって婚約破棄で追い込もうとしたのがミスだったな、どこの誰か知らない黒幕さんよ。

まあ他の話題でも二人なら立て直せたとは思うがね。

そこまで軟じゃねえんだよ、親愛なる我が兄と可愛い可愛い俺のダチはな!

 

「その説で行けば、攫われたというのも場を有耶無耶にするための緊急退避の類だと説明がつくな」

「アニスフィア様の乱入は二人にとっては想定外のプラスだったのでしょうね。そのような場での彼女はマドラーシュ様と同等かそれ以上の混沌を生み出しますから」

 

その点についてはマジで運が良かったと言わざるを得ないだろうな。

だが、その幸運を基点に生かせるのは立派な能力だ。

『運も実力の内』っていうのはそういう意味合いもあると俺は思ってる。

いくら豪運だろうと、それを生かせなきゃ意味が無い。

どんな能力にも共通する至極当然の事実だ。

 

「ただ、ユフィリア嬢を攫った状態のまま空を飛んでいったという話だからな……正直、それだけでプラスマイナス0な気もするぞ」

「おい、マジでただの飛行実験失敗からの窓割って乱入して、そこから姉上的な事の流れでユフィリア攫ってまた空飛んで去ったのかよ」

 

薄っすら聞こえた悲鳴ってマジものだったのかよ……。

それなら確かにどうしてこうなっただよな……。

しかも俺が矯正してなお公爵令嬢オーラは衰えないユフィリアのそういう悲鳴って……。

うん、だが今回は流石に同情しか出来ねえ……心の中で合掌ものだ。

いくら攫われることが計算内でもあの姉上の物騒極まりない逃避行は計算外だろ。

あーこれ、機会があったら絶対ユフィリアが愚痴零しに来るパターンだ。

だが流石にこればかりはなあ……さぞ怖かったろうし、ちゃんと慰めてやろっ。

よしよしとハグぐらいはしてやるべき……いや、流石にそれはやりすぎか。

ったく、結果的にプラスのことをやってるのに過程で余計な減点かます辺りは流石姉上と言ってやろう。

 

「この件については一旦続報待ちじゃねえか?ラス達には俺が話はしておく、バカ王子は変なことすんじゃねえぞ?」

「頼んだカルト。セリアードも行ってくれるか?流石にこの状況じゃ新顕魂術だ何だは集中できないだろうし……ラスやナマリエに見て貰って自主練なら出来るよな?」

「そ、そうですね……ユフィリア様とアルガルド様、大丈夫でしょうか」

 

ユフィリアは物理的に、アル兄さんは精神的に……ってところだろうか。

状況的にフォローしやすいのはアル兄さんだが、即接触ってわけにもいかねえよな。

婚約破棄を一方的に突きつけたってデマは流されているわけだし。

下手すれば、父上に事情聴取を受ける羽目になりそうだ。

あの陳述書の出番もすぐ来そうだが……まず姉上がどんな感じで動くか次第ってところもある。

ユフィリアがあの場を離れることが出来たのは相当大きいが……姉上が何をしでかすかはとにかく読みづらい。

いや、あくどいことはしないっていうのは保証できるんだがな……?

まあ何にせよ、俺が不在でも二人はきっちりと最悪の事態だけは避けることはしてくれたんだ。

相変わらず色々縛られている身だが、まあやれるだけやってやろう。

……どうにもきな臭さが凄いから、あくまで慎重にな。

 

 





というわけで、傍から見ると原作に寄っているように見えてまるで寄っていない婚約破棄場面でした。
本作では(なお破棄するとは言っていない)になっていますけどね!
まあ、二人とも見事にやってますねーということで……。
そしてマドラーシュ君でも何だかんだ友人(?)と双子の兄の心配くらいはする。
でもロッカー事件はダメです、ここはどこぞの意図した電波ゲー世界ではないので。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。