転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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攫われました(わざと)、さあどうなるか。
ちなみにここからは一旦書籍ではなくweb版寄りです。



35.攫われて尚想う余裕あり

 

物理的に凄まじく酷い目に遭いました……。

確かにマッド様は人生は刺激がある方が楽しいと仰っていました……ええ、よく覚えていますとも。

──実際、そのお陰で少しは人としての生が楽しいと思えるくらいにはなってきましたから。

ですが、意識を失う一歩手前にまでなるような逃避行も楽しい刺激に類するのは果たして正しいことなのでしょうか。

マッド様──破天荒とふてぶてしさの具現と言える貴方であっても、きっと同じことを思いますよ。

まあ、その甲斐あってあの詰み待ったなしの状況から逃れることが出来ました。

アニスフィア王女が現れた直後のアルガルド様のあれは演技だとすぐに分かりました。

そこから私も可能な限り被害者として取り繕い、アニスフィア王女の手を借りることには成功した。

あの場を考えれば、及第点と言える結果ではないでしょうか。

ただ残念ながら、今の気を失う一歩手前の状態でマイナス方面のお釣りは出ますけれど。

……うう、まだ気分が悪いです。

暫くは空を飛ぶのは勘弁願いたいところ……。

それにしても、本当にマッド様から聞いていた通りですね……。

確かにこの方は奇天烈王女、または王国随一の奇人です。

そうなると、アルガルド様は完全に破天荒と奇天烈に挟まれていますね。

だからこその苦労人気質なのでしょうが……。

さて。私を攫ってくれたアニスフィア王女当人はと言えば。

 

「お前という奴は!お前という奴は!何度過ちを繰り返せば気が済むのだ!その頭は飾りなのか!?」

「ち、父上……!失敗を恐れて進歩などありえませんよ!」

「確かにそうかもしれん。だがな、その失敗の予防をしろと私も毎回言っているだろうが!繰り返してばかりではないか、愚か者が!」

 

今ちょうど二度目の拳骨を実の御父上である国王陛下──オルファンス・イル・パレッティア様より貰っていました。

アニスフィア王女、陛下の仰っている通りですよ。

進歩を求めるにしても、付随するであろう失敗の影響を減らす努力はせめてするべきです。

似た傾向の思考回路のマッド様でもそれくらい──いえ、あの方はむしろその面は徹底するはずです。

それこそぐうの音も出ないほどに一切の隙を見せず……あ、でも最後にどこか抜けていたというところを忘れずに、というところでしょうか。

その最後の抜け、要するに僅かな詰めの甘さが面白いのですが。

──ただ、アニスフィア王女のやらかしについては私からは強く言えませんね。

その愚かな失敗のお陰であの場を脱することが出来たのですから。

……それにしても、私は本格的に陛下の胃の調子が心配になってきました。

この様子ではいつか穴が空いてしまうのではないのでしょうか。

 

「それで──ユフィリアは何故アニスと共に?」

「え、えっと……それは──」

 

──私としたことが、迂闊でした。

ここに来るまでのダメージが抜けておらず、その上でアニスフィア王女と陛下のやり取りを見ていて返答を何も考えることが出来ないでいた。

下手に言い淀むのは今の状況では流石に悪手ですね。

何か、とりあえず何か言い訳で繋がなければ──

 

「アルくんが婚約破棄するって言ってましたよ、父上」

「……は?誰と誰が婚約破棄だって?」

「アルくんとユフィリア嬢が、ですよ父上」

 

あれこれ考え始める私よりも先にアニスフィア王女が報告してしまいました。

が、ものの見事にというか部分的にかつ致命的に間違っている。

経緯もかなり抜けていて、どうぞ勘違いしてくださいと言わんばかりの内容になってしまっていますよ。

──まあ、あのタイミングでの乱入だから致し方ないのかもしれませんが。

アルガルド様の言うように、アニスフィア王女は私たちの関係については全く関わってこなかった。

言い方を悪くすると、部外者に当たりますからね。

それを言うなら、似たような立ち位置のマッド様も部外者ではないのかって?

あの人はもう部外者で済ませてはいけないでしょう。

……いや、今はとりあえずだ。

陛下の顔がこの世の終わりを見たようなものになってきて、ますます居た堪れないことになってます。

 

「すまない。悪い夢だと言って欲しいところなのだが……ユフィリア、事実なのか?」

「……確かに周囲の方は破棄すべきだとしつこく進言していましたが、あの場でアルガルド様はそのようなこと仰っていませんよ」

 

確かに現実は空想や夢より悪いのが常なのかもしれません。

が、今回の現実は珍しいことにまだ悪夢より優しいものですよ、陛下。

私の返答を聞くと、鳩が豆鉄砲を食ったようなお顔になっていました。

ついでにアニスフィア様も完全に同じような表情に……。

大変不敬なのは存じていますが、思わず笑ってしまいそうに……我慢、我慢ですよ私。

──そして、この場で一つまた理解しました。

マッド様が時折突拍子もないことを言うのはこういう反応を期待しての意味もあったということを。

今度彼にも何とかやってみたいものですが……。

あっさりとかわされて反撃をもらいかねないのが難点ですね。

その辺りはセラに教わればよいのでしょうか?

 

「え、ええ!?だってあの時、アルくん思いっきり別の女の子のこと好きになってるって空気だったよね!?」

「別の女の子だと?まさか、時折耳にする例の男爵令嬢のことか!?」

「噂がどのようなものかは存じませんが、その点については恐らく陛下のお考えの通りかと」

 

やはりレイニ嬢の噂は王宮内にも行き渡っていたのですね。

過去にあった事実が混ざった……虚実が入り乱れているからこそ逆に信憑性が高く聞こえてしまう噂が。

あの時の妙な空気は、その噂が前提にあったものならば今なら納得できますね。

そしてあの場には、何かそういう空気を増長させるようなものが仕掛けられていたと……。

私やアルガルド様だけでなく、あのマッド様の目と耳を欺くとは随分巧妙な手口ですね。

あの人の耳に入ったらさぞ静かにお怒りになることでしょう。

色々物騒なことを考えていないか、ちょっと心配ですね……度が過ぎると『斬刑に処す』なんて言いかねないですし。

 

「アルガルド様は私に向けられた疑念に対してあくまで中立に振舞っただけのこと。私たちは明確な対立はしておりません」

「でも、普通その場合は婚約者の味方をするものじゃないの?あまりに冷徹というか……」

「こればかりはアニスの言う通りだな。アルガルド、何故そんな振る舞いをしたんだ……ぐ、また胃が……」

 

さて、種明かしをするべきか否か……なかなか難しいところですね。

双方アルガルド様の行動に対する疑念がどうにも拭えないでいるのがどうにも懸念になってしまう。

そのような状態で真実を伝えても受け入れて貰えるか……良くても五分五分。

その後のことを考えても、すぐに賭けに出る状況ではなさそうですね。

彼がこれまでずっと抱えていた劣等感に何とか向き合っていることは、恐らく殆ど知る者はいないはずだ。

恐らく、それ自体を与えたマッド様とその周囲、そして似たような経緯で変わることが出来た私しか知らないでしょう。

──まあ、この辺りについては過去のご自身が撒いた種ですので。

アルガルド様、ここはご自分で汚名返上なさってください。

近い内に婚約者ではなくなるのですから、それくらい自力でどうにか出来ないなんてどうかと思います。

貴方の弟君も、きっと同じことを言うことでしょう。

 

「しかし、あやふやなところがあるとはいえ婚約破棄など……グランツが知ったらどうなることか……」

「であれば父上。このアニスフィアには窮地を脱する腹案がございます!」

「……頼むから私の胃を潰すようなことは言わないでくれよ?」

 

陛下の目が完全に胡散臭そうなものを見るものになっておられますね。

この奇天烈王女は一体次は何を言い出すのでしょうか……。

私から見てプラスになるならばありがたいのですが、果たしてどうなのか。

この状況、下手をするとアルガルド様やマッド様との合流がどんどん難しくなる可能性も十分有り得る。

そうなると完全に孤立無援、当然私一人で出来ることなどたかが知れている。

ですが、ここで一人では何も出来ませんで泣き寝入りをするつもりなど毛頭ありませんよ。

その為にも、隠れ家的な立ち位置が欲しいところです。

そのような提案をして頂けるならば、喜んで……。

 

「私にユフィリア嬢を下さいませ!」

 

……今こそ『まるで意味が分からないぞ!』と叫ぶべき時でしょうか。

そもそもその発言の意図自体がいくつも考えられるのですが……それこそ色々と。

アニスフィア王女のそういう噂は耳にはしていましたが……まさかそっちの意味で?

……もしそうなら、マッド様でもそんな突拍子もないことは仰らないですよと返したい。

陛下も私と全く同じことをお考えなのか、その表情は明らかに渋いものですね。

 

「──それはどういう意味でだ?」

「ユフィリア嬢は歴史上稀に見る、優秀な魔法使いです!アルくんの婚約者でなくなるならば、私の実験た……ごほん、研究助手として引き抜きたいのです!」

「貴様今何を言いかけた!?ユフィリアにどのような扱いを強いようと……いやそもそもそんな暴挙、グランツ、いやマゼンタ公爵が納得する思うのか!」

 

陛下、ご安心ください。

下の弟君と彼の専属侍女も割と物騒な発言が多いのでとっくに慣れています。

それにしても、アニスフィア王女の助手……要するに、『魔学』の研究に携わる方向性の腹案でしたか。

想定よりまともで、少し考えれば私にも利があると分かる提案で安心しました。

同性愛に偏見を持っているわけではないが、積極的にそちらの道を行くつもりは全くありませんからね。

別に男性に嫌気が差したとかそういうこともありませんし……。

……それ以上に、そんなことで引かれるなんて御免被るところなのでご遠慮願いたい。

 

「今回の婚約破棄の件、噂とはいえ既にかなり広まってしまっています。こうなると覆しようがないので、多少強引でも別の話題で注目を逸らす必要がございますよね?」

「その点アニスフィア王女の名前と魔学は有効ということございますか。確かに、そういう意味でしたら理には適っていますね……理には」

「いやいやいやユフィリア、お前が納得してどうする!?この問題児に売られそうになっているのだぞ!?お前はそれでいいのか!?」

「王族から婚約破棄を突き付けられた、なんて噂は令嬢として傷持ちになってると言っても過言ではありません!今後を考えたらまともな貴族としての幸せな婚約は難しいでしょう!」

 

……改めて耳にすると。少し来ますね。

何というか、あまりに直球過ぎて……。

学院で耳にした『可愛げが無い』『女らしくもう少し貞淑な実績を』なんて言われたことを自覚した時以来でしょうか。

まるで中古品みたいな扱い……マッド様風に例えると少々ばかりイラッと来ました。

あれこれ言われる中で『傷持ち』と称されることも当然覚悟の上でしたが、あっけらかんと言われるのはいい気がしません。

まあ、あの人はもっとひどい言われようで、更にそれが長かったんですけども。

『アルガルド様の代替品』、『魔法も使えない無価値王族』……『放浪王子』なんて全然優しいものですね。

そんな存在否定になりかねない陰口を一切気にしていないというか、歯牙にもかけない不敵さは本当に凄いし、今でも憧れている節はありますよ。

私もそう在りたいものですので、あえて口は挟まないように努める。

──っと、思考が逸れているから流れを本筋の方に戻しておかなければ。

 

「相変わらず良く回る口だ。……それで、本音は?」

「良い条件の助手候補を見逃したくないのもそうですが、ユフィリア嬢ははっきり言って好みです!もちろん魅力的な女性、という意味で!」

 

……やはりそっちの意味もあったのですか。

要するにあの噂は間違いではないと……その矛が私に向かってしまったと。

魅力的と言われること自体はそこまで悪い気はしませんが……。

イマイチ響かないというか、ストンと来ないというか……まあ、心が躍るということはありませんね。

マッド様からもよく『可愛らしい』や『自分好み』という言葉は頂きましたが、こちらの方が心地良い感覚を覚えたくらいですし。

そんな比較からの選り好みをするようになった辺り、なかなか俗に染まってきた気がしますね。

彼色に染まりつつある……そんな言い方も出来るほどには。

 

「──はあ」

「あれ、私何かマズい言っちゃいましたか父上!?ユフィリア嬢が何だか物憂げな顔になっちゃってますけど!?」

「少なくともここまでの一連の流れで疲れを見せない人間はいないだろう。私から言えることはそれだけだ」

 

いけない、ついため息が……。

あまりに気を張り詰め過ぎていたところにアニスフィア様の提案のせいでで僅かに緩んでしまったようです。

普段ならばこんなことがあったら真っ先にあの部屋に直行するところですからね……。

でも、今は耐えなければならない時です。

安易にマッド様に頼れる状況ではないのですから。

この後は私の様子を見かねてか、この場の緊急謁見と言うべきか分からない会合はこれまた急遽終了となりました。

アニスフィア王女の要望については、関係者を集めて協議するということで落ち着くことに。

確かに、お父様のあずかり知らないところで進めるわけにもいかない案件だ。

何せ私とアルガルド様の婚約解消が大いに関わっているのだから。

婚約解消とその経緯を話すと共にお父様に色々とぶつけなければならないので、私としても都合はいい。

私一人で、ということに不安が無いわけではありませんが……。

ですが、ここで逃げたらマッド様とアルガルド様に顔向けができなくなってしまう。

アルガルド様が身動きが取れないであろう状況下だ、私がやるしかない。

──それに、いつまでもマッド様の手を借りてばかりでは幻滅されてしまうでしょう。

『出来る出来ないではなく、やるしかないならやるだけ』

これもまた、マッド様の受け売りですけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで一気に飛ばしてただいまマイルーム!

ユフィリア嬢を伴って、離宮の私の部屋に無事戻ってくることが出来ました。

 

「散らかってるけれど気にしないでください。お茶を用意させますので」

 

とりあえず大量の資料はしまって……ああ、後来客用の椅子もだね。

この部屋は主に魔学の理論構築、思考整理の為の場所。

魔道具を作るための工房は別の部屋だ。

色々と調整中の品もあるし?そうじゃないと流石に危ないからね。

 

「そういえばユフィリア嬢。先ほどから視線が忙しないけれど、どうかしたの?」

「いえ、何というか雰囲気が独特というか……申し訳ありません、つい目移りしてしまいました」

 

やっぱり資料やら書物がここまで置かれてる部屋って珍しいのかな?

あ、既に試験運用中の魔道具もあるからむしろそっちか。

それに、この離宮自体が敷地内の端にあるという点も割と影響しているのかもしれない。

ちなみに、こことは真逆に位置する区画にも離宮があるんだよね。

そこではアルくんの双子の弟であるマッドくんが10年以上前から居を構えていたりする。

あ、『マドラーシュ』の前の方で略そうと思ったらマドくんとかマドラくんって歯切れが悪いからマッドくんと呼ばせてもらっている。

もちろん、これも呼び方としてはどうかと思ったよ?

直に気狂いとか言っちゃってるわけだし、普通の人に向けたら間違いなく顰蹙を買うだろう。

でもまあ、本人から特に文句は無かったからヨシ!ってことで。

ただマッドくんとは居住スペースがまるで真逆ということもあってか、今は全くと言っていいほど接点が無いんだよね。

かなり前は多少は遊んでいたのだが、あの時をきっかけに疎遠になったと言うか……うん、違う。

余計な火の粉をあっちにも与えたくなくて遠ざけた……ただそれだけ。

そのように突き放した身で何を今更って思われるけど、ここまで顔を合わせられないと流石に心配もするもので。

悪い噂は全くと言っていいほど聞かないから、真っ当にやっているとは思うんだけどさ。

 

「失礼します、姫様」

「お、来たねイリア!ユフィリア嬢にお茶をお出しして!」

 

彼女は10年以上の付き合いになる私の専属侍女のイリア。

もはや手慣れたように一礼して、お茶の用意に取り掛かっている。

お、ユフィリア嬢の関心がイリアの手元に移ったね。

何せイリアが作業に用いているのは私が作った魔道具だもの

火の精霊石を用いた、ポットを模した魔道具。

お湯を沸かすのには時間はそうかからない。

お茶を用意する際に手間がかかる工程の1つの短縮効果、やっぱり便利だよね。

 

「お湯がこんなに早く……。確かに評判通りの便利さですね」

「ここには他にも世には出してない便利なものもたくさんありますからね」

「お陰で他所の仕事に支障を来してしまうという、とんでもない罠ももれなくついてきますよ」

 

え、何でそんな目のハイライト無い状態で呟いちゃうのイリア。

ここには私が前世で普及していた家具を再現したプロトタイプがあり、テストとして使われている。

その恩恵を受けてるはずなのに、何でそんな顔になるのかなー?

面倒な手間を削れてるんだからもう少し喜んでくれてもいいんじゃない?

 

「便利も度が過ぎると考え物なのですよ。これらが世に普及していないことも、一種の不便でしょうに。お陰で私はもう配置換えも望めずに完全に囲われて……」

「こら、無表情で泣き真似しないで。逆に怖いよそれ」

 

ユフィリア嬢も私たちのやり取りを見て苦笑しちゃってるじゃん……っていやいや、それは想定外だ。

普通なら、身分が違うのにここまでフランクに話してることに驚くところな気がするけど。

何だろう、凄い慣れてると言うか……実家のような安心感的な表情をしてるというか。

うーん、気になるからちょっと突っ込んでみようかな。

 

「ユフィリア嬢、私たちの距離感を見て驚いたりしないの?」

「もっととんでもないというかぶっ飛んでいるというか、それでいてちゃんと主従関係になっている実例を知っているので……身分の差がある割に対等だとは思いますけど、それくらいですね」

「それは主と従者、どちらがよりぶっ飛んでいるのですか……。はたまた双方共でしたら、もはや私としましては未知の領域ですね」

 

イリアの言う通りだよ……一体どこの誰さ私たち以上かもしれないって。

それでいて主従関係として成り立っているってもう想像つかない。

それもはや悪友関係とか、下手したら夫婦とかそういうレベルじゃない?

そんな貴族がいるのならばいっそ会ってみたいものだ。

 

「話は変わりますが──そもそも何故、アルガルド王子様の婚約者であるユフィリア様をここに?」

「なんかアルくんが周りの突き上げに流されて公衆の面前でユフィリア嬢に婚約破棄を突き付けた疑惑があるってことで、なんやかんやで拉致って来たの」

「意味が分かりませんね。何故その現場に姫様が居合わせて、そんな疑惑が出てきてくるのですか。ユフィリア様が突き上げられる点も冗談にしては悪質さを極めていますね」

「冗談と思いたいけど、疑惑があるってところまで現実なんだよね。ただ更にややこしくなりそうな新事実もあって……いやあ、現実の斜め上の行き方が凄いよ」

「頭のおかしい人間王国内筆頭が仰ると、もはや説得力が限界突破ですね」

 

不敬!それはいくら何でも不敬が過ぎるぞイリアー!

あ!ユフィリア嬢まで危うく吹き出しかけてるし!

というか、パーティ会場で私が攫う前と随分と雰囲気が違う気がするのは気のせいだろうか。

そもそも以前はこんな感じだったっけ。

大人にも物怖じせず意見を言える子ではあるし、将来の王妃として立派だとは思ってはいたけどどこか人間味が薄かったというか……。

何というか、ここまで柔軟なタイプだったろうか。

割とジョークも通じたり、淡々とはいえツッコミも入れたり。

もしや、その例のぶっ飛び主従関係に毒されているとか!?

おのれ私好みの令嬢に何をしでかしてくれてるんだ!

──いや、今はそれは置いておこう。

 

「それで、ここにユフィリア様を連れてきたのは……姫様、まさかとは思うのですが」

「そう、私のモルモ……じゃなくて、助手になってもらおうかなと。婚約破棄の噂の風評は相殺させようかなぁって思ったの」

「遂に気が狂ったのですか?よもや率先して人を陥れようとするなどと……」

 

え、ちょっとちょっと何でそうなるのさ!?

わけがわからないよって何かあくどい契約持ち込んでくる白い何かが浮かんできた!

私アレとは絶対に違うからね!

あんな言うべきこと言わないようなひっどい契約誰が持ちかけるか!

ほら、ユフィリア嬢も流石に何を言ってるのか分かってないご様子だよ!?

 

「ユフィリア様。この悪魔の手を一度取ってしまったらもう二度と戻ってこれなくなりますよ。これは紛れもない事実です」

「──この便利すぎる魔学と言う概念を一度享受してしまったら、もう元の日常には戻れないという意味でしょうか」

「流石、ご慧眼をお持ちのようで。姫様の提案は『住む世界、見ているものを変えてしまう』本人と同種のいわば劇薬です。その覚悟をする間もなく引きずり込もうとは、私が正気を疑うのも無理はないでしょう?」

「……この短いやり取りで陛下と同じくらい苦労されている、ということは理解できました」

 

唐突なシリアス路線突入に今度は私が困惑する番だ。

というかやだ、私の評価酷すぎ……?

いや評価自体はされてるのかもしれないけど、要するに『触るな危険』ってことじゃない。

っていうかユフィリア嬢もそこを理解してどうするのさー!

 

「アニスフィア王女は魔学の果てに何を為そうとしているのでしょうか?その理念は是非ともお聞きしたいところです」

 

と思ったらいきなり回ってきた私のターン!

しかも私のルーツについての問いだ。これにはしっかりと答えないとね。

魔学の根幹を知ってもらうには大事なことだ。

先ほどの言われなき評価を覆してみせましょう。

 

「私ってさ、魔法が使えないでしょ?だからかな、猶更周りを見て思ったの。魔法ってもっと色々なことが出来るはずなのに、何か勿体ないなーって」

「もっと色々なことが出来るはずなのに、勿体ない……魔法がですか」

「そう、そこにあるのに使わないなんてそれはもう勿体ない以外ないでしょ?そして私はその色々な使い方を知っていて、実現する術として魔法がある。まさに出来る条件は整っていた。なら、後は実行に移すだけだよね」

 

そこに大義だの理想だの、そんな大層なものは無い。

私にとって、自分が望む世界は自分で作り出すのは当たり前だったのだ。

 

「突然の質問に答えて頂いてありがとうございます。確かに、貴女は評判通りなかなかの奇人で、ある意味恐ろしい方ですね」

「ユフィリア嬢の方が恐ろしいと私は思うけどね。魔法全属性適性あり、武術も嗜み家柄も完璧なんて理論武装のやりたい放題のチートじゃない」

「理論武装、ちーと……?言葉の意味こそ分かりかねますが、私なんてまだまだ恐ろしいと称されるには程遠い人間ですよ」

 

更に謙虚と来た!

いやいや、十分恐ろしいと思うんだけどね。

これ以上何かを身に着けたらもはや誰も手が付けられなくなっちゃうよ!?

 

「助手の件については私の一存でまだ返答は出来ません。ですが……私個人としてははアニスフィア王女の提唱する魔学に興味があります。許されるのであれば、是非ご助力させてください」

 

お、まさかの既に好感触!?これは嬉しい誤算だ。

押しても手応えが無いから厳しいかなと思ってたけど……。

もしやユフィリア嬢はクーデレに進化していたとか!?

おおう、それもまたアリだ。

見事なまでに容姿とのギャップがあっていいと思う!

 

「ユフィリア様……覚悟は固まった、という認識でよろしいのですね?」

 

イリアの語気を強めたその言葉はまさに最終警告と言えるものだった。

何でそこまで止めようとするのさ……。

本人やる気ありありで、ちゃんと自己責任って感じだから大丈夫だと思うけどなー。

 

「ご忠告感謝いたします。ただこの身は既に戻るに戻れない境地に叩き落されています。その時に比べれば、まだ易しい方のはずです……ええ、きっと」

 

そんな最終警告に全く怖気づく様子はない。

ここまで来るとクールというよりタフじゃないかな……どこに行ったの、さっきまであった令嬢らしい儚さは。

というかそれどういう境地!?誰だそんな獅子を崖に突き落とす的なことしたのは!?

 

「それに──私自身、劇薬を所望していたところですので」

 

色々と困惑している私とイリアを尻目に、ユフィリア嬢はこう締めくくった。

その顔はこんな気品と美しさ、そして不敵さを融合させたもので……。

一瞬垣間見せたその空気は、私でも少々気圧されてしまうほどだった。

 





そういうフラグはとっくの昔に折れていますよ回の前座ってところです。
この時点で自我の成熟が進んでいればこうなるんじゃね?ということで。
過去編から書いた理由の1つがこの展開を狙ったから。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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