転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけで更にweb版寄りマシマシの回でございます。
本作にしては珍しくかなり原作に寄っていて、差別化に苦労したところでもあったり。


38.奇天烈王女による未踏区域解説

 

無事に婚約解消が為され、表面上は一安心となり暫くした頃。

また、正式にアニスフィア王女……もといアニス様の助手となり、新たな生活の門出を迎えることとなりました。

これを機に、私の為の部屋もこの離宮に用意して頂いた。

要するに、人生初のお引越しですね。

魔学は国家機密を含む場合も多いから外出している際にも漏洩、または成果そのものが狙われる危険性がある。

研究内容次第では徹夜の可能性もあるとのことで公爵家との往復は不便が伴うであろう、とのことだ。

 

「ようこそ、ユフィ。ここが私の城、もとい工房だよ!」

 

招かれた部屋……いえ、工房はある程度は想像通りのものでした。

あちこちにあるのは試作品であろう魔道具の数々。

うっかり触って爆発何て起こしたらとんでもないことになりかねない。

ある程度の注意を払って、足元にも注意しながら見て回る。

……見た目からは用途が想像つかないものばかりですね。

一体この人はどれだけ奇抜な発想を持ってこれらを作り上げたのか。

 

(それにしても……まさか先にこちらの離宮でお世話になる日がくるなんて、人生分からないものですね)

 

……無論、色々と複雑な心境ではありますけど。

そういえば、あちらの離宮は明らかに持て余している様子だったはず。

当の持ち主が『何でこんな無駄に広くしてくれたのか』とぼやいていたほどには。

グランナイツの方々については、会館と呼ばれる詰所のようなところが近くにあるから不要だと後で耳に挟みましたし……。

だからこの3年で1回も鉢合わせることが無かったわけで。

それにしても、あれだけ部屋を持て余していてあの抜け目ないお方がそのままにするとはどうも考えにくい。

……あっちこっち放浪している最中に見ず知らずの誰かを拾って世話をするなんてこともあったのでは?

いえ、もしかしたら現在進行形で匿っていたりとか……。

──って、何でそんな方向に持っていこうとしているのか。

 

「ど、どうしたのユフィ。何かやる気満々って感じだけどそんなにこの部屋楽しい?」

「あっ……ええ。用途こそ分かりませんが、だからこそ興味を惹かれるというか」

 

……とりあえず部屋を見回すことで何とか落ち着かせましょう。

ちなみに、アニス様とは『このままだと他人行儀が過ぎるのでは』ということで互いに呼び方を親しみを込めたものとなっている。

──マッド様に『ユフィ』と呼ばれたことって、確か一度も無いですよね。

いや、異性だからこそ気安くそう呼ばないのでしょうけど。

そういうところで意外に律儀な方ですからね……ええ、本当に意外なことに。

ただ、いい加減3年の付き合いになるのですよ?

先ほどのようなアニス様の言い分がそのまま通るとなると、あちらは未だ他人行儀ということ。

そこに行き着いた途端、一気に嫌な想像の数々が頭を過って……!

 

(って、私はまた……!何でそんなことばかり考えるのですか!)

 

いけない、また霧の中に意識が持っていかれそうになってしまっている。

いい加減切り替えないといけない……何とか今は振り払わねばなりませんね。

こんな滅茶苦茶な内心を悟られぬよう、必死に振り切るように目新しい視界への関心で誤魔化すこととした。

 

「なんかやる気が凄いし、早速認識の擦り合わせから入っちゃっていいかな?」

「そ、そうですね。助手となったからには、少しでも早くお力になれるようにしたいので……」

「そんなに堅苦しくなくても大丈夫だよ。成果を出すに越したことはないけど、こういう探求は失敗の方が遥かに多いからね」

 

まあ、そうでなければ壁に突っ込んだりなんて珍事は起こり得ませんからね。

マッド様も年分不相応なりに色々やろうとしたら、それこそ試行錯誤の嵐だと苦笑しながら仰っていたことを思い出した。

その結果が、先日陛下とお父様が話していた裏の成果に繋がったのでしょうけれど。

アニス様とマッド様、確かにお二方の行動と結果については血の繋がりを感じさせられますね。

とはいえ、あちらは自身の存在をも徹底隠蔽する形で影響を抑制していたようですが。

……友人である私に対しても、ですけど。

 

「まず大前提から。ユフィは私が……いや、マッドくんもだけど、とりあえず魔法が使えないことは知ってるよね?」

「はい……大変失礼になってしまいますが、噂でしたら耳にタコが出来てしまうほどには聞こえてきました」

 

そもそも魔法は、貴族ないし王族に由来するならば大凡使えるはずのもの。

そんな中で例外に当たるのが、目の前にいるアニス様、そしてマッド様の二人だ。

そんな一つの欠点だけで、彼らの王族内での立ち位置は冷遇されてしまっている。

特にマッド様は双子の兄であるアルガルド様がいることも相まってか、当たりが特に強い。

その分下手な勢力からの干渉も有り得たから、猶更面倒な立場に立たされやすいおまけつき。

だからこそ陛下はアルガルド様こそ次期国王と明言して、マッド様を徹底的に王位継承権から……そして王族という生き方の一つからも遠ざけた。

本人は『むしろ変に縛られないからせいせいしてる』とむしろ笑顔混じりでしたが。

私としては、どうしてもやるせなさと共に、彼を悪意の渦に飲み込まんとする勢力に憤りも感じるところ。

ちなみに国内で、と限定したのは偉志ノ大陸やアーレイン帝国については何もわからないから。

そもそも偉志ノ大陸については魔法文明が無いとさえ言われていたのだ。

同じく王族や貴族だったとしても、魔法そのものが使えない可能性の方がむしろ高いと思われるので……。

そもそもが魔法の可不可だけで価値が決まらない国であるならば、だったら何だと言った話でしょうけれど。

 

「そんなに暗い顔をしないでユフィ。魔法を使えない原因については大体推測は立っているんだから」

「やはり、その点を掘り下げるところから始まったのですね」

「どうしても魔法への憧れは捨てられなかったし、疑問を残したままだと色々気持ち悪かったからね……この根幹だけでも分かってもらえるなんて、ユフィは柔軟な思考を持ってて有難いよ」

 

普通ならば、何故使えないのかとただただ嘆くようなところでむしろ立ち向かう。

魔法への強い憧れがあったとしても、なかなか出来ることではありませんね。

……もし、マッド様も同じように思っていたら同じ道に走っていたのだろうか。

いや、使いたいと思っていなくてもその原理を解明してやろうとなりそうだ。

案外裏で既に解剖済みだという可能性も……あの人ならやりかねませんからね。

『頭堅い貴族連中が信仰しているものを徹底解明して現実を叩きつけるのも楽しそうだ』なんて、物凄い悪い笑みを浮かべていそうだ。

そうすると、アニス様と被りかねない隠れた偉業がまた一つ増えてしまうことでしょう。

……意外と理を重んじて、かつ執念深いところがあるマッド様ならば必ず行き着くべきところに行き着いてしまうはずだから。

 

「魔法の行使に欠かせないものは精霊。私はまずこの基本に目を向けたのよ」

 

魔法は祈りと魔力を精霊に捧げ、それらを受け取った精霊が具現化するもの。

一般的な魔法に対する認識はこのような感じだ。

アニス様が疑問の目を向けたのは、恐らくこの魔法を使う上での大前提の部分だろう。

 

「単刀直入に行くと、精霊は意志を持たないと私は考えている。それこそ大精霊や神のような精霊の上位種と言える存在でない限りはね」

「意志を持たない、ですか。精霊という存在にその仮定を当てはめると……」

「精霊が具現化するのではなく、精霊そのものに魔力を与えて形を成したものが魔法と私は定義したよ。要するに、精霊は魔法の材料でしかないってことね」

 

確かに、大雑把かつ精霊への神格化を取っ払った上で言えばそうなってしまいますね。

精霊信仰者の前では絶対に口にしたら大荒れ間違いなしでしょう。

私の場合は……まあ、どこぞのやりたい放題な方に散々現実を見せつけられているので。

 

「論理的な破綻は見受けられませんね。もしそれでしたら、祈りを捧げる工程などを削っての詠唱時間短縮なども図れる可能性もあります」

「……私が言うのもあれだけどさ、ユフィの魔法に対する考えって凄いドライだよね。もう少し驚いて欲しかったなーってのが本音なんだけど……」

「申し訳ありません。実は私も魔法や精霊については違和感を覚えていて、むしろアニス様の仮説でどこかしっくり来たくらいでした」

「それも例のユフィを変えたって人の影響ってこと?本当どこの誰なのさ。殿方じゃなかったら助手に迎えたいくらいだよ」

 

私も貴女も全然会えていない、もう一人の弟君ですよ。

……そして、彼を助手なんて止めた方がいいと思います。

実験と称して友人と共に外で何かを爆発させたり、説教回避の術を心得ているのですから。

恐らく、今以上に陛下の胃を痛めつける事態になりかねないかと。

 

「まあ、それについては追々聞かせてもらうよ。次に魔法が使えない理由なんだけど、まず根本となる魔力が無いのではと疑ったのよ。でもこれはすぐに覆ってね」

「精霊石の存在がありますからね。あれは効力こそ魔法を小規模にしたものですが、平民でも問題なく扱えるもの。アニス様も含め誰もが魔力を持っているという簡単な証明になりますね」

 

精霊石の効果は微小ではありますが、間違いなく誰でも使うことが出来る。

火の精霊石や風の精霊石はそれなりに使われている光景を見たことがありますね。

精霊の生息数が豊富なこの国では、精霊石はそれこそあちこちで手に入る。

平民の子供が手にしてちょっとした魔法ごっこで遊ぶ光景もちらほらと見受けられるほどだ。

 

「ってユフィ答え出すの早すぎだよ!?凄い助手を迎えたって意味では鼻が高いけど、逆に優秀過ぎて私の説明枠が減っちゃうじゃない!」

 

えーっと……そんなことを言われても……。

ふと答えが浮かんできてしまうものは仕方ないですよね?

優秀過ぎるかはさておき、これで怒られるのは少々理不尽を感じてしまいますね。

どうしてもマッド様を言葉で出し抜くために、会話の最中も頭を回す癖が出来ているのが仇になってしまった形ですか?

……それでも理不尽な気がしますけど。

 

「まあいいや、ユフィが優秀なのはいいことだし……それで、魔力は私も持っていることはわかった。じゃあ何故それでいて魔法が使えないのか?これはもう、私の魔力がどの属性の精霊にも好まれないという結論に行きつくしかなかったの」

「精霊が魔法の材料という面にも繋がりますからね。魔力はあっても、手段を行使するところに行き着けなければどうにもなりません」

「そう!だからユフィはどの属性の精霊にも好かれるチートだということ!しかもそれでいて身体能力に何にも問題ないって何事だーってことさ!」

 

先日も聞いたのですが、そのちーとって本当にどういう意味なのでしょうか。

マッド様も時折どのような書籍でも書かれいないような、意味不明な言葉を使いますが……こういうところもこの姉弟で共通していますね。

話の流れから察するに……全属性の精霊に好まれるという点で異端認定ということでいいのでしょうか。

……全属性が使えるというだけの話なのに、流石に泣けてきますね。

そういう称号はアニス様とマッド様にだけ与えればよろしいのではないでしょうか。

 

「……ちーとという言葉はさておき、身体に何も問題が無いのがおかしいのですか?」

「うん、割とおかしい。説明するには魔力の方も深掘りする必要があるんだけど……魔力と言うのは、一言で言うと生物の魂を基にしているのよ」

「魔力が魂を基にしたもの……?」

 

こればかりはなかなか斬新というか、前衛的な説で私も戸惑いを見せた。

そもそも、生まれてこの方魔力とは何なのかを気にしたことなど全くありませんでした。

そもそも意識すればそこにある、その程度の認識でしたからね。

だからこそ、この説は完全に未知の領域に当たる。。

──これはなかなか、興味が惹かれますね。

 

「詳しく言うと、身体が不要だと判断して魂から溢れたものこそが魔力ね。ここから派生して私は心の病と魔力の関係について考えた」

 

心の病と魔力……魂の話からそう繋げてきますか。

私の魔法適性と身体能力に関わることでもあるから尚更気になってしまう。

そして、この幅広い話の展開の仕方もどこか懐かしさを感じてしまいます。

 

「私たちは肉体と魂のバランスが安定してないとどちらか、或いはどちらも悪くしてしまうの。そして魔力が体外に出ないで精神が病んでしまう、逆に体調を崩すという事例は貴族に多いんだ」

「親は立派なのにその子の素行に問題が出てきたり、体質が遺伝で説明できないような事例はそれが原因でしたか……そして私は精霊に好まれやすい魔力を持っている」

「その場合は魂の内部の魔力まで精霊に持って行かれて、結局バランスが崩れる可能性が高いってこと。そういう意味ではユフィは本当に奇跡的だよ。千年に一人の逸材かもね」

 

そのように言われましても、いまいち実感が沸きませんね……。

そもそも、全属性の適性があるとは言っても所詮はそれだけの話ですから。

今の私がそれを十全に扱えているかと言われると……とてもじゃないが、素直に首を縦に振ることは出来ない。

先日存在を知ったグランナイツは、魔法が使えずとも英雄と呼ばれるだけの力を持っていた。

そして、マッド様はそんな方々の指導を受けて、裏でやりたい放題をしながら武勇も含めた数多くの実績を積み上げては国に利をもたらしている。

明らかに人として極みに近いであろう彼らの指導に追いつくために、文字通り血反吐を吐く思いだったはずだ。

年齢やそれに伴う体格や腕力に脚力、経験……これらの不足を悉くと補っていたと以前仰っていた。

今思えば、それは過言でもなんでもない……ただただ事実を軽く告げていただけで。

そんな方々に比べたら、私はまだその才能の上に立っているだけに過ぎない。

だからこそ、そのように褒めたたえられても素直に喜べない。

──それだけで土俵に立てると思うなど、何と烏滸がましいことか。

 

「それでアニス様。精霊に魔力が好まれないから魔法が使えないと分かって、次はどのような考察に進んだのでしょうか」

「あ、見事に脇道に逸れちゃったね。そこで私は精霊そのものに干渉できないなら別の手段ということで精霊石に目を付けたの。まずはその正体からだね」

 

王国の輸出の主力を担えるほどの産出量を誇る、誰もが使える精霊石。

この国においては、身近な存在と言えるが……正体と言われると気になってしまう。

今度は一体どのようなおっかなびっくりな要素が出て来るのか。

誰も目を向けない要素だからこそ、思わず期待してしまうところですが……。

 

「簡潔に言っちゃうと、あれって精霊の死骸なの。意思を持たないまま物質化してしまった精霊というのが正しい言い方なんだけどね」

 

思った以上にあっさりとした答えが返ってきた。

まさかその辺りにある精霊石が、精霊の死骸って……その、何と言うか。

 

「何だか随分と印象が悪くなりそうな話ですね……」

「普通の精霊は死という概念が希薄だから恨み辛みとかとは無縁だよ。まあ、現実はそんなものってことだよ」

「……そうですね。そう考えるくらいの方が気楽です」

「ど、どうしたのユフィ。何か凄い遠い方を見つめて……」

 

決してどこかの誰かさんに散々そのような現実を突き付けられたことを思い出したわけではないですよ?

──ええ、断じてそのようなことは。

色々と上げておきながら落としておいて、『はっはっは、覚えておけお嬢ちゃん。これが現実だ』なんて言った性悪王子のことなんて知りません。

 

「まあそんなこんなで精霊石の特性が分かったら私のターン!ってことで、試行錯誤と探求は始まり、十年近くかけて今があるってわけ」

「……懐かしゅうございますね。『空も飛べるはず!』と風の精霊石を山ほど使って城壁にめり込んだこともありました」

「め、めり込んだって……よく生きてましたね。もう少ししっかり検証してからやれば避けられそうでしたけど」

「しょうがないでしょ!思い立ったら即行動が私の昔からのモットーだもの!」

 

ああ、今度はイリアが遠い目を……。

当の本人は『バラバラになるかと思った』なんて至って軽い雰囲気だが、軽く済ませていいことではないでしょうに。

その十年でどれだけイリアや陛下の胃にダメージを与えたのだろうか、この奇天烈王女は……。

とりあえず、胃痛に苦しむ二人の姿を振り払って話を変えなければ。

そうでないと、むしろこちらが居た堪れなくなってしまう。

 

「そういえば、他にも工事の現場にいらっしゃるという話も聞くのですが……これも魔学の活動の一環なのですか?」

「あー、それは半分外れ。お目当てはむしろ魔物が落とす魔石の方だよ」

 

魔物が落とす……魔石?

待ってください、もしかしてそれって……?

嫌な予感がしてイリアの方を見ると、それはもう綺麗なまでに時が一致したかのように頷いていた。

 

「ユフィリア様、お察しの通りでございます。姫様は魔物の素材、または魔石を求めてすぐに王城から消える悪癖持ち──王宮内で放浪王子と揶揄されているマドラーシュ様のそれを遥かに上回ることでしょう」

「待ったイリア!私は一応監査の仕事とかしてるんだからね!?あっちは多分仕事してない放浪!ほら、私の方が全然マシだよ!」

「外に出るならせめて仕事をしろと送り出されたのでしたね、今でも覚えておりますよ?──対するマドラーシュ様は偉志ノ大陸との交易の本格化の為に交易路の開拓、それに伴う魔物の間引きや商隊護衛の人材確保などを早くから成し得ています。総合的にはむしろ姫様より労働量は上回っているのではないかと……むしろ、あちらは多少遊びを混ぜたとしてもお釣りが来る範疇でしょう」

「そうだったー!おのれ陰の功労者系な末弟めー!」

 

イリア、貴女は一体どちらの味方なのですか……。

それにしても、王女自ら魔物狩りだなんて一体何をしているのですか。

マッド様にも同じことが言えそうなものですが、彼の場合は騎士団に混ざってのことだからまだ許容範囲内だ。

 

「しょうがないよ、魔石も立派な精霊石だし何より調べる価値があったもの」

「魔物が所有している魔石が精霊石の一種?」

「魔物が精霊を食べて、体内で結晶化。その結果種族固有の力を高めたその魔物固有の精霊石ってこと。そして、その魔石の成果は……これだよ」

 

ってアニス様何をいきなり脱ぎだしているのですか!?

女性しかいないけど、今度は何を見せようと言うのですか!

だから今の私にそんな趣味はありませんと叫ぼうとしたが……どうやら本当にその成果とやらを見せるつもりのだけですね。

……って、成果を見せるだけで肌を晒すって普通に考えておかしくないですか?

上半身だけ裸になったアニス様は、背中が見えるような体勢になって……私は驚愕した。

 

「刺青……!?どうしてそのようなものが背中に!?」

「魔石を磨り潰して塗料として塗り込んで体に刻んだの。体に馴染ませることで魔石の力を取り込むためにね。もちろん誰にも真似させられないことだけど……」

「当たり前です!というか自分の体をなんだと思っているんですか!」

 

確かにここまで聞いてきた原理の上では、この魔石を基にした刻印に魔力を通せば恩恵は受けられるだろう。

魔石は精霊石の一種、それはすなわち魔力を流し込みさえすれば機能は出来るということ。

ですが、これは明らかに成果に対して割にあっていません!

少なくとも、自分の身体を疵物にしてまですることではないでしょう。

ここで初めて、アニス様の魔法への憧れが異常なものに見えてきました……。

ああもう、完全にこの姉あってのあの弟ですね……!

マッド様はここまで魔法に執着を持っていなくて、本当に良かった!

後、アルガルド様がまともなことがせめてもの救いと言える。

むしろこんな姉と、やりたい放題な弟に挟まれて不憫な気もしますが。

 

「ちなみにこの刻印は元の魔物の筋力や特性を得ることが出来るよ。いいものを使ってるからね!」

「更に嫌な予感の上乗せになってしまったのですが、一体何を素材に使ったのですか?」

 

この質問をしたらアニス様は盛大に目を逸らしました。

アニス様が言い淀むほどの魔物って……何を狩ったのですか?

少なくとも並の存在ではないことは分かりますが……。

ここは意地でも口を割らせないといけない気がします。

 

「えーっと、そこはノーコメントで「ドラゴンの魔石です、ユフィリア様」ちょっとイリア告げ口しないでー!」

 

……てっきり駆け引きが始まるかと思いきや、イリアがあっさり暴露してくれましたね。

ところで、ドラゴンってあのドラゴンですよね?

災害級で、その上この王国に渡ってくることが最近多くなっているというあれですよね?

その悉くがとある冒険者に鼻歌混じりで狩られているという、それこそとんでもない与太話も聞いたこともありますが……。

 

「そもそもドラゴンの魔石って国宝級じゃないですか。本当に何をしでかしてるのですか貴女は……」

「あまりに欲しくて、国の討伐隊に取られまいと命がけで狩ってきました!だからそんな冷たいジト目で私を見ないで!私そういう風には目覚めないからね!?」

「事が事だけに公にはされていませんが……流石のユフィリア様でもそうなるということは、頭痛のタネにして何も問題は無いということですね」

 

どれだけ素材への欲望に忠実なのですか、この王女殿下は……。

イリアが当時のことを思い出してしまったのだろうか。また頭を抑えていますね……。

陛下も含め、本当に二人の気苦労も忍ばれるというものです。

マッド様、貴方はこれからもちゃんと陛下と王妃を労わってくださいね……?

……侍女については、恐らくそんなマッド様を見て『ああ尊い』なんて意味不明なことを笑顔で言っている光景しか浮かびませんが。

 

「待ったユフィ、冒険者の中にはもっと凄いのいるからね!?ある時は鼻歌まじりで、ある時は遊具扱いでドラゴンを狩る『無慈悲な竜殺し』ってのが実際にいるから!確か名前は……そう、ケルビン!」

「惜しいですね、ケルビムです。『無慈悲な七つ夜』『無慈悲な主役』とも呼ばれている最上級ランクの冒険者ですね。姫様のドラゴン狩りが霞むほどの実績は数知れず、それでいて歳も姫様とそう変わらない現代における英雄と噂される人の身で人の限界を超えようとしている存在ですね」

「え、ドラゴンをひたすら狩る冒険者は噂がひたすら大きくなった与太話ではなかったのですか……?」

「ユフィ、残念ながらこれも現実だよ。この間聞いたグランナイツもそうだったでしょ?思ってる以上に魔境なのよ、この国も、世界もね」

 

……更に魔境にしようとしている方が何を言っているのでしょうか。

それにしても、本当に人間なんですかそのケルビムという方は。

そもそも、3つもある二つ名のすべてに『無慈悲』とついているなんて……一体どういう意図なのでしょう。

明らかに物騒な言葉選びではあるが……逆に評価がとんでもなく高いということなのか。

グランナイツといい、この王国はいつからそんな人外魔境になってしまったのでしょう。

……その流れを更に加速させんとばかりなのが、目の前の第一王女なのですけども。

アニス様もやってることが人間を止めるような勢いですからね……。

ドラゴンの魔石を己に刻むなんて、何を思ったらそんなとんでも行為に走ることが出来るのか。

もしかして、マッド様もグランナイツの後を追うようにそんな領域に足を踏み入れようと……?

 

(マッド様の場合は然もありなん……と思うところもありますけどね)

 

むしろ、やりたい放題を極めようとする姿が羨ましくも思う。

胸の内はまだ知るところではないが、少なくともその行動は隠されていてなお輝かしいものなのは言うに及ばず。

あの方のことだから、きっと『気に入らなかったからついついやってしまった』と捻くれたことを返すのでしょうけど。

それに引き換え、今の私はどうなのか。

裏で色々とやりたい放題してきたマッド様の目には、今の私はどう映るのでしょうか。

彼の姿を思い浮かべる度に、そのようなことを一緒に考えてしまう。

一体この感情は何なのか、そしてどこから湧いてくるのか……。

今はまるで霧を掴むような感覚でしかなく、まるで何も分からなかった。

 





魔法が使えない、その根本原因までの到達過程は長女と次男はほぼ同じく。
そこから『魔法が使いたい』から精霊石などの方向に行ったアニスフィア。
対して、『過度な精霊依存が腹立つ』から偉志ノ大陸の技術や文化に目を向け、その他諸々も含めた上で自己流昇華させたマドラーシュ。
色々と対照的ですが、これもまた色々狙っていたところです。
ちなみにweb版準拠なので、姉上様はこの時点でドラゴン刻印済みです。
ここについては、双方の原作の流れを汲みたいという無茶の為だったり。

それにしてもユフィリアさん、完全に変な兆候が出ていて色々あべこべなことに。
書籍2巻辺りの流れがここで既に出ている、という感じですかね。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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