転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけでマドラーシュ及びグランサガ2章サイド。
本来なら月光の森やらハーピーの巣やら行くんですけどキンクリで。
エアーシップはここで本来初登場ですが、1章で既に出てきているので……。


41. 神殿探索のお約束

 

「くしゅん!……何でこんなにクシャミ出るんだ?」

 

風邪ひいてるような兆候はねえし、別に寒くもない。

今俺たちがいるカトゥラザは、やたら水属性の魔物が多いから湿気だけはそこそこってところだが……。

 

「お前の場合、自覚無くても疲労が蓄積してるって可能性もあんだろ。この任務終わったら少しは休んどけ」

「ただでさえ裏では激闘の日々、挙句表でも王位に関わる可能性すらある陰謀も調査しているわけですからね。更に顕魂術の研究まで並行したら、それこそ寝る間も無いでしょう」

 

あー、そっちの方が有り得そうか?

自覚できないくらいになったらマジでヤバいから、むしろ今出ただけヨシ!とするべきかもしれんし。

ただ、連中が裏で絡んでいる可能性を考えたら、どうにも勝手に身体が動いてしまうんだよ。

我ながら面倒な部分だとは思うが、こればかりは譲れない。

……クリスティーナ姉さんにだけは密告してくれるなよ?

 

「単に噂されてるだけじゃない?ユフィリア様とかアニスフィア様辺り、アンタがいないから大いにあり得そうよ」

 

……おい、このスイーツ脳狙撃手め。

カルトとウィンはあえて口に出さないでいてくれたことを、何でわざわざ言っちゃうのかね。

実際他人事なんだろうが面白がってんじゃねえ。

ぶっちゃけ、その説の方がよっぽど有り得るから怖いんだよ。

 

「そもそもここに来ているのが二人の追及から逃げるためだからね……」

「悪いことしてるわけじゃないんだし、堂々としてればいいじゃん。何でマッドってユフィリア様のことになるとそんなに面倒になっちゃうわけさ」

 

そりゃあ俺だって堂々と動いてやりてえよ!

だがもしそんなことしてみた場合のことを考えてもみろよ?

十中八九姉上は首を突っ込んでくるし、そうなりゃ余計に事態が拗れる。

あの人はただでさえ余計に敵を作ってることもあるから、正直今の顔ぶれでフォローしきるのは不可能だっての。

そして、何で対ユフィリア限定でそんな謎な評価を貰ってるんだ?

こっちについては、むしろあえて距離を取ってるだけだってのに。

 

「マッドって、実はキュイやセリアード以外の女子って苦手だったりするの?」

「別に苦手って思ったことはねえがな。俺自身、年上との付き合いの方が気楽に思う偏りっぷりだからそう見えるんだろ」

 

ガキの頃はとにかく強くなる、知識溜め込む、そして魔法による精霊依存脱却の方法を考えることで頭いっぱいだったからな。

年相応に生きてたら絶対に時間が足りない。

とんでもなく先を行くグランナイツに追いつくことが出来ない。

その為ならば、鬼でも悪魔でも……常人では至れない地平を愚直に目指そうってな。

まあ、我ながら可愛い気がまるでねえクソガキだな。

そもそもが、平穏と言う言葉を知ろうともしてねえわけなんだから。

だから同年代と遊ぶ機会が極めて少なくても何とも思わなかったんだろうな。

気が置けない、深い繋がりと言える友人が少数いれば俺はそれでいい。

今更能動的に増やそうとも思わないというか、下手に巻き込む人数は増やしたくねえからな。

 

「マドラーシュ王子がそのようなことで悩む日が来るとはな……さて、お喋りは中断としよう。1つ目の月光魔石が見えてきたぞ」

「うわ、カエルだ。しかも結構な数いるし……」

「湿っぽい空気には合ってんだろうが、こんだけいるといい気はしないな」

 

グリフォンを呼び出すには、このカトゥラザ遺跡にある月光魔石が3つ必要らしい。

そしてその月光魔石を機能させるためには、残り2体の神獣……フォックスリンクイーンとハーピークイーンに認められてその気を分けてもらう必要があった。

ベル教授と合流した後、渓谷で祀られる2体の神獣と謁見して無事に気を授けて貰って現在に至るというわけさ。

認められた証として気を宿した珠は、現在俺の手元にある。

ちなみに、その2体の神獣はどちらもなかなか意味深な言葉を残してくれたっけな。

フォックスリンクイーンはセリアードから懐かしい気を、俺からは奇妙な気を感じたとか。

セリアードはまだ分かるが……何故に俺からも?

まあそのお陰でベル教授の強引な手法には目を瞑ってもらえたからそこはいいんだが、何か引っかかる。

ハーピークイーンの方も最初は巣への侵入を咎められるというよろしくなスタートだった。

が、カルトの姿を見たらその怒気をいきなり納めてくれたという怒涛の展開ときた。

その後、これまたあっさりと気を託してくれたんだよな。

カルトを誰かの面影に重ねたんだろうが……まあ、思い当たる節なんて一人しかいないだろう。

分かってるのは、カルトの事情を一定以上知っている俺とウィンだけだろうが。

ああ、後セリアードも傷の治療でハーピークイーンに触れたから記憶が流れ込んで知った可能性はあるか。

まあセリアードなら無闇に口外はせんだろうから、大丈夫だろうけど。

あのひねくれシャープな口調とその裏にもいい加減慣れてきてるだろうし。

そういうわけで、このカトゥラザで月光魔石を3個入手したら今回の任務の前提条件がようやく片付くというわけだ。

日も傾いてきてるし、手早く片付けて初日を気持ちよく終えたいものだな。

……と言ってる間に、大量のカエルはウィン、カルト、ナマリエの3人が各々の手で片付けてしまっていた。

はええよ年長組。

 

「セリアード、今回もお手柄ね。シールドってあんな使い方もあるのねー……吃驚しちゃったわ」

「カルトさん、マッド様、セラさんの3人で一緒に考えた顕魂術なんです。本番でも上手く行ってよかった……」

「へえー、カルトも面倒見いいじゃない。もしかして、セリアードみたいなのが好みとか?」

「たまたま気が乗ったから付き合ってやっただけだ。そういう話はラスか最年少第二王子にしておけ」

 

え、アレもう実戦投入してるのかよ。

セリアードめ、マジで成長はええな……これなら、騎士団入りが遅いという点もカバーできそうだ。

まだまだ懸念が無いわけではないが、それでも将来はかなり明るいと言えよう。

 

「神殿を守る魔物をこうもあっさりと倒すか。マドラーシュ王子、物は相談だが……」

「そこのバカ王子の近衛やるだけでも振り回されるってのに、こんな危険スレスレの研究においての護衛なんて毎回引き受けてられっか」

「まあ教授、この顔ぶれの貸し出しは俺に要相談ってことでよろしく」

「そこは断固拒否をしてちょうだい、私だって面倒だもの。──そしてキュイ、それは大事なものなんだからちょろまかすのはダメよ」

「えー、こういうのって絶対高く売れるのにー……」

 

こっそりとキュイが月光魔石を勝手に取ろうとしていた。

ったく、油断も隙もあったもんじゃねえなこの守銭奴猫め……。

こんな代物が質に出されたら洒落にならねえっての。

姉上みたいな人間ならまだしも、その辺のバカ貴族が手に入れでもしたらどうなるか分かったもんじゃねえし。

即座に俺は顕魂術で鞭を作り、素早く月光魔石を回収する。

攻撃にはちょいと力不足なただの鞭だが、こういう場面ではしれっと役に立ったりするもんだ。

 

「あーっ!マッド、そういう横取りはズルい!」

「頼むから今は我慢してくれっての。そんなにお宝欲しけりゃ、暇なときプライベートで探すの付き合ってやるからさ」

「そこでそうやって甘やかすからいつまでも直らないんじゃないかな……」

 

え、これって甘やかしてる内に入るのか?

下手に問題起こされるくらいなら事前にガス抜きしてやるべきと思っての誘いだったんだが。

割とレオン先生が勝利を象徴する精霊と元太陽神にやってるのを参考にしてるんだがなあ……まあいいか。

さて、残る月光魔石は2つだ。

既に俺の手にある2つの珠が方角を指し示しているので、この分ならマジでサクサク事が済みそうだ。

遺跡自体の構造はそこまで複雑ではないし、この手の建造物では珍しく仕掛けも無い。

俺たちの歩みを食い止めるのは魔物たちだけで、しかも先ほどの通りそこまで強くはない。

とはいえ、ただ殲滅して進むだけではあまりに味気が無くてつまらねえよなあ……。

──よし、ここはふと思いついたことを試させてもらおう。

相手が弱いというのは、新たな顕魂術の性能テストにはうってつけって意味でもあるからな。

丁度今回は苦手とする相手ではないから、早速実戦でデータを取ることとするか。

 

「前衛のラスとウィンにはうってつけのはずだ。そこにカエルがいるからちょいと試してきてくれよ」

「え、こんな大事な場面で新しい術を試すって大丈夫なの……?」

 

大事って言っても、退屈だからしゃあねえだろロム助。

念のためってことでこの魔石を持ってきておいて良かったな。

イメージというのは本当にいつ降って来るか分かったものじゃない。

しかも今回のこの魔石は、どう使ってやろうかとずっと考えていたものだ。

 

「途中でイメージが沸いて、そこからテストというのもある意味らしいけどね。ウィンと一緒にちょっと行ってくるから、みんなはここで待ってて」

「それもこの前手に入れたはいいけどどうにも持て余していたウガルーの魔石をわざわざ持って来てる辺り、顕魂術については本当に頭から離す気無いのね」

 

大した荷物でもねえし、実戦で閃けばいいなって思って持って来て何が悪いってんだ。

ナマリエも口にしていたが、俺が持って来たのはウガルーの魔石だ。

ラス達がジャイアントキリングをかましたことは記憶に新しいが、元々はあの森林一帯を牛耳る大物だったわけで。

当然その魔石に秘められる力はなかなかなものだ。

ただ、どうにもそれがしっくりくる形に出来ていなかった。

イメージそのものは行けるんだが、どうにもその過程が描ききれない。

何せウガルーと言えば、方位と強固さが両立された盾だからな。

防御?何それ美味しいの?な俺にとっては相性が悪いのは必然だ。

だが、これだけの魔石を工房の肥やしにするには惜しい……そこで道中でこう思った、というか思い直した。

──別に俺のイメージが基盤である必要ないのでは?ってな感じで。

早い話が、いっそタンク役をベースにしてそこから何か拾えるものがあればいいんじゃね?と思い至った。

だから、今回の臨時テスターとしてラスとウィンに白羽の矢が立ったわけだ。

 

「確かに、守備力が上がったような感覚はありましたね」

「火属性にこそなったけど、俺もその感覚はちゃんとあったよ。ただ、この相手だとどれだけ上がったかは流石に分かりづらいかな」

「いや、今はその感覚があれば十分さ。具体的な防御力は締めのグリフォンで試せばいいからな」

 

そうこうしている内に、ラスとウィンが露払いを済ませつつ戻ってきたな。

この手の能力向上系は、まず効力を実感してこそだ。

今この場で本人感覚で向上を感じ取れたなら、徐々に段階を引き上げることも出来るし。

この分なら、タンク役の自前補助としては十分に使えるはずだ。

グリフォンがよほどヤバい相手でなければ、それなりに通用すると思っていい。

まあ、そうでない場合の対策も裏で練っておかないとだけどな。

テスターに対しての手厚いかつ手広い対応は開発者としては当然の義務ってね。

……姉上も助手となったユフィリアに対してちゃんとそうしてくれるといいんだが。

 

「魔石にはそのようなアプローチがあるのか……。思いついたら試せる時に試す、その精神はちゃんと受け継がれて何よりだよ」

「マッドのいきなりの無茶振りっておじいちゃんの受け売りだったんだ。何か納得しちゃったよ」

「おいコラ、顕魂術においてはそんなに無茶振りした覚えねえんだが?ああ、後2個目も渡さねえぞ」

「キュイちゃん、流石にそろそろ諦めた方が……」

 

これで2個目の月光魔石もあっさり回収完了。

またまたカエルだらけで、キュイやナマリエはめっちゃ嫌そうにしてたな。

やっぱこの手の爬虫類は嫌われる運命にあるのかねえ、哀れなもんだ。

俺は別に嫌いじゃねえけどな、カエル。

悪魔辞典で見たことあるようなのは勘弁願うが……あれは臭そうだし。

もし二足歩行じゃなかったら食肉用として冷凍保存安定ってくらいには……あれ、そういう意味じゃねえか。

 

「止めてちょうだい。以前カエルの蒸し焼きが出てきたけど、アンタとセリアード、ウィンだけで食べきってたのもう忘れたのかしら?」

「私は美味しいと思ったのですが……おかしいのでしょうか」

「ドラゴン肉ならいくらでも食べられるけどカエルはちょっと……」

「こらお前ら、『栄養はゲテモノ肉でも変わりません』って格言を知らんのか!むしろセリアードの方が加点だっての」

 

もうちょいこの格言は広まってほしいものなんだがなあ。

ちなみに、セリアードの食事情については見かけによらずの一言だな。

特段好き嫌いせず、食べられるのならば大体のものを食す。

それでいてかなりの量を食べるなかなかの大食い娘と来たものだ。

箱入り娘な容姿だからこそそのギャップも凄まじいが、俺としてはかなり面白いと思ってるくらいさ。

え、逆に作る方はどうなのかって?

それはまだ誰も見たことねえんだが……そっちどうにもは嫌な予感がするんだよな……。

厨房に立たせざるを得ない時は、絶対に俺かウィンがいる時にしないといけない予感がする。

──さて、そうこうしている内にもう最後の月光魔石が見えてきたな。

 

「最後は俺が盛大に締めさせてもらうかね」

「マドラーシュ劇場の開始かな?出来る限りスマートにお願いするよ」

 

うっせえ、言われんでも神殿壊すなんてバカは慎むっての。

魔力感知から罠の類は特になし、ご要望通りスマートにに終わらせてやる。

そうと決めるや否や、千紫万紅の抜刀と共に加速して先制攻撃の態勢に入っていく。

最後の守護者だからか、防御面的な意味で歯ごたえのある連中が雁首揃えてやがるな。

主にいるのは、四角い身体を丸くしたゴーレムとして定評があるパパラッシーだな。

その内の1体をあえてあまり得意としていない土の魔力を込めて一刀両断し、一気に集団の真ん中に潜り込ませてもらった。

まさかの行動に虚を突かれたパパラッシー達は、その見た目に似合わず一瞬戸惑いの色を見せる。

その一瞬の隙を突くように、俺は元の位置に戻る様にパパラッシーを1体1体切り伏せていく。

パパラッシーの属性は水と風が均等に振り分けられているので、斬る瞬間により効力がある土と火それぞれの魔力を乗せていく。

斬撃への魔力付与っていうのは、単純が故の究め甲斐というものがある。

特に千紫万紅の場合、刀である都合上接近戦の駆け引きの熟練度が顕著に出やすいからな。

どの属性の魔力を込めるか、そしてそのタイミングをコンマ刻みで使い分け出来るようにする。

地味だからこそ、こういう些細な戦いでも実践あるのみってわけよ。

──現状全てのパパラッシーを一刀両断できている辺り、問題はないようだな。

 

「お前らを食すほど雑食やってねえし、素材も乏しいから遠慮なくバラバラにさせてもらおうか」

 

ここいらでちょいとリズムを変えるとしようか。

もう片割れの愛剣セイリオスを空いた左手で握る。

そこからは一剣一刀の二刀流でパパラッシー達をひたすらに捌いていく。

千紫万紅の方は先ほどまでと同じく、そしてセイリオスには常時光属性の魔力を込めるように分割集中。

ぱっと見は全属性適性ならではの華やかな光景だが、当然分からないヤツには一生分からない地味な技術だ。

さながらピアノの演奏みたいなもんか……加速にも魔力を分散する辺りも少し似てるし。

当然手数が倍になったので、パパラッシーの群体解体ショーはそこまで時間はかかることではなかった。

──それにしても、ウガルーの魔石からイメージ抽出を色々試行錯誤したのは決して無駄じゃなかったな。

全属性が使える俺だが、その中でも優劣ってのがある。

闇、火、風、光、氷までは特に問題は感じねえし、水も居合で込められるくらいには扱える。

土だけはどうにも苦手だったんだが……武器に込めるのも苦にならない程度にはなれて良かったぜ。

これで土属性を唯一メインで担うウィンの負担もある程度は減らせるかね。

 

「マッド、上からも来てる!」

 

観客側からの警告が聞こえてくるが、残念ながらそれでは笑いは取れないぜ?

そこは『上から来るぞ、気をつけろ!』、だろうがよ!

声ももう少し甲高くしねえとないけねえなあ……って、そこまで期待するのは無粋か。

無論上から来るであろう気配は事前に察しているし、対策は既にイメージストックしてある。

俺は上を向くことなく指を鳴らし、その音をトリガーとしてさらなる攻め手を展開していく。

 

「ルパじゃあ食えねえわ。大変申し訳ねえが、廃棄処分ってことで」

 

上から来ていたのは小型ゴーレムと称されるルパの群れだ。

そして俺が放ったのは、深海色の魔力剣の雨と呼ぶべきだろうか。

偉志ノ大陸にて意志を持つとある妖刀からイメージを頂き、それを基にオルタと二人で組み上げた顕魂術だ。

霊廟に入る前にも使ったこの剣の雨だが、この雨の下にいると精神的な影縫い効果……呪詛みたいなものの影響を受けることとなる。

早い話、暫くの間は体感時間がスロー状態にになるってことだ。

相手の格次第ではその時間は短くなったり、そもそも制約を受けないって可能性も十分あるがね。

そして、それはオルタが使った場合の話だ。

目の前にいるルパたちは、その場に完全に縫い付けられるように動かなくなっているのだからその違いはわかりやすいか?

俺がこの顕魂術を使うと、属性は闇になった上で効果がスローどころかその場に束縛してしまう。

その代わり、効果が一瞬だから使いどころにはより注意が必要だけどな。

さて、束縛状態を確認するや否や空中への足場を作って高度を調整する。

いい感じの高さを確保すれば、後はセイリオスと千紫万紅で連続で斬撃を放つだけだ。

魔力により可視化されたX字の斬撃が、奇襲に失敗したルパ達にきっちりと罰を与えてやった。

 

「主演は些細な着地も疎かにしないものだ」

 

まあ、無駄に回転して仰々しくするだけなんだけどな。

最後に納刀は余韻を残してゆっくりと。

特に千紫万紅は涼やかな音を出すのも忘れずに、だ。

このパチンッがなかなか癖になるんだよなー、このために居合覚えたようなところもあるし。

居合の師匠であるカイトに言ったら、静かに苦笑いされたけどな!

 

「……相変わらず、見てるこっちが恥ずかしくなってくるな」

「マッド様がやるからこそ映える、とも言えますけど……。私にはとてもじゃないですが、無理です。恥ずかしくて……」

「あれに付き合えるのはあのぶっ飛び侍女だけよ、私たちまでやる必要はないわ」

「ウチはむしろ一緒にやりたい!どっかーん!ってやればもっと映えると思うよ!」

 

キュイは演出というものをよく分かってるじゃねえか。

それでこそ我が悪友にして相棒だ、今度コラボして盛大にやってみるか?

ああ、セリアードは無理してやらんでいい。

問題児が増えちまったら、それこそデイジー師匠辺りの胃が穴だらけになっちまう。

……はっちゃけるセリアードもそれはそれで見てみたい気もするがね。

セラが耳にした日には何を仕込むかわかったもんじゃねえから、心の奥底に永久封印しておこう。

さて、これで最後の月光魔石も回収完了だ。

 

「後はグリフォンを呼び出して調査するだけだな。皆ご苦労だった」

「この様子だと、一旦拠点に戻って態勢を立て直してからですね……ん?何か音がしてないか?」

「それに、何だか地面が揺れてるような感じがするわね……」

 

確かに揺れてるな……って待て。

──これ、もしかしなくてもお約束のパターンでは?

遺跡内に殆ど仕掛けが無かったからって油断してたな……そういう盗掘対策かよ。

クソ、月光魔石置いた輩は随分いい性格してやがんな。

安心しきる時ってのをよく分かってやがるし、その為に神殿の魔物をそれなりレベルで抑えたってワケかい。

思わず参考にしたくなるが、今は脇に置いておかねえとだ。

 

「総員速攻脱出準備ー!多分月光魔石取ったらこの神殿そのものが崩壊するっていう創作あるあるな仕掛けだ!」

「ええー!?そんなお約束みたいな仕掛け、何でやってるのさー!」

 

気持ちは分かるがロム助、お前が一番危ねえんだからさっさと逃げろって!

ほんのちょっとした欠片ぶつかっただけで潰れかねないんだ!

既に天井近くで崩れかけてる部分もあるし、とっとと行かねえと流石にヤバい──

 

「……ん?なんだこの気配。誰っていうか、何だ?」

 

人とも魔物とも取れない、何とも言えない気配を感じて思わず周囲を見回してしまう。

巧妙に姿を隠しているのか、はたまた気のせいか何もいなかったが……。

まあいい、とりあえず今は脱出だ!

ったく、脱出するまでが遠足ってよく言ったものだ。

ユフィリアに話すネタがまた増えたって意味では感謝してやってもいいがね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アクション映画よろしくと言わんばかりに脱出劇は唐突に始まった。

いくら顕魂術を扱える稀有な面々とはいえ、この規模の崩落に対しては逃げを打つ以外に最善はない。

 

「殿ってのも面倒だな!とてもじゃねえが手が足りねえっての!」

 

一行に降りかかる明らかに危険な瓦礫を、的確に小威力の顕魂術で排除していく。

最も手数に優れ、かつ視野が広いマドラーシュだからこそ出来る殿としての役割だ。

しかし、それでも崩壊が進むと降ってくる瓦礫が増え、手が足りなくなるのもまた必然。

よって、自分の手で瓦礫を排除できる手段を持つ5人への注意はあえて最小限にする。

代わりにベル教授とセリアードの進路をより確実に確保する。

しかし、崩壊を助長させるような火力の顕魂術が縛られている制約は思った以上に大きいようだ。

その状況では、圧倒的展開能力を持つマドラーシュでも瓦礫潰しは完遂は不可能に近い。

元々このような状況には慣れているのか、ベル教授の方は見た目から想像できない健脚でラス達と並走しているのが幸いだろうか。

そして、もう一人の要庇護対象であるセリアードは徐々に遅れてしまっている。

確かにマッドとセラにより顕魂術の基礎は叩き込まれているが、現在はまだそれだけでしかない。

要するに、彼女の身体能力については殆ど手つかずの状態ということだ。

素の運動神経が悪いわけでは決してないが、実戦での叩き上げがあるラス達と比較すると流石にお粗末と言わざるを得ない。

彼女の遅れは、殿のマッドだけでなくラスも察知したようだが、如何せん距離がある。

 

「セリアード!マッド、俺もそっちに……!?」

「くっそ、悪いマズッた……!?」

 

せめて自分の身を以て庇おうと、マドラーシュが足に魔力を注ぎ込もうとしたその時。

明らかに落下する瓦礫に巻き込まれる位置にいたはずのセリアードの姿がその場から消えていた。

何事かと全員は周囲を見回すと、セリアードを瓦礫から守る様に抱える何者かの姿がそこにあった。

 

「お前がつけていたのか!セリアードから離れろ!」

「おい待てラス、早まるんじゃねえ!俺も心当たりがあるが、とりあえずもう少し状況を見ろ!」

「あれだけじゃ敵かどうかなんて分からないでしょう、ちょっと落ち着きなさい!」

 

唐突に表れた謎の男にラスは斬りかからんとするが、マドラーシュとナマリエが制する。

ラスがここまで過剰に反応するのは、神殿に入ったあたりから視線を感じるとセリアードから聞いていたからだ。

そもそもセリアードは追われていた身であることを考慮すれば、この反応も無理はないと言えなくはないだろう。

対するマドラーシュとナマリエはセリアードを助けたという事実から敵かどうかは断定しなかった。

特にマドラーシュの方は、先ほど感じた気配の主であることとラスの証言、そして目の前で起こっていることを統合した上での判断だった。

 

「……確かに、敵だった場合はあの俊敏さでセリアードをそのまま攫うことも出来るはずだ」

「でも、セリアードがずっと視線を感じていたって……きっと、ここにいる間ずっと見張っていたんだ。もしあの時のデスナイトの仲間だったりしたら……!」

「待って、ラス!この人は……その、悪い人じゃないと思うの」

 

ラスが改めて剣を構えるが、セリアードは謎の男を擁護しながら庇っていた。

突然の行動に驚く一行だが、マドラーシュのみその意図の即座に理解する。

 

(なるほど、記憶が流れ込んできたか。そうなるとアイツはセリアードの知り合い……ん?)

 

セリアードの背後から、謎の男はマドラーシュの方に視線を向けていた。

彼から放たれる視線は、一見すれば普通の人間のそれよりも無機質そのもの。

しかし、魂や精神などの霊的なものを鋭敏に感じ取れるマドラーシュはそう断じなかった。

無表情そのもののはずが、そこには確かな『熱』を感じられたから。

──そこでマドラーシュが思い出す。

レオン達と共にとある地下施設を潰した時のことを。

救出した被験者の中に、このような無機質な気配が混ざっている者がいた。

その地下施設で行われていたのは……。

 

(この気配は古代文明の人体実験場を見た時と同じ……あー……そうか)

 

セリアードが読み取ったであろう記憶、そして目の前で庇うという光景もパズルのピースとして加える。

──一瞬と言える時間だったが、複雑怪奇に見えたそれらの要素は過不足なく繋げてみせた。

誰も気づいていないが、マドラーシュだけは目の前の男を見る目を変えている。

疑念から信用……まさに対極と言える変化だ。

 

(俺がやるべきことは1つ……そういうことだろ?)

 

謎の男の意図を完全に理解した今、それを汲むべきと判断した。

話したいこともいくらかあるが、今はその時ではないしその時間も無い。

マドラーシュが小さく頷くと、謎の男もそれに呼応したように見えた。

 

「とりあえず出るぞ!全員色々気になるだろうが、そんなん命あってこそだ!生き埋めになりたいなら止めねえけどな!」

 

その号令と共に、全員の足は再び出口に向いた。

セリアードは後ろ髪を引かれるような雰囲気だったが、謎の男も瓦礫から逃れるようにその場から素早く離脱している。

マドラーシュだけでなく、カルトとナマリエも加わることで確実に逃げ道を確保し、一行は崩れ行くカトゥラザからの脱出に成功した。

 

「皆、ケガは無いかね?」

「ウチは大丈夫だよ……。マッドやカルト、頭打ったりとかしてないよね?」

「何でそこで俺とバカ王子限定なんだよ……チビも何ともなさそうだな」

「ロム助もちゃんといるな。全く、誰だよあの神殿の設計者。仕掛けがベタな上に古すぎで説教かましてやりたくなるわ」

「怒るべきところはそこじゃないと思うんだけどなー……」

 

全員がそれぞれの状況を確認するが、誰一人怪我は負っていない。

殿を受け持ったマドラーシュ、途中で瓦礫排除に参加したカルトとナマリエも慣れないことへの疲労以外は特に問題なし。

それとは別に、共通の気がかりが1つあるのだが。

 

「セリアード、神殿の中で感じていた視線はやっぱり……」

「うん、多分あの人だと思う。ただ、見張っていたというよりは……見守っていたって感じだった」

「私はあの人を見て、何だか懐かしい感じがしたかな。記憶は無いんだけどね……」

「そういえば、あの男の記憶が流れ込んできたんだろ?一体どんな感じだったのか話せるか?」

 

マドラーシュ以外の面々にとってはその記憶に映ったものこそ唯一あの男を知る手がかりだ。

ロムが発した懐かしいという言葉につられたのか、セリアードの表情は過去を懐かしむようなものとなっていた。

 

「私の頭を撫でてくれていて……それと隣に他の女の子がいて、私たちを守ってくれていました」

「それなら敵ではなさそうだけど……ただ、知り合いだったら普通は名乗るものじゃない?見守るにしても、後を追うだけというのは違和感があるわね」

「事情があるにしても、口に出さなきゃ分かるわけがねえからな」

 

ナマリエとカルトの言うことも一理ある。話を耳にした全員の見解は一致していた。

唯一ある程度の事情を知るマドラーシュも、少々やり口が回りくどいとは思っている。

とはいえ、そのある程度という段階で外野が下手に口を挟むことでもないと理解している。

 

「俺、酷いことしちゃったな……。完全に勘違いして剣を向けちゃって……」

「ううん、ラスも私のことを守ろうとしてくれただけだから……お互い様だと思う。それに、あの人とはまた会える気がする」

「だな。あの程度でどうにかなるほど柔な奴じゃないだろうし、セリアードを見守っているんだったらいずれまた会うこともあるだろうよ」

 

詳しいことはまた会ったときに聞けばいい。一同はそう結論付けた。

そして、ほぼ全員の緊張の糸は切れた。

何せ、フォックスリンクイーンとハーピークイーンの協力を得て更に月光魔石の獲得までの強行軍だ。

渓谷までの道筋も考慮すれば、以前のウガルー復活の時よりも動き回ったと言っていい。

そして残すは本番と言えるグリフォンのみ。こちらは翌日に回すということでベル教授も快諾していた。

日を跨ぐことは当然マドラーシュ一行は想定していたので、拠点は事前に設置済み。

各員はそれぞれのやり方でひと時の休息を取ることとした。

 

「さーて、見張りついでに面白い魔物はいねえかなっと。臣下共はちゃんと休んでろよー」

「いや、マッドもちゃんと休んでってば。さっきの逃走劇で結構神経使ったんだからさ」

「あの程度でヘロヘロになるほど軟じゃねえっての。むしろ運動不足なくらいさ」

 

唯一、マドラーシュだけはまだまだ元気を余らせているようだが。

この1日でまともな強敵と戦っておらず、ほぼ小規模顕魂術しか使っていないから自然と体力温存に繋がったことが要因か。

むしろハーピーの巣に向かう際の移動の方が労力を割いたくらいだろう。

散々死にかけまくって10年近いこの男のタフネスっぷりは、もはや王族のそれではなかった。

結局、マドラーシュが夜間の見張りをすることは既定事項と言わんばかりにあっさり決まってしまった。

とはいえ、流石に一晩中やらせるわけには行かなかったので最終的にはあまり寝付けないカルトが交代する形になったようだが。

 





この辺りを書くためにグランサガの話を読み返すと懐かしいことこの上ないです。
メカ疑惑人間の彼は、まあそれなりに長い付き合いのキャラになる……んだよね?(おい)

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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