転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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地理方面でだいぶ怪しい辺りですね。
いくら東部が手つかずとはいえ、双子の島と繋ぐってどうなん?とは思う。
ただ下手にカンバス方向に伸ばすのはねえ……。


5.破天荒のとある証明

 

フィルワッハの南部から交易路となる予定の街道は延びている。

そもそも、以前から元々双子の島方向への街道を作るという計画自体はあった。

双子の島は場所こそ田舎ではあるが、避暑地としては最適な場所だ。

王国屈指のリゾート地とも称されている。場所へのアクセスは出来る限り良くしたいと考えるのは普通のことだろう。

しかし、国内の別事情もあって計画の遂行は牛歩そのものだった。

パレッティア王国は現在、西と北の開拓を主にしている。

西はアーレイン帝国との国境線がある都合、国防面で力を入れる必要がある。

北も黒の森の存在が何より大きい。

それに対する東部は、どうしても魔物との闘いが激化しやすいことがリスクとなる。

その分開拓に割かなければならない労力もかなりのもので、明らかに割に合わないと判断されているのだ。

だからこそ、顕魂術を開発したマドラーシュにとっての絶好の遊び場兼テスト会場になるのだが。

黒の森も確かに魔物は多いが、先日の突貫でも示した通りマドラーシュからすれば物足りない相手ばかりだ。

交通の便の改良、東側そのものの開拓の足掛かり、そして顕魂術そのものの鍛錬の3要素を纏めて遂行できる。

今回の遠征は、マドラーシュにとってまさに一石三鳥だった。

 

「あの辺はビッグエイプの根城っぽいからここらで注意書きだな」

「そこまで大きな群れではないからこそ明確なものが必要ね」

 

そんなやる気満々のマドラーシュだが、ビッグエイプの群れの兆候を見つけても突撃する気配はない。

むしろ即座に穏便な策を挙げるその姿に、断片的にマドラーシュの事を聞いていただけのカルリッツの部下たちは大いに驚いていた。

先ほどの誘拐未遂犯への容赦ない制圧っぷりを見たからこそ、その驚きは猶更大きい。

相手をするのが面倒だからというわけでもなく、そこにはマドラーシュなりの理が存在している。

話題に上がっているビッグエイプが、東部を根城にしてる魔物の中でも危険度が高くないことが大きかった。

群れを維持するという珍しい特性を持つ上に、人食いを行わない点で二重の意味で珍しい魔物。

マドラーシュなりの『倒さなくてもいい対象』に当てはめるには十分強固な要素だ。

人によれば甘いとも取れる考え方かもしれない。

偉志ノ大陸にいる姉弟子と師匠兼女神との交流から得た彼なりの調和の精神。

この精神は偉志の大陸そのものの風潮も示している。

初見で偉志ノ大陸の空気にシンパシーを感じ、何度でも訪問したいと思うが故の彼なりのリスペクトがそこにあった。

 

「あの、カルリッツ様……マドラーシュ王子はあんなに理性的な方だったのですか?何というか、聞いていた印象とまるで違うというか……」

「はっはっは!普段のアイツを知っていればこその反応だな。だが、ああいう風に思慮が回るのもマッドの確かな側面の1つだ」

「やりたい放題っぷりでそういうのが隠れちゃってるのが悲しいところなのよね……ほら、言ってる内に」

 

しかし、その慈悲も適応しない相手は当然のようにいる。

相手から明確な殺意を向けてきた場合は、もはや遠慮なしだ。

少し進んだ先でこちらを視認するや否や襲い来る魔物が2種ほど現れたら、その殺気に合わせて飛び出していく。

エキドナシャクガという大型の蝶が2体と、武器を持つ2足歩行のトカゲ型の魔物ドマルガンが4体。

周辺での目撃報告が殆どないことくらいしか、双方の共通点は無い。

 

「いきなり新種じゃないですか!?流石に加勢しないと!」

「やめておけ、そんなことしたら取り分減らされたと機嫌を損ねて余計に面倒なことになるぞ」

「それより、惹かれるようにやってきた見慣れてる連中の方を片付けましょう。こっちはマッドからすれば興味の対象にもならないし、問題ないから」

 

マドラーシュの護衛という体裁で連れられていたとばかり思っていた部下たちは、見事に戸惑いの色を見せていた。

護衛対象が喜々として危険な方に足を踏み入れようとして、それを上司が是としているのだ。

困惑しないのが土台無理な話であろう。

とはいえ、そんなものを抱えたままでは見慣れた魔物相手の戦いと言えど致命的になりかねない。

何とか平常心に近づけ、確実に周囲の数を減らすことに専念する。

 

「槍なんてものを一丁前に持つとはなかなかいい趣味だなトカゲ君。ちゃんと説明書は読んだのか?」

 

騎士たちの内心を知ってか知らずか、マドラーシュはいつも通りに軽口を回す。

正確に受け取ったかは分からないが、咆哮と共に突撃している辺りは怒りくらいは抱いているのだろうか。

構えられた複数の槍を前に、マドラーシュは何故かリーチ外から同様の動作で迎え撃つことを選んでいた。

両手にブロードソードを握り、双方で突きの構えをした上で加速する。

周囲の掃除をしている最中に目を向けた騎士は、その行動に制止の声をあげかける。

リーチが売りの槍持ちを相手に、刀身が長いわけではない片手剣を使い同じ土俵で挑みかかるなど愚の骨頂だ。

──しかし、この時のマドラーシュの表情が年相応なものだと分かればその心配は無用である。

 

「案の定引っかかったな、間抜け!」

 

槍の間合いに入りかけたところでそれは起こった。

いきなり2体のドマルガンが後方に吹っ飛んでいき、それと共にマドラーシュは後退する。

更には後方に控えていたエキドナシャクガも吹っ飛ばずとも体勢を崩していた。

そしてマドラーシュの急な動作に反応しきれず、残る2体のドマルガンの槍は見事に空振りに終わる。

周囲の処理が順調な中、何が起こったのかを正確に把握したのはデイジーとカルリッツだけだ。

 

「またえげつない搦め手を閃いたな……食らってる魔物が可哀想になってくるぞ」

「ラスには真似させたくはないんだけど、参考にはするべきな気もするのよね……どっちが正解なのかしら」

 

マドラーシュが行ったのは、一言で言うなればフェイントである。

極めて分かりづらい初見殺しと共に分かっていても対処がやりづらいというえげつなさがふんだんに含まれたものだが。

ドマルガンの突撃に合わせて加速をして突きを放つ際に、別のイメージも共に構築していた。

至って単純な風属性の魔力を圧縮して放つだけのイメージを。

それを相手の虚を突くに絶好なタイミングで突きの勢いと共に放っただけ。

言葉にすればこの上なく簡単だが、突きの勢いもそのまま風の砲撃に加わっているのでその威力はなかなかのもの。

更に放った勢いを逆噴射として利用することで即座に距離も離したのだ。

風を放ったということで、ドマルガンの陰に隠れたエキドナシャクガの鱗粉も無力化するおまけつきである。

単純な工程で3つの利を生み出し、相手陣営に致命的な風穴を開けるという暴虐的な搦め手だ。

しかもそれを思いついてすぐに実行に移そうとする彼の姉が如く豪胆さを見てしまえば、デイジーとカルリッツが色々通り越して呆れるのも無理はないだろう。

その後は、二刀による連続魔力剣戟を飛ばして攻撃を空ぶったドマルガン2体を吹き飛ばしつつ追撃でどちらも一刀両断の刑に処する。

空中姿勢が修復し終えるや否や、エキドナシャクガは接近したマドラーシュに毒を纏って突進を仕掛ける。

が、蝶の特性からかマドラーシュ基準で見て速度は大したことはない。

毒を浴びないよう大げさ気味に避けるように気を付けるだけで、後はマドラーシュにとっての基本パターンだ。

 

「前は刃として伸ばしたが、今回はちょいと趣向を変えてみるかね」

 

いつもならば火の魔力刃で一刀両断と行くところだが、ここは瞬間的な閃きに従う。

虫は燃やしましょうと言わんばかりに火属性の魔力を刃にするのではなく、鞭のように伸ばして巻き付ける。

流石にセオリーからは逃れられないか、2体のエキドナシャクガは見るも無残な焼死体に変貌した。

 

「にしても盛大に吹っ飛んだなあ。やっぱ土に風はよく利くってか?」

 

残ったドマルガン2体については、戦況整理の為に吹き飛ばされているので距離が遠い。

数こそ減らしたが、後は泥臭い接近戦が必須かと思われるところだが……

しかし、見ればすぐに分かるような致命的なミスを見事にやらかしていた。

……ミスというのも些か理不尽に聞こえるかもしれないが。

 

「持ち物はちゃんと返してやらねえと、騎士の皆様に怒られちまうよな」

 

マドラーシュは放り投げられていた槍を既に2本とも見つけており、片方を当然のように拾っている。

そのまま奪い取るのかと思いきや、意外にも持ち主に返却をしていた。

普通ならば、マドラーシュの律義さが際立つ行動に思えるが……。

 

「名前書いてねえからどっちのか分かんねえな。その血で書いておいてやろうか?」

 

──手渡しではなく、起き上がりかけたところを串刺しにする形でという但し書きは付くが。

これでは律儀ではなく、ただの無慈悲な第二王子だ。

まあ、今更そう言われたとて本人からすればそよ風程度の評でしかない。

もう1体のドマルガンは何とか起き上がり槍を拾いに戻ろうとしていた。

武器が無ければ万に一つの勝ち目がない……そんな思考からだろうか。

 

「おいおい随分な薄情者だな?お友達が草葉の陰で泣いてるぞ」

 

血も涙もないセリフと共に凝縮された闇属性の魔力槍が放たれる。

放たれたのは1本だけだが、ピンポイントに足を撃ち抜いている。

結果、折角立ち直ったというのにドマルガンは再度転倒させられてしまった。

その後、同胞と同じく自前の槍で串刺しにされるのは言うまでもないことだろう。

6対1の戦いは、無慈悲に手早く片付いてしまった。

 

「カルリッツ様……不敬を承知で申すと、その……」

「さっきまでとは打って変わって、あまりに品が無くて行動も滅茶苦茶で無慈悲、か?アレには俺たちも一枚噛んでいるから強くは言えないところだな……」

「シルフィーヌからも王族らしさはいっそ皆無にしてほしいって言われたものねえ……まあ、そもそもの根っこというのもあるんだろうけど」

 

だからこそ教育係にグランナイツを選んだという経緯もある。

そこには、せめて末っ子だけでも普通の母として接したいという親心も多分に含まれているのだろう。

長女と長男に対しては持ち前の不器用さが働いて、王族の母としてしか接することが出来ていないのが悲しいところだが。

 

「蝶々は魔石持ってねえのか……まあ、素材で我慢しておいてやるよ」

 

色々言われている張本人は、少々落胆の表情を見せながらも解体作業を行っている。

その手つきはそこそこに手慣れたもので、流れるように素材になり得る部分が積み上がっていった。

これまた別の意味で王族らしさ皆無な光景で、大半の者はこれまた唖然としている中で、1つの指摘が入った。

 

「ところで、さっきは何を投げ捨てたのかしら?柄みたいな形だけはかろうじて見えたけど」

 

ちなみに、デイジーの視線はマドラーシュの左手に向かっている辺りは確信犯である。

戦闘開始時には両手に握られていたブロードソードは、現在右手にしか握られていなかった。

大体のものがその理由を察する中、マドラーシュは誤魔化すような笑顔を師匠に向ける。

 

「……どうやら俺、またやっちゃったみたいだZE☆」

「子供っぽく言って誤魔化そうとしないでちょうだい。罰として、次のおやつは無しね」

「うわ、辛辣すぎて俺泣きそうなんだけど」

 

王族っぽくはないが、かろうじて子供らしさは残っているマドラーシュであった。

なお、壊したのは1本だけなので一種の進歩を見せている……そう擁護できなくもないか。

そもそも1本でも破損させた時点でアウトなので、その進歩も簡単に霞んでしまうのが現実だが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

交易路というものが1日で開くってことは当然だがあり得ない。

今回は国内でも屈指の魔物群生地域だ。

慎重に慎重を重ねるってことで牛歩になりやすいのは致し方ねえってこと。

まあ、俺とカルリッツ父さん、更にデイジー師匠までいるから段違いの速さだけどな。

ビッグエイプの群れが幅を利かせている場所も多いってのもありがたいし。

……俺以外にとっては、だけどな。

 

「そろそろ大物出てきてくれないかねえ。具体的に言うと、目玉とかデーモンとかワイバーンとかさ」

「今日で終わりそうだからって物騒なこと言うんじゃありません」

「イグノックス達が洞窟の方の露払いや出現魔物の傾向を洗い出してくれて助かったな……」

 

そう、昨日ラインヒルト先生からの伝書鳩でそのことを知ったんだよ。

俺が交易路を拓くであろうことを先読みして、あのまま洞窟の調査と整備までやっちゃったらしい。

まあイグノックス兄さん、クリスティーナ姉さん、エリオ姉さんが揃ってればそれくらいは手早く出来るよなあ。

傍からはチグハグトリオに見えるが、その実かなり息が合ってるんだよね。

特にエリオ姉さんが調査要員として強いから、役割分担もかなりきっちり出来てただろうし。

ただ、やたら張り切って手早く調査を終わらせちゃうのは想定外だったんだよなあ……。

お陰で俺たち側の担当範囲は洞窟の入り口周辺までになってしまった。

 

「手間が減るのは喜ぶべきさ。ただ、ちょっとくらい残しておいてほしかったってのも本音なんだよ……」

「まあ、そこは素直にお兄さんやお姉さんからの善意と愛情として受け取っておきなさい」

 

まあ、良かれと思ってやってくれたわけだからな。

元々あの洞窟は大した魔物はいないって話だったから、負担軽減としては有り難いさ。

ただ、洞窟って舞台設定はなかなか出くわさないんだよ。

そこで経験くらいは積んでおきたかった。

イグノックス兄さんの事だから似たようなところを探してくれてそうだけど。

 

「というわけで、最後の華としてドラゴンくらい来やがれ!」

 

そうじゃなきゃ色々と割に合わねえ、っていうか物足りねえ!

それに、書物でしか見たことないあの空飛ぶトカゲとはそろそろ戦ってみたいからな。

最近思いついた、とあるテスト項目の試金石としては丁度いいし。

 

「おいおい、そればかりは勘弁願うぞ……あーこら、皆怯えるんじゃない。流石にこの辺りでは目撃例は無かったはずだから大丈夫だ」

「カルリッツ、今ので嫌な予感を覚えちゃったんだけど。変に希望を持たせるようなことは控えた方がいいんじゃない?」

「デイジー師匠の仰る通り。それに……別に狩りつくしたわけでもねえってのに、やたら静かすぎねえか?」

 

最終日になるであろう本日だが、実は殆ど魔物と戦っていない。

初日ではよく見かけたビッグエイプの群れも見かけなくなっている。

──そもそも、あまりに魔物の気配が無さすぎなんだよな。

昨日から発見例が多い弱い魔物を殆ど見てねえってのも気がかりだ。

お陰で俺はそれなりに楽しめたが、その内には奇妙な感覚がずっとあった。

 

「この傾向、恐らく……そういう意味では当たりじゃないかね」

「当たりだと?まさか、本当に……!?総員、警戒態勢!」

 

それが聞こえた瞬間、カルリッツ父さんは部下たちに警戒を促していた。

俺とデイジー師匠はその音の発生源をいち早く察知、そちらに視線を向けている。

先ほど響いたのは、この場の大半が聞いたことのない咆哮だ。

俺は本能でその主が何者かを理解した。

 

「カルリッツが見事にお約束の展開を作ったってことね……このメンツでドラゴンは、流石にちょっと骨が折れるかしら?」

「俺のせいなのか!?いや、実際この辺りで発見例は皆無だったはずだぞ!?」

「おいおいフラグの主責め立ててる場合じゃないだろ。もう来てるぜ、奴さんが」

 

既に咆哮の主はその姿を曝け出していた。

見た目まあまあ硬そうな鱗、初日のドマルガンを更に狂暴かつ精巧にした感じの容貌。

そして空の王者と言わんばかりのでっかい翼をこれ見よがしに広げていた。

うん、確かに部屋に引き籠って読書してた時によく見たドラゴンではある。

ただなあ……イマイチ高揚感がないな。

 

「おいおいマッド、求めていた存在を目の当たりにしているのにやる気が無さそうだな。一体どうした?」

「現実ってのはやっぱ悲しいもんだなって思っただけさ。あの黒龍みたいに書かれてた書物が多かったから、少しは期待してたんだが……あの程度じゃあ、ただの空飛ぶトカゲだろ」

 

俺の発言にカルリッツ父さんとデイジー師匠以外、要するに部下の方々たちが色めきだっていた。

何かやれ『災害級ですよ?』とか、『空飛ぶトカゲはバカにし過ぎじゃあ』とか、『慢心してると死ぬぞ』とか……。

いちいち返すのも面倒だから聞き流すとしよう。

そんなことより、とりあえずあちらの先制攻撃は回避しないと悲しいことになるぞ?

 

「総員、デイジーが走る方向に散開しつつ向かえ!ブレスが来るぞ!」

 

いきなりやることがアウトレンジからブレスねえ。

地上にいるヤツはこれだけで落とせる塵芥ですよと言わんばかりか。

その手の超越種特有、驕り全開の思考回路だな。

ああうん、すっげえムカついてきた。

思わずその座から叩き落してやりたくなるくらいにはな。

 

「ちょいとばっかし試してみますかね」

 

ブレスのチャージタイムは随分と長い。

デイジー師匠は事前動作で、俺は魔力の流れで把握して余裕を見て行動出来てるから尚更遅く見える。

しかも一度チャージを始めたら方向を切り替えることも出来ないと見ていい。

俺の新たなイメージを試すには、お釣りが来るほどの好条件だ。

 

「果たして、本当に飛ぶ必要なんてあるのか」

 

──思い出すのは、今は全く会うことが無くなった姉上の言葉だった。

 

『空を飛んでみたい』

 

誰もが一度は描くであろう空想の1つで、まあ随分と年相応の願いだ。

更に姉上は、魔法そのものへも強い憧れを抱いているような節もあったっけ。

例え資質を持っていなかったとしても、その内に秘める炎はむしろ燃え上がるばかりで。

その結果が魔学ってなったのだから、まあ流石姉上って言ったところだろう。

対する俺は……その願いを聞いても至って無味乾燥だった。

同じく魔法が使えない身だからこその諦観も、そこから起こり得る嘲りも特になかった。

同調するように自分もと続いたり、手を取り合う気も全くなかった。

魔法が使えるとか使えないとか……だからどうしたと思ってたからな。

使えないから生物として劣っているなんて、誰が証明したというのか。

少なくとも、俺の敬愛して止まない人たちはその程度の尺度で測れるような存在ではない。

──飛べるとか飛べないとか、そんな空想もどうでもよかったんだろう。

翼が無いことと地を這うしか選択できないことはまるで違う。

そんな全く理も情もまるでない、意味もない理不尽は誰が決めつけやがったのか。

最終的な結果さえ同じなら、それで別にいい。

翼やそれに類するものを持たなくても……いや、そもそも飛ぶ必要すらない。

飛べないのならば、代替手段を用いてしまえばいいだけだ。

それを証明する機会が、ようやく訪れた。

これまではこんなことをするまでもない輩ばっかだったからな。

……そこだけは感謝してやるよ、クソトカゲめ。

 

「マ、マドラーシュ王子殿下が……浮いてる!?」

「あれは貴族や王族でも殆ど誰も出来ない飛行魔法の類なのか!?」

「……やれやれ、それすらもぶっつけ本番でこなすのか」

「やっぱりシルフィーヌの子ねえ……全く、やってくれるじゃない」

 

何も分からない観客の驚く様はやはり心地いい。

盛大に呆れている第二の母と第二の父と言える師匠たちについては見逃しておこう。

そうしている間に、哀れなくらいに鈍間な初撃はあっさりと空振りに終わった。

あの辺は要整備っと……いや、あえて残すのも味があるか?

 

「地上じゃなくてこっちを見ろよ、ノロマが」

 

放つのはいつもの闇属性の槍だが、不意打ち気味に当てるつもりはさらさらない。

ようやく俺が同高度にいると認知してくれたようだな。

なら、ここらで1発かましてやろう。

 

「見ての通りだ。人間という弱小生物の身で、お前と同じ土俵に立ってやったぜ?翼なんて別に必要じゃない──証明完了だ」

 

目の前にいる偽りの王者の眼を見据えると、主役らしく両腕を広げて言ってやった。

メインイベントには少々物足りないところだが、そこは我慢してやるよ。

 




今回の雑魚戦はグランサガからドマルガン、ラストレムナントからエキドナシャクガ。
モスリンでも良かったけど、ラスレムモンスターはやっぱ出したい
そして、8歳でドラゴンと楽しそうに空で応対する第二王子。
見事にトチ狂った図です。
ただこれくらいしないと裏のやりたい放題を再現しづらくてついつい。
そして回想とか会話伝手ばかりでご登場のアニス様。
そもそもこれじゃあグランサガ寄りじゃねって?
……そればかりはマジでごめんなさい。
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