グリフォンとの戦い後半戦、飛行手段が無い癖して空中戦という鬼の所業。
まあ、設置型エアハイクで頑張ってくださいということで……。
こんなんグランサガ原作でもやってない、完全オリジナル展開です。
全く、土壇場でも問題なく成功させる辺り天才ってだけじゃなく肝も据わってて何よりだ。
キュイがここぞとばかりにファイヤームム召喚を成功させたのを無事に見届けることが出来たから、俺は安心してグリフォンの元に向かった。
ラスと分かれることによる役割分担ってのも当然あるが、やっぱ開幕で挑発した俺がグリフォンと相対しなきゃカッコつかねえだろ?
そこは自分のケツは自分で拭く……生きる上での当然のことをするまでさ。
「空でこの私と戦おうとは。人間の驕りもそこまで行き着けばもはや傑作だな」
「神獣様とはいえ、見下ろされてばっかってのは癪に障るんでね。さあ、落ちたら即あぼんな空中サーカスの始まりだ!」
グリフォンの周りにいるのはフリズベルグが4にディアトリマが1。
まずは挨拶代わりにとスティンガーで突っ込んでやる。
先ほどのラスが放ったものを参考に、剣先に込める魔力をより集中させてみる。
イメージというより、少しばかり雷を足すような感じで……!
「咄嗟の猿真似にしてはまずまずってところか」
よーしきっちり突貫能力を上がったな、速度が上がったお陰か?
上手く5体の合間に潜り込むことが出来たし、言うことなしだ。
さっきのラスに比べれば威力は大したことねえが、速度は元々俺に分があるからこれで文句はない。
わざわざ集団に潜り込んだのは、乱戦に誘い込んで前衛5体を叩き潰しやすくするためだ。
相手の数が多いなら、そのアドバンテージを発揮させない状況を作ればいいだけのこと。
多勢に無勢なんてよく言われるが、そんなのやりよう1つでガラリと変わるものってね。
ちなみに、俺が知る中でグランナイツとほぼ同格のカズヨシさんからの教えだ。
「自ら懐に飛び込むとは、飛んで火にいる何とやらだな!」
フリスベルグ4体はその獰猛な嘴で貪りにかかり、ディアトリマは翼で薙ぎ払おうとする。
更にグリフォンはカーテン状の電撃をこちらに向けてきた。
人間1体に随分とやりたい放題するねえ……。
まあ、当たらなきゃ意味ないんだけどな。
「だが全くリズムが合ってねえぞ?音痴どもめ、拍はちゃんと取ってくれよ」
近い方のフリスベルグを千紫万紅の鞘による強打で怯ませ、嘴ごと右手で掴んでやる。
空いた左ではカウンター気味に闇+火の掌底打ち、残り2体を面で捉え吹き飛ばす。
そこから跳躍しては翼の薙ぎ払いを空振らせ、そのままディアトリマの頭を踏みつけてやる。
足蹴にすることで効率よく高度を上げ、手に持つフリスベルグを4体目の同種に向けて投げ飛ばす形できりもみ状態にしてやった。
最後に襲い来る雷カーテンは即座に隙間を見繕って、ディアトリマを再度踏み台にして安全位置に移動するだけでやり過ごせる。
その結果は……なんということでしょう。
本来俺を襲ったはずの雷は手下である5体に当たってしまっているではありませんか……ってな。
あーあ、完全にフレンドリーファイヤーやらかしてるじゃねえか。
「ちょこまかとハエのように飛び回りよって……!」
「数で囲えば圧勝だって?強者ってのはその枠外にいるんだよ!」
そもそもがグリフォン、ディアトリマ、フリズベルグとまるで違う種族の集いだ。
何かかしらか特別な能力で意思疎通でもしてない限りは真っ当に連携など出来るわけがねえ。
そもそもの話、人間でも綺麗な連携など難しいもんだからな。
だからこそ俺たちだってまだまだ甘いところしかないわけで、常に100に近づける努力をしてるってわけよ。
数っていう要素を有利に働かせるにも、それなりの頭とか技能が求められるってことさ。
そんなことも分からずに数の暴力に頼るヤツなぞ、愚者でしかねえよ。
──っと、ここで後ろから二名ほどの魔力を感知した。
既知のパターンの魔力、要するに援軍か。
この闇と風の魔力はカルトとナマリエだな、分かりやすくて助かる。
まあ、ついてくるならこの二人だろうとは思ってたし予想的中だ。
「6対1でやり過ごすの見えたけど、アンタ一人でも普通にやれそうじゃない?」
「俺の頭がオーバーヒートするっての。猫の手でも借りたい状況ってやつさ」
簡単にやってるように見えるが、その即座の判断を顕魂術使って更に周囲の魔力状況確認しながらやってんだ。
オーバーヒートには程遠いが、嫌でもテンション上げなきゃやってられねえってもんさ。
そういう意味では元々間隙を縫うことに長けている二人が援軍なのはかなり有り難い
「このフリズベルグ、だったか?デカくねえ方の鳥は俺らに任せとけ」
「素材になりそうなのはちゃんとストックしておくから、安心してグリフォンともう1体に集中しなさい!」
「──わざわざありがとな、二人とも。グリフォンに比べれば大したことねえが、たまに強風放ってくるのにだけは注意しておけよ!」
短いやり取りの後、早速二人はフリズベルグの注意を引きにかかった。
既にある程度の足場が作られているからか、カルトの機動力は地上のそれと遜色ないものになっている。
状況さえ出来上がれば、その機動力はカルシオンに次いでやばいことになるからな。
その為に足場を作るナマリエの負担が重くなるのが欠点ではあるが、そこは上手いこと立ち回ってくれると信じよう。
って言っている間にメインはカルトに任せて足場を維持しつつ最小限の魔力で援護してるな。
数の上でも同等だし、あれなら問題はなさそうだ。
そうなると、安心して俺はディアトリマとグリフォンとの2対1に集中できるな。
「神獣様とあろうお方が不意打ちか?随分不慣れそうだな!」
グリフォンが電撃を、ディアトリマは暴風を発生させながら氷の槍を放つ。
実はこのワイバーンの亜種、風と氷の二重属性持ちなんだよな。
もし地上で相対してたら、氷柱の地雷を埋め込むなんて器用なことをしていたことだろう。
ああ見えて、本来はなかなかの知略型なはずなんだけどなあ……。
今回はグリフォンの悪い影響を受けてるせいか、若干アホの子成分混じってるのが残念だ。
何せ互いに位置関係考えずにただ挟み撃ちをしてるお陰で、ちょっと位置を調整するだけであっさり同士討ち祭だ。
「その見た目でアホアピールしてギャップ押し付けられてもぜんっぜん微笑ましくねえ。姉上の奇天烈ムーブとかユフィリアの怒った顔の方がよっぽど愛らしいぜ」
上位種が自分からバカやってくれる分にはこちらとしてはありがたみしかねえんだが……愛嬌がまるで無いのが欠点だな。
上位種が上位種たるが故の驕り、そこを突くのが生物上格下の必勝法というか唯一の抜け穴ではある。
やっぱ殺し合いってのは種族的やシチュエーション的ハンデを乗り越えてこそだ。
さて、明らかに怯んでいるのは当然ディアトリマの方だ。
まずはこちらにちょっかいをかけるとしよう。
接近と共に千紫万紅で居合を放ち、すぐに空いた左でセイリオスを握り手、いつもの闇属性防御無視の槍を放つ。
そこから待ったなしの二刀による魔力剣風、追撃の手は簡単には緩めないぜ?
グリフォンがまだ立て直せていないので、追撃の際には昨日カトゥラザで放った時より魔力を充填させてもらったぞ。
お陰でディアトリマを巻き込んで吹っ飛ばすほどの威力になったわけだが……。
「流石にその巨体を好きに出来るほど甘くはねえか」
ついでで狙ったグリフォンは流石に吹っ飛んでくれねえか。
カイトやオルタだったら、もっと瞬間的に威力を出してぶっ飛ばすなり出来たんだろうが。
まだまだ魔力凝縮度合いが足りねえな……。
単純に拳で放つのとはワケが違う。
「貴様も電撃地獄の中でもがき苦しめ!」
その台詞と魔力の流れから察するに、さっきウィンに電撃獄中生活を強いらせたアレを使う気だな。
なるほど、態勢を立て直しながらしれっと準備してやがったか。
既に俺の周囲に濃厚な雷の魔力が漂っている。
しかしまあ、わざわざ宣言してくれるとは……随分とまあ親切なこって。
お陰で対策を練る時間が出来て助かったな。
「そういう攻めは流石に範囲外でね。それに俺は鳥頭じゃねえんだ、猶更食らってやる義理はないな」
「外に逃げる気か?愚かな奴め、もう1体いることを忘れるな!」
ディアトリマが既に立ち直っており、周囲には電撃檻からの逃走ルートを塞ぐように氷槍が設置されていた。
流石に強引に操ったのか。はは、思ったより余裕ねえんだな!
まあ、二重の策を弄してるのは褒めてやってもいいんだが……。
「そんなちゃちい合理性の檻で俺を捕えようなんざ、ハニーバターミルクより甘いってもんだ」
やや時間こそかかったが、電撃の檻の展開には間に合った。
そちらが理不尽で来るならば──こちらはそれを奪うまでだ。
我が2番目の悪友と共同で開発した、数少ない俺の攻撃以外の顕魂術。
理論とイメージが揃ったところに、昨晩まで格闘したウガルーの魔石のイメージを追加して完成に漕ぎ着けた。
これを持って、更なる反旗を翻させてもらうとしよう。
「ぶっつけ本番上等!反逆の意の下略奪してやろうじゃねえか──『トリーズン・ディスチャージ』!」
俺にしては珍しく顕魂術名を発すると共に、紫電を走らせる。
その紫電はグリフォンが得意げに作り出した電撃檻とぶつかり合う。
傍から見れば、力技で檻を壊そうとしているように見えるんだろうな。
グリフォンも勘違いしてるのが丸分かりな、勝ち誇ったような表情をしてやがるし。
「無駄だ!人間如きの電撃で我が檻を破壊できるわけが……!?」
「神獣の癖に常識に囚われすぎだな。破天荒ナメんな!」
そうしている内に得意げにしていたグリフォンの顔はあっという間に驚愕に染まる。
何せ、瞬く間に電撃の檻は無くなったんだからな、当たり前なんだろうが……。
それにしても流石は神獣、魔力は一級品だな!
暴走していることもあってか、ちょっとテンション上がって来たぜ。
「前座のディアトリマ君はいい加減見飽きたんで、そろそろご退場願おうか!」
俺はこれまでとは比べ物にならない加速と共にディアトリマに突っ込む。
それに反応するかのように氷の槍が一斉掃射されるが、目前にある3発は魔力を込めたセイリオスの斬撃で粉々に砕く。
残りは俺の速度を見事に見誤っているので見事に空振りに終わった。
「戦力外通知という退場理由が生まれたな!」
いい感じで巡る魔力、お陰でイメージは捗ることこの上ない。
セイリオスと千紫万紅をそれぞれの手で握ると、ディアトリマを集中的に斬りまくった。
すれ違い様に二閃。今度はまた方角を変えてすれ違って二閃。
戻る様に二閃したと思ったら四閃になっていたり。
空中に足場をいくつも作ってあらゆる方向から斬りつけまくってやる。
斬撃が視覚で認知出来るなら、蜘蛛の巣を張ってるように見えるのかね。
面影糸を巣と張る蜘蛛……ってか?
グリフォンも認知できないのか、全く反撃の気配が無い。
ついでに爪やら牙やらもふんだくってやったから締めと行こうか。
千紫万紅を一度仕舞い、セイリオスでスティンガーを放つ。
ラスの古龍イメージ突進を真似て加えるのは、土属性による強烈な衝撃だ。
今のところ土属性は見事に調味料ってイメージになってんな……あ、だからウィンは料理上手なのか?
馬鹿なことを一瞬だけ考えていたら、多数の斬撃で堕落しかけていたディアトリマはあっけなく吹き飛ばされていた。
俺はここで更に追撃を図る。ここで一気に仕留めろってさっきから色々五月蠅いんでね!
未だ滾る魔力を糧に吹き飛ぶディアトリマに追いつき、今度は風の魔力を強めに纏わせた突きで空中に吹き飛ばす。
再度吹き飛ぶディアトリマに合わせるように俺は跳躍する。
そして、天井を敷くように魔力足場を設置して足場にする。
陰の鬼志が天井で逆立ちになるような態勢になって懐かしい気持ちになったのはここだけの話だぞ。
ディアトリマの認知の外、要するに完全に上を取ってからそこから落雷かと言わんばかりの突きを締めに放った。
──やれやれ、この『ディアトリマ、堕つ』は語られることが無いのが悲しいものだな。
さて、残るグリフォンは俺がこれまで見せなかったスピードと魔力量に驚愕しているご様子だな。
ったく、サーカスの最中にボケっとしてんなよグリフォン様よ!
そんな悪い子には、目覚めの一撃をプレゼントだな。
「更におまけだ。『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」
強化された雷の魔力を利用した、光と雷のブレスを放つ単純な顕魂術『エヴォリューション・バースト』
この派生形、3本を凝縮した防御貫通バージョンを思いっきり叩き込んでやった。
纏った魔力のお陰でイメージ展開速度が大幅に上がり、その発動時間はほぼノータイムと言ってもいい。
挙句属性が一致しているお陰か威力も若干上がっているように見受けられた。
雷を扱うグリフォンには効き目は薄くなるが、それでも単純な威力である程度は傷は与えられるんじゃねえか?
そうでなくてもあの規模のブレスをぶつけてやれば、その圧だけで距離も離せるし。
「随分と派手にやったわねー……今度は何をやらかしたのかしら」
お、ナマリエとカルトがフリズベルグの躾から帰ってきたな。
かかった時間と二人の様子を見るに、本丸に向けて温存しつつ撃破したってところか。
まあ、初めて戦う魔物だから慎重気味に立ち回ったってのもあるし、無傷であることは加点要素だな。
「さっきからお前からあのグリフォンの魔力を感じるんだが……まさか、そういうことか?」
カルトの言わんとすることは……まあ、半分くらい正解だ。
まあすっ飛んでいったグリフォンはまだ戻って来ねえみたいだし、種明かしタイムくらいは取れそうだな。
俺もちょいとばっかしクールダウンが欲しいし。
あまり時間は立ってないが、さっきからどうにも引っ張られてる感じが凄い。
「グリフォンが俺にも電撃檻を売ってきやがったのさ。だが、アレは対象に張り付く形で放たれる結界の亜種だってことは初回で理解した。結界みたいなものなら、その構成魔力を奪ってしまえば簡単に構造は崩せるって寸法だ」
この『トリーズン・ディスチャージ』の用途は、魔力やそれに類する力を吸い取るところにあるからな。
とある日に呪い大好き令嬢の研究に付き合ってた時に、俺はリスク軽減の為に汎用的かつ緊急でも使える解呪方法ってのを考えてた。
偉志ノ大陸で文献読み漁ってた時にも学んだんだが、この手の呪術ってのは過程ってのが大事になる。
だからこそ、真逆を辿る解呪ってのはその過程を知らないと成り立たないんだが……これが結構厄介なものでな。
そこの解析ってのは呪術の式を丸裸に出来ないと時間がかかっちまう。
手遅れになりかねない事案も出てくるんじゃないかと俺は危惧したってわけさ。
結果『じゃあ式の源になるブツを吸い取っちまえばいいんじゃね?』と思いついた。
──あの引きこもりには『強引すぎるけど理に適ってる滅茶苦茶っぷりが貴方らしい』なんて嫌味なのか誉め言葉なのか分からねえことを言われたっけな。
「なるほどな。その奪い取った魔力でさっきの雷を纏った加速とかが出来たってわけか」
「でもそれって、グリフォンの魔力を奪い取ってアンタの身体の宿したってことよね。何ともないわけ?」
「ちょいと身体がビリビリはするし、何か暴れたくなる気分にはなってるが……この程度なら制御可能な範囲内さ」
まあ、さっきの連続高速移動で結構吐き出したからなんだけどな。
吸いだした直後は割かし過負荷状態で、一時的に普段の2割増しの深夜テンションになってたし。
これがこの異端顕魂術の最大の欠点というか、今のところ俺しか使えない理由だ。
魔力操作・制御が相当なレベルを求められ、そして属性適性が無いとと吸収した後が危険極まりない。
今のところ、全属性適性持ちの顕魂術使いって俺だけだからな。
汎用性を高めるには、属性変換のプロセスが必要になるが……滅茶苦茶手間がかかるだろうなあ。
「って、あちこち火傷みたいになってるじゃない!これ、吸い取った魔力が暴走しかけたんじゃないの!?何平気そうな顔してるのよ、このバカ王子!」
あー……そこは気付かないで欲しかったところだった。
ナマリエの指摘通り、俺の身体はあっちこっち雷が原因の火傷まみれだ。
まあ、割と痛いっちゃあ痛い。
だが、こんなの序の口って言うかいつものことだぞ?
そもそもこれが最善策だったんだからしょうがないと思うんだが。
「とりあえずお小言は後だ!神獣様が来てるからさっさと迎撃するぜナマリエお姉さま!」
「──これはデイジー様とかクリスティーナ様を呼んで説教大会ね。覚悟しておきなさい」
「はあ……お前も本当に懲りねえな。説教貰ってる数はチビ以上だろ」
最善取っただけなのに説教って……なけるぜ。
──さて、それはさておきあっちもようやくトップギアって感じだな。
今までにない赤い電撃を纏って、すっ飛んできた先から派手に突進かましてきやがった。
喧しい咆哮が付いていたので、3人そろって問題なく回避はしたが。
「お前に牛要素なんてねえだろうが!実はお前、キマイラにでもなりたかった系か?」
「怪我人の癖して何余裕ぶっこいてるのよ!」
いやいやナマリエ、悪いがこれくらいなら実際余裕だっての。
確かに雷の魔力を纏っての突進はこれまでと段違いのスピードを生み出してるさ。
だが所詮はあの巨体、更にそれなりに傷も負わせている。
んでもって、やり口からしてお怒りモードが更に深刻化してるのが分かる。
怒りってのは適切にコントロールできれば力にもなれるが……あの様子じゃあそれも出来てねえ。
元々例のブツで産み出された歪なものだからってのもあるが、完全に振り回されてやがる。
そんな突進、悪いが目を瞑ってても避けられるさ。
「この私の本気を見てなおも粋がるとは、減らず口もそこまで行けば殊勲ものだな!」
「むしろお前ももっと減らず口かませよ、チキン野郎。それとも神獣様も魔力使いまくると語彙力が落ちるのか?他の2体はもっと理知的で会話のキャッチボールも完璧だったと言うのに……やっぱ鳥頭だからか?」
「抜かせ!口を閉じるのは貴様の方だ無礼者めが!」
おおう、今度は随分と単純に電撃を撃ってきやがった。
とはいえ、何の工夫もない一撃だ。
怒りに支配されれば、神獣とはいえこんなもんか?
魔力の予兆を隠そうともしてねえから、威力が高かろうが避けられる一撃。
何度目か数えるのも億劫になる足場移動で何の問題もない。
無論グリフォンも俺を逃がすつもりはないらしく、また赤い電撃を纏った突進をかまそうと構えていた。
──ったく、そんなんだから鳥頭なんだよ。
「だから何でお前がヘイト役をいちいち買って出るんだっての……!」
過度な怒り……というか、激情というのは視野を狭める要因にもなる。
俺もそうなったことはしょっちゅうだから、よーくわかってるつもりだ。
要は、これは1対1じゃねえんだよグリフォン君!
上手いことグリフォンの視覚外の位置を確保していたカルトとナマリエ。
相手の精神状態から俺の狙いまできっちり把握してくれた辺り、この場の流れを理解してくれる臣下を持ててマジ誇りに思うな。
突進のための魔力充填の隙は僅かだが、二人は一寸の狂いなく……まさに予定調和で不意打ちを入れることに成功した。
カルトは新たな顕魂術なのか、2つの車輪のようなものを纏っての突進も放つ。
通り過ぎる形で完全に背面を取ると、今度はいつもの闇属性付与の得物を踊り狂うように振り回す。
機動力の源と言える翼に斬撃を集中させていたんだが……あれ、いつもより切れ味よくねえか?
「八つ当たりのお膳立てはこんなものでいいか?」
「ありがとカルト。これなら遠慮なくズタズタにしてやれるわ!」
こいつら何か物騒な会話してるんですがー!?
特にナマリエ、何でそんなに笑顔で怒っていらっしゃるんですかね!?
そんな笑っていない笑顔と共に、小型の魔力弾を大量に放っていた。
それらは全て寸分の狂いなく、カルトの与えた傷をより深くしている。
この万能ガンナーエルフ、まさか怒りだけで新しい術閃いたんじゃねえんだろうな……?
そして、カルトのお膳立てって言葉で俺は理解した……初撃の新顕魂術がしれっとえげつないことに。
何かかしらかのダメージを増加させる状態異常をグリフォンに与えやがったってことだぞ。
みんなさあ、ホイホイ色々新しいの覚えすぎじゃないか?
「こ、このエルフ共……!いつの間に背面にいたのだ!」
「アイツの挑発に乗せられてりゃ誰でも背後を取るだろうが。さっきから同じこと何度もやられてるってのにもう忘れたのか」
「だから鳥頭言われるのよ。こういうのが人間のやり方だってことはちゃんと覚えておきなさいな」
ははっアイツらも言うようになったな!
俺の受け売りに聞こえるから猶更嬉しくなるね。
さあて、不意打ちのお陰であちらさんの魔力充填も乱れて、精神状態も滅茶苦茶ときたもんだ。
ここで決めてやらなきゃ、『無慈悲な主演』の名折れだよな!
ヤツの魔力もまだ残ってることだし、きっちり使い切らせてもらうとしよう。
「貴様、まだ我の魔力が残っているのか……!」
「最後にその使い方を教えてやるんだ、有難く思えよ」
手始めに闇と雷魔力を纏わせた貫通スティンガーで一撃。
グリフォンが振り返りつつ爪で俺を薙ぎ払おうとするが……遅い、遅すぎる。
肉体も精神も余裕のない、しょっぱい一撃は当然空を切らせるに限るな。
瞬間凝縮させた雷の魔力はすぐに爆ぜ、その勢いのままに俺はグリフォンの血が上っている頭を盛大に蹴り飛ばした。
加速の勢いと、脚に纏わせた魔力をそのままに蹴りあげたので威力は割と出ているだろうな。
現にグリフォンが白目を剝きかけているような、そんなツラになってるのは見えたし。
追撃はまだ終わらせるつもりはない。
そこから闇と火の魔力にスイッチして掌底打ちとアッパーのワンツーコンボ。
二度目ではあるが、これも残存している相手の魔力のお陰で威力は上乗せされている。
ここで更に、裏でイメージストックしておいたチャンスタイム増加用の顕魂術を指を鳴らすとともに放つ。
放ったのは言うまでもなく、深海色のゲリラ豪雨だ。
神獣ほどの相手だと、時間間隔を狂わせることが出来るのは本当に瞬く間に過ぎない。
まあ、最後を台無しにされないようにするにはちょうどいい塩梅さ。
「これで終幕だ。拾い食いなんてもうすんなよ、チキン野郎」
最後の締めは千紫万紅に任せるとしよう。
地上での序盤戦の焼き直しの如く、空中に作った壁を足掛かりに猛加速する。
すれ違い様に紫電……五閃くらいってところか?
これまでよりも鮮明に視認できるであろう、我ながら美しいと思う斬撃を放ってやった。
「──やっぱ、締めはこの音だよな」
涼やかな納刀の音と共に、グリフォンは完全に気を失ったようだな。
──この終わり方、是非ともカイトに採点してもらいたかったな。
それにしても、風に付随して雷属性適性も相応に高いんだな俺って。
締めの疾走居合には雷の魔力を纏わせたんだが……これまでで一番しっくり来たな。
これまではカイトに合わせる形で水属性も使いつつ闇メインで放ってたが、雷の方がよさげか。
うん、これだから顕魂術は深くて面白い。
使うイメージに応じて適する属性も変わることも往々にしてあるからな。
──おっと、このまま堕落したら素材をもぎ取られたディアトリマの後を追うというバッドエンドを迎えちまう。
あくまでこいつを鎮めて、その暴走の原因を調査するのが今回の目的だ。
今回はぶっ殺してはい、平和になりましたーはむしろアウトだってことを忘れてはいかんぞー……って。
俺がやる前に気絶したグリフォンのための魔力足場が形成され、一旦置かれてから浮かされていた。
「全く、これだけ派手にやってもちゃんと生きているってのが不思議よ」
「おいおい、結構魔力きついんじゃねえのか?無理しないで俺が運搬役でもいいんだぞ」
……マジで大丈夫なのか?
カルトのための足場作りとか、俺の援護とか多分今回の戦いで一番摩耗してるだろ。
ウガルーの時は相手が封印から目覚めたてってこともあって隙を突けたが、今回は割とガチだったから精神的にも来てるだろうに。
え、俺?いやいや、俺なんかいつものことだから気にすることないない。
「そんな気遣いするくらいなら、後で一杯奢りなさいな。これだけ重労働したんだから、臨時報酬はたんまり頂くわよ」
「おいおい、コイツにそんなこと頼んでいいのか?どこぞのご令嬢に見られたら修羅場待ったなしだぞ」
「楽しそうに修羅場とか言うの止めてくんない?そもそも俺側が釣り合ってねえだろうが」
「あら、よく分かってるじゃない。私から見たらアンタはあくまで弟分よ、忘れないで頂戴」
まあ、ケルビムモードならもうちょい違うとは思うがね?
──そんなアホなやり取りはさておき、さっさと地上に戻るとしよう。
ラス達の元にこいつを運んで、ベル教授と共に原因追求タイムが最後に残ってるからな。
「アンタはその火傷の応急処置からよ」
「痛みがぶり返してきたからこそ忘れたかったんだがな……」
戦闘の興奮が冷めたからか、徐々に痛みが戻ってきやがった。
とりあえず顕魂術構築に集中して無理やり誤魔化すとしようか。
グリフォンを無力化した3人が地上に戻って最初に見たのは、なかなか悲惨な光景だった。
あちこち凸凹になっている地面に立ち込める焦げ臭さはその最たるものだ。
問題児が如何に暴れていたのかがよく分かる光景だろう。
しかし、何故かセリアードまでどこか申し訳なさそうな表情をしているのは腑に落ちない。
「セリアードが新しい顕魂術閃いてね、そしたらウチとラスの炎が想定外の火力になっちゃったんだ!ウィンも回復した後はなかなか暴れてたから、これはみんなの責任だよ!」
「あちこちの凸凹はキュイが巨大なムムを召喚したからだけどね……」
「ご、ごめんなさい……セラさんの顕魂術を参考にしたら、多分皆さんの魔力構築を強固にするような、そういう支援を閃いちゃったみたいで……」
セリアードの自己申告に誰よりも驚いたのは保護者兼師であるマドラーシュであった。
セラが参考程度にと自身に魔力構築面の強化を施す顕魂術を見せたことは当然認知している。
魔力構築を強固にするというのは、すなわち顕魂術におけるイメージと魔力、二つの要素の結びつけの強化に値する。
ただでさえ抽象的な関係性を空想で更に強固にするというのはイメージそのものが極めて難しい。
マドラーシュはもちろん、顕魂術においても天才と言えるキュイでも全く出来なかったことだ。
それをセラの顕魂術を見ただけで、更にこの実戦における土壇場で閃いて実行に移してしまったのだ。
開発者だからこそ、マドラーシュはセリアードの潜在能力を再認識して──素直に笑みを浮かべた。
「閃いてすぐなら、多少制御が利かねえのは仕方ないことだ。今はお前だけの顕魂術を戦いの中で見いだせたことを誇っていいぞ。開発者としても師としても、俺の鼻が高くなるぜ」
「開発者のマッドがここまで言うなんて、やっぱりセリアードは出来る子だね!」
「て、天才だなんてそんな……。マッド様とセラさんの教え方が良くて、皆さんも色々練習に付き合ってくれたり、助言をくれたお陰です」
「いや、昨日から続く初陣でこれだけ動けたのは俺も凄いと思うぞ。マドラーシュ様の賞賛に世辞は一切無いから、素直に受け取っていいと思う」
ウィンの言葉にますます恐縮するセリアードの姿に、全員が口端を緩めていた。
何だかんだで日を跨ぐ任務になったので、終わりが見えてきたからかいつもよりも強い解放感に浸っていた。
帰るまでが遠足……ではなく任務というのは忘れてはいないが。
「おお、本当にグリフォンを無力化するとは……って、マドラーシュ王子、随分と派手に傷を負ったな」
「って、そうだよマッド!そのあちこちにある火傷どうしたのさ!?」
「こいつの電撃を貰ったわけじゃねえぞ?ちょいとお試しで使ったものが想定以上に効力があっただけさ」
とマドラーシュは言うもののその見た目はなかなかに酷い状態である。
腕の惨状を見て顔を青くしながらもセリアードとウィンが顕魂術と手持ちの薬草による応急処置を施す。
既にグリフォンの魔力は抜けきっているので、水の魔力による感電の心配はないのが救いだろうか。
「うわー、こんなんでよく普通に歩いたりできるね。いくら慣れっこでもあんまり我慢しちゃダメだってば」
「チビにまで諭されちまってるじゃねえか。若気の至りで済ませるにしても行き過ぎてるぞ」
「別に腕一本取られたとかじゃねえんだからセーフだと思うんだが……」
『全然セーフじゃない、余裕でアウト』
グリフォンの様子を観察するベル教授以外の声が見事にハモってしまった。
恐らくはイグノックスとカルシオン以外のグランナイツの面々が居ても同じことになるのは明白だった。
マドラーシュのセーフティラインは、見ての通りあまりにも緩い。
普通ならば恐れ躊躇するような場面でも平常心を保てる側面にも繋がるので、完全な短所とは言えないのがまた面倒なところだ。
狂気とも言えるこの一面は、年不相応の強さを支えていると同時に危なっかしくもある。
一斉指摘された本人は、流石に今回は苦笑しつつ黙るしかなかった。
「まあ、マドラーシュ王子は昔から猛者ぞろいのグランナイツに食らいつこうとあの手この手だったと師匠も言っていたからな──うん?これは……」
「宝石じゃん!高く売れないかなあ……って、あれ?何かこれ見たことあるような?」
「セリアードのブローチに似てる……この間と同じってことなのかな」
グリフォンを観察していたベル教授が見つけたのは、宝石と称すべき妖しさを持つ紫色の石だ。
大きさこそ明らかに小さいが、その色はセリアードのブローチと見事に一致している。
グリフォンの近くに落ちていたということは、恐らくその体内に入り込んでいたのだろう。
発生していた異変が神獣の暴走という点はウガルーの封印解放と亡者の復活と類似していると言えなくはない。
これらの要素が意味することは、まさにラスが呟いたことそのままだとその場の全員が理解した。
「この宝石は『キーストーン』だな。昨日君たちが話してくれたことと、今回のグリフォンの異変……どちらも見事に合致するから間違いなさそうだ」
「それってどういう宝石なの?すっごい価値のある感じの名前だけど」
「売り飛ばさねえからな?金銭的な価値じゃなくて、大事なのはその効力の方だろ」
目の輝かせどころを間違えているが、これが金の亡者キュイである。
普段なら微笑ましいで済ませられるところだが、折角手に入れた貴重な証拠品を密かに売り飛ばされては元も子もない。
カルトとナマリエの二人がかりで何とかキュイのちょろまかし行為をガードして事無き事を得る。
「値段など到底つけられない代物だぞ。何せ秘められた力は莫大という言葉すら足りないほど、少なくとも常人が使おうものなら暴走するだろうな」
「そうなると、あの時の盗人も暴走させた結果あんなことになったのかしら……」
「うーん、でもあの盗人のは暴走って言うほどじゃなかったよ。マッドとカルシオンが遊びながら倒してたもん」
魔猿に成り果てた盗人貴族との戦いをセリアードとロムは終始見ていた。
あの時二人が見たのは、折角得た力を全く生かせずに振り回される哀れな魔猿と、雑談と遊びに興じていたマッドとカルシオンという構図だ。
後半は魔猿も怒りのあまりある程度は力をまともに振るってこそいたが、それでも二人には遠く及ばずという結果。
先ほど戦ったグリフォンとその取り巻きに比べたら、そのレベルはもはや雲泥の差と言える。
「キーストーンと精霊の相性の悪さが原因じゃねえか?精霊そのものと妄信そのものと言える拘りがキーストーンの足を引っ張って、結果あんな半端者になった風に見えたな」
精霊とキーストーン、どちらの力がより強大なのかはこの場の誰もが比較できるだろう。
恐らく前者が視認できる大精霊の類になったとしても、その不等号に変化はないだろう
そこで魔法をベースとして、キーストーンを副菜のような扱いをしてしまえば
「余計な工程を挟んだ結果ということか。やれやれ、それが魔法という概念の解明を妨げていたというのに。やはりその信仰は理解しがたいね」
「その言葉、完全に貴族に対して喧嘩売っちゃってる気がするけど」
「教授みたいに、魔法とか精霊への信仰染みた扱いを疑問視する人間はそれこそいくらでもいるさ。エリオ姉さんやクリスティーナ姉さんも、使えても思想には染まらなかった人間だって普通にいるくらいだからな」
「しかし、そのような者たちの異論は封じられてしまうと。やはり、信仰による支配はかなり根深いものですね」
似たような迫害を受けてきたウィンやナマリエの表情が苦虫を噛み潰したものとなっていた。
少数民族やハーフであるが故の言いがかりや迫害……これらには魔法が使えない無能という嘲笑もきっちり混ざっている。
そんな彼らにとっても、行き過ぎた魔法至上主義は目の上のたん瘤に当たる存在となるのは必然だろう。
「──ところでマドラーシュ王子。キーストーンとは別にこんなものが落ちていたのだが」
ベル教授がマドラーシュに個別で手渡したのは、キーストーンとは明らかに異なる翡翠色の宝珠。
その形状は、マドラーシュにとってそれはもう見覚えのある類だ。
しかし、本来なら神獣であるグリフォンには存在しない代物なので受け取ったマドラーシュは少々驚きを見せている。
「おいおい、キーストーンは魔石を副産物扱いで作れるのかよ……とんでもねえな」
「うわ、マッドの顔が喜び一色になっちゃった」
「流石は魔石コレクターだな。ったく、今度はどんなトンデモ顕魂術が生まれるのやらか」
思わぬ副産物は、マドラーシュにとっては2日分の労働対価として十分にも程があった。
既にマドラーシュの思考はこの魔石から抽出するイメージばかりで埋め尽くされている。
魔学の為に窓を破ったり壁に埋まったりする姉のことを日々揶揄しているが、その様子はまさに……。
「正直どっちもどっちよね、アニスフィア様とマッドって」
「むしろ戦闘になったら挑発したり傷を負うのも厭わず倒しにかかったりって考えたらむしろマッドの方がやりたい放題なんじゃない?」
「ロ、ロム……確かにその通りかもしれないけど、マッド様に聞かれたらおやつ抜きにされちゃうかも……」
「セリアードまで認めちゃってるじゃん。まあウチにとっては同格なのはマッドだけだから、そのままでいて欲しいけどね!」
顕魂術考察モードに入って周りの声が聞こえていないのをいいことに、好き放題に言う臣下たちだった。
グリフォンの暴走はキーストーンが体内に入り込んだことが原因だとほぼ確定した。
キーストーンとそこから発生した魔石以外に怪しい物は無かったので、ベル教授の調査もこれにて無事に終了となる。
手に入れたキーストーンの処遇については王都に戻って報告次第だが、恐らくベル教授が一旦研究の為預かることになるだろう。
マドラーシュがまとめて預かる案もあったが、別口で所持してもらう方が研究がより捗るということで本人が辞退した。
後処理の暫定方針も固まったので、一行は拠点に戻り帰り支度に移る。
荷物が比較的多いマドラーシュとベル教授が忙しなく動いている。
特にマドラーシュはディアトリマとフリズベルグの素材もあるので猶更片付けに時間がかかっていた。
そんな二人とは対照的に、既に帰り支度を終わらせた者も少なくない中で二名ほどが拠点より離れた位置で密かに話をしていた。
カルトとセリアード……性格的に合わないように見えて、内心で互いに気を遣うことが出来ている奇妙な仲の二人だ。
「わざわざ俺にだけって、何の話だ?」
「昨日見た、ハーピークイーンの記憶についてです。具体的に言えば……彼女が仲良くしていた、ロイドさんのことです」
セリアードが発した名前にカルトは僅かだが表情を変える。
その顔は、色々な感情が入り混じっているからかより気難しそうなものとなっている。
普段のセリアードならばここで口を閉じてしまい、話を止めてしまうところだろう。
しかし、今回ばかりはそうは言ってられないのだ。
何が何でも、カルトにだけは伝えなければならないことがあるのだから。
「記憶の中で、ハーピークイーンと楽しそうに語らっていたんです。その中で、ロイドさんはたった一人の弟さんの話をよくされていました」
「……何て言ってたんだ?」
「とても努力家で、優しい弟だ……と。誇らしげに、そして幸せそうに語っていました」
弟思いの言葉で、直接記憶を垣間見たセリアードの今の表情からそこに裏は無いことは分かる。
心暖かくなる場面なのだろうが……それでもカルトの表情は晴れなかった。
否、むしろ先ほどよりも複雑そうな表情になっているくらいだ。
「何でそれをわざわざ俺に?」
「カルトさんにだけはお話しておかないとって……そう思ったからです」
この時のセリアードの目を見て、カルトは確信した。
ハーピークイーンに力を貸してもらった際の反応で気付いたのか。
それとも、どこかで破天荒第二王子が口を滑らせたのか……。
後者の可能性は、彼がそうそう口を割る人間ではないことは知っているからこそ即座に否定するが。
そうなれば、必然的に前者になるわけだが……。
「ったく、変な気遣いしやがって。あのバカ王子の受け売りは顕魂術だけにしておけよ?じゃねえと、面倒の方から付き纏われることになっちまうからな」
「マッド様の方が、もう少し上手く言えると思いますが……えっと、出過ぎた真似をしてごめんなさい。そろそろ出発みたいなので先に戻ってますね」
そこまで言うと、セリアードは足早に一行に合流していった。
その場に残ったカルトは、誰もいないことは承知の上で一人呟く。
「本当に、どいつもこいつもお節介焼きだよ。お前みたいにな……」
変わらぬ渓谷の景色を眺めながら、家族である彼への思いを馳せていた。
そしてその様子を眺めているのは、カルトの言うお節介焼きの一人。
こちらもまた、普段の彼からすればらしくない複雑そうな表情を浮かべていた。
というわけで、詠唱名登場シリーズその2はダーク・リベリオン引用です。
相手の攻撃力を奪う効果をまさかの顕魂術化、ただし相手をそのまま対象に取れるわけじゃないところは弱体化。
まあ、代わりに応用は凄い利くんですがそれは後々。
これで暫くグランサガ本編の進行は落ち着きますので、暫くは転天サイドorオリジナル話です。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)