というわけで、戦闘終わったらの事後処理……というか裏話とか色々?
ここから章の終わりまで突っ走りますぞよ〜。
大半にとっては悪夢になりかけた、俺とセラにとってはただただ楽しかったイレギュラースタンピードから2日ほど。
すんなりと日常が戻った我が離宮にて、俺とアル兄さんは二人して必死に笑いを堪えていた。
「見事に過去にやったドラゴン退治がバレては父上に思いっきり折檻を貰ったっておいおい……詰めが甘すぎだろあの人。──ダメだ、笑いが堪えられねえ」
「気持ちは大いに分かるが、堪えてくれ……俺もまた吹き出しそうでな」
あれからドレッド・ドラゴンをきっちりギルドに引き渡し、卸した後の分は俺と姉上で分配という手はずを整えた。
ドレッド・ドラゴン自体俺が遊び場としてる洞窟、またはほぼカンバス方面の砂漠地帯でしか発見例が無い半ば新種だ。
要するに、王国内では俺やグランナイツくらいしか知らない魔物ってことさ。
お陰でギルドに持ってった時は阿鼻叫喚になってたなあ。
俺が倒したってところは割とすぐに納得してくれてたのが幸いだが。
ちなみに俺が所望したのは魔石以外には食材になる部位と、まあ鍛冶素材になりそうな部分を少しばかりってところだ。
姉上が欲しがりそうな部分と被ってる部分もあるから、そこを折半することにした。
まあ、俺としては魔石と食用部分さえあれば良かったわけだし?これで姉孝行も出来て一石二鳥という寸法だ。
セラからは何故か隠れシスコンとか言われたんだが……これってシスコンの範疇なのか?
ヨシトラおじさん辺りならこれくらいの気前の良さ、普通に発揮すると思うんだけどな?
で、対する姉上は……まあ、今俺たちが言ったとおりだ。
以前にセリアードを案内してる時にも目撃した飛行物体がどうやらドラゴンの素材をふんだんに使ったものだったらしい。
あの時は上手いことやってたみたいだが、今回は緊急事態だったからか全く気が回らなかったみたいで。
結局、秘匿していたはずのドラゴン討伐の件も一緒にバレて大目玉だとか。
折角スタンピードを食い止めた面子の一人っていう名声を獲得したって言うのに、そんなギャグテイストは流石に笑うしかねえだろ。
全く、どこまで詰めが甘いんだあの人は……。
「父上も父上だと思うけどな?ここに9歳手前で初めてドラゴンを討伐して、それからも食材狙いで定期的に狩ってる大バカ者がいるってのに」
「お前の場合、発覚したとしても呆れながらも納得するんじゃないか?その上で王位継承権を袖にさせたことをますます後悔する可能性もあるが……」
「それは買い被りってもんだし、加えてよろしくない流れだろうに……うん、やっぱ隠しておいた方がいいな」
ただでさえ姉上とアル兄さんで色々面倒なところに俺まで加わってみろよ。
グランナイツのこととかまで出てきたら、それこそいらん混沌を撒き散らしかねないわけで。
王なんてなりたいとも思わねえし、俺に向いているとも思えん。
多少能力で劣ってようが、ちゃんと気質が向いている人間にやらせるべきってものだろ?
さて、この話は無限地獄になりかねないことはアル兄さんも察してくれたのかすぐに切り上げてくれた。
「今回のスタンピードについてはお前とセラがいてくれて本当に助かった。父上はグランナイツの誰かを呼ぶことになるかもしれないとすら言っていたからな」
「まあ黒竜の余波に加えて魔石持ちはイレギュラーが過ぎるから当然だろ。俺としてもこっそり親孝行が出来て何よりさ」
「陰の親孝行、これこそがマッド様の得意技ですからね」
やっぱ、こういうダークヒーロー的王族の方が俺には性に合ってるってね。
俺は俺のやりたいようにやってるだけで、ちょっとだけ得になれば評価とかどうでもいいからな。
やりたい放題をやってたまに親孝行とか、姉孝行とか兄孝行をする。
ほら、どっからどう見ても理想的なやり方だろ?
「それと、随分派手な顕魂術を使ったようだな。『無慈悲な主演』が悪魔と契約して翼を得たとかわけの分からない噂が飛び交ってるが……」
「今度は
本来なら魔石が発生しないはずの神獣がキーストーンの力の副作用として作り出した規格外だ。
俺が使う分には安全だったが、他の人間が直に使えるかは分からないブツではあるのは確かだ。
イメージがあまりに鮮烈で強烈だったから、多分並みのヤツだと呑まれるだろうね。
ただ、そんな物騒なイメージに反して妙に俺の彫魂石に対して共鳴してたんだよな……。
お陰でグリフォンの翼をイメージそのままで発動出来たし、初の飛行にしては問題なく扱えていたわけで。
──ドレッド・ドラゴンが俺を稀人……それも姉上を凌駕する異端って言ってたのはこの部分だったりするのか?
っていうか、姉上もドラゴンから稀人認定されてるって言うのには驚いたな。
その言葉の意味はまだよく分かってないが、何となく世界的な異端に類した用語なのは推察できる。
……どうなってんだよこの代のパレッティア王族。
二人も異端認定者とか、精霊契約した代とか目じゃないくらいにやばいんじゃねえか?
「そういえば、姉上とユフィリアはケルビムとクロエの話になるとどこか考え込んでいたが……大丈夫なのか?」
「いやいや、普通に大丈夫じゃね?容姿は簡易的とはいえ変えたからな。姉上とはここ数年全然顔合わせてねえし、いつもより少しばっかりキャラ変えたから流石にユフィリアも分からねえだろ」
「私は盛大に悪女っぽく戦い、マッド様はまさに主演と言わんばかりの大立ち回り……それに加えて、顕魂術も披露したのでそちらで混乱しているはず。よって、私たちの正体まで気が回らないと思いますよ」
「いつも通り、憎たらしくなるくらい計算しているんだな……やりたい放題の上で」
まあ最後の方はちょっと化けの皮剥がれ気味だったかもしれないが、セラの言う混乱もあるから大丈夫だろ。
で、ユフィリアの姿を久々に見たわけなんだが……普通にご壮健で何よりってところか?
ちょっと精神的に逞しくなったようにも見えたか。
俺たちが来る前は姉上と戦場を駆けたわけだが、一皮剥けた戦いっぷりを見せてくれたらしいし。
ぶっちゃけ言うと、これでも割と心配はしてたんだぜ?
ただでさえ俺とセラの前でしかまだまだ地が出せず、アル兄さん相手でも多少は猫被っちまうくらいだ。
俺たち3人以外の付き合いは、どうしても上辺だけな感じになっちまってるのはよーく知ってる。
立場ってものがあるからな、そればかりはしゃあねえとは思う。
それに、根幹壊す前とは違って俺がそういう面倒事への愚痴を受け止めてるからな。
以前とは違い、そこで抱え込むってことが無いだけだいぶ気楽に生きられているはず。
なんだが、そこで俺たちとの関係だけで完結させちまっている節もあったのが引っかかっててな。
だからこそ、俺たちから乖離せざるを得なかった期間……特に、婚約解消が上手く行って目的を遂行出来た後の思考が少し怖かった。
例えば、次に何すればいいのか分からないが何もしないでいると置いて行かれる気がする……とかな。
そこから変にこれまでの関係の依存に繋げて、グチャグチャになって二進も三進も行かなくなるなんて……なあ?
変なところで律儀だったり、真面目な部分が残ってるとこういう時に響くんだよな。
まあ、あの顔を見れば今は問題ないってのは一発で分かったけどな。
ますます貴族令嬢っぽくなくなっているとか周囲に言われてそうだが、俺としては好感度爆上がりだな。
で、姉上については……あの時に限って言うなら、ドレッド・ドラゴンに突っ込むのは状況的に間違ってはいない。
実際少しでも時間稼いでなかったら、俺とセラは間に合わなかったわけで。
ただな?もう少し実力差を考えろっていうか、無茶の中でも線引きをしろっていうか……。
あー駄目だ、どうしてもこれまでのこと考えるとモヤモヤが先行してしまう。
急ぎではないが、いい加減顔を合わせるべきかもしれんなこりゃ。
これからもこういうニアミスが増えることを考えると、俺自身のモヤモヤだけでも解消したくなってきた。
アル兄さんの時のようなことはせんでも、ちょっと互いに考えてることぶつけた方がいい気がするよ。
「そういや、父上からの事情聴取ってどうなったんだ?普通にここに来られてるってことは、アル兄さん自身の疑惑はある程度晴れたってことなんだろうが」
表向きでも被害者のユフィリアがある程度の真実を告げればそこは大丈夫なんだろうけどな。
陳述書の方も、アル兄さんが父上に提出しただろうから根拠として更に強まるだろうし。
アル兄さんとユフィリアも『全く関係ない第三者の仲介が必要だった』という形で口裏合わせてもらってるからそこまで不自然ではないだろう。
まあ、父上とかグランツ公はそれでも察したり勘ぐったりだろうが……それでも、俺が二人に関わっていたって証拠はまるで無い。
どれだけ俺を突こうが基本的に無駄に終わるしかないってこと。
大半の貴族の追及をある程度避けた上で、互いに円満解決を求めて話し合ったという証拠になれば万々歳だろう。
「ようやく肩の荷が少し降りた──とは言えないのが正直なところだ。俺がほぼ無罪確定となっても、レイニや彼女を庇ったその周りの問題がそのままだからな」
「その周りってのが騎士団長、魔法省長官、国内有数商人一家それぞれの息子がその筆頭と来てるからな。俺とグランナイツよりよっぽど国家転覆狙いそうな顔ぶれで、見るからに連中の関与が疑えるぞ……」
「ひっくり返せる可能性が高いのはマッド様たちですけれどね。格が違うのですよ、格が」
セラの戯言はさておき……レイニ嬢は制御しきれていない魅了を無自覚で使ってしまっている説は未だ濃厚だ。
正直やり口が強引ではあるが、この無自覚ってところを利用しちまえばかなり狡猾なやり方になるからな。
特に、証拠ってのが全く挙がらない辺りがこれまた厄介極まりない。
オンオフすら無意識と来たら、いつ魅了されたのか分からなくなっちまうから状況証拠すら怪しくなるのが欠点だ。
いざって時はレイニ嬢をスケープゴートに出来てしまうってのも胸糞悪い。
可能性の範疇ではあるが、レイニ嬢のとばっちりっぷりがなかなかとんでもねえことになってんな……。
……しかも、まだまだそれが加速しかねないのが酷なところだ。
「父上がシアン男爵への聞き取りなど、その辺りの段取りもつけるそうだ。ここからは大人の仕事とも言っていたが……」
「あの連中の影がちらつくって言うなら、潰してやらねえと気が済まない。降りるつもりは毛頭ねえぞ」
「──俺も降りてやるつもりはない。人を再び影で操ろうとしたツケはきっちり払わせるつもりだ」
要するに、次期国王としてではなくアル兄さん個人としての怒りってわけだ。
そりゃあここまでコケにされたんだ、やられっぱなしじゃあいられないだろ。
互いにいい笑顔を浮かべては、シンパシーを感じながらも拳を突き合わせる。
何だかんだ、喜ばしいくらいに双子やれてるよな俺たちって。
仮にも王族なんだから国のことも考えろって?
いやいや別に考えて無いってわけないぞ……あくまで思考優先度2番手以降ってだけで。
それに、膿落としを陰で助力してるんだ、結果的に国の為にはなるだろ?
──あ。そういえばまだ気になることがあったわ。
「スタンピードの話に戻るが、ボスは俺が仕留めてセラもいつも通りやりたい放題したわけだが……姉上の評価も結構上がっちまうんじゃねえか?」
「マッド様が駆けつけるまでの時間稼ぎと、それまでの掃除となればそれなりの戦果ですね。確かに、王位継承権が余計に拗れかねない状況かと」
今のアル兄さんは姉上への対抗意識は真っ当な方向になってるから暴走の心配はない。
もしそのままだったら、絶対に俺の手間が倍になってたところだ。
王位継承を盤石にするために突貫してたなんてことも普通に考えられる。
しかし今回のアル兄さんは『無慈悲な主演』『光誓の座天使』に依頼しているからその栄誉をハナっから捨ててるんだよな。
父上に話を通しているからその辺りでアル兄さんの評価は落ちない。
否、むしろ的確な人事とその人脈を作っていたということで上がるべきだと思うぞ?
その辺の事情を知らない、または下らない理由で捻じ曲げたい輩にとっては格好の材料なんだよな。
「実際姉上の評価は見事に真っ二つ──端的に言えば『ドラゴンに恐れず立ち向かった勇者』か『独断専行でやっぱり奇天烈』という具合だ」
「俺たちとしてはそれらを折衷した評価が無難なんだが……って、他にも何か聞いてそうな口ぶりだな?」
「この場だから話すと、いずれ姉上は王位復権するらしい。だから結果論ではあるが、この一件はそこまで問題ではないとのことだ」
へー、姉上が王位継承権復活か。
それはまた、豪胆なことをするもんで。
アル兄さんに問題は特にないが、いい加減周りの影響とか評価を考慮してってところかね。
表向きは対抗馬、裏ではスペア扱いってことか。
父上とかグランツ公が考えそうなことではあるが……それ、問題にならないように帳尻合わせたってだけの話じゃねえか?
んでもって流れ的には俺より上にしておかねえとだから……俺は第三位に転落ってわけか。
案外、姉上をダシにして俺を更に王位から離すのが目的だったりしてな?
全く、俺も随分とビビられちまったもんだなあ……。
「こうなるといよいよもって俺はお邪魔じゃね?何なら──」
「それだけは言うな。お前がいなければあらゆる方向でこの国は混沌と化して……いや、連中に乗っ取られていた危険すらあったくらいだ。その貢献は影に隠れてしまうのだろうが、俺だけは忘れてやるつもりはないぞ。もし俺が玉座に着いたら、多少強引でもお前をねじ込むための居場所を作って見せる。国を出るというなら、せめて俺に倒されてからにしてくれ」
「──冗談だっての。まだまだここでやらなきゃなんねえことはいくらでもあるんだ。そう真に受けんでくれ」
別に居場所なんて適当に作ればいいけどな?
偉志ノ大陸に行ってもいいし、冒険者としてフラフラしてもよしだ。
だがなあ……こんなやりたい放題クソ王族でも色々と人脈って言うか、繋がりってのが出来てしまったからな。
それを簡単に放り投げられるほどの外道にはなりきれねえ。
──いっそ、そうなれたら楽なんだろうけどな。
だが、どうしても譲れない線ってのがそこにあるわけだ。
俺自身が嫌で気に入らなくてとにかくぶち壊したくなる考えそのものでもあるからな。
「それに、黙って国を出て行ったらユフィリア様との契約を反故にしてしまいますよ?」
「あのなあ……日常生活からして残念侍女になるつもりか?なんで真っ先にそうなるんだよ」
「……アイツの場合、お前が出て行ったと知ったら真っ先に追いかけてきそうだがな。そうなったらそうなったで確実に面倒が俺に降りかかるから、やはりこの国にいてくれ」
いやさっきの人脈だ繋がりの下りでユフィリアのことだって確かに浮かべたけどな?
何せ4人目の同世代友人だ、そんなの当たり前だろ。
俺としては黒歴史に追いやりたいセリフ第1位が付録だが、あの約束もしちまったからそこはな?
だが何でこう、シリアスな空気をぶっ壊してくれるんですかねえ!
特にセラ、そういうのはクロエの時にやってくれ。
後アル兄さん、いくらユフィリアでもそこまでするわけが……って何だその呆れ顔は。
「とにかくだ。姉上が継承権第二位になるのは確かに表向きは悪くない。だが俺たちしか分からない諸刃の剣もある」
「その監視と、可能なら排除……か。水面下の持久戦は継続というわけだ」
「マッド様の表舞台デビューはいつになるのやらか、ですね。ネズミ共め……磨り潰してやりたいです」
お前実は振れ幅激しいペンデュラム系だったりする?
とりあえずはアル兄さんの言う通り、これまで通りの持久戦の構えだ。
二人への接触監視がやるべきリストに加わるだけと言い換えることも出来るな。
割と面倒に思えるが、騎士団裏勢力組の手助けもあるから割と何とかなってしまう。
特にラインヒルト先生がえげつないくらいに情報持ってくるし、最近はその精度も何故か上がってきてるんだよな。
その手の貴族を味方につけてたり、外部でそういう諜報員持ってるって話は聞いてはいるんだが……何にしても、敵に回さねえようにしないとだ。
後はあちらさんを追い込む為にもあっちの胸糞な場所を潰していくだけ……なんだがな。
こっちの方がマジで手が足りてない、猫の手でもいいから借りたいってやつだ。
レオン先生やカルシオンも他にやることがあるから毎回帯同してもらうわけにもいかんし。
ラス達もまだ見習い扱いだから自由に動けないんだよな……。
飛び級させたら絶対悪目立ちするからこれも出来ない。
クソ、本当に面倒くせえな!
マジで切実に、一人でいいから俺の8割くらいフリーで動ける人員が欲しい。
スタンピードから帰還した後は、それはもう激動かつ忙しなかった。
行きとは対照的に、穏やかに馬車に乗って王城に帰って来たちょうどその時。
心配で仕方なかったのだろうか、陛下が駆けつけてきた時が全ての始まり。
最初は私たちの帰還を確認しては安堵の表情を浮かべていたのですが……それを見て、即座に穏やかな空気は霧散してしまいました。
馬車に積まれていた、ドラゴンの頭部を利用して作られた飛行用魔道具。
さて、アニス様が素材欲しさにドラゴンを討伐したことはこの時点で公開されていない情報です。
ドラゴンの素材は魔石は国宝級としてもそれ以外の部位もかなりの価値があるもの。
そんなものがしれっと個人の趣味で使われていたらどうなるか……火を見るよりも明らかですよね?
──当然、その場で落雷が起きたのは言うに及ばずでしょう。
『ドラゴンを一人で狩るなど、お前はどこの御伽噺の存在になるつもりだ!』
『素材がどうしても欲しかったからです!それに、御伽噺ではなく現実にいますよそのドラゴンキラーが!ほら、それもお遊び感覚で倒すってもっととんでもないのが』
『ケルビムは素材の一部をきっちり還元していて、魔石もあくまで保管しているだけと聞いておるが?何なら有事の際はこちらに受け渡すという契約まで結んでいると先ほど報告が入ったぞ!この時点でお前みたいに個人の趣味に贅沢に使うような愚か者ではないと一発で分かるわ!同類扱いなど以ての外だろうが!』
……何から何まで陛下の仰る通りですね。
段取りをきちんとする辺りも流石はアダマンタイト級と言うべき……なのでしょうか。
当然与り知らぬところで勝手にとんでもないことをしでかしたアニス様にはお説教……加えて躾けまで為されたとか。
何が行われたかは、私の口からはとてもとても……恐らくマッド様が見ても『まあ、そうなるな』と流すので省かせていただきます。
助けは求められたりしましたが、あえて知らぬ存ぜぬを貫かせて頂きました。
私が口を挟むような問題でもありませんので……悪しからず。
イリアも『むしろいい機会です』と見捨てていましたし、問題はないでしょう。
──そして、本題はここからでした。
新種のドラゴンの討伐を実行したのが、アダマンタイトランクとプラチナランクの冒険者……ケルビムとクロエであったことは王城内でも知れ渡っていた模様。
それもそのはず、何せ陛下が緊急とばかりに何とか集めることが出来た数少ない人員だったとのことだから。
最悪グランナイツの召集という最終手段も考えていたとのことで、そこは幸運だったと安堵していらしていました。
ただ、それでもアニス様がスタンピードにおいて3番手の功績を持ち帰ったのも事実で。
未曾有の事態だったこと考慮すれば、こちらにも賞賛を向けられるのは必然……というより、民の間ではケルビムよりもその声が多いとか何とか。
この辺りは良くも悪くも知名度とお父様も仰っていました。
ケルビムとクロエ、後『青い炎』や『紫の刃』……アダマンタイトランクとプラチナランクの面々は秘密主義の面々が特に多いとか。
ただ、アニス様の場合はそんな賞賛とは真逆に非難の声も多少は上がっている。
主に彼女を良く思わない貴族からですが……やはり独断専行という面は突かれるのを避けられないようで。
そんな対極的な意見に板ばさみになった陛下でしたが、即座に対応策は掲示なされたそうです。
『王位継承権の復権の宴と未曽有のスタンピードを無事乗り切った祝賀会を同時に執り行う。その場を以て、お前自身が王女らしく振舞うと態度を示して火消しに励め。これを罰とする!』
落としどころとしては申し分ないですね。
アニス様への賞賛も忘れず、かつ楔も打っておくのは何より効率がいい。
……その程度の楔でこの奇天烈王女の抑止になるかは怪しいところですが。
それと、最大の功労者であるケルビムとクロエについても触れない方針のようだ。
そもそも二つ名以外のことを誰も知らないから、こちらから接触のしようがない。
これまで国に仇なすどころか、益となることばかりを為しておるからあえて藪をつつくこともない、とも。
──放置していればいいだけならば、まあそれが正しいですね。
余計なことをしたらそれこそ……いえそれ以上の想像は止めましょう。
話をアニス様の方に戻すと、主役となる宴が催されるとなってそれはもう……
『王女らしくって、それ私にとって最も鬼門なところじゃないですか!?嫌です却下です断固拒否の姿勢を貫かせて頂きます!』
『むしろこの程度で済ませている分感謝しろ!同党とそんな駄々をこねて恥ずかしく思わんのか!』
『それで王女らしく振舞うことから逃げられるならば、いくらでも恥を上塗りしてやりますとも!』
それはもう凄まじい幼児退行に走っていましたね。
徹底的な開き直りまで見せて、もう清々しくなるほどでした。
ただ、これは言うまでもなく王命……どれだけ嫌がろうと周りがそうさせないのが常です。
イリアは当然として、勿論私もきっちり引きずる側に回りました。
ここで手綱を握れないでいたら、何のための助手か分からなくなりますので。
助手にそんな子守のような役目があるのか……?
アニス様だけの究極の例外でしょう、恐らくは。
……他にいるなんてことはありませんよね?
日付も余裕がないので、そこからはアニス様には魔学の研究をさせる暇など一瞬たりともありはしません。
そもそも社交界に殆ど縁が無かったというか、考慮されていなかったらしく……。
当然のようにダンスやマナーのレッスンは投げ捨てていて、ほぼほぼうろ覚え状態でした。
それに加えてドレスの仕立てもあるので、正直私とイリアのほうが動きっぱなしなくらいかもしれませんね。
マナーは私とイリアの手で半ば強制的に叩き込めばいいので、まだマシなほうで……。
『私は男性の為に踊りの技術を磨くなんて嫌なんだよー!』
……と、ダンスについてはなかなか興が乗らないようでした。
今もなかなか形にならず、早めの休憩時間を取っている最中だ。
まあ、その心からの絶叫も今なら分からないでもない。
まるで気のない異性にそこまでしなければならないのは負担でしかありませんからね……。
かつての私ならば義務感で何の気なしにこなせたのでしょうが、今の私なら……確かに考えたら気が重くなる。
──相手がマッド様ならば、話は別ですけれども。
(ただ、私がその気でも……あちらは分かりませんからね)
普段の態度は確かに軽薄で、宴となれば女性をとっかえひっかえしそうな第一印象すら醸し出している。
ただ、ある程度接していればむしろ真逆だと嫌でも理解してしまう。
対人関係……むしろ異性関係はかなりシビアなんですよね、マッド様は。
(まあ、その時が来たときに考えましょう。流石に今回マッド様が招待される可能性はそこまで高くは……?)
この時、私はすぐにそのやらかしに気付かない失態を犯してしまう。
過去を回想しながら、またいつものようにマッド様のことを考えてしまっていた。
それすなわち、傍から見れば物思いに更けている状態だ。
そんな状態の私を見て、アニス様が何をしでかすか……。
──早い話、ものの見事に脱走されました。
「ああもう、何をやっているのですか私は!今すぐ連れ戻さないと……!」
とりあえずイリアに事の次第を話して、即座に脱走現行犯の捜索に向かう。
とはいえ、脱走先の候補は王城内部に限ればそう多いものではない。
外まで逃げられた場合は無論その限りではないが……そこはイリアがそれなりの対策を施している。
どうやら、時折こちらに派遣されている侍女の一人に相談を持ちかけたらしく……。
『変装で逃げ遂せようとするならば、魔力そのものを感知してもらえばいい』……なんて洒落にならない呟きが聞こえてきたのは記憶に新しい。
そして、その仕掛けが発動した形跡はまるでない。
……ならば、行き先は一つしかないでしょう。
あの場所は、知る者以外は誰も立ち寄らない──持ち主が伏魔殿と楽しそうに語るところだ。
潜伏には適切ですし、何より状況の上振れも期待できますからね。
……長女と次男、数年ぶりの再会という意味で。
「アニス様が上振れ狙いならば、私は便乗といきましょうか」
「ユフィリア様、笑顔が怖いですよ。少々落ち着かれたほうがよろしいかと……」
え、私は至って冷静ですけど。
ちょっと口端が上がっただけで怖がられるなんて……少々心外ですね。
ただでさえ時間がないのに、随分と愉快なことをしでかしたなあと……。
ええ、ほんのちょっと微笑ましくなっただけですよ?
弟はギャフンと言わせたいからこそ勝手にいなくなるんじゃねえ理論。
そして後半ユフィリア視点はストック分から急遽挿入追加しました。
お陰でそう悪くない感じでギャグ入って満足したぜ……。
良かったな姉上、原作では逃げられなかったけどこっちでは脱走ラッシー出来たよ!
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)