転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけで、ドラゴン戦プラスアルファです。
もはや別物バトルと化していますが、これが平常運転です。


6.破天荒は相棒を得る

 

マドラーシュのやらかしたことはその言葉通りだ。

翼やそれに類するものその他諸々で空に浮くのではない。

空に足をつけて立っている……ただそれだけのこと。

マドラーシュが顕魂術を見出してからまだ間もない頃。

身体強化だけでは敏捷性が足りないと思ったグランナイツ近接戦闘組とのちょっとした議論でそれは生み出された。

『魔力を用いた外的加速』──任意属性の魔力を術者の思う通りに噴出して、望むような加速を得る単純な顕魂術だ。

これから顕魂術を教える際に、魔力操作の基礎足り得る顕魂術の誕生の時でもあった。

そこからマドラーシュはこの加速顕魂術に更なる可能性を見出した。

『加速というものを数で表したとして、仮に加速そのものを0になるようにした場合はどうなるのか』と。

聞くだけだと他愛のない疑問かもしれない。

実際、誰かと軽い検証をするだけで氷解するような簡単なものだったから。

この検証から更に広げた結果が『重力』への対抗だったのだ。

その結果が、地に足をつけるが如く宙に立てるという光景を生み出した。

 

「舞台は整えた。さあ、トカゲにはまだまだ色々な実験に付き合ってもらうぜ」

 

それだけ言うと、マドラーシュの姿はその場から消え失せた。

何をしてどこに行ったのか、把握できたのは師匠二人のみ。

幾度となく稽古の合間に剣を交えてようやく分かる、マドラーシュの開幕パターンの1つ。

二人の予想は的中しており、直後に起こった光景も想定済みのものだった。

……ちなみに、マドラーシュが単騎で挑んでいることにはあえて目を瞑っている。

彼らとしても、災害級を相手に弟子がどう戦うか見物したい気分のようだ。

スイッチの入った彼を止めることなど出来ないという諦観もいくらかはあるが。

 

「流石に見の一撃では破れないか」

「あればかりは少し厄介だから仕方ないわね。何だかんだで武器にも気を使ってるし、易々と全力では打たないはずよ」

 

高速移動で相手の視界から強引に外れるように動く。

移動の軌道は、まさに木が生い茂る森の中で描くようなものだった。

空に足をつけることが出来るならば、空を壁と定義して一瞬の足場にすることも容易なこと。

淡々とマドラーシュが口にするであろうこの手法で、連続する直線的高速移動を実現していた。

図体通りの反応速度しか持たないドラゴンはあっさりと視界が追いつかなくなる。

そこで背面を陣取り、不意打ち上等とばかりに両手に持つ剣から汎用的イメージの魔力刃を放った。

無難に効き目がありそうな氷属性と光属性の魔力刃だったが……。

それらはドラゴンの胴体に当たる寸でのところで容易く阻まれる。

 

「これが噂の魔力障壁ってやつか……見事なまでに引きこもりやがって。お前らの前世、実は亀だったりするのか?」

 

事前に知っていたからというのもあるが、マドラーシュの顔に曇りはまるでない。

それどころか、平常運転の挑発を織り交ぜるほどの余裕っぷりだ。

対するドラゴンが放つのは、目の前の大口を叩く愚者への鉄槌だった。

振るわれた爪が、何よりの証拠である。

その内容を理解したのか、単にその空気を察したのかは分からないが。

 

「おいおい図星か?間抜けなお顔が真っ赤だぞ」

「……あの、元々赤いのにそういうのって分かるものなのですか?」

「いちいちあの子の軽口に突っ込んでたらキリが無いわよ」

 

地上の方ではもはや災害級を目の前にしているとは思えない会話すら聞こえてきた。

早期表向きの引退を強いられたとはいえ、元特別近衛騎士が二人もいるという安心感も確かにある。

しかし、それ以上に全員がマドラーシュの軽口や挑発にどこか気を解されているのだ。

あまりに王族らしくないのだが、それが逆に全体の士気を下げずにむしろ上げている。

当の本人はそんなこと露知らずだが。

 

「通そうと思えば何とでもなりそうだが、折角のとっておきが壊れそうなんだよな……おっとっと」

 

ここまで数多くの魔物を屠ったマドラーシュの斬撃はその悉くが防がれている。

とはいえ、その勢いは控えめそのもの。

当たればいいなー、儲けものだよなー程度であった。

そんな緩い攻勢でいるので、随所でドラゴンの反撃に見舞われてもいた。

接近してきたところにその獰猛な牙を向けてきたり、少し離れたところに大地に叩き落さんとする尻尾の一撃が襲い掛かってきたり。

しかし、マドラーシュの見の動きというのは攻防兼ねた意味が備わっている。

更には宙に足をつける一見泥臭い戦い方がその効能をより高めていた。

 

「やれやれ、タチの悪い引きずり下ろし方だ。同じ土俵に乗るなんてよくもまあ……」

「災害級だ何だ言われても、あれじゃあ絶対的優位の1つが無くなってしまう。ただの接近戦ならマッドの方が3枚は上手、負ける理由がまるで見当たらないわね。そういう風に鍛えたから当たり前だけど」

 

宙に足をつけるということは、ただ戦う舞台が変わっただけのこと。

地上での戦い方の大半をそのまま持ちこめるに等しい。

カルリッツの言う土俵に立つどころか、引きずり出されているというのはこのことを指している。

無論、そのための舞台を整える際に余分に魔力を浪費してしまう欠点も見逃せない。

しかし、それも自然に対策が為されていた。

ここで生きてくるのが、偉志ノ大陸での特殊な修行や経験の数々と、普段から気を付けている魔力制御だ。

静から動の動きを重んじる居合のイメージ、女神の元での緻密な魔力制御の精度向上、忍を思わせる身体操作能力。

そして何より……彫魂石を作成するために会得した魂、精神、イメージなどに類される霊的精密操作。

パレッティア王国では殆ど誰も目を向けていない分野をも普通に混ぜていく。

使えそうなものは何でも使うやりたい放題っぷりは、まさに破天荒そのものだ。

その結果、他に類を見ない圧倒的魔力運用効率の実現させていた。

 

「にしても本当に面白くねえなこの大根トカゲは……まあ大体出力も分かったし?そろそろ墜とす段階に入るとしよう」

 

いつまでもチンタラとやるのは性に合わない。

あまりに単調な接近戦を延々とこなすほど、マドラーシュは気が長い方ではないのだ。

既にマドラーシュの脳裏にはシミュレーションは浮かんでいた。

……勿論、割と致命的懸念事項もあるのだがそこも織り込んでいる。

そうと決まれば、後はいつも通りの作業だった。

まずは爪や牙は届かない絶妙な位置を確保する。

数少ない接近攻撃のレパートリーの中で、最も威力が高いであろう尻尾攻撃を誘発するためだ。

挑発とこれまでの展開からすっかり頭に血が上っているドラゴンは、その動きの理由をまるで考えられない。

矮小な人間に無様な落下死を与えてやろうという傲慢極まりない愚考しか頭に無いのだ。

何の疑いもなく放たれた尻尾の叩きつけは、何度目か分からない空振りに終わった。

──そしてそれは、致命的な隙と化すこととなる。

 

「その頭は飾りなのか?」

 

身体を1回転させることで放つ尻尾の一撃は、最低限の回避から万全の態勢を整えるには十分すぎる時間を与えてしまう。

現にその動作を終えるまでの間に、マドラーシュはカウンターの準備を完遂していた。

ドラゴンがマドラーシュの位置を感知した時には、既に締めの一手が放たれていた。

もはやお得意となっている闇属性で編まれた2本の槍。

当然、そんな見た目頼りない槍は魔法障壁に阻まれてしまう。

しかし、ここで早速ドラゴンにとっての異常事態が発生していた。

──少しずつ、槍が障壁に食い込んでいたのだから。

原因は言うまでもなく、マドラーシュの放った魔力槍そのものにある。

この魔力槍には、マドラーシュ特有のイメージの結果として『防御をある程度無視する』効能が加えられている。

その地味にして凶悪な効果は、魔力障壁が相手でも例外は無い。

その上、魔力をいつもよりやや多めに上乗せすることで基礎威力を向上させている。

結果的に少ない出力で堅牢な防御を貫ける、マドラーシュお得意の初見殺しの顕魂術でもあるのだ。

 

「これで第1ラウンドは終わりだな」

 

その笑みはまさに予定調和を表していた。

天井を足場にするイメージと、そこを基軸とした風属性の加速と共に二の矢と化す。

最初の槍と同じく、闇属性魔力を遠慮なく纏わせた突貫だ。

無論、同じ刺突ということで秘められた効力も全く同じである。

先に放った槍の後を追うように……更に障壁に抉り込むように放たれている。

とっておきと称した、自身の溜め込んだ素材を耐久強化に用いたブロードソードはどこか嫌な音を上げていた。

先に壊れるのは障壁か、得物か。

──答えは当然のように前者だった。

槍が障壁の一部を完全に食いちぎり、更に自身に纏わせた魔力で完全に風穴を開ける。

一発撃墜しか頭に無かったので、障壁を破ってなお推進力にはまだまだ余裕はある。

 

「王子殿下がドラゴンの両翼を完全に切り落としたぞ!」

「おいそこ、早く離れないと潰されるぞ!──全く、あんなあっさり落とすってどういう規格外だ!」

 

すっかり見入っていた兵士たちの歓声と警告が入り混じった様子がまさに現実だった。

2本の矢は魔法障壁を破ってなお勢いを失わず、そのまま両翼の付け根付近にぶつかった。

構造上、翼の付け根というのは柔軟に動かす必要があるので比較的脆い箇所に当たる。

抵抗の手ごたえは殆どないままに、両翼は斬り落とされるのは必然だった。

更に魔力障壁を突破したのをいいことに、唐突に両翼をもがれた痛みに苦しみ落下を始めるドラゴンを足蹴にしてやる。

ドラゴンは見事に墜落事故を起こし、地面を這うという屈辱を味わうこととなった。

ちなみに師匠役二人はとっくに安全場所を確保しており、僅かに襲い来る魔物を暇つぶしがてら制圧している。

弟子がドラゴンを墜とすところも横目で見てはいたが、彼らにとっては既定路線だったのだろう。

 

「上から見下ろす景色ってのも悪くねえな。トカゲ君よ、お前もそう思わねえか?」

 

ドラゴンを叩き落した張本人は、わざわざ墜落直後の相手からでも見える位置を陣取り、楽しそうに見下ろしていた。

見事なまでに不必要な意趣返しである。

しかし、これこそがやりたかったことなので自重する気は一切ない。

そんな愚者の姿を見たドラゴンは、耐えがたき屈辱を怒りに変えて反撃の意を見せる。

 

「飛べなくなったからって癇癪か?魔力障壁なんぞに頼る自分を呪えって……やっべやっぱり壊れてやがった!」

 

放たれた小規模のブレスを大げさに回避して、いざ反撃を試みようとして気付いてしまった。

とっておきと称した耐久強化ブロードソードがいつものように跡形もなくなってしまっていたことに。

このドラゴンが恐らく最後になると判断して大盤振る舞いしてきたのだが、まさかのタイミングでの破損。

 

「(流石にここでデイジー師匠とカルリッツ父さんに助力を頼むのはカッコ悪すぎる!)」

 

だが、得物なしの状態だと火力の低下は著しい。

徒手空拳で戦えなくもないが、それでは魔力障壁を破るのに手間がかかりすぎる。

そして次善の策を考え出すと共にその声は聞こえてきた。

 

「ほんと、変なところで詰めが甘いわね!これ使ってとっとと終わらせなさい!」

 

変なところでアホな子を発動するのは第一の師匠は織り込み済みだったようだ。

こんな時に備えて、師はとっておきを持って来ていた。

新たな得物を投げて与えるその姿は、忘れ物を届ける母親の如く。

なお、カルリッツ含む他の面々はその見事なまでに雑な渡し方にツッコミを入れそうになっていた。

 

「おいおい師匠!そんな新しい顔なノリで武器渡すなって……!?」

 

そんな渡され方には慣れているのか、マドラーシュは問題なく投げられた武器を右手に握る。

──その瞬間、マドラーシュは胎動のようなものを感じた。

深海色の剣を握った瞬間、簡易的なペンダントにはめられた純黒の彫魂石が喜ぶように光ったのだ。

まるで、この剣を待ち望んでいたかのような。

しかし、今はその感覚に浸っている余裕はないようだ。

地を這っているトカゲからの更なる追撃……その兆候が見られたから。

 

「早速試してみろってことか──そういうことなら、お互い相棒テストだな!」

 

瞬間、マドラーシュは駆けだした。

ドラゴンを墜落させるという偉業一歩手前を成し遂げてなお、彼の魔力は底を見せない。

否、その滾りはこの遠征で見せた中で最高潮に達しようとしている。

そんな意気揚々なマドラーシュに対して、ドラゴンはただただ魔力を込める。

この時、ドラゴンは初めて死を意識していた。

ただただ怒りをぶつけていた相手に対して、明確な恐怖と畏怖も抱いてしまっていた。

だからこそ、命すらも燃料にして強引に最大火力を見舞う。。

直撃すれば人間を蒸発させるのは容易であろう一撃だ。

一部はそんな物騒な凶器を第二王子に向けられることに肝を冷やしている。

 

「私たちが鍛えている第二王子様がこの程度で恐れを抱くわけないでしょう?」

「普通は抱いて欲しいところだがな……まあ、あの破天荒ならば致し方あるまいな」

 

師匠二人はそんな心配は微塵もしていないのは、当然弟子への強い信頼と期待からだ。

その2つに応えるように、マドラーシュはただただ笑みを浮かべるばかり。

遊戯心溢れる子供らしさと、『死?何それ美味しいの?』と言わんばかりの狂気の双方が滲み出ている。

まさに、彼の愛称そのものと言える顔だ。

 

「やっとまともな一撃だが、遅すぎだっての。だからお前は空飛ぶだけのトカゲなんだよ!」

 

純黒の彫魂石が発する輝きはより強くなり、共鳴するかのように深海色の光が剣からも放たれる。

深淵を思わせる輝きと共に、マドラーシュは相手を墜落させた時と同じ突貫体勢に入った。

纏われる魔力も闇属性……否、それだけではない。

闇を象徴するであろう黒色の魔力は、まるで燃え盛るように猛り、荒ぶっている。

まさに、今のマドラーシュの魂の猛りを表すかの如く。

文字通り魂を刻み込むような一撃は、一瞬の拮抗の後にドラゴンのブレスを真っ二つに無力化してしまっていた。

当然、このような一撃を前に魔法障壁などまるで意味をなさない。

更にその勢いのまま、ブレスの反動で動けないドラゴンの右腕の付け根を貫き見事切り落とす。

 

「最後は親愛なる友を即席コピーだ!一撃一閃!」

 

トドメの一撃は荒ぶる魔力を可能な限り制御した巨大な光属性の魔力刃。

従来使用していたブロードソードならば、間違いなく1発でダメになるであろう量の魔力が徹底凝縮して込められている。

文字通り枷が外れたその一閃は、ドラゴンに傷を与えるどころか完全に斜め一文字で真っ二つにしてしまっていた。

……そして、彼の言う相棒テストが合格と決まった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

空飛ぶトカゲを仕留めた後はそれはもう喧しかった。

やれ『災害級を一人で仕留めるなんてもはやおとぎ話の領域だ!』とか『これでいっそ王位継承権復活とかどうです?』とか……。

お陰で洞窟側からわざわざ合流して来たイグノックス兄さんたちも一緒になって騒ぎを鎮めることになってるし。

何でこんなことになったのか、意味が分からんね。

もう7年前になりそうな黒竜なんか、こんなものじゃなかっただろ?

騒ぎすぎだっての。

 

「まあ、8歳が単騎かつ無傷でドラゴンを倒したってなったらこうなるのは無理も無いわね」

「ちょっとデイジー!?今、ドラゴンを単騎でとか言いませんでした!?マッド、なんて危ないことしてるの!お姉さんはそんな子に育てた覚えはありません!」

「クリスティーナ、喧しいぞ。むしろドラゴンくらいでどうにかなると思っていたのか?」

「いやイグノックス……兄貴分ならもう少し心配してやってもいいんじゃないのか?」

「逆にイグノックスは、兄バカが過ぎると思うのです」

 

むしろカルリッツ父さんは心配しすぎだと思うがなあ……。

イグノックス兄さんとカルシオンは割と放任主義で、どうしてもって時には手を貸してくれるから理想形なんだよね。

あ、レオン先生もちょっと頼み込めばあっさり折れてくれるから割と同じか。

……そしてクリスティーナ姉さんの眼がすっごい怖い。

エリオ姉さん、頑張って抑えてくれてマジで感謝だ。

さて、そろそろ気になっていることを尋ねるとしますか。

 

「デイジー師匠、投げ渡されたから咄嗟にこの剣使っちまったが……返却期限っていつだ?」

 

こんなヤバい代物をはいどうぞなんて、流石に出来すぎだからな。

恐らく念のため師匠自身がマジの得物を持って来て、それを貸したってところだろ?

正直、かなり共鳴してた気がするから手放すのがめっちゃ惜しいんだが……。

 

「そんな設定は無いわよ。その剣は1週間後に9歳になる貴方への誕生日プレゼントで、先駆けて渡したってだけ。それはれっきとした貴方の武器よ」

「今くらいの技量ならば、むしろ無い方が不便だろう?免許皆伝とかはそもそも無いが……まあ、一つの区切りということで受け取ってくれ」

 

……んん?俺の聞き間違いだろうか。

返却期限なしで、誕生日プレゼントで、だから俺の武器……?

あれ、珍しく思考が追い付かないぞー?

何となくエリオ姉さんの方も見てみると、ミケ族特有の人懐っこい笑みを浮かべていた。

 

「みんなで素材を集めて、鍛冶屋もきっちり選んで貴方に合わせて作った特注品で考え得る限りの超一級品ですよ!ちょっとだけ渡すのが早くなってしまったので、サプライズ感は薄れちゃいましたけど……」

「魔物由来の素材は俺とカルシオン、レオンとカルリッツで厳選したぞ。手間はかかっていないから、そこは気にするなよ」

「魔力方面の素材は私とエリオお姉さん、ルドミラが主に担当しました~!そして総合監修と鍛冶屋厳選はデイジー!グランナイツ総稼働の上で作成された品だから、大切に使うんだよ?」

 

何だかどんどん凄まじい裏話が明らかになっている。

いやいや、もう十分サプライズになってしまっているっての。

 

「マジのマジなのか?いいのかよ、こんなすごいの貰っちゃって……バチが当たらないか?」

 

1回使って分かったんだが、この剣は明らかに一線を画す性能を持っている。

魔力伝導の効率も桁違いで、それと共に耐久性も明らかに群を抜いている。

一体どれほど素材を厳選してきたのか、まるで想像が出来ねえ。

……すっげえ申し訳なくなってきた。

 

「こらこら、そこは子供らしく喜べ!変なところで塩らしくなりおって、むしろ調子が狂うぞ」

「私にとって貴方は二人目の息子同然なの。義理とはいえ息子に渡すプレゼントで労力を惜しむなんて、母親失格よ」

「……ありがとな、デイジー師匠。そしてみんなも」

 

ああくそ、何か改めてそういう風に言われると気恥ずかしさが出てくるな。

俺にとってのグランナイツは恐らくずっと変わることのない憧憬を向ける存在だ。

それと共に最高の教育係で、革命の同志であり家族って……至高の属性過多じゃねえか。

……全く、王位継承権が無くなった王族にはあまりに勿体なさすぎるだろうに。

みんなに対して色々と感極まっていると、少し早い誕生日プレゼントがまた淡く輝いていた。

その様子を見て、俺の中で閃きが走った。

 

「決めたぜ。この剣は今日から『セイリオス』と呼ばせてもらう」

「もう名前を決めたのか……」

 

セイリオスには光輝くもの、焼き焦がすものという意味がある。

言うなれば、俺なりの二重の決意表明も兼ねたネーミングだ。

 

「皆はここまで、本当に色々なものを俺に与えてくれた。その恩に報いるには、もうグランナイツを継ぐか超えるくらいの……俺なりに輝ける存在を目指すしかない、そう思った。その為には、この生を燃やし尽くす覚悟も必要だよなってことでセイリオスというわけだ」

 

まあ、言うなれば革命の延長線上にあることとも言えるな。

『魔法至上主義』への憤怒と共に、マドラーシュ・リヴェ・パレッティアの始まりとなったのは皆だからな。

要するに、これからもその初志を忘れずに貫いていくっていうことさ。

単純だがその実泥臭くてしんどい道だが、これまで通り歩いていくだけだ。

無論、俺なりに輝いてみせるって話だから王位とかそういうのは一切抜きだぞ。

 

「ならば、今回のドラゴンなど霞むくらいの大物を探さないとだな……せいぜい期待していろ」

「それはいいな。是非ともコイツに見合うほどの大物を頼むぜ、イグノックス兄さん」

「また始まっちゃった。可愛い弟分にそんなこと言われてやる気満々になるのは分かるけど~……そっちが火事を起こす気なら、私は洪水をぶっかけちゃいますからね~!」

「クリスティーナ、そこはせめてバケツの水くらいにしておきましょうよ……」

「そこまで言ってくれるのはものすっごい嬉しいけど、やりすぎは禁物よ?あんまり度が過ぎたら半日正座コース待ったなしね」

 

おおう、それだけはご勘弁願うところだ!

っていうかクリスティーナ姉さんの目から光が失いかけてるのがめっちゃ怖いから誰か何とかしてくれ。

何かマジで水責めとかされかねないぞ……この人も大概リミットブレイクしやすいからなあ。

……そんなわけで、行きよりも賑やかになった状態で俺たちはフィルワッハへ踵を返すのだった。

グランナイツ構成員が5人もいるからか、カルリッツ父さんの部下の皆様方が凄いそわそわしてて滅茶苦茶面白かったな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後は洞窟の周りに戻ってきた魔物をちょいと間引きするだけだった。

特に問題は発生せず、後は街道そのものの整備が主となるだろう。

ビッグエイプの群れは当然手を出さずに注意喚起を促すだけだし、気性が荒い連中も大した強さじゃなかったからな。

その作業が一段落したら一旦王都に戻り、俺は約束を果たしにフィルワッハ近くのクラマ族の集落に来ていた。

相変わらず街道開拓時と同じくらいの変装を施しているから、第二王子ということが引き続きバレていない。

最初は当然警戒されたが、あの時に会った子供と再会してからは割とトントン拍子で話が進んだ。

改めて礼を言われたりとか、今のクラマ族の状況を再確認したりとか、子供に渡した彫魂石について説明したり……。

そして今、集落のクラマ族を集めて講演会のようなものを開いている。

 

「今から皆様が目にするのは、王族や貴族のみが使えると言われている魔法とは大きく異なるものです。この偉大なるケルビム様が一から組み上げた、新たな地平を見ることが出来る概念──その名も、顕魂術でございます」

 

ちなみに、今回は護衛兼補佐としてセラも同伴している。

こういう演説っぽいのを任せるなら、考え得る限りで最も適任だからな。

流石に芝居がかり過ぎだって?

これくらいの方がインパクトがデカくなって都合がいいだろ。

見物人の最前列にはあの時の子供がいる。

その手には、俺があの時渡して疑似精霊を付与させた彫魂石が握られていた。

その目には、俺に対する明らかな期待が見え隠れしている。

──十二分に応えて見せようじゃないか。

 

「空など飛ばなくてもいい。そこに足をつければ、特に差は無いのだから」

 

ちょいとポエムっぽいことを口にしながら、俺はあの時と同じように翼の必要性を否定した。

あの時は『空に足をつける』というイメージの具現だったが、そこから更に深入りして『空そのものを地面と見立てる』イメージに昇華させている。

今朝浮かんだばかりだから、セイリオスを向けて指標性を補足する必要はあるがね。

それ以前に、魔力凝縮問題でまだ俺以外誰も使えないと思うが。

まあ、そこら辺は今後の課題ってことで。

いくつも視認出来る足場を作ってから、俺は縦横無尽に空を舞い出す。

その合間に各属性の球体を作り出しては動かす。

多分、傍から見れば今の俺は大道芸人みたいな感じなんだろうな。

 

「──はっ!?失敬、私としたことが思わず主の尊さに昇天しかかっていました」

「おいこら進行役、ちゃんと仕事しろっての」

 

パフォーマンスを終えると同時に戻ってきたこの侍女……何だよ尊さで昇天しかかるって。

空を駆けるってのはまだ見せたことないから、そこでびっくり仰天されるならまだ分かるんだがな?

さて、俺はここで特別ゲストを招くとしようかね。

 

「そこの少年、彫魂石をちゃんと持ったまま舞台の上に来てくれ」

 

いきなりの手招きにあの時の子供は戸惑いの色を見せていた。

まあいきなり壇上から呼び出されれば誰だってそうなるんだが、仕上げには俺とセラ以外の第三者が必要なんだよな。

──そんな俺の念が通じたのか、おずおずと壇上に上がってきてくれた。

そこで手渡すのは、臨時の武器にもなりそうな木刀だ。

何となくで買ってきた偉志ノ大陸土産なんだが、まさかここで役に立つとは俺も思わなかったぞ。

木刀って、売ってるとついつい買いたくなる品の代表例だよな?

 

「目を瞑ってイメージしてみな。この木刀の先に……そうだな、さっき俺が見せた8属性の中でどれが一番好きだ?」

「えっと……光かな。どの属性も良かったけど……うん、光だね」

「あい分かった。では、一旦舞台の端を向いて木刀を構えて……よし、目を瞑ってくれ」

 

これは、顕魂術を皆に披露した時にレオン先生に促したことの焼き直しだ。

そこに先ほどのパフォーマンスをその目で見たという情報で補強する。

流石にグランナイツと辺境の民を一緒にするほど俺はバカじゃないぞ。

 

「最後にイメージだ。今握っている木刀の先に光をイメージしてくれ。太陽の光でも、月明かりでも光なら何でもいいぞ」

「……あっ!今、何かが出来たような感じがする……あっ、光が出てる!」

 

よっしゃ、成功だな。

他のクラマ族の皆さま方も、すっかり驚いているご様子だ。

そりゃあ些細なものとはいえ、同族の子供が魔法のようなものを発動させたんだから無理もねえよな。

しかしまあ、この光景は何度見ても愉快痛快で笑みが止まらんね。

だが、そろそろ警告という名の冷や水を浴びせておかないとな。

 

「このように、この顕魂術は確かに魔力さえあれば扱うことが出来る汎用性を持つ。だからこそ留意してほしいことが2つある。与えられたからと考えなしに使おうとするのは諸君らを排斥してきた貴族どもと変わらないこと。もう1つは顕魂術は単なる救済ではなく、あくまで人間として生き抜くための自立手段でしかないこと。特に後者の考え方は大事なので各々の胸に刻んで欲しい」

 

前者は言ってそのまんま、言うなれば虎の威を借る狐にだけはなるなってことだ。

それこそ精霊と交流できるっていうところで威張り散らしている貴族連中と何も変わらないし、そうなったら文字通り人間として終わりだからな。

そうならないようにするために、後者の考え方が必要になる。

 

「魔法も顕魂術も突き詰めればただの力、または技術でしかない。担い手によって形作るものはいくらでも変わるし、それこそ善にも悪にも成り得る。まさに『魔法至上主義』が魔法や精霊を妄信した挙句、現在も嫌な形で根付いているいい典型例だ。ここまでわかれば、我々が同じ轍を踏まないようにする方法は大体分かってくるのではないだろうか」

 

流石に子供には難しい話だろうが、それ以外は大体納得しているような顔をしているな。

貴族共が国単位に対して振りまいていることが腹立たしいなら、いっそ反面教師にでもしてしまえばいい。

確かに顕魂術を暴力の方向に全力投球すれば手っ取り早い解決かもしれねえな。

だが、それはあまりに強引すぎるし、いい勝ち方とは断じて言えない。

こういう場合は、後のことまできっちり考えた完全勝利を収めるのが気持ちいいってことさ。

 

「完全に己がものと理解し、取り込んでしまえばいい。各々の顕魂術を文字通りわがものとしたその時、精霊信仰の負の影響に晒されていた諸君らが本当の意味で自由を得る権利を掴みとれる。この顕魂術との出会いを踏み台として、己が未来をその手で掴みとってくれることが俺の願う所だ。そのついでに『魔法至上主義』をはっ倒すささやかな手助けになってくれればなお嬉しいぞ」

 

……ふう、何で1年の間に2度もこういう演説しないといけないんだ?

しかも今回は身内向けじゃないし。

言わなきゃいけないことだが、こういう形式で人前で話すのはやっぱ慣れねえわ。

 

「お兄さん、このけんこんじゅつがあれば……僕もお兄さんみたいになれるってこと?」

 

壇上に立ったまま俺の演説を聞いていた子供がそう聞いてきた。

おいおい、まだあの時のことを覚えてやがったのかい。

しかもどこか目を輝かせちゃってまあ……どこの誰に似たんだ?

 

「俺みたいな生き方って意味なら出来るぞ。強くなるってなったら……それこそ何べんも死にかけなきゃならねえな」

「それは流石に嫌だな……でも、僕もクラマ族のみんなを助けられるくらいには強くなりたい。いや、危ない目に遭ってる人がいたらお兄さんみたいに颯爽と現れて、クラマ族以外の人でも助けてあげたい!」

 

あの時も思ったが、いい眼をしているなこのお子様ランチは。

それでいてなかなかに現実的で、人道的な願いを持っている。

よっしゃ、ここまで言ってもらえるなら出血大サービスしてやろうじゃねーの!

 

「よし、今日は開発者直伝の顕魂術基本講座もまとめて開くぞ!受講希望者はこの彫魂石を持って疑似精霊注入からな!」

「待ってました!とりあえず自分の身は自分で守りたいから一番乗りは頂き!」

「威力を調整すれば戦闘以外でも使い道があったりするのでしょうか……?」

「アンタだってまだ子供だろうに、こんなすげえもの作っちまって……まさに小さな賢者様だな!」

 

……何か新しい呼び名が追加されたんだが?

っておいおい!希望者この場の全員ってのは流石に予想外だ!

彫魂石、余裕を持って持参して大正解だったな……。

いや、俺はそこまでいらないんじゃないかって思ったんだがセラが『全員欲しがる可能性が高いからありったけ持っていきましょう』と聞かなかった。

結果的にはそれで良かったんだが……。

やっぱり亜人種の迫害問題は相当溝が深くて、クラマ族は特に鬱憤が溜まっていたってことがよくわかったな。

無論、これだけで簡単に解決できるほど問題は甘くないことは重々承知だ。

だからこそ、虐げられている民に与えるのはあくまで自立手段まで。

そこから先にある救いは、自分で掴み取ってこそだ。

ちなみにこの出来事をきっかけに、クラマ族の間で本当に『賢者様』と呼ばれるようになってしまった。

クラマ族の集落は後2つほど残っていて、後ほどそちらにも顕魂術を布教しにいった時に発覚した。

──そんな大層な呼び方、頼むから止めろっての!




8歳でドラゴンを完膚なきまでに倒す第二王子、爆誕。
挑発が多い?スタイリッシュポイントが欲しいんですよ。
そして魔力障壁は搦め手用いた上での正面突破。
この『防御無視』はグランサガでも極めて強力な要素です。
バトル面ではこのような感じでゲーム側要素も平然と混ざっていきます。
だんだんどこぞのコンマイ語みたいになっていく予感しかしませんが
ところでドラゴン倒したなら姉上のように呪われるとか知識貰ったりとか無いのか?って突っ込みがあるかもしれませんが、無いものは無いです。
まあノーダメで勝ったからということに現状はしておいてください
セイリオスの見た目は、ミンサガの青の剣を片手剣寄りのサイズにして精巧にした感じ。
ネーミング元は星6シンクロの狼とか、そもそもシリウスの語源だからってところで
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