転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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2024年初アップ、そして新章スタートです。
少しばかり遅くなってしまいました。


Chapter 3『集いて暗躍する役者たち』
54. 遊び場での思わぬ再会


 

──ああ、これは夢か。

こうやってハッキリ認識できるってことは、誰かかしらの差し金だろうが……。

しかし、風景も何もなくただただ辺りは黒一色に染まりきっている。

何ともつまらん景色だな……まさか俺の夢に不具合でも起きてんのか?

何も出来ないものだから、ただひたすら周囲を眺めること幾分ほど……唐突にその声は聞こえてきた。

 

『既にこれほどとは……かの女神が貴様を寵愛するのも頷けるものだ。それでこそ稀人をも超越する特異点……』

 

ああ、思いっきり覚えのある声だ。

カルマの魔石の実験と称して大暴れした後、ドレッド・ドラゴンからこんな風に言われたっけか。

女神ってのはパルヴァネ師匠のことを指してるのか?

しかし、寵愛ってなると何かニュアンスが違うんだよな……。

──そういえば、ヴィルジールとかレオン先生が他の女神の存在を示唆してたこともあったっけか。

稀人……この単語も知らねえが該当人物は一名しかいねえわな。

俺より先にアイツと矛を交えた、どこかの奇天烈くらいだろうよ。

で、俺のことを指しているであろう特異点って何だよって思うね。

珍獣扱い、または随分と派手な札付きにしてくれやがるもんだ。

 

『これならば我が魂を預けるに値するな。やれやれ、その過程で童が減ってしまったが……その淘汰も……であるが所以か……』

 

童ってアレか、空飛ぶトカゲのことだよな。

あっちから喧嘩売ってきて負けてるのが悪い、以上!

確かに、弱肉強食って意味では淘汰って言うのもあながち間違ってねえが……そこまで大層なことか?

ところで、あの時聞いた部分と全く同じところで声がぼやけてないか?

夢の中でくらいそういうところ都合よく編集して欲しいものなんだが。

ここぞとばかりに都合よくパワーアップしろよ俺の聴覚!

 

『後は……■■■■がどう見るかだな……』

 

おーい、あの時は死にかけだったから見逃してやったんだぞ?

夢の中でまで同じようなノイズかけるの止めてもらえねえか!?

余計に気になって、夢から覚めてベッドから起き上がるのすげえ嫌になるヤツだぞこれ!

そんな風にバカなこと言ってたら、いつの間にか黒一色の空間に光が立ち込めてきやがったし。

夢の中とはいえ、そんな不意打ちバルス攻撃はどうかしてるぞ!

目が潰れたらどう責任取ってくれるんだコラ!

 

『お主は夢の中でも騒がしいな……まあ、この辺りはいずれ分かる。その時まで精進せい、我が愛弟子……いや、ここは■■■■の……と呼ぶべきかのう』

 

完全に覚醒するその瞬間に、すっごい思わせぶりなパルヴァネ師匠の声が聞こえた気がした。

……折角出てきて、も師匠っぽいこと言ってくれたのはいいんだがな?

アンタまでその編集かけるのじゃどうなんだおい。

くっそ、これが女神の権力ってやつか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉上の王位復権が公に発表されたが、表向き何かが変わるわけではない。

ドラゴン退治の実績が公になったり、この間のスタンピードでの3番手の功績であることに対する応急処置に過ぎねえからな。

その上でアル兄さんに何かあったり、やらかした場合の補欠ってくらい扱いってところだ。

そうなれば、本来の代替品だった俺はその御役目から解放されるってことさ。

まあ元々知ったこっちゃないと言わんばかりに裏でやりたい放題してきた身だし、何を今更って話だがね。

だからこそ、俺も特に何かを変えることなくいつも通りに動いて行けばいい。

そういうわけで、早速俺は仕事と遊びを両立する形で半年ぶりくらいの遊び場に来ている。

 

「黒龍の余波の後だからか、そこそこの熟成度合いだな。これなら採掘の方も期待できそうだ」

 

東部には未開拓の場所はまだまだ数多い。

この洞窟もそんな一般的に言うなれば未知の領域の一つだ。

俺が『遊び場』と定義しているこの場所を見つけたのは確かイグノックス兄さんだったっけか。

元々はセイリオスの素材を求めてこの場所を見繕ったらしいんだが……。

骨のある魔物が多いってことで密かに連れてってくれたんだよな。

ちなみにどれほどのものかってなったら……まあ、9歳時点でもかなり楽しめたとだけ言っておこう。

あまりにハッスルしすぎた結果、かすり傷だらけで流血少々って感じで帰ったらクリスティーナ姉さんに盛大にドヤされたのはここだけの話だ。

で、今回ここに来たのはちょっとした調査のため。

この間のスタンピードで見た魔物の一部にこの洞窟に生息しているヤツが混ざっていたから、ちょいと関連性を調べに来た。

セラが殲滅したデーモン種もそうだし、ドレッド・ドラゴンも元々はこういうところを根城にしている。

そこから、黒龍の余波の発生元は実はここなんじゃないかって推測を立てたってことさ。

で、今も言った通り随分と血気盛んそうな顔ぶれが揃ってやがるから当たりっぽいね。

これで黒龍の余波の傾向も少しだけ分かり、更に強敵バイキングに挑める。

これぞまさに最高の一石二鳥ってやつだな。

 

「おうおう、借金の取り立て代行でも出来そうだな。ヴィルジールのところに口利いてやろうか?」

 

真っ先に突っ込んでくるのは、ガトプスと呼ばれるトカゲの進化系っぽい連中だ。

とにかく攻撃的な気性で、見た目以上の敏捷を持つ上に小規模の砂嵐を巻き起こす手品もしでかしてくる。

ある程度の量を纏めて相手取れないようでは、この洞窟においての最低限の土俵にすら上がれねえだろうよ。

にしても、いつも以上に血の気が多いのか突進スピードも更に上がってるが……それはなかなかに好都合だ。

 

「ようやくこの術名を宣言できるね。『極獄の絶対独断』(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!」

 

ウィンレベルの防御力がないとまず吹っ飛ばされる一撃だが、そのスピードと破壊力に惑わされるまでもない。

事前の軌道と呼吸を読めば、後は頭突きに合わせて左の拳をぶつけてやるだけだ。

相手の力もきっちり利用しての一発KO、なかなか心地が良いスタートってな。

それにしても、カウンターで打ち込んだとはいえ素の威力も確かに上がっている感じはするね。

ドレッド・ドラゴンとの殴り合いでも同じくカウンターをかましていたし、入り方もまるで違うが何となくの違いは理解できる。

やはり、上位種ドラゴンの魔石から抽出したイメージってのは伊達じゃねえな。

そこから小気味よく先発隊として突っ込んでくるガトプスをなぎ倒していくが、観客がいないから寂しいもんだ。

傍から見れば連続闘牛士って感じでそれなりに映えてただろうに。

 

「おおっと、お前らは学習能力あっていいな!」

 

6体目辺りからは器用なことに小規模の砂嵐を纏いながら突っ込んできやがった!

カウンターの影響を小さくしつつ相打ちダメージを与えて摩耗させようって魂胆ってところか。

脳筋そうな面構えだが、なるほどなかなかに考えたようで。

更にはデーモンも一緒になって突っ込んできたり、何か電撃ブレスとか呪いの準備と闇の月終盤のような忙しさだな!

一つ一つ対処しねえとあの世行き待ったなしの光景、俺にとって久々の日常だ!

ぬるま湯に浸かっちまってた今の俺にはいい薬になるね、それでこそこの遊び場ってものだ!

 

「呪いにはやっぱ『トリーズン・ディスチャージ』!電撃ブレスは位置調整で巻き込ませる!」

 

真っ先に対策すべきはデーモン種で最も厄介な攻撃パターンである呪いだ。

ドレッド・ドラゴンが放ったものほどではないが、それでも黒龍の余波で強化されて最低でも毒と麻痺は付与してくる見立ては瞬時に出来た。

流石に食らったら拙いので、即座に構成魔力を奪う方向性で舵を取る。

そうしながらも電撃ブレスの方向とタイミング、更に突っ込んでくるガトプスらの位置関係から回避方向も即時計算だ。

なかなかの速攻計算に、頭がオーバーヒートしそうな感覚に陥るが……この感覚があってこその生ってものだ。

──なんて思ってしまう辺り、随分と飢えては渇いてたわけか。

ドレッド・ドラゴンの時は大物との1on1だったから、今回とは別腹だ。

 

「防壁纏ってるってならキツめの衝撃叩きつけてやらあ!こちらもようやく術名付き、『アブソリュート・パワー・フォース』!」

 

カウンター気味のパンチが『アブソリュート・ヘル・ドグマ』、防壁対策の掌底打ちが『アブソリュート・パワー・フォース』

ドレッド・ドラゴンのイメージってのもなかなかのセンスしてやがるよな。

無論、防壁対策のこちらも魔石のイメージでそれなりにパワーアップは遂げている。

砂嵐のバリアを貫通して与えた衝撃は、一撃撃破とまではいかなくてもうずくまらせる程の威力を叩き出しているのだから。

これならば普通にブラフとか不意打ちにも使えるな、悪くねえ。

盛大な隙を晒した目の前のガトプスは千紫万紅で縦一文字に真っ二つにしておいて……よし、また閃いた。

 

「とりあえずお前らは一旦止まってな!」

 

新たに呪いやらブレスを放とうとしていたデーモンたちに対しては剣の雨で時間ごと影を縫ってやる。

そうすれば後は接近している連中だけなので、この後の布石に繋ぎやすいってものだ。

一旦無視する形でやや広まっている部分の天井に跳躍し、そのまま群れの中央に向けて自発的に飛び降りる。

その際には拳を地面に叩きつけることを忘れずに、だ。

 

「ウィンのちょっとした真似事、雷を添えて──を食らえ!」

 

パーカッションってのはまさに土台、これが無いとまるで成り立たない。

縁の下の力持ちって意味でも、ウィンにやらせれば静かに映えることだろうよ。

ノヒルリアとの戦いで見た強烈な局地的地震、あれを雷に属性をスイッチさせて仰々しく使ってみたわけなんだが……。

 

「やれやれ、ちょいと刺激が強かったか?」

 

どいつもこいつも見事なまでに動こうとしない……いや、動けないか。

流石は神獣グリフォン、俺のようなヒョロヒョロな拳にちょっとしたイメージ付与するだけでこれだ。

レオン先生のアイギスの盾の半分くらいの制圧力は発揮してんじゃねえの?

まあ、痺れているなら儲けものってことで……。

下手に苦しませるのは本望ではないので、そそくさと千紫万紅とセイリオス、それぞれの一刀の元に伏してやった。

 

「おいおいどうした!ビビってんだったら尻尾を撒いてお家に帰りな、追撃は止してやるからよ」

 

あれだけの数を相手を無傷で殲滅したからか、他の同類たちはすっかり困惑していたな。

一部はその異常事態を前に奥に逃げ出しているな……こいつらは追い打ちとかしないでおいてやろう。

だが、ただひたすらオロオロしている連中については利用させてもらうぞ?

こちとらまだまだ実験はしたいことはあるんだ、中途半端なことをするのが悪いってことで。

 

「バーベキュー用の火力調整実験だ、黒焦げにだけはなってくれんなよ?」

 

雷と闇属性の魔力で一匹の鳥のようなものを生み出し、無慈悲に宣言させてもらった。

これもまた、ドレッド・ドラゴン戦での反省点を昇華させるための実験だ。

あの時はカルマの魔石から持って来たイメージを全身に刻み付け、疑似的な魔力の翼やら弾幕を再現したわけなんだが……。

これがまた燃費が悪いの何の、翼なんかただの推進力代わりにしか使わなかったくらいだ。

まあ俺の魔力総量は少ないわけじゃねえから多少は許されるのかもしれねえが……世の中何があるか分かったもんじゃねえからな。

そしてもう1つ、あの弾幕を放っているとどうしても思考リソースをそっちに持っていかれちまうってことも無視できない欠点だ。

そこで思いついたのが、一転特化型の分業用使い魔の召喚だ。

我が相棒にして天災のアイツがファイヤームムの召喚というジョーカーを見せてくれたのが切っ掛けってのは言うまでもないことだろう。

雷の精霊石を基軸に、雷と闇属性の魔力で小型のグリフォンを象ることで生み出された。

意志は当然のようになく、ただ雷の弾幕を放って魔力が切れたら勝手に消えて行くだけ。

カルトやカルシオンの用いる影の召喚のイメージも貰っているが……これが意外と便利なものだった。

込める魔力量で持続時間や弾幕の強さも調整できるから、燃費と脳内リソースの問題を一気に解決できたし。

 

「その内に新たなストック、更なる実験準備完了ってな。『フル・ダークネス・バースト』!」

 

ここで新たな術名を高らかに宣言すると、ただただ重い音波が発せられた。

ドレッド・ドラゴンの魔石……否、どちらかと言うと黒龍の呪詛そのものを再現した術だ。

姉上がまんまとやられた束縛の呪いを闇属性魔力で可能な限り再現して、風属性による空気の振動で拡散して龍の咆哮により近づける。

場所が洞窟ってこともあってか、いい感じで反響してくれてより効果が分かりやすくなってるな。

グリフォン型使い魔から放たれる弾幕を避けていたガトプスやデーモンを完全にその場で縛り上げちまってる。

ネームドとかではないが、こいつらの強さは外にいる連中とはまるで格が違う。

そんなこいつらに刺さるってことは、やはり黒龍の呪詛は強大だってことか。

だが、束縛の効果ありっていうのは楽勝って意味でもないんだなこれが。

 

「おおっと、やっぱりお前らレベルだと足止めが精一杯か!」

 

唐突にデーモンが電撃ブレスを放つが、別に驚くようなことでもない。

確かにこの束縛状態は入りさえすれば強力なんだが、どこまで効くかは対象の格に左右される。

この間のグリフォンとの戦いでカルトが使ってたが、一瞬の隙を作れるかどうかって時間しか縛り上げられなかったのが好例だな。

逆に、黒の森とかで見かける魔物レベルだったら完全に行動を封じることが出来るのはカルシオンが散々見せてくれた。

ならば、今回のデーモンやガトプスはどうなのか?

まあ、その場から動くことは出来なくはなっているが……行動そのものを縛ることまでは出来ていない。

現に、遠距離攻撃手段を持つデーモンはその場から攻撃してきてるからな。

これ、知ってるのと知らないとではまるで行動指針が変わるから注意しておかねえとな。

下手に過信するもんなら、それこそ死は免れ得ないだろ。

正しい効果範囲ってのを理解してこそ、その真価を発揮できるってものだ。

他のデーモンも見習うように電撃ブレスを放ってくるが、こちらも無策ではない。

ここぞとばかりにチビグリフォンの弾幕を迎撃用に指令を発して、その悉くを無力化してやる。

相手は動けないわけだから、これで完全に固定砲塔同士の打ち合いだ。

さて、これで別動隊の相手が出来るね。

 

「わざわざ間隙を縫うように地中から出てきてご苦労さん!」

 

いつの間にか地面からワラワラ出てきているのは、地蟲の上位種に当たるキラーインセクトだ。

群体であることが厄介な地蟲の中でも攻撃力がかなり高い上に隠密性もある。

生息している傾向にある場所では真っ先に警戒しないと、あっさりと虫食い死体にされる地味に凶悪な魔物だ。

まあ、奇襲ってのはバレちまったら何の意味もねえんだけどな!

 

「お前らもそこから動くなよ!」

 

ここでようやくセイリオスを握ると、そのまま水平に回転投擲。

群体相手に酔狂な行動に見えるだろうが、これも当然新たな顕魂術の実験だ。

──狙い通り、キラーインセクトの群れの中央でセイリオスは回転を維持しながら留まっていた。

投擲する際にこれまた闇と風の魔力を込め、それを媒体に小規模の風渦を引き起こしては小柄の虫どもを1か所にまとめてつつ切り裂いていく。

カル渓谷で神獣やってただけあり、雷だけでなく風も司るのがグリフォンだからな。

あの翼から放たれた強烈な風を、吹き飛ばすのではなく引き寄せる方向で用いるというイメージを魔石から拝借したってわけだ。

俺はこの術を『ラウンドトリップ』と呼んでいる。

ちなみに、闇属性の魔力も用いているのはさっきの束縛呪詛と同じ原理だ。

引き寄せつつ束縛する、これを回転投擲というシングルアクションでこなせるから妨害用の顕魂術としては極めて有用。

デーモンぐらいの図体ってなると1体寄せるのが限界だが、このような群体が基本の魔物ならば効率的な纏め手段となる。

後はまとめて次元斬とかに代表される範囲攻撃で叩いてしまえば、効率的な殲滅となるってわけよ。

実を言うと、この術の構想そのものはかなり前から出来てたんだよな……。

ただどうしても強力なイメージが少なくて半ば開発は凍結していたんだが……。

グリフォンにドレッド・ドラゴンと強力な魔石が連続で入手できたのは、まさに僥倖だったな。

奇襲に失敗したキラーインセクトたちは、その後俺とウィンの手で美味しく調理されることになるだろうね。

なお、食すのは俺たち二人とセリアードだけだろうけどな……食わず嫌い多すぎだ!

 

「チビグリフォンも継続でやりたい放題させてもらうとして……さて、束縛放置プレイなんてして悪かったね」

 

束縛の影響が薄まりかかっているし、ここは一気に勝負に出るとするかね。

バーベキュータイムの延長料金がてら、チビグリフォンに魔力を注ぎ込んで追加の弾幕を張らせる。

キュイのファイヤームム召喚には無い利点の1つ、それがこのお手軽延長だ。

そこから『ラウンドトリップ』の継続を中断させ、一旦手元に戻ってきたセイリオスで続けざまに魔力刃を溜め気味に放つ。

よしよし、そっちの方に気を取られているからこの間に全身に魔力を行き渡らせるとしよう。

 

「『一時の中に永遠を見よ』──魔力の凝縮も似たようなものってな」

 

グリフォンから直に吸い取った時の自動展開、そしてドレッド・ドラゴン戦で戯れで行ったイメージ展開で感覚は十分だ。

無駄を徹底的に省く形で魔力を凝縮して、空き容量となった部分に更に流し込んでは圧縮……瞬時にこれを繰り返す。

さながら圧縮魔力の溶接作業でもしている光景が体内で広がっていることだろうな。

あの威力を無駄なく再現するために魔力操作は完全にガン攻め態勢だが……後のことは知ったこっちゃないってね。

千紫万紅をいつもの構えから一呼吸置く頃には、既に最小限最大効率の再臨は完了だ。

魔力の過負荷で色々精神が持っていかれそうになるが……それもある意味いつものことだ。

ちょっとくらいテンション振り切れる程度のことだ、何ら問題はない。

 

「最後はハデにロックをかましてやろうかね!」

 

体内でギリギリまで溜め込んだ魔力が放たれる様はまさに鉄砲水が如くってところ。

しかもその大半が圧縮魔力と来れば、それはもう狂おしくなるじゃねえの。

暴虐とすら言える奔流だが、逆らうことは一切せずに身を任せる

爆発的加速と理解していれば、むしろその流れのまま微調整する形で支配する方が性に合ってるのでね!

更に多量の魔力の一部は千紫万紅の凝縮魔力刃にも回してやることで、刀身と速度の両側面から威力を底上げしていく。

お陰でグリフォン戦の時よりもスピードが凄まじいことになっていた。

──が、それでも加速を制御しきれるかがかなり怪しいなこりゃあ……!

少しでも無心に近づけ、とにかく精確に千紫万紅を振るっては目につくところを斬り落としていく。

そんな想定外な暴走一歩手前の結果、ガトプス及びデーモンの群れを無傷で突破することは出来た。

その瞬間に凝縮魔力は綺麗さっぱりなくなったが、まあある意味ピッタリってことで……。

 

「■■■──!」

 

あ、やっべ1体だけ見事にやりそびれてた。

想定外に加速しすぎて、斬撃がすり抜けちまったな……やっちまったZE☆

こりゃあ、まだまだ魔力コントロールも刀の振るい方も精進が必要だな。

 

「やれやれ、最後は泥臭く戦ってやるか……?」

 

面倒だねえと思ったその瞬間に感じたのは、明らかに俺以外の魔力だった。

何事かと目を向けるとどこからともなく雷光が走り、こちらに向かっていたデーモンを跪かせていた。

……この魔力の感じ、すっげえ覚えがあるんですが。

 

「全く君というヤツは……油断大敵とはこのことだぞ?」

 

突貫をかましたのは、俺たち次世代王族組全員とどこか似ている金髪の男だ。

背丈は俺とそう変わらないが、その雰囲気は悪童全開の俺とはどこか対極なものを感じる。

……なるほど、通りで知ってる魔力のはずだよ。

ちょっと見ない間に泥臭くなったっていうか逞しくなってまあ。

さながら、流浪の貴人って感じになって更にイケてるじゃねえの。

 

「うっせ、実験だからこういうこともあるってのは想定済みだ!とりあえず、俺もちょい怠いからトドメ合わせ頼んだ!」

「やれやれ、減らず口と無茶振りは健在のようだ!」

 

金髪の流浪人は光属性の魔力刃で斬りかかり、俺は胴体目掛けてセイリオスを構えなおしてスティンガーを放つ。

片や首狙い、もう片方は胴体真っ二つ狙いと双方必殺と言える一撃。

俺たち二人の狙い通りに斬られたデーモンは当然そのまま事切れ……楽しいお遊びは幕を閉じた。

とはいえ、俺自身はまだまだメンタル沸騰状態だけどな!

周囲に他の気配を感じないことを互いに確認してからは感動の再会だ。

 

「その姿だと初めましてというべきなのかな。『無慈悲な主役』ケルビム殿?」

「事情を知らねえ輩の前ではそうしてもらわねえとだが……ったく、それなりに擬態してるってのによく分かったもんだな」

「君とはもう7年の付き合いなんだ、魔力と気配があれば見破るなんて造作もないことさ」

 

こんにゃろう、嬉しいことを言ってくれる。

それなら今はケルビムでいる必要性はまるでねえな。

 

「まあ、ひとまず──久しぶりだな、オルタ!」

「久しぶり、マッド……ってこらこら、誰もいないとはいえ王族が安易に人に抱き着くのは感心しないぞ?」

 

この時の俺の顔は果たしてどれほど緩んでいたことだろうな。

かれこれ1年くらい顔を見てなかったんだ、男同士だが再会のハグくらいは許してくれ。

仕方ねえだろ……心配なもんは心配だったんだからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所が場所なのでいつまでも感動の再会に浸っているわけにもいかない。

再会早々ではあるが、まずは互いにやるべきことをやってからということで。

デーモン、ガトプス、キラーインセクトの素材を収集しながら再会した二人はのんびりと雑談に興じていた。

 

「まさか同じ目的だったとはね……私はギルドからの依頼で、君は自発的という違いはあるけど」

「差し詰め黒龍の余波の調査ってことで誰もやりたがらず、有数の実力を持つオルタに白羽の矢が立ったってところか?ランク今どの辺だ?」

「厳しい依頼を率先してこなしていたら、何故かあっという間にゴールドになってしまってね……お陰で色々勘繰られて面倒なことこの上ないよ」

 

マドラーシュの見立てでも、オルタの実力ならば一発飛び級でプラチナは堅いだろう。

そもそも、魔物の強さやらその他諸々が激変しつつある情勢で今のランクシステムそのものが合っていない。

それ以前の話、全体の底上げが必要になってくることだろう。

下手な戦力拡充は無用な疑惑を生みかねないという意見もあるかもしれないが、流れを汲み取れる者は軒並みこの風潮にいる。

 

「これらの素材は多少持って行って調査報告の証拠として使うわけか。こいつら全部殲滅したってセラも言ってたし、他のやつの証言とも合致すんだろ」

「そうか、君たちもあの特殊スタンピードの当事者だったね。全く、竜の上位種に単騎で挑んで勝つなんてますます無茶苦茶っぷりに磨きがかかっているようで何よりだ」

「何ならお前に面白いヤツけしかけてやろうか?そうすりゃプラチナに上がって面白い二つ名もついて一石二鳥だが」

「それは流石に遠慮させてもらおうかな……冒険者稼業は日銭とちょっとした目的の為で、本業ではないからね」

 

そもそもマドラーシュも冒険者稼業は本業ではない。

が、顕魂術の実験や鍛錬で生き死にを彷徨い過ぎた結果が今である。

もはや本業とか金稼ぎやら素材収集以前に、ただの趣味の一環にすらなっている。

必ず二つ名についている『無慈悲』は半ばその手の意味も兼ねている側面もあるとか何とか。

 

「ちょっとした目的っていうと、家門から距離を置くためってところか?」

「最初はそれが主目的だったね。今はもう1つ指令を受けていて、その為にとある人の周りを監視しているんだけど……」

 

陽ノ花家の家庭事情……もとい当主継承関係の事情が複雑なのはマドラーシュもよく知るところだ。

次男オルタと長女ミココロの間は特に問題はないのだが、問題になってくるのは嫡男である長男の存在だ。

パレッティア王国ならば、血筋で簡単に解決と行くところだが……そこは風土の違いである。

そこを理解しているからこそ、友人関係にあってもマドラーシュは踏み込むことはしない。

少なくとも、何もかもが自身と正反対な存在に対して無理強いすることなど何もないのだ。

時が来るまではひたすら見守り、道を誤るようならば引きずり戻す……彼なりの友誼と言ったところか。

だからこそ、気になるのは後者の理由だが……。

 

「その様子だとかなり機密事項っぽいな……おいオルタ、今回の依頼は王都で受けたか?」

「まあ、今の拠点は王都だからそうなるが……急にどうしたんだい?」

「たった今決めた。折角の再会だから友人兼客人として俺の離宮にご招待と行こうじゃねえか」

 

パレッティア王国が誇る破天荒節、ここに炸裂。

その直撃を貰ったオルタが一瞬フリーズしてしまったのは言うまでもないだろう。

しかし、かつては散々貰った攻撃でもあるので復帰も比較的早かった。

無論、早いから何ら意味があるわけではないのが悲しいところだ。

 

「こらこらこら待て、待つんだ、待ちなさい!私は一応流浪の身だって分かってるよね!?」

「こまけえこたあいいんだよ!ほら、どうせグランナイツはみんな知ってるし……ああ、紹介したい顔ぶれもいるからついでに済ませられるな!」

 

もはや完全にテンションが振り切れてしまっている節すら見受けられるだろうが、無理もないことだ。

偉志ノ大陸がゴタゴタし始めてから顔を見せることが出来ないことはマドラーシュにとって密かに不安の種だった。

それが友との再会という形で多少は拭えたのだから、いつもの3割増しのはっちゃけっぷりになるのは当然と言えば当然だ。

 

「ああ……この止まる気がまるでない感じ、懐かしいなあ……何だか胃が痛くなってきたよ……」

「安心しろ、姉上が父上に与えている胃痛よりは絶対にマシだってことは確実だ」

「胃痛にマシも何も無いと思うぞー……」

 

対するオルタは、偉志ノ大陸においての武勇伝を思い出しては遠くを眺めるような目をしていた。

口調そのままのふわふわ行動を発揮しやすいユナとお転婆で行動派なミココロも加えたてんやわんやの日々。

楽しかったと同時に、色々と巻き込まれては後始末も一緒にしたりと苦労することも多々あったり。

各家門が抱える問題や民衆の困りごとを多々解決しているので全体で見れば益となっているのは間違いないしそこは褒めるべきところだろう。

しかし、時には大妖怪や妖魔王相手でも一切引けを取らずに行動を起こしてしまうほどの突貫行動には度々頭を抱えていた。

そのような行動も、こちらに全く損の無いように動いている狡猾さもあって正面から咎められないおまけつきなのもタチが悪い。

父からはむしろその姿勢を見習えとまで言われているが、逆立ちしてもそんなことは出来ないだろう。

 

「そうと決まればまずはオルタの馬を回収して再合流、んでもって王都まで一気に戻っちまうぞ!ついでに採掘もしていくか!」

「一旦落ち着いてくれ!採掘するのはいいけど、そうなったら流石に1日で王都入りは無理があるんじゃないかな!?」

「ええい、全☆速☆前☆進で行けば大体何とかなるだろそんなもん!」

「何とかならないから!何でいつもに増しておかしな精神状態なんだ君は!」

 

思わぬ形でこれまでとは逆のシチュエーションが行えることにマドラーシュのテンションは鰻登りである。

それを必死に宥めるオルタという構図は、偉志ノ大陸の住人が見たらさぞ暖かい視線を送ることだろう。

ちなみに、結果的に採掘に熱を上げてしまったことが理由で強行軍は無事にお流れになったことは言うまでもないだろう。

 





というわけで読者の皆様、遅くなりましたがあけましておめでとうございます。
今年も『転生疑惑な破天荒の彫魂革命』をどうかよろしくお願いいたします。
さて、新章早々新たなレギュラーキャラのご登場……もとい再登場。
グランサガでの作者の推しその1、オルタでございます。
タイミング的にはグランサガ側の2章が終わった直後なので、加入タイミングとしてはジャストなんですよねこれ。
で、2章ラストであんな当社比塩投げてやる展開書いておいて次の章スタート早々にいきなり実験がてらの雑魚戦……何してるのやらか。
挙句どこぞの琰魔竜やら鎧黒竜モチーフが出てくる始末ですからねえ……。

ちなみに、冒頭の夢はドレッド・ドラゴンとの念話回想。
明らかに姉上と違う話をしているのは分かると思います。
これがどんな意味を持つのか、それは現状蟹の味噌汁ってことで。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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