転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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【朗報?】3章ストックやっと執筆完了。
早速4章に取り掛かっている状態です。
さて、本上げの方はまだまだのんびり回です。



56. 光輝な流浪は合流を果たす

 

早馬という存在がいたとしても、それは所詮馬という生き物の括りの中での話でしかない。

いくら金を積んで良い馬を手に入れたとしても、必然的に脚の速さには限度というものが生まれる。

だからこそ、この世界ではまだ非公開であってもより早い足は存在するわけで。

アニスフィアが開発した魔女帚やエアドラもその一角に当たる。

なお、この二人が相乗りしている存在はそれらを遥かに上回るオーバーテクノロジーなわけだが。

 

「悪運が強いと言うべきなんだろうけど……実は狙っていたんじゃないかって思うよ」

「そう言いたくもなるな。しかもたまたま馬を入れるスペースすらあったという都合のよさとあっては、もはや数え役満ではないか」

「主役はチャンスを逃さないものだ……ってな。そもそも乗せてやるって言ったのはそっちじゃねえか」

 

黒龍の余波の発生現場の調査を終えた翌日、マドラーシュとオルタは日が上がらない内に王都に向かっていた。

その道中で東の玄関口と言える に足を運ぶことになったのだが、そこでどちらにとっても見覚えのある顔を見かけた。

話を聞くと、『V3社』がちょっとした商談の最中とのこと。

顔なじみがいるならばついでに顔を見てやろうと、足を止めるのは至って自然な話だろう。

 

「にしても、まさか俺ら全員が見事に共通タスク持ってるとはねえ……世の中狭いもんだな?」

「ヴィルジールはまだしも、まさかマッドが彼女を保護してるのは想定外だったよ。お陰で指針も色々固まったから助かったし、感謝以外の言葉がないんだけども」

「人脈という一点についてもまさに豪運だな。実は全ての女神の加護を受けている、なんてオチがあったりしたらより面白いが」

「そんなんレオン先生でも真っ青だろうが。マジであるんだったら今すぐ封じてえよ、俺には過ぎた力だ」

 

エアーシップ、またの名を空飛ぶ密室内であることをいいことになかなかの機密事項を平然と話す3人。

そもそもこの話を理解できるのは、偉志ノ大陸の重鎮組及びパルヴァネ、そしてグランナイツくらいのもの。

とはいえ、ここが王国内である以上はどこに目やら耳があるか分かったものではない。

些細な情報から致命打が起こり得ることを重々知っているこの顔ぶれだからこそのセキュリティ意識とも言えるだろう。

世界の裏に足を踏み入れている者たちは、平然とその隠し刃を役割通りに忍ばせていた。

 

「そういやヴィルジール、我が愛弟子は元気にやってるのか?随分とハードスケジュールをこなしてるってのはカドラン氏から聞いてるんだが……」

「おや、確かその弟子の令嬢とは3年になるんじゃなかったか?それでちゃんと忘れていないなら、ミココロが言っていた『フラグブレイカー』とやらにはならずに済みそうだね」

「……ミココロのやつ、一体何の本から引用しやがったんだ?」

 

ちなみに天ノ川家直系の箱入り娘が『ふらがらっく』と言い間違えたのはここだけの話である。

因果を歪める、という意味では全くお門違いというわけではないのだが……相変わらず残念な言い間違いである。

そもそも何で知っているのかは、彼女の実家にはそれはもう膨大な書物があるから。

離宮にもいくつか写しがあるほどにはマドラーシュも世話になっているほどだ。

なお、その内容はどう考えても王国内でおいそれと公開できないものばかりなのは言うに及ばず。

 

「ああ、最初は少々ハイペース気味にあちこち寄こしてしまったが……恐るべき適応力で悉く片付けていたとも。今は少々長期の任に当たらせているから手が離れている状態だが……何、知らせが無いのは良い知らせと言うくらいだ。いずれ何かの拍子で再会も有り得るだろうよ」

「まあ、元気でやってんならそれでいいさ。アンタがそこまで言うなら、どれほどになってるかが俄然楽しみだね」

「こらこらマッド、あまり気が多いのは感心しないぞ?マゼンタ公爵令嬢の婚約が解消となったんだから、そっちに集中しないとダメじゃないのかな?」

 

つい数日前にあった放浪先の重大発表を持ち込んでくる辺り、陽ノ花家次男坊も大概地獄耳持ちである。

しかし、今回ばかりのマドラーシュは一味違った。

相手が相手だからという理由もあるし、それなりに流れも読んでいる。

事前に考えずとも、返しの1つくらいは簡単に浮かぶ状況であった。

 

「ヴィルジールせんせー、自分のことを棚に上げて人のそういう事情に突っ込む人ってどう思いますかー?」

「そんなオルタ君だが、依頼の最中で助けた女性に詰められて石化していたな?全く、調和の女神も陰で呆れ果てていたぞ」

「何で君がそれを、よりによってパルヴァネ様と一緒に見ていたんだい!?」

「うわ、流石パルヴァネ師匠抜け目ねえな……俺も気を付けよっと」

 

なお、先程オルタも指摘した正式な婚約解消についてもパルヴァネとヴィルジールは把握済みだ。

何なら、その後のやり取りもちゃっかり覗いていたりもしているくらいである。

これらの出来事が偉志ノ大陸にてガールズトークのいいネタになっているのは、もはや言うまでもないことだろう。

妙なところで外堀みたいなもの埋まっていくのもまた、この破天荒のツメの甘いところと言える。

 

「そら、着いたぞ。グランロードやその仲間たちにもよろしく伝えておいてくれ……特にラインヒルト君に」

「何でラインヒルト先生は名指しなんだよ……相変わらず胡散臭え物言いだ」

「そろそろ頃合いだろうからね……まあ、後ほど分かるはずさ」

 

何かを隠しているのは明白ではあるが、あっさりタネ明かししては面白くないと言わんばかりの口ぶり。

そんな胡散臭さ全開の物言いではあるが、3年の付き合いとなればいい加減慣れてしまうものらしい。

面倒なことになったとしても、また相まみえた時にでも文句を言ってやればそれでいい。

生きてさえいればどうせまた顔を合わせるのだからと、挨拶もそこそこに別れは至って淡々としたものだった。

東から王都付近まで相当な時間短縮を図れたお陰か、二人のひっそりとした帰還は昼時よりやや早いくらいといったところだ。

 

「もうちょい足の補強はしたいんだよな……あんなトンデモを体験しちまうとつい思っちまう」

「これだけ広大な土地を持つんだ、あそこまで行かずとも血流の改善は急いでも損はないかもしれないね。それこそアニスフィア様の出番じゃないかな?」

「どうだろうな……些か石橋を叩いて壊す気質持ってる辺りが気がかりだが」

 

離宮までの道すがらの会話は至って真面目なものだった。

マドラーシュとオルタがエアーシップに乗船すること自体は今回が初めての事ではない。

特にマドラーシュは、1年前に世界の果てに行くほどの大盤振る舞いの恩恵も受けたほどである。

そんな二人を以てしても、その利便性にはただただ唸るばかりで。

そこまでとは行かずとも、革新的な足を欲するのは必然であろう。

しかし、その為には色々と障害が大きいのもまた悲しい現実であった。

 

「こっちは病的なまでに保守っぷり発揮してるからな……ったく、魔物の状況とか東側の変化で潮目くらいは感じ取ってほしいもんだね」

「この間の黒龍呪詛のスタンピードがいい例だ。緊急性が高かったから仕方ないとしても、君とセラが片付けてしまったからこそ危機感を感じる者はなかなかに少ない。今日潜ったあの洞窟の魔物が平然と発生するようになったら……」

「俺としては歓迎だが、まあどうなるかは言うまでもねえだろうよ」

 

デーモン、ガトプス、キラーインセクト……『遊び場』と称する洞窟内で戦った面々を思い浮かべて二人は苦笑した。

新種のドラゴンとされるドレッド・ドラゴンばかりが槍玉に挙げられているが、これらも既存の魔物と比較すれば遥かに強靭だ。

そうでなくても、マドラーシュが剣を握り始めた頃から東……それこそカンバス王国から流れ着いたのではないかとされる魔物すら現れている。

もしかしたらこれからは、アーイレン帝国方面の魔物が変則的に発生する可能性も有り得るかもしれない。

いくらでも枝が発生し得るほど強烈な潮目が王国を中心に巻き起こっている。

先を行く二人の共通見解であり、それは一つの事実であった。

 

「まあそんな話は後にしよう。というわけでオルタ君、ようこそ我が城、もとい離宮へ!」

「魔窟という表現の方が相応しいんじゃないかな……まあ、お邪魔させてもらうよ」

 

工房を兼ねているという意味では強ち間違いではないのが面白いやら悲しいやらである。

ちなみにだが、王城の敷地に入る際も二人して気配遮断を行っているので誰にも気付かれていない。

偉志ノ大陸で鍛えられている二人にとっては、この程度朝飯前のことであった。

……誇れることかと言われたら、断じて違うが。

 

「お帰りなさいませマッド様……そして、随分と懐かしい方をお連れですね」

「俺たちだって散々白夜宮で世話になったんだ、俺らも招かないと流石に不公平ってやつだろ?」

「そんなこと関係なしに引きずられたんだけどねえ……まあ何にせよセラも久しぶりだね」

 

当然のように真っ先に出迎えた専属侍女でも、この再会は予想だにしないものではあった。

が、その手の唐突な来客への対応は至って手慣れている。

むしろ最近はこの離宮が静かになる日の方が珍しいほどで、もはやこちらが平常運転とすら言えるほどだ。

この離宮に日常的に訪れる人物の数はもう両手の指で数えるのも不可能になっているのだ、それも当然である。

 

「セーラー、お菓子が無くなっちゃいそうだから補充した方がいいと思う……ってあれ、オルター!先日ぶりってやつだね!」

「キュイ!?どうしてマッドの離宮に君が……んん?待った、奥からもまた見慣れた人影が見える気がするんだけど……」

「マッド、思ったより早かったね……って、オルタ!?何でマッドと一緒にこの離宮に帰ってきてるの!?」

「ちょっとちょっと、まさかの組み合わせじゃない……確かに、貴腐人界隈の誰かが見たら一発で書籍化待ったなしの絵面ね」

 

どこからか出てきたのは赤い髪が特徴的なミケ族……騎士団が誇る天才にして天災のキュイ。

そんな彼女がマドラーシュの隣に立つ美男子に再会の挨拶をするのを皮切りに、一気に場が湧き立った。

既知の間柄だったのか、オルタも驚愕のあまり声をやや大にするところにラスも後からやってきて連鎖していく。

ちなみに、王都屈指の恋愛小説オタクの名狙撃手の発言は誰も気に留めてすらいない。

意味を理解している者はスルーしているし、そもそも分からない者は馬耳東風なのだから当然と言えば当然だ。

 

「おや、皆さま顔見知りでしたら話は早いですね。これはウィン様の救援に向かった方がよさそうですね」

「俺は来客の皆様のお相手してるから、そうしてくれると助かる。ああ、この中で使えそうなのは遠慮なく使っていいぞ」

 

思わぬ時短の道中のお陰か、二人が帰還したのはちょうどお昼時少々前という時間帯。

オルタとの雑談をしながらも、その懸念を片隅に留めている辺りがこの破天荒の抜け目のなさである。

もはや阿吽の呼吸とばかりに主従は状況の共有を行っては素早く役割を分担、ついでに素材の提供まで行う。

普段のブレーキ知らずのやりたい放題っぷりで隠れているが、頭の回転が速いのはこの主従の最大共通事項だ。

それがロクでもない方向に舵を切られてばかりだが、今回ばかりは極めて有能動作に繋がるのだから世の中分からないものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの部屋の賑わいはなかなかのものだった。

それもそのはずで、住居の主とその専属侍女含め総勢9人の昼食会となってしまったのだから。

まさかのマドラーシュまで厨房ヘルプの要請が届いた程と言えば、その忙しなさは想像できるだろうか。

まあ、その原因は見た目に似合わないとんでも胃袋を持つ彼女の存在があるからなのだが……。

 

「ったく、前から思ってたんだがどういう胃袋してやがるんだ?」

「す、すみません……マッド様の大盤振る舞いに応えなきゃってつい……」

「安心しろカルト君。少なくともこの程度でガタガタになるほど我が家の食事情は柔じゃあない」

「マッドのやりたい放題において最大の恩恵だからね……昔からこの辺りは世話になりっぱなしで罰が当たりそうだよ」

「持ってくる食材もちゃんと厳選されてるし、そんなのを昔から食べられてるラスとキュイは確かに羨ましいね!」

 

幼馴染が早期に冒険者稼業を始めてからの8年を思い返してはその有難みにラスはただただ頷くばかりだった。

その光景を想像してはロムが真っ先に羨むような口振りだが、セリアードやナマリエも似たような表情をしている辺り割と共通事項なのだろう。

ちなみに、倒した魔物はその素材を徹底的に無駄なく扱うことをマドラーシュに叩き込んだのは現在も放浪中のルドミラだったり。

『生き延びることも立派な強さの要素』という建前で、その他サバイバル技術も含めた知識を実戦を以て叩き込んだとか。

お陰でますます王族らしからぬ存在になっているが、むしろそのような方針だったので誰も文句はつけなかった。

そしてその知識の一部はマドラーシュからラスとキュイにも受け継がれており、この二人も多少なら一文無し生活も出来なくはなかったりする。

とはいえ、ラスはともかくキュイは無一文であることに耐えられないのでそれを率先して行うことはまず有り得ないだろうが。

 

「やりたい放題というのは耳にしていたけど、こんなところにも手が及んでいる辺りは流石というべきなのかな?」

「あんまり慣れすぎるのも考え物よ?このおバカのやりたい放題に付き合ってたら、心臓がいくつあっても持たないんだから」

「俺も時たまヒヤりとすることがあるからな……むしろオルタも止める側に来てくれると、負担が減ってありがたいのだが」

「ははは……まあ、考えておくよ」

 

そんなやりたい放題っぷりに対して、オルタはいつもよりは距離を置いた感想を添える。

この場においては、あくまでマドラーシュの素性を知る許可を得たほどに信頼を得た流浪の冒険者でなければならないから。

 

「にしても、俺が壁の華になっている間にお前らが知り合ってたとはねえ……あまりの世間の狭さってやつにあらまびっくりーってヤツだ」

「え、ウチはむしろこの繋がり予測してたよ?オルタって何かマッドに雰囲気似てるし、冒険者同士ってなったら同じ仕事で張り合って仲良くなってないかなーって」

「言われてみれば、マッド様とオルタさんって外見も少し似ているような……身長も近くて、髪の色も近くて……」

「お、マジかセリアード。ならちょっと髪型似せてみるか……」

「……私の姿を真似て変なことだけはしないでくれよ?」

 

忙しない行き来の合間にオルタとラス達一行が知り合った経緯はきっちりと聞いている。

月光の森で魔物が異常行動を起こしているとのことで、調査に向かったら先んじてオルタが現場にいたという。

最初は当然互いが互いを疑ってかかっていたが、どこからか現れた呪術師の存在から一気に共闘ムードになったとか。

マドラーシュが王城でパーティに出席している間にこれらが起こる辺り、何とも間が悪いことだろう。

そしてキュイの指摘に対し、オルタが内心冷や汗をかいていたことを知るのは当然マドラーシュのみだ。

 

「雰囲気ねえ……このバカ王子も5年くらい経てば少しはオルタみたいになるってことかしら」

「5年って言うと、コイツは二十歳か……流石に無理がねえか?」

「童心が抜けたマドラーシュ様か……俺もイマイチ想像できないな」

「そうだそうだー!マッドはウチとずーっと楽しく研究開発するんだから、変に変わらなくていいよ!」

「待ってキュイ、それは流石に近い将来色々な人の胃が潰れちゃうからダメだってば……やっぱり二人ともおとなしくなってほしいところだよ」

 

セリアードの呟きを皮切りにマドラーシュの近い未来に想像を掻き立て始める。

まあ、ほぼ全員が結局は変わらないという結論にすぐさま至っているようだが。

言い出しっぺのセリアードも消極的に賛同しているのか、苦笑いを浮かべるばかりだった。

 

「何を言うのですか皆様方、やりたい放題こそ我が主の象徴ではないのですか!?どんなマッド様でも私はついていきますが、やはり暴虐武神でこそでしょう!」

「それを言うなら傍若無人だっての。っていうか、お前が本来アイツを矯正する立場だろうがよ……」

「え、矯正?その効果はどのようなもので、いつ発動するものなのでしょうか」

「むしろこっちを先にどうにかしたほうがいいんじゃないかしら……」

 

そんな微妙な空気を切り払うように登場するのが、食後のお茶を持って来た残念侍女である。

入室と共に流れをぶった切るかの如く爆弾を投下しては場を見事なまでの混沌に陥れていく。

とはいえ、今度は自分が渦中の中心になってしまう辺りはやはりこの主あっての従者か。

 

「あの、それで……どうしてマッド様はオルタさんをここに連れてきたのでしょうか」

「そうだよ、わざわざこの離宮まで連れてくるんだからよほどの用があるんじゃないの?」

 

そんなカオスな流れに待ったをかけるのは、このいつもの空気に的確に順応しつつあるセリアードとロムだ。

以前ならばあわあわとしているところを、きっちりと流れを断ち切る役目を果たせるくらいにまでは成長を見せた。

元が箱入り娘のようなところがあるから、その成長っぷりは戦闘技術や顕魂術だけに留まらない。

マドラーシュは内心で感心しながら、そのアシストに乗ることとした。

 

「当初はちょっとした厚意でお前らと引き合わせようと思ってたんだよ。既に知り合ってるようだし、次のステップに行かせてもらうがね」

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

軽い雰囲気を一掃するとともにそう告げられると、主に倣うかのようにセラもその表情を真面目一辺倒にした。

そんな変貌っぷりに対して、ラス、キュイ、オルタの付き合いが長い3人が殆ど無いも同然の自然な適応っぷりを見せる。

とはいえ、残りの顔ぶれも初めてのことではないからか3人に遅れながらも戸惑いを見せることなく表情を引き締めていた。

 

「ちょいと真面目な話になるが……ああ今から話すことはオルタも知っているからそこは心配は無用ってことで。とりあえず、先日の宴で二人の婚約解消が確定、更に姉上が俺と入れ替わる形で王位継承権が第二位となることが周知された……が」

「黒幕が分かってないから、表向き取り繕ってるってことだね……無難なやり方だ」

「アルガルド様への容疑は何とか晴れましたが、相手の次なる一手がはっきりしていない状況ですね」

 

卒業祝いの宴の終わりで起こった事件については、ラス達はあくまで凡そのところを知るのみである。

マドラーシュですらかなり動きづらい状況にあったので、彼らとしても傍観の体を貫くしかないのが実情だったと言える。

その分、ユフィリアとアルガルドの咄嗟の機転は光るものがあったとも言えるし、それはマドラーシュがこれまでのやりたい放題の功績と暗に言えなくはない。

それでもマークを外してしまったことで時間差で出し抜かれたという失態に変わりはなく、そのことに悔しさと腹立たしさをこれでもかと抱いていた。

 

「アニスフィア様が第二位か……アルガルド様を陥れようとする流れに対する保険かな?表向きは発破をかけるための対抗馬なんだろうけど」

「そうなると、奇天烈王女様も色々狙われかねないんじゃねえか?あの国王にしては随分珍しい決断をしたもんだな。下手すれば国が割れる博打だろうに」

「カルト、王様に対して流石に失礼すぎじゃない?不敬罪とかでしょっぴかれちゃうかもよ?」

「その言い草が間違ってないのが悲しいところなのよね……仕方ない面もあるけど、もう少しどうにかならなかったのかって思っちゃうのよ。所詮は庶民の意見に過ぎないけれど」

「『否定は対立にあらず』って格言もあるし、不敬なんて言い出す輩は俺やグランナイツのみんなで黙らせるから、遠慮なく言いたい放題かましてくれ。大事なのは、それらを如何に調和の元成り立たせるかだからな」

 

姉にも話したこの格言を以て、言いたい放題を許容するマドラーシュの姿は確かにこの国の王族らしさは皆無だろう。

しかし、場所が変わればその在り方は時一つで貴きものに変貌することもある。

その気質そのものと言える場所からやってきたオルタは、この時友人が見せた気風に内心で笑みすら浮かべていた。

自身の父を筆頭とした偉志ノ大陸の面々が惜しいと思う心情も改めて理解する。

それと共に、似た境遇である自身と比較しそうになるが寸でのところで中断した。

──今は、そんなことを考えている場合ではないのだから。

 

「まあ色々と推論だ何だを飛ばしたくなるだろうが、所詮は証拠もない机上の空論に終わるからそこそこに。大事なのはこっからの行動なんだが、正直猫の手も借りたいって状況だ。お前らの力を借りる時が来たかもしれん」

 

瞬間、この場には強烈な緊張が走った。

これまでは王国の裏に関わる水面下の活動はマドラーシュとグランナイツが主立って対応してきた。

しかし、現状のグランナイツは明らかに頻度が増している魔物の対応に追われている状況だったりすることが多い。

カルリッツとデイジー、イグノックス、クリスティーナ、エリオは明らかに前線に出る機会が増えている。

カルシオンとルドミラ、そしてレオンは単独行動が多いが、これは個別で気にかかっているところに赴いているがためだ。

ラインヒルトは王都に留まることで国全体を監視する役回りに徹しているので、外に出ることは滅多にない。

以上の事情から、実働要員として実績のあるラス達にお鉢が回るのは当然と言える状況だった。

 

「無論俺たちも出られる時は出るが、ラインヒルト先生やアル兄さんと共にこっち側も見なきゃならねえ身でそうもいかねえ時は多いだろう。そこでお前たちと共闘させる追加戦力として、今ここにいるオルタを遊撃要員として雇用することをついさっき決めた」

「……え、ちょっと待って欲しい。雇用って一体全体どういうことだい?」

「おい、意志の疎通がまるで出来てねえぞ雇用主」

 

ちなみに、オルタが驚いているのは雇用関係を結ぶことであって共闘体制に対してではない。

目的が合致するところも確認済みで、むしろ共闘しない理由がないと言ってもいいほどなのだから。

陰ながらとは言え、王族のお抱え協力者になるというまさかの展開になるとなれば鳩が豆鉄砲を食ったようになるのも無理も無いか。

 

「……もしかして、オルタがどこにいるのか分からないかを防ぐためだったり?」

「はいラス君、大正解だ。いつの間にか現れてふとしたら行方が分からなくなるって話だろ?何なら、いっそ長期雇用契約にしちまった方が早いと思ってな」

「時は金なりとも言うからね~、お金がもったいない気もするけど」

 

この時、既にオルタの中では嫌な予感が全力で駆け巡っていた。

とはいえ、事前にマドラーシュに協力を申し出た以上は下手なことは出来ない。

そんなことをした日には、地の果てまででも追われては引きずり戻されるだけ。

パレッティア王国、偉志ノ大陸……というより、場所を選ばない自由奔放な振る舞いを再認識したからこその精一杯の我慢だった。

 

「金も当然払うが、そっちは出撃の出来高が主さ。契約料の大半は住まいの提供ってことで手を打つぜ?」

「この離宮の一部屋をご提供……ってところかしら。何よその貴腐人ホイホイ展開、ある意味面白くなってきそうね」

「ああ、なるほど……それは盲点でしたね。クリスティーナ様に伝えられないのが残念至極でございます」

「ナマリエさんとセラさん、すごい目が輝いていますけど一体何が見えてるんですか……?」

 

この時点で完璧に予測しているのはこの二人だけだが、ロクでもないということは誰もが理解するところ。

それを察したラスとウィンは、『セリアードが気にすることではない』と言わんばかりにお茶菓子を差し出すことで誤魔化しにかかる。

この面々に染まってきたとはいえ、貴腐人に由来する展開はまだ彼女には早い。

そもそも、知らないでいられるなら無理に知る必要のない世界でもある。

無論、言い出した当人にはそんな気は一切無いのでご安心を。

いくら何でもこんなところで薔薇の花を咲かせるわけにはいかない。

 

「ナマリエの言い分も気になるところがあるが、流石にそれは厚遇が過ぎるんじゃないか?色々と不都合がありそうな……」

「こちとら婚約中の公爵令嬢の相談役やるなんてデンジャラス綱渡りしたんだ、それに比べれば何てへのへの河童だっての!」

「隠蔽については心配に及びません。私とラインヒルト様が全力でお守りいたしますので」

「こうなっちまった時のコイツらの手の付けられなさは奇天烈な姉君と大差ないと思っておけ。世の中諦めも肝心だ」

 

いつものドタバタ劇の末、マドラーシュ率いる対魔法至上主義革命の人員はまた一人増えることとなった。

ちなみに、ここまで色々とそれっぽいことを語っているが……最大の理由は当然別のところにあり……。

 

「それにオルタというデコイがいてくれれば俺としても丁度いいからな!」

「……破天荒やりたい放題被害者の会へようこそ、オルタ」

「君たち、部下ならば止めるべきところじゃないかな!?」

 

そんなしょうもないじゃれ合いを望む辺り、何だかんだまだまだ子供なところもある破天荒なのであった。

 

 





ちょっと久しぶりのグランサガ現代組とのわちゃわちゃ、オルタも添えての巻。
そして原作では神出鬼没だけどこちらではバッチリ確保されるという。
偉志ノ大陸へのセカンドホームシックというワケワカメ状態拗らせてたんで、ある意味では必然とも。
え?ヒロイン差し置いてこんな怪しい関係築いて大丈夫なのかって?
それについては次話で。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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