転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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結構キャラが多くてワチャワチャする回です、ではどうぞ。


61. 新鋭騒動

 

謹慎が明けたとしても、そう簡単に安堵の息を吐くことは許されない。

真っ先に東部の様子を見に行った。

婚約破棄扇動未遂が起こる前までは、王国東部では自立性をより強固にするという方針を取っていた。

クラマ族やミケ族だけでなく、エルフにダークエルフの移住が増えてきたことから、その動きはより強固になっている。

更にあの愚弟が、カンバスとの国境ギリギリに住まうクシャン族という民とも連携を取るよう動くというとんでも朗報まで持ち込んできた。

お陰で東部は人間も亜人種もまるで関係ない、魔物の密集地域とは思えない程強靭な地域になりつつある。

魔物による作物被害などもそれなりに減ってきているお陰で、餓死や窃盗が減って治安の向上に繋がっている。

そんな良い流れだったからこそ、俺たちが動けていない間が心配でならなかったが……見事に杞憂だった。

俺たちがいない間にまともに回せるか試せて丁度良かった、という頼もしい言葉まで頂戴したくらいだ。

不敬に聞こえかねない発言だが……東部の強者らしさがなかなかに素晴らしかったので、まあ大目に見てやるべきだろう。

そして王都に帰還した今は、もはや恒例行事とも言えるグランナイツ会館訪問だ。

謹慎を挟んだせいか、この場所が懐かしく感じてしまう。

声を大にして言うつもりは無いが、半ば第二の実家と化しているからだろうか。

 

「亜人種含む東部の人間と順調に信頼関係を築けて何よりです。その様子ですと、そろそろ本格的に引き継いでも良い頃合いでしょうね」

「彼らは色眼鏡で見ない分、あらゆる意味で実力が伴っていない者には見向きもしない。確かに友好関係は持てているが、上に立つならばより実力を示さないとだ。……そのためだけに、アイツのようなやりたい放題はしないがな」

「奇天烈姉と破天荒弟に挟まれたことが見事功を喫したわね……顕魂術も武術も徹底堅実で、やっと安心できる弟子が出てきてくれて何よりよ」

 

報告と情報共有を兼ねた半ば秘密の茶会、今回のメンバーは俺を含めて3人だ。

グランナイツ裏の統括ラインヒルトと俺の剣術指導を担当するデイジー……王都に留まることが特に多い二人だ。

大半が王都を離れているのは、恐らく今回の扇動未遂の次を警戒してのことだろう。

……そして、それはここからの話も同じことのはずだ。

 

「昨日、マドラーシュ様が陛下と王妃に婚約破棄扇動と魔物の狂暴化が繋がっている可能性について警告なさったようです。これまでの実績からその懸念は受け入れられ、恐らく騎士団を巻き込んだ上で水面下の警戒態勢を敷く流れになるかと」

「そうか、あの愚弟も多少なりとも頼ることを覚えてくれたと。──そうなると、いよいよ反撃というわけだな?」

「かつての愛弟子を専属侍女として迎え入れ、更に陽ノ花家次男を秘密裏共闘戦力として引き入れたからマッドとしてはその気満々ね。そこにアルガルド君が入ってしまえば、もう安泰のはずよ」

 

このタイミングで戦力補強とは……アイツの人脈には恐れ入るな。

傍から聞けば些細な戦力強化に思えるが、破天荒のこれまでの道筋を知っていれば人材の質の程は読めてくる。

あの『無慈悲な主演』の愛弟子と、偉志ノ大陸の次世代有力筆頭と来ればその質は上等そのものだろう。

そこにアイツが抱えている特別近衛騎士にセラも加えたら……相当な精鋭集団となるな。

これでグランナイツという鬼札を除外している状態なのだ、父上が知ったら泡を吹きかねないぞ。

そんな中に俺が加わる……否が応にも笑みが零れるな。

それほどの顔ぶれならば、間違いなく俺が最も見劣りすることだろう。

だが、それは逆にあらゆる技術を盗むチャンスでもある。

元々愚弟の革命に賛同したのも、己が研鑽も目的の内だからな。

それに、陽ノ花家次男については顔を合わせたいと思っていたところだ。

緊迫した状況ではあるものの、躍動感をまるで抑えられなかった。

 

「そういうところ、やっぱり双子なんだなって思っちゃうわね」

「やれやれ、オルタ殿もいるとはいえやんちゃ揃いですからストッパーになって頂きたいところなのですが……」

「いや、流石にそれは分かっている。少々愉悦が零れてしまっただけさ」

 

あの愚弟が集めた顔ぶれ、それはすなわちやりたい放題を助長する面々も含まれているということだからな。

まあ、その中には理性的な者もいるのが救いといえば救いだが。

何にせよ、大まかな動きとしてはアイツの開拓補佐であることに変わりはない。

将来的に玉座に着くならば、率先して動く者の補助も立派な役目に当たるからな。

……まあ、それならばマッドが王位に就いても構わないということなのだろうが、それはアイツがさぞ嫌がるだろう……っと、話が逸れたか。

そこからは西部と東部でどう動くか、更なる追加戦力を騎士団から出せるかという話を進めていった。

 

「なるほど、騎士団内も東部の有志警備隊のようにするのか」

「顕魂術の有無関係なしで見ても、ラス達があまりに抜きんでてしまっている状況ですからね……デイジーとカルリッツ、時折イグノックスも調練に加わって指導していますが、それでも追いつきません」

「今回の動きはまさに実戦経験としてはうってつけってことね。まあ、事情が事情だから今回は4人だけなんだけども……」

 

どうやら、過去にマドラーシュが見出した人材を経験がてら同行させるという話だ。

なるほど、サロンで見た4人が後の新たな戦力というわけか。

この戦力の平均水準向上はマドラーシュがかねてより訴えてきた案件の1つだ。

王国はこれまで魔法使いをその主な戦力としてきた歴史があるが……完全にそれに異を唱える形だな。

これについては俺も懸念に思っていたことだったから、渡りに船とも言えた。

その必要性も、先日の黒龍の余波由来のイレギュラースタンピードで半ば立証できるからな。

──そろそろ待機している4人を呼びに行こうとした、その時だった。

不意に扉が開かれ、爆弾が投下されたのは。

 

「ラインヒルト様、ある意味丁度いい愉快なお客様達がお見えになられました──アルガルド様に御用のようです」

 

入ってきたのは珍しく主と別行動をしているアイツの専属侍女……セラだ。

私に用がある、丁度良くて愉快な客人『達』……だと?

──待て、何か凄まじく嫌な予感を覚えたのだが。

 

「丁度よくて愉快な……マドラーシュ様は確定でしょうが、他にも同行者が……まさか?」

「……ねえセラ?その同行者たちって軒並み女子だったりとかしない?」

 

二人とも俺と似たような表情をしていた。

……要するに、俺と同じことを考えているということに他ならない。

その中でのデイジーの問いは、半ば確定事項の確認にすら思えてくる。

あの愚弟の同行者の女子……いや、まだ特別近衛の面々という可能性も無いわけではないはずだ。

──そんな淡い期待は、セラが満面の笑みを浮かべているのを見てあっさりと霧散してしまったが。

 

「デイジー様、ご名答でございます。アニスフィア様、ユフィリア様もご一緒です」

 

……だから、何でこう嫌な予感ばかりが的中するんだ。

そしてユフィリア、お前も遂にそっちに行ってしまったというわけか?

あの愚弟め……俺はもう婚約者ではないんだ、面倒事を共有など勘弁願うぞ。

更に姉上まで来るとは……もはや意味不明が極まるところだ。

そんな感情を共有しているからか、俺たち3人は見事なまでに揃って天を仰いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プリシラの先導の元、無事グランナイツ会館にたどり着くことは出来た。

ちなみに、イリアは姉上が逃げ出さないことを確認したら持ち場に戻っていった。

まあ、プリシラの仕事ぶりも承知しているだろうからこその判断だろう。

それでも俺、ユフィ、姉上ととんでもな顔ぶれ、誰もが人目でも見たら変な噂が飛び交う状況ではある。

無論、その対策は抜かりないがね。

元々広域魔力探知を得意としていたところを逆利用することを覚えたようで、『特定魔力を意識的に認知できなくなる』場作りを披露してくれた。

それも俺以外に全く気取られることなく展開というおまけつきだ。

姉上は元々マナ・ブレイドに代表される魔道具の扱いで魔力の流れにはそれなりに敏感で、ユフィは絶賛魔力操作の修行中の身。

そんな二人に気付かれてないだけでも相当だが、それを至って自然体でやってるから恐ろしい。

これでその他雑事においても含めた、スーパー通り越したハイパー万能侍女だってのになあ……何でこう、俺が絡むとおかしな動きが増えるのか。

 

「まあそういうわけだ、プリシラは言うなれば第二のセラのように扱ってくれ」

「オルタのこともあったばかりでもの凄く納得が行かないのですが……?先ほどはやたら距離が近いし、セラと違って雰囲気が妖しいというか……」

「いやだからいつまでオルタのこと引っ張ってるんだっての……その辺はプリシラにおいては素そのものだ、俺からはそうとしか言えねえ」

 

そしてオルタの時に引き続いてユフィの暗黒面丸出しモードである。

今回は流石に理由も多少は察しがつくから仕方ないから擁護も出来るがな……むしろプリシラが煽ってた気もするし。

自分に関する弁明だというのに、アイツはそれはもう楽しそうにしてやがったからな……。

俺の困り顔を酒の肴にでもしようってのか、あんにゃろう。

 

「まあ、姉としてはマッドくんが裏で色々慕われているというのは我が事ながら嬉しいんだけど……色々と紛らわしいというか、怪しい関係多すぎだってば」

「私だってマッド様が色々認められて、それは嬉しいですとも。誰からも無価値だ放浪癖と後ろ指を向けられるよりよほどいいということも分かっています。──それでも、もう少し節度を弁えて欲しいです」

「ま、要するにユフィなりの嫉妬ってことだよ。ある意味誉れなことだけど、あんまり放っておくのも可哀想だからユフィのことも見てあげてね?……あ、お姉ちゃんのことも忘れずにだよ」

 

嫉妬、ねえ……そう言われると悪い気はしねえんだが、イマイチピンとこないってのもある。

っていうか、別にユフィのことほったらかしにしているつもりもまるで無いんだがな。

……ここは逆で考えてみるか。

今のユフィの現状……要するに姉上の助手をやってることに対して同じ感情を向けられるかってことで。

──むしろ、俺以外の関係性が増えてユフィがより幅広い顔を見せるようになって喜ばしいこととすら思うな。

異性関係でってなると、アル兄さんとかイグノックス兄さん……うん、別に出て来ない。

仮の話になると、ラス、カルト、ウィン、オルタ……ダメだ、同じように人間関係の拡張に微笑ましさしか出て来ない。

結論、やっぱりしっくりこない以上。

 

「あれ、マッド……って、まさかのアニスフィア様とユフィリア様まで!?」

 

どこかからか聞こえてきたのは我が幼馴染ボイス……って、ラスもいたのか。

他にも何名かご一緒のようで、足音だけのパーカッションが組めそうな感じになってやがる。

ふむ、ラス含めて5人か……。

いよいよもってグランナイツ会館のサロンは騎士たちの憩いの場と化したってか?

 

「こらラス、そんなホラで俺から逃れようなど100年早い……ってうわあ本当にいらっしゃったー!色々と大丈夫なのかこの組み合わせ!っていうか、デイジー師範が言ってたあれって噂じゃなかったのかよ!?」

「あの方がそんな曖昧なこと言うわけ無いでしょう!それともう少し声量を落としなさい、ガーク!──あ、お久しぶりでございますマドラーシュ王子殿下!」

「エイパ姉も声のトーン落とさないとダメだよ……あ、えっとそのマドラーシュ王子殿下お久しぶりでございます!」

「こらエダン、お前までつられてるぞ……申し訳ございません、マドラーシュ様。騒がしくしてしまって……」

「いや、気にすんな。正直俺も色々と理解が追いついてねえ状況だからな……まあとりあえず、4人ともお久しぶりってことで」

 

真っ先にラスを追いかけて駆け寄ってきたのはガーク・ランプ男爵子息。

ケルビムとして東部で暴れまわっては水面下改革を進めている最中に舎弟にしてくれとくっついてきたのが始まりだったか。

実家が辺境の騎士団なんだが、当人は近衛騎士……それも出来れば姉上の専属になることを夢見ているとか。

その辺は詳しくは聞いてないが、ガッツがありそうだからと軽く仕込んだんだよな。

で、次に真っ先に俺に挨拶してくれた金髪女子はエイパ。

ラスと同期で、しかも成績も似たり寄ったりでこれまた気骨のある見習い女騎士である。

そんな背景もあってか、入団以来ラスにやたらと突っかかるいわばライバル関係……でいいのか?

ちなみにフィオナ指揮官と同じく、明確に力で劣る相手との戦い方を色々と手ほどきをしたこともある。

俺にとってはガークと同じく舎弟……いや、女子だから普通に弟子でもいいか。

残りの二人は、エイパの護衛っていうか御付きのような存在で背が高い方がロアムで小柄の方がエダンだ。

勝ち気で突っ走りがちなエイパをフォローする苦労人だが、護衛に見合うだけのサポート能力を持っていたり。

 

「聞き覚えのある声がすると思ったらガッくんじゃん、久しぶりー!もしかして、もう辺境騎士からこっちに栄転になったとか?」

「が、ガッくん……とりあえず覚えて頂いて光栄ですが──ってマドラーシュ様、笑わないでくださいよ!」

「くっく……いや、悪い悪い。俺の『マッドくん』よりよっぽどど直球だったもんでついな」

 

流石にガッくんは少しばかり草原だろ……思わず背後に回ってアレをやりたくなるわ。

ほれ、エイパ達とラスも思いっきり堪えてるくらいだし……。

っていうか、姉上って本当色々とあだ名つけてんのな……そういうところはミココロに似ているな。

これは、共通の知り合いが増える時の楽しみが増えたな……どいつもこいつもどんなあだ名がつけられるものかね。

 

「ああそうだ……ユフィ、今回は舎弟みたいなものだからそういう目は向けないでくれよ?」

「流石にそれくらいは判別出来ます。私のことを何だと思っているんですか」

「最近ダーク化することを覚えたはっちゃけぶっ飛び公爵れいじょっておいこら、ただの冗談だから止めろっての」

 

ただでさえお前がここにいるってことに困惑している場なんだから自重しやがれって……。

ほれ、お前が色々変なことするからラスも含めてポカン顔になっちまってるぞ。

だーからはっちゃけぶっ飛びなんだよお前は……ってこら、お代わりなんて要求してないから今すぐやめい。

 

「噂でしかなかったはずの二人が自然な友人っぽくしてるのを見て唖然としてるだけだと思うけど……あ、お初にお目にかかりますアニスフィア王女殿下、ユフィリア様。王国騎士団所属のラスと申します。以後お見知りおきを」

「あ、これはご丁寧に……ってそうか、君がラスくんか。こちらこそ、問題児であるマッドくんが大変お世話になっていて……」

「見たところ、しょっちゅう爆発沙汰を起こす方ではなさそうですね……同じ問題児の友人同士ということで、どうかよろしくお願いしますね」

 

おいこら二人して問題児連呼してるんじゃない。

まあ、でもこっちに関してはタイミングがある意味良かったかもしれねえな。

ラス一人なら、元々幼馴染ってことで二人と知り合ったとしても何ら問題はないし。

……その後はライバルに出遅れてエイパ達が二人に挨拶しては、色々てんやわんやになってきている。

にしても、何でこの顔ぶれがグランナイツ会館にいるんだ……?

この5人、完全なる共通事項があるとすれば年齢層くらいのものだろ?

後は……ラス以外の4人はかつて俺が素質を見出して軽く手ほどきをしてやったくらいだ。

そもそもこの顔ぶれを呼んだ人物……そんなの一人しか浮かばないんだよなあ。

 

「おいそこの破天荒愚弟、お前は何でこう悉く状況をややこしくするんだ……?」

 

なんてことを考えていたら、聞こえてきたのは随分なご挨拶だった。

発せられるだけで室温がいくらか落ちそうなこの空気、そして静謐に制御された魔力……。

親愛なる我が双子の兄、ここに見参ってか。

 

「ナチュラルに俺に冤罪かけるんじゃねえよクソ兄貴。今回はどう見たって俺に非はねえだろうが」

「むしろこれは私の責任です。マドラーシュ様たちはたまたま鉢合わせたというだけですからね……」

「そのたまたまがコイツの場合は怪しいだろう……随分と愉快な連れもいることだからな」

「まあ、そこは否定しねえが……流れでそうなったらもはやどうしようもねえだろうが」

 

何はともあれ、この事態を収拾してくれる顔ぶれが揃ってくれたな。

更にはデイジー師匠も後から来ては、ガークやエイパと戯れてたラスを軽く叱ってた。

そして、やはりというべきかラインヒルト先生の姿を見ると俺の舎弟4人は姿勢を思いっきり正していた。

こっちのことは、呼び出した張本人に任せた方が良さそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グランナイツ会館には初めて入ったんだけど、怒涛の展開過ぎて半ば置いて行かれ気味だった。

だって、まさかガッくんやマッドくんの幼馴染であるラスくんがいるなんて誰も想定できないでしょ。

現にマッドくんも、意図せず隠していた人間関係の発覚には想定外だったようだし……。

というか、マッドくんは色々と面倒見が良すぎだと思うんだ!

今日だけでプリシラ、ガッくん、更にあのエイパっていう見習い女性騎士にその御付き二人と5人だよ5人!

まあ、プリシラ以外は本当に軽く面倒を見た舎弟って感じだからユフィを刺激しないで済んでるのが救いなんだけどさ……。

そんな収集がつかない状態で……今回の訪問の目的である人物が現れた。

……いきなり双子の弟と皮肉の応酬をかましている様子を見て、完全にタイミングを失っちゃったけど。

先に会った4人は、長い黒髪のエルフ……ラインヒルト顧問に呼ばれたようで、デイジーとラスくんと一緒に別室で詰めている。

顧問には初めて会ったけど、とんでもない貫禄というか切れ者感を感じたんだけど……。

それこそグランツ公すらも上回りかねないほど……流石はグランナイツの調整役というべきなのだろうか。

そして、私たちはまたどこかからか現れたプリシラに先導されて防音部屋と呼ばれる場所で腰を据えることとなった。

 

「ひとまずはお久しぶりですね、アルガルド様。念のためとはいえ謹慎を受けていたから色々ブランクがあると思っていましたが……いつも通りの双子仲を見せつける余裕があって何よりですね」

「そういうユフィリアは随分と染まってきたようだな?ただ、それを肝心な時に行かせないようではまだまだ温いし甘いな。愛称で呼ばせているところはなかなか高評価だが」

「ご忠言痛み入ります。そうですね、最近は自己研鑽にばかり走り過ぎて色々疎かになっていました……その辺りも後ほどご教授頂ければ。私もアルガルド様のようにより対等な位置に登り詰めたいので」

「……俺よりもっと上を見た方がいいと思うがな」

 

……あの、アルくんとユフィは円満に婚約解消をしたんだよね?

何でまたそんな室温が下がりそうな空気で会話してるのさ!

その会話の裏の渦中とも言える男は暢気に微笑ましそうにその隣で茶を啜ってるし……。

あ、しれっといつもの距離詰めいや止めろ芸も展開中だった。

こら対面のユフィマドコンビ!そういういつもの焦らしイチャイチャは後にしてほしいんですけど!?

 

「──そして姉上。こうして顔を合わせるのは何年ぶりになるかはもはや忘れかかっているが……かつて突き放したであろうこの俺に、一体何の用だ?」

 

ほらアルくんも見なかったことにしたいが為に私に話振ってきちゃったじゃん!

というか、何で用があるのがマッドくんじゃなくて私だって……さてはプリシラか?

そういえば、さっきセラらしき後ろ姿も見えたし……うん、しれっと伝えていてもおかしくはないね。

マッドくん専属侍女タッグ、色々な意味で敵に回したくないなこれは……。

 

「……虫が良すぎるのは分かってる。でも、今回はアルくんに聞きたいことがあるんだ……その、シアン男爵令嬢についてなんだけど」

「やはりそうか。好奇心旺盛なところは変わらずな姉上のことだ、今回の件に色々疑念を抱いて掘り進めている最中なんだろう?」

「その為にまーた独断専行やらかしてスプラウト伯爵家に突撃訪問かましたから、俺とユフィはこうしてお目付け役として来たってわけだ」

「……頼むから末弟よりはまともであってくれ。奇天烈なのはどうしようもないとして、トチ狂うのだけは勘弁願うぞ」

 

それだと私よりマッドくんの方をディスっちゃってないかな!?

私に対する棘は以前よりマシになっている感じではあるんだろうけど……でも無くなったわけではないはず。

でもまあ、普通に話してくれそうな空気なのは幸いかな。

マッドくんとユフィがパン粉になってくれているところもあるんだろうけど、それでも前進はしている。

そのお陰か、私の心の中にあった重荷は多少取り払われた気がした。

これなら本来の目的を進めることが出来そうだ。

 

「レイニについては……そうだな。まず姉上がどこまでの認識を持っているかを聞かせてもらった方が早い。変に被るのは色々と面倒だろう?」

「そうですね。当時婚約関係であった私を疎んじてほっぽっていた頃の大まかなところはナヴル様のおかしな執着と共通していそうですし」

「実際その通りなんだが、当事者が言うとブラックジョーク臭が凄まじいから止めなさい」

「普段からその手の冗談を即時解放するマッド様が言ったら、それは俗に『おまいう』案件というものでは?」

 

実際ブラックジョークだけど、その割にはユフィから嫌悪の空気は感じられない。

あくまで過去は過去と割り切っている……むしろ笑い話にすらしようとしてる節もある。

……これはユフィなりに自然体になっているってことでいいのかな?

アルくんとマッドくんのじゃれ合いのような皮肉の応酬に割って入っている説もあるけど……。

それはさておき、本題の方はアルくんの言った通り私の成果と見解をちゃんと話した。

王宮での父上及び母上、グランツ公との話の内容とナヴル君の面談の時の話まできっちりとだ。

その上で、どうにもシアン男爵令嬢の為を思っての暴走が色々と行き過ぎてて奇妙にすら見えることまで話した。

 

「ナヴルの状態は1年前とさほど変わらないな。元々『自分は騎士団長の息子だから』と、弱きものを守らんと義務感が強かった男だ……無理もないと言うべきか」

「義務感も行き過ぎたら完全に『よかれと思って』でも毒になってしまうってことか……」

 

かつて私もマッドくんにも指摘されたことだし、自分でも気を付けないとだね。

ナヴル君は明確に行き過ぎたって分かってるから良かったけど、多くの場合はそうそう表出することじゃないし。

 

「私としても感じ入るところがあります……こちらにも改善点はいくらでもあったわけですから」

「かつてのユフィを称する『完璧』なんてそんなものってことさ。今そうやって顧みることが出来てるんだからそこまで凹むな。姉上もアル兄さんもだ、やらかしは後の成功を買えるって覚えとけよ」

 

それに対してこの末弟の出来上がりっぷりだよ。

確かに子供っぽいところも多々あるけど、私たち3人は彼に掬い上げられてるわけだからなあ……。

この中で最年長の私としては、ちょっとだけ悔しくもあるけど。

私と同い年でマッドくんと10年以上幼馴染をやっているラスくんも同じ感じなのかな。

 

「あ、そうだアルくん。ナヴル君以外の二人の当時の状況って覚えてる?またはアルくんがまともになった後のシアン男爵令嬢の様子でもいいけど」

「まるでそこまでの俺がどこぞの阿呆のようにトチ狂っていたような言い分だな……まあいい。残りの二人というと、サランとモーリッツか」

「言ってくれるねえ……あの時のアル兄さんのしっちゃかめっちゃかっぷり、普通にクソ愚兄認定待ったなしだったからな?」

 

はいどうどう、売り言葉に買い言葉でクソとか愚兄とか汚い言葉遣いは止めましょうね!

全く、ユフィまでそんなこと言い出したらどう責任取ってくれるのさマッドくん!

いや、もう手遅れかもしれないけど……。

 

「サランについてはナヴルと変わらないようには見えた。まあ、こちらはイジメに対する憤慨が強かった印象もあり、その分ユフィリアへの敵視に繋がったと言える。モーリッツについては……表面上の付き合いでしかないから、その範囲でしか分からない。ぱっと見はナヴル寄りと言えるが……」

「あー……魔法省長官の息子だっけ。ナヴル君ほどではないけど、義務感に溢れていたって可能性は十分あるか」

「私を疎んじるだけの理由も分からなくはないですね……私としては至って迷惑な話ですけど」

「いいぞユフィ、もっと言ってやれ。権力に縋るヤツってのは大体そういうつまらねえ性根しか持たねえものだからな」

 

確かに、魔法においてとんでも才能を誇るユフィは確かに目の上のたん瘤だね。

血筋による次期長官の立場を脅かす存在になる可能性もあるってわけだし。

そして案の定マッドくんの毒舌入りましたー!

あくまで仮定の話ではあるけど、まあ眉を顰めるのは当然だよね。

教育係どころか親や兄・姉代わりの人たちが、その手の人間に人生を狂わされたのだから。

 

「最後はレイニについてだな。彼女自身はいきなり貴族学院に通うこととなりどうしても周囲から浮いてしまいがちな元平民だ」

「シアン男爵に引き取られたって話は騎士団長から聞いたよ。元は身寄りが無くて孤児院育ちだったとか……」

「その通りだ。そんな略歴からか、どこか儚い雰囲気を醸し出していな……そこに惹き付けられる人間も多かったのではないかと今なら思う。実際、彼女が困っていたら俺以外にも手を差し伸べる人間は多かった。ナヴルたちも最初はそうだったからな」

 

こればっかりはシアン男爵が良かれと思って迅速に動きすぎたことって言えなくもない……のかな?

適当に放り込むなんてことをするのは自分に跳ね返ってくる可能性もあるわけだし……私としても引き取った娘のことを思って説を掲げたいものだ。

……その手の棘ある推測は末弟がしているだろうから、私くらいはせめてもの優しくしたい。

 

「カルシオンとルドミラ姉さんもレイニ嬢についてそう言ってたこともあったか。とはいえ、どいつもこいつもうだつが上がらねえことに変わりはないな。むしろレイニ嬢が哀れなくらいだ。──むしろ、きっちり指摘をしたユフィに好印象持っててもおかしくねえ。後、シアン男爵もどっかで見たことある段取りミスやらかしてんだよなあ……まだ後戻りは効く辺りまでくりそつと来たもんだ」

 

マッドくん、それは無茶振りが過ぎると思う。

言いたいことは分かるんだけど、貴族社会でそれはハードルが高すぎるって……。

それに、シアン男爵と似たような段取りミスってもしかしなくてもそういうことだよね……?

傍観者風だからこその指摘だけど、北風と太陽というならもう少しお手柔らかにしてあげて欲しいなあ。

 

「相変わらず切れ味抜群な愚弟はさておき、実際レイニもユフィリアには感謝している節はあった。それだけで判断しきれないのは分かるが……何か陰謀を企てるような人間には見えない」

「個人的には、とにかく素直という印象が強かったですね。私の指摘も反発することなく素直に聞き入れていましたし……。少し話をした上での悪印象はそう感じられませんでした……気になる点は一つありましたが」

「ん?何か一気に急転直下な匂いがしてきたな?」

 

何で不穏な空気を感じ取った途端の動きが早すぎだってマッドくん!

外道的な味がする麻婆が大好き系な愉悦属性持ちなのかな君は!?

……ユフィもアルくんも素知らぬ顔でいるけど、まさか公認なの?

末弟のカオスっぷりで私のライフが本気でレッドゾーンだよ……。

 

「かつての私と似た気配というか、そのようなものも薄っすらと感じました……どこか虚ろというか」

「虚ろ……言い換えれば虚無といったところか。──なるほど、言われてみればそう捉えることも出来なくはない」

「……些細かもだが、結構重要な情報だなそれ。よく思い出したぞユフィ、褒めて進ぜよう」

「その上から目線、久しぶりに聞きましたね──まあ、ありがたく頂戴いたします」

 

待って、アルくんとマッドくんの理解スピードの速さについていけないんだけど。

かつてのユフィと似た気配、要するに虚ろな感じがシアン男爵令嬢からも感じられたって……?

さっき彼女のことを儚いって表現してたけど、この一点を煮詰めたら確かに虚無って感じになる……のか?

ダメだ、二人の見えているものがまるで分からない!

というか、君たちはさっきまでやたらと皮肉やら悪口の応酬だったよね。

何で以心伝心と言わんとばかりに目と目で示し合わしてるのさ。

これ、絶対にイチから教えてくれるような空気じゃないよなあ……。

 

「……ユフィはこの空気についていけてるの?」

「シアン男爵令嬢自身にも何か抱えているものがある、というくらいならば。それがどのようなものなのかは分かりかねますが、明確に異質なものであることは確かかと」

 

それが儚さを通り越した虚ろさに繋がっているってこと……?

え、でも彼女自身は悪い子じゃないってさっき……いや、体質とか無意識的な何かとかそういうものなのか。

ユフィは実態は分かっていないようだけど、アルくんとマッドくんは明らかに何かを掴んでいる風なのがすっごい気になる。

 

「それを確かめる為の登城の立ち会いだろ?まあ、いずれ分かるさ、いずれな。それまで楽しみにとっておけ」

「そんなこと言われたら余計に気になっちゃうじゃん……」

 

マッドくん、君はもしやそういう焦らしがお好みだったりするの?

どんどん鬼畜属性が増えてきて、色々行く末が心配なんですけど……。

 

「さて……これで話も落ち着いたことだし、二人はついででやることやっちまったらどうだ?」

「そうだな。今こそけじめをつける時かもしれん……ラインヒルトやデイジーには伝えておくべきだな」

「では、その役は私にお任せを。人払い等の手配も済ませておきましょう」

「へ?待って、どうしたのみんな急に……」

 

確かにレイニ嬢の話は終わったけど……何でいきなり慌ただしくなるのかな?

さっきまで直立不動だったプリシラまで急に動き出したし……え、ラインヒルト顧問とデイジーに何を伝えるって?

……すっごい嫌な予感がするんだけど、一体何なのさ……?

というか、ユフィ一体何を持っているのかな……!?

 





転天側からちょいと先行ガッくん、グランサガ側でエイパ達3人組。
前者についてはラスの自称ライバルというオリ設定も。
まあ、結構グランサガと転天が絡んでますねー感を出したかった。
この段階で既に和解状態アルガルド、事前救済の成果でもある。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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