転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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実質3話目スタート
いよいよ転天側でも過去で話が進むときでもあったり?


7.破天荒たちは4年経っても変わらない

 

革命の旗を掲げたとは言ったものの、結局のところ水面下の準備は必要になる。

矢として掲げた顕魂術は、自然の精霊への依存を取っ払っただけにその基盤は赤子のように脆い。

軸となるのは己の魂とイメージということもあって、方向性を定めるのはとにかく自由だ。

だからこそ、あらゆる面での難しさもある。

今でもグランナイツや他の協力者と共に日常、戦闘、その他……色々な方向で研究しているからな。

クラマ族やミケ族の試行錯誤の結果、日常でも使えるという段階までは来ているらしいな。

出力調整と用途の絞り込みなどを徹底する必要があるから、やはり少々ばかりの熟練度は求められるようだが。

そこを満たせば、後は魔力消費に注意すればいい。

まあ、ここまで来たとしても、姉上が発明した魔道具のに比べたら利便性という面は遥かに劣るんだろうが。

実際に比較したわけではないから明言は出来ないが……。

あっちは多分精霊石経由でより方向性を特化させてるんだろうし、あながち間違った推測ではないはず。

そもそも顕魂術は『魔法至上主義』が気に入らないからぶっ潰すっていう過程で生み出されたものだ。

魔学と争う理由は全くない。

そもそもの土俵が違うのだから。

競合しないように距離を置きつつ、上手くやればいいだけの話さ。

まあ、争わないってだけであちらが何か有用なことをしたならば……その時は容赦なくこちらも使わせてもらうがな?

顕魂術そのものの話に戻るのだが……使い込んでいる内にもう1つ、面白い傾向に気が付いた。

顕魂術において根幹を為す、彫魂石に刻まれた疑似精霊……これが変化というか、成長しているのだ。

しかもそれに付随するように、使用者の魂というか自我が強固になっている節もある。

徹底検証するために、偉志ノ大陸に遊びに行った際に精神干渉をかけてくる妖怪と対峙したりもした。

対策しないと危ないっていう魅了をかけてもらったんだが、なんともなかったんだよな。

その妖怪には『そんなことで私を頼る人間なんて、驚くべきなのか呆れるべきなのか分からない』って褒められたぜ。

この疑似精霊と精神・自我の成長は、明確な分岐点──例えば、生死の境目なんかで起こりやすい気がする。

ふと浮かんだのが、『可能性は混沌から生まれる』って言葉だ。

混沌という言葉の定義こそあやふやだし、何でこんなものが浮かんできたのかも分からない。

だが、妙にしっくり来るんだよな。

変化や進化って言葉は、ある意味平穏とか秩序の対極でもあるからな。

少なくともこの世界は『魔法至上主義』という秩序に塗り固められかけてるわけだし、混沌属性大いに結構だ。

そんな顕魂術の発明者であるこの俺、マドラーシュ・リヴェ・パレッティアはもう?まだ?どっちでもいいが12歳だ。

あの宣言から4年経っているわけだが、現在何をしているのかと言えば──

 

「随分とまあよりどりみどりだが、1体1体の歯ごたえが無さ過ぎて却って栄養不足になりそうだねえ」

「今朝思いついた顕魂術の試し打ちにはちょうどいいくらいか……東側でもこの程度とはな」

「空飛ぶサンドバッグもいるみたいだし、俺もテストするかね」

 

いつものように二人の兄貴分と遊びに、というか魔物狩りに勤しんでいた。

思いついた顕魂術のテストのついでに遊べて、更に脅威になる魔物を減らせるんだ 。

やらない理由なんて、どこにもないだろ?

ただ……目の前には素材や金策対象はそれなりにいるんだが、面白い相手は全然いない。

上にいる親玉っぽいのも、散々狩ってきた空飛ぶトカゲだし。

まだ災害級とか言われてるが、4年前にどこぞのガキにボッコボコにされたのはどこのどいつでしたっけ?

まあいい、遠慮なくモルモットにさせてもらうか。

ノコノコと自分から出てくるのが悪い。

 

「そういうことなら、俺も改善したのをお披露目と行こうかね!」

 

カルシオンが軽い掛け声とともに両手を前方にかざす。

魔力の流れで何をしようとしたかを察した俺とイグノックス兄さんは、即座に魔物の群れへ向けて突貫する。

先手必勝と言わんばかりにイグノックス兄さんはど真ん中のオークの胴体に剣を刺して、炎属性の魔力を三度小規模爆発させる。

その後即座に剣を引き抜きつつ、追加の斬撃を1発浴びせてトドメとしていた。

ただでさえ火に弱いオークで、動作がやや単純寄りだからこそ魔力制御に集中させている攻撃だ。

当然、余裕の1発撃破である。

あ、横からオーク来てる……。

でもなあ、それは悪手だぞ?

今のイグノックス兄さん、物足りなさ全開だからな。

不意打ちに対してかわす素振りすら見せず、その場で巨大な炎の円刃を発生させる。

そして、視線を向けずとも的確にオークの胴体に刃を抉り込ませていた。

円刃の回転速度もかなりのもので、その切れ味と炎の勢いのお陰でオークの切り傷付き焼死体はなかなかに無残なことになっていた。

わーお、相変わらず過激だね。

 

「一応、俺は綺麗な死体にする努力はしておくかね」

 

対する俺は近くのコカトリスの顎に火と闇の魔力を纏った拳でアッパーカットをかます。

腕力に掛ける身体強化は弱めに再設定して、顕魂術の方の魔力運用のみで威力調整を図る。

当然のように1発KOに処してやったが、殴りつけた部分が凹んでいる以外は綺麗な死体だ。

──しかし、素材を回収するのはまだ早いようだ。

 

「ワン公、それで不意打ちのつもりか?」

 

視界の外であっても、気配と魔力の流れを読み取れば背面でも対応は容易だ。

真後ろから噛み付こうとするグレイウルフにどんぴしゃりと裏拳打ちをかましてやる。

しなりを生かすために風属性を付与したのだが、それが功を喫してかこちらも1発撃破のようだ。

偉志ノ大陸の師匠の言いつけを律儀に守ってあらゆる状況で魔力制御を出来るようにしておいて正解だったね。

ただ倒すだけならば得物を使えばいいんだろうが、ワンパターンはマンネリ必至だ。

メイン武器が使えないって状況も、想定しておくだけなら罰は当たらねえだろう。

そういう時の徒手空拳はあるのと無いとでは大違いって陽ノ花家長女も力説していたっけか。

さて、今は俺とイグノックス兄さんが群れのど真ん中にいきなり切り込んでいる状況だ。

多分他の冒険者とか騎士が見ていたら無茶苦茶な行動とさぞかし思うだろうね。

何せ相手には数の利があるのに、そんなの知ったことかと突っ込んでるのだからな。

ほら、現に魔物たちはカルシオンには目もくれずこっちに密集しているし。

だがなあ……あのトリッキー極まりない紫の刃から視界外していいのかね。

 

「束縛何名か分かりませんがご案内完了っと。どうだマッド、前より早くなっただろ?」

「鎖の数も増えてて、その分束縛そのものも強固になってるな。熟練度のレポートとして纏めておくよ」

 

カルシオンが放ったのは闇属性の魔力の鎖で束縛を行う顕魂術だ。

たかが魔力の鎖と侮ることなかれ。

初の顕魂術でデコイの役目を持つ分身を生み出すくらいには、カルシオンは芸達者だ。

それはすなわち、魔力による表現力ないし具現化能力がかなり高いということ。

しかも鎖には影縛りの効果も付与されているという徹底っぷりだ。

これはそうそう抜け出せねえだろ。

身動きが全く取れない、滑稽極まる木偶の坊集団の完成だな。

それにしても、みんなの顕魂術の成長が早いからレポート用紙の消費も荒くてしょうがないな。

 

「次は俺の番だな」

「遠慮なくやっちまえ、イグノックス兄さん」

 

攻撃しようにも攻撃が出来ない哀れな魔物たちを尻目に、イグノックス兄さんは続くように堂々とその動作に入った。

地面に自身が使う剣を突き立てている。

──完全に初見の顕魂術だな。

今朝思いついたものを試すって言ってたから、恐らくそれだろうな。

魔力の流れからすると……そういうことか。

何をやろうとしているのか、そして次に起こることは読めた。

俺もそれに合わせて動いてしまおう。

こういうアドリブも、退屈な戦闘を少しでもマシに出来る立派な調味料だ。

 

「雑魚は雑魚らしく、その辺で這いつくばっていろ!」

 

よしドンピシャ!

やっぱり火属性にちょい土属性足しの混合魔力だ。

イグノックス兄さんは地中に魔力を放って、盛大な火柱を起こしていた。

この複数属性魔力合成技術のきっかけは、勿論4年前のトカゲ戦だ。

あの時の俺は、半ば無意識で闇と火の混合魔力で突きを放った。

無論そのままにするには勿体なさ過ぎたので、それこそ寝る間も惜しんで汎用化に勤しんだものだ。

みんなも自分の別属性適性を探りつつ、利用法も考えて続いていく。

その結果が、グランナイツ全体の大きな戦力強化につながったわけさ。

更にイグノックス兄さんが今使った顕魂術は、2つの属性の比率が均一ではないのでより繊細なものに当たる。

メインの火属性が大体8割くらいで、残りの2割が火柱を補佐する強烈な地鳴りを起こす土属性。

その豪快な術は、周囲には消し炭になった魔物と多少タフな部類にあるオーガ辺りが焼かれながら転倒させていた。

更にカルシオンの束縛を未だ受けている。

これまた、地獄絵図もいいところだな!

上から見ている分にはなかなか愉快な光景だ。

俺も一人であそこまでやりたいものだが、如何せんイメージが沸かないからまだ無理である。

いずれ絶対に実現してやりたいけどな、ワンマン状態異常フェスティバル。

 

「さてさてクソトカゲ君。その偉そうな態度もここまでだ」

 

空飛ぶトカゲを真正面に据えて、俺は挨拶代わりに指をさしてやった。

何で俺が既に空中を舞うトカゲと同じ高度にいるのか?

早い話が、イグノックス兄さんが起こした火柱を利用した。

事前に攻撃ポイントを割り出し、火柱が吹くタイミングで跳躍して乗っかる。

無論足には極小の足場を水属性の魔力を多めに使って形成しているので燃える心配はなし。

別に空中に足場を作りまくって上がっていっても良かったんだが、折角だからと面白い方法で上昇したくなったのさ。

ほら、それにこっちの方が遊びがあるし少しぐらい映えるだろ?

現に下のカルシオンとイグノックス兄さんは楽しんでくれてるようだ。

時にはエンターテインメントも大事ってことさ。

まあ、コートの端っこが焦げそうで冷や冷やしちまったのが反省点かね。

さあて……イグノックス兄さんに続いて俺もテストするとしましょうか。

空飛ぶトカゲは俺が同じ高度にいると認知するや否や、口を開いてお得意のブレスを放とうとしていた。

 

「ワンパターンでつまんねえな。お前らはもうちょい面白いスキルを身につけろや」

 

分かりきった攻撃を避ける時ほどつまらない瞬間はないってものよ。

魔力の規模から範囲を即座に測定して、その範囲外に即席で作成した新たな魔力の足場に飛び移る。

そこからいくつもの足場を作成しては経由することでトカゲの視線を強引に外すように高速移動をひたすら継続。

地上なら生い茂っている木々で行うことを、トカゲの周囲を囲うように作った複数の足場で行っているわけだ。

大型を相手にする際、試行錯誤で編み出した俺の基本戦術の1つである。

トカゲはバカ正直に俺のことを目で追っているが、そんな鈍重さではお話にならねえぞ。

お前のターン、もうねえから!

さて、このトカゲがこれまでと同じ種ならばあの面倒なものを持っているんだろうなあ……。

 

「全く、お前らはどこまでもそれ頼りか」

 

瞬時に距離を縮めると共に、魔力による壁を認識した。

魔力障壁──こいつらの安心の元になっている鬱陶しいこの壁は、種としての共通スキルってところか?。

その亀みたいな守備的な動きを見ていたら、余計に掌底叩きつけたくなってきたな……。

 

「拳じゃなくて掌底だったら効果は変わるのか?動作による検証ってところだな」

 

先ほどコカトリスに放った火と闇の混合魔力を今度は掌底突きで繰り出す。

何が違うんだって思うだろうが、今朝にまだ試していないことを思い出したのでこれまた立派な実験対象だ。

パンチと掌底突きは込める力とかも異なってくるから顕魂術のイメージにも影響するんじゃねえかって思ったのさ。

本当はちょいと大仰な顕魂術名叫びたくなったんだが……今回はあくまでイメージ実験だから止めにした。

ちなみに、顕魂術においてはその正式名称をいちいち口にする必要はない。

グランナイツは流石に誰も言わないが──ウチの侍女はノリノリで言う。

魔法だとイメージ補完で必要なケースも少なくないんだっけ?

まあ、精霊経由しなきゃだからな……不便なこって。

さて、結果は……魔力障壁そのものは壊れていないがトカゲにはダメージが入っているっぽいな。

障壁越しの攻撃なのに軽く吹っ飛ばされて、滅茶苦茶動揺している感じが見受けられる。

 

「これは俗に言う守備貫通ってやつか?しかも結構効いてるっぽいな」

 

恐らくはシールドやバリアの類が張られていても、その上から強制的にダメージを与えることが出来るって寸法だな。

なるほど、使いどころはちょいと難しいが……。

そこは掌底打ちの不意打ち性能とどっこいということにしよう。

想定外のダメージに面食らっていたトカゲだったが、思ったより早く立て直してきやがった。

俺がやったことへの意趣返しのつもりか、今度は爪を立ててくる。

 

「まだ俺のターンだっての、割込みは立派な犯罪だぞ?」

 

トカゲでも順番は守らねえとダメだぞ。

俺は背にある1本の蒼い一振りの剣……『セイリオス』に手を掛ける。

無論そのまま振るうのではない。

いくら何でも真正面からの腕力勝負は分が悪すぎるからな。

代わりに、即座にイメージした2本の電撃ブレスでトカゲの近接攻撃を妨害してやった。

俺の魔力をギリギリで感知したのか、即座に魔力障壁を展開して防いだようだが……まあ狙い通りではある。

しかし2本だと特に何も追加効果なしなのか、完璧に防がれたな。

とりあえずこのままだと煩わしい反撃が飛んでくるから、その場で再度掌底突きを放ってダメージを蓄積させる。

そこから魔力障壁そのものを足場代わりに跳躍して一時離脱だ。壁があるなら使わないと勿体ない。

一旦距離は取るが、別に撃破を諦めたわけじゃない。

倒すだけなら別に他の方法でとっくにどうとでも出来るんだが、今回はあくまで実験だ。

 

「最後の実験ついでに締めさせてもらうか」

 

新たに爆発的加速と共に剣を突き立てるイメージを引きずり出す。

凝縮された闇属性の魔力を脚部を軸に放出して加速、一瞬で距離を詰めにかかる。

同じ魔力を伴うセイリオスを用いた突きを加速と同時に放ち、魔力障壁を障害ともみなさず突破。思いっきり腹に切っ先を突き立てることにも成功した。

これはレオン先生が考えた顕魂術のイメージを拝借したものだ。

元々俺もイメージはあったんだが、レオン先生のイメージの方が運用効率が上だったからな。

見た目こそ単純な突きだが、だからこそ突き詰め甲斐がある。

レオン先生の方は光属性で、俺のは闇属性と見事に対照的だがね。

更に攻撃自体の付与効果も結構差異があったりする。

俺の方は防御が固い相手向きの防御無視効果があり、それが要因となってトカゲの装甲及び魔力障壁を貫けたわけだ。

この使用者によって顕魂術の効果が変わるというのもまた面白い発見だったりする。

よく面倒だと言われる魔力障壁を無視できる汎用性の高い顕魂術を俺とレオン先生は『スティンガー』と称している。

無論普通の剣でこんなことしたら1発でおじゃんになりかねないし、かつての俺は散々やらかしてきたが……。

4年間俺の相棒を務めてきたこいつだけはまさに例外と言える。

セイリオスはデイジー師匠やカルリッツ父さんが素材やら鍛冶師やら全部厳選した結果色々とおかしな性能になってしまった特注品だ。

デスメタルやらドラゴニクル鉱やらレアだったり採掘難度が高いもの、黒の森や東部の浅いところでは出てこないヤバイ魔物の素材……これらがふんだんに用いられている。

いわばヤバヤバ人材が集めたヤバヤバ素材のバーゲンセールな規格外ってやつさ。

扱う俺はヤバヤバかは知らんがな!

お陰で手入れとかする際の素材集めがクッソ大変なんだが、それもまた顕魂術の研究とかお遊びと並行出来るから都合が良かったり。

さて、障壁こそ突破されたがまんまと接近してきた俺に対しトカゲは好機と見たのだろうか。

この近距離でブレスを放とうとしている……それも無駄に最大出力で。

魔力障壁破られてもビビらない辺りは褒めてやるが……所詮はトカゲか。

確実に俺を仕留めたいのか、それともただの誇示なのか……前者であってほしいが。

 

「まあ、ブレスだろうが爪だろうが大して変わらねえよ」

 

どちらにせよまんまと接近してきたアホと俺のことをバカにしてるのは確かだ。

──なら、ここはひとつ思い知らせてやるとしますかね。

所詮お前らは俺の踏み台だ。

そして実験ネズミならぬ実験トカゲであり、サンドバッグでもあることを。

 

「お前らの鈍くさいブレスに改良を重ねたものを見せてやるよ」

 

トドメとしてイメージするのは、銀色に輝く鋼鉄染みた3本首のドラゴンが放つ電撃ブレスを一点凝縮発射する光景。

どんなイメージだよと思わなくもない……が、妙にしっくり来てしまったものはしょうがない。

見覚えなど当然ない。

単に俺の魂が『とりあえずそんな感じでぶちかませ』って五月蠅いってだけだ。

今回は、そんなイメージと共に降ってきた術名も高らかに宣言させてもらおう。

言っただろう、気分の問題だってな!

 

「冥土の土産に受け取らせてやる。『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

 

随分仰々しい術名かもしれねえが、あの3本首のドラゴンだったらこれくらい許されると思ったからついつい叫んでしまった。

そのイメージの産物をセイリオスの剣先から疑似精霊を介して放出してトカゲに叩き込んでやる。

恐らく威力的にはこのトカゲの十八番の最大火力に匹敵するんじゃないかね。

単発を複数同時発射とは異なり、魔力充填とイメージ注入に時間は多少要するのが欠点だ。

それでも本家よりは全然早いから全然良しと出来るがね。

実験トカゲには到底勿体ない代物だが、まあこれも実験だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドラゴンの身体が電撃を帯びる特大のブレスに貫かれる光景は、地上で掃除を行う二人の目にも入っていた。

無論、そのブレスがドラゴンのもの由来でありその改良形であることも即座に理解している。

 

「防御面だけなら面倒なあのドラゴンを実験がてらで一撃必殺か。やれやれ、今からでも実は第二王子でしたってバラしたら面白いんじゃないか?」

「魔力障壁を貫通すると共に剣を突き刺し、ゼロ距離であの威力のブレスか。新たな手段を得たようで何よりだ」

 

ドラゴン撃破自体は4年前からの日常なので特に驚きもない。

しかし、相手の十八番の改良版での一撃必殺には反応を示していた。

魔法障壁込みの防御面では、グランナイツでも全会一致で面倒な相手と認識しているからこそだ。

それと共に、4年経過してなお加速するマドラーシュの顕魂術の開発っぷりには兄貴分として鼻も高くしていた。

 

「ほい、着地完璧芸術点下さいな!」

 

当の本人は盛大に風穴が開けられたドラゴンの死体と共に鮮やかな着地と共に地上に戻ってきた。

双方着地で盛大な物音を立てないような精密な風属性の魔力コントロールも忘れずに。

偉志ノ大陸での修業もあってか、マドラーシュの魔力制御は顕魂術開発者であることを考慮してもかなりのレベルに位置している。

その属性適性も恐るべきもので、観測し得る全属性を過不足なく扱えるという異端っぷり。

仮に魔法が使えた場合は、問答無用で天才と称される位置にいたことだろう。

王国にはもう一人だけ該当者はいるので、恐らく世代における二大巨頭などと言われたことだろう。

無論、本人はそのような形で天才と呼ばれても全く嬉しがることはないが。

 

「そういえば、今日はそこまで遊ばなかったんだな。もう少し長めに空中演舞を楽しんでも良かったんだぞ?」

「あのトカゲは見ていて苛々するからな。さっさと倒したくなっちまうのさ」

「俺も幾度か倒してきたが、連中には傲慢が過ぎるきらいがあるからな。その苛立ちは至って真っ当だ」

 

4年前のドラゴンとの初戦闘が変な意味で因縁になってしまっているのだろう。

マドラーシュの中では、このタイプのドラゴンは人間をやたら見下しているというイメージが先立っている。

ある意味理不尽な八つ当たりかもしれないが、相手から仕掛けてきているのだから容赦する理由もない。

知らない者がこの理不尽極まりない経緯を聞いたら一体どのような顔をするのか。

カルシオンは思わずそんなことを想像して、危うく吹き出しそうになっていた。

 

「とりあえず魔石はこの場で回収しちまって、後は解体だな。この風穴の説明は考えておけよ?」

「適当に巨大な魔力で開けたで十分じゃないか?変な言い訳をする理由がない気がするぞ」

「イグノックス兄さんに賛成。んじゃ、『無慈悲な七つの夜』ケルビム、帰還しますかね」

「そんな雑な扱いで大丈夫なのか?こわーい師匠に怒られても俺は助けてやらねえからな?」

 

戦闘の被害を考慮して配置した荷物運搬用の馬車へ向かう。

『ケルビム』とは、冒険者活動の際にマドラーシュ自身が考えた偽名だ。

いくら魔法が使えない上に代替品でしかない張りぼて王族でも、素での冒険者活動は色々リスクが伴いかねない。

更に現在のマドラーシュは顕魂術で戦うことも相まって水面下で動く必要もあるのだ。

だからこそ、バレたら面倒な身分を隠すための偽名が必要不可欠で、ケルビムと名乗り始めたのである。

ついでに容姿も黒髪に変え、その上で髪型もオールバックと見た目の印象を入念に変えている。

変装を趣味とすらしているルドミラの徹底的な仕込みとマドラーシュ自身のその辺りの抜け目なさも相まり、素で正体を感づかれたことは一度も無い。

マドラーシュとケルビムが同一人物と知る者は、グランナイツとラスと現時点の同世代友人残り2名のみ。

『無慈悲な七つの夜』という二つ名もついているが、こちらは活動を始めてすぐに名付けられた。

夜間発生という傍迷惑な小規模スタンピードにて、当時7歳で前線を張ったという前代未聞な出来事が原因である。

魔物の死体まみれの中、返り血を浴びた子供が何の感慨も無い無表情で立っている光景を見たら無慈悲とつくことも頷けるだろう。

当人曰く、数に頼るだけの魔物に対して『こんなものか、つまんね』と思ってただけらしいが。

あながち間違った二つ名ではないのは確かだ。

ちなみに米粒2つゲットとかは当然無いし、仮に冷酷がついても米粒1つとかも無いのであしからず。

話を戻すと、『電撃のようなもので盛大に風穴が開かれたドラゴン』については周辺地域ではかなり話題になったらしい。

それを行ったのがかの『無慈悲な七つ夜』ということも相まってか、噂の拡散はかなり早い。

無論、王都の冒険者ギルドの方でも話題に上がるのも時間の問題だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

というわけで帰ってきたぞ王都!

トカゲの素材でそれなりに換金出来たから、ポケットマネーもいい具合だ。

美味とされるドラゴンの肉もいい感じで残っているから、デイジー師匠にお裾分けというか調理してもらうか。

魔石も一応キープはしているが……イメージを貰う以外での利用法がまだ確立してないんだよな

そのイメージも既に精密な身体強化とかブレスで使い切ってるから今更過ぎるし。

姉上なら何か変な利用法思いついてるんだろうが……。

一応国宝レベルってされる魔石を、基本空気な末っ子がいきなり差しだしたらどうなるかは火を見るよりも明らかだ。

そこから変に飛び火ってこともありえるし、キープが安定だ。

現在において、俺と姉上、兄上は全く接点が無くて兄弟らしいことはまるでしていない。

兄上との接点の無さは、俺の扱いが早々と兄上のスペア扱いの張りぼての王族になったことが一番の原因か。

いくら俺が魔法を使えないへっぽこぴーでも、男児同士で国を割る危険性は普通に残る。

だから早々に引き離されて育てられることになったから接点の持ちようがない。

それでももしものことがあったらで継承権自体は第二位だが、誰もそんなこと期待しちゃいないだろう。

今となっては俺もゴメンだしな。

普通なら随分とひっでえ扱いだなと思うんだが、そう思わなかったのは母上の働きが大きかったんじゃないかね。

兄上と姉上には王族の母……要するに王妃として接していた。

一方、俺の前では普通に母親だったんだよなあ……。

スイッチの切り替えに四苦八苦していたって、親友のデイジー師匠から後で聞いたけど。

その上で腫物扱いだったグランナイツを教育係に当ててくれたことにも感謝だな。

姉上については、昔はたまに隠れて遊んだり、傍から見たら変な実験に付き合ったこともあったっけか。

あの事件以来、きっぱりあちらから切り離される形で疎遠になっちまったけどな。

まあその辺の事情も、今の姉上や兄上についても、傍観者として眺めることは出来たお陰か色々理解は出来ている。

姉上については俺から強引に接触しようと思えばできるんだが……どうにもそういう気は起きないんだよな。

そんなこんなで、俺の実家族は王族が故に面倒なことのオンパレードってわけだ。

傍観者一辺倒の俺から見たら、当人たちよりも周りが問題にも思えるけどな。

色々ご機嫌窺ったり気を使ったり、あまりに雁字搦めで見ていられなくなる時すらある。

だからこそ、俺はやりたい放題を貫かせてもらうがな!

さて、そんな暗い話はどこかにポイ捨て安定ってことで色々な意味でお隣さんなグランナイツ会館が見えてきたぞ。

 

「張りぼて第二王子の凱旋だおらあ!」

 

威勢のいい帰還第一声だが、扉はちゃんと手で開ける。

以前蹴って開けたら危うく扉を壊しかけて、デイジー師匠にきっちり説教を貰っちまったからな。

あの時はつい、偉志ノ大陸の演劇の1シーンの真似がしたくなっちまったんだ……。

若気の至りならぬ幼気の至りってやつだな。

 

「あ、お帰りマッド!今日は何倒してきたの?」

 

お、今日の出迎えは元気いっぱいの親愛なる幼馴染だな。

その名もラス、デイジー師匠の一人息子で俺の最初の同世代友人だ。

そう遠くない内に受験資格を得られる騎士団試験に向けて修行中の身で、年は俺の2つ上。

デイジー師匠とカルリッツが剣の稽古を担当して、イグノックス兄さんやカルシオンがたまに助言を送るくらいで俺ほど苛烈な修行はしていない模様。

俺との違いは後者二人の動きだな。

デイジー師匠がめっちゃけん制してて、連れ出すとかは出来てないみたいだし。

更に、伯父のレオン先生がめっちゃ過保護で二人から超ガードしていたのも大きかったか。

曰く、『何故ラスに剣を教えるんだ!?俺たちが守ってやればいいだろう!』とのこと。

このグランロード、伯父バカが過ぎる。

っていうか2つ下の俺はいいのかレオン先生……泣けるぜ。

賛同者多数と言うことで、結局ラスにもある程度の英才教育を施すって流れに頑張って持っていったんだっけ。

あのグランロードが甥っ子に形無しというのは大変面白いが、あんまり度が過ぎると将来鬱陶しがられるぞ?

ちなみに、ラスは革命における同志の一人でもある。

顕魂術も早い段階で仕込んであるし、全ての背景も話したし理解し納得してくれていた。

身近にいるからこそグランナイツへの憧れは人一倍で、そんな彼らの数々の功績が全て無かったことにされている現実に凄い怒ってくれてたな。

終いには『俺はマッドの特別近衛騎士になってみせる。革命を成し遂げるマッドを守って、その上で俺もみんなのような英雄になってみせる!』なんて言ってくれた。

泣かせてくれるよこの幼馴染……。

特別近衛騎士制度の復活が新たな目標として加わった瞬間でもあったね。

 

「いつもの如くドラゴンなんだよなー……腹が減りそうな証拠もきっちりあるぜ?」

「ドラゴンの肉!全然悪くないって、むしろ嬉しいよ!よし、残りの鍛錬もこれで頑張れる!」

 

そんなサラブレッドな幼馴染も、ドラゴンの肉を見たらめっちゃ目の色を変えていた。

何でも食べるように見えて意外とグルメだから無理も無いか。

まあかなりの美味だからなあドラゴンの肉って。

しかもその中でも更に美味いってよく言われる尻尾もあるし。

自分で取ってきた素材って数段美味く感じるから俺も楽しみだ。

やっぱ、食ってのは大事だよねえ。

さて、この素材を渡したらとりあえず工房へ行くとするか──

 

「ねえマドラーシュ王子殿下?さっき、無慈悲な誰かさんがドラゴンを一撃必滅したなんて話を聞いたんだけど?」

 

何かいつものって感じの怖い声が聞こえて来るんだけど。

デイジー師匠?顔が笑ってませんよ?

可愛い顔が台無しですよ?

後掴まれてる肩が痛い!悲鳴上げてる!本当に力凄いですね!

どう見ても説教モードなんだが……待て待てトカゲ一撃必滅が何でもう伝わってるんだ?

誰だよリークしたの!

流石に広がるの早すぎやしないか!?

 

「俺は事前に忠告したぜ?まあ、ご愁傷様ってことでさようならー」

 

何でこんな拡散早いんだ?

そもそも俺が片手間でトカゲ倒しましたーなんて、今更過ぎることだよな。

そして楽しそうに全力疾走で逃げるんじゃねえカルシオン!

またクリスティーナ姉さんと共謀してファンシーな髪形にしてもらいたいか!

助けてラス!今こそ同志の弟分を守る時、または母に立ち向かう時じゃないかね!?

 

「おお、前より剣撃が鋭くなっているぞラス。誰かにアドバイスを貰ったか?」

「イグノックス様からもう少し体幹を意識しろって言われたんだ。マッドは出来てるって話だから、俺も出来るようにならないとね」

「そうだな。だが、デイジーのお説教を貰わないように考えて立ち回ることも覚えるんだぞ?アイツはそこが見事に抜け落ちているからな」

「……そうだね。よし、じゃあもう1本行くよカルリッツ!」

 

この裏切り者どもぉ!

 




というわけで一気に4年ほどターンジャンプ。
4年も経ってしまえば、ドラゴンもマッドからすればただの実験トカゲです。
初の術名登場はあの機光竜3体融合ですね。
今でも私が愛して止まない、至高のモンスターです。
こんな術名がこれからわらわら出てきます。
そしてグランサガ側もようやく主人公ラスの登場。
こちらではデイジーが死亡していないので、記憶も失ってはいません。
要するに、原作より普通に強い。
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