転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけで、混沌メンバーな遠足の本番ですね。
ノリとしてはグランサガ側のサブクエ的な感じかも。
そしてハードの11章来たけど本当楽しいなあ最高!


64. 最年少な引率役も大変です

 

今回の俺たちは魔物の生態分布の変化を調査することがお題目となっている。

その兆候自体は自身たちで視認したことで確定させ、既にその要因を探索する段階だ。

とはいえ、俺たちが適当にあしらったヤツらとアル兄さんとガークが接敵した顔ぶれで大体そこも予想はつくんだよなあ……。

共通するところでゴーストナイト、これは以前にも言ったが王国での出現例は元々皆無に等しかった。

地下霊廟とかその手に準ずる場所なんてそうそう魔物狩りに行かないからって事情もあるんだがね。

そうでない場所で出現したのは……3年前にプリシラが送り込まれていたあの研究所くらいか。

……この時点で既に『大当たり』な匂いがプンプンしやがるんだよな。

 

「うわ、出てきやがったあの中途半端な人型!」

「となると、やはりこの洞窟は奴等の棲処と言っても過言ではないか」

 

その予感を強固にするであろう廃棄物もここで出やがったからな。

生態分布の変化の中心にあったとある洞窟に足を踏み入れて暫くすると、早速のお出迎えである。

白一色に染まった、一応二本足で立っては二本の腕を構える様子は人型に見えなくもない。

見えなくもないというのは随分曖昧表現だが、これでも優しい言い方のつもりさ。

腕の長さやら脚の長さ、挙句その姿勢が極めて歪だからな。

まるで適当に粘土を捏ねているようなその造形は、ただただ不気味なだけだ。

 

「やれやれ、やっぱりこいつらだったのか……」

「こんな洞窟で自爆されたら堪ったものではないからね。動きを遅らせた上で確実に行かせてもらおう」

 

表でも使った光剣の雨(スチールレイン)で、不気味な存在の進軍を遅らせる。

洞窟という狭い空間で放たれるその妨害は先ほどよりも顕著に効果を発揮していた。

オルタはそこから更に光属性をこれでもかと纏わせた追撃の斬撃をその場から放つ。

放たれた魔力斬撃は対象となった魔物を切り裂く……どころか、その周辺をも巻き込んでいた。

俺の次元斬とまるで同じ効果の顕魂術だ。

というか、単に範囲と属性が違うだけなんだよなこれ。

オルタの場合は光属性の奥行きに向けて、俺は闇属性の立方体を描くような感じだし。

 

「そんじゃ俺も遠慮なく……」

 

対する俺はセイリオスを回転投擲して、オルタの攻撃範囲外にいる連中を纏めて誘引する。

重量は見た目通りだからか、面白いくらいに風属性と闇属性魔力で斬りつけられていくね。

完全に無防備かつ纏まった状態なところに、今度は千紫万紅を高速抜刀。

放たれた複数の魔力斬撃は、纏まっている連中を空間ごと巻き込んでバラバラ死体へと変えていった。

『ラウンドトリップ』からの『次元斬』、これマジ便利だな。

対人では読まれやすいからむしろ隙になりがちだが、こういう殲滅戦では滅法強い。

カルマの魔石の恩恵の凄まじさに、本家グリフォンに何か供え物でも用意してやろうかと思ってしまうほどだ。

 

「オルタもすっごいな……あっという間にアニスフィア様と同じゴールドランクになったってのも頷ける」

「顕魂術に恵まれただけのことさ。ガーク殿もいずれマッドから習うのであれば、すぐに追いつけるはずだよ」

「と盛大に謙遜をなさるオルタ様ですが、剣術においてもマッド様とそこまで差がないということを補足させて頂きます」

「……この一件が終わったらちょいと手合わせ願いたいものだな」

 

むしろ単純な剣術ならオルタに軍配が上がると思うがね。

カズヨシさん仕込みってのがかなり大きいし、当時は俺も負け越し気味だったからな。

なんでもありって言うなら、そうそう負ける気はしねえけど。

 

「手慣れたように遠距離戦を挑んだり、自爆という物騒な言葉が聞こえたが……あの手のヤツと接敵経験があるのか?」

「ああ。俺たちは便宜上人造人間(ホムンクルス)と呼んでてね……ガークが言ってた中途半端な人型っていうのがまんまな当てはまる存在だ」

「人造人間……それって要するに人間を作ってるってことですよね?一体どこの誰がそんなやべえことを……?」

 

この手の裏事情に初めて触れるガーク、なかなかに衝撃を貰ってるようだな。

王国の表で出てくるような魔物ばかりではまず出て来ない類の話だ。

偉志ノ大陸では割と道を外した輩がやらかすケースが多いから、オルタにとってはちょっとした非日常の延長線だろうが。

 

「これについては複数パターンがあるからな……実験用モルモット、単純な家畜代わり、はたまた従順な奴隷……作成主も人だったりそうでなかったり。ま、いずれにせよロクでもないがね」

「いずれにせよ、まともな手段で生み出されていない人の手による魔物であることに変わりはない。哀れみを覚えるよりはさっさと土に還してやる方が人情的には筋だね」

「むしろ、いきなり世界の裏に足を踏み入れたって感じですっかりビビッてしまってる状態です……」

「今の内に慣れておけ、そういうことだろう?特に愚弟は長いことそんな輩と戦ってきたことを踏まえると、相当根付いているだろうからな……姉上の近衛を目指すのなら、いい経験になると思うぞ?」

 

流石は先んじてこの世界に入り込んでいるアル兄さん、見事な先輩風だ。

っていうか、さっきのわだかまり解消から一気に親密になってるねえ……よろしい傾向だ。

そういうことなら、ここいらでちょっとした課題を出しておくとしようか。

おあつらえ向きに道が分かれているみたいだしな。

 

「いい具合で分岐があるし、ここからは分かれて行くぞ。アル兄さんとガークはタッグ組むとして……オルタとプリシラ、どっちかないし両方がついてやってくれ」

「どっちかに5人で行くとかはしないんですか?下手な戦力分散も危険な気がするんですが……」

「その懸念を抱き、ちゃんと進言するのはいいことだなガーク。その上で意図を説明すると、今回は調査ついでにアル兄さんとお前に経験を積ませるって名目もあるんだよ」

「課題、というわけか。そしてオルタないしプリシラはいざという時の補佐役と……これもまた破天荒風味と言ったところか」

 

俺の時よりかは随分優しいと思うがねえ……。

だって今回、補佐役二人に監督役一人だし。

 

「でしたら、私とオルタ様が共に付くとしましょう」

「え、それでいいのか?大将であるマドラーシュ様を一人にするってなんか不安なんだが……」

「マッド様の眼から『暴れたくてしょうがない』オーラが凄いことになっていますから」

 

……流石にプリシラの眼は誤魔化せないか。

3年前からそういう目の付け所はエグイからな……。

下手に隠し事が出来ねえってことでもあるが、いざって時は黙ってくれるからありがたいし。

 

「うん、それならマッドは単騎で暴れさせるべきだね。そうじゃないと、後で私が変な苦労を被る羽目に……」

「……今更だが、愚弟が常々迷惑をかけてすまない。後でラインヒルトやデイジーと共にきつく言っておく」

「えーっと……そういうことなんで、マドラーシュ様ご武運を!」

 

こっちの男三人衆が奇妙な結束を見せているのは一体何なんですかね。

仲がいいのは良き事なんだが、その連帯感は何か気に入らんなあ。

まあいい、一人で探索できるって言うなら有難くそうさせてもらうか。

──この洞窟、あのホムンクルスよりも強烈な匂いがプンプンするし。

そんな嬉しいようなそうでもないような香ばしさがする方の道を選ばせてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マドラーシュの予想はある意味で当たってはいるのだが別の意味では外れていた。

分岐の先はてっきり魔物がごった返しているものかと思っていたが、見事なまでに肩透かしを貰う羽目に。

現れたのは、先ほどと同じくホムンクルスの色違いの亜種とゴーストナイトのみ。

最近の単騎出撃においてはデーモンやらキラーインセクトと戯れていたこともあり、果てしなく物足りなさを感じる状況である。

 

「そういう意味では外れのはず……なんだけどな!」

 

敏捷値が高いのか、逸早く接近してくるゴーストナイトには斬撃に合わせての極獄の絶対独断(アブソリュート・ヘル・ドグマ)、後の先による迎撃。

その際に本来の利き手の左が空くので、セイリオスを握っては横を抜けて接近を図る黒いホムンクルス種を即興圧縮魔力斬撃(クイックドライブ)で吹き飛ばし、ゴーストナイトの撃破に合わせて風属性の散弾付与突貫(タイフーンジャイアント)で風穴を開けて即時対処。

お世辞にもあまり広い洞窟とは言えないので、『フル・ダークネス・バースト』や『エターナル・エヴォリューション・バースト』が使いづらい状況にある。

下手な使い方をした際に洞窟崩壊など勘弁願うところで、至って当然の配慮だ。

すなわち、一斉殲滅や一斉妨害手段が封じられているのだが……そこは腐っても鯛ならぬアダマンタイト級。

先ほど見せたラウンドトリップ→次元斬の極悪コンボ一辺倒にならず着実な殲滅を行っていた。

極悪コンボに頼り切らないのは、魔力効率の問題も理由の1つだがそれ以上に本人の嗜好によるものである。

早い話が、『マンネリは勘弁』というだけのこと。

こうして単騎ということを忘れるほどの探索ペースの影響か、そう時間経たずに襲来は止まる。

それと同時に、マドラーシュも奥へ行く足を止め視線を壁に向けた。

 

「ったく、なかなかの鉄臭さなもんだ。これなら魔力その他を視るまでもねえ……な!」

 

いきなり壁に向けて拳を向けるなど、発狂でもしたのかと思う行動だ。

しかし、その拳は絶妙なまでの威力及び魔力調整が為されており……まるで皮を剥くようなノリで岩壁が剥がれる。

見るからにその場に見合わない扉が現れると、何の躊躇もなく乱雑に蹴り開けて突入していった。

魔力由来の罠については、そもそも岩壁剥がしの前で看破済みである。

 

「『無慈悲な主役』……本当に来るのか!」

「突撃隣のヴァンパイアさん家ってところか?もうちょい消臭することを勧めておくよ、じゃなきゃ大体が逃げ帰っちまうぜこりゃあ」

 

部屋の中はひたすら薄暗く、普通ならば何かを視認すらままならない室内状況だ。

が、突入前からきっちりと臭う鉄臭さ……すなわち、濃厚な血の匂いが大筋を物語っていた。

単純に死体が転がっているからという類の話ではない。

その部屋の主が、他者の血を糧とする超常的存在(ヴァンパイア)だから、この一言に尽きた。

とはいえ、些か匂いが強烈で慣れているマドラーシュでも顔を顰めるほどである。

世界を股にかけるとある友人からも僅かながらに臭うこともあるが、あちらは本当に最低限のものでしかないのだから。

 

「キーストーンの力は極力抑え、食料補給の安定に留める……目の付け所は悪くない。ホムンクルスという出来損ないもただの生命維持のためって話なら正直見逃してもいいくらいだ」

 

その程度の事ならば人間も家畜でやっていることだし、偉志ノ大陸の超常的存在も普通にやっていること。

これだけならば、今更眉を顰めることでもない。

 

「そ、そうです。人間を餌にするにも限度がありましてこうして節制の策を試みていまして……」

「殊勝な心掛けで何より……その活用記録を本来の食糧の安定供給と引き換えに売り渡すくらいだ、そりゃあ熱心にもなるか?」

 

何とか取り繕うとゴマ擦りを始めるも、不敵な笑みと共に発せられた指摘と共にその表情は固まった。

すなわち、図星ということ。

実は事前情報から得た直感に従ってのカマかけ発言に過ぎず、色々と突っ込んでやろうかと思っていたところである。

それがこうもあっさりと黒確定な反応を見せ、マドラーシュの内心は拍子抜け一色であった。

 

「これでようやくルドミラ姉さんやプリシラの裏が取れたってわけだ。ったく、アーイレン過激派に向けての利益ばかり作るだけに飽き足らずカンバスとまで繋がるとは……なりふり構わずの信仰っぷりは吐き気がするね。ああ、ついでにこれは没収ということで」

「か、神の霊石が!?貴様、いつの間に探し当てていたんだ!?」

 

そんなんこの住居……もとい自然の玄関から入った直後からだっての。

3年ぶりのプリシラとの顕魂術共同開発で得た、新たな探索系の術でな。

元々は不意打ちと素早い奪取を目的とした闇属性の鞭(ダーク・ウィップ)に、探索の指向性を付属する形で強化を施した。

『リトルグリフォン』の展開イメージとプリシラの手動範囲探索術のイメージも織り交ぜることが出来たのはまさに僥倖であった。

今回はキーストーンの魔力計測パターンをそのまま当てはめ、部屋に入った瞬間から密かに展開。

そのままでも悟られることは少ないが、万に一つを考えて仰々しい会話で意識を徹底的に逸らさせることも並行して行っていた。

結果、この短い時間であっさりとキーストーンを見つけ出し奪取まで至る。

こういうところでも何でもあり、本当にやりたい放題である。

 

「神の霊石だけは渡すわけには行かない!実力行使といかせてもらう!」

 

先ほどまでの狼狽っぷりはどこへやら、一気に好戦的な空気を醸し出しながら接近を図る。

鉄臭さに混ざって小物臭さもあるが、その能力は確かなものであった。

少なくとも、表にいたゴーストナイトやホムンクルスとは比較にならない速度ではあるのだから。

 

「だがあまりにも杜撰すぎなんだよな!」

 

とはいえ、単に速いだけならば何も問題は無い。

いつ来られてもいいよう内蔵魔力も含めた一挙一動は感覚で把握していたから、不意打ちになってねえんだよ。

後は軌道を読んで最小限回避をしながらの千紫万紅を抜刀、カウンター気味の疾走居合である。

強化された風属性と闇属性のイメージにより、以前よりも的確かつ手数多めの追加斬撃が放たれていることで威力と安定性が更に向上したものとなった。

放ったマドラーシュ本人も血飛沫すら浴びておらず、これだけで決着が着くものと誰もが思うことだろう。

 

「流石に人間離れした攻めだが……それくらいで倒し切れると思ったか?」

「随分とお早い復活なこって……いいもの飲んでは食っての基本的健康法の成果ってやつか」

 

ヴァンパイアの基本能力は魅了と圧倒的身体能力、そして再生能力の3つである。

その内、魅了は顕魂術の副次効果である自我の強化で基本的に無効化は可能。

身体能力も技術で対応可能なレベルでしか無いので何ら問題は無い。

しかし、再生能力だけは如何とも対策が限られてくる……手持ち次第ではジリ貧にすら追いやられる面倒ごとに分類される。

今対峙しているヴァンパイアはその能力に特化させているのが更に厄介度合いを加速させていた。

ヴィルジールの依頼で何度かヴァンパイアという魔物と対峙したが、最も面倒な輩だとマドラーシュは内心で断定する。

とはいえ、攻撃をしないと倒せないのであらゆる手段を試すこととした。

 

「『スティンガー』かーらーのー『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

「先ほどの斬撃よりは強力かつ的確な一撃だが……それでも再生は間に合う!」

「次は『フル・ダークネス・バースト』!で束縛してからみじん切りで」

「バラバラにしようが、無駄だ無駄!」

 

零距離からの三重電撃ブレスは、現在マドラーシュが持ち得る中では単発瞬間最大火力だ。

それでダメならばと、黒竜由来の咆哮紛いからの次元斬でのバラバラ死体戦法に即座にスイッチ。

そこからも火力の大小や搦め手の有無を考慮せず、あらゆる手段で殺しにかかる。

普通ならば残機がいくつあっても足りない猛攻だが、このヴァンパイアはそれでも再生を果たす。

回数を重ねることによる、再生の劣化も見受けられない辺り本格的に詰みに見える光景だろう。

──ここまでの攻めっぷりを見せるマドラーシュにまるで曇りが見受けられないことを除けば、だが。

 

「そろそろ魔力もキツくなってきたんじゃないか『無慈悲な主役』!神の霊石を置いて去るなら、命までは取らんでやるぞ?」

「二流悪役なセリフ頂きましたってか。全く、こんなしみったれた場所なのに飛行トカゲの相手をしてる気分になってくるね」

「強がりも大概にしておけ若造が。引き際を弁えた方が賢く生き延びられるものだぞ?」

 

魔力障壁を盾にオラつく普通のドラゴンと、再生能力を盾にドヤ顔全開の目の前のヴァンパイア。

種やら能力やらは異なれど、マドラーシュからすれば完全に同じ穴の貉……強がりでもなくただの事実である。

ならば、その攻略法も似たり寄ったり。

当然、既にその目処は立てていた。

魔力についてはキツイどころかまだまだ余裕しゃくしゃくとすら言える状態である。

少なくとも、ここぞの一発芸をするには確実に足るほどの魔力残量であるのは間違いない。

 

「確かに引き際云々については同意だが、そっくりそっちにお返しさせてもらうよ」

 

手始めに疾走居合で複数の斬撃を与えながらすれ違って距離を取る。

これだけでは足りないのは最初で理解しているので、続けざまに放つのは左手で構えるセイリオスによる突進突き。

……に見せかけての零距離風属性散弾、いつものフェイントである。

ノックバック狙いの攻撃と共に背後に下がることでの距離を稼ぎ、今度はセイリオスを回転投擲してその場に留めさせながらのスリップダメージ狙い。

手が空いた状態で再び構えるのは、当然ながら千紫万紅だ。

現在の距離と相手が立ち直るまでの時間を考慮すれば、普段よりも集中に掛けられる時間は多い。

少しだけ魔力と集中力を充填し、超高速抜刀を三度行う。

単騎の乱戦ではそうそう行う暇が起こり得ない連続次元斬である。

鞘にも余剰に魔力を充填することで使える、一見すると使い勝手の良い高火力広範囲攻撃だが……このバリエーションは些かクセが強い。

居合の体勢と共に一瞬で魔力を斬撃状に解き放つ次元斬の時点で難しいというのに、それをテンポよく刻む必要があるのだから。

彼に居合を教えたどこぞの天然侍ならばより効率よくこなせるのだが……そこは如何せん積み上げたものの差だろう。

怒涛の連撃でこそあるが、それでもなおヴァンパイアの驚異的な生命力を前に殺し切るには至らない。

 

「何をしても無駄だと言っているだろうが!これでまた苦労も水の泡……」

「──それはどうかな?」

 

どこぞの哲学書みたいに言えて満足気な笑みを浮かべ、更なる追撃を放つ。

セイリオスによる蓄積ダメージすらも諸共せずに再生を図ろうとするヴァンパイアの元に降り注がれるのは深海色のゲリラ豪雨。

いつの間にか展開していた第5陣は、いざ肉体を再生しようとするヴァンパイアにモロ被りすることとなった。

 

「この雨が魔力にも適用されるってのはオルタが実証してくれたからな。そしてそこに鎖を強いる!『フル・ダークネス・バースト』!」

「なっ……!?再生の為の魔力の流れを縛る、だとぉ!?」

 

停止している時間はそれこそ一瞬だが、強引に引き延ばす術は今のマドラーシュにはある。

デーモンほどの魔物となると完全に動きを封じることは叶わないが、このヴァンパイアは再生能力に重きを置きすぎている。

すなわち、自身の『格』というものを上げることを疎かにしているということ。

結果、黒竜の呪詛がこれまたきっかりと刺さる形となり、ヴァンパイアは再生しようとする状態で肉体と魔力を縛られることとなる。

こうなってしまえば、後はもう煮るなり焼くなりだ。

 

「折角の機会だ、再生能力用の魔力ってのも拝借してみますかね……『トリーズン・ディスチャージ』」

「魔力を縛り上げるに飽き足らず、奪い取るだと……?貴様、本当に人間なの、か……?」

「失礼な、お前らの腕力で簡単に捻りつぶされる可愛げ満点の人間だっての。──ってか、魔力まで鉄臭えのかよ。これじゃあヴァンパイアごっこになっちまうな」

 

自分で奪っておいて何という言い草だろうか……さながら間違っていないのも笑うに笑えない。

これで肉体が変貌していれば、ミイラ取りがミイラならぬヴァンパイア狩りがヴァンパイアという状況なわけで……。

マドラーシュ的には血液の過剰摂取に等しい状態ではあるが、対策は即座に浮かび上がっていた。

 

「そもそも再生に使えるってことは……よし、これで使った分の魔力は回復完了。ほれ、消耗戦狙ったってのに相手回復させちまったな?ねえねえ今どんな気分……って答える余裕も無さそうか」

 

完全再生に用いられていた魔力はごっそり奪われ、追加の魔法の発動も束縛により許されない状態。

その強靭な生命力は6連撃によるダメージの影響をひたすら長引かせるだけの足枷にすらなっていた。

超常種とはいえ痛覚が無いというわけではない、ただ瞬時の再生で誤魔化していたに過ぎないということだ。

確かにこのヴァンパイアのしでかしたことは極刑ものだが、マドラーシュ的には憎悪を向けるような存在ではない。

 

「まあ、お前は能力頼りな小物な端役なだけだからな……あの世では真っ当に節制生活しておけよ?」

 

トドメの一撃はセイリオスの光属性斬撃でさっくりと。

相手も完全にマドラーシュの人外染みた力に恐怖しきっていて、断末魔の叫びすら上げることは無かった。

浄化されるようにその肉体は消滅して、残ったのは血のように赤い魔石のみ。

これまでは依頼で片付けていたので入手機会が無かったので、マドラーシュがそれを手中に収めるのは初めてのことである。

 

「新たな魔石、ゲットだぜ。──さて、残る疑問は後1つだな」

 

ホムンクルスやゴーストナイト発生の元凶を倒したのだが、マドラーシュはまだ部屋から出ることはしない。

新たな疑問──それは、先ほどのヴァンパイアの圧倒的な再生能力だ。

突っ込んで言うならば、保有魔力量と再生能力のバランスの悪さとも言うべきか。

これだけの再生能力ならば、ヴァンパイアの基本能力を以てしてのごり押しという戦術も取れたはず。

それをせずに、再生能力を盾に相手を焦らせて消耗を強いる消極的戦法を用いるのは首を傾げるところだ。

あくまでマドラーシュの感覚の問題であるところも多いが、それでも合理的でない部分が含まれているのは事実。

そう思っての追加調査であり、抜け目のないことにきちんと当たりもつけていた。

 

「キーストーンがあったのはこっちで、更に随分と趣が異なる感覚……何が出るのやらかだな」

 

僅かに開かれていた……というより自分でこじ開けた扉の先へ。

部屋の中は一言で纏めれば簡易的な牢獄であった。

異なる点を挙げるとすれば、違法研究所で用いられるような鉄の塊がいくつかあることだろうか。

僅かに魔力を感じさせる作りではあるが、マドラーシュはこの手の類の知識にはそこまで明るくはない。

彼の姉貴分の一人であり、その手の専門家であるミケ族を連れてこない限りは詳細は知り得ないだろう。

管のようなものが奥に向かって伸びていたので、マドラーシュの視線は自然とその方角へと向かっていった。

 

「……カンバスの方も随分とイカれてやがるな」

 

3年前でも同じような光景は目にした。

その時と明らかに違うのは、既に実験体として使われていたかどうかというだけだ。

円柱状のガラス管に閉じ込められてこそいるが、被験者の少女は人型のままであることが救いか。

意識は無いようだが、魔力の流れから生命の鼓動もきっちり感知出来る。

 

(顔立ちからして、シャルネよりは上に見えるが……それでも反吐が出る所業なことに変わりねえな)

 

静かに憤怒を燃やしながら、マドラーシュは救出のためにと精巧に魔力を組成する。

まずはお得意の闇属性の槍を6本ほど放ってガラス管を器用に破壊する。

中で働いていた魔力らしきものが解かれ、被験者はそのまま重力に沿って落ちていくところだがそこを鞭できっちりと引き寄せ受け止める。

俗に言うお姫様抱きという形になるが、別に意識してやったわけではない。

どこぞの恋愛スイーツ脳が別行動だったことは救いだが。

 

「華奢だってのはすぐ分かったが、それにしたって軽すぎるな」

 

人体を抱え上げるという経験自体少ないマドラーシュだが、それでも分かるくらいに被験者の少女は軽かった。その原因についてもマドラーシュは凡その検討はついている。

恐らくは、度重な実験やら調整やらで成長に異常を来しているのだろう。

 

(ただ、ちょいと妙だな……連中以外の手も入ってるような気がするんだが)

 

狂信者たちによるキーストーンに合わせた調整に隠れたナニかを、違和感という形で掴む。

とはいえ、類似事項が浮かばないが為に具体的なところは分からない。

先ほどまでいたここの主が施した実験等の影響なのか、はたまた別の要因か。

あまり見ない容姿であることも気になるところである……これまた色々な意味で。

色々と解明するべきところもあるかもしれないが。

しかし、今はそんなことを考えている暇があったら他に優先すべきことがある。

 

(帰るまでが遠足って言うからな。まあ、後で聞き出せばいいだろ)

 

運びやすさを考慮して、空中散歩(エアハイク)を参考に組み上げた不可視の寝床に被験者を寝かせる。

風の精霊石を用いて術の安定性を向上さぜているので、不用意な揺れなどは一切心配はいらず。

他に何も無い事を再度確認した後に、マドラーシュはおぞましい工房からそそくさと出ることとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血生臭い工房を出て、分岐路まで戻っても誰もいなかった。

早かったのか、遅かったのか……まるで分からない状態に思えるが、そんなのは魔力の残滓で判断すれば……いや、そんな必要もなかった。

何故なら、少し先でそこそこの魔力の流れを感じるし何なら剣戟音も聞こえてきたから。

あっちこっちに転がっているのは、ヌスクナッカーとかランドワーム……この辺りの洞窟で出てきてもおかしくない顔ぶれになってるな。

工房の主を潰したからか、自然なヤツが早速表に出てきているようだ。

そろそろ片付きそうだし、手を出すのも野暮ってもの……ここは静かに見物とさせてもらおう。

 

「こんだけ狭ければ、すばしっこくても動きは見え見えなんだよ!」

 

今ガークが相対しているのはフェンリス種のやや強めの個体であるハーティ。

王国で多く分布されるグレイウルフよりも素早い上に攻撃力も高め……いわば完全上位互換ってヤツだ。

魔物に慣れてきた冒険者からは軽めの苦戦報告をよく聞く相手だが、ガークにとっては敵ではない。

見ただけで分かる獰猛な牙をきっちりと受け止めるどころか弾いてやり、斬りつけるのではなく叩きつける形で剣戟を振るう。

……調子に乗ってるような言い回しだが、その実きっちり最適解を選ぶ辺りも悪くないな。

 

「っと、入り口から入ってくる時計ウサギとその取り巻き発見!既にこっちに気付いている感じですね……」

「こちらでも察知済みです。アルガルド様とガーク様はハーティの処理に集中なさってください」

「──奇襲を恐れないで済むというのは本当に大きいな!こちらが終わり次第、後詰めに向かう!」

 

時計ウサギって言うと……ああ、やはりウオッチマンか。

取り巻きのゲットーを前衛にして、自身は後衛から弓矢放ったり魔力込々の時計を用いた催眠やら凝視で妨害してきたりとやりたい放題のタイプ。

割と地形を利用してきたりと賢いところもあり、状況次第ではシルバー帯でも面倒がるってな。

そんな悪童どもがこの乱戦に割り込んでくるんだ、本来は歓迎すべきことではないんだが……。

 

「この状況を捕捉出来ないとでも?随分と人のことを舐め腐った駄兎どもで嫌になってしまいます……起動せよ、『マイグレーションフォース』!」

 

この有能侍女がこの状況を逃すはずがないんだよなあ……。

恐らくはウオッチマンの持つ魔力時計への対策に当たる地雷を入り口付近に仕掛けておいたってところか。

しかも、乱戦に紛れて催眠か凝視を行うタイミングで発動させるっていうおまけつき……完璧なカウンターである。

お陰であちらは魔力暴走を引き起こし……あーあー、完全に自爆状態じゃねえかこれはひでえ。

完全に初見殺しを極めてるなセカンド専属侍女め……後でめっちゃ褒めてやろうっと。

 

「アルガルド様!取り巻き兎なら俺でも行けますんで、時計ウサギにトドメお願いします!」

「安心しろ、向かう途中で少しは片付けて楽はさせるさ」

 

アル兄さんはゲットーの内1体を足蹴にして一気にウオッチマンに接近する。

その合間にも『ウォーターバレット』を複数放ってはガークの負担も減らす辺り、流石は次期王様。

ドンピシャの跳躍っぷりを見せながら、剣に纏わせた水刃で、自爆で昏倒しているウオッチマンの首を確実に刎ねる。

その後は余韻にも浸る間もなく洞窟入り口まで一気に走り抜けていった。

 

「『無慈悲な主役』としての採点はどんな感じだい?」

「それぞれがきっちり役割を果たし、アドリブにも即時対応出来てる。プリシラという鬼札を考慮してもいい傾向だね」

 

俺と同じく攻防を終始眺めていたオルタが声をかけてくる。

案の定気付いてたようだが、空気を読んでくれる辺りは流石我が親友。

そして、同じく俺に気が付いていたプリシラも何か言いたげな感じでこちらを見ている。

 

「プリシラも補佐役お疲れさん……しれっととんでもねえバリエーションを増やしていることも面白査定に加えておくぞ」

「お気に召して頂いたようで何よりです。この辺りは離宮の防備にも費やす予定ですので、ご要望あればいつでも受付いたしますよ」

「あんな初見殺しで防衛されては襲撃者も形無しだろうね……セラという個人城塞にやりたい放題の権化もいるわけだし、もはや伏魔殿ってやつじゃないか?」

 

よせやいやりたい放題の権化とか、思わず照れちまうじゃねえか。

そして、安全確保が済んだのかガークとアルガルドも戻ってくる。

ふう、これで互いに報告だ何しながら帰るだけ──

 

「おお、マドラーシュ様いつの間に!……あれ、何か浮きながら寝てる女子がいるような?」

「戻っていたか愚弟──って、お前は人拾いの癖でもあるのか?しかもセラとプリシラに続いてまた女性……」

「これは私の容疑を晴らす機会として利用するべきかな?マッドとしても、同性愛疑惑は遺憾だろう?」

 

っておいこらオルタ、てめえは一体何を言い出してるんだ。

今回のことはグランナイツとラス達以外には明かさねえって忘れたのか、まさかのチキン味頭か!?

んでもってアル兄さん、女ばっかり救出してるのはただの偶然だっての!

ああもう、お陰で帰りは色々な弁明タイム確定じゃねえか!

救出者の護送は同性であるプリシラに任せることが出来たのが唯一の救いだな……。

じゃねえと、間違いなくオルタとアル兄さんが図に乗っては姉上とユフィにあることないことぜってー伝わるだろうし。

ったく、人命救出しただけでこれはマジで泣けてくるわ……。

 





というわけで野良ヴァンパイア戦でした。
転天寄りの敵ではありますが、再生能力がとんでもになっているので普通では殺せません。
そして今回救助したキャラの容姿はクリームベージュな髪に少しだけ肌が黒めで小柄、トドメにマドラーシュと同年代。
ちなみにクロス先は増やしていません。さあ、誰でしょうか。

そしてアルガルド達はこれまた色々な魔物と対峙。
ハーティはラスレムモンスター内でもマイナーなのでアレですが、ウオッチマンはロマサガ2のアイツです。
乱戦だとこういう状態異常持ちウザいよなあと思いながら出しました。
まあ、魔改造プリシラが何とかしちゃうんですけどね。
ちなみにしれっと新術ありますが、元ネタは遊戯王のリンク3のアイツですね。
トポロジックもいちいちカッコいいんですよねえ……。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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