転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

74 / 112

普段やんちゃ放題が結構まとも、そういう回です。
少し捻った悪魔狩り風味もあるかも?
そしてエリオお姉さんの実装確定来たぜいえい!


67. 人間の定義

 

私とマッドくんはレイニ嬢を連れて、先ほどの控室に戻ってきていた。

父上と母上と一旦別行動であることは既に許可を取ってあるので問題はない。

私たちの中にある懸念の所在が判明次第、再度合流するという手筈にもしておいたからね。

 

(それにしても、今回はマッドくんがいてくれて本当に良かった……)

 

あの面倒なシャルトルーズ伯爵に徹底反論して、挙句グランツ公まで完全に味方につける形で抑え込む。

更にはシアン男爵を落ち着かせ、彼自身にも持つべき危険意識を持たせて上手いこと当事者に当て込んで見せた。

私だけだったら、シャルトルーズ伯に対しては弁で負けることはなくとも泥沼化しただろう。

シアン男爵に対しても、多少強引かつズルいやり口で無理やり丸め込んだかもしれない。

あの時のマッドくん、確かに相変わらずの歯に衣着せぬ物言いで冷や冷やしたところも確かにあった。

でも、それ以上に味方についている際の安心感が凄い……血が繋がっているからこそ余計にそう感じるのだろうか。

ただ、そんな心情の裏ではどうしても僅かばかりの棘が……いや、ダメだそれを考えてはいけない。

可愛い弟にそんなことを思うなど姉失格だ、そんなものは追いやらないと……。

それに今はレイニ嬢の誘導中だ、変な思考が伝播したら彼女を余計に不安がらせてしまう。

 

「マドラーシュ様までお急ぎの様子ということは、本格的に緊急事態なのですね?」

「俺ですら笑うに笑えない事態になってきたとだけ。姉上、軽く診るんだろ?外で番犬ごっこにでも勤しんでる、終わったら呼んでくれ」

 

私たちだけがレイニ嬢を連れて戻ってきたからか、流石のイリアの表情も怪訝なものになっている。

その後のマッドくんの簡潔かつ的確な一言で緊急性を理解してくれたのが幸いだけど。

それにしても、こちらが何も言わずに部屋の外に直行とは……あまりに察しが良すぎて私が戸惑っちゃうくらいだよ。

普段の軽薄なノリも仮面の一つなんだろうなあとつくづく思う瞬間で、その使い分けが本当に上手いというか……。

まあ、マッドくんの場合は上手すぎるからこそのじれったさもあるんだけどね。

 

「あの、診るというのはどういう……」

「ゴメン、当の本人を置いてけぼりにしちゃってた。とりあえずは座って落ち着こうか」

 

マッドくんの心遣いを無駄にするな私、ちゃんとお役目を果たさなければ。

少しばかり仰々しい感じになったからか、レイニ嬢からまた緊張している様子が見受けられる。

まあ、いきなり『診る』なんて言われたら普通警戒するよね……。

 

「あの場でマッドくんが大体説明してくれたと思うけど、今からあの状況になってしまった原因究明をさせてもらいたい。私の見立てではきっと中にアレがあるはずだから」

「アレ……?それって一体……ひゃあ!?」

 

ごめん、ちょいと失礼しますよっと!

可能な限り手早く、それでいて確実に……背骨をなぞってその気配を探る。

そこから肩から腕へ、順番に指を這わせては適宜意識を集中させていく。

──この分だと、やはりあるとすればあそこしかないか。

 

「……ほんのちょっとだけ失礼」

「ひゃあ!?あ、アニスフィア王女殿下一体何を……」

 

可愛らしい悲鳴が聞こえてくるけど、今は本当にそれどころではない。

下手に動かれないように後ろから緩めに抑えつつ、彼女の胸に指で触れていく。

 

(──見つけた!……そして、今でも結構ビリビリ来るってことはやっぱりそういうことか)

 

さっきよりは手加減してもらえてるようだけど、それでもなお背中からの電流は迸っている。

慣れたからなのか、それともさっきのマッドくんが叩きつけた殺気の影響なのかは分からないけど……お陰で手早く例のブツは見つけられた。

何とか電流の影響を表情に出さないようにしながら、イリアにマッドくんを呼んでもらうよう頼んだ。

……部屋の内からノックをするって、前世で見たようなやり取りだよなあ……。

それをやってるのが部屋の外のマッドくんとイリアだから、猶更想像しやすいのがまたね……。

 

「──意図した通りに証明完了ってな。やれやれ、これじゃあ俺ら以外は知りようがねえわな」

「全く、あえて誘発させるためにあんな言い方して……本来ならマッドくんが平気そうにしてるのって割と異常なんだからね?」

「俺を狂わせたいってんなら心地よい殺気じゃねえとな。この方向性は味付けが濃すぎてまるで俺好みじゃない、よって引っかかってやる理由もない」

 

うん、マッドくんマジマッドってことで纏めておく。

というかそう表現する以外何があるというのだろうか。

内に秘める有り余らん狂気で干渉を防ぐとか、やりたい放題にも程がある。

ハニートラップ系一切無効とかなんだ、ユフィ並にチートじゃんそんなの。

 

「悪かったなレイニ嬢、色々条件作るためとはいえ不穏な空気を作っては怖がらせちまった。後は1つだけ確認を済ませれば概ねの真実に到達だ……協力感謝する」

 

あっさりと非を認めては頭を下げるマッドくんの姿に、当のレイニ嬢は困惑の表情だ。

まあ、一体何が何だか分からないだろうね……でもまた表情から恐怖の色は薄まったみたい。

王族があっさりと頭を下げているのと、マッドくんが纏う空気のギャップが上手く相乗効果を発揮しているということだろう。

これなら私の方から動いても問題は無さそうだ。

 

「とりあえずその最後の確認をさせてもらうけど……レイニ嬢、自分が魔法を使っているって感覚は持っていたりする?」

「ま、魔法を……使っている?あの、私魔法なんて使った覚えは……」

「残念なお知らせだが、今でもこの場で『魅了』っぽいものが発動されている。──まあ安心しろ、杜撰な魔力の流れが功を喫して意図的じゃないのはよーく分かる」

 

思わず頭を抱えたくなるが、何とか抑えつけている状態だ。

正直、そうしたくなるほどに厄介な状況なんだけど……マッドくんはそんなにあっけらかんとした風なんだろうか。

というか、杜撰って随分な言い回しなのにそれがフォローになってるのが何とも言えないというか……。

 

「み、魅了!?でも私、魔法を使うのは苦手なはずなのに……どうしてそんなことが……」

「さっき軽く触診させてもらったけど、レイニ嬢の体内には、魔石が埋め込まれていることが分かったんだ。きっと、それが無自覚発動の原因なんじゃないかって……」

「魔石ってあの、魔物の体内にあるっていう……それが私の体にあるんですか!?」

 

顔色を悪くしながらも驚くレイニ嬢……まあ、その悲痛な面持ちも理解できる。

私が今告げたのは、彼女の肉体が魔物に近い可能性があるということと同義だ。

いきなり自分の肉体が人間のそれじゃない、なんて言われてショックを受けない人間がいるのだろうか……。

あ、目の前に一人いるかもしれない。

 

「何かすっげえ失礼なことを考えているであろうバカ姉貴はさておき……レイニ嬢が魅了を無自覚に使う時の魔力の流れは、熟練度はさておき俺が知る中でも似ているヤツに心当たりがある。魔石があるってんなら、俺のこの感覚の裏付けにもなるね」

「……つまり、私は人間ではないということですか?」

「分からない。一体どんな魔石か、どれほどの影響があるか調べないとこればかりは何とも……」

 

こればかりは当たり障りのない返答しか出来ない。

人間の体内に魔石があるだなんて私にとっても初めて遭遇するケースだ、慎重にもなるよ。

 

「人払いを徹底したのはレイニ嬢が魔石持ちだっていう情報を下手な拡散をさせないためだ。その能力を恐れられるならまだ良し、最悪何が何でも手中に収めんとするクソ連中がいないとも限らねえからな」

「まあ、言い方が凄いアレだけどマッドくんの言う通りだね。その上で無自覚に魅了を発動したとしても問題が無い私とマッドくんが付いてはガードを固めてるってわけ。シアン男爵を守ることにも繋がるからね。信じて欲しいところだけど……」

「その、お二方はこれまで私が会ってきた方々とはまるで違うということは分かりました。ただその、あまりに展開が急すぎただけで……」

 

ふう、何とか警戒は解いてもらえたようだ。

……一体私たちがどう違うのかを問い質したい衝動に駆られたけど、当然我慢だ我慢。

魅了を受けていないという意味、きっと誉め言葉のはず!

そして私は、今更ながら割ととんでもないことを思い出してしまった。

 

「って、そういえばイリアは大丈夫なの……?この分だと影響を受けてもおかしくない気がするんだけど」

「きっちり気を回して頂いているのでご心配なく。補佐に回ると尚の事頼もしさが倍増ですね」

 

待った、それってマッドくんがまた何かしでかしているってこと?

さっきはとんでもない殺気紛いで魅了の影響を吹き飛ばしていたけど、今はそんな気配は無いような……あれ?

待った、注意して探ると薄っすらと魔力を感じるんだけど!?

 

「さっきも言っただろ、似た波長に心当たりがあると。しかも魔石由来ってなれば相殺できない道理が無いっての」

「いや、涼しい顔で言うようなことじゃないと思うんだけど!?」

 

魔道具の実験をしてもらった時から感じてたけど、マッドくんの魔力制御って些か頭がおかしいレベルにあるよね?

初見のものもあっさりと使いこなすわ、何なら今回は魅了を相殺するような芸当もかますわ……。

恐るべし、グランナイツの英才教育。

いや、偉志ノ大陸由来の独特な技術なのか……うーん、気になる。

──って、話が見事に脱線していることに気がついた。

肝心のレイニ嬢を置いてけぼりはダメでしょうに。

再度視線を彼女に戻すと、その表情はこれまでと打って変わって考え込むようなそれだ。

まるで何かを心当たりを掴みかけているような様子……。

 

「あの……要するに、私は魔石を体内に持っていてそこから魅了の力を無自覚に使ってしまっているということでよろしいのですよね?」

「纏めるとそうなるね……だから、レイニ嬢にはそのような意図は無いってことは証明されたわけで」

「それって、いつも発動してしまうものなんですか!?私がこうして何かを発する度に、誰かに魅了を掛けてしまっているとか……!」

 

ちょっとちょっと、いきなり食い気味で来たけどどうしちゃったのレイニ嬢!

現実が受け入れられないとかそういう風にも見えないし……とりあえず落ち着かせて座り直してもらう。

 

「1年前のアル兄さん、件の婚約破棄扇動事件関係者、さっきの謁見の間で居合わせた俺と姉上以外の全員……少なくともこの辺りはレイニ嬢の無自覚な魅了の影響を受けた結果だろうよ。その焦りっぷり、心当たりは他にも嫌ってほどあるように見えるな。ちょいと吐き出してみろ、茶菓子しかねえが」

 

そして何で君はそんなに冷静沈着なままなのかなあ?

ユフィに迫られた時のように、もうちょっと焦りとか見せてもいいと思うんだけど……。

まるでレイニ嬢の心境は軒並み把握していますよと言わんばかりの雰囲気で、聞いてるこっちが怖くなってくるほど。

ただ、その言葉を投げかけられた側は特に気にすることもなく……流れるように口を開く。

 

「──嫌な言い方になってしまうのですが、私は何故か人に好かれやすくて……そのせいで周りに裏切りや喧嘩がいっぱい起こって……そのせいで私自身も虐められることもありました……でも、当時の私としては何も思い当たる節が無くて……ただただ怖かったんです」

 

マッドくんに促されて、ぽつぽつとこれまでのことを簡潔に話し始めたレイニ嬢。

聞けば聞くほどどうしようもないと、そう言ってしまいたくもなる話だった。

自分に秘められた力を知る由も無いというのは、本当に恐ろしいことだからね……。

 

「誰かに相談しようにも、こんな話信じてもらえるはずが無いって自分の内に押し込んでしまいました。それならばいっそ誰にも好かれないように、目立たないようにって……そうすれば、誰も変に傷つけないで済むと。なのに、結局また私はこうして……!」

「……確かにその魅了能力は人からは外れてるし、無自覚とはいえその力を不用意に振るってしまった。この事実は変えられんし、一生ものの枷になっちまうだろうな」

 

マッドくん、それは流石に追い打ちになりかねないと思うんだけど……。

ユフィやアルくんとは勝手が違うんだし、もうちょっと北風成分は抑えないとただのイビリになりかねないし。

案の定レイニ嬢は更に沈んじゃってるし……ああもう言わんこっちゃない!

とりあえず沈没を防ぐためにもと口を挟もうと思ったが、何故かイリアに止められた。

 

「だが、その過程と結果を恐れ、再発を防ごうとワケが分からないながらも足掻いたんだろ?」

「……はい。それでも何が何だか分からなくて、結局徒労になってそのままに……」

「んなもん、魔法面の真っ当な師がいなかったんだからしゃあねえっての。その藻掻き苦しむ姿だけでも立派な抵抗で、それこそが間違いなく人間の証だ。例え肉体がそうでなくても、その心魂は真っ当だと俺だけは保証してやる」

「にん、げん……?」

 

あれ、まさかの掌クルーが発生していた。

まさに落として上げるってやつだけど、それなら事前に兆候示して欲しかった。

何でこう、冷や冷やするようなことばっかりしでかすのかなこの末弟は!

心臓がいくつあっても足りやしないよ。

 

「魔石を持っていて、更に魅了で人の心をおかしくしちゃうんですよ……?こんな私をマドラーシュ王子殿下は怖がらないのですか……?おぞましい化け物と蔑まないのですか?」

「俺程度のクソザコナメクジに封殺される程度で人外名乗れるほど世の中甘くねえよ。世界ってのは思った以上に深い伏魔殿で、何がいるか分かったもんじゃない……だからこそ面白いんだがな」

「いや、君がクソザコってそんなのあり得ないし誰も頷かないと思うんですけど!?」

「……姫様、お気持ちは分かりますが横槍にはまだ早いですよ」

 

いやいやイリア、こればっかりは流石にツッコまないといけないと思うんだけど。

普段は俺様全開のように見えて、変なタイミングで恐ろしいまでの自己卑下に走るからこちらも反応が忙しくなってしまう。

……が、シリアスな流れを壊さんがためにマッドくんはスルーを貫くようだ。

正しい行動なんだけど、そこまで徹底されると少し悲しくなるよ……?

 

「理不尽のせいで溜め込んじまったものはもうここで全て流し切ってしまえ。未知から脱した後のことは、これまでの自分を清算してからでも問題はないからな──さて、二人を呼んでくるから姉上は慰め役頼んだ」

「私もお供しましょう。姫様、いくら相手が心を許しても変なことはなさらないように」

 

マッドくんはそれだけ言うと、イリアを伴って部屋の外に出て行ってしまった。

MATTE!いいこと散々言っておいて肝心なところを私任せってどういう流れさ!?

扉が閉まるとほぼ堰を切るようにレイニ嬢泣きだしちゃったし!

まさかとは思うけど、面倒だからって慰め役押し付けたかっただけじゃないよね!?

肝心なところで責任取らないなんて、だからやりたい放題破天荒バカ王子なんだよ君は!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別室……というか執務室で待っていてくれた父上と母上にここまでのことを簡潔に説明した。

これまた人払いをきっちりとした上で、魔石や魅了の能力についても込々でな。

偶然合流できたプリシラが自身の目と魔力の網を張っているお陰でセキュリティは何も問題はない。

全く、この嬉しいまでの神出鬼没っぷりで鼻が高くなるね。

 

「他者からは好かれやすく、周囲は勝手に不和を引き起こして挙句第三者の連中からは不気味な存在として虐げられ……」

「そして事情が事情だからと誰にも話さずに抱えこんで今に至る……と。確かに、無自覚であることを考慮してもどこまでも理不尽に巻き込まれていますね……」

 

二人に説明する際には、レイニ嬢自身も振り回されていたという面をやや強調しておいた。

これまで数々の人間を魅了してはその心を惑わしては人間関係をも壊したことは変えようのない事実だ。

しかし、その根本的な原因は自分で知る由も無かったという点も見逃してはいけない。

突然変異でもなければ、恐らくは彼女の本来の母親に由来するところだろうが……何も知らされてなかったんだろうな。

あんまりその手の事情に首を突っ込みたくはねえんだが、そういう産みの親としての責任は果たして欲しいもんだね。

どういう経緯で孤児院に預けたかは知らんが、結局それで苦しむのは子供なんだからよ。

 

「シアン男爵令嬢には情状酌量の余地がある……マドラーシュはそう判断しているのですね?」

「魅了の異能ってなれば、本人にその気が無くても一つ悪用されるだけで国が終わりかねない。母上のその懸念は御尤もだが……強烈な毒っていうのは時には薬にも転ずることを忘れないで欲しい」

 

そりゃあレイニ嬢を危険因子としてどうこうするのは簡単なことだ。

しかし、そんなものはその場しのぎのプラマイ0の策……むしろマイナスの方が多いんじゃないか?

今回の一件はこの国の基盤の危うさを露わにするいいきっかけと俺は見ている。

レイニ嬢を国を挙げて保護、その異能をきっちりと制御してもらって有事の際の助けにすれば……まあ、メリットは計り知れない。

何なら、冒険者上がりで貴族になったというシアン男爵という有用な人材も持ってこれるからな。

娘の方が矢面に立ってるから分かりづらいが、ラインヒルト先生も以前から高く評価してるって話だし。

あちらも俺に対しては悪印象を抱いてるって感じでもなかったし、何とか陣営に引き込みたいもんだねえ……。

魔法至上主義に染まっていない貴族は、俺にとっては何より貴重だからな。

 

「とりあえず、細かいことはアニスフィアと合流してからだな。しかし、魔石を持つ人間とは……お前が常日頃口にする、世の中の広さを改めて実感するな」

「二人はまだ老け込むような年じゃねえんだ、これからももっと実感してもらうから覚悟するように」

「多少は手加減してくださいね?でないと、今度こそオルファンスの胃が爆発しかねないので」

「不吉なことを言うでない……末っ子の物言いに影響されてどうするのだ」

 

そんな夫婦漫才を微笑ましく眺めながら、再度控室まで戻ってくる。

プリシラには部屋番を頼むついでに後のことも指示してあるので、当然また別行動だ。

思った以上に事態が動いたから、あっちには早急に知らせておかないとな?

ちょっとした仕込みも頼んでおいたから、だいぶ手間を掛けちまうところなんだが……むしろ嬉々爛々って感じだった。

それに甘えてあんまり仕事量を増やさないよう主として努めないとな……ブラック環境はご遠慮な職場にしたいので。

 

「姫様、陛下と王妃様をお連れ致しました」

 

イリアが先導する形で控室に再入室……流石にレイニ嬢は泣き止んでいたようで一安心。

まあそこまで時間が経っていないから目元がまだ赤く、二人とも少しばかり目を丸くしていたがすぐに事情は察してくれたようだ。

彼女の境遇をある程度理解しているからこそだな、俺に感謝することだな姉上よ。

何でそもそも一旦この場を離れたかは……まあ、こういう場合は野郎は黙って去る方がいいんじゃねえのってことで。

後から知ったらナマリエは色々喧しそうだが、多分ユナやミココロは同調してくれるはずだ……多分きっと恐らく。

 

「先ほど、マドラーシュから大まかな事情は聞かされた。魅了の力を持つ魔石を体内に宿してしまい……それを無自覚に使ってしまったことまでな」

「正直なところ、末恐ろしさを感じているところですね……私や陛下ですら影響下にあったと気付くことが出来なかったのだから」

「……やはり不穏分子として扱うべきというご判断なのでしょうか」

 

姉上の真面目な表情、そしてその空気に中てられレイニ嬢の表情には不安が戻ってくる。

とはいえ、二人とも真っ向から感情論で向かうということをしないだけまだマシだ。

特に姉上は王族モードを上手いこと継続してその辺りを上手く制御出来てて何より何より。

 

「彼女が自分の力を制御出来るようになればそれが最善でしょうが、そう事が上手く運ぶとも限りません。今回は貴女とマドラーシュが気付いたから良かったものの、下手を打てば国を脅かす事態にもなり得るのですよ?」

「しかし、既に同じような力を持つ魔物は観測されているという証言も先ほど出てきました。それはレイニ嬢と似た能力、ないし類似する魔石を宿す人間が他にいないとも限らないということ。同じ轍を踏まぬよう、彼女を保護する方向でもしもに備えるべきではないかと思います。その為の監督役でしたら、この私にお任せ下さい」

 

姉上ナイス、俺のさりげない発言をきっちり拾って擁護意見に加えるのはいいやり方だ。

ここは懸念によるデメリットよりも将来的メリットを示すべきポイントだって理解した動き、安心して聞いていられるな。

魔学の創始者だけあって、着眼点のズラし方っていうのをよく分かってやがる。

まあ、母上の方も多分姉上を試しているんだろうけど……表情を見るに、これなら合格じゃないかね。

 

「吐いた唾を飲んではなりませんよ?貴女の手に負えなかったその時は、責任を持って始末をつけなければならないのですから」

「──はい。全責任を以てして役目を果たして見せます。レイニ嬢、従ってもらうことになっちゃうけど異論はない?」

「むしろご迷惑をかけているのはこちらですから……問題はありませんよ」

 

──姉上一人じゃあどこか心配だし、ここは俺も名乗り上げるとしますかね。

レイニ嬢もこっちにやたら視線を寄こしているし、まあ最初に背中を押したのは誰でもない俺だからな?

 

「じゃ、そうならないように動くのも補佐役の務めだな。乗り掛かった舟とも言うし──ああ、多少片手間になっちまうのは目を瞑ってくれよ?」

「待って、確かにマッドくんはとんでもない耐性持ってるしむしろそうしてくれるのはありがたいけど……これは私が言い出したことで、わざわざ巻き込まれる必要なんてないんだよ?」

「途中下船ってのは性分じゃないんでね。それに、色々焚きつけた身として今更放っておけねえっての」

 

それに、この状況で俺たちが絡むのはかなり都合がいい。

本来だったらレイニ嬢はあっちにとっても王国内を切り崩すためのそこそこ強いカードのはずだからな。

そこを引き抜いてこっち側陣営に連れてくるとあっては、あのクソ共にとっても相当な痛手になるだろうよ。

……だからな姉上、そんな神妙な顔されても困るんだよ。

確かに血の繋がった家族への情もあるにはあるが、それ以上にめっちゃ打算的な動きなわけだし。

だからおとなしく受け取っておけ、俺は別に損してるわけじゃねえんだからな。

 

「マドラーシュが引き続き補佐していけば、最悪の事態はより回避しやすいでしょう。よろしいでしょうか、陛下」

「レイニが自身の能力を制御できること、それが最善なのは言うまでもないことだからな。マドラーシュまで事に当たってくれるのならば是非もなし……親としては何とも情けない限りではあるがな」

「俺たちが自分で言い出したことだ、リスクに目を瞑ってくれるだけむしろこっちが礼を言いたいくらいさ」

 

まあさっきも言った通り、俺も結構腹黒で動かさせてもらってるからお互い様ってね。

っていうか、昔から俺のやりたい放題を黙認してくれたり面倒にならんように功績を隠してくれてたんだ。

これだって立派な親孝行、苦にも思わんって。

 

「後はどこまで情報共有するかだが、公開範囲に入るのはグランツ公、シアン男爵までは確定かね。グランナイツはまあ言うまでも無いとして……」

「というより、もうラインヒルトの耳には入っていてもおかしくはないでしょうね……そうなると、スプラウト騎士団長も巻き込んでしまえばもう言うことはありませんね。彼は息子をきっちり糾弾している立場にあるので、巻き込んで損はないでしょう」

「逆にシャルトルーズ伯は除外しておいた方が良さそうか……むしろそうしておかんとマズイ。グランナイツが絡んでいると知ったら、また面倒になりかねんからな」

 

あーあ、先日姉上に実家突撃されたってのに更に巻き込まれるスプラウト騎士団長お気の毒……。

こればかりはラインヒルト先生、デイジー師匠、カルリッツ父さんが上手いこと調整してくれることを祈るしかないね。

……で、姉上は政治的話は無理でーすと言わんばかりに会話に入る様子を見せない。

きっと魔石持ちの人間を近くにおけるからって研究が進むだの何だの考えてやがるんだろうなあ……。

何かムカついたから、洒落にならない話題を振ってやろう。

 

「おいそこで我関せずモードなお姉さま。そっちだってこれから大変なことになるって分かってんのかよ」

「そうですよアニス、政治的な話が無理ならばせめて自身の周りのことを考えなさい」

「だ、大丈夫ですよ母上、それにマッドくん!確かに魔石持ちの人間って興味深いですし研究し甲斐もありますけど、それとこれとはちゃんと切り分けて考えてますから!」

「……そういうところですよ、アニス」

 

はい、俺も同意見でーす。

父上も『ダメだコイツ、早く何とかしないと』と言いたげに頭抱えちまってるし。

王族としてとか抜きにしても、母上がいつまで経っても目が離せないってのもこれなら納得できるってものだ。

全く、もうちょい視野を広げて欲しいもんだよアンタってやつは……。

 

「……アニス、今お前の離宮には誰が住んでいる?」

「え?私の方の離宮って……あっ」

 

次の瞬間の俺たちは、シンクロするかのようにまるで同じ反応を示した。

それはもう盛大な呆れを以てしての盛大な溜息という形で。

母上に続く形になっちまうが、マジでそういうところだぞ姉上。

 





はい、ちょっと悪魔狩り風味なキザモードでした。
人間のような悪魔もいれば悪魔のような人間もいる論、まさにこれですね。
更にそこから両親へのパン粉役もこなす、こういう時にやることやれるのも証明。
え?何かフラグ建設にいってないかって?
それはいずれ分かるさ、いずれな(良かれと思って感

そういえば書籍8巻発売日翌日がアップ日になるという偶然を発揮してますね。
当たり前ですがまるで狙ってません、あらまびっくりーです。
まあ、電子で適当に買っては適当に読みますかね。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。