転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

75 / 112

先日発売された8巻は一応買って読み進めてはいます。
色々と頭は抱えながらという但し書きが付いてきますけど。



68. ハリボテと人形遣い

 

完全にユフィとレイニ嬢の関係を失念してたよ……。

お陰で離宮に戻るまでマッドくんとイリアからの視線が痛いことこの上なかった。

──いっそのことマッド君の方で預かったらどうだって代案も提示したんだけど……。

 

『一時的とはいえ、いたいけな令嬢をこんなトチ狂った野郎のところに放り込んで住まわすなんて頭大丈夫か?』

 

ってどストレートに罵倒を頂きました……。

私にとってはご褒美でも何でもないから手加減してほしかったところだよ……。

昨日はユフィの奇襲宿泊攻撃貰っても最後の一線を超えなかったのに、今更何を言ってるんだって話なんだけどさ。

そっちだったらセラとプリシラという神出鬼没有能侍女が二人もいるのも余計に都合がいいのに……。

──ここまでしてやられては致し方なし、何とかユフィを説得するしかない。

そう思って、帰還早々ユフィにそれとなく話をしてみたんだけども……。

 

「私としては特段気にするところはありませんし、別に構いませんよ?むしろ何でそこまで気を重くしていらっしゃるのでしょうか……」

 

──見事なまでに杞憂に終わった。

いやそれはもう、あっけらかんとした返答で思わず私がズッコケてしまうほどだった。

……って、イリアとマッドくん今思いっきり吹き出してなかった?

 

「まさかとは思うけど、さっきまでのは私を虐めるための演技だったりするの?」

「私はあくまで推測の域を出ていませんでしたが……ユフィリア様、少し前にプリシラが言付を伝えに訪れませんでしたか?」

「ええ……マッド様からの早期報告ということで、レイニ嬢に関する情報を共有いたしました」

「コラこのやりたい放題末っ子!そういうことを何で肝心なお姉さまに共有してくれないのかなあ!?」

「そこまで根を張れない姉上の落ち度だろうがよ。ちなみに今頃ラインヒルト先生とかデイジー師匠も更に先を考えている頃じゃねえか?」

 

ぐわー!この破天荒どれだけ用意周到なのさ!

もはや私がレイニ嬢を保護するって動きの前提で動いたってことだよねこれ。

母上はあれだけ懸念を示していたというのに、何ともまあ危なっかしい先行っぷり……。

 

「ただ、ラインヒルト顧問やデイジーならまだしもユフィにまで知らせるのは早とちりが過ぎたんじゃあ……」

「それ以前に彼女もまた被害者でないかと推測もしていましたし、私も別に致命的損害を被ったわけでもありません。だから彼女には同情こそあれ、怒りを抱くことは特にないですね」

「今のユフィは過度な感情の抑制を止めながらも、適切な扱い方も少しずつ覚えてきているところだ。暴走癖こそあるが、分量もそれなりに弁えている方だしな。母上と父上はそこをまだ知らねえから、合わせて懸念のように話したってだけだってのに……」

 

マッドくんの言い分にイリアもうんうんと頷いては見事までに同調を見せる。

……この二人がタッグってそれまた恐ろしくない?

というかイリア、主である私よりマッドくんと組んだほうがやりやすいとか思ってないでしょうね……。

……まあそこはさておき、確かに論理的に考えればユフィの言い分も道理に適う。

ただ、母上と父上はそんな事情を知らないからこそユフィとレイニ嬢の関係性の危うさを懸念するのは当然で……。

あれ、これって要するに私が一人だけ無駄に心労患っている一人負け状態ってことじゃないか。

どうしてこうなった……何というか一種の理不尽すら感じるんだけど。

 

「アニス様、これこそがマッド様流です。私も散々通ってきた道ですのでちゃんと履修なさってください」

「不器用モード全開の母上に色々説教貰うよりよっぽどマシだと思うがな。俺は単にもうちょい視野を広く持って思考の枝を広げろって言ってるだけでだいぶ優しい方じゃね?」

「……優しく見えて底なし沼に落としてくれるおまけつきですけどね。現に私もそうなりつつありますので」

「え、お前はむしろきっちり藻掻き足掻きでついてきてる方だと思うんだが」

 

こらそこ、しれっとイチャつくんじゃなーい!

糖度こそ低いしドライ風味だけど、味付けしっかりしてるやつ!

だからこそ余計に塩を投げたくなるから!

 

「頼むからレイニ嬢が来てからはそういう雰囲気は控えてね……?特にユフィは自重するように」

「え、この離宮に入れるってことはもはや姉上側陣営ってことで仲間なんだろ?早速ハブらせる宣言とはひっでえな……」

「私としては、レイニ嬢がアニス様の毒牙の餌食になったりマッド様の沼に嵌らないよう注視したいところなのですが」

「……マドラーシュ様はさておき、姫様は確かにそうですね。先ほども診断と称して危うい行為も……」

「してないよそんなこと!?アレは医療行為の一環に当たるからセフセフだってば!」

 

ああもう、想定以上に事は上手く進んだはずなのになんだこの敗北感……!

いや、私はまだ断じて負けてないし!

単にマッドくんを筆頭にやりこめられただけ、屈してはいないんだからね!

でも分が悪いから話は変えさせてもらうよ。

 

「そうだ、ユフィは魅了の影響とか大丈夫なの?結構レイニ嬢に助言をしてたって言ってたし、かかっててもおかしくないよね?」

「そもそもあれ以来接点を持てていないので……心配こそありましたが、それが好意かと言われると微妙なところですね」

「……マドラーシュ様が深く関わったことにより、魅了の兆候があっても自力で脱出することが出来たのではないでしょうか。アルガルド様もその流れで正気に戻っているようですし」

 

……そう言いながら私たち3人の目はマッドくんに集中することとなる。

イリアの言う通り、アルくんがレイニ嬢の魅了から立ち直れたのはマッドくんとの喧嘩がきっかけで。

そうなると、ユフィが現在魅了の影響下にないこともマッドくん由来であっても何の不思議もない。

あの魅了に耐性を持つだけでなく、相殺やら解除も出来るって……君は本当に何者なの?

 

「俺は俺だ。偉志ノ大陸を第二の故郷とする、世界最強集団に育て上げられたトチ狂い系張りぼて第二王子、マドラーシュ・リヴェ・パレッティア……それ以上でもそれ以下でもない」

 

前世のどこかで聞いたことのあるようなその言葉が、どこまでもしっくりと来た。

──その鮮やかなまでの言いっぷりは、また私の心に無意識な影を生み出しているわけなのだが。

色々と私と似ているところも多いのに、そこまであっさりと言い切れるのが何とも羨ましくて……妬ましかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイニ嬢の処遇が改めて固まったところで、俺は一人で逆側に戻ることとした。

想定外の幸運に恵まれたからこそ、そこから先をより詰めていかねばならない。

状況が明確に好転しているとはいえ、勝ちが確定しているわけではないんだからな。

勝勢など、所詮は過程であり中途半端なものでしかない。

俺たちが欲しいのは、あくまで勝利という結果なのだから。

闘稗の場において、一瞬の『機』を見てひっくり返されるの何てよく見てきたこと。

先を行く者としては、緩みなど許されるわけがない。

 

「それにしても、シアン男爵令嬢が魔石持ちとは。──その種類はやはり……」

「無意識で使われる異能っていうのは、魔石に刻まれている中で最も馴染んでいる力……それが魅了ってなると、ヴァンパイアの線が濃厚だろうな」

「人に溶け込むために力を行使するって話なら、真っ先に使われて然るべき……全く、あまりに出来すぎて逆に仕込みを疑っちゃうところよ」

 

魅了を扱える魔物って言うのはそれだけでも種類は限られてくる。

更に無意識でピックアップされるってなったら、もう他には考えづらいんだよな。

デイジー師匠が言う出来すぎっていうのは、俺がヴィルジールとの親交があったりアイツの依頼でヴァンパイアを討ったことがあるって点だろうな。

実際、仮定が確信に変わった時の俺もそう思ったくらいだし。

 

「やれやれ、俺たちにとっては驚くに値しねえが……王宮全体に知れ渡ったらどうなることやらかだ」

「意地の悪い笑みを浮かべないでちょうだい。そんなことになったら陛下の胃が今度こそぶっ潰れちゃうわよ?」

「まあ、今回の一件で連中の切り札の一角を潰したとあっては……遅かれ早かれそうなってしまうことでしょうね」

 

ラインヒルト先生の無慈悲な宣告に一同苦笑いってな。

ただ、冗談のように見えてこれがまるで冗談じゃないのが洒落にならないところ。

いくら俺に加えてアル兄さんやラス達にオルタが相手の手札潰しを行っても限りってもんがある。

相手の隠し戦力口座はそれこそ多岐に渡る。

何なら、アーイレンとかカンバス方面に潜り込んでてもおかしくはないからねえ。

そっちもレオン先生を筆頭とする外行き組がサーチアンドデストロイかましてくれてるらしいが、とてもじゃないが手が足りないとのことだ。

あくまで削れるだけ削るってだけ、完全殲滅となればそれこそ年単位でかかることになるだろうね。

 

「もう1つのカードも牽制になるかって言われたら、まあ役割すら持てねえ状況だからな……」

「伝聞でも分かるほどあからさまなことをしてくれたけど、恐らく簡単に手が出せないからこその強気な姿勢でしょうね。腹が立つったらありゃしないわ」

 

デイジー師匠の仰る通り、直接手を下すということは現状出来るはずがないわけで。

アレがそこまで考えているかは分からねえが……ミスを誘発しているという可能性も捨てきれない。

こっちの分かりづらいようで分かりやすいウィークポイントってやつをあっちも理解してるのは間違いなさそうだ。

全く、ますますもって人員が増えだすタイミングに九死に一生を得た気しか起きねえな……。

 

「相手もすぐさまどうこうというわけには行かないでしょう。注視箇所を絞ることが出来るのは、決して悪いことではありませんからね」

「狙いも限定されるものね……マッド、もう少し念を入れるべきじゃない?いるでしょ、もう一人」

「アイツは明確にこっちだからな、ちょいと顔合わせついでに話はつけておくよ」

 

ブツを渡したりその他諸々用事はあるし、その内顔を見に行かなければとは思っていたからそのついでにな。

……カモフラージュとしては、間違いなくプリシラ並の適性を持つ初見殺し。

普段が普段ってこともあり、この上なく適任だ。

というか、むしろ巻き込まなかった場合は後が怖いってのもあったりする。

枕元に立って呪詛振りまかれたりとかやらかしそうだ。

あ、でも偉志ノ大陸の怪談っぽくてそれはそれで悪くねえかも。

いや、それより怖いのは……まあそっちは今更か。

バレるのが予定より早まるだけだし、まあやましい関係でもねえから大丈夫だろ。

 

「……またマドラーシュ様の『どうしてこうなった』が聞こえてきそうな予感がしたのですが」

「ラインヒルトに同感。その兄さん譲りの秘密主義、もう少し緩和させないと色々身が持たないわよ?」

「俺そんなにツメ甘いヤツじゃねえんだが?」

 

実は脳筋系グランロードの亜種になんかなったつもり無いんですが。

そもそも俺の場合、これは秘密主義じゃなくて行動範囲が広すぎる故の弊害じゃないのか……?

ピンポイントで知らせるべきところは知らせてる気がするんだがねえ、よく分からねえわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、情報共有の次はようやく帰って趣味の時間……と行かねえんだなこれが。

次に向かうは、同じくグランナイツ会館にある一室。

昨日ここに寝かせている、ヴァンパイアにモルモットとして扱われてた被験者の容態確認だ。

助けちまった手前、多少は面倒を見る義務ってのは発生するものだしな……?

 

「こんなところに不法投棄しやがって……しかも所有者にまるで当たりがつかないと来たものだ」

 

廊下を歩いていると、まるで見覚えのない人形が置いてあることに気が付いた。

当たり前だが、見つけてから即座に湧いてきたのは違和感である。

ここは立ち入りがそれなりに制限されているグランナイツ会館の中でも情報封鎖エリアに位置する。

入れるのはグランナイツ以外では俺とアル兄さん、後はセラとプリシラのみという徹底ぶりの場所のはず。

で、その顔ぶれでこんなファンシーな趣味を持つ人間は誰一人としていない。

更に言うならこの人形、魔力の残滓を感じたからってあえて持ち帰ってきたものなんだよな。

──真っ先に考え付いたのは一つの可能性と共に、俺はその部屋に入った。

 

「睡眠学習ならぬ睡眠傀儡学習とは随分と面白いな。そういう芸は日なたでやった方が儲かるぜ?」

「……そんなんで稼げたら苦労はしないでしょ。つまらない冗談はいいからココ……じゃない、その人形を返してくれない?」

 

見事なまでの警戒っぷりだが、まあそれは至極当然ってやつだ。

目が覚めたらモルモット状態からは解放されていて、何故か知らない天井。

外に出ようとも厳重な鍵をかけられているから出られず……まあ、これは俺とヴィルジールで共同開発した錠前だから当然なんだが。

待遇は良くなっているように見えるが、傍から見れば軟禁状態ではある。

なるほど、あのヴァンパイアが実験材料にするほどだからポテンシャルは凄まじいってわけか。

 

「大事なんだったらもう少し置く位置考えろっての。最初に気付いたのが俺じゃなかったら、それこそ廃棄コースだったからな?」

「まあ、それについては正直ホッとしてるわ……お陰で会話の手間が増えちゃったわけだけど」

「警戒の余りに盗聴で状況把握を試みるとは、随分とアグレッシブな被験者なことで。そういう雑草魂は好ましいがね」

 

まあ、誰も彼もコイツがこんな早く起きるとは想定していなかったからこそだろうがね。

それに、今いる人員もラインヒルト先生とデイジー師匠はさっきの通りで、カルリッツ父さんも今日は部下を率いて魔物狩りだ。

ラス達もいねえし、まあ俺が最初に様子を見に来るのは必然。

……何というか、このちょっとの会話でこいつはツメが甘いというか間が悪いって薄っすら見えてきたな。

 

「まあ、保護した身として最低限のことはしないとだな。俺はマドラーシュ・リヴェ・パレッティア。この王国において継承順位は姉より下の張りぼて第二王子だ」

「妙に格好と雰囲気が合わないから何でかと思ったら、名ばかり王子だったってことね。──ジュンよ。あの辛気臭い工房から助けてくれたことについては一応感謝しておくわ、ハリボテ王子様」

 

ここまでど直球に言われると却ってスカッとするねえ……カルトとかアル兄さんと会話してる気分になるな。

別にウィンとかラインヒルト先生を否定するってわけじゃあねえが、俺としてはやっぱ畏まられるよりこれくらいストレートに来る方が好感が持てる。

地位そのものが張りぼてなのは事実だが、だからこそ今の俺があるわけで卑下する理由もない。

 

「それにしても、どこの馬の骨とも知らない元モルモットをよく王城まで連れ込めたものね?ココに気付くくらいには鋭いのに……考え無しのお人好しだったりするのかしら」

「残念ながらお人好しなら間に合ってるっての。お前をここまで丁寧に匿ったのは、それ相応の価値があるからだ。望外の成果でこそあるが、だからこそきっちり生かさねえとやってられない現状なものでね」

「お飾り王族かと思ったら、まさかの白鳥だったのね。……御国の為に随分と背負わされてるってところは同情出来るわ」

「んな同情いらねえよ、色々気に入らねえから自発的にやってるだけだ」

 

にしても、さっきからコイツ随分と口が達者というか……妙な違和感を覚える。

中にあるブツについては最初から知ってはいたが、それとは違う。

ただ、今の状況でそういうのを聞き出そうとするのは悪手だろうからもっと無難なところで行くとしよう。

 

「まあそういうことだから、お前を保護しているってのは我が親である国王及び王妃ですら知らない状況。そもそもお前がされていたようなこともまともに認知しているのは俺の周りだけだ……とりあえず、そっちの方を話してくれると助かる。まあ、強制はしねえけど」

「そこはハリボテやらお飾りやらでも権力使って強制するべきところなんじゃないの?」

「そういう権力の使い方ってのは不慣れなものでね。それで藪蛇突いたら元も子もない」

 

ジュンは見たところ、どんなに行ってても俺と同い年くらいが関の山だろう。

パッと見ここまで話せていることから、精神的ダメージは思った以上に受けていないか結構タフなんだろうが……。

それでもあんな場所に監禁されては実験材料にされていたんだ、何をされているか分かったもんじゃねえ。

……プリシラもあの時は素体として軟禁されていただけだが、容姿はかなりいい方だからそういうことをされててもおかしくなかったわけだし。

 

「……変なところで律儀なのね。別にそういうことはされてないから辛気臭い顔はしなくていいわよ。黙秘なんてする理由もないし」

「無駄に鋭いってのも、つい嫌な想像もしてしまう悪癖に繋がっちまうものなんだよ。──まあ、協力感謝ってことで」

「そこは別に礼なんていらないわよ……お飾り王子って言うからもっと偉そうな想定してたのに、調子狂っちゃうじゃない」

 

最上級の誉め言葉をありがとうございますってね。

そこからはあのヴァンパイアの工房で行われていたことに対する証言タイムだ。

基本的には、あの人造人間(ホムンクルス)を構成する魔力炉代わりであったらしい。

その中で、魔法のイメージを無理やり抽出されてはあのヴァンパイアの糧として使われていたとか……。

更には、より胸糞悪くなるような話まで混じってて正直気分が悪くなってきたね。

 

「覚えのある波長ではあったが、まさかそういう事情とはな。ったく、どういうツラすればいいんだ?」

「……もうどうにもならないことだし、こうして生きてるだけ儲けものって思っておくわ。その言い草、周りに同類でもいるのかしら?」

「まあ、当たらずも遠からずってところだな」

 

あちらについては流石に話す理由もない、そもそも現状国家機密レベルだからな。

変に口を滑らせるのはよろしくない。

 

「そして、最終目的は不老不死の魔法を得て始祖へ貢献して成り上がる……そんなことをべちゃくちゃ得意げに喋ってくれたわ」

「不老不死……魔法を探究する上でのゴールとしてはベッタベタだな。ったく、長生きってのは耄碌するだけでイヤになっちまうな」

「そこのところは同意するわ」

 

要するに、カンバスでの目的が主なだけで魔法至上主義の連中とはただの仕事上の付き合いってだけのことらしい。

ちなみに、提供していた研究成果ってのは人造人間(ホムンクルス)の創造過程だけじゃないらしい。

ジュン自身にやられた、それこそ色々な過程も含まれていたって話だ。

ますますもってレイニ嬢のそれと繋がってくるし、何なら3年前のプリシラを救出した時の研究施設とも関連性が見えてくる。

そして、もう1つそれなりの共通項として挙がってくるのが問題児のあの代物。

そっちの方に持っていくと、ウガルーやグリフォンのことまで繋がりを見出すことが出来てしまう。

──あの惨劇にまで繋がる、とも捉えることは出来るってわけだ。

 

(となれば、やはりレイニ嬢のことも流れの一環……想定していたことだが、やはり影響範囲が広すぎる)

 

こうなってしまうと、国内を虱潰しにしているだけでは足りないな。

もはや、王国中枢のそれをも凌駕しかねない影響力を持ってしまっている危険性すら見えてきやがった。

ただ、それにしたって限度ってものがある。

アーイレンに根を張るってくらいなら何とかならんでもねえがな。

あそこはそもそも魔法技術が半端で、ヴィルジール曰く今でも皇帝がパレッティアへの侵略推奨勢力を抑えるのに必死って話だ。

この過激派連中との共存関係は、まあ飴が分かりやすい分十分あり得るだろうよ。

上手いこと戦争勃発ないしギリギリの緊張状態に持ち込めば、儲けものってところだろうな。

しかし、今の今までそのヤバ目の兆候はまるで出ていないってのがヴィルジール談なんだよな……。

カンバス、というかヴァンパイアの方もどこか妙な香りが漂ってくる。

こっちは至って単純で、そもそもヴァンパイアというそれなりの連中がわざわざ交渉のテーブルに着くのか、ということだ。

俺たちならいざ知らず、普通ならば魅了の能力で一発終了のはずなのにな。

……そこで浮かんでくるのは、未だ顔を出さないあの勢力なんだが。

 

(……ただ、あそこについてはマジで情報が無さ過ぎる。プリシラも少し潜るのが精一杯だったと悔しそうにしていたくらいだしな)

 

あそこを拠点としているヴィルジールも素直に話してくれそうにないからな……。

まだ時期ではないのか、それとも俺の影響度合いが足りないのか……まあ、後者なんだろうが。

こんなどこもかしこも疑念だらけってなると、せめて偉志ノ大陸と……特に陽ノ花家と天ノ川家と連携したいところだ。

まあ、そこを読まれてか今は見事に分断されているがな。

オルタがこっちにいるままって言うのが、まさにあっちの状況が面倒だっていうことの裏返しだろうし。

……何はともあれ、どれだけ奥を考えても今は進展なしだな。

 

「随分と長考しているようだけど、質問はもう終わりってことでいいの?」

「あのヴァンパイアのことはひとまず終わりだ。で、今度はお前の身の振り方なんだが……ぶっちゃけお前はどうしたい?」

 

と、いきなり聞いてやったら目を見開かれた。

何だその反応、むしろこっちがどう返してやったらいいか困るんだが。

 

「確かに助けられた身だけど、名前以外何にも証明できないんだから捕虜みたいなものなのよ?何でそこでジュンに聞くのよ」

「ああ、やっぱり身寄りとか無いのか。──あえて聞かなかったんだが、お前王国出身ではないだろ?」

「……まあ、隠すようなことでもないけど。それで?異国出身だったら掌返して追い出すってわけ?」

「外見の時点で何となくは分かってたからな。ったく、さっきから捻くれた答えばっかだよなお前さん」

 

どっかで見たような、なかなか面倒な捻くれ方してやがる。

ツメの甘さも見受けられるから何だかんだで愛嬌も見られるけども。

結構色んな書物でも出てくるが、本来俺と同い年くらいの女子ってのは色々ご多感って言うらしいしそんなところか?

更に言うなら、どう見ても人付き合いの経験が少ないとも見える。

 

「……ちょっと。『友達少ないんだろうなコイツ』って目を向けないでくれる?」

「はは、まあ安心しろ。俺も同年代のダチってのはあんまりいねえからな」

「同類みたいに扱わないで欲しいんだけど!?ジュンは単純にそんなのいらないだけ、アンタはどうせその変な性格で作れないだけでしょ!?」

「友達は人形だけってか?全く、だから妙に対話スキルに怪しい所が……おっとあぶね。いいのか人形遣い、そんな粗末な扱い方して」

「ココを思い遣る余裕があるんだったら当たってやりなさい!」

 

おいおいいきなり友達を操作して突進させるなよ、人形遣いの荒いヤツだなコイツめ。

にしてもこの魔法とも顕魂術とも異なる技術はなかなか大したものだ。

これもまたヴァンパイアの魔石由来の異能なのか、それともジュン本来の能力なのか……。

やれやれ、姉上に知られたら間違いなく扱いがまともなモルモット行きだな。

そればかりは阻止しないとだし、いい加減真面目な話に持っていくとするかね。

 

「あー分かった分かった、ならもう俺が勝手に決めさせてもらう!とりあえずお前は今日から俺お抱えの諜報員という体で保護ってことにする、これで文句ねえだろ!」

「はあ!?…諜報員って、アンタ正気なの?」

「そんなん能力で判断しただけだ、何か問題でも?」

「大ありでしょうが!?身分の証明すら碌に出来ないってさっき言ったばっかりなのに、一歩間違えたら国を終わらせることが出来るポジションに普通置かないでしょ!」

 

いきなり人形操作を止めたかと思ったら、正論返しやがって。

とはいえ、それ以上の綱渡りをしてきた俺にとっては何を今更といった感じだ。

 

「お前の存在を引き続き隠匿するならむしろ役回りがいる。その人形行使能力を加味すれば、今俺陣営に足りない諜報担当に自然に行き着いたってだけだぞ。ちなみに俺の専属侍女の片割れは故郷を既に失った天涯孤独だ、その正論は俺にとっては何の障害にもならん」

「何でそんな滅茶苦茶が通ってるかはスルーしてあげるけど……何でさっきまで見ず知らずだった相手のために危ない橋を渡ろうとしてるのよ……アンタ、意味わかんないし、バカなんじゃないの?」

「権力とかその辺にかこつけてもうちょいやりようはあるかもしれねえが、その悉くが気に入らないんでね。自分にとって本意じゃねえ生き方はこれまでもしてこなかったつもりだし、これからもするつもりはねえな」

 

まあ、我ながら危なっかしいのは百も承知。

だが、ジュンの人形行使能力はプリシラとは別の意味で諜報能力として際立っている。

ここに来る前の人形越しの盗聴機能、あれだけでも差別化はきっちりしているからな。

ずっと抱え込むのは無理にしても、その能力の模倣が出来ないか探りたいところでもあるし。

……まあ、それ以上にコイツはコイツでどうにも放っておけないんだよな。

ヴァンパイア経由とはいえ、魔法至上主義連中のモルモットであったことに変わりはないわけだ。

その意志を蔑ろにするつもりはねえが、行き場が無いってんなら一時的な巣になるくらいは吝かでもねえ。

 

「バカ過ぎて拒否する気も失せたわ……分かった、そこまで言うならアンタのお抱えになってやろうじゃない。ジュンとしても貸しをそのままというのは気が引けるし、きっちり働いて返させてもらうわ」

「それくらいで考えておけ。こちとら変に恩を売るってのも好かんからな……これを機に人付き合いのいろはも色々教えてやる」

「あくまで下働きするだけの話からおかしな方向に跳躍すんな!余計なお世話……あ、こら何で頭撫でるのよいきなり!?」

「いや、まあ何となく?」

 

年上の異性ばっかり相手だとジュンみたいなのが新鮮に見えてなあ……。

何だろう、妹分ってこういう感じなのかなあと。

キュイは相棒だし、そもそも俺の1個上だし。

強いて言うならシャルネに近いところがあるが、あっちは弟子だからな。

 

「……おっと?そうすると部屋とかまた準備しないとならねえのか。忙しくなるな」

「いきなり話を変えるなっての……だったら一つだけ注文するわ。──女神さまへの御祈りを欠かすわけには行かないから、ちょっとしたものでいいからスペースって用意出来る?」

 

女神への祈り?悉くとこの国に無い慣習を出してくるもんだな。

わざわざ見ず知らずの場所に寝泊まりするって時でも祈りを捧げるって、随分とまあ敬虔なことで。

その女神の直弟子になっている身としては、それを笑ったり咎めたりはしねえが。

実際その力も恩恵も、そして時に厳しくある時も知っているからこそだ。

 

「女神って、偉志ノ大陸にいるパルヴァネし……もとい、パルヴァネ様のことか?」

「ジュンの出身に居られる女神さまはマティアス様よ。勿論パルヴァネ様ともう一柱の方にも御祈りは捧げているわ」

 

女神ってやっぱ他にもいるもんなんだな。

これまた新たな知見っと……最低三柱ってわけか。

 

「まあ簡易的になっちまうが用意してやるよ。偉志ノ大陸風になっちまいそうなのは勘弁願う」

「……異国の文化にここまで理解を示すなんて、本当変な王子様ね」

「下らねえ精霊信仰よりかはよっぽど救いがあるからな、俺にとっては」

 

最後まで憎まれ口絶好調だなあ、全くますます構い倒したくなっちまうね。

にしても……また世界の広さを思い知ることになったな。

新たに名前が出てきた、ジュンの故郷にいるとされる女神『マティアス神』、そしてもう一柱……。

これらの情報を精査していると、唐突に2つの新たな枝が現れるような感覚が生じてくる。

 

(そうなるとあの場所って……パルヴァネ師匠の為の場所ってわけじゃねえのか?)

 

アル兄さんと和解が済んで少しした時、ヴィルジールとレオン先生に連れられて『世界の果て』に行ったことがある。

そこはこの世界を作ったとされる女神の住居とされており、キーストーンが無いと行けないとんでもない場所なわけだったんだが……。

てっきりパルヴァネ師匠は偉志ノ大陸を作ってからそこから移住してきたと思っていたんだが……あそこの住人からするとそういう感じではなかったんだよな。

まあ、俺達には詳細に話すつもりは無いって感じがありありと伝わってきたから深くは突っ込まなかったんだが。

そういえば、ここで新たに気になったことが一つ。

 

(……何でパレッティアでは『女神』なんて文言がまるで出てきていないんだ?)

 

パルヴァネ師匠の話では、それぞれの世界を作ったって言うことだ。

この『世界』というのをそれぞれの大陸に例えるとするならば……この王国含む大陸も女神が作ったってことだ。

何か文献にでも残っててもおかしくはないっていうのに……まるで聞いたことがない。

読み漁ってきた禁書にもそんなものは見当たらなかったくらいだ。

まるで、この大陸限定で根本から存在が抹消されているような……そんな感じすら見受けられる。

 

(……って、何でまたこんな現状と関係ないことを考えてるんだ俺は)

 

そういう脱線は事故の元だぞ、戻ってこい。

女神だ何だ、あの連中とは現状殆ど関係ないはずだろうがよ。

迂闊な詮索は自滅しかねない、今は目の前のことに集中せねばだ。

──と思いつつ、色々な手配をしながらもその日の残りはひたすらその思考が頭から抜けなかった。

……確かに興味深い話だが、何か妙な感じがするね。

 





というわけで、救助したキャラはグランサガ追加プレイアブルキャラその2であるジュンでした。
既に色々と怪しい雰囲気ですが、身元不明な怪しい娘をあっさり起用するマドラーシュの心中や如何に。
そして転天本筋とは関係ないけど、後々大事になりそうなお話もここで。
クロスオーバー的に大事な部分になりますが、詳細はだいぶ後ですね。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。