転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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ここも若干書き足し場面があります。
彼らにとっては大舞台で卒業試験ですからね。


74. 導火線は既に点火済

 

あれよあれよであっという間に講演会当日となってしまった。

とはいえ、私はここまでいつも通りに過ごしただけなんだけどね。

講演会は新種のドラゴン素材についての運用法が主になるけど、まあひとまずはエアドラをベースにすればいいんじゃないかと思っている。

スタンピード後にドラゴンを狩っていました!とかその辺りがバレてるわけだし、丁度いいと言えば丁度いいし。

……実際はそのようにするかは分からないんだけどね。

見た目こそ私がかつて討伐して、そのまま素材にしたドラゴンと似通っているのだが……その質はまさに別物なわけだし。

頭部の骨は丸ごとあるわけだから、同じようにエアドラは作ることは出来るだろうが……結構トンデモ性能になる気がするんだよね。

本来ならば全部丸儲けしていいはずなのに、それほどのものを一部譲渡してくれたケルビムには感謝の念しかないよ。

彼に報いるためにも、今回の魔法省の思惑はきっちりと跳ね除けなければならない。

だからこそ、ティルティまできっちり巻き込んで準備をしてきたわけだけども……。

 

「アンタもいい根性してるわね。こっちに来てからずっとマッドくんの離宮を仮宿にするなんてさ」

「もしものことを考えたら一番手っ取り早かったもの。あの部屋、定期的に使わせてもらうよういっそ頼んでみようかしら」

「や め な さ い……いや本当にお願いだから。主にマッドくんの名誉の為にも」

 

それだけは本当に勘弁してほしい。

本気でマッドくんがモルモットにされないか心配になるから。

今回はレイニの経過を見守るという大義名分があったからギリギリ許容してやったまでのこと。

普段からってなったら私だって黙っちゃいないぞ?

 

「あらあら、10年以上お姉ちゃん風を吹かせられなかったからって随分と暴走気味ねえ。そんな調子だと却って距離を取られかねないんじゃない?」

「マッドくんのことになると余計に喧しくなるわねアンタ……何、もしかしてユフィのことを押し退けてでも正妻狙いする気?」

「どうかしらねえ……少なくとも他の貴族子息とは比べ物にならないほど優良物件ではあるけど」

「その言い方が余計に怪しい……あちらとしても優良どころか最強物件候補がいるんだから、変に茶々入れないで欲しいな」

 

本人は姉貴分自称してるけど、私よりも距離感が近しく見える時もある辺りが余計に怖いんだよねえ……。

いや、私としてもこのジメジメ令嬢と近しい距離感だなんて思われたくもないんだけどね?

マッドくんもやたら懐いているというか、気安い関係で落ち着いているような風にも見受けられるし……。

ああもう、何でこう弟二人は色々と面倒なんだろうね!

 

「二人して一体何の話をしているのですか……」

 

おっと、ここで本日の主役のご登場だ。

壇上の真ん中に立つのだからとこれ幸いに、イリアがやる気満々で化粧を施していたみたいなんだけど……随分と時間をかけたね。

 

「私は売られた喧嘩を買っただけ。何ならアニスフィア様の一人暴走と証言してもいいけど」

「紛らわしいこと言い出したのはアンタでしょうが……こちとら会場に入る前に上手いこと消えて、一人立往生させてもいいのよ?」

「……姫様。マドラーシュ様がいらっしゃらない不安からティルティ様に当たるのは如何なものかと」

 

──そう、今イリアが言った通りマッドくんはこの場にいない。

何事かとセラに問い詰めたら、早朝……というか日が変わってすぐに楽しそうな討伐依頼が入り速攻で向かったとか。

場所はそう遠くはないので、全速前進で往復すれば講演会にダイレクトインすることは可能って話だ。

勿論招待状は届いてないだろうから、お得意の気配遮断も込みでこっそり潜り込む形になるんだろうけど。

ティルティと違って、協力者という立ち位置もそうそう使えないからねえ……。

……王族がそれでいいのかと思うけど、まあそこは目を瞑ることとしよう。

ただ、今回ばかりは優先順位を盛大に間違えているんじゃないかって思うんだよなあ。

 

「昨日も私の魔力制御をつきっきりで見てくださりました。そこからほぼ一睡もしないで魔物討伐に赴いて、すぐに休む間もなく講演会入り……マッド先生、大丈夫なのでしょうか」

 

レイニの心配も御尤もだ……実際ハードスケジュールが過ぎる。

私たち3人は講演会の準備もしなければならない都合、マッドくんがイリアと一緒にレイニのことを見てくれていたわけで。

当人は『昔からこういうのは慣れっこだから今更』って笑って返してたけどね……。

私が魔道具開発で徹夜するとは流石にワケが違うし、当然体調面の心配をするのは当然のことだ。

 

「そこまで心配することじゃないわよ。アイツはトチ狂ってるように見えて自分の限界を常に見極めて動けるだけの理性はしっかりしてるもの。誰かさんとは違ってね」

「マッドくんに対する理解度が高くて本当に腹立たしいねアンタは……ついでに一言余計だよ」

 

私だってオーバーワーク自体ちょっとで済ませるよう努力はしてるってば。

……だからイリア、ジト目を向けないで欲しい。

少なくとも過労でぶっ倒れて寝込んだなんてことは無かったはず……うん、そのはず。

 

「ユフィも文句の一つを言った方がいいんじゃないの?折角の晴れ舞台だっていうのに……」

「むしろ、後はお互いに為すべきことを為すまでのことです。それに、間に合わせると言っているのならばきっちり定刻通りに会場入りすることでしょう──ああ見えてとても律儀な人ですから」

 

ああもう、こうあっさりと返されたら何も言えないじゃんか!

っていうか、今日のユフィは何だか一段と映えが凄い気がするんだけど……?

さっきの言い回しも含めて、色々と限界突破していると言っても過言ではないような?

 

「それにしても、今日のユフィリア様はより一層輝いているじゃない。化粧映えがいい意味でとんでもないことになってまあ……これなら大半の貴族が気圧されること請け合いね」

「ここ最近のユフィリア様はとても気鋭なご様子でいらしたので、ついつい引っ張られるように気合が入ってしまいました……私としては満足です」

「私も後学の為に見ていたんですけど……イリアさん、凄く楽しそうでしたね」

 

イリアがここまで本気を出すのもなかなか珍しい……レイニの苦笑からもどんな光景かは想像がつく。

私の時でもここまでしたことがあっただろうか……恐るべし、イケイケモードのユフィ。

ただね、その手札を全部捨てておきながら色々ループをかましそうな顔をするのは止めて欲しいかなーと。

イリアがその満足顔していたら、何かえげつない状況を作り出されそうで寒気が……。

──それにしても、今日のユフィは本当にとにかく美しくありながらとにかく気高い。

それこそ、学院にいた頃の……次期王妃であらんとしていた時よりも凄いのではないだろうか。

今は私たち身内の輪にいるから空気は和らげているけど、会場に行ったらどうなることやらか……。

というかマッドくん、嫁がこれだけ気合入れてるんだから絶対に間に合わせるんだよ!?

 

「では、行くとしますか戦場へ……イリア、レイニ。留守番はお願い!」

「行ってらっしゃいませ、姫様。ご武運をお祈りいたします」

「あれ、何か違う気が……とにかく皆さんお気をつけて!」

 

何かティルティとユフィから発せられる熱に浮かされてる感じになっちゃった……。

でも、実際それくらいじゃないとやってられないからね。

待ってろよお堅い信仰集団、静かで激しい口による戦争の始まりだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、主不在の離宮は既に慌ただしくなっていた。

そもそも、現在駐在しているのは見習い騎士(実力はその域を大きく超えているが)3名と専属侍女1名のみ。

残りは事前に取り組めた役割のために出払っている状態である。

 

「見ろ、魔物がゴミのようだ!──とでも言いたくなる光景ですね」

「随分と楽しそうにしてるが、頼むから程々にしろよ?チビみたいな爆弾魔が増えたら手に負えねえ」

「ははは……まあプリシラの魔力操作なら大丈夫だと思うけど」

 

今日発生するのは、言うなれば防衛戦だ。

そもそもの話、相手の計画は相当早い段階から練られている。

そうでなければ、これだけ散々ちょっかいをかければご破算待った無しである。

そんな風に先手を打たれているので、元々旗色が悪いところのスタートになってしまう。

しかし、こちら側にはまるでそういう風に見受けられない。

痩せ我慢とかでもなく、誰も彼も至って自然体。

プリシラの変な発言があれば、カルトのツッコミが起こるしラスの乾いた苦笑も次いで起こる。

この離宮内だけは、まさにいつもどおりの風景……半ばセーフハウスであった。

そんないつもどおりの空間に、3人目の留守番組が入室してくる。

 

「たった今おバカが戻って、色々再準備してから潜ったわ。──そしてこれは置き土産」

「おい待て、何でコイツが運ばれてんだ?」

 

ナマリエ入室とともに抱えていた人物──ジュンをソファに寝かせる。

カルトの苦言じみた質疑もご尤もなのか、それを向けられてむしろ同調の表情すら窺える。

対象が起きないことを確認すると、その表情は一転して呆れ顔になっていた。

 

「可愛い妹分の深夜徘徊を咎めようとしたら、夜な夜な出没する誘拐犯と出くわしたらしいわ。で、新術の実験もしたかったからと盛大に撃退してやったと」

「あー……もしかして、そこから深夜テンションになって不審者いじめってところかな?」

「流石は幼馴染、大正解よ。その後は妹分に徹夜は看過出来なかったみたいで、強引気味でも寝かせた……って顛末らしいわ」

「それで自分はノリノリで徹夜かよ。そういうところはまだまだガキだな……」

 

知らない人間が聞けばなんのこっちゃ。

しかし破天荒の身内ならば「知ってた」で済ませては流される。

そんな事象をこんな大事な時にやらかすのだ、毒舌上等なカルトでなくても苦言は出て来るものだ。

 

「ふふふ、童心溢れる様でいてこそのマッド様でしょう。それにしてもこんな月が綺麗な夜に兄妹で深夜のちょっぴり危ないデートとは何とうらやまけしからんことを……おっといけません、変に想像が掻き立てられて微笑ましさに嫉妬が織り交ざって──これではトラップの威力が跳ね上がっても仕方ないですよね?深夜テンションにつられてしまったというだけですし、きっとマッド様も苦笑しながら許してくださるでしょう……勿論お叱りを受けるのも全然構いませんよ?それはそれで存外そそられるものが……」

「──口で怪文書刻むのはスルーするとして、ちゃんとトラップの管理はやってるのよね?」

「え、そんなの当たり前でしょう。この私を誰だと思っているのですかナマリエ様」

 

半分トリップ状態から即座に復帰、それでいて表情は殆ど変わらず。

そのあまりあるポーカーフェイスっぷりは、もはや見る者ほぼ全てを戦慄を抱かせるほどであろう。

あまりの絶好調っぷりに、普段のぶっ飛びっぷりを知るこの顔ぶれですらも掛ける言葉を失ってしまうほどなのだから。

 

「プリシラの平常運転はひとまず置いておくとして……マッドの伝言からすると、ジュンはヤツらに狙われたってことでいいのかな?」

「元々はどっかの工房から連れ去って保護してんだ、奪還の線は濃厚だろう。──ブラフって可能性も勿論あるがな」

「出自不明だからこそ、俺たちの敵じゃないとアピールする……最低限の保身のためにってことだね」

「そういうことだな。ぬるま湯からきっちり脱していて何よりだ」

 

カルトはここぞとばかりに疑念を口にする。

普段はお人好しに大いに寄っているラスも、それを否定するつもりはなかった。

状況が状況だから、ということも勿論ある。

それに加え、カルシオンやイグノックスからの有り難い教訓も生きている……そこはマドラーシュと同じくで。

 

「それでも判断材料の一つにはなるでしょう。この娘の体内にはなかなかのものが埋め込まれてるし、そこだけを狙った本物の奪還行為とも取れる。そうなれば、連中とは敵対してる可能性は濃厚と見ていいだろうし」

「まあ、マッドが気づいてないってことはないから……本当に白か、まだ灰色でも今は見逃して大丈夫って解釈が一番無難かな?勿論カルトはそのまま黒寄りで判断していて構わないよ、本当にその可能性もあるからね」

「何だかんだで似てきたわね、その分岐思考が特に」

「だな。まだまだひよっこで頼り切れるってわけじゃねえが……方向性は悪くねえ」

「あはは……まあ、精進は欠かさないよ。まずは今日を無事乗り切って、見習いからいい加減に脱却しないとだけどね」

 

彼らが求める背中は近づいているように見えてまだまだ遠い。

しかし、どこかで必ずあの憎たらしいくらいの余裕っぷりを崩してやりたい。

そんな不敬な対抗心、ないし闘争心を以て彼らはこの卒業試験に臨む。

……割と一大事になりかねない戦いをそのように称する辺り、この面々も立派に毒されていると言えるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宴や講演会といった行事はそこそこの頻度で行われることもあって、王城にはそのための場所はいくつか用意されている。

今回は立食会なども前後に行われることもあって、当然のようにその中の一つが会場となっている。

本来ならばユフィのように色々徹底した方が格好もつくのだろうけど……あくまで講演会がメイン。

着飾るのはやはり面倒ということもあり、意地でもいつも通りの恰好を貫いた。

まあ、ティルティも日光避けの黒いヴェールつけてるから問題ないでしょう……というかごり押す。

ただでさえ疲労過多が予想される場だというのに、服装で余計なスリップダメージを負うのは勘弁願うところだ。

……と、そんな私のささやかな体力管理は見事なまでに砕け散ってしまった。

 

「ご無沙汰しております、アニスフィア王女殿下」

 

内心嫌な顔になったのはティルティもきっと同じくだろう。

会場が近くなったところでこの男、ラング・ヴォルテール伯爵子息の姿が何故かそこにあったのだから。

何とか表情には出さないよう、平静を装うよう努めなければ。

……ぐぬぬ、いきなりダメージ小だよ。

 

「……ご無沙汰ですね、ヴォルテール伯爵子息。貴方ほどの地位の者がわざわざ出迎えに赴くなんて、ご苦労様です」

「過去にドラゴンを討伐され、更にかの黒龍の余波でも最前線に立たれた英雄に比べれば我が地位など遥かに霞むことでしょう。──だから、ラングとお呼び頂いて結構ですよ」

 

口だけは上手く回ってるけど、相変わらずまるで敬意を感じられない。

事務的というか、義務感全開の態度……やっぱり気に入らないんだよなあ。

それにしてもこの男、つくづく間がいいよね。

ほぼ確実に天敵と言える、私の自慢の末弟がいない時に限って現れるんだから。

私にとっては当然間の悪いことなんだけど……いや、マッドくんが大火事を起こさないだけマシと思うべきなのか?

 

「そして、そちらはクラーレット侯爵令嬢……助手としての同行でしょうか」

「自身で携わった研究の一つが正しかったこと、そして正統に評価されるかを見届けに来ただけよ。年々視野が狭まって眼鏡でも矯正できないほどの顔ぶればかりではどうにも心配なもので、夜も眠れないほどだもの」

「……侯爵家のご令嬢と言えど、口が過ぎれば禍の元となります。慎みを覚えた方がよろしいかと」

 

案の定ティルティは今日も切れ味抜群、皮肉が絶好調だ。

ヴォルテール伯爵子息……ラングもすっかり表情が引き攣ってるし……。

いや、私たちを相手にするんだからこれくらい想定しておくべきだと思うんだけど。

マッドくんが見ていたら、これ幸いに嬉々としてべっこべこに凹ませてきそうだ……。

それに比べればティルティはまだ優しい方で、突っかかってこないのであれば余計な口を開くつもりはないらしい。

 

「そして、ユフィリア公爵令嬢……ようやくお会いできたこと、至極光栄にございます」

 

なんだなんだ、いざユフィへの挨拶に際していきなり頭を下げたぞ。

とんでもなく気合が入っている様子に気圧された……という風ではないよね。

だってまだユフィはスイッチ入れてないし……現に本人も戸惑いの色を隠せてない。

 

「先日の婚約破棄扇動については、さぞ心を痛めたことでしょう。この度はお力添えできず、誠に申し訳ございませんでした」

「ヴォルテール伯爵子息が頭を下げることではありません。私自身の落ち度によるものでもありますし、むしろ婚約解消を円滑に周知させる機会に転ずることとなり結果的に悪いことではありませんでした。今はアニスフィア王女殿下の元で助手を務め、私個人としても再起を図っている最中であります」

「ラングで構いませんよ。──それにしても、アニスフィア王女殿下の助手……すなわち、魔学ですか」

 

うわ、見るからに苦々しい顔を浮かべてまあ……。

よっぽどユフィが私の助手をやってるのが気に食わないのか。

でも残念、それ以上の劇薬的ゴシップがまだ秘められてるんだよ、この娘にはね!

それを知った日には、一体どういう反応を起こすのかが楽しみなようでちょっと怖いかもだけど。

この間も明らかにユフィを狙ってますよ風を漂わせていたからねえ……。

こうして顔を合わせる前から、とっくにアウトオブ眼中だって知ったらどんな顔するんだろう。

──さて、そんな物騒なことを考えている内に私たちは控室に通された。

 

「この度は魔法省からの依頼を受けて頂き、誠に感謝いたします」

「どうせ断ったら後が面倒だからね、それならさっさと消化するまでの話だよ」

 

とりあえず先制パンチ、マッハだのバレットだのそんなところで。

挨拶はさっきまでで十分だし、とっとと本題に入ってしまいたいところだ。

 

「ドラゴン、それも新種の素材となったらその価値は計り知れないものです。こちらの立場もご理解いただきたいところなのですが……」

「確かに、以前に討ったドラゴンのものとはまるで格が違う。私だって、持っていては罰が当たるんじゃないかって思ってるくらいだよ。──それでも山分けという形で託されたのは誰でもないこの私だ。そもそも、まずは討伐した張本人に話をつけるべきじゃないかな?」

「……『無慈悲な主役』(マーシレス・プリンシパル)、ケルビム殿はその名以外何一つとして明らかにされておりませんので」

「仮にケルビム話を通せたとして、私以外の人間に素材の譲渡を渋ったら?あの新種のドラゴンを単騎で相手取って討ち取るほどの人間をわざわざ敵に回すの?」

 

ケルビムのあの強さは尋常ではないのは言うまでもないこと。

多分私とユフィが同時にかかったとしても軽くあしらわれること請け合いだ。

しかも単に魔力が多いとか、強大な魔法を使うとかそのような類の強さでは無いのが拍車をかけている。

更には従者として『光誓の座天使』クロエまでついてくるとあっては……それこそグランナイツ以外では止められないだろう。

それだけの力を有するだけに、同業者の羨望の色もかなり強いから人望も結構厚い。

功績とか名誉に一切拘りがないことが救いか……ちょっと話しただけでもそれは分かる。

でも、仮に敵なら魔法省であれど潰しにかかるような……そんな想像は出来なくもない。

 

「その言い分は流石に自意識過剰ではないでしょうか。私共ならば、国庫を潤し民に還元してみせますし、正当な価格を以て取引をすればケルビム殿も耳を傾けてくださるはず……」

「それはそっちの理想でしかないよ。ケルビムたちは素材を『魔学の研究に役立てて、面白いことをしてほしい』って言い残してくれたんだ。彼らの目には、魔法省より私の方が適切かつ有効に使ってくれると見えたってことじゃない?本当にそっちがその理念で動いてるんだったら、彼だってとっくにそうしてるはずだよ」

「……やはり貴女の品位に欠ける振る舞いは、毒でしかないようだ。更にかの現代の英雄ともあろう御仁が、アニスフィア王女殿下に賛同の意を示すとは──異端の道を行くのでは、折角の武勇も台無しですな」

 

……今のは流石にカチンと来てもいいよね?

私のことはいくらでも悪く言っても構わないけど、まさか二人までまるでおかしくなった風に言うなんてね……。

少なくとも、私と魔学そのものに可能性を見出してくれていた。

本来ならば歯牙にもかけなくていい存在なのに、認めてくれたのだ。

その期待に報いたいから、ここだけは絶対に譲れないし譲りたくない。

 

「流石にそれは度が過ぎた発言ではないでしょうか、ラング様。アニス様も少々熱が入り過ぎではないかと」

 

──これまで静かに溜め込んでいた怒りが爆発するところに寸での制止が入った。

私とラングの終わりのない睨み合いを強引に制するように割って入ったのは、これまで静かにしていたユフィの一声だ。

あちらに鋭い視線を向けているけど、冷気すら感じさせる圧力は私にも若干だが掛けられていた。

急に冷や水をぶっかけられたようなもので、勝手に矛を収めてしまう。

 

「お恥ずかしながら私は学院を卒業できなかった身、故に魔法省のことを詳しく把握できていません。アニス様とのご関係についても端的に耳にしただけですが──まるで関係のない第三者を不当に巻き込んでは、それこそ迷走しか道はないでしょう」

 

かなり冷静に告げてるけど、そのお陰で内に秘める怒りがひしひしと伝わってくる。

ユフィもあの時の二人の戦いぶりを目の当たりにしたからこそ、憧憬の念とかはあるはずだ。

だからこそ顕魂術に強い関心を向けていたり、自分なりの研鑽をより行ってきたわけで。

──無論、傍から見れば第三者すら批判に巻き込む姿勢を咎めているようにしか見えないんだろうけど。

元々次期王妃に相応しき完璧令嬢と呼ばれていたことを逆に利用した、見事な隠ぺい工作だ。

 

「……確かに、ケルビム殿についてはユフィリア様の仰る通りですね。ですが、アニスフィア王女殿下の品位に欠ける振る舞いと行動についてはどうでしょう。王族として目に余るとは思いませんか?」

「助手として共に過ごした期間はそう長いものではございませんが……王族として、という但し書きが付くとなると否定は出来ないかと」

 

……こればかりは耳が痛いし、余計な口を挟めない。

ちなみにティルティはずっと我関せずで視線すら向けずにそっぽを向いて……って、何か読んでるし。

あまりに暇だからってコッソリ持参してきた呪いのノートの切れ端を読むのはどうなのさ。

アンタの研究資料はどこぞのデスノートだったりするのか?

 

「我々魔法省には王国の未来を担う義務がございます。アニスフィア王女殿下を諫めるのは、国と王女殿下自身を思ってのことなのです」

「なるほど……その中には、つい諫言せねばという気持ちが先走るあまりに口が軽くなってしまう者もいらっしゃると」

「悪評の件でしたら、そのようなご認識でよろしいかと」

 

余計なお世話って言葉を知らないのかなって常々思うけどね……。

聞いてみる限りでは理想的優等生らしい答えではあるし、ユフィもこの辺りで突っ込むことはしない。

……無論、それが表面的であることはどちらも理解しているんだけどね。

 

「王族として品位に欠ける、確かにアニス様を諫める理由としては説得力はございます。──ただ、やはり諫言が過ぎると思ってしまうところです」

「諫言が過ぎる?──ユフィリア様は何を仰りたいのでしょうか」

「率直に言うと、アニス様が興している魔学は禁書と同様に規制対象にしようと魔法省は考えておられるのではないですか?」

 

ユフィの口から魔学という単語が出てくると、ラングの表情は明らかに歪んだ。

私から発せられるのとはワケが違うのだろう……例え中立的な空気の発言だったとしても。

どんだけ頭堅いのさ、このエリート様は。

 

「……失礼を承知で質問で返す形になってしまいますが、ユフィリア様はどのようにお考えなのでしょうか」

「これまでの観点を悉くと覆す吃驚箱とでも称すべきでしょうか。突拍子もないように見えて、その実真理を突くところも多く感心させられるところばかりです。更に言うならば、適切に扱えれば利潤という形で返ってくるという期待も持てます」

「確かに、アニスフィア王女殿下の生み出している魔道具は多大な利益をもたらしております。その礎となる魔学もその内に入ることでしょう……ですが、それらはこの国において異端であることを忘れてはなりません」

 

……最も刺さる言葉の一つがここで発せられることとなった。

私の中で鋭利な刃がグサグサと突き刺さるような感覚に襲われる。

 

「この王国の礎となっている精霊信仰にも真っ向から反していることから、明確な危険思想であることは明白。それは王族として相応しくない……あってはならないこと。我々はそこを懸念に思い、アニスフィア王女殿下を諫めているのです」

 

これも散々言われてきたことだが、耳タコと思う以前にどうしても凹んでしまう。

無論、私だって好きで異端に走ったわけではない。

生まれつき精霊が知覚できず、それでも魔法に対する憧れを捨てることは出来なくて。

なりたいものになるために、あえてその道を歩まざるを得なかった……それだけのことだ。

 

「アニス様が異端であること、これも否定は出来ません。──しかし王族として不適格であることと繋がるのか、そう問われたら疑問がありますね」

「──何ですと?」

「与えられなかった者に対して与えられた側の当たり前を望む……それは正統な行いと言えるのですか?耳が聞こえない者は音を嗜むことがどれだけ望もうと出来ないように、魔法が使えないのならば精霊を知覚できない。その上で信仰心を望むというのは、独りよがりで傲慢と言えるのではないですか?相手が異端であれば、そのような振る舞いも許されるのでしょうか」

 

淡々と語っているが、少しずつ冷たさが加わってきているのは気のせいではない。

私ですら口を噤んでしまうくらいだ、ラングに掛けられている圧は恐らく半端なものじゃないだろう。

……考えてみたら、私への言いようは結構な部分でマッドくんやグランナイツに繋がるところも存在する。

そんなことあっちは意識しているかは知らないけど、知らず知らずに地雷を踏み抜いていたのだ。

 

「魔学とは、アニス様が魔法が使えない現状に屈することなく自分なりに足掻き続けた一つの結果と私は思っています。その結果が異端なのか、更なる境地なのかは判断しかねるところですが……どちらにせよ関係ありません。その功績に光明の一つを見出したことに変わりはありませんから。本日の講演会では、それらをお見せするつもりですので乞うご期待下さい」

 

そこまで言い切ったタイミングで外から呼び出しがかかった。

ユフィの方も言うべきことは言ったからか、一礼と共に部屋を去っていく。

何も言い返せずにいたラングをまるで意にも介さないその様子は……かつてのそれ以上に鋭い風格だった。

私はと言えば、何とか置いて行かれぬようにとついていくだけだ。

……その隣では、ティルティが何とも楽しそうな笑みを浮かべていたのがどうにも気になった。

本番が近いこともあって追究する余裕なんて無かったけど。

 





飛翔の構えを見せるラス達、そしてユフィリア。
目標は同じく、さあ交差も徐々に秒読みに近づいています。
当の追われてる、二歩も3歩も先を行く本人もきっと気分を良くしていることでしょう……『追われるってのは気分がいい』とのたまいながら。
そしてケルビム=マドラーシュを馬鹿にされて、ユフィリアさんはかなーり激おこ、それはもうぷんぷん丸……流石は情が深い、とだけ。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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