展開だけなら原作通りのちょっとした爆撃回。
タイトル通り、これはダイイチダァ!ですけどね。
講演会会場の入り口、その扉の壁沿いに背を掛けてその男は立っていた。
周囲の煌びやかな貴族たちの中に混ざれば間違いなく浮くであろう恰好をしているが、誰にも見咎められることはない。
そこに在るのが至って当然という風の立ち姿は、背景と同化してるとさえ言えるか。
堂々としていれば何とやら……というだけではないのは言うまでもない。
今も気ままにどこをふらついているか分からない師から伝授された、生き抜く術の一つに第二の故郷で会得した細やかな技術……それらをいい塩梅で調和した同調術だ。
気配だけでなく、魔力やら何やら色々な方向性から溶け込ませては自然にいるエクストラと誤認させる。
──とはいえ、カメレオンのような擬態を見破って視線を向けてくる無駄に勘のいい輩も中にはいるわけで。
(やれやれ、ご苦労なことで……どうにもいい気はしないね)
分かっていたことでも、監視されていい気になる人間など果たしているものだろうか。
あくまでピンポイントな場面を選んだ上での注目だから意味があるもので、こうも張り付かれるのは望むわけがない。
とはいえ、今回は視界を向けられるのも仕事の内だから仕方がないというもの。
陰に徹しながらなおピンポイントに注目を集める、かなりの部分で矛盾が生じかねないやり口だ。
そこを可能としているのは、良くも悪くも相手への妙な信頼……と言えなくもない。
その為に、わざと擬態の精度を落としているのだから。
無論、そこに親し気な感情など微塵もないのだが。
(……こうして晴れ舞台を眺められるなら、安い出費と言えるのだろうがな)
来られなかった場合の罰金の方が遥かに強烈、とも言えるのだが。
回避できただけでも儲けもの、むしろ適度に緊張感と共にモチベーションを下げずに済む。
精神面では体の良いウォームアップ代わりにならなくもない。
大半の人間が聞けばドン引きするようなことを考えていると、会場中の視線が壇上に向くことを感じ取る。
倣うように壇上に視界をやると、そこには奇天烈の名を冠する第一王女の姿があった。
「皆さま、ごきげんよう。本日の講演を務めさせて頂きますアニスフィア・ウィン・パレッティアです。この講習会を開いて頂き、またお集まりいただき大変嬉しく思っております」
今回の主役の一人として開幕の挨拶を告げると共に恭しく一礼すると、そこそこの量の拍手が会場内に響き渡る。
想定以上の反響の多さに、少しばかり安堵の様子が窺えるか。
……なお、男は普段とまるで変わらないその格好に『らしい』と思いながらも苦笑を浮かべているわけだが。
それとは対照的に、後ろに控える助手のやたら気合の入った格好ときたら。
その対比もまた、ある種のいつも通りでいっそ和やかな気持ちになってしまいかねないほどだ。
「さて、ドラゴンの素材についての講演に入る前に……こちらをご覧ください。飛行用魔道具『魔女帚』です」
手始めとばかりに展開されるのは、ある意味アニスフィアのトレードマークとも言える魔道具の紹介だ。
製作者曰く、『飛ぶといえばまずは箒』とのことで真っ先に作り始めたとのこと。
とはいえ、それは身内しか知り得ないことで大半の者にとってはこれですらも珍妙な一品に類される。
現にその成り立ちや用途の説明が為されている間でも、『飛行するには随分と頼りない』だの『そもそも何で箒?』などという囁きは途絶えない。
特に後者については、アニスフィアの独特の感性と記憶によるものなので致し方ない評価と言えるか。
初見ではないにしても、この男のように『いつ見てもみょうちきりんだ』という感想に落ち着いてしまう。
ただ、箒というどこにでもあるものと風の精霊石をベースとした動力源を組み合わせればいいのでコスト面では間違いなく優秀と言えるだろう。
馬、ないし馬車よりも費用がかからず量産できる点に着目しているいい意味で目聡いコメントも聞こえてきた。
頭が四角い面々ばかりではないこと、むしろこちらの方がある意味で驚きかもしれない。
──そして、その説明が一段落するタイミングを見計らうかのように手が上がった。
「その飛行用魔道具がもたらされる利益については理解出来ましたが、本日は新種含むドラゴンの素材の使用用途を説明する場ではないのでしょうか」
(……やれやれ、前座だって言ってるだろうに。せっかちなことだ)
聞いている限りでは要点をきっちり纏めた無駄のない、且つ分かりづらいところもない説明である。
確かにメインはドラゴン……というよりドレッド・ドラゴンだが、ここで飛行用魔道具について説明が入るのならばその用途は想像がつく。
揚げ足取りにしても、単純に疑問を覚えたにしても……恐らくは前者なのだろうが、わざわざしなくてもいい質問に対して静かに嘲笑を見せる。
揚げ足を取る行為は、露骨が過ぎればただの道化。
すなわち、ちょっとした愉悦でしかないのだから。
「
その手の質問は当然想定しているのか、淀みなく返していた。
ある意味ではアウェーの空間であるからこその準備の良さに、男はますますもって感心することとなった。
普段が普段ではあるが、何だかんだでやる時はやる。
──彼の身内が聞けば間違い無く「お前が言うな」と大半が返してきそうだが。
そして、ここらで選手交代がてらにアニスフィアが後ろに下がり……傍に控えていたユフィリアが代わりに前に出ることに。
注目の的が変わると共に、やはりというべきか会場全体にざわめきが起こる。
かくいう壁端の男は、周囲とは別の意味で驚きを見せていた。
(……随分とまあ、気合が入っているようで)
入れ替わるように後ろに下がったアニスフィアとは対極、未だ称される『完璧令嬢』による完璧武装状態だ。
それでいながらも、その表情や佇まいはかつてのそれを凌駕しかねないものであった。
かつては義務や使命によって駆られた、受動的な状態と聞いていたが……今はまさに真逆だ。
更に言うなら、その内には覚悟を宿していることが分かる人間には分かることだろう。
気迫やオーラと言ったスピリチュアルな要素で視覚化されんとばかり、もはや覇気ともいえるかもしれない。
そんな令嬢の新たな姿を見せつけられ、男はどこか愉快げに笑みを浮かべていた。
「アニスフィア王女の助手を務めさせて頂いております、ユフィリア・マゼンタです。此度は展望ある魔学の未来を語る為の場を設けて頂き大変嬉しく思います。ここからは魔法使いの観点に立った説明となりますので、不肖ながら私が説明を引き継ぎたく思います」
挨拶を述べ、助手として語り手を引き継ぐと述べただけのこと。
──たったそれだけで会場内のざわめきが消えていた。
大半が呆気に取られていることだろうが、男を含む一部の顔ぶれは十人十色な反応を示している。
「手始めに、私が自身で魔女帚による飛行を体験したことで得た知見の成果をお見せしましょう」
論より証拠、そう言わんとばかりの怒涛の攻め込みである。
現在の主役は目を瞑り何かを呟くと……その身の位置情報があらぬ方向に──上昇していく形で変化していく。
明確に宙に浮き始めるや否や、壇の範囲内でこそあるがユフィリアは自由自在に飛び回り始めた。
精霊を経由した魔法による飛行が、世界初のお披露目となった瞬間である。
(箒の飛行から得た手段としては悪くはない……無論、視点を変えればいくらか問題点も見えてくるがな)
大半がその光景に目を奪われては感嘆の声を挙げる中、眉すらも動かさないのがこの男である。
そもそもこちらでもやってやれないことではないからこそ、特段驚く理由も無い……そんな平静っぷりだ。
平常心そのものだからこそ、男は散見される死角を逃すことなく見抜くことが出来る。
更に言うなら、奇しくもその欠点はこちら側と見事なまでに似通っていることに苦笑を浮かべてすらいた。
──なお、平然とやっているがその地味な行為そのものが異常であることは誰も突っ込むことはない。
「このように、魔法でも飛行を行うことが出来ると証明されました。詳細についてはレポートをご確認して頂くとして……次に、この飛行魔法と先ほどの魔女帚を比較した上での特徴について述べさせて頂きます」
男からすれば、なんで今までの魔法技術でそこまで至っていないのかが甚だ疑問であったが。
その一点だけでも、明らかに過度な変化を忌み嫌い避け続けてきたことが窺える。
信仰への安住が相当に根深く、もはやそれ以外の樹木を阻害すらしている。
だからこそ、今この場でその砦に風穴を空けてやることに大きな意義がある。
「飛行魔法については、この場でようやく披露することが出来たことの裏側こそが欠点と言えます。率直に申し上げますと、とにかく実行が難しいことです。実際に使用してみた感覚では、現状私を除くとシルフィーヌ王妃や私の父ほどの使い手であること、これが最低条件となってしまうでしょう。他にも、魔力の消費量がとにかく多いという難点もあり……これも見過ごせません。どちらも熟練度で解決する問題でこそありますが、その難儀さは皆さまもお分かり頂けることでしょう」
(まあ、もう一つの懸念点として発動速度を汎用の段階まで持ち込めるかってこともあるんだが……これはあっちの立場では分からないだろうな)
難度の高さ、魔力消費が粗い、そしてイメージ過多に比例する発動速度。
男が内心で述べた3つ目の欠点も含め、担い手の熟練度次第である程度解消される要素ではある。
しかし、魔法ならではの限界点が存在するのも事実だ。
精霊に祈りを捧げる、一見綺麗な行為でも引っ繰り返したらそれは精霊が不可欠であるという依存要素。
このどうしようもない影は、否が応にも担い手を抑制という牙を剥いてくるということだ。
「対する魔女帚は、風の精霊石を用いることでより少ない魔力で浮き空を舞うことが出来るのは大きな長所と言えます。また、見た目が箒という身近な道具由来であることから携帯性にも長ける、この点も見逃せません」
魔力的コストパフォーマンスと道具そのものの携帯性、これだけ聞けば有用性はかなりのもの。
アニスフィアは先んじて馬や馬車と比較していたが、後者の面でも大きく魔女帚が勝ると言ってもいい。
当の彼女には乗馬を得意とするところではなかったり、馬車に乗ること自体が好きではないという個人的事情もあるのだが……それを知る者はこの場ではいない。
ここまで長所を述べたところで、次は短所……続けてユフィリアは口を開くのだが。
「ただし、利便性を得る代わりとして道具への慣れとそれに伴う変わったイメージを持つことが要求されてしまいます。実際のところ、私も単独で魔女帚を扱えるようになるまでそれなりの時間を要してしまいました。他にも、飛行態勢を維持することになかなか苦労すること、そもそもの乗り心地の悪さなど……細かい欠点も少なくありません」
(……経験談からの私怨が盛大に混ざってるな。まあ、仕方なしだが)
細かくはあるのでトータルではとんとんなのかもしれないが、数自体は長所より多い。
実体験から得たその欠点を、是非とも共有してほしいと言わんばかりに饒舌に語る姿に対して男はそのようなツッコミを内心で入れる。
意外と根に持ちやすいという新たなパーソナリティが、本来の負けず嫌いの側面から芽吹いてしまっていた。
割と知っていたことではあるのでドン引いたりはせず、むしろ面白そうにするだけだが。
傍聴席の反応としては、最初の欠点に派生する形で『確かに箒で空を飛ぶのは想像できない』というものが大半だ。
ここでも露わにされる第一王女の奇天烈思考っぷり、もはや毎日恒例とでも言うべきか。
「ただ、これらの欠点は全て媒体が箒であることに由来するものです。用いる素材次第では解消することも可能なのではないか──その発想から、ドラゴンの素材を飛行用魔道具の改良に用いるということを考案致しました」
本題であるドラゴン種の素材は、ここでようやく脚光を浴びることとなった。
これまでの流れで、飛行用魔道具がもたらす利益については段階を踏みながら会場に浸透されていることだろう。
そこに本筋に繋げることで、更なる理解を得やすくする……魔学に通じていない者に対しての気遣いが感じられるやり方だ。
しかもユフィリアが壇上に立っていることから、揚げ足を取ろう輩としても易々と行かないのがこれまた面白いところ。
「このエアドラは乗馬の要領で騎乗出来るのが大きな強みと言えます。手綱の代わりに取っ手が存在するので、魔女帚よりも姿勢を固定することも容易となるでしょう。ドラゴンの持つ固有の力場を応用することで、飛行の際の安全性を大きく担保出来ることとなりました。この性質の研究が進めることで、ドラゴンの素材を用いない形で量産できるような展望もございます」
実際のところは、ドレッド・ドラゴンの素材の場合は少々役不足になってしまうのが現実だったりもする。
とはいえ、それでもまだ乖離度合いはマシなほうではあるのだ。
そもそもケルビムとしても、アニスフィアが必要になりそうな部分しか渡していないのだ。
鱗や爪、翼など……黒龍の余波の影響を特に受けている部位を軒並みの取り分としているのだから。
なお、食用で確保した肉については特段影響が無かったことが幸いだったらしい。
「ドラゴンの素材の使用用途については以上です。──さて、ここからは本流から逸れる話となってしまいますが、是非ご傾聴頂きたく思います」
(……しれっと巻きやがったな。ここからが本番というわけか?)
講演のメインとなる部分は終わったようだが、それでも時間は余り気味だ。
あくまで使用用途の講演でありながら、懇切丁寧な手法を取ってなおこの状況は、要点をきっちり纏め上げていることに他ならない。
そこまでして、一体どのような話をするかに関心が向くところだが……壇上の公爵令嬢が内心で静かに笑っていることには誰も気付いていない。
「ここまでで、飛行用魔道具の有用性とその利益の展望についてはご理解頂けたかと思います。しかし、アニスフィア王女殿下の発明には精霊や神々を冒涜する意図があるのではないか……そのような疑念を抱かれてしまう方もいらっしゃるのではないのでしょうか」
率直に言えば、盛大な爆弾投下であった。
いきなりのとんでも話題転換に、傍聴人の大半はどよめいたりざわめいたり。
当のアニスフィアもまるで聞いていなかったからか、その表情はまさに鳩が豆鉄砲にでも打たれたかのようだ。
その隣にいる呪いオタクは楽しそうに笑っている様が余計に奇妙さを加速させている。
「確かに、魔学を始めとするその発想は既存にはないものばかり。余人にはなかなか理解できないものばかりに見えてしまうのも無理はないことでしょう。しかし、アニスフィア王女殿下の考えの根底には精霊たちへの確かな敬意があると、短い期間ながらも身近で見て来た私から伝えさせて頂きたいです」
そもそもアニスフィアが魔学を興したのは、魔法への憧れが起因である。
才が無くても折れず、むしろ現実に向かうその姿がどうして精霊軽視に繋がるのか。
思想は常人からズレていたとしても、その工程には確かに精霊の存在は感じられるだろう。
感知出来ないから無関心でいようという、現状維持に寄った日和見的思想では断じてないのだ。
「魔法が使えないなりにもアニスフィア王女殿下は魔法を知り、世を知り理を知りました。その上で成り立つ魔学は新たに興された学問といえるもので、我らが受け継いできた伝統と叡智すらも内包していると言っても過言ではありません。信仰や伝統を蔑ろにするのではなく、むしろ共存を志していると言えるのではないでしょうか」
この時、ユフィリアは一瞬だけアニスフィアとティルティに視線を向けては微笑みを向ける。
込められた感情は友愛……まさに、『言ってやりましたよ』といったところか。
そんな表情を向けられたアニスフィアは思わず感極まりかけるが、常時涙腺崩壊キャラになるつもりはないので何とか堪えていた。
ティルティは未だに更なる愉悦を期待するような表情でいるのがどこか不穏な気配すら漂わせているが……。
「どうか異端と決めつけ、自ら学びの芽を摘まないでください。アニスフィア王女殿下が精霊の加護を賜らなかったのは、内に秘めた底知れぬ才を精霊が見抜き、お認めになったが故なのだと。更なる地平を歩まんとするその姿を、我々は見習わなければなりません」
まさに友への敬意が詰め込まれた言葉。
一見すると奇天烈だったり奇怪だったりする行動をきっちり受け止め、理解し、自分の中で咀嚼する。
破天荒を始めとした、奇妙ながらも幸運とも言える縁により紡がれた人間味がここに来て本領を発揮されていた。
この時、己の縁を幸運と思えているのはアニスフィアも同じくであったり。
「精霊と交わした契約を礎として一体どれほどの時が経ったことでしょう。今こそ、我らは変化の為の一歩を歩むべき時ではないかと私は思うのです。今日というこの時を、まだ見ぬ未来を目指す最初の日となればと思うばかりでございます」
ここでユフィリアは一例と共に言葉を切る。
するとどうか……一人、また一人と控えめに拍手を始める。
その数が増えていくと共に、一人一人が発する音は強くなっていき、会場内をどんどん支配しては包み込んでいった。
これにて終演──誰もがそう思う所であるのだが。
「──そして、最後にもう1つ。魔学と同じく、近い未来この国だけに留まらない新たな波をもたらす概念を紹介したいと思います」
(うーわ見事にぶった切りやがった)
拍手を遮るかのような、まさかの演説続行宣言である。
まさに、『まだ私のターンは終わっていません』と言わんばかりで、終わりの空気など知ったことかと言わんばかり。
ある意味傍若無人と言える行動に、軽くでも拍手をしていた男はやや引くような表情をしてしまう。
この言葉の直後にユフィリアが行ったのは……先ほどと同じく飛行魔法の実演。
しかし、焼き直しであるのは最初だけである。
それもそのはずで、宙に浮くだけ浮いて舞うという行為を行っていないのだから。
ただただ宙に足をつけて立っている……一見すると、味気に欠ける光景である。
(なりふり構わずしてもいいとは言ったが、誰のところに駆け込みやがった?更には予定より早いお披露目とか、やってくれる)
男がその意図を探らんとする辺りで、他の傍聴人も異変に気が付いたようだ。
飛行魔法を用いているのではなく、宙に足場を作り足をつける形で立ち位置を空中に固定しているということに。
そして、この段階で既に別の方向に違和感を覚える者も少なからずいる。
しかし、これだけでは反応が薄いと判断したユフィリアは更なる行動に出ることとなった。
──手を前方に掲げ、光を出すという至って単純な行為だ。
普通ならばその意図を汲むことは難しい所だが、先ほどの光景で違和感を覚えた者たちにとってはこれだけで確証に至るには十分である。
「ま、間違いない……!今ユフィリア様が用いてる魔法には、精霊の気配がまるで感じられない!」
まさに鶴の一声ともいうべきか、このことを基点に困惑が会場を支配することとなった。
難を逃れているのは、恐らくこの会場では3名だけだろう。
この空気を作り出した張本人、意図以外の全てを察した壁際の男、そして特等席でその混沌っぷりにご満悦な様子の侯爵令嬢。
いつの間にか助手がそれを使えるようになり、あまつさえこの場で公開するなど……かのアニスフィアとて、まるで想定できるはずがない。
「先ほど申した通り、時代は流れと共に移ろうものです。その流れの中で、精霊との関係性だけは永久で、絶対不変なものだと果たして誰が豪語できるのでしょう。仮に精霊の加護が賜れない時が来たとして……ただ祈りを重ねればそれでいいのか?──私はそうとは思えません」
所詮はもしもの話、いずれあるかもしれないが訪れない可能性もある。
まるで根拠のない、それこそ絵空事を流すことが出来る懸念だが……誰もそのように思わなかった。
それだけ、精霊の加護なしに似たようなことが為されたという事実が衝撃的だったのだろう。
──ここまで計算して流れを作ったのかどうか……ちなみに壁際の男は是と捉えている模様。
「この術は、己が魂の在り方を顕す魔法……その名も『顕魂術』。かの名高い『東の賢者』がクラマ族やミケ族をはじめとした、抗いの精神を持ちながらも手段に恵まれなかった者に託したとされる新たな魔法体系です」
「『東の賢者』……まさか、実在しているとでも!?」
「あれは与太話の類などではなかったというのか……それにしても、何故下賤な亜人種にそのようなものを授けたのだ……?」
正体不明、そもそも実在するかも分からない……と王都周辺ではされている人物の名が出てくれば、更なる混乱は必至。
やはりというべきか、その中には亜人種に対する蔑みも含まれていることにユフィリアは思わず眉を顰めかける。
一瞬だけ出してはすぐに霧散させることが出来たのは幸いと言えた。
「理念こそは魔学とは対極的かもしれませんが、元々は精霊に対する尊敬(リスペクト)に由来するところ──同じく冒涜の意図は一切ございません。むしろ精霊を介さない、すなわち精霊との今の関係から独立して、新たな関係性を築くことに繋がるのでは……私はそう認識しております」
似たような口ぶりではあるが、纏う空気はまるで別物。
先ほどまでは友であるアニスフィアを認めるように柔らかに諭し、変革を促すような口調。
それに対し今のユフィリアは北風を纏っていると言うべき鋭さすら感じられた。
とはいえ、どちらも新たな地平を切り開かんとばかりの姿勢であることに変わりはないのだが。
「魔学と顕魂術……精霊との新たな関係性を紡ぐであろう2つの概念は世界の常識を覆すことでしょう。皆さま方が少しずつ新たな地平へ目を向けられることを心より願っております。長くなってしまいましたが、ご清聴ありがとうございました」
ここまで来たら、講演会から舞台に様変わりしているとさえ言ってもいい。
起承転結の内、結と思われていた部分が転であり……そこから怒涛の勢いで真の結末に持って行く。
どんでん返しもいいところで、本来の脚本など知ったことかのやりたい放題だ。
その強気というか勝気とも言えるやり方は、何処かに挑戦状を叩きつけている様にも見受けられる。
(……もう人間3年生とか言ってられないな。まあ、今のところは褒めてやるとしよう)
相変わらず困惑する会場の中、男はただ一人傍聴側から賞賛の意を示した。
右手を高く掲げた上でのハンドサイン。
大凡が困惑状態である、傍聴側の貴族がそれに気付くことはまずない。
まさか声を張るわけには行かないので、これが出来得る限りの最大限のやり方であった。
この会場における最長距離となっているが、そもそも届くとは思っていなかったので本当に些細なものにしたのだが……。
彼女にとっては、その些細すら見つけるのは容易なことである。
何せ、傍聴席の大半が南瓜にしか見えていないのだから。
(駆けつけてくれたのは嬉しいのですが、もう行ってしまわれる辺り相変わらず素っ気ないですね)
どことなく満足気に見えるその表情を浮かべているが、内心ではそんな苦言を呈す。
せっかく真っ先にその姿を見つけたというのに、とりあえず見物はしたという証のみ残してそそくさと退散。
勿論、そうせざるを得ない事情があるのは重々理解しているつもりだが……。
そこは上手いこと、ほんの僅かに面と向かって言葉を交わすくらいはしたかったところだ。
(まあ、今の貴方にそこまで求めるのは酷でしょう。──この方が後の楽しみが増えますからね)
それはそれで、という風に切り替えも素早いのもまた成長の内か。
とはいえ、これくらいでないとここからの激動の展開に間に合わないだろう。
意図的に発せられた暗雲と共に、第一部はこれにて終演なのだから。
事前に秘められた構成を理解している彼女は、少なくとも現時点において大半の一歩先にいるのは間違いない。
そのお陰で、この会場に薄っすらと漂う『違和感』に気付くことも出来ていた。
というより、見事なまでに引っかかってくれていたとでも言うべきだろうか。
(私自身の演目は終わりましたが、本番は恐らく次から──備えは忘れないでおきましょう)
第二部の始まりも、そう遠いことではない。
そんな予兆を指し示すかのように、会場内でもいくらか不穏な気配が漂ってきている。
──どうやら、事前に予習をしてきた甲斐はあったようだ。
これならば、少なくとも第二幕でも端役くらいならばこなせるだろう。
僅かに歩を軽くしながら、ユフィリアは友の元へ戻っていった。
大半を南瓜扱いとか、愛されてますねー。
これまでとは違い、能動的に動いて立ち位置を近づける……これまた静かないじらしさ発揮です。
スッポンのように噛みついて離れないとも言いますけどね!
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)