書いててずっと思っていたこと、キュイは本当に書きやすいし動かしやすい。
実はグランサガを混ぜようと思ったきっかけという意味ではオルタに次ぐ2番手のキャラでもあったり。
キュイのその爆弾宣言は、まさに三者三様の反応を引き起こしていた。
そもそも特別近衛騎士の存在を知らぬ者は単にハテナを飛ばすだけで、こちらはまだマシな方。
事情を全て把握しているティルティはただただ楽しそうに笑みを浮かべるだけ。
オルタ以外の人員の存在と初めて会うユフィリアは他の3人に品定めするような視線を送る。
事態の飲み込みが半分程度のアニスフィアは、『特別近衛騎士』という単語に驚愕を見せる。
そして、すっかり蚊帳の外に置かれかけているモーリッツは……別の方向で衝撃を受けていた。
「マドラーシュ王子の影武者だと!?バカな、講演会の最中は間違いなく……!」
「ああ、最初から私だったということではないよ?講演会が終わってから機を見て入れ替わったというだけのことさ」
「そのタイミングで俺たちも潜り込ませてもらった。あまり褒められたやり方ではないが……亡者を紛れ込ませるよりはよほどましだと自負はしているぞ」
「講演会が終わってからも見張っていたはずなのに、一体どうやって……そもそも、ヤツは既に!?」
モーリッツの狼狽に、オルタとウィン、更にセリアードはただただ苦笑を浮かべた。
確かに非人道的手段は一切取っていないのだが……代わりに単純かつえげつないやり口とも言えるわけで。
とある感覚が養われていない限りは、まず間違いなく騙されること請け合い。
ちなみにこの同性間とりかえばやの主犯格は、去り際にそれはもう満面の笑みを浮かべていたとか何とか。
「細かいことは別にいいじゃん。君のような見た目だけのメガネ貴族にはどうせ理解できないだろうからね!」
「そうそう、アンタなんか見掛け倒しもいいところだよ!初っ端こんなことになったら、計画なんか面白いくらいに崩れること間違いなしだもんねー!」
「なっ、見た目だけ、見掛け倒しだと……!?このミケ族とドチビが、最低限の礼儀すらないのか貴様らには!」
「そんな下らないことばかりに囚われてるから見た目だけなんだよ~だ!そんなんでウチの相棒と張り合おうだなんて1億年早いよーだ!」
先ほどの流れから続かせるように、キュイとロムはひたすらモーリッツを煽り倒していく。
実際とりかえばやの原理を説明する気は全く無いのだが、その無邪気な挑発は皮肉よりも刺さることだろう。
現にモーリッツは血管が浮き出ているのではというくらいには怒りで表情が歪んでいる。
そんな様を見ても、キュイとロムはまるで恐れを成しておらず……それが却って憤怒を増長させていた。
そして、二人の挑発を尻目に動き出す者もいる。
「アニスフィア様、これを!」
「うわわっ……あ、ありがとう!これが無いとやってられないからね!」
モーリッツがキュイとロムに意識をやっている隙を突く形でセリアードは素早く動きだす。
近くのテーブルの下から取り出されたのは、アニスフィアの現状打破で必要なものだ。
預けてあった得物と足……マナ・ブレイドと魔女帚である。
2つ合わせても軽量であることが幸いしたのか、如何にも華奢なセリアードでも簡単に受け渡しが出来たことも僥倖であったろう。
なお、しれっと回収されていたことについては状況のせいもあって言及する余裕もなかったり。
「ええっと、初めましてアニスフィア王女殿下、そしてユフィリア様。セリアードと申します」
しかし、あちらには自己紹介をするくらいの余力はあるようだ。
かの末弟の周囲の人間にしては、割とレアなお淑やかな雰囲気。
同じく最初は引っ込み気味だったレイニという前例があっても、アニスフィアが若干面食らうのは必然とも言えた。
「こ、これはご丁寧にどうも……えっと、あのネコちゃんとかクラマ族のおじさんの仲間ってことだよね?」
「あ、はい!諸事情でマッド様に保護され、そのまま弟子となって……」
「今はみんなと同じく、マッド付きの特別近衛騎士だよ!まだ候補だけど、今回の一件が終わったらほぼ確定って顧問からも言われてるね!」
「積もる話もありますが、一旦横に置きましょう。とりあえず今は……っ!?」
現状整理に移ろうとしたところに叩きつけられるのは、魔力の激流だった。
三人してその流れを辿っていくと、その先にはドス黒いオーラを隠す気一切なしのモーリッツの姿が。
否、既にモーリッツのような何かと称するべきかもしれないか。
その身は既に魔力の漏洩と共に変質しつつあり、人体のそれではなくなっているのだから。
「どこまでもコケにしやがって……!いいでしょう、ならばこの姿を見てなお戯言をほざけるか、試してやろうではないか!」
魔力は漏れるどころかもはや洪水のようにあふれ出していると言っても過言ではない。
その様に比例するかの如く、人体として収納されていた本来の姿が露わにされていく。
この時のアニスフィアは、これまた前世知識が頭を過ってはこうなぞらえた。
まるで、戦隊モノの怪人が巨大化するような様だと。
「かの神の霊石の研究により、精霊の加護はここまでの進化を果たせたのだ!この力を以てして、我らの信仰を更なる形に昇華させ……かの精霊契約に至ってやるのだ!」
「通りで気配ばっかりで見当たらないはずだよ!体内に埋め込まれてたら分かるわけないじゃん!」
その様は見るからに異形だと分かる姿をしていた。
燻った炎のような体色、細見でありながら爬虫類のような尻尾を生やしているその外見は魔性そのもの。
ご丁寧に浮遊もしており、その身からは膨大な魔力が嫌というほどあふれ出している。
強いて元々人間らしいところを挙げるとすれば、棒とも槍とも捉えられる武器をその手に持っていることくらいか。
(『神の霊石』、またはキーストーン……そこまでなりふり構わずだというのですか?何て醜い……)
枠外の化け物の登場には、流石に開いた口が塞がらない。
その中で、ユフィリアの関心は影武者とロムがそれぞれ異なる呼び方をするソレに向けられていた。
また、これまで伝聞でしか聞いてこなかった精霊信仰の裏を初めて垣間見たことによる不快感が内心を占めている。
「その為の礎として、卑しき亜人には供物にでもなってもらおうか!」
相手は咆哮と共に大きめの火球を発生させては即座にキュイに向けて投げつけていく。
別枠では無詠唱で純粋魔力の衝撃波も放つというおまけつきで、なかなかの八つ当たりっぷりである。
虚を突かれたかに見えるが、きっちり魔力の流れを掴んでいたキュイはそれらを何てことない風にかわすのだが……。
「コラ~見掛け倒しメガネ君!いくら何でもはっちゃけすぎだと思うんだけど!?いきなり攻撃するとか、礼儀弁えてないのはどっちなのさ!」
「いやいや君が挑発しまくったせいじゃないのかな!?っていうか、今は他にも人がいるってのに……っ!」
今度は棒状の武器を突き出す形で突貫してくる。
大体ラスが用いる改良型『スティンガー』と同程度のスピードといったところであろうか。
少なくともマドラーシュが放つものよりは遅いので、キュイとしても余裕を持ってかわせなくはない範疇ではある。
が、この場において真っ先に迎撃を試みたのはマナ・ブレイドを両手に握るアニスフィアであった。
「いきなり壊したくないからね、これでも食らえ!」
マナ・ブレイド最大の弱点、それは物理的な衝撃に滅法弱いということ。
受ける時は勿論だが、攻撃を放つ際にも多少なりとも注意を払う必要がある。
あっさりと斬ることが出来るような魔物ならばまだしも……今回の相手は、これまた未知の存在なのだから。
「まさかのそちらかっ……ちぃっ!」
そして、ドラゴンの刻印で用いることが出来るのは何も得物を爪に見立てた強化だけではない。
かつては生と死を彷徨わされる羽目となったドラゴンの象徴と言える攻撃。
それを、ある程度のところまでは本家に迫る威力で放つことが出来るようになっていた。
名称不明の魔性も、状況からしてアニスフィアが割り込むとは露にも思っていなかったのだろう。
結果、アニスフィアの奇襲は実を成しては魔性を吹っ飛ばすことには成功した。
「へえ~、王女様もそこそこ筋はいいんだね!でもウチだったらもっとぶっ飛ばせたよ?」
「ドラゴンのブレス見てその感想は流石に想定外なんだけど……じゃなくて!まだ他にも人がいるってのにおっぱじめるなんて何考えるのネコちゃん!」
「ウチはネコじゃなくてミケ族、名前はキュイだってば!っていうか、さっきのはあっちから突っ込んできたんだから文句はあっちに言うべきじゃないの?」
あっけらかんと返すキュイに思わずアニスフィアはずっこけかけた。
確かに癇癪を起こしての先制攻撃ではあったが、導火線を引いたのは間違いなく目の前の童心溢れるミケ族なわけで。
ツッコミを入れてもまさに柳に風、あまりの手応えの無さは間違いなくマドラーシュの同類の気風を醸し出している。
どう叱るかを考えようとしたとき、控えめに声を掛けられる。
「あの……他の貴族の方々はウィンさんとオルタさんを中心に誘導して、もうここからは避難済みですけど……」
「え、セリアード何を──ってー!ほんとに誰もいなくなってるー!?ニシンの燻製とか何にもなく、あれだけの人数をいつの間に!?」
促されて周囲を見渡すと、確かに喧騒も何もなくがらんとしていた。
今残っているのは自分を含め、ユフィリア、ティルティ、キュイ、セリアード……そしてロム。
実際のところは相手の反撃の時点で避難誘導自体はほぼ終わりかけている段階にあった。
そもそも兵士に扮したゴーストナイトが出てきた時点で異変を感じ取ってしれっと逃げている貴族もいたり。
その貴族が外の兵士に異常を知らせたら、後はその流れが伝播するのみ。
ちなみに、そのしれっと逃げた貴族は直前までユフィリアと歓談していた者たちだったり。
「先ほどまでの小競り合いの段階で息がかかっていない兵も引き連れて、密かに誘導していましたね……ウィンというクラマ族の方はともかく、オルタについては流石ですね……ええ、思わず苦言を呈したくなるほどですねえ」
「ユフィリアサマ、ジュンに主人公を馬鹿にされた時のナマリエみたいな顔になってるけど……オルタと何かあったの?」
「……まあ、強いて言うならマッド様を巡っての攻防戦ってところかしら?好奇心猫を殺すって言葉もあるから、あまり首を突っ込んじゃダメよネコちゃん」
ティルティの意味深な言葉、それだけで軒並みは察した。
マドラーシュとオルタの仲の良さ、これが原因であることくらいは。
「それにしても、事前の根回しは言うことなしってことね。流石はマッド様とラインヒルト顧問といったところかしら」
「……それって、マッドくんはこの事態を完全に想定していたってこと?」
「当然そうなるでしょうねえ。オルタと入れ替わった今はどこを駆けずり回っているのやら──それより今はアンタ達がどう動くかじゃない?」
思わず表情を曇らせかけるが、ティルティの問いのお陰で何とか振り切ることは出来た。
というより、余計なことを考えている暇はない。
未知の魔性はまだ復帰する気配はないが、それでも猶予がどれほどあるか分かったものではないのだから。
「アニス様、すぐにでも離宮に戻りましょう。あの者は恐らく影武者……恐らく本丸であるそちらにいる可能性は極めて高いはずです」
「……でも、こっちも放っておけない。きっちり倒しておかないと、とんでもない被害になりかねない……ここでやらないで何が第一王女だって話だよ」
『アレは魔物という枠にも収まらない』
アニスフィアの中では、既にこのような評価ないし定義が下されていた。
未知数という意味では、先日接敵した新種のドラゴン……ドレッド・ドラゴンと同類だ。
そもそも迸る魔力量を考慮すれば、既知の魔物の大半を凌駕するのは確実で……軽く見積もってもドラゴンと同等の災害級である。
流石にそんな相手を野放しにするのは、彼女自身が許すところではない。
しかし、そんな流れに対して意外な方向から冷や水を掛けられることとなった。
「アニスフィア様とユフィリア様は離宮の方に向かってください。この場は私たちだけで切り抜けて見せます」
「離宮にはダンシャクレイジョーとメイドさんがいるんでしょ?なら、そっちに早く駆け付けてあげなきゃダメだよ王女様!」
魔性の引き止めを真っ先に名乗り出たのが、一見お淑やかな同年代女子ときたものだ。
そのあまりのギャップに、危うく状況を考えずにひっくり返りそうになるほど。
とはいえ、そこを簡単に許容する奇天烈王女ではなかった。
「ちょ、ちょっと待った!君たちだけであんなのと戦うなんて、流石に無茶が過ぎるって!」
「別にアレくらいなら慣れっこなんだけどな~。でっかいオークとかシンジューに比べたらまだマシだから気にしなくていいんだよ?」
「それを言ったら私だって一応ドラゴン討伐者だし、出てきた場所がここ王宮だってこともある。むしろ私が仕留めないと……!」
それでもアニスフィアは譲るつもりはなかった。
なんてことの無い風に言ってのけるキュイは確かに頼もしさを感じるところかもしれないが、
しかし、そんな勇ましさを逆に諫める声は近くからも上がることとなる。
「アニス様、ここは彼らに任せるべきでしょう。我々の為すべきことは他にあるはずです」
「ユフィまで……確かにその通りかもしれないけど、でも見捨てるなんてことも簡単には……」
「なら、あえてこう言わせてもらおう。──王女殿下、今の貴女では私たちの足手まとい、もとい連携の邪魔になりかねないから持ち場へ戻って欲しい」
まさかの進言に食って掛かろうとしたところに、更に諫める声が上がる。
ある程度のところまで誘導を終えたのか、いつの間にかオルタとウィンが戻ってきては一向に合流を果たしていた。
後者はキュイやセリアードより前方に位置して魔性の警戒を敷いており、既に臨戦態勢。
そしてオルタは、この場にいない破天荒に代わってあえて厳しい指摘を告げる役を担うこととなる。
「オルタっ……邪魔って、どういう意味?」
「今の貴女は懸念事項のせいで焦りが生じている。そんな状態では空回りが関の山さ。まさかそんな状態でもあれくらいなら自分でも倒せるなんて甘い考えを持っているのか?」
「でも、あれは明らかにとんでもない相手だ。君たちだけで相手が務まるとはとても……」
「──彼ならば、きっちり現実と己の為すべきことを折衷した上で快く我々に任せるだろうね」
オルタの言う『彼』、そこを察したアニスフィアは一瞬だけ苦い表情を作ってなおもオルタに食って掛かろうとする。
が、それは助手の手により遮られることとなった。
「少々ばかり癪ですが、今回はオルタが正しいですよアニス様。アニス様の最大の懸念は離宮にいるレイニとイリアの安否。彼らはその懸念を消化させようと動いているだけのことです。彼らの力量を信じず、その厚意に甘えないとなれば……却って彼らへの侮辱となることでしょう」
ユフィリアの諭し方はまさに理路整然といった風だ。
あまり好ましく思っていないはずのオルタの意見に賛同を示す辺りがより説得力を増していると言ってもいい。
──早い話が、『臣下の献身に応えるのも王族の義務』……こういったところだ。
何故そのような、あえてアニスフィアにとって不服とするような意図をチラつかせたのか?
……それは先ほどのオルタの言い分に則ってもいるが、詳細は省かせてもらうとする。
助手兼友人まで説得に回ったことで、流石のアニスフィアも折れざるを得なかった。
「……分かった。時間がないから従うよ。でも無理はしないでよ?」
「私たちをあの破天荒王子と一緒にしないで欲しいな。勝ち目ありと判断したからこそ、この場にとどまっている」
「そもそもアンタが言えたことじゃないでしょ?まあ、そんなに心配だって言うなら私が残ってやるわよ」
強がりの風をまるで見せないオルタと共に、呪われ令嬢もこの場に残ることを宣言する。
まさかの積極的な言動に、アニスフィアだけでなくユフィリアも目を丸くしていた。
「……明日は槍の雨が降りそうだね。ティルティ、どういう風の吹き回し?」
「そもそも二人乗りが限度でしょう。それに、たまには私みたいな外れ者が演者に名を連ねるのも悪くないと思わない?」
「全く、不謹慎なほどに楽しそうな表情をして……はしゃぎすぎて王城内を呪詛まみれになっていたなんて勘弁願いますよ?」
「ふふふ、こちとら待ちに待った舞台だもの……確約は出来ないわ。まあこの私がこんなにやる気満々なわけだし、とっとと行きなさいトンチキ王女様と羽化したての公爵令嬢様」
そこまで小さくない箒を用いているとはいえ、構造上二人乗りがギリギリ圏内なのが魔女帚である。
──そうでなくてもティルティはこの場に残る気満々であるのは二人して感じ取っているわけだが。
「誰がトンチキよ……まあいいや、そういうことなら引率の方は頼んだよ!行くよユフィ、全速前進で!」
「今回ばかりは安全度返しで参りましょう、アニス様!」
後ろ髪を引かれる思いが無いわけではないが、それでも振り切るように魔女帚を発進させる。
その直前にユフィリアの無詠唱の風の刃が窓ガラスを割り、二人は夜空を一直線に飛んでいった。
これにて、この場における役者の過不足の一切がなくなることとなった
そうなれば、次は停滞していた舞台を進行させなければならない。
見送った4人は、アニスフィアに飛ばされてから不気味な沈黙を保つ魔性を改めて睨む。
「いつまで空気を読んでくれているんだい?いっそそのままでいてくれても構わないんだがね」
「──先ほどの説教劇の間に増援を要請しておいた、それだけのことだ。お陰で盤石な態勢を整えることが出来たよ」
瞬時に元の位置に戻った魔性が器用に指を鳴らすと、呼応するように壇上から新たな影が湧いて出てくる。
オルタだけが、その姿に大いに見覚えがあった。
白い身体に、歪な人型と捉えられるそれはかの潜伏していたヴァンパイアが餌用に作り出した人造人間。
劣兵として大量に作られていたのだろうか、少なくともその数は洞窟とその周辺で見た時よりも多い。
その数が20になろうとするところで、魔性は仰々しい姿勢と共に宣言する。
「今の私はまさしく異界の存在に足を踏み入れた状態に等しいぞ!この身は
「随分大層に名乗っちゃってるけど、火ならウチより格下安定だから今すぐ変えた方がいいと思うな!」
「全く、異界かぶれで精霊に近づくだなんて、相変わらずのイカれ度合いね。つくづく反吐が出て来るったあらありゃしない!」
かの破天荒が言うのは『王宮人魔内戦』、第三戦場がここにて開幕する。
素性こそ隠しているが陽ノ花の次男坊、後の特別近衛騎士3名に呪い蒐集家侯爵令嬢……相対するは異界の魔性。
豪華な演者たちが揃い踏みだが、これでも横の舞台であることが末恐ろしい。
当の主役は勿論、この面々に並ぶ役者は人魔問わず他にも点在しているのだから。
一転して色々な意味で戦火迸る場所があれば、徐々に騒々しさを増す場所もある。
そもそもの話、現在の王宮は内部犯による襲撃であり半ばクーデターに遭っていると言ってもいい状態だ。
とはいえ、こうして表沙汰になっている分マシとも言える。
最悪の場合は、誰も知らぬ間にチェックメイトすら有り得たわけなのだから。
「だぁー!何が悲しくて華の王宮でこいつらとやり合わなきゃならないんだ!」
「その手の文句は愚弟に直接言ってやれ!アイツのことだ、笑顔でよりキツイところに回すだけだろうがな!」
「この程度の有象無象で根を上げているようでは、マドラーシュ王子殿下とラインヒルト様に顔向けできないでしょうが!ガーク、しゃんとしなさい!」
今回のクーデターの対策をしていたのはマドラーシュだけではない。
グランナイツの参謀格であるラインヒルトもまた、自身が手を回せる範囲できっちり根回しをしていた。
同僚であるカルリッツの部下の一部や、ガークにエイパ、ロアム、エダン。
マドラーシュ達が表立って立ち回るのであれば、その穴を埋めるのが役目と言わんばかりの配置を施す。
そこにアルガルドも加わって、着実に相手の数を減らす少数精鋭が出来上がることとなった。
更に、今回はアルガルド以外の4人には大きな違いがある。
「しかし、エイパが雷を得意として助かった。お陰で俺の主戦法がより火を噴くというものだ!」
「ようやく実戦投入できるようになったのですが、早速お役に立てて何よりです!」
「だからって調子に乗って使い過ぎてはなりませんよエイパ様!あくまでマドラーシュ王子殿下の教え通り、最少魔力で最大効率を心がけてください!」
一言で言うなれば、破天荒からの粋な贈り物である。
あくまで剣に魔力を付与する程度でしかないが、それでも確かな顕魂術であった。
エイパは雷、ガークは土、ロアムは風をメイン属性として、エダンはセラと同じく光属性を主軸としたサポートメインである。
ガークがタンク役として敵の攻勢を受け止め、エイパとロアムは確実に隙を突いて致命傷を狙う。
そして、エダンは後方支援……シンプルが故に強い陣形がもはや自然と出来上がっていた。
そこを援護するように、アルガルドが『フリーライド・メガロアビス』を用いた遊撃で遠近問わずに確実に数を削っていく。
エイパが放つ雷の魔力と感電の相乗効果も発揮することで、その殲滅速度はなかなかのもの。
(この戦いを想定して現場の積み重ねで鍛える……つくづく腹立たしいやり方だな!)
戦い方そのものは、今回初めて行うものではない。
ラス達と並行しての、違法研究所潰しやら魔物の生態変化の調査は彼らもまた担っていた。
その短期間ながら濃い経験、それらが見習い達を獅子奮迅の活躍を見せる一丁前の騎士に様変わりさせている。
イグノックスないしカルシオン流のスパルタ鍛錬法の被害者──もとい被験者ならではの成長曲線であった。
更には、随所的削りを担う人員はもう一名。
「この程度で文句を言ってるようじゃ騎士なんてやってられないんじゃない?バカラス達だったら今頃とっくに終わらせてるところよ!ジュンは寝起きなんだから、もう少し楽させてよね!」
先刻まで離宮で仮眠を取っていたジュンも、流石に寝てなどいられなかった。
とはいえ、ラス達とオルタ達は既に持ち場で待機しているので下手な合流は阻害になりかねない。
いくらセリアードを極端に慕っていても、迎撃作戦の成功を優先するだけの理性くらいならば当然ある。
結果、人員がやや不足気味の王宮内の雑兵処理班に自らを派遣することとした。
「言ったなさすらいの人形使いめ!ラスにはぜってー負けねえぞ!」
「……見事にピンポイントで煽ってるなあ、ガーク殿の守りにあっという間にキレが戻ってきたよ」
大き目の人形が黒い魔力波を浴びせたり、棍棒や鎌を手に持ちひたすら殴ったり切り刻んだりと大忙し。
更にはアルガルド同様に状況把握もするという、普通の人間ならば間違いなくリソース不足になりかねない。
が、元々複数の人形を用いたマルチタスク特化であるジュンにとってはさほどのことではない。
むしろ、この場においてはアルガルド並みかそれ以上の制圧力すら見せつけている。
辟易気味のガークを的確に煽る余裕があるのも、高い地力あってこそか。
「マドラーシュ王子殿下は昨晩からほぼずっと補充戦力の削りを行っているのでしょう?そう考えると、我々のこの仕事量はまだマシな気がしますが……それでも似た相手が続くのは気が滅入りますね」
「思いついた術の試し打ちと熟練度上げも兼ねての叩き上げとかほざいていたな……更にユフィリアの晴れ舞台も見に行っていたらしいが」
「……ジュンには偉そうに仮眠くらいしておけって言っておきながら自分はフル稼働だものねえ。あまりのバカっぷりに怒る気も失せちゃうわ」
とんでもなく不敬な言いようだが、事実が故にこの場の誰も否定のしようが無かった。
そして見事なまでに暢気な光景にも思えるが、実際この6人にはそれだけの余裕がある。
質より数を優先しているからか、見た目こそゴーストナイトや影の番人でもその力は明らかに本家のそれではない。
無論、その理由は先ほどロアムが呟いたマドラーシュの徹夜ムーブも大いにあるわけなのだが。
「むしろそれだけ無茶を為さっているならば、支えになるのが私たちの務め!そうすれば私たちも特別近衛に選出されるかもしれないでしょ!」
「そっちもラスへの対抗心剥きだしじゃないかよ……しかも俺よりも野望のスケールでかいし、人の事言えないってレベルじゃないぞ」
「まあ、流石にまだ叶わないと思いますけどね……って、行っちゃってるし!ああ突っ走ったら危ないから待ってよエイパ姉!」
想定以上に調子がいいのか、その勢いに乗じる形で進軍するエイパに止める為に負う護衛役と弟分。
さながらその様子は、マドラーシュと近衛騎士達を彷彿させるところがある。
そんな風景に苦笑を浮かべながら、時間ありと判断してアルガルドは今回初対面であるジュンの方に向き直る。
「……愚弟の人遣いの粗さには辟易していることだろう。今のうちにヤツに代わって詫びを入れておく」
「いちいち律儀にそんなこと言わなくていいわよ、第一王子サマ。アンタも結構苦労している側なんでしょ?」
「まあ……そうなるな。あの愚弟の先行っぷりには常に反抗心を覚えているところだ」
「その割にはきっちりついていくんだから、やっぱり大間違いはしないってことなんですよね。──危なっかしくはあるけど」
反発心、または対抗心の有無はそれぞれ違う。
しかし、その闘争の志すら湧き上がる情が負の方向に働くことはまずない。
常に先を行く、だからこそ憧憬を抱きながらどうギャフンと言わせるか。
アルガルドだけでなく、ラスやカルト……挙句ユフィリアすら向けるその情は、一王族に向けるには少しばかり奇妙ではある。
「……やっぱり慕われてるのね、あのバカ王子」
「マドラーシュ王子殿下はアニスフィア様譲りの人たらしっぷりに加えて引っ張り上げる何かがあるからなあ……」
「それに加え、アイツのやりたい放題はやたら人の為になる。もはやそういう星の巡りなのかもしれんな」
会ったばかりならば、アルガルドとガークの言葉に憎まれ口の一つも叩いたかもしれない。
しかし、この短いながらも行動を共にすれば嫌でもその在り方を見せつけられた。
軽口を叩きながらも雰囲気に似合わず誠実かつ律儀だったり、自分が気に入らないからという傍若無人っぷりを発揮しながらも人の為に首を突っ込んだり。
極めつけは、それだけの滅茶苦茶っぷりをきっちりと統べて調和するある種の懐の深さ。
それらを思い浮かべ、誰もいないことを確認してぽつりと呟く。
「まあ、さっきのアレを見せつけられたらそんな与太話も信じたくなるわね……実際、ジュンもちょっとくらいはそういう気にも──っ!?」
最初は本当にそんな存在なのかと当然のように疑ったが、今はその大半が氷解しているといっていい。
決定的なものを掴んではいないので確定は出来ていないが……ジュンの中では十分認めるに値する要素は揃っているのだ。
……思わず寄りかかりたくなるくらいには、と思いかけたところを何とか振り払う。
「……違う、違うわ。これはあくまでさっきの借りを返すってだけの話よ……断じてあのバカ第二王子たちに絆された、とかそういうわけじゃないんだから!私はあくまで、お姉様とロム様をお守りするって使命を果たすってだけよ!」
苦し紛れに出てきた憎まれ口も、見事なまでに取り繕い全開であった。
キュイやナマリエがいたら何を言われていたやらか。
(破天荒被害者の会、また1名人員追加だな)
どんどん人脈が混沌としていく弟の今後は、兄としてあえて考えないことにした。
というより、余計に首を突っ込んだら確実に火の粉が降り注がれるのは言うに及ばず。
この手の面倒事は、三歩くらい引いた位置で眺めるのが鉄板……これぞ紫の刃直伝の観客戦法。
アルガルドもまた、グランナイツから教わったことを早速実践していた。
というわけで、3章ラストを飾る大イベントの開幕でございます。
以前も言った通り、ストックからの書き増し放題からの話数分割増加も有り得る……というか既に発生しております。
グランサガキャラが基本大暴れではありますが、転天側もバトルはちゃんとやってるのでそこはご安心を。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)