バトル勃発はまだまだありますよ~。
というかこの辺りはこれまでにないくらいにバトル塗れです、ご留意を。
見事な満月の空の下、私たちは魔女帚で翔けていく。
普段ならばこの幻想的とすら言える光景を楽しんでいたところだろう。
当然ながら、今はそんな余裕はあるわけではない。
勿論、急いでいるとはいえ最低限のマージンはきっちりと残してはいる。
正直なところ、そんなの関係なく飛ばしたいところだが……それで制御に失敗したら元も子もない。
「飛行魔法って手もあったけど……最悪の状況を考えたらね」
「同じ敷地内とはいえ、その時間でどれだけ魔力を費やされるか……後のことを考えればこちらが正解でしょう」
後のこと……まあ言うまでもないが、戦闘が混ざるのは確実だろう。
先ほどの会場で現れた、何とも形容のし難い異形。
モーリッツの影武者から変化したあの存在ですら、本命ではない。
それにも関わらず、少なく見積もったとしてもドラゴンと同等の存在感を醸し出していた。
中ボスであろう1体ですらアレほどとなれば……今回の騒ぎの主導であるモーリッツ本人、ないしその連れがそれ以上じゃないって楽観視は自殺行為だろう。
……正直、あの異形以上なんてまるで想像もつかないんだけども。
(それにしても、もはや未曽有と言える事態なのに……マッドくんは事前に予想を立てた上に手勢を率いて状況をきっちりコントロールする徹底っぷり)
こんな滅茶苦茶な奇襲を前にすれば、普通は為すがままにされるのが関の山。
そこすらもきっちりと目算を立てた上で、オルタやキュイという独自戦力を事前に寄越すという入念っぷり。
更には、彼らの言いようからして他にもコントロール下にある戦闘が複数あるとされる。
少なくとも、他に3人いるであろう特別近衛騎士候補もどこかに混ざっているはず。
……かなり前から兆候を嗅ぎ取って行動していたのは間違いない。
しかも、ラインヒルト顧問が裏で動いてるってティルティも呟いてたし……。
そうなると、デイジーやイグノックスなどグランナイツも関わっている可能性は高い。
魔法省のどの辺りが関わっているかは分からないけど……これは、魔法至上主義とマッドくん率いる勢力の内戦だ。
講演会の隙を突かれた、ただそれだけで行き当たりばったりになる私は……完全に置いてけぼりだ。
(結局、また先を行かれてっ……何でいつもいつもこうなっちゃうのさ!)
これが普通の血の繋がった姉と弟ならば、姉としてただドヤ顔をして誉れに思えばいい。
でも私たちは……否、少なくとも私は普通ではないのだ。
あちらもおかしな言動があったりするが、それ以外に似た兆候はまるで感じられない。
なのに、常に先んじては後から引っ張り上げて……。
その後に陰に隠れて有耶無耶にしてしまうのが唯一の救いとも言えたんだけども。
「──そろそろ離宮が見えてきます。アニス様、余計な雑念は一端捨て置いてください」
「……雑念、か。マッドくんがこの騒動の対処してるっていうのに、ユフィは心配じゃないの?」
後ろから声を掛けられたので、何となく質問を返してみた。
本来、この事態はユフィだって想定外のはずなのだ。
でも、自他ともにマッドくんウォッチャーと化した今なら……この状況すら想定していてもおかしくはない。
それでも無茶苦茶なことに足を突っ込んでるわけで……これまで通り怒ってるのか気になったから聞いてしまった。
ふと一瞬後ろを振り返ってみると……その顔は困った風が混じった笑み、要するに苦笑だ。
「確かに、これまでと違って王宮全体……後には国全体も巻き込みかねない案件ではありますが……それでもいつも通りの範疇と納得づくですよ」
「あれ、結構冷静だった……これまた意外だ」
「むしろ何かあるんじゃないかと予想もしていましたから──命がけでとんでもない無茶をやらかしていないかは心配ですけれど」
うん、その理解の仕方は完全にあっち譲りだよ。
何度目か分からないけど、もうどこまで沼に浸かっては染まりきってるか分かったものじゃない。
「研究家見習いは伊達じゃないって?それでも心配はきっちりするんだね」
「私自身、もう傍観するだけでいることにも我慢ならなくなってきただけです。──それに、これだけやらかしても一応友人ですから」
うわあ……完全にロックオンされてますよねこれ。
一応友人って辺りも、何だかそろそろ匂わせ状態になってきてるねー。
ただ、雑念は雑念でも適度な脳内麻薬に繋がっている……いい刺激とはこのことを言うのだろうか。
──助手がこうなっているならば、私もその方向を向いておかないと色々と名折れってものだ。
さて、そろそろ降下の準備をしておかないと──と思った矢先だった。
空の歓迎会が唐突に催されたのは。
「随分と手厚い歓迎ですね……腐っても伯爵子息というべきでしょうか!」
本来ならばこの王城敷地内であってはならない、歪でおぞましい気配。
それを真っ先に感じ取るや否や、ユフィは風属性魔力を手刀と共に魔力刃として放つ。
当たり前のように無詠唱で放たれる『ウィンドカッター』、もはや不意打ち以外の何物でもない。
まるで羽虫を払うが如く、私たちを取り囲もうとしていた3体ほどが為す術もなく両断されては落下していった。
えげつないと思いながらも、その哀しい姿を目視するが……これまたまるで見覚えが無い魔物であった。
「これ、魔物図鑑のページがかなり更新されちゃうんじゃないかな!?」
「お気持ちは察するところですが、ひとまずアニス様は魔女帚の制御に集中を!この程度ならば私一人でも道は作れます!」
一つ眼で羽だけ生やした魔物……?いや、もういっそ悪魔と称するべきなのか?
羽やら色やらは各々異なる面も多いが、基本的に未確認魔物であることは変わりない。
そんなのが雁首揃えてやってくるのだから、さながら悪魔版の百鬼夜行ってやつだろうねえ……。
とはいえ、1体1体は大したことないからここは助手の言う通りにしておこう。
(それにしても、既に馴染ませてる辺りは流石というべきなのかな?)
一体どんな過程を経たのかは分からないが……そもそもユフィ自身はまだ顕魂術を得てから日が浅いはずだ。
マッドくん曰く、魔法……というより精霊と親和性が元々高い魔法使いほど移行が難しいという傾向にある。
魔法においては精霊の申し子とまで言われるほどの天才令嬢……それが、精霊の加護の輪から離反しつつあるのは何とも皮肉なことか。
恐らく、独自で行っていた発動速度を早める地道な鍛錬が花開いた形なのだろうけど。
そして、その人間らしい足掻きを奥底から引きずり上げたのは誰でもなく……。
──ダメだ、どう足掻いても影がチラつく辺り本当に重症かもしれない。
(でも、今はせめてやることやらないと……!それこそ私がこの場にいる意味がなくなっちゃうし!)
居合わせてしまったとはいえ、私だって動けるから動いているのだ。
……そうすることでしか、証明できないのだから。
下らないことで、こんなことで足を止めてはいけない……とにかく今は動け!
火属性であしらわれた鞭が3体の一つ眼の魔物を一気に焼き払うと同時に、私は地上への最短距離を描いた。
悪魔染みた魔物が邪魔をしようにも、そのスピードを捕らえることは到底敵わない。
これまでの学習の成果なのか、ユフィが器用に風の防壁を作っているのでこれくらいのスピードならば問題なし……と思ったところに新手がやってくる。
「燃えてるコウモリって……生憎木の盾なんか持ってないよ!」
「これまた新種ですが、対処が楽なのは救いですね!」
なんて言いながら防壁を維持しながら今度は水魔力で鞭を作り出すユフィ。
先端に圧縮したであろう魔力が集中させては速度を引き上げ、再現した形状から破壊力につなげているようだね。
……それってアルくんの十八番だよねえ、確か。
本当になりふり構わずというか。
あちらは本当にさりげなくやるから、練度って意味ではまだまだなんだろうけど……。
為すすべもなく新手は鎮火と共に薙ぎ払われ、追っ手を振り切る形となった。
余裕を持って、私たちは姿勢を正しながら地上に降り立つ。
……が、結局こちらも空の上と大差ない状況だった。
「ごめんユフィ……これでも着地点は考えたんだけどなあ」
「この密集地帯を突破する手間を省けただけ良しとしましょう」
優秀な助手の冷静なフォローが染み渡るねえ。
……上空がああなっていたわけだから、地上がどうなっているかはもはや簡単に想像はついていたんだけどさ。
数はそれなりでしかないが、さっきの会場で見たような魔物がそれなりの数湧いている状態だ。
「まずはどちらかと合流ですね。あちこちに焼け焦げた後に火属性魔力……イリアは近そうですが」
「……いや、レイニ特有の魔力が別のところから感じられる。私はそっちに行くから、ユフィは別行動でイリアと合流して状況整理をお願い!」
「え、アニス様流石に単騎で突っ込むのは──くっ、そうも言ってられませんか!」
あの影武者の言った通りならば、狙いはヴァンパイアの魔石を手に入れてその力でこの国を掌握すること。
そうなれば、この場に赴いて真っ先に考えるのはイリアとの分断だ。
ならばとこちらもきっちり二手に分かれて、より火急に当たる方を私が受け持つという判断を下した。
上空の魔物よりは若干強いが、それでもユフィならば問題はないだろう。
事後承諾という形になってしまうが、事は急を要するから仕方ない。
「勿論、こっちでも邪魔者はいるわけなんだろうけどさ!」
ようやく出番となったマナ・ブレイドを両手に握り、立ちはだかるアンデット型の魔物に斬りかかる。
動き自体はそこまで早いわけではない。
見かけによらずパワータイプなのか、少し重めに得物を振るってきたところをきっちり避け、魔力刃をその身に叩きつけてやった。
普通ならばこれで終わりで、さあ次と行くところだが……
「……軽く一撃で、というほど軟じゃないか」
斬撃自体は確かに入っているが、致命打からは明らかに遠い。
この時点で、黒の森を筆頭とした王国内の並の魔物以上と見て間違いなかった。
──こんな時でなければ、素材的な意味で未知の魔物と出会えたことを喜んだのかもしれない。
「でもタイミング悪すぎなんだよねえ……しかも集まってきたし」
同種が寄って集ってきては、一目散にと私に向けて同じ見た目の得物を向けてくる。
そのタイミングはまるで読めず、一つ一つが鈍重故に各々の絶妙なズレが逆に怖い。
見切りをしくって、マナ・ブレイドで受けるなんて自体になったら……一発でおじゃんになること請け合い。
まだ到着したばかりでそれは流石にまずいのは言うまでもなくだ。
ユフィがいれば、火属性辺りで適当に焼いてくれたんだろうが……ここで背中を向けるわけには行かない。
「時間が無いから一気に行かせてもらうよ……
一瞬だけ鍔迫り合いに持っていかせてから、一気に二刀で弾いてやる。
虚を突かれたからか、アンデットは周囲を巻き込みながらよろけたので一瞬だけフリーの状態に持っていくことは出来た。
その隙を遠慮なく刻印に魔力を叩き込むために利用させてもらう。
アンデットだからか、私に起きた変化にも特に何の感慨も示さずに再度突っ込んでくるが……。
「こちとら色々モヤモヤも抱えてるんだ、邪魔するんだったら容赦しないからね!」
その宣言通り、最も近くのアンデットを力任せに一刀両断にしてやる。
確かにそこそこ堅いんだろうけども、それでも私の中にいるドラゴンの敵ではないようだ。
アルくんとの決闘ではむしろフラストレーションが溜まった結果でもあったわけだから、その鬱憤晴らしも兼ねていたりも。
とはいえ、魔力を無駄に消耗したくはないからとにかく一撃必殺を心がけなければならない。
まとめて殲滅したいが、ブレスは論外……あくまで爪を模した剣戟だけで仕留めていく。
数にして10体ほど斬り捨てた辺りで、視界がきっちりと開けてきた。
その先には、確かに人影が2つある……って、ええ!?
「まさかもう鬼手を用いるとは、我ながら読みが甘かったようだ。せっかくだからと少々遊び過ぎましたね」
「な、何とか持たせてみせましたよ……アニス、様……!」
そこにいたのは、今回のクーデター首謀者であろうモーリッツと息を切らしているレイニだ。
既に魔石を抜き取られたとか、その手の最悪の事態は起きていなかったことには素直に安堵の息を吐く。
……でもね、どうしても突っ込みたいことが一つあるんだ。
レイニ、確か貴女ってこれまで魔法が苦手だったから戦闘なんて無理だって言ってなかったっけ……?
──何で、私が知るヴァンパイアのような爪や翼を魔力で生成して戦っているのかな?
「とりあえず下がってて。コイツは私だけでも……」
「いえ、私もまだやれます。……一緒に戦わせてください」
「でも、明らかに息も上がってるのに……!?」
「そもそもこれは私が、発端でもあるんです……もう、これまでのように、無力であることを盾に逃げ惑うなんて嫌なんです……!」
これまでのレイニからはまるで想像もつかない顔つきだった。
慣れない戦闘で息も絶え絶えのはずなのに……。
その戦意はより滾りを見せていて、むしろ私が気圧されるほどだ。
一体何があったのか……それを問おうとする前に、レイニはある物を私に見せてきた。
全体的に血のような赤で彩られた珠……それが何なのか、すぐに理解した。
「彫魂石、だよねそれ……ってことは、まさかレイニも」
「今の私では、大したことは出来ないかもしれない。それでも、ただ無力を嘆くよりは何か出来れば、何かを為さなければ……そう思っていたら、こんな色になっていました」
「──そういうことでしたか。やれやれ、ヴァンパイアという誇り高き存在である君までそんな呪いに縋るとは……少々ばかり失望しましたよ」
好き放題言ってくれるねこの精霊狂信者め。
──それはさておき、想定よりは遥かにマシだったとはいえ状況は依然としてよろしくない。
どれほどの時間、どれだけの出力で戦っていたかは知らないが……今のレイニはかなり疲労の色が強い。
戦力になってくれるかと言われると、正直微妙といったところか。
それでも今の私は
少なくとも、モーリッツ自身の力はあの時の新種ドラゴンよりは格下なのは間違いなさそうだ。
何か隠し玉を持っていないとも限らないし、油断するつもりはないが……一瞬で負けることはないはずだ。
「とりあえず、人の離宮に土足で入り込むような人間は貴族失格。それを分からせてあげようじゃない!」
「素晴らしき叡智を授かれなかった、哀れな烙印持ちに言われたところでそよ風にもなりはしませんよ!」
あーはいはい知ってます、今更過ぎるよ!
それを哀れに思われる理由はどこにもないし、毎度の如く上からですっごいムカつく。
せっかくだから、その伸び切った鼻を一発へし折ってやりましょうかね!
講演会会場ではオルタ率いる別動隊がアニスフィアとユフィリアを引き離しつつクーデター勢主戦力の1体と交戦。
王宮内部から制圧を狙う魔物及びその召喚者はアルガルドとジュンを主とした顔ぶれで食い止める。
残る人員は近衛騎士団ではラス、ナマリエ、カルト……そして旗印であるマドラーシュとその専属ぶっ飛び従者であるセラとプリシラ。
その内マドラーシュはあちこちからの証言で細かい戦力潰しに尽力していると判明している。
やってることは完全に臨機応変の遊撃要員の少数精鋭ムーブだが、これこそが彼の本領と言えるだろう。
確かに手が足りない部分は他者に頼る部分もあるが、決して寄りかかりはしない。
自身の行動が発端となった流れ、その延長線上でしかないのならば……そこに手を貸す者の負担はきっちり減らさねばならない。
無茶振りばかり向けているように思われる破天荒だが、その内情は部下のマネジメントをきっちりと行う理想的な上司と言えよう。
なお、その分の皺寄せを自分に向けてしまう辺りが本末転倒……まさにジュンが呆れていた通りの側面も兼ねているわけだが。
それが分かっているからこそ、彼らもまた獅子奮迅の猛攻を見せていたりもした。
「おい、本丸はあっちなんじゃねえのか!?何でデーモン祭なんてのが催されてやがる!」
「こっちはこっちで魔石コレクションやら禁書やら、知る人ぞ知るお宝満載だからじゃない?貴族崩れには理解できるとは思えないけど」
「そっちはついでで、恐らくはアニスフィア様側の離宮へ向かう別働隊の役割が主……予想ドンピシャだね」
ラス、ナマリエ、カルトの3人はマドラーシュの離宮で既に交戦してそれなりにといったところ。
恐らく交戦自体は2番目に早く、その開戦時間はオルタ達が割り込むかどうかといった辺りまで遡ることとなる。
カルトのデーモン祭という比喩はまさにそのままで、スタンピードや遊び場でセラ、マドラーシュが殲滅した四足歩行のデーモン種が列挙して湧いては襲い来る地獄絵図。
更に言うならば、影の番人や闇属性のピルグリムなどのカンバスに生息する魔物まで混ざっているなんでもありのお祭り騒ぎっぷりだ。
物量的な不利は言うまでもない。
本来ならばたった3人で挑むような酔狂はまず冒せないであろうが……そこはマドラーシュの認めた面々ならでは。
ウガルーやグリフォンという大物と相対出来た彼らだからこそできる無茶苦茶な構図。
むしり実際の戦況は3人がやや優勢だ。
──カルトが愚痴を零したりナマリエとラスが逐一指摘する程度には余裕が見られるくらいだ。
故に、祭の熱狂の間隙を縫うような狙撃にも的確な対応が出来ていた。
「ああもう、指揮官っていうのは何でこうおとなしく出来ないのよ!どっしり構えてなさいよもう!」
攻撃の気配を察知しての、攻撃ではなく妨害を主とした大まかな狙撃。
一瞬だけ合わせた照準の先にいるのは、明らかに異質な悪魔であった。
僅かに浮遊していて、その顔は縦に二つの眼を備えた姿はまさに異形と言える。
見るからに一個小隊のちょっとした親玉という風で、便宜上『デーモンコマンド』とラスが名付けていた。
その様に相応しい魔力が滲み出ており、現に時折放ってくる攻撃もなかなかに凶悪だ。
「範囲内の物を魔力だけで浮かせるだなんてとんでもねえ力技を持ってやがる。魔石ふんだくれば、アイツもさぞ喜ぶだろうな!」
「耐久力が他の雑兵と差が無いのが救いかな。そこを補うのが雑魚を肉壁にした上での不意打ち……面倒だけど、指針は分かりやすい」
デーモンコマンドの持つ主力魔法、その一つは範囲内重力操作。
一時的に浮かせては叩きつけるという、至って単純な効能でしかないが……初見殺しとしては凶悪である。
困った弟分でありながらも目標である破天荒から叩き込まれている魔力操作、その副産物が無ければ間違いなく1回は貰う事請け合いだ。
ナマリエは自身の役割の都合、その感覚を特に鋭くしているが為に対応できたわけだが。
「雑魚に構ってる隙を突いてくる厭味っぽさも似てやがるってか?逆に言えば、アイツも悪魔っぽいってことになっちまうわけか」
「カルト、どこに耳があるか分からないんだ。あまり口に出さない方がいいと思うよ?同感だけどね……」
「お前もそう思ってるんだったら同罪だろうがよ幼馴染。そこは上手いこと口添え頼むぞ?」
ラスがハイアベレージの火力と防御で雑兵デーモンの猛攻を捌いたり、潰し切ったり。
カルトは数の暴力に頼る相手の死角から的確に数を減らす。
そんな前衛2名を纏めて捕捉せんとするデーモンコマンドの行動の妨害を、支援の片手間でナマリエが遂行する。
デーモンコマンド自体の処理はそれこそ3人の内手が空いた者が行う、という臨機応変っぷりまで発揮している。
お陰で割合を適宜変えた小隊が続々とやってくる絵は、相手側にとっての地獄絵図に様変わりしていた。
本人たちは何の気なしにやっている辺りがある種の凄みになっている辺りも何とも言えないところか。
マドラーシュによる日頃の無茶振りや課題投げかけは、確実にラス達を非凡なレベルに押し上げているとも言える。
「──どうやら、その必要はないみたいよ?」
そろそろ両手で数え切るほどの小隊を片付けようとするところで、各々の肌を貫かんとする鋭敏な気配も悟った。
静謐ながらもその場を制圧せんとばかりの強烈な魔力……。
人間の身でこのような魔力の出し方を出来る人物など、彼らの知る中ではそう多いものではない。
そして、その気配こそが状況の一時収束……言うなれば、ルーチンワークの終わりを告げるものでもあった。
「そうと決まれば、俺たちもさっさと終わらせないとか……よし」
「ったく、相変わらずアイツが来ただけでやる気漲らせるんだな?」
「とか言いながら魔力刃濃くしちゃって、アンタも人の事言えないでしょうに……」
今もなお迸るえげつない魔力は彼らにとって起爆剤以外のなにものでもない。
これで一旦終わりだと分かってしまえば、もう3人からは遠慮とか配慮などの類は取っ払われるのは自然なこと。
その変化に気付かず、デーモンや影の番人はただただ愚直に群がってくる。
「はいはーい、ちょっとおとなしくしてなさいな!」
しかし、その分かりやすい進行は即座に足止めを貰うこととなった。
ナマリエが発したのは、両の手に握られている拳銃であった。
単騎の行動を想定した、中距離向けのサブウェポンがここで火を噴く。
これまでは狙撃銃による牽制及び針の穴を通す一撃必殺が基本のナマリエとしては、ややイメージが異なるところ。
──だが、顕魂術の併用により牽制や妨害と言う意味ではより鋭利になってるとすら言える。
現に、足元を中心に掃射された怒涛の弾幕をモロに受けてデーモン達は完全に動けずじまいとなっていた。
「斬り込めリーダー!纏めるのは任せとけ!」
「そういうことなら遠慮なく行くよ!」
土属性魔力を足がかりにした加速、足止めされた集団に割って入る。
そこから両手に構える剣を大きく横薙ぎに振るうことで、運動量をそのまま広範囲斬撃に変えた。
レオンの得意とする『シャインスプラッシュ』と似た動作だが、こちらは加速と破壊力を双方比例させる手法だ。
『スティンガー』の薙ぎ払い版、さながら『ストリーク』とでもいうべきか。
火属性魔力刃も同時に展開することが功を喫して、集団内部を纏めて態勢を崩させるところまで至った。
そこに泣きっ面に蜂が如く、カルトが放った闇属性の鎖による束縛効果が発生する。
少ない手数による集団制圧をあっさり為したことで手空きになったが、カルトはそこまで怠け者ではない。
余裕が出来たと判断しては、置き土産がてらデーモンコマンドの方に軽めの一撃を入れておく。
リーダーが一気に殲滅を行う際の妨げにならないよう、横槍を防ぎながら自身も安全圏に置いていた。
「よし、これで俺は安心して点火出来るってわけさ!」
態勢が崩れたところに強固な鎖の束縛、雑兵たちは暫く無為に藻掻き散らす以外何も出来はしない。
そんな無様な光景を尻目に、ラスは悠々と集団の真ん中に再度潜り込んでは得物を突き刺す。
火属性と土属性をきっちり半々の割合で地面に放つと、爆音と共にラスを中心とした火柱が起こる。
発生時の強烈な物理的エネルギー、更に強化された土属性と親和する形で地面に意図的な魔力領域を生み出した際の衝撃で一体残らず転倒させる。
挙句、その領域はきっちり範囲内の悪魔たちを燃やし尽くすという完全封殺という結果を見せつける。
イグノックスから受け継がれた『ヴォルカニックフィールド』に新たな効果を付与した、今やラスだけの術に昇華させていた。
隙の多さはそのままだが、長所である制圧力を伸ばすことで欠点から見てお釣りを来る強化と言えるか。
「■■■──!」
──そして、その雑兵を倒された隙を突くのがデーモンコマンドという種の魔物である。
重力操作をしている暇は無いので、その禍々しい目をラスの方に向ける。
ヴァンパイアが持つとされる魔眼──麻痺の効果を持つ別物ではある。
魅了に比べれば幾分マシな効果に思えるが、一瞬を争う戦場においては手間が減るこちらの方が凶悪とすら言える。
比較的大技に当たる術を放ったラスは、狙われたら万事休す……。
「片手間でやるってんなら、バカ王子みたいにきっちり状況把握してからやるんだな!」
──ということは、この捻くれエルフが想定していないはずがなかった。
軽口染みた指摘は尤もだが、ある意味では確信犯でもある。
何せデーモンコマンドの向く先はラス……に見せかけての影法師、カルトの置き土産だったのだから。
いきなりの攻勢から相手の妨害手段を限定させ、更に時間を取らせないことがデコイ効果をより高める。
ナマリエの二丁拳銃掃射による妨害の時点でここまでの流れを確定させていたのだから、この2名の即興能力もかなりのものである。
盛大に隙を晒したデーモンコマンドは、その後3人がかりの攻撃で美味しく料理されるのは当然の帰結であった。
「おーう我が家の警備お疲れさん。完全防衛ボーナスはいるか?」
そこにちょうどよく姿を現したのは、黒髪オールバックに黒を基調とした外套を纏う男子。
言うまでもなく、この3人の主と言える存在──『無慈悲な主役』スタイルのマドラーシュである。
王城内で発生している変則的戦の防衛側大将でもあるはずが、この時に限っては見事にその片鱗が見受けられなかった。
「つうかお前、ここまで一睡もせずにぶっ通しだろ?ボーナスだ何だ言う前に自分を労われよ」
「こういう長丁場の経験もカルリッツ父さんやデイジー師匠から叩き込まれてんだ、むしろいい復習だね」
「……深夜テンションって言うには随分自然なノリの良さね。講演会で何かあったのかしら」
それは本当にふとした、または何の気なしな呟きでしかなかった。
しかし、ほんの一瞬だけ破天荒は固まった。
本当に僅かな時間だったが、3人揃ってそこを見逃すなんて都合のいいことはまるでない。
「さて、何のことやらか。んじゃ、俺はもうちょい巡回させてもらおうかね……イグノックス兄さんたちの負担も減らしてやらねえとだからな」
「え、それなら俺達が行けば……ってもういないし」
それだけ言うと、マドラーシュはそそくさと高速で去って行った。
黙って見送った3人の思考は、当然のようにものの見事一致している。
『あ、誤魔化し切れなくて逃げた』……このような感じで。
「……セラ、これはそういうことでいいのよね?」
「はい。具体的に言うならば、ユフィリア様がとても愉快な爆弾を投下してくださり……それに看過されてあんな尊み溢れるテンションになっておられます」
いつの間にか背後にいた従者二人だが、もはや日常風景。
マドラーシュと共に巡回を行っていたのだから、驚く理由が無いと言うこともあるのだが。
「マッド、何でそこだけ分かりやすい反応しちゃうのさ……」
「ああいった年相応なご尊顔をお見せ下さるのが素晴らしいのですよ。ふふ、進化したユフィリア様の猛攻が今から楽しみでございますね」
「……従者としてどうかと思うが、同意できなくはねえな」
ひとまず脅威が去ったら、あっという間に元通り。
この余裕っぷりは、静かに戦況を崩していくことを相手勢力はまだ知る由もなかった。
というわけで章ボスモーリッツ君登場と、姉上と接敵です。
原作ではちょい暗躍程度だったのがまさかの大出世、まあ本来のボスが味方についてるから仕方なし。
その分大幅強化を施しておりますので、そこはご安心を(なんでや
そしてレイニが早くも戦闘要員化、これはまあ……師匠が師匠なので。
こちらも独自に強化していきたいなあと……せっかくの吸血鬼キャラだし。
あ、そして空中戦でしれっと出てきた燃えてる蝙蝠はDMC5のピロバットです。
初見でデクの盾を燃やす蝙蝠とは流石に違いますよ?
そしてグランサガ側はしれっとラスがDMCスキル、ネロの汎用技を使っております。
結構パワータイプでもあるし、レッドクイーン系統の技を再現させたらいい感じかなーってことで急遽こうしたり。
バスターは流石に無しですが、……むしろバルログとかイフリート系列再現の徒手空拳もやりだすのはありかも?
他キャラも別作品技を上手く取り込んでいきたいですね、それこそ私のやり方ですので。
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)