転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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じゃんじゃん行きますバトルシーン、原作の量を超える勢いで。
ジャンルからしてガラリと変わっているところをこれでもかで突貫します。


79. 過ぎたる狂信は魔を生み出す

 

アニス様はいち早くレイニの元へ向かってしまった。

何かに駆られるような雰囲気も見受けられたので、どうにも心配ですが……。

ならばと私は、もう一人の要救助者……イリアの方へ向かうこととした。

ここで後ろ髪に引かれて後手に回るなど、一番あってはならないことだから。

 

「合流の為にも、最短を描く必要がありますね……」

 

駆け出すとともに無詠唱で放つのは、多数の水弾(ウォーターバレット)

多数出現している魔物は、アニス様が言うにはアンデッド……亡者の類らしい。

当然見たことなどない魔物だが……先ほどの講演会場での様子を見る限り、特別何かを備えている風ではなかった。

しかし、身の丈にあってない大剣を片手で担っている時点で力があることだけは明白ではある。

こちらから接近の素振りを見せると、ある程度の骸骨騎士から視線を向けられた。

自信があるのか、ただの本能なのかは定かではありませんが……。

 

「誰がいつ、馬鹿正直に斬り合いをすると口にしたのでしょうか」

 

いくら剣術の心得が多少あるとはいえ、純粋な腕力差は覆しようがない。

顕魂術に筋力強化が出来るようなものがあれば話は別ですが……まあ、無いものねだりはしても仕方ない。

しかし、戦場では何も力比べだけが物差しではないのだ。

私は早めに右腕一本でアルカンシェルを振りかざし……空いた左で風属性魔力を込める。

 

「おとなしくしていてください」

 

アルカンシェルの刀身には、やや拡張気味に氷属性の魔力を込めている。

少々手が悴みそうですが……幸い、要救助者の火属性魔力の残滓で冷たさは緩和されていた。

骸骨騎士たちの接近の前に振るうと共に、冷気を込めた魔力は斬撃の軌道をそのまま描いては鼻垂れていく。

そこに事前に溜めておいた風属性魔力を手刀(ウィンドカッター)として放ち、追い風とした。

少な目の手間で冷風をいくつも作り上げ……結果、骸骨騎士たちの身体は氷結に蝕まれることとなった。

 

「イリア、続いて下さい!」

「ご助力感謝いたします、ユフィリア様!『ファイアアロー』!」

 

こちらの存在を感知すると共に、即座に意図を汲んでは指針を変更してくれたようですね。

あのアニス様に長いこと仕えるだけあり、この手の判断能力についても流石はイリアというべきでしょうか。

ぶっ飛び侍女に慣れている分、理知的というだけで感動してしまうほどですね。

無論私も突破の補助をするだけでなく、的確に数を減らすようにしなければ。

 

「残った水属性魔力も余すことなく、ですね。──『ライトニングピアス』!」

 

このために水属性付与(ウォーターバレット)は過剰に施しておいたのだ。

イリアが放つ炎の矢に加え、私が放つのは雷属性を纏ったアルカンシェルの突き。

レイピアの刀身、その延長線上で雷を放ち刺突と共に貫く。

水浸しになっているからこそ、電撃の通りがいい……単純な理屈である。

イメージはケルビム……いえ、マッド様が使うとされる闇属性の槍。

見たことはないが、クリスティーナとエリオからの伝聞で知り……早速拝借することとなりました。

当人が知ったら何か言われそうですが……まあ、魔石からイメージを借りている人からは言われたくないで通しておきましょう。

──なんて馬鹿なことを考えている内に、要救助者と合流することが叶うこととなった。

 

「遅くなってしまい申し訳ありません」

「いえ、想定以上に早く戻ってきてくださり大変助かりました。──どうやら、姫様はあちらに向かったようですね」

 

あれだけの数であったが、イリア自身はさほど傷は負っていないようだ。

最悪も想定できたから、まあ一旦は安堵の息を吐いても良いでしょうか。

アニス様がこの場にいない理由を即座に察したようですが……。

 

「……独断専行を止められなかった時点で、助手としては失格ですね」

「ここまでの経緯を聞いた限りでは、ユフィリア様はきっちり舵取りをなさっていたかと。ここは悪い結果ではなかった、ということにするしかないでしょう」

「そう言って頂ければ、私も少しは気が楽になりますが……」

 

まさに似た場面に幾度も出くわしたイリアだからこそ、今となっては有難い冷静さですね。

講演会場ではオルタやセリアードのお陰で何とか踏み止まらせつつ、彼らの意志を尊重することは叶いましたが……。

勿論、レイニの身が心配であるのは私とて同じこと。

しかし、情だけで動いては底無し沼に嵌りかねない。

拙いながらも私の感性は理も兼ねて動けと、警鐘が鳴りっぱなしだ。

……今回のクーデターは明らかに生半可なものではない。

兵士に扮した魔物を手配したり、ほぼ見切れなかった罠型の魔法でアニス様が囚われかけたり。

挙句の果てには、鬼札であるはずのキーストーンを影武者に投入しているときている。

これだけのことが恣意的に為されているのだから、せめて半歩は引かなければ足元を掬われかねない。

この間の異常なスタンピードとは、それこそ桁が違う。

まあ、今はそんな細かいことよりも──

 

「……私が先行します。薄いところを一気に突破しましょう」

 

静かにイリアが頷くのを確認するや、私はすぐに駆け出す。

無常にも時は待ってくれない──こうして会話している間にも、魔物はゆっくりでも確実に接近している。

基本は顕魂術で牽制を行ったり下地を作ったり。

余裕があれば、アルカンシェルによる魔力刃で確実にトドメを刺していく。

背後からはイリアの『ファイアアロー』を筆頭とした火属性の援護射撃。

量より質、一発一発が正確で私が傷を与えては確実に1体1体を土に還していた。

 

「いっそ、これを機に私も新たに何かを習得するべきでしょうか……」

「これからも何があるかわかったものでは無いですからね、備えておくのも手かと」

「……ユフィリア様を見ていると、本当にそんな気がしてなりませんね」

「どういう意味ですかそれは……っと、雑談ばかりはよろしくないですね!」

 

出てくる魔物は軒並み講演会場で見た、アニス様がアンデッド型と称していたものが大半だ。

その中に二足歩行の、見るからに汎用的な悪魔の見た目な存在もいるが……私にとってはそこまで対処法は変わらない。

それにしても、顕魂術と魔剣の併用はなかなかに相性がいいものだ。

元々は魔法であったところを、よりスムーズに魔力とイメージの伝達が出来る顕魂術に変えられたお陰で魔剣の維持がより容易になった。

そして、元々魔法で扱っていたものをそのまま……いえ、より本来のイメージに近いものを扱えるようになるのは大きい。

『祈り』や『信仰』という余計な成分が無くすことさえ出来れば、間違いなく手足のように扱えるのはこちらの方なのだから。

お陰で、相手を倒すまでの道筋がより鮮明に描けるようになった。

 

(光属性のイメージとしての実例がオルタ、というところが少々ばかり癪ですけどね)

 

少しだけ苦みを味わいながら、アルカンシェルに光属性を纏わせてアンデット型の魔物を一突きで沈める。

レイピアとして突き出す直前に魔力刃……というよりほぼ魔力槍みたいに纏わせ、より確実に貫通するイメージも持たせてだ。

本来の魔法ならば光属性は攻撃ではなく回復という趣が強い。

こればかりは魔法に対する信仰や祈りとは異なる領域で、そう簡単に矯正できるものではなかった。

そこに丁度良く、光属性でアンデットを仕留めるオルタの姿を見て……きっかけを掴むこととなったわけです。

このやり方がドンピシャリと嵌り、ここまで逃さず一撃必殺のみで来ている。

イリアの放つ火属性魔法もそこそこ相性が良さげだが、それ以上に光属性は相性抜群のようだ。

ちなみに、光属性で殲滅と言えばあの時のクロエも当て嵌まるのですが……。

あれはあまりにやりたい放題で、まるで参考に出来ません。

……まあ、流石はあのぶっ飛びといったところなのでしょうけど。

 

「そういえば、別方向からレイニの魔力も感じたとアニス様は仰っていましたが……もしかしなくても」

「……そういうことですね。正直、私もあそこまで仕込んでいるとは

 

まさかレイニにまで仕込みを入れるとは……やりたい放題にも程があるでしょう。

妙に精力的だなとは思っていましたが、まさかそんな裏があったとは。

……後でお説教する事柄が一つ増えてしまいましたね。

 

「恐らくティルティ様も一枚噛んでいるのでしょう。凝り性を発揮するところが姫様とまるで異なります故、反応に困ってしまいますね」

「……私にとってはもはやいつものことになってしまうのですが、それにしたってサプライズが過ぎるでしょう……何やっているのですかマッド様は」

 

アニス様の凝り性もどこか分からないところもありますが、まあ芸術家のようなものだと納得出来たりもする。

そちらと比較すると……得体が知れなかったり、えげつなかったり、それでいてただの悪戯好きにも見えてくるからとにかく掴みどころが見えづらい。

恐らくティルティはそういうところも面白いと思って共犯関係を続けてきたのでしょうね……。

 

「っと、言ってる内にまた団体様のようですね。ちょっと思いついたので、試しがてら殲滅します」

「ぶっつけ本番でそのようなことを言いだす辺りは、ユフィリア様もやはり染まっていますね……別の意味で重症ではないかと」

「……どういう意味ですか、それ」

 

と言っても苦笑ばかりで答えてはくれないでしょうけど。

それはさておき、実際目前にはもう見飽きてきた魔物たちが一挙に向かってきている。

無論、これまで通りの牽制から1体1体潰すのでも構わないのですが……。

せっかく顕魂術の晴れ舞台でもあるこの場、少々ばかり趣向を変えたくなってしまいまして。

 

「大地の掌よ、眼前の敵を握り封ぜよ。『アースハンド』!」

 

アルカンシェルを地面に突き刺し、イメージと共に浮かんだ術名を唱える。

初めて扱うものだからこそ、念には念を入れてのことだ。

詠唱通り、私自身の魔力が地面を掌に模らせては1体1体の魔物を握り締めていく。

5本の指はそれぞれが魔物の全長よりもやや高いものに調整しているし、土属性の魔力で強固にしてあるからそうそう突破は出来ない。

ここまで数多く屠って来たので、どれほどの強度ならば持ち応えられるかも当然計算づくだ。

 

「狙い通りですね。では、後は一斉に……『フラッシュファイア』!」

 

魔法を使うならば、この間の時のように『エクスプロージョン』が妥当なところだろう。

しかし、それでは少々ばかり威力過多で魔力消耗も粗め。

その練り直しの際に、光属性魔力を混合させてしまうことも思いついた。

さながら小規模の太陽をモチーフとした魔力球を中心として、熱と光が放たれる。

正直、咄嗟の思い付きだったのでそこまでの威力は期待していなかったのですが……望外の結果となったようで。

 

「ちょっとした太陽光と熱風をイメージしたのですが、それがアンデット特効という形になった……といったところでしょうか」

「……精霊に頼らないという言葉を額縁通りに受け取ってはいけない、まさにそう称する他ありませんね」

 

その感想については、正直同意するところしかありませんね。

精霊に魔力とイメージを投げかけているだけでは、到底行き着くことが出来ない地平であるのは間違いない。

それは言うほど簡単なことではない……何せ、魂を顕す術なのですからね。

イメージから為る規模や威力、根本的な魔力使用量の調整、属性や効果の指向……これらを全て自分で御さなければならない。

自律の精神が一度乱れてしまえば、いずれかの要素で破綻を起こしてしまう。

──普段からあの人から口酸っぱく言われてきたことだから、私としては耳に蛸が出来そうなことですけどね。

 

「これで一通り殲滅しましたが……そちらはいつまで見物しているつもりなのでしょうか?あまりいい趣味とは言えませんね」

 

上空に到達した時からその視線を感じてはいた。

その時はどこか勇み足気味のアニス様を制御することに意識が行ってそれどころではありませんでしたが。

その後もイリアとの合流、直後には殲滅戦でしたので……。

私が指摘するとイリアもようやく気付いたのか、その気配をきっちりと見据えることが出来たようだ。

暫く気配がする方を睨んでいると、根負けした相手がどこからともなく現れた。

 

「これは失礼した。──しかし、魔力だけで感知するとは、流石は『精霊の申し子』だ」

「しかし、やはり邪法ですねえ……そのまま精霊の加護に身を委ねていればよかったものを」

 

二人して如何にも貴族のような恰好をしているが、どちらもまるで見覚えがない。

王宮付きの貴族では無いのは確実、でも他でも思い当たる節もなかった。

……ティルティもぼかして話していた、この国の闇に該当する者共だとしたら。

それはすなわち、彼にとっての……そして、私にとっても敵だ。

 

「私はあくまで人間として生を全うするつもりですので、その二つ名は別の方にどうぞ。私はもう傀儡に戻るつもりは一切ございませんから」

 

以前ならば特段何も感じなかった賞賛の言葉ですが、今となってはどことなく嫌悪感すら湧いてくる。

少なくとも、目の前の外道に言われていい気がするのはまず有り得ないことですね。

同類として見られるなど以ての外、それならカエルと揶揄される方がまだマシなものです。

 

「謙虚な物言いは実に結構なことだが……傀儡という言葉は訂正してもらいたいところだな」

「我々は精霊の意思を最大限尊重、また寄り添える存在になるべく研鑽を積む者に過ぎません。果てはこの国の始まりと言える精霊契約……ここに至り、それを超えることにございます。これだけ素晴らしき行いを捨てたユフィリア様は、やはり堕落したと言わざるを得ませんね」

 

堕落と来ましたか……なるほど、確かに間違ってはいません。

──が、それ以上に何の感慨も湧かない空虚な言葉ですね。

 

「むしろ幸運なことですね。事あるごとに精霊を崇めよ信仰せよなどという決まり文句のみ告げる、大根役者未満の何かになるくらいならばどこまでも堕ちてみせますとも」

「随分と大きく出たものだ。この国の成り立ちそのものに矛を向けるとでも?」

「先ほども講演しましたが、私は彼らの起こす荒波を受け入れ乗っていく腹積もりです。この国に蔓延する淀んだ空気は払わねばなりません……現に、今でも鼻がねじ曲がりそうですから」

 

──自分で言っていたら、本当に鼻を塞ぎたくなってしまいました。

目の前の二人の胡散臭さは分かっていたのですが、その醜悪さはあるはずのない悪臭すら撒き散らしていたのでしょうか。

……何て思っていましたが、どうやら気のせいではなさそうですね。

二人が取り出した、つい先ほども目視したその欠片を見て確信してしまった。

 

「ならば、我らが再度精霊信仰の道に引き上げてやろう。──アニスフィア王女殿下だけの予定だったが、ついでの手土産にはちょうどいい」

「人間だ自我だ、そんなものは偉大なる精霊の前では塵芥同然だと再教育して差し上げますよ……ユフィリア公爵令嬢!」

 

妖しい輝きと共に、膨大な魔力が彼らの肉体を基に迸る。

自身の肉体に魔石を埋め込んでは共鳴させているのか、魔性の気配も同時に膨張しつつある。

それらを神の霊石から迸る異様な何かで纏め上げる、といったところでしょうか。

光が収まると、そこにいたのは……。

 

(何とも形容しがたい黒い何かと、不気味なまでに青白い植物……?でも、間違いなく先ほどの異界の魔物と同系列……!)

 

前者は黒色の魔力がガラス細工のように構成されていて、後者は一見すれば脅威を感じられないが……イヤな予感がどうしても拭いきれない。

どちらも魔力量という意味では、最低でもアニス様が討伐したドラゴンを遥かに上回ると言っても過言ではないはず。

下手をすると、この間の新種に近しいところまで行っているかもしれない。

──魔法至上主義という名の妄執は、既にこのような領域までたどり着いてしまったのですね。

この件が終わったら、さぞ荒れることでしょうね……。

 

「まさか、魔石を基に自身の肉体を魔物に変貌させたのですか……?魔法の行き着く先としては、何ともおぞましい光景ですね」

「これもまた精霊契約への道筋ですよ。精霊に近づくということは、身も心も人から外れなければなりません……我々とて、まだ精進中の身ですが」

「この姿を見て、気が変わったというならば……先の発言を撤回することを許さんでもないが」

 

気が変わる?発言の撤回?

一体何の話かまるで分かりませんね。

ああいけない、ついつい笑いがこみ上げてきてしまった。

 

「ようやく笑える冗談が聞けて安心しました。道化の役割でしたらいくらか脚光も浴びると思いますので、そちらの道を歩んだら如何でしょう?」

「……せめてもの慈悲をドブに捨てるか。堕落したどころか、もはや狂人ですらあったか」

「あ、それは最高の誉め言葉ですね。そちらは謹んでお受けいたしましょう」

 

それはあの方がよく言われることですからね、嬉しくないわけがない。

ただ、これらは当然虚勢でしかない。

どこかで聞いたような軽口で何とか誤魔化せてはいるが……正直、このおぞましい気配を前にして震えを無理やり抑えているほど。

この未知の恐怖に思考が支配されていない現状が不思議なくらい。

だが、まるで勝算が無いというわけではない。

オルタやティルティの言葉通りならば……この場において私のすべきことは至って単純のはず。

……第二幕は、主演が来るまでの繋ぎになって差し上げましょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦況は想定通り僅かながら優勢を保つことが出来ていた。

刻印任せとはいえ、やはりドラゴンの魔石がもたらす恩恵は相当なものだ。

あの時は上位種であることや空での戦いで力を活かしきれなかったということもそれなりに響いたのだろう。

現に、そこそこに気配を漂わせているモーリッツも防戦一方……というより、距離を取ってはそこそこの威力の魔法を放つのが精一杯のようだ。

 

「全く、馬鹿力というのも度が過ぎれば面倒なものだな!」

「軽口なんて似合わない真似は止めた方がいいんじゃない?むしろ滑ってるし!」

 

そういうのは私の可愛い弟たちが言ってこそ。

アンタのようなエリート様じゃあまるで映えないよ!

しかし、こんなふざけているように見えても放たれる魔法の威力は確かなものだ。

そこは腐ってもエリート様ってワケだろうけど……

この場にはもう一人いることを忘れて貰っては困るんだよね。

 

「その魔法は何度も見ています。もう覚えましたよ……!」

「ちぃっ、ここぞとばかりに来るとは小癪なことをしますね!」

 

モーリッツの魔法発動前後のタイムラグに合わせる形でレイニが魔力を伴った爪を振るう。

ここまでの魔力操作鍛錬の成果が早速出ているのか、斬撃がそのまま魔力刃として伸びるというおまけつき。

あちらもそれを無様に食らう、なんてことはないが……避けきれずに掠ることの方が多い。

片方は半ば素人とはいえ、ヴァンパイアの魔石持ちとドラゴンの刻印持ちを同時に相手取るのは流石に厳しいんだろうね。

まあ、同情の余地はどこにもないんだけどさ!

 

「おらおらおら!レイニばっかりにかまけてていいのかなあ!?」

「単純だがそれ故に面倒というやつですか!」

 

攻め手交代(スイッチ)とばかりに今度は私が入れ替わる様に爪を模したマナ・ブレイドの刀身で斬りかかる。

慎重寄りの戦い方かもしれないが、それでもモーリッツに与える負荷は決して小さいものではない。

現に相手は徐々に苛立ちを見せており……こうして息を入れ直させることすら出来ているのだ。

急造タッグとしてはそうそう悪くない戦いぶりではないかと、我ながら思っちゃうね!

 

「レイニ、いい攻撃してるけど魔力と体力は大丈夫!?無理は禁物だからね!」

「正直のところ……体力はきついです。でも、アニス様に大半を引き受けて頂いてるので何とか持たせて見せます。──魔力はまだ大丈夫です」

 

レイニは梃子でも動かせないほどに継戦の意志が固かったので、こうして隙を突いてもらっている。

あくまでサブの攻撃要員に徹してもらう形だが、これは本人の疲労度合いと経験を考慮してのことだ。

正直、何でレイニがここまで戦えるようになっているかはまるで理由が分からない。

これまでの話を聞く限りでは、間違いなく戦闘のおいては素人のはずなのだ。

それが、ヴァンパイアの力を的確に扱った上で少なくとも無理のない範囲で攻撃を加えようと動いている。

私から見たらマージンこそ多めなんだけど……素人はそのマージンを取ることすらままならないものなのだ。

攻撃をするならばそれにしか集中できなくなって、無駄に力が入るものだからね。

しかし、今のレイニは攻撃をすると共にその一つ後の行動も意識できている。

早い話が、攻撃を何が何でも当てようという気負いがない……これは本来異常事態なのだ。

マッドくんがその辺を教えた可能性はあるけど、それでも言われてすぐに実践できることではない。

 

(──結局、ここでもしっかり影響を与えているんだよね)

 

もはやここまで来ると、『知ってた』と言いたくもなるものだ。

まあ、今は戦闘中だからさっさと頭の中ら放り出すとするけど。

ヴァンパイアの魔石を宿すレイニが暴れているのを見て、さっきから刻印越しでドラゴンが五月蠅くてしょうがないし。

それに、鬱憤晴らしって自分で言った手前暴れてあげないと後が怖いよね!

そんなわけで、マナ・ブレイドに注ぎ込む魔力を増やしては更に激しく斬り込んでいく。

 

「おらおら魔法省のエリート様ってのもこの程度なのかなあ!?」

 

本丸が相手だから後顧の憂いなく魔力を叩きつけることが出来る!

こういう時、魔力量だけやたらとあるこの身がどれだけありがたいことかが実感できるね。

回避はされたとしても、反撃の暇なんか与えるものですか!

 

「ああクソ、奇行まみれに加えて情緒不安定とは本当に救いようがない方だ!精霊が加護を授けなかったのは、そういうところに嫌気が差したからではないでしょうかねえ!」

「いちいちうっさいわね!どうせ私は奇行上等で耳年増なおっさん臭い女らしさ皆無な第一王女よ、文句あるのかコラ!だがそれならアンタらみたいな貴族との面倒な話が出て来なくて大助かりなんだよこっちは!」

「アニス様、誰もそこまで言ってませんよ……?それに、何だか色々変な私怨が混ざっているような」

 

いやいやレイニ、残念ながらこの将来有望なエリート様はどうせ内心で思ってるはずだから。

そもそも親であるシャルトルーズ伯爵があんなだし、更には謹慎を早めさせてこんなことをしでかしているからね。

どちらにせよ不法侵入の罪でしばき倒すけど、ここいらでその鼻っ柱をへし折ってやらねば。

ロンリードライバーならぬロンリードラゴン王女上等、私に介錯などいらん!

 

「こんな近距離でブレス……なっ、発動までが早い!?」

「騙し討ちだけど、悪いなんて絶対に言ってやらないからね!」

 

マッドくんの魔力制御、そしてアルくんの思考回路を少しだけ真似ての独自アレンジ魔法!

私だって、ただ黙って弟たちの背中を見ているだけじゃないんだよ!

ドラゴンのブレス、その唯一の泣き所であるチャージ時間を短縮させるために魔法そのものの規模を小さくした。

『ショートブレス』と言ったところだろうか……無論威力と範囲どちらも犠牲にしているが……その分接近戦の不意打ちで使いやすい。

初見殺しの側面も相まってか、モーリッツはかわしきれず魔力圧もあって吹っ飛ばされる。

 

「そういうところはやっぱり姉弟なんですね……!」

 

最大の機と見てくれたのか、ありったけの魔力を加速に転じてレイニは一気にモーリッツに追いつく。

そして、これまたピンポイントに魔力強化を施した爪で一閃……魔力の余波もあって再度吹っ飛んで行った。

そこで終わりにしても良かったんだけども……締めはやっぱり私の方が良さそうだよね?

 

「追加の一撃で確実な吹っ飛び判定を差し上げようじゃないか!」

 

最後は気持ちよくホームランをするべく、マナ・ブレイドの形状を鈍器に近い感じに変更。

爪を再現しない分、腕力強化に魔力を回すことで一時的な馬鹿力を得る。

そこから三度モーリッツに追いつきつつ、フルスイング!

 

「ぐ、おおおおおおおおおおお!?」

 

これは我ながら、そこそこの吹っ飛ばしは出来たってことでいいかあん?

せめてもの情けで近くの木をクッションにするようにはしてやったので、死んでいるってことはない……はず。

それでも再起不能に追い込めるほどのダメージは与えたはずだ。

ふう、何とか不法侵入現行犯の取り押さえ……ってところかな?

 

「な、何とかやれましたね……お疲れ様です、アニス様」

「いやいや、レイニの方がお疲れでしょうに……安易に留守番任せてこんなことに巻き込んじゃって、本当ごめんね?」

「い、いえ……止むを得ない事情でしたから。アニス様に非はありません」

 

いくらヴァンパイアの魔石から多少力を引き出せるようになっていたとはいえ、初陣がこれでは酷にも程がある。

……もしマッドくんがそこまで考えて仕込んでいたのだったら、一体どれだけ鬼畜なのかと。

最低限の護身程度って返すかもしれないけど、それならもうちょっとやりようがあるんじゃないかなあって。

 

「……私としても、先生たちの教えを早速実践できてむしろよかったですから」

「そうだよ、マッドくんったらいたいけな男爵令嬢にここまで仕込んでくれちゃってさ!?レイニも無茶振りされた被害者なんだし、事が終わったら説教してやらなきゃ!」

 

全く、いくらレイニが素直だからってやりすぎにも程がある。

ある程度はスパルタの度合いは抑えたとしても、まさか戦闘要員として叩き込むだなんて誰が想定出来ようか。

……というか、これってセラとかプリシラもそういう方面でエグいって可能性あるよね。

ウチの末弟は伏魔殿でも作り上げる気なのかな……?

 

「だ、大丈夫ですよ……私としてはむしろ変わるきっかけになっただけ大変ありがたい……っ!?」

「ちょ、レイニ!?血が……って、魔石まで!?」

 

和やかに話している場合ではなかった。

──その最悪と言える異常事態は突然起こってしまったのだから。

たった一瞬の間でレイニの心臓が貫かれては大量に血を吐き出していた。

──腕のような何かがヴァンパイアの魔石を握り締めている光景も、同時に目に入る。

新手の気配はないので、必然的に実行犯は一人しかいないだろう。

 

「……まだまだ甘いですね王女殿下」

「モーリッツ……あれだけの猛攻を受けてまだ動けるっての!?」

「相手を確実に仕留めたかどうかはしっかり確認しないからこうなるのですよ。まさに油断大敵、という言葉が相応しいですね!」

 

それとも、わざわざこの状況を作るために防戦一方を演じていたとでも言うの?

レイニが想定外の抵抗をしてきてすんなり奪えなくなったから、死んだふり作戦に切り替えたと。

……いや、今はそんなことどうでもいい、とにかくレイニの容態確認が先決だっての!

 

「アニス、様……ごめ、なさい……ゆだ、んし……て……」

「喋っちゃダメだってば!ああもう、何やってんだよ私は!」

 

せめてユフィがいれば応急処置くらいは出来たかもしれないのに。

私は何でこう、いつもいつもここまでやることなすことが裏目に出るの!?

しかも肝心なことに限って致命的なものになって返ってくる、今回は特にそれだ!

嘆いていても何も変わらないのは分かっているが、とにかく自分を殴りたくてしょうがなかった。

 

「魔法の深淵を目指さんとしたヴァンパイアの知識を宿した魔石に神の霊石、我々の血と汗と涙の成果が揃った!これで我々の精霊信仰は新たな舞台に移行することとなるだろう!王女殿下にはこの喜びを分かち合う最初の観客となってもらいましょう!」

 

……しかし、そんな感傷に浸っている余裕すらもないみたいだ。

トチ狂った言葉に続く形で、モーリッツは奪い取った魔石を己が内に埋め込んでいたのだから。

するとどうか、ヴァンパイアの魔石と元々モーリッツ自身に埋め込まれていた魔石が唐突に光り出した。

そして、講演会場でも見た妖しい輝きを持つナニカもまたヤツの手にある。

……そこからは、先ほど見た光景とさほど変わらなかった。

強いて言うならば、人間の姿から大きく変化することはなさそうだ。

無論、溢れ出る魔力のおぞましさはこちらの方が明らかに上だけども。

それも、そのおぞましさはアンデッド系にも引けを取っていない……悪い意味でだけども。

元々の魔石もその類で、ヴァンパイアの特性を得て強化されたということだろうか。

しかし、そんなことはまるで問題ではない。

というより、問題にしてはならない……どうでもいい。

 

「──何が新しい舞台だ。魔法っていうのは誰かを救うためにあるんだ。──それを誰かの犠牲の上で発展させる?ふざけるんじゃないわよ!」

「ははは!むしろ栄えある犠牲となるのだ、誉れと思うべきではないかな!?」

「こんなトチ狂った舞台、すぐさま公演中止にしてやる!」

 

耳障りで下品な高笑いを遮るように啖呵を切ってやる。

中にいるドラゴンも、相当に不快に思っているのか私に憤怒と共に力を与えてくれている気がした。

 





というわけで名無し中ボスの登場。
8巻辺りから持ってくって手もありましたが、まあ後でもいいかなーってことで。
そしてこの二人が変化したのは……シリーズとしてはメジャーですがナンバリングとしては深堀りされないよなーってところから。
話は賛否両論、バトルは結構いい感じな続編のインターナショナル版からで……いや分からんですよね。
そして姉上サイド、こちらは見事に油断しちゃいましたの巻。
こういうのもまた、影を落とす要因に……。
二人が戦っていた時は中の魔石の力を殆ど引き出していないので、実質前座です。
原作ではあんな小物だったのがこちらでは圧倒的強化です。
……まあ、あちらでこんな風に出せる悪役がいなさすぎるのが悪いってことで。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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