転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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サブタイトルがそのまま推奨BGMシリーズ、じごくもん~なアレです。
ちなみにグランサガじゃなくてラスレム、なんでやねん。




80. The Gates of Hell(Ⅰ)

 

それは見る者が見れば、確実に地獄絵図と表現できるような光景であった。

片や常時燃え盛る魔性を筆頭とした魔物たちがひっきりなしに進軍せんと歩を進める。

もう片やたった5人でその侵攻を防ぎ、少しでも数を減らさんと殲滅を図る。

倒されても魔物は補充されていくので、数の差はまさに歴然とすら言える状態だ。

本来ならば根を上げても仕方がないと言える場面であろう。

 

「やれやれ、随分とまあ念入りで来たものだ……マッド風に言うなら、胸焼けでも起こしそうってところかな」

「オルタ、まさかもうバテたの?そんなんじゃウチの相棒の影武者は務まらないよ!」

「あれだけ潰したっていうのに、ちょっとばかり凹んでしまうなあって意味さ!」

 

愚痴を零しながらも目聡く水属性魔力を見つけたオルタは、即座に手を床にかざしながら自身が2番目に得意とする雷属性魔力を瞬時に解き放つ。

ゴーストナイトとホムンクルスに自ら囲まれる形ではあるが、伝導性を増した電撃の襲来が当然先行だ。

セリアードが支援の合間に放った水属性の顕魂術の残滓を利用してのアドリブ強化法は、ここまでの共闘で編み出した単純にして強力な連携となる。

それだけ派手にかませば、敵集団全体のヘイトがそちらに向くのは必然だが……それもまた織り込み済みであった。

 

「ウチとしてはまだまだ暴れ足りないからありがたいんだけどね~!」

「全員補助の必要なし、これなら……!」

 

先読みするかのように集団の妨害をするのは、事前に召喚しておいたファイヤームムだ。

更にセリアードの水球封殺術も織り交ぜることで、一方的にお助けキャラが攻撃できるというコスパが良いシチュエーションが完成する。

その隙にメイン主砲のキュイは炎熱光線を変幻自在に放っては、水球から逃れた残飯処理も並行して行う。

かつては回復とシールドを張ることが主だった、ヒーラー的役割のセリアードが片手間で行う妨害行為。

それは戦闘におけるバリエーションの枝を増やす結果となり、他メンバーの火力をより効率よく引き出す形となっている。

 

「そいつらばかりにかまけていていいのかな!?」

「いいに決まってるじゃん!だって全部お見通しだもんね~!」

 

その間隙を縫うように『点火する偶像』は火球を放つ。

キーストーンによって高められた魔力込みで放たれる一撃は、初級魔法であろうととんでもない重さに化けていた。

……が、わざわざ声掛けしてから撃ってくれる時点で随分と優しいものだ。

分かっていて避けられない、そんなことをやらかしたか日には近い未来の仕え先から説教待ったなしだ。

 

「このっ……ちょこまかと鬱陶しいミケ族だな!」

「そんな単調なボール遊びでウチを楽しませようなんて、随分ナメられたもんだね!」

 

ミケ族特有の、それこそ猫由来のバネを活かしたアクロバティックな動きで避けては、お返しとばかりに火球を返していく。

一見雑魚散らしに夢中になっているように見えても、見え見えの浅い手に引っかかるほど注意していないというわけではない。

あの『無慈悲な主演』が太鼓判を押している実力者の底は、そう簡単に覗き見ることは出来ない。

 

「ああこら、残しちゃダメでしょネコちゃん。ちゃんと綺麗に食べきらないと、ね!」

 

とはいえ、そんなキュイにもきっちり欠点が備わっているのはご愛敬。

それは、小規模の相手に対する命中精度の悪さである。

狙撃への反撃もあって、撃ち漏らしが多々発生するのは当然と言えば当然のことで。

そんな欠点を逸早く刺しては補うのが、セリアードと同位置で全体に視界を巡らせているティルティの役目である。

この中で顕魂術歴が長いことも相まって、術そのものの制御能力については開発者本人を除けば1,2を争うと言っても過言ではない。

麻痺の呪詛を簡易的な形とした、闇雷混合電撃(エナジーボルト)を並列展開してはキュイのやりそびれをきっちり消化していく。

 

「マッド様とはまた違った魔力運用ですが、効率の良さは同格なんですね……」

「如何に呪いを効率よく掛けられるかって研究をした際の副産物よ。アイツの腐れ縁だってこと、これできっちり理解してもらえたかしら?」

「流石、グランナイツと同時期から顕魂術のテスト役を担っているだけのことはありますね……勉強になります」

 

魔力の運用法としては、一番近しいところはトラップ特化のプリシラだろうか。

ティルティはイメージをきっちり固められる分、対象指定の増加や範囲拡大に割きやすい。

元は魔力を食われ過ぎるという欠点さえなければとさえ言われるほど。

それこそユフィリアに匹敵する魔法使いになり得た素質は、顕魂術師としても生かされていた。

魔法ではどうしても介入される余計なノイズが無い分、その実力は拮抗ないし現状においては凌駕している。

余計な枷から放たれた令嬢は一人だけではないということ。

 

「これはウチもうかうかしてらんないね!負けずに突貫だおりゃあ!」

「これまたアニス様よりも手に負えない暴走っぷりね……ああもう、また打ち漏らしいるわよ!」

「何だかすっかり仲良くなってるね~、マッドの胃に穴が空きそうな組み合わせだけど」

「あはは……そこは私たちで上手くフォローしてあげないと、だね!」

 

さながらマドラーシュと組んでいる時と同じように、キュイははしゃぎながらも的確な暴れっぷりを見せる。

セリアードの的確な補助と妨害、ティルティの痒いところまで手が届くサブアタッカーぶりと見事に噛み合いを見せている結果と言えよう。

傍から見れば遠距離タイプ3人とバランスが致命的に見えるが、キュイ自身の俊敏性は一般的に見れば相当高い部類にある。

それに加え、説教からの逃亡だったり悪戯被害に遭ったカルトから逃げ切ったりという何気ない経験もかなりものを言っている。

挑発行為をこなす程の胆力も備えているので、まさにマドラーシュ並みのヘイト誘発、回避タンクをこなしながら的確殲滅を担うことも可能だ。

ちなみにこの戦法自体は、元々苦手だった室内戦で悪戦苦闘する際に身に着けたものだとか。

 

「あの制御不能だと思われたキュイもあんな器用なことが出来るようになっているとは、これまた成長が早い。マッドの楽しそうな顔が目に浮かんでくるよ」

「マドラーシュ様は俺たちに任務と共に常に課題を与えて下さっている。それに応えないなど、後の特別近衛騎士として恥ずべきことだからな!」

「ウィンも相変わらず、大した忠義心だ……マッドから暑苦しい言われないよう程々にしておきなよ!」

 

不意を突くようにホムンクルスが湧いて出てくるが、登場の予兆の時点でウィンは既に行動を起こしている。

土属性の魔力によりインパクトの増した拳を叩きつけ、体格差も相まって容易く吹き飛ばすという挨拶を見舞ってやっていた。

そこから散開しながら吹っ飛んでいくホムンクルス達を無視する形で、土属性魔力を球体状に纏わせては巨大な岩玉を作り高速移動。

その先には、何もない……ように見せかけて、薄っすらと何かが走るような足音が聞こえていた。

 

「悪いが、その手口は経験済みだ。きっちりと足止めさせてもらうぞ!」

 

恐らくどこかにいる呪術師辺りが、物理的な姿だけを消す術をかけているのだろう。

しかし、姿が見えなくとも必ず何かかしらかの情報はそこに残されていることが基本。

今回の場合は、本当に姿を消しているだけで……音や行動に付随する視覚情報はまるっきり残ってしまっている。

早い話が、盛大な足音やら土煙を消すことを疎かにしており……ウィンからしても頭隠して尻隠さずという状態であった。

そこに合わせるように、姿だけは見えない何かにの岩玉をけしかけるようにぶつける。

拮抗状態が発生すると、即座に相手の隠匿状態が途切れた。

その正体は、マドラーシュの遊び場含む未開の地で生息するとされる亜地竜(ガトプス)

本来ならば土属性魔力を纏って獰猛な突進、風属性魔力を用いて砂嵐を周囲に撒き散らすのを得意とする中級クラス(マドラーシュ比)

しかし、この個体に限っては闇属性魔力も付与された突進を行っていた。

 

「……なるほど、既にあの場所から出荷されていたと。ならば、楽にしてやるのがせめてもの救いか」

 

攻撃性に関しては地を這う中でもそこそこ上位に位置するガトプスが隠密性を有する。

サブ能力付随という意味では単純な組み合わせであり、分かりやすい強化方法でもある。

そしてそれは、マドラーシュとは別行動で潰した違法研究所の一つが執り行っていたという記録が残っていた。

ここで確実に仕留める……そう判断するや否や、ウィンは即座に岩玉展開を解除した。

 

「マドラーシュ様譲りのカウンター戦法だ!」

 

急な均衡の崩壊は、ガトプスとしても想定外なのか突進の勢いを持て余してしまう。

そこを見越したウィンは最低限の動きですれ違いながら、最小限最大効率の拳をその顔に叩きつけた。

込められている魔力は土属性なので、撃破ではなく吹き飛ばしに重きを置いた一撃ではある。

しかし、ウィンの役割は敵を倒し切ることではない。

あくまで倒すためのお膳立てをするまで……トドメ役は別にいるのだから。

 

「流石はウィン、やりやすい方向に吹っ飛ばしてくれて助かる!」

 

吹っ飛ばした先で雷鳴が響き渡ったかと思いきや、即座に焦げ臭さが充満する。

ガトプスは見事なまでに雷光混じる魔力突貫の犠牲となっていた。

背面でダウン状態のホムンクルスの処理を終えたであろう、オルタとの位置関係をきっちり把握して挑発役と撃破。

タンク兼サポート役として成すべきお膳立てをこなしてみせていた。

 

「マッドとコンビを組んでいる時と大差ない戦いやすさだ。君たちが味方で本当に助かるよ」

「マドラーシュ様と同格なオルタにそう言って貰えれば自信になるな。……ただ、キュイにはあまり言わないでもらえるとありがたい」

「そうだね、絶対に調子に乗ってあちこち爆破させかねない……っと、雑談くらいさせてほしいな!」

 

背面強襲を試みるのは、ガトプスの背面に潜んでいた小型地蟲たち(キラーインセクト)

こちらは先ほどのガトプスとは対照的に、頭部に槍のような角が追加されている。

奇襲方法もそれに倣ってか、マドラーシュやレオンの得意技である『スティンガー』と似通っていた。

……が、気配は駄々洩れなので突進される前にオルタが兆候を察しては即座に対抗策を打って出る。

雑に範囲を前面に指定して、魔力で編んだ妖刀の雨(スチールレイン)を降らせて一時的に盤面を狙うという形だ。

突進の瞬間に時間間隔を狂わされた小型の地蟲たちは、無様にも隙を晒し放題である。

雑な展開が故に効果時間こそ短いが、それでも十分だ。

 

「こらオルタ~!無駄口叩いてないでもっと倒さないとウチが追加報酬掻っ攫っちゃうんだからね!」

「どうせそう言うと思ったから譲ってあげたんだよ!」

 

耳聡いネコ娘が報酬独占と言わんばかりに横槍を入れてくるのは目に見えていたのだから。

ファイヤームムと共に火球やら光線を連打してきているので、仮に突っ込んでいたら同士討ちの可能性もあった一幕である。

マドラーシュのポジションを代役するということは、全体の状況把握を務めるのは最低限度の必須事項。

そろそろあちら側3人の殲滅も終わる頃合いということは、視覚と魔力感覚どちらでも確認済みであった。

何だかんだ、制御が難しいキュイを含めた面々を過不足なく稼働させている。

8という歳の差あれど、マドラーシュと並び得る数少ない次世代というのはまさにその通りであった。

 

「不信者風情がここまでやるとは……っ!ちぃ!」

「余所見とは随分と余裕なことねえ。数的有利にしか頼れないなんて、精霊契約ってのは鶏肉味にならなきゃ出来ないのかしら?」

 

隙ありとばかりにティルティは本丸にちょっかいをかける。

『点火する偶像』はすんでのところでかろうじて避けるが、これは挑発行為に過ぎない。

魔法至上主義への嘲りを大いに含めたその言葉に、狂信者が反応しないわけがなく……。

 

「ええい、お前ら!なんの為に数を揃えたと思っているんだ、この私のために働け!」

「勝手に数ばっかり揃えたのはそっちじゃん!こっちも飽き飽きしてるから、いい加減降参してほしいんだけど!」

「ネコちゃん、ああいった手前はもう手遅れだから身体に覚え込ませたほうが手っ取り早いわよ!」

 

癇癪を起こしながら魔力を吹き出させては、残った取り巻きを無理やり進軍させる。

これがもし人間同士だったら、間違いなく士気は即座にマイナス到達待ったなし。

歩兵の質も問題ではあるが、それ以上に指揮官自身に問題があると言えるか。

もしラス達がこの場にいれば、『デーモンコマンドの方がまだちゃんとしてた』と至極真っ当な意見を投げかけていたことだろう。

そして、その絞り出すような怒声こそが致命的な虚勢であることを全員は見抜いた。

 

「支援フル展開します!ここは短期決戦ということで、少し強めに行きますね!」

 

そうと決まれば時間をかける理由もない、そのように真っ先に動いたのはセリアードだった。

シールド、持続回復、そして魔力高揚の三段支援をここぞとばかりにフル展開。

更にそれら全てが普段の2割増しの魔力量を注ぎ込んでいるときたものだ。

 

「ここが打ち時でしょ!っていうか、ずっと我慢してきたんだしもういいよね!」

 

こちらはセリアードと打って変わって最小規模最大効率を心がけていた。

ナマリエやカルト、挙句マドラーシュの肝すらも冷やしてしまう燃え盛る隕石群(メテオストライク)。

キュイを問題児たらしめる顕魂術が、明らかに室内用に調整されては的確な威力を見せていた。

 

「そっちに逃げるしかないでしょ?でも残念、なら後は纒めるだけー!」

 

更に意図的に隕石の効果範囲外を作り、そこに残飯を誘い込む。

そうすることで纏まった魔物たちに、キュイは無慈悲に吸引魔力オーブを放り込んでやった。

こうなってしまえば、決死の数の暴力など脆い以外の何物でもない。

ただの浪費ほど空しいことはない、まさにその証明となってしまっていた。

 

「あら、以前は地図の書き換えが必要だってマッド様もぼやいてたのに……きっちり制御できてるじゃない」

「へっへーん、ご要望にきちんと応えてこその天才だからね!」

「普段からそれなら、ラインヒルト様やデイジー様に胃痛を与えずに済むと思うがな……!」

 

お調子者全開な言葉に各々は苦笑を浮かべながらも、無力化された雑兵を的確に沈めていく。

あまりといえばあまりの惨状だが、結局はただの慢心の末である。

精霊契約に近づいた──かどうかは定かではないにしろ、普通の人からは外れた存在なのは確かな事で。

そこに多数の取り巻きで数の暴力……戦いの心得が足りてない貴族が勘違いするのも無理はないと言える。

こうなってしまえば、いくら上位の異界生物と言えど裸の王様に過ぎない。

 

「あれれー、影武者クンぼっちになっちゃったよ?」

 

マドラーシュやオルタのそれとは違い、キュイの軽口は天真爛漫の裏返しだ。

どこまでも素直に本音をぶちまける様は、童心ならではの恐ろしさも兼ねている。

更には口振りが似ているロムまで加勢するものだから、その切れ味は更に倍増しているときた。

そのピュアな口ぶりが、フラストレーションが溜まりに溜まった『点火する偶像』にとっては火種になるのは必然で……。

 

「この……どこまでもナメ腐ってくれるなひったくりミケ族が!雑魚がいなくとも、この私がいれば余裕で皆殺しだ!」

 

それはもう分かりやすく、怒りのままに槍の切っ先を向けて突進する。

その速度は、これまでで見せたことの無いほどの速さではあった。

しかし、激情が技能を狂わせたのかはたまた最初から力任せしか知らないのか──その軌道は単調極まるもので。

炎を纏った突進を止めるのは、雷光と一体化した剣戟であった。

 

「術で小火を出さずに済んだと思ったら、今度は口論で炎上かい?勘弁してほしいところだね!」

「貴様は確か、異邦の剣豪だったな……邪魔立てするなら共にミンチにするまでのことだ!」

 

その速さもそれ以上の相手と相対してきた面々にとっては何の脅威にもならない。

オルタにとってはむしろ遅いとすら思えるくらいだが……引き留めるための鍔迫り合いとなれば分が悪い。

人間としてかなりのものであっても、そこから外れた者との単純な能力差だけは歴然としている。

しかし、オルタはその腕力差を上手く利用する器用さを披露していた。

 

「魚を捌くのは得意だが……まな板の上に乗る趣味はないのでね!」

「やれやれ、キュイにはもう少し『口は禍の元』という言葉を理解してほしいところだな……!」

 

相手の勢いを可能な限り殺しつつ、更に自分は受け流すようにあえて吹き飛ばされる。

コントロールされたその離脱行為により、『点火する偶像』はその攻勢の行き所を見事に失っていた。

そこに兆候を常に観察していたウィンが盾による迎撃(シールドバッシュ)を以て突進しては弾き飛ばしては、鍔迫り合いに持ち込んでいく。

本来放とうとしていた大技……槍を火属性魔力で伸長させての振り回しを無理やり放つも、この顔ぶれでは屈指の防御力を持つウィンが完璧に受け切ることとなった。

 

「このっ、小癪な真似をしおって……ちぃっ!」

「よっしゃあナイスだぞ~オルタ、ウィン!」

「調子に乗って二人を巻き込むんじゃないわよネコちゃん!マッド様の受け売りになるけど、あくまで的確に確実に!」

「わ、分かってるってば~!しくって相棒に干されたらそれこそ一大事だし!」

 

完全に勢いを殺された『点火する偶像』に更なる災難が襲いかかる。

直接狙いという脅威が去ったことで、キュイとティルティがここぞとばかりに間隙を縫ってくる。

オルタとウィンが入れ替わり立ち代わりで猛攻をいなしている都合、何もかもが当たるということはまずない。

それでも、チマチマとダメージを蓄積させることは出来ている。

そして、忘れてはならないのが……メイン属性的に一番相性が良い彼女の存在だ。

 

「今なら、私も混ざることが出来るはず……!」

「いっけ~セリアード!ぶちかましちゃえ!」

 

サポート的な意味でも無事に手空きになったセリアード。

ロムの声援を後ろ盾に、ここぞとばかりに追撃を放って行く。

これまではせいぜい水球で閉じ込めることで精一杯だったが……ここに来て更なる羽化を見せていた。

 

「小娘……っ!後ろで回復と補助をするだけではないのか!?」

「へっへーん、あの鬼教官がそんな単純な弟子に育て上げるわけないじゃん!」

「後ろに下がって、指を咥えて戦いを見ている……そんな自分から脱したい。それだけのことです!」

 

セリアードが放つ水流は、仮に筒のようなものから放たれていれば『ハイドロポンプ』とでも言いたくなるような術である。

確かに、セリアードの真骨頂は基本的にシールド、回復、火力支援ではある。

しかし、彼女も与えられた役目だけで満足するほどお淑やかではなくなっている。

着々と周りの影響を受けてはどんどん枝を伸ばす様、もはや箱入りであった頃の面影は無くなりつつあった。

己の魂と向き合い、限界を突破せんとする心意気……まさに顕魂術が司る思想の一つである。

師匠役2名がこの場にいれば、さぞご満悦な笑みを浮かべていることだろう。

 

「全く、お陰で私にも呪詛的天啓が来ちゃったじゃないの。『ブラッククラウド』!」

「右に同じく~!何ならとっておきも出しちゃうよ~!」

 

セリアードに触発されて、同じ後衛であるティルティとキュイも引きずられるようにテンションが上がっていく。

ティルティはここぞとばかりに顕魂術特有の天啓を得て、新術を放つ。

闇属性をベースに水と雷をサブに据えた魔力は、『点火する偶像』の頭上に黒い雷雨を降らせる。

更にキュイは、かつてエリオから受け取った古代兵器のプロトタイプ……その主砲をいくつか取り出しては放り投げる。

 

「おいキュイ、それはまだ試作段階じゃないのか!?」

「ジュンの人形操作をちょーっと参考にしただけだからだいじょーぶ!ぶっ放せ、プロトサマエル!」

 

まさに見て盗む、天才にして天災の悪癖をここぞとばかりにフル活用だ。

とはいえ、下手な追撃では目まぐるしく入れ替わって接近戦を担っているオルタとウィンの邪魔になりかねない。

そこを危惧して、ウィンは嗜めたのだが……それは杞憂に終わった。

 

「さっすが天才!これぞ本番に強いというやつだね!」

 

プロトサマエルと称されたいくつもの主砲はキュイの思うように動き、一目散に敵へと魔力砲を放つ。

キュイ自身が放つそれよりかは魔力圧縮こそ浅いが、そこは手数でカバーしていく。

普通ならば肝を冷やす密度の攻勢だが、『点火する偶像』は特に意に介すつもりはなかった。

オルタとウィンの入れ替え戦術にかまってやる必要があるというのも含まれているが……。

彼自身がその名の通り、『点火』を司る魔物であることが最大要因だ。

 

「だからどうしたというのだ。そんなちんけな火属性魔力など恐れる必要などない」

 

下等な生き物が放った下等な火属性魔力に燃やされるわけがない。

慢心すら見える口ぶりだが、一般的なセオリーに乗っ取れば間違った見方ではない。

『点火する偶像』、それは異界において炎を司る上位の魔物と見られるのが必然。

そんな相手に対して、まさか同じ属性の大技を直にぶつけるなど……嘲りの情を以て、あえてその攻撃を受けてやった。

チンケな火を炎が受け止め、何なら更なる糧にする……描かれた簡易未来図はそんなところか。

しかし、常に予想外ないし想定外が起こるのが現実というものでもある。

 

「っ──ぐ、うぅぅっ!?な、何故受け止められないのだ……ちぃっ!」

 

早い話が、受け止めるどころか魔力圧に圧されかける始末だった。

その際に態勢を崩してしまい、更にはオルタの剣戟を受け損なうミスにまで繋げる大失態。

不意とはいえ一撃を貰った屈辱、その後に待っているのは……傷口にデスソースでもぶちまけるような所業だった。

 

「あれだけ大口叩いておきながら人間の火でダメージを負っちゃうなんて……異界の偶像とやらも大したことないようねえ?」

 

ここぞとばかりに煽り散らかすティルティ。

挑発でありながら、どこか含みをもたらしたその言い方からは、まさにどこぞの破天荒の面影が重なる。

それと共に、何が起こったのか即座に理解したのは……この場のリーダーであるオルタ。

 

「なるほど、流石は顕魂術古株のティルティ嬢……なかなか面白いことをする。光の方でも同じようになるのかな!」

 

まさかのダメージに意識が行っているのをいいことに、オルタは鍔迫り合いを押し返しては咄嗟の反撃に出る。

光輝の魔力刃を2,3発振るってから、少し溜めてから特大の魔力刃を振るう。

そこから息をつく間もなく光属性魔力圧縮弾(ルナキャノン)を放つ。

当然『点火する偶像』も途中で我に返り、全ての攻撃が直撃するなんて無様は避けたわけだが……。

 

「直撃を避けて、なおこれだと……!?」

 

これまでは直撃でなければ真っ当にダメージが入る気配はなかった。

唯一相手の防御を多少崩す手段を持つのはオルタだが、それをさせてもらう余裕もなく。

炎由来の魔法ばかりに目が行くが、接近戦も決して下手なわけではないのが面倒だった。

しかし、ここに来て相手の堅牢さを形作る手札を消失させるブレイクスルーが発生したとなれば話は大きく変わる。

拮抗状態だった天秤が一気に傾く、その予兆は他の面々も感じ取っていた。

 

「なるほど、さっきの暗い雷雨でヤツの対魔力を削いだというわけか。それならオルタに攻撃を任せて俺は補佐に回ろう」

「私も一旦……ここで前のめりになってはいけない気がします」

 

一気に倒し切る好機と捉えることも出来るが、そこで全速前進と素直にいかないのがストッパーの務め。

特にこの手の感受性に優れるセリアードが一時停止をしたならば、何かもう一波乱の可能性もある。

過度に熱せずされど冷まさせず、一呼吸置く意味で補助術を入れ直す作業に入る。

 

「オラオラー!イチモーダイマジンにしてやるんだからね!」

「それは真逆の状態で使うんだぞー、皆も間違えないように」

「なんて言いながら攻め立てるなんて、厭味なくらいの余裕っぷりね!」

 

そんな頑強な体制がバックにあるからこそ、三人の猛攻には遠慮の必要なし。

オルタは引き続き鍔迫り合いの役目も担うが、それでも明らかに攻撃の手の方が多くなっている。

それほどまでに、ティルティの放った『ブラッククラウド』が落とした影が大きいとも言えるか。

 

(クソ、クソクソクソ……!こんな下等な連中に、私が気圧されているとでも!?)

 

断じて認めたくはないが……それでも事実は変わりようがない。

キュイが放った同属性の術ですら若干のダメージになったのだ、これが光属性や闇属性ならどうなるか。

その恐れこそが、『点火する偶像』の攻め手に躊躇を与えて受け身にさせては……ジリジリと『点火する偶像』を崖っぷちに追いやりつつある。

しかし、窮鼠猫を噛むという事象……ないし、『それはどうかな』と言える哲学も世の中あるもので。

ある意味で崖下に落とせていない状況は、それらに対する点火素材とも言えた。

 

「このままでは……ちぃっ、止むを得んか!」

「──っ、二人とも、下がるんだ!どうやら遅すぎる本領発揮のようだ!」

 

次の瞬間には、『点火する偶像』に纏う空気はガラリと変わっていた。

片手間で捻りつぶせるという慢心、それが捨てられた時であり。

その変調を即座に察知したオルタは、補佐に回っていたウィンとセリアードと共に再度警戒態勢に戻るよう指示を出す。

これもまた、完全に前のめりを避けた功とも言うべきか。

 

「貴様ら如きに使うなど遺憾の極みだが、四の五の言ってられん!臨時の追加を放り込んででも叩き潰してくれる!」

 

想定以上の猛攻を前にして、『点火する偶像』は最後のカードを前倒しで切る羽目となる。

ここまでしておいて、本気になるなどあまりに屈辱だが背に腹は代えられない……些か遅い気がするが、慢心していればそんなものだろう。

魔力を込めると同時に槍を横回転を与えつつ投擲。

奇しくもそれはマドラーシュの扱う『ラウンドトリップ』と似ているのだが、その効果はまるで異なる。

あちらは誘引効果により周囲の敵を引き寄せ小型の敵を封じる、いわば封殺・制圧型だ。

それに対してこちらは、その回転のままにまるでホーミング機能が付いたかの如く無作為に5人に襲い掛かっていた。

 

「うわわ、まだいたのホネホネ!?」

「みんな、一旦1か所に固まるんだ!ウィンは追尾槍を弾いてくれ!セリアードは補助と共に水の魔力を撒いて、私とティルティ嬢でそこを基点に一気に叩く!」

「じゃあウチは適当にれーざーびーむ打っておくね!」

 

オルタの咄嗟の指示に従い、ウィンを中心として1か所に固まることとなる。

セリアード、ティルティ、オルタの3人は低姿勢を取ってウィンの邪魔にならないようにする徹底ぶり。

まさかの味気のしない骨型残飯についても、最も楽な殲滅策を掲示する辺りは偉志ノ大陸次世代筆頭ならではか。

セリアードが自分たちの周囲を避けるように水属性魔力を張っては、それに沿うように電撃を叩き込む。

キュイの熱光線連射も功を喫して、最後のゴーストナイト集団の撃破は素早いものとなる。

それと同時に投擲槍の貯蓄魔力が尽きることも確認できたが……安堵する間はあまり残されてはいない。

 

「ちっ、やはりこの程度しか稼げんか……まあいい。今の私は異界とはいえ精霊に近しい存在、そして魔力を持っている!これだけでも十分な威力になるであろうな!」

「やはり大規模魔法で来るか。ここは相殺を狙うしかあるまい!」

「言われるまでもないよ!部屋が滅茶苦茶になったらまたウチのせいにされちゃうし!」

「キュイ、そんなこと言ってる場合じゃないと思うんだけど……」

 

自分たちのではなく、王城の一室の心配をする辺りまだまだ余裕の証拠だ。

とはいえ、相手の魔法が明らかに大規模なのは明白。

各々が相殺の為のイメージを練り上げていく。

ここが恐らく最大の剣ヶ峰、よって遠慮はいらない。

セリアードによる魔力高揚の影響はまだ残っているので、相殺のイメージとしては不足を感じることは無かった。

 

「点火せよ、異界で滾る権能よ……『竜紋砲』!」

 

どこかドラゴンの瞳を思わせる珠が現れては、そこから特大の砲撃が解き放たれた。

ちなみにこの『竜紋』は本来、込められたありったけの魔力を爆発させる『エクスプロージョン』の強化版と言える魔法である。

それをピンポイントに圧縮して砲撃にしたのは、無意識なのかそれとも制御が出来ないことを自覚してなのか。

何はともあれ、迎撃しやすい形になったのも明らかな僥倖と言える。

そんな『竜紋砲』に対して、オルタは特大の光属性魔力刃で斬りかかり、キュイは『インファナルビーム』をいくつも重ね合わせた特大強化レーザーを放つ。

セリアードはオルタに倣って光属性も僅かにだが合わせた水砲を、そしてウィンはかつてウガルーの盾を砕いた特大魔力斧を具現化してはぶつける。

キュイとセリアードはまだしも、本来このような迎撃を得意としないオルタとウィンが十二分な威力を発揮できていないのが少々痛手か。

とはいえ、きっちり拮抗状態に持ち込んでいるので最低限といったところではあるが。

 

「異端者ごときが、4人がかりとはいえ相殺するか……っ!かくなる上は、更に魔力を込めて、跡形もなく吹き飛ばしてくれる……っ!?」

 

拮抗を破らんと、『点火する偶像』が更に魔力を込めようとしたときであった。

これまで見せていた憤怒や慢心の表情とは明らかに異なる様相が表に現れた、その時は。

見ると、その真下にある床には龍を模した紋が浮かび上がっていた。

床に描かれているだけだというのに、まるでその場の全てを睥睨するような様という奇妙な絵面であった。

 

「あーあ、魔法にしか目が行かないからこんな単純な見落としをやらかすのよ……黒龍の領域を今ここに『フル・ダークネス・インフェルノ』!」

 

この時、『点火する偶像』はようやく事態の一端を理解することが出来た。

迎撃していたのは4人で、見事なまでに残り一人は存在感を消していたのだ。

改めて魔力を探り、その先に視線を向けると……それはもう楽しそうに、また残忍な笑みを浮かべる呪われ令嬢の姿があった。

 

「ここまで無様だと、もういっそ清々しいわねえ」

「クラーレット侯爵令嬢っ……!?貴様、何をした!」

「ちょっとしたプレゼントよ。黒龍の威光ってのは、アンタみたいな魔法至上主義者にはよっぽど効きがいいみたいね。お陰でいい実験になったわ!」

「黒龍だと……ぐっ、『竜紋砲』の維持が、一気にキツく……!」

 

黒龍由来の呪詛を扱った顕魂術と言えば、マドラーシュが最近多用している『フル・ダークネス・バースト』が存在する。

ドレッド・ドラゴンの咆哮と呪詛が噛み合い、その結果生み出された束縛効果持ちの呪音波を再現したもの。

これもまた立派な呪詛を放つ術と言えるのだが……ティルティはそこで満足しなかった。

マドラーシュの離宮に入り浸れたこともプラスに働き、一時的とはいえドレッド・ドラゴンやグリフォン、ウガルーと黒龍だけでなくキーストーン由来の魔石とのイメージも同時に見ることが出来る環境に居座れた。

その結果、黒龍の呪詛の根幹……いわば威光そのものへの到達という成果を挙げたのだ。

無論、イメージとはいえ人間が扱うには些か度が過ぎているのでほんの一部を汲み取っているに過ぎないわけだが。

その効果は至って単純……早い話が、萎縮効果であった。

 

「一度は世界を滅ぼしかけた龍の威光は健在だね。部分再現とはいえ魔法至上主義者にとっては天敵そのものということだ」

「要するに、影武者クンはビビって夜も眠れない状態ってことだね!または鶏肉味になったとも言うべきかな~?」

「精霊信仰を理解できない愚か者どもが、好き勝手抜かしおって……ぐぅおおおおお!」

 

口は達者だが、明らかに『竜紋砲』の規模を維持が困難になってきているのは見え見えである。

『精霊の加護すらない異端者に負けるわけがない』……そう思ってはとことん虚勢を張って意固地になる辺り、ある意味救えないとも言うべきか。

この面々の中で最も温厚なセリアードですら、表には出さずもその言い分には反発を覚えてすらいた。

 

「これ以上戯言聞いても耳が疲れるし、とっとと終わらせてちょうだいな!」

「キュイ、セリアードは迎撃維持を!行くぞ、ウィン!」

「ようやくこの暑さともおさらばということだな……!」

 

その表情を見るに、ティルティにもそこまでの余裕が無いとオルタは判断する。

黒龍の威光そのものを表現しての精神干渉術、それはマドラーシュの理の内にあるかも怪しいと言えるほどの大掛かりなものだ。

イメージの維持だけでもかなり精神を持っていかれるのは自明の理、長引かせるのはむしろこちらの不利になる。

その意図と見解はまさに全会一致、キュイとセリアードはここぞとばかりにもう1段魔力のギアを上げて弱体化している『竜紋砲』を押し飛ばさんと術の威力を引き上げていく。

残り二人はタンク役が先行する形で、最後の接敵に挑んでいく。

 

「その醜い思想でどれほどの犠牲が出たか、その身で思い知れ!」

 

これまで幾度も大地を揺らしてきたウィンの拳、それがそのまま『点火する偶像』にストレートにヒットする。

断罪の意を込めた土属性の魔力は、そっくりそのまま命中時の衝撃に置き換えられている。

ウィンのガタイの良さも考慮すれば、その威力は言うまでもなくシンプルに強大だ。

それなりに堅さであるはずの『点火する偶像』の外殻に対して盛大に罅を入れる程であった。

 

「その狂気染みた信仰に囚われた時代なんてさっさと終わらせて然るべきだ。夜明けとは行かずとも、まあ陽光くらいは差させてもらおうか!」

 

ウィンに倣う形で、オルタも至ってシンプルな得意分野でトドメを刺さんと動いていた。

静かに一呼吸、いいかえれば一拍置き、自身の成し得る最大効率の魔力噴射と共に一気に攻勢に出る。

直線的軌道を三度描き、最後は頭上からの兜割りから元の位置に戻るという瞬時の四連撃。

破魔の意をこれでもかと込めた光属性魔力は、自身の生家を象徴せんとばかりの暖かな眩さをどこまでも表していた。

さながら、新たな時代の日の出を象徴するかの如く斬撃(アーケインスマッシュ)といったところか。

真下に黒龍の呪詛があることを忘れ去りそうなくらい、鮮やかなフィニッシュ。

 

「ぐ、おぉ……この、異端者共めがぁ……」

「はいはい、とっとと渡すもの渡してすっこんでなさい」

 

完全に戦う力を無くして、挙句『点火する偶像』の形態すら維持できなくなっていた。

そこを待ってましたと言わんばかりに、ティルティは最後の締め作業をそそくさと行う。

崩壊しかけている影武者と懐から取り出した精霊石の間に、とある術におけるパスを繋いでいた。

 

「これってマッドが使ってた魔力を吸うヤツじゃん。ティルティも使えたんだ~、やるじゃん!」

「元々私とアイツで共同開発した術の1つだもの。この私に使えない道理があると思って?」

 

これこそが『トリーズン・ディスチャージ』の本来の使い方である。

対象の魔力を吸って己がものにするというマドラーシュの使い方は、当然暴挙以外の何物でもない。

ヴァンパイアの再生用魔力を取り込むくらいならいざ知らず、荒れ狂うグリフォンの魔力をそのまま自身に纏わせるなど正気ならば誰もやらないことだ。

もう一人の腐れ縁から人でなしだ何だ言われているティルティとて、その一線を超えることは流石に出来ない。

というより、平然と超えては普通に戻ってくるマドラーシュの破天荒&やりたい放題ぶりがひたすら異常なだけである。

 

「……ふう、やっとキーストーンを外せたわ。全く、あんな欠片でもここまでしないといけないんだから物騒なものね」

「ありがとうございます、ティルティさん。これは後でマッド様に渡さないとですね」

「大小の差あれど、もはやキーストーンだらけになってきたね。これでまだ氷山の一角っていうのが怖いんだけど……」

 

セリアードが流れ着いてからキーストーン絡みの事件が増えだしてはいるものの、そもそもそれ以前も全く発生していなかったわけではない。

マドラーシュがレオンやカルシオンと共に解決してきた過去の案件もいくらか存在している。

ちなみに、その時に回収したものはレオンが管理しているので、リスク分散としても申し分ない状況だ。

 

「さて……流石に骸骨やら悪魔は売り切れのようだね。あっちもようやく一仕事終えたってことかな?」

「この分なら、俺たちは予定通りに動いても問題なさそうか……全く、あの方には本当に頭が上がらんな」

 

裏で動いていなかったら、果たしてどれほど面倒なことになっていたか。

旗印が裏方も兼務するなど、本来ならばあってはならないこと……少なくともウィンはそう思っている。

王族、それも歳にして10も下の男子にオーバーワークをさせてしまっているという事実は最大級の敬愛を持つからこそ受け入れがたい面があるのだ。

 

「むしろあっちは楽しそうにやってるんだし、いちいち気にする必要ないんじゃない?そんなことだからウィンは老け込んで行っちゃうんだよ」

「いや、それは今関係なくないか!?俺は純粋にマドラーシュ王子を労っているだけで……」

「どうせ言ったってあれこれ理詰めで捻じ伏せるんだから、いっそ好きにやらせておけばいいのよ。アイツはそうやって上手くやってきて早7年なわけだし、近衛ならどっしり構えるくらいじゃないとねえ?」

 

ある意味では破天荒とのお付き合いにおいては欠かせない事項でもある。

何をしでかすか分からないのならば、もうどうとでもなれと手堅く手広く構えるだけ。

いちいち気を揉んでいては、胃がいくつあっても足りなくなる……そういう意味では、アニスフィア以上の胃痛製造機でもある。

無論、気を回している面もあるから凶悪度は幾分か緩和されているが。

 

「流石は7年のお付き合いですね……私もそうやって考えられるようになれたらいいんですけど、やっぱり心配になっちゃって……」

「セリアードはそのままでいいと思うよ?むしろ熟年夫婦染みた思考が出来るティルティ嬢が特別なだけさ」

「滅多なことを言わないでちょうだい、ユフィリア様との血と血で争うような決闘なんて勝ち目が薄いし死んでもゴメンよ。無駄口叩けるくらい元気があるなら、とっとと王城内の掃除に加勢に向かいなさいな」

 

この時、キュイとロムの軽口2枚看板は思った。

『それって、結局は満更でもないってことだよね……?』──と。

絶対に呪われかねないと判断しては口を閉ざしたのは、まあ賢明な判断だろう。

 

 





何だかんだ、この5人はバランスがそこまで悪くないんですよね。
キュイ・セリアード・ティルティと後方に寄っているが全員が範囲攻撃、ついでに言うなら妨害持ち。
ウィンはきっちり攻撃を受け持って相手にデバフを放ったりと補助も出来て、オルタが器用に遊撃且つダメージディーラー。
クセこそあるが、こんな急ごしらえなメンツをきっちり纏めたオルタは何だかんだでめっちゃ有能でマドラーシュの代理としては満点。
だからこそ全面的に信頼を向けられているというわけです……お陰でユフィリアからは盛大に嫉妬されるわけですが(おい
というわけで、案の定長くなりましたがそこそこ書いてサティスファクションした……はずです。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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