今度はユフィリア・イリアの方のバトルパート。
ちなみにこの相手は、FF10-2のアヤメタケ&ブラックエレメンタル……通称『あやしい二人』です。
インターナショナル版で追加された魔物トーナメントの中盤の壁……って、分かる人いるんですかねこれ。
まあいい感じの強いモンスターってすぐ出てきたのがこいつらだから仕方ない。
『点火する偶像』が打倒されるかどうか、ちょうどその頃。
もう片方の離宮では、未だ3つの戦いが繰り広げられている。
それぞれ規模としては、講演会場の戦いよりは小さいかもしれない。
しかし、内2つの人と魔のぶつかり合いはなかなかの入り乱れっぷりを見せていた。
「これだけ炙っているののに焦げ一つつかないとは……キノコとしてどうなのですか」
「それは当然でしょう。この身は異界で生息する中でも特に危ういとされる
「……まあ、観賞用としても論外というのは分かっていましたけれどね」
軽口紛いのやり取りが聞こえてくる辺り、膠着状態に見えなくもない。
とはいえ、それは見た目だけ……内情は完全に砂上の楼閣そのもの。
その理由はイリアが愚痴を零した通り、あまりに相手が硬すぎることにあった。
炎で出来た球やら矢やら鞭やら、どれにしても効き目があまりに薄すぎる。
植物性の魔物に火が通らないことはそうそうない……だから、まるで通用しないなんてことはない。
見た目こそ奇怪だが、臆することなく相手をしたのはこの認識があってのこと。
ちなみに、ユフィリアが別属性の術をぶつけても同じことであった。
この見た目にそぐわない意味不明なまでの耐久性、もはや不気味と言える領域に差し掛かっていた。
……そもそもキノコが口から言葉を発しているという時点で不気味極まりないのだが。
「では、そろそろお返しと行きましょうか!『ファイアアロー』!『ファイアボール』!『ヘルファイア』!」
挙句の果てには、遊びに興じるかのようにイリアが放ったものと同系統魔法を返してきていた。
それも、その威力やら規模を数倍に返してくるというおまけつきで。
例えば同じ『ファイアアロー』でも、即席で弩砲を設置したか如くの量が放たれている。
それに並行して2つの火炎が襲い来るのだから、本当に洒落にならない。
しかし、その高威力の魔法の数々もこの魔物の脅威の一端に過ぎない。
そのことは、これまでの短い攻防で既に理解していた。
「飛来の兆候あり……本当に鬱陶しいし陰湿ですね!」
それは時折傍目で確認しているユフィリアも周知のことであった。
アヤメタケからよりおぞましい魔力の滾りを即座に感じ取り、それぞれ適したやり方で仰々しいくらいに距離を取っていく。
撒かれたのは、その醜悪な魔力がこれでもかと表出されている胞子であった。
キノコ型の魔物だからこその、ありふれた攻撃手段だが……忘れてはならないのが連中の持つキーストーンの存在。
おぞましく強化した魔力を取り入れることで、これでもかと毒性を盛った凶悪範囲魔法に化けてしまっていた。
この場にティルティがいればそれなりに目を輝かせていたやもしれない……と言えば、その厭味っぷりも理解できるだろう。
「魔力の感知能力は上がっているようだな。──それが信仰に反して得たものでなければ、どれほど誉れなことであったか!」
「生物として持ち得る能力を拡張しただけです。信仰だ何だ、そんなものを持ち出して何になるというのですか……!」
きっちりと片割れも範囲外へ離脱していることを確認しながら、視覚外から飛んでくる魔法の兆候もきっちりと掴みつつ回避から反撃。
マドラーシュやオルタにとっては当たり前のマルチタスクを、かろうじてとはいえユフィリアもこなしつつある。
実戦経験は不足気味でも、ユフィリアの実力はここに来て明らかに引き上げられていた。
独自とはいえ、マドラーシュの思考パターンに基づいた魔力制御と急場しのぎとはいえグランナイツの一部に叩き込まれた理論が早速生きている。
特にぶっきらぼうながらもイグノックスから叩き込まれた防御術、これが相当功を喫している。
「そんな無駄なものに現を抜かして魔道の道から外れるなど、それこそ愚かであろう!『エクスプロージョン』!」
「何とでも言いなさい。私はこれからもあの方の足跡を辿るまでのことですので──『サイクロンスクィーズ』!」
ひたすら不気味でおぞましいアヤメタケとは対象的なこちらは、魔力そのものが形を成したより精霊に近しい存在と言えなくもない。
どこぞの破天荒の彫魂石と似通っている黒色であることから、差し詰めブラックエレメントといったところか。
異界における上位の純粋魔力生物はその色彩通りの性質を……早い話が、ほぼ全ての属性の魔法を披露してきていた。
それならばと同じく全属性適性を持つユフィリアが対抗馬となろうとするも……こちらも状況としては似通ってしまっている。
即席で『エクスプロージョン』が放たれるが、その威力はかつてのユフィリアが放ったそれを平然と凌駕していた。
直に食らったら勿論即終了だが、ユフィリアも即座に対応する。
爆発の前に反発属性……水と風の混合魔力が織りなす水の竜巻で閉じ込めては威力の緩和を図った。
ユフィリアは風属性魔力を以てしてブラックエレメントの背面に回る。
狙い通り爆発の範囲を抑えつつ自身が逃れることを確認するや否や、今度は雷と光の魔力を纏いながら
「精霊の加護を伴わぬ攻撃など痛くも痒くもないぞ!」
「近接戦においてもあちらより堅いと来ましたか」
ブラックエレメントが扱う一つ一つの魔法は明らかに威力重視の重いものばかりだ。
とはいw,時折凶悪な胞子を放つアヤメタケと比較しても、接近できる分まだ相手はしやすい。
最初はそう判断していたが、やはりそう上手く事は運ばない。
隙を突きやすいとしても、近接攻撃すらまるで通らないとなれば……。
(……悔しいですが、私に出来ることはそう多くはありませんね)
更に、このエレメントは明確に弱みと言える属性が存在しない。
唯一光属性だけ扱う様子が見受けられなかったので、一縷の望みに賭けて雷と共に放っても結果は先程と同じく。
アヤメタケでさえ、一度だけ炎の魔力を伴った一突きを掠らせてほんの僅かに傷を与えられた分まだマシだった。
想定以上の面倒臭さに、もはや苦笑いが浮かんできてしまうほどである。
しかし、それでもなお己の出来得る最善を探る姿勢を止めることはしない。
──現時点で力不足であることなど、百も千も承知の上なのだから。
「ほんの一瞬だけ加勢いたしますよ!『ファイアボール』!」
「片手間とはいえありがたい支援だ──せっかくだから合わせるとしよう。『ウォーターバレット』!更に『ロッククラッシュ』!」
「このっ……私の相手など片手間で済むということですか!」
そして距離を離していても油断ならないのが魔法使い。
異界の魔物になってしまったら猶の事距離など関係が無かった。
イリアの魔法と同種のものを返す遊びの片手間で、アヤメタケが多数の火球を飛ばしてくる。
並の魔法使いならば強大な1発を放つのだが、こちらはそこそこの大きさの火球を範囲攻撃として扱っている。
その支援に合わせるように、ブラックエレメント側も小規模魔法を連続で簡易詠唱しては攻撃範囲の拡大を狙っていた。
対するイリアは胞子散布の範囲から離脱している影響から援護に回ることが出来ずにいる。
半ば舐めたような行動にイリアも怒りを示すが……それでも迂闊な攻めは悪手であることへの理解から何とか堪えていた。
「迎撃だけなら問題ありませんとも。『ウィンドカッター』!『アースハンド』!『アイシクルウォール』!」
アルガルドと同じく、ユフィリアも顕魂術に手を染めて間もなく連続発動は可能としていた。
更に言うなら、中規模までならば一極集中という条件下で4連続まで可能としている。
『ウィンドカッター』で多少でも相殺して、『アースハンド』は疑似的な土壁となって主に『ロッククラッシュ』を和らげる。
『アイシクルウォール』が最後の防壁となり、残る火と水の共演をかなりのところまで威力を減衰させる。
それでもなお向かってくるが、無詠唱として唱えた風属性の加速術でその場から離脱することで回避。
相手が放った威力を即座に判断及び必要な相殺分を計算、コンマレベルで己の引き出しで出来得る最大限を引き出す。
粗さはかなりのところで見受けられるが、恐らくイグノックスかカルシオンが見たら口端を上げていることだろう。
「案の定というべきか、攻防共に絶望的な戦力差……思わず笑えてきますね」
「極端とさえ言える悲観的なお言葉の割には、随分と余裕そうですね……」
「事前に分かってさえいればこんなものですよ。それなりに凹んではいますが……現実はちゃんと見えていますし、見なければなりません」
ユフィリアが事前に学んでいたのは、何も顕魂術に限った話ではないということ。
そもそも講演会の前にラインヒルトの元に訪れた最大の目的は、そういう意味での深みを知ることにあったのだから。
その上で顕魂術を学び、その思想を理解して……その真意の理解にも至った。
無論、その際に呆れと憤慨が起こったのは当然で……それらこそ今回のユフィリアの行動原理の一つでもある。
「それに、あの方ならこんな時こそふてぶてしく笑みを浮かべているはず……ならば、私もそうするまでです」
その結果がこのトレースっぷりだ。
どうしようもない現実を前にしても、その足掻きを貫き通す。
地に足をつけ、現実を見据え続ける──名実ともに、かの破天荒に近づけているとすら言えた。
だからこそ、このような雑音もまるで気にならない。
「現実が見えているならば、抵抗を止めて我々に下る方が無駄なく終わると思うのですが……?」
「そうすんなり行かぬだろうよ。僅かな望みでも至れるとつい手を伸ばす……狂人とはそういうものだ。哀れなことだが、仕方あるまい」
柳に風の姿勢を貫くことなど容易いことだ。
馬耳東風ともよく言ったものだが、そもそも今の彼らは異界の生物に堕ちているわけで。
そんな者が発する戯言を聞き入れる程の博愛主義など、今のユフィリアは持ち合わせていない。
更に言うなら、この時一瞬だけ意識が外に行ったのを誰も気が付いていないことも致命的である。
「あなた方の無駄口は聞くだけ時間の無駄です。早く続きを──いや失礼、どうやらその必要はなさそうです」
「おや、ようやく観念しましたか?流石はユフィリア様、そういうことでしたら今からでもその邪法を捨てて……」
「──待て。流石にこれは心変わりが急すぎやしないか……っ!?」
ブラックエレメントが緊急信号を発するのと、それが二体のいる地点に着弾したのは完全に同時であった。
ドラゴンのブレスを思わせる光属性魔力の奔流による上空からの奇襲だ。
まるで兆候が無かったことと、計算され尽くされた無慈悲なまでの広範囲っぷりのお陰で直前で気付けても回避は許されず。
更には、ユフィリアとイリアの立ち位置には何の影響も及ぼしていないという徹底っぷりと来ている。
一見単純な術に見えて、豪胆ながらも緻密にして静と動を兼ねた鮮やかさを持ち合わせていた。
──なお、ユフィリアはともかくとしてイリアはいきなりの事態に完全に混乱状態なのは言うまでもない。
「老害の方はそれなりに危機察知が利くようですね。──ネズミの分際で随分と着込んでいるようですが」
「生け捕りにして手頃な
今北産業とでも言わんばかりの声調の方を向くと、それはそれでトンデモ光景が広がっていた。
そこにあったのは、夜空を彩らんとばかりに輝くチャリオットのようなナニか。
まるでサンタクロースが駆るソリのように空中を自在に舞っている姿は神秘的かつ幻想的であろう。
普通ならば間違いなく目を奪われるのだろうが……問題は乗車している人物であった。
赤い服を着た老人ではなく、明らかに侍女ですよと言わんばかりな女性2名なのだ。
思わず目を擦ったり、頬を抓ったりで夢ではないかと確認してしまうことだろう……現にイリアはそうしている。
しかし、彼女の二つ名を考えたら別に何らおかしなことではない。
この場においてユフィリアだけは、そんな細かいところの理解にまで及んでいた。
「そのチャリオット紛いはアルガルド様の術を参考にしたのですか?主同様、相変わらず抜け目がないですね……この場では
「王城内ですし、いつも通りで問題ありませんよ?恐らく外向けで使われることも大幅に減ること請け合いでしょうから」
「これだけ派手にやらかせば、まあそうでしょうね……」
チャリオットの高度が落ちていくと共に、乗車している者の詳細情報も明らかになっていく。
片や長身かつ赤の長髪、仮面舞踏会にでも出るのかと言わんばかりの仮面が目立つ。
もう片方はそこそこに陰の気を醸し出すさまが逆にミステリアスとも思わせる群青色の髪を後ろで束ねていた。
ユフィリアは勿論の事、イリアも二人の外見には果てしなく見覚えがあった。
「セラにプリシラがどうしてここに?そもそもそのチャリオット……あの、まさかとは思うのですが」
「アルガルド様の『フリーライド・メガロアビス』開発と並行して編み出しされた顕魂術──飛光魔戦車『フォトンブラズニル』でございます」
「一周回ってよく考えられたネーミングはさておき、やはり貴女方も同じくですか。そうなると……っ!?」
『そもそもブラズニルでは帆船では?』とか突っ込みたくなるだろうが、そこは野暮というもの。
そこはやりたい放題従者の片割れ、ノリと勢いで名付けただけと思って頂きたい。
そんな閑話は端に追いやるとして……後輩からしれっと出てきたその単語で、イリアも凡その事情を察するに至ることとなる。
更なる追及を繋げようとしたところで、おぞましい魔力によって水を差されることとなるわけだが。
「よもや王女殿下に続く形で飛行手段にまで至るとは──ああ、本当に惜しい……これで加護を賜っていればどれだけ賞賛されていたことか」
「それこそ時代の主役を担う存在……王にもなれただろうに。精霊に愛されなかったが故にその才を認められないのだから、何とも哀れなものだ」
「あれだけの規模の魔力を叩きつけてなお傷を負っていないだなんて……一体どうなっているのですか」
間違いなく自身とユフィリアの攻撃力を合わせても及ばないほどの一撃であった。
そんな不意打ちですらもまともなダメージに至らないという現実
これには流石のぶっ飛び侍女でも驚愕しているのでは……と乱入者二名の方を見やる。
「セラ先輩、殲滅許可はまだですか?崇高たる御方に対して知った風な戯言をほざくあの老害共を一秒でも早くあの世に送りたいのですが」
「一応生け捕りにしろとの命ですので──あの粋がっている状態をどうにかして、達磨の塩漬けにでもして同じ口を叩けるか試してやりましょう」
──まるで意に介してすらいなかった。
戦慄を覚えるどころか、意気揚々と主に対する不敬極まる物言いに早速の極刑宣言を下すプリシラ。
一見ストッパー役を担っているように見えて、更に過激というか残忍極まりないセリフを堂々と言い放つセラ。
どちらも怒りに反比例するような、それはもう誰が見てもイイ笑みを浮かべており……もはや怒涛般若以外の言葉で言い表せるかどうか。
「私も結構キているつもりでしたが、この二人にはまだまだ及びませんね……あれもまた、鬼にならねば見えぬ地平なのでしょうか」
「恐れながら……あれは踏み外しすぎてしまった末路であり、決して見習ってはなりませんよユフィリア様」
「……こほん。分かっていますとも。だからイリア、そんな真顔にならないでくださいちょっと怖いですので」
友人(仮)であり導でもある人物への侮辱という意味では、ユフィリアも相当気分を害していることに違いはない。
が、その度合いをこのぶっ飛びやりたい放題侍女タッグと比較するのは流石に酷にも程がある。
流石のユフィリアも、あの破天荒を神聖視ないし唯一神のような扱いはしないし出来ないのだから。
割とタチの悪い底無し沼に浸かり込んでいるというのは確かではあるが。
「おやおや、絶望的状況を前にして命乞いがてらの道化劇場かな?まあ、それくらいの時間は「喧しい黙れ汚い口を閉じろというか息をするな廃棄物安定のクソな魔力駄々洩れ蛆虫キノコが身の程を知れ無様に死んで詫びろ」ふべらっ!?」
「な、いつの間にこれほどのものを仕掛けてってワシにも影響がああああ!」
唐突に起きた魔力爆撃、まるでギャグマンガ調に吹っ飛んでいくアヤメタケ。
実はセラが『フォトン・ストリーム』を放った直後からしれっと魔力地雷を作っていたのである。
それも、風属性魔力をふんだんに使ってノックバック効果をとことん高めた嫌がらせ特化の地雷というおまけつき。
範囲もきっちりと2体とも捉えていて、ブラックエレメントもすっ飛んでいく……これはとばっちりとかではなくただの自業自得である。
「……プリシラ一人で大丈夫なのですか?」
「普段私たちの前以外で滅多に表情を崩さないあの子がああなったら、もう手のつけようがありませんね。心臓を穿たれてもなお潰しにかかるでしょう」
苦笑こそあれど、その表情には一切の不安は感じられず。
先輩後輩としてはそこまで長い付き合いではなくとも、マドラーシュという絶対的存在を崇め仕える同志としての信頼には何も関係は無かった。
だからこそ、セラは安心して余った方のブラックエレメンタルを追うことが出来るわけで。
(私たちですら防衛は出来ていたから、問題は如何に仕留めるか……ですね)
今のユフィリアはまさに、先達の戦いっぷりを観察する者だ。
あのマドラーシュが見出しては育て、今も主と共に先を歩む存在。
この道を歩み始めた彼女にとっては、一つでも盗めるものがあればと観察できる絶好の相手とも言える。
そんなプリシラは、逃走など許さんと言わんばかりに空中足場
静謐ながらも獰猛な目つきも相まって、もはや猟犬と見紛いかねない状態だ。
喧しいのがよほどお気に召さないのか、完全に狙いはアヤメタケ一点集中である。
きっちりと分断する形にこそ出来てはいるのだが……イリアの懸念も尤もなところだ。
無理やり吹っ飛ばしこそ出来ても、それが傷になっていないという事実に違いはないのだから。
そこに追撃のように放たれるのは、殆どノータイムのナイフ投擲だ。
「折角吹っ飛ばしたというのに、追撃がナイフ投げでは悲しいものですねえ!ここは温情として受けて差し上げましょうか」
空中で放たれていたとしても、その姿勢には一切のブレは起こらず。
吹っ飛んでいる相手に対してもきっちり全弾当てる投擲力は流石というべきか。
貫通力がやや高いからか、きっちりと刺さってはいるのだが……致命打には程遠い。
本当に刺さっているだけで、アヤメタケにとってはただの装飾品にしかなっていないだろう。
「……まだまだ足りないですね。ナイフダラケダケになって頂くとしましょう」
「ほう、それはまた一興ですが……そろそろ反撃を入れさせて頂きましょうか!『ファイアストーム』!」
ダメージを貰わないとはいえ、やられてばかりというのも飽きてきたらしい。
イリアとの打ち合いでは放たなかった、炎と風の二重属性魔法をここぞとばかりに放つ。
更には自身の胞子も巻き込むことで、その危険性を更に増すという陰湿極まりない行為に走っていた。
「って、こっちにまで飛んできますよねこれ!──『エアスクリーン』!『ウォーターガン』!『ウィンドカッター』!」
その派手且つ危険な胞子付き炎風は、後方のユフィリアとイリアにもきっちり襲い掛かる。
即座に攻撃範囲を察知したユフィリアは、風属性魔力による防壁を作り上げた。
更に念には念を入れての、クリスティーナよりイメージを教わった魚を模した強固な水属性魔力の弾丸に風の刃を放って疑似的な水と風の防壁を作り出す。
相殺はできずとも、緩和くらいならば特段問題は無かった。
「……これだけあれば事足りますか」
当のターゲットであるプリシラには一切の動揺は見えず。
即座に範囲から離脱しつつ、ただ淡々と詠唱の隙を狙う。
先の宣言通り、更なるナイフ投擲を浴びせては……もはやハリネズミタケとでもいえるような様に変えていた。
無論不意打ちではあっても、やはりダメージが通っている気配はないが。
「遠距離物理手段は無くなったようですね、ミステリアスで麗しい侍女よ。さて、次は何をして楽しませてくれるのかな?」
「どうやら相当感度不良のようですね……ますますもって救いようのない。三千倍にしても同じことでしょうけれども」
しれっとR指定と間違われそうな文言、間違いなく主がいたらハリセンものである。
この場でセラ以外誰も気が付かないのが最大の救いか。
「投擲に魔力を込めていた、それだけのことだろう?全く、ハッタリをかますのも大概に……」
「ああもういいです甲斐性なしには興味ありませんので──出血、麻痺、束縛、簡易衰弱、苦痛、魔力流動減衰、湿潤……そして疑似黒龍圧力呪詛。これだけ浴びれば十分を知るには丁度いいでしょうね。『リーサルドーズ・ライオット』」
仰々しく指を鳴らす様は、まさに主の受け売りと言うまでもなく。
アヤメタケはどこかからか現れた魔力の鎖で拘束される。
これまでにない強烈な束縛効果に驚愕するや否やで次に起こったのは、急に起こった体内の魔力膨張であった。
──いや、それは膨張どころか暴走や氾濫と称するべきだろうか。
「な、ばんどぅあぼるれぇはぁ!?」
「よほど私の魔力が気に入ったのですね……ああ気持ち悪いことこの上ない、吐き気がしてきます」
先ほどまであらゆる攻撃が通じなかった憎たらしいその顔は、あっという間に面影が無くなるほどに醜くなっている。
キノコとしての体を成していた魔力で構築された肉体も、ただの魔力の塊でしかない。
ならばと、溢れ出る魔力を放出しようとするも……まるでうんともすんとも言わない状態であった。
こうなってしまえばもはや詰み、そう判断してかプリシラは静かにユフィリアとイリアの元に歩み寄る。
「まさか、先ほどのナイフ投げは暴走させる魔力を植え付けさせるために……?」
「一つ一つは微量でも相乗効果を発揮すればいずれ致死量、過剰は毒ということです。ちなみにこの拘束は対象の魔力量に応じた魔力流動阻害効果が含まれています」
「……容赦ない側面があるとは思っていましたが、それでも猫を被っていたのですね。マドラーシュ様の侍女としてはあるべき姿なのかもしれませんが」
「あらイリア先輩、そこまで褒めちぎられると……気恥ずかしさのあまり、ついついその辺りの魔力罠も爆発させてしまいそうです」
「「や め て く だ さ い」」
そんなアホくさいやり取りをしている内に、アヤメタケの体内の魔力暴走もピークに差し掛かっていた。
もはや言葉を発することすら叶わず、拘束されているので逃走も不可……何もさせてもらえない状態だ。
いい加減その醜態を眺めるのも飽きたのか、もはや視界にすら入れずにプリシラは再度指を鳴らした。
その音がトリガーとなり、暴れる魔力は余すことなく爆発のエネルギーに変換される。
無慈悲にもほどがある爆発オチに、観客の二人はもはやナニモイウコトハナイという状態になってしまっていた。
「これにて生け捕り完了。ミッションコンプリートでございます」
「本当にかろうじて逝っていないだけですね。ところで、セラの方は……」
全員が未だ続くもう片方の戦いに目を向けるのは自然の事。
様々な爆音は耳に入ってきてはいたので、大体の光景は想像出来た……はずだった。
「ふむふむかろうじて殺さず。流石は精密無比のプリシラといったところですか」
「余所見をしている場合か貴様ぁ!『ダークライトウェブ』!」
ブラックエレメンタルの魔力はそれこそアヤメタケよりも強靭だ。
どこか相手を舐め腐っていたあちらと違い、こちらはまだ傲慢さが垣間見えるというだけで油断はない。
そこから発せられる魔法は当然のように桁違いの威力。
普通ならば一発即あぼんと言わんばかりだが……。
「ああでもこれは困りましたね。後発である私のハードルが上がってしまうではありませんか!」
「この、これでも無傷だと……!?」
しかし、その威力はまるで発揮されず。
相手が『光誓の座天使』であることがそもそもの問題とも言えるが。
ユフィリアは一度だけだがその恐ろしさを垣間見ていることから、その一端を理解してしまっていた。
あのマドラーシュを以てして『ワンマン機動要塞』と称される最強侍女の強みは至ってシンプル。
圧倒的光属性適性由来の、圧倒的防御力と無慈悲なまでの持続治癒術。
何も考えずにただ魔法を放っているだけでは絶対に届き得ない……まさに悪夢のような存在だ。
そもそもの初見であるイリアは、もはや頭を抱えている状態ですらある。
「どうしてセラはアレを相手に平然と打ち合いに挑んでいるのですか……本当に人間なのですか?」
「それでこそマッド様の専属侍女第一位ですから。主の障害は何が何でも排除する忠誠心から来る圧倒的な魔力……あれを見てしまうと、この身もまだまだ未熟だと実感いたしますね」
「あの光景と、今のプリシラの発言で色々なものが壊れかけてきているのですが……ユフィリア様はよくぞ平常でいられますね」
ブラックエレメント側も十分おかしな魔力を持っているはずなのだ。
そこから放たれる闇属性魔ベースの広範囲の魔法も、本来ならば十二分に脅威と言える。
それをどこからか取り出しては投げられた風の精霊石を基軸とした光属性魔力の号砲で容易く打ち消しては……もはやナニモイウコトハナイ。
(しかも光属性1本でこれを為しているのがまた……別の意味で自信がなくなりそうです)
あえて隠しているのならばその限りではないが、基本的には属性適性が光の一転特化であることの証明でもある。
しれっと精霊石を用いて強引に属性付与をしているが、それでも基本は光の単一であることに変わりはないわけで。
それは逆に言うと、属性ごとの適性を利用した柔軟な戦法が取れないことと同義。
……早い話、セラの顕魂術士としての在り方はプリシラとは対極にあるということだ。
主の障害を全て光の下破壊しつくす、一般的な精霊のイメージからはかけ離れ過ぎた暴虐非道とも言える在り方。
クロエとして目にした際、大量の返り血を浴びながらもどこか美を感じてしまったのは……その根源の輝きがあってこそだろう。
「では、そろそろこちらも決着と参りましょうか!」
「させるか、『ファイアストーム』──っ!?待て、無詠唱で何だその威力は!?」
「ちょっとシフトアップしただけですのに何でそこまで驚かれなければならないのでしょう?だからこそ貴方がたはドンガメなのですよ!」
『何を言ってるのだこのぶっ飛び侍女は』……という、ユフィリアとイリアの内心のぼやきは見事にシンクロしていた。
このえげつないまでの威力コントロール、そしてそれに伴う厭味ったらしい変調は言うまでもなくマドラーシュ譲りである。
ただの脳筋ではなく、如何に効率よく自身の高火力を通すか考えられた……言うなればインテリパワー戦術といったところか。
ブラックエレメンタルの放つ炎風は無詠唱で放たれた『フォトン・ストリーム』に飲み込まれ、更に流れ弾のように掠らせていた。
その着弾を他者が確認するや否やの時、既にセラは懐に潜り込んでいた。
当然のように作られた、光り輝く切っ先を持つ疑似的な槍を構えている。
「ちぃっ……そんな急ごしらえの槍で、我が信仰を貫けると思うたか!」
「はいはいフラグ立てお疲れ様でございます。『オネスティチャージ』
──渾身の突きが放たれると共に、光槍は無残にも砕け散る。
当人とプリシラ以外におって予想外の光景だが……別の驚愕はすぐに生まれることとなる。
何せ、その場の空気が振動を引き起こしていたのだから。
相当なまでに凝縮された膨大な魔力を前にして、世界そのものが恐怖しているような錯覚を感じるよう。
それほどの魔力を伴った突き……のような何かの直撃を貰って、果たして無事でいられるのか。
答えは言うまでもなく、ブラックエレメンタルは完全にその肉体を維持する術を失ってしまっていた。
「虎の威を借るばかりの信仰など愚の骨頂。崇高たる存在は愚か、この卑しい下僕の身にすら届かないことなど自明の理というものです」
座天使は無情に豪語する。
それと共に、貴族崩れその2は人の身に戻りながらその場に倒れ伏した。
あれだけの凝縮大威力を貰えば、当分は意識が戻ることはないだろう。
むしろ事切れていないことが不思議なくらいである。
「セラ先輩、お疲れ様です。それにしてもこれまたとんでもない火力増強手段を得たものですね……」
「片方はマッド様の『トリーズン・ディスチャージ』から啓示を頂きまして。もう一つはまあ、娯楽書籍にあった『得物の破壊と引き換えにした爆発攻撃』から拝借いたしました」
後者については、武器をホイホイ作ってはすぐに爆発させる贋作者が主人公とか何とか。
魔力刃を武器と見立てた上で破壊しているので、再構築の手間を考慮しなければ不意打ちの一撃として極めて強力無比とも言える。
前者については視覚的には分かりづらいところだが、早い話攻撃を当てた瞬間に直接相手の魔力を奪うというやり口である。
マドラーシュの『トリーズン・ディスチャージ』と異なり、最接近時限定でしか使えないことが欠点に当たる。
が、その分相手の装甲値や攻撃数値をそのまま奪えるという凶悪な長所でお釣りが来るほどであろう。
「あの、娯楽書籍とは……?」
「この国以外の物書きが頭の中の彩りを表現した、マッド様曰く可能性の塊とのことです」
「……そんなものからも着想を得るのですか。もはや何でもありですね……」
「むしろ魔法の方が色々縛られ過ぎなのですよ。どうです?これを機にイリア先輩もこちらの道に……」
「それはともかくとして……この二人は拘束した上で見張りをつける、でよろしいですよね?私はあちらに合流したいのでイリアに任せたいのですが……」
しれっと勧誘の流れに持ち込む地雷系侍女への咄嗟の牽制も兼ねての進言である。
万が一……いや、億が一にもぶっ飛び侍女を増やすわけには行かない。
イリアにはせめてもの良心でいてもらいたい、そんな切な願いが大いに込められたナイス割り込みである。
「そ、そうですね……姫様の方はよろしくお願いいたします、ユフィリア様」
「では、こちらは私がつきましょう。万が一の場合はセラ先輩の方がより安牌ですからね」
その理由は、ユフィリアも知るところであった。
クロエがセラであるということは、それ即ち光属性本来の特性である回復術も備えているということだ。
しかも、かの黒龍の呪詛由来の毒やら何やらも治せるほどの腕前とあらば……これ以上に無い救援役だ。
詳しい事情を知らないイリアも、特段疑問を抱かずこの布陣を無言で了承の意を示していた。
それを確認するや否や、セラとユフィリアは駆け出す。
「……申し訳ありません。結果的に貴女たちにも手間をかけさせてしまって……」
「いえいえ、お気になさらず。本来ならば蛮勇に駆られるところを必死に抑えて、生き延びるという最善を尽くした……そんな貴女を責めたり致しません。むしろマッド様からお褒めの言葉を頂けると思いますよ」
実際問題、事無き事を得ただけマシと言える状況だ。
色々な意味で限界突破状態の侍女二人が間に合っていなかったら……言うまでもない。
自身の力量、そして知り得る限りの全体の状況を考慮している意味でもユフィリアの行動は悪くても及第点。
「それに……我々の中でもユフィリア様も立派な守護対象ですので。だからどうぞ、大船に乗ったつもりで構えていらしてくださいな」
「全く、どういう意味ですか一体……ありがとうございます、セラ」
完全に意味が分かっているわけではないが、少なくとも鼓舞は受け取った。
この国……いや、もしかしたら世界でも最強の侍女が並び立つとあらば、これ以上に心強いことはない。
そこには一定の重圧も含まれているが、それは今は置いておく。
今はあくまで、この異常事態に抗う以外にするべきことはないのだから。
まあアレです、本作の侍女は色々おかしいということで
むしろ彼女達の合流まで粘ったユフィリアとイリアはえらいっ!
特にユフィリアはこの展開を読んで負けない戦いをしたのだから尚更です。
実戦経験は少なくとも、頭を回すことだけは止めない……もう泥臭さ全開ですね。
無自覚とはいえ異性を追っかけるって大変なんだな~(棒)
プリシラがやったのは状態異常付与で自分の魔力を通して一気に膨張させるエグエグ手段。
強制的容量オーバーを再現させるので、防御力なんざ知ったこっちゃなしです。
イメージは某魔術師殺しの起源弾が近いところですかね……ショートさせるか回路の中を爆発させるかの違いで。
そしてセラの方は遊戯王的に言えばオネスト+銀河眼の残光龍です。
早い話瞬間脳筋火力、まあギャラクシーも大概バ火力ですからね。
ヴィジュアル的にはファイナルストライクか壊れた幻想、しかも魔力槍でやってるからやりたい放題かませるという……
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
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転天キャラでのNLとか他絡みを所望
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グランサガの二次がレアすぎて
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バトルハードモードに釣られた
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ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
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その他(そもそもの作風とか)