さて、グランサガでもこんなやついないぞな相手との戦いです。
これまた別作品から持って来てるから当然なんですけど。
時はセラとプリシラが合流するか否かといったところまで戻る。
レイニとのタッグによる2対1でモーリッツを一度は圧倒することは出来た。
しかし、そこでアニスフィアは致命的な緩みを生じさせてしまう。
その隙をむざむざ見逃すはずもなく、モーリッツはキーストーンの力を解放して──レイニからヴァンパイアの魔石を強奪を遂行してしまった。
結果、まんまと相手の計画は一段階進んでしまうこととなる。
「こちらですよ王女殿下。もしかしたらあっさりとその爪で切り裂けるかもしれませんよ?」
「いやいや、こちらならばもっと容易く……」
「何なら、ブレスで一気に吹っ飛ばすのも一興かもしれませんねえ」
ヴァンパイアともう1つの魔石をキーストーンの妖しい魔力を基軸に融合した結果は、それはもう滅茶苦茶極まりない。
見た目こそ人型を維持しているが……そんな外見に何の意味もないことはアニスフィアもすぐに理解させられる。
何せ、あっさり斬られたかと思ったらまるで手応えが無く……むしろ数が増えたのだから。
それはまさにアメーバやら何やら……単細胞生物が如く。
お陰で、同じ音声による薄汚いオペラを常時耳にする羽目となってしまう。
「ちぃっ……本当に五月蠅いなあ!そんなおふざけに付き合ってる暇なんて私にはないって言うのに!」
「おおっと、貴女がどう思おうがまだまだ付き合って頂きますよ!」
怒号がてらに撒き散らすのは、斬撃ではなくブレスだ。
喉が焼けるような感覚に構わず、かなりの火力のブレスを2体のモーリッツ目掛けて叩き込んでいく。
一切抵抗することなくあっさり葬られるのを傍目で確認……する間もなく、もう1体には素直に斬りかかる。
爪を模した二刀をきっちり振るい切り、間髪入れずに蹴りとショートブレスによる追撃で手数とダメージ稼ぎを優先していく。
明らかに大盤振る舞いと言える攻撃で、常人相手ならば間違いなくオーバーキルだろう。
しかし、そんな猛攻すらもモーリッツは避ける素振りすら見せなかった。
──無論、必要が無いからそうしたまでのことだが。
「おお、まだまだ剣筋にブレはないと……それでこそ奇天烈王女、なかなかの名脇役っぷりですな」
「お陰で我々も寂然とは無縁でいられるというもの。やはり宴というものは適宜賑やかであってものですからな」
その様は、まさにアメーバの分裂が如くであった。
4連撃によるズタズタのバラバラになったはずのモーリッツは、その断片一つ一つから新たな自分を形成していた。
その数は何と6体、しかもこれらは全て分身体ときたものだ。
最初にこの状況を目の当たりにした時は、それは驚愕以外のなにものでもなかった。
しかし、斬りかかるのが3度目くらいになって慣れてきた。
その回数が10を超える頃には、既に食傷気味である。
「……まさかとは思うけど、キジ打ちの時もそうやって分身出してるわけ?」
「なるほどなるほど、警戒を敷く時はその手もありますねえ……良い案をありがとうございます王女殿下」
「眠れなくなった時でも、雑談の相手には困らない……いや、自分と話すのはやはり奇怪ですな。それだけは却下とさせて頂きましょう」
「ああ余計なこと聞かなきゃ良かったなあ!喧しすぎてこれなら壁にでも話してる方がまだマシってやつだ!」
苦し紛れの皮肉もこうして流され、むしろアニスフィア側が煽られる始末。
自分も魔学の事になれば立て板に水になるという自覚は大いにあっても、ここまで喧しくはまずならない。
そもそも、彼女自身これまでの経験上下手に口が回る者を好まない傾向にある。
そのような人間からどのように扱われてきたか、その経験によるところが大いにあるのだが……今はそれを無理やりにでも横に置かなければならない。
「これは少々ばかりの礼でございます。『ファイアウォール』!」
「ではこちらも行きましょう、『ウォーターバレット』!」
「それに合わせるように『ロッククラッシュ』!」
火の壁が、氷と土を凝縮した弾がまとめてアニスフィアに襲い掛かる。
分身体は、ただただ口が回るだけではない。
力の強弱こそ不明だが、同じく魔法が使えては戦力として数えられてしまう。
要するに、分身の数だけまとめて魔法を放たれるという苦しい状況であった。
「いやはや、精霊の恩寵を分身に分け与えられるほど敬虔な身でむしろ申し訳ないと思っておりますよ!」
「そういう自慢はいらないっての……!」
もはや本体なのか分身体なのか分からないが、発せられる軽口は本当に腹立たしいことこの上ない。
それでも何とか沸騰しかける脳内を制御しては、何とか頭を回し切る。
真っ先に火の壁に対する安全地帯を確保すると、襲来する残り2つはあえて回避を選ぶ。
本来ならばマナ・ブレイドで叩き落すところなのだが……それをやったらますます不利に追い込まれかねない。
苛立たしい空気を醸し出しながらも、アニスフィアはかろうじてのところで冷静を保つことは出来ていた。
(コイツ、マナ・ブレイドが物理衝撃に弱いってことまで熟知してる……!)
『ロッククラッシュ』は魔法名そのままで、マナ・ブレイドの耐久度を削ぎ落せる嫌な攻撃そのもの。
そして『ウォーターバレット』の方には、内に氷を仕込んで強度を増すという効果つっぷりだ。
仮にただの水弾と判断して斬っていれば、それこそ武器の損失という最悪の事態に近づくところ。
強いて救いであることとして、迎撃対策を軸にしていたのか軌道は甘かった。
そのお陰か、回避から姿勢を整える余裕も生まれ……かろうじて頭の隅に留めておいた位置情報を基にブレスを放っていく。
それはきっちりと3体の分身に命中して、これまた為す術もなく無に帰っていくことを視認できた。
(とはいえ、分身が使う魔法の威力や範囲自体は大したことない。それこそ普通にマナ・ブレイドの迎撃か回避でやり過ごせる……けど)
斬りかかって行けば、また分裂されて距離を取られて。
それも、攻撃に力を入れれば入れるほど分裂体は増えていく……そんな気さえする。
しかし、攻め手を緩めることはいろいろな意味で不可能に近い。
(このままじゃいつまで経っても終わらない。それに、こうして手をこまねいている間にレイニが……!)
延々と続く状況の無限回廊はアニスフィアの精神状態を確実に蝕んでいた。
これが単独で戦っているならばまだ気の持ちようが違っていただろう。
何なら、まだまだ持ち応えることも出来たのかもしれない。
しかし、今は瀕死に極めて近しい状態のレイニを後ろに控えている。
問われれば間違い無く首を横に振るだろうが、そのことがネックとなっているのは明白だろう。
現状虫の息になっている彼女に影響を与えないような慎重な立ち回りを要求されている。
注意を払う要素が増えれば、それだけ神経を擦り減らしやすい。
そこに立ち回り早く決着をつけなければならないという焦りも加わってしまえば……その摩耗加速度は洒落にならないことになっていた。
ドラゴンの刻印の後押しがなかったら、恐らくとっくにへし折れていたことであろう。
「だんまり立ち尽くしは無しですよ王女殿下、興醒めしてしまいますからね!──『イルストーム』!」
幾度強烈な斬撃を浴びせても、ダメージを負っているのかどうかがまるで分からない。
明らかにピンピンしている様子から、致命打は一度も発生していないのは確かなのだろうが。
そうでなければまあまずここまで意気揚々と歪な毒の嵐を巻き起こすことなど出来ないであろう。
(多分これは本体……となれば!)
──流石にこれを直に貰うわけにはいかない。
理由は、明らかに魔法の威力が桁違いだからという単純なもの。
かろうじてその差異が分かるくらいには頭が働いているのは幸いだったと言える。
そうなれば、更なる追撃を打たせるなど以ての外だ。
分裂体のそれまで混ざってしまえば、確実に手がつけられなくなるのだから。
目に付く分裂体と共に纏めて斬り飛ばせるように、マナ・ブレイドの出力をワイド気味に広げていく。
「いい加減にぶっ潰れろ、このアメーバ野郎共が!」
「おおっと怖い怖い!お陰でまた寂しくなくなりましたよ」
とはいえ、徐々に集中力欠如の兆候が出始めている。
明らかに斬撃に余計な感情が込められるようになり、それは余分な力の入れように繋がっていた。
先ほどは後押しと言ったが……これも今のアニスフィアにとっては諸刃の剣だ。
ドラゴンもまた怒りの形相を浮かべているということ、それはアニスフィアを飲み込まんと虎視眈々と滾らせているのだから。
元々がやや傲慢に寄った気質を持っていることも相まって、モーリッツの見下したような態度は我慢ならないところなのだろう。
殊更この場面では、その点も悪い方向に働いてしまっていた。
本来自分で扱える範囲でセーブしていたからこそ、そこを逸脱してしまった時の代償はひたすらに大きいものとなる。
「っ!?やっば、ミスった……!」
そして、ここでアニスフィアは致命的なやらかしを犯すこととなる。
『ウィンドカッター』『ロッククラッシュ』『ウォーターバレット』『ファイアボール』という基本四属性が揃い踏みというなかなかの光景だ。
手早く捌き切ろうと纏めて捌こうとマナ・ブレイドを拡大していたことがまさに過ちの元。
右手に持つマナ・ブレイドの魔力刃が、いきなりその強度を失ってしまったのだ。
本来避けるべき物理的衝撃を幾度も受けてしまったことが直接的原因だが、過剰に魔力を注ぎ込んでいたこともまた仇になっていた。
判断力が明らかに鈍り、反射的な思考が出来なくなってきたところへの一斉掃射はこのミスを期待してのこと。
その狡猾なやり口に気が付けば、何とか回避を多めにしながらも立ち回ることは可能ではあった。
「まだまだ……片方残ってれば全然やれるっての!」
「そう、貴女は剣が片方使い物にならなくなった程度で折れる人ではない」
「だからこそ、完膚なきまでに砕かねばならないのだよ!」
何を知ったようなことをと毒づきながらも、留まる勢いを知らない猛攻に再度備える。
出力不安定ならばむしろ邪魔なだけ、そう言わんとばかりに右手の得物はとっくに放り投げた。
残ったマナ・ブレイドに魔力を集中させることでクレイモア型の魔力刃を形成し、両手持ちに切り替える。
「そらそら再度行きますよ、『フレイムナーガ』!」
「氷は不慣れですが、まあやってみせましょう『アイシクルレイン』!」
「ならば続け『ウォーターハンマー』!」
「熱令だけでは味気ないので『ウィンドカッター』もおまけでつけておきましょうか!」
数ある魔法はまだ放たれているが、刻印に更に魔力を叩き込むことで急加速することで最小限の動きで避けていく。
いよいよ片刃になってしまい後がなくなったからこそ、アニスフィアは一歩とまでは行かずも半歩引かざるを得なかった。
必然と攻め手が薄まるのだが……それは決して悪いことばかりではない。
むしろ、とある面では二刀を振るっていた時よりも好転すらしていた。
(……これが針の穴の如くってヤツ?)
守備や回避に偏らせることは一歩引いた目線ができるということ。
魔力を込める手間が減ったことで、これまでの状況を整理しながら……ちゃんとした意味で相手勢力を観察する。
そうしながらも同じ過ちは繰り返さぬことを忘れない。
魔力刃で切り払うのは『ウィンドカッター』と『フレイムナーガ』だけ。
そうしている内に……ようやくアニスフィアの感覚は状況に追いつくことができた。
「──今回ばかりは調子に乗り過ぎたね本物さん。ははは、災い転じて福となすってマッドくんが口酸っぱく言ってるわけがやっとわかったよ」
「はは、今更何を言って──っ!?」
嘲笑してやろうと思うより先に、モーリッツは回避行動を起こした。
掠ったのは、まるで躊躇なく放たれたショートブレス。
分裂体が多数いるにも関わらず……更に言うなら、ここぞとばかりに威力を上げて、だ。
お陰で直撃でないにも関わらず、その身体に僅かな欠損を生じさせて。
この時、モーリッツは初めて冷や汗をかいた。
「そもそも、分裂体ってのがそう都合よく本体と全く同じ動きが出来たら苦労しない。それが魔力なら尚の事でしょうが!」
本体と極めて似た分裂体と言えど、分かたれた時点で別個体なのだ。
それぞれがバラバラの不協和音を描く中、一つだけ毎度混ざるパターン……流れをアニスフィアはようやく感覚で掴めた。
ようやく本物の位置を正確に捉えることが出来たので、機を逃さず追撃を放つ。
感覚が冴えていたお陰か、中の竜がご機嫌なのか……魔力の巡りはよりスムーズ。
その威力は、マドラーシュの『エヴォリューション・バースト』やキュイの『インファナルビーム』単体に引けを取らないほどで。
更には、これまでの鬱憤を晴らすかのような斬撃もきっちりお見舞いしてやることになった。
「……まさか、武器を片方使用不能にして逆に感覚が冴え渡るとはなっ!」
「やっと……1発クリーンヒットだって?陰険にも程があるでしょうが……」
とはいえ、全く攻撃が通用しないわけではない。
この事実一つでようやく息を一つ吐くことが出来た。
こちらに不利な材料が出来て慢心が見えてきたところへの不意の一撃、これも大きかったのだろう。
モーリッツは今、分裂体を出せないくらいには余裕が失われている。
「ぼっちが寂しいから分裂体作ってたんじゃなかったの?まさかイマジナリーフレンドに切り替えたってことじゃあないよね」
「いやはや、お恥ずかしながら……今の王女殿下相手にそのような余裕は無さそうでして」
要するに、モーリッツの分裂体を生成するプロセスは自動ではないということだ。
元々の魔石が持つ特性にヴァンパイアがその知識を子孫に継がせる手法を綯交ぜにしたやり方……これを魔法にしたのだとアニスフィアは推測している。
こちらがよほどの隙を曝さない限り攻撃を行わなかったのも、この魔法を維持することを優先していたからだろう。
そして、モーリッツが元々宿していた魔石由来の能力は幽体染みた肉体そのもの。
前世で言うゴースト系とアニスフィアは仮説を立てるも、それもまた当たっている。
しかし今や、その厄介極まる戦法は見極めて封じ切った。
このままならば、あるいは……アニスフィアの心中に僅かながらの希望が灯りかけていた。
「まさかあの者ではなく、王女殿下に破られるとは……まあ丁度いいということにしておくべきでしょうな」
「丁度いいって、負け惜しみには随分と早いんじゃない……?」
「わざわざ神の霊石を使っているのですよ?この程度と思われていたとは……誠に遺憾ですなあ!」
瞬間、その場の空気は震撼することとなる。
巨大なナニかが胎動したかのような──直後、アニスフィアが感じたのは息苦しさと威圧感。
これまでが戯れだったのかと、そう思わせるほどだった。
「この魔石の本来の宿主、それはかつてノーライフキングとまで称されたアンデッドのアーリマン!これで雑兵として動かした大半が死霊騎士である理由に合点がいくのではないか?」
「要するに死霊の王ってこと?それにヴァンパイアの魔石と『神の霊石』とかいうトンデモ……どんだけやりたい放題すれば気が済むのよ!?」
「さあ、次代の王たる器の元に集え!人の身を超え、より精霊に近づいた私に力添え出来ること、誉れに思うがいい!」
「この魔力の動き……まさか、この王城内の死霊の残滓とか魔力を吸い尽くす気!?」
そんなことをされたら、一体どれほどの総量と化すか。
間違い無く、手がつけられなくなることは言うまでもないだろう。
当然ながらアニスフィアは阻止せんと、再度口内に魔力を装填。
無意識下で出来るようになってきた圧縮作業もある程度こなし、再度ブレスを放つ。
しかし、死霊の王とヴァンパイアに『神の霊石』の連合魔力の前では……今一歩威力が足らずといったところだった。
「無駄無駄ぁ!この身は大精霊と大差ない位に至りつつある。ドラゴン如きでどうにかできるわけがないだろう!」
雑兵であるゴーストナイトは、それこそ人造の存在で本家からすれば紛い物である。
しかし、自然発生の魔物ではなくても魂というものも存在するもので。
一つ一つは微弱だったとしても、数で補えばそれなりの質に変貌させることは出来る。
それを束ねるのがアンデッドというカテゴリ上位種の魔石を持つ者であれば、その変換率も目を見張るものとなってしまう。
そのおぞましさと胸糞悪ささえ除けば、そこそこ圧巻の光景とも言えるかもしれない。
──ある意味では先ほどと同じやり取りだったので、アニスフィアとしてじゃすぐさま文句出てきたわけだが
「──確かに桁違いの魔力量だ。でも、姿が変わっていないじゃん。実は見掛け倒しってオチもあったりするのかな?」
「ほう、よほど見た目に拘る辺り面食いの側面もおありのようで。──でしたら、そんな王女殿下にはこのようなお相手が相応しいでしょうな!」
完全にアーリマンと化したモーリッツが高らかに宣言すると共に、アニスフィアの目前には呪詛染みた魔法陣が描かれる。
そこから、色々な意味で嫌な臭いのする2つの影が這い出てきた
先に現れたのは、静かに滾る炎を彷彿とさせる色合いの首無し騎士。
細長い槍を構えているのだが、その姿にはどことなく見覚えがあった……それもつい先ほどの話である。
しかし、アニスフィアがより驚愕を覚えたのはその後に出てきた存在に対してだ。
……それは、種族的に見たら1勝1敗の戦績となっているかつて憧憬を抱いた存在。
しかし、本来なら獰猛さの中に誇らしさも窺える姿も、見るも無残なものに様変わりしている。
「なっ……アンデッド化したドラゴン!?更に
「『点火する偶像』の残滓も確認できたのでね、再度使わせてもらうことしましたよ。ああ、ドラゴンの方は王女殿下が放った残滓を利用させてもらいました」
「残りカスとはいえ人の魔力をなんてことに使ってんのよ!それと、折角のドラゴンを貶めて本当に腹立つわね、この人でなしが!」
実際はドラゴンの因子や由来の魔力を使っているだけ過ぎない。
過去に二度刃を交えたドラゴンと異なる存在であることくらいは頭では分かっている。
しかし、例えイメージの産物……空想でも許せるものではなかった。
その怒りのままに先ほどと同じく凝縮ブレスをアーリマンに向けて放つが……焔色のデュラハンがすんなりと薙ぎ払ってしまう。
「なら今度は近接戦で……っ!?」
両手に構えたマナ・ブレイドで斬りかかりに接近しようとしたまさにその時。
唐突に起こった喪失感と共にアニスフィアは膝から崩れ落ちることとなった。
「一気に身体が重くなって……まさか、魔石からの供給が絶たれて……!?」
「膨大な魔力を持っているとされる貴女とて、怒りや焦りのままにドラゴンの力を振るえば、そうなるのも自明の理というものでしょう」
ここに至るまでの過程を思い返して、ようやくアニスフィアはモーリッツの狙いに気が付いてしまった。
その気になれば、最初からこの状況を作り上げて数と質を両立しての圧力をかけることだって出来たはず。
そこをあえて分裂体をみみっちく作っては波状攻撃でチクチク攻め立てていたのは、長期戦に乗じてアニスフィアの焦りを強めるため。
焦りに乗じて魔力の制御や攻めのペースが乱れれば、否でも魔力の消耗は粗くなるものだ。
要するに、レイニが持つ魔石を強奪された時点で既に相手の術中に嵌っていたということでもある。
「では、最初に申した通り王女殿下は格好のサンプルとして確保させていただきましょうか。──ユフィリアが来ない内にとっとと事を済まさねば」
せめて離脱をしようにも、魔力をひねり出すことすら出来ない。
もう一つ、保険として持ってきた魔薬も魔力切れの状態では殆ど役に立たないであろう。
更に言うなら、ここまで刻印で身体能力に過度なブーストを掛けたツケが身体的ダメージとして表出してしまっている。
完全に
(あれだけのことを息巻いておいて、結局また誰も助けられないなんて……なんて無様な姿だ。──こんな体たらくで王女なんて、とてもじゃないけど言えないや……)
──そんな自分には、これは相応しい末路なのかもしれない。
アニスフィアはらしくもない自嘲の笑みを浮かべてすらいた。
そうなってしまうほどに状況はまさに絶望的、どうしようもないとはこのことで。
まさに
「王族の誘拐は未遂でも重罪だよ!えーっと……年貢だ、シャルトルーズ伯爵子息!」
思いっきり場違いなセリフと共に救援がやってきたのは。
それと共に、灼熱デュラハンが大きく怯み一期的に足を止めた。
「そういうの払ってくれるような友好的な存在は見えねえな!後、納め時って言わねえと何のことかわかんねえよ!」
「まずは私が足止めするから、カルトとラスはハチの巣にならないよう気を付けなさい!」
どこかからか聞こえてきた声と共に、予期せぬ音が複数耳に入ってくる。
アニスフィアにとってはある意味聞き慣れている、記憶の中にある耳に馴染んだ発砲音……それも拳銃と機関銃という謎の組み合わせのもの。
恐らく弾丸そのものは魔力なのだろうが、それらはとんでもない勢いでバラ撒かれている。
弾丸の一部がスカルドラゴンの爪に当たったからか、鋭敏な痛覚が襲い掛かってはその場で地団駄を踏んでしまっている。
「お前らは!?──だが、こちらのデュラハンにそんなものが効くわけが……」
「なんてエラそうなころほざいてるが、この間のデスナイトよりはよっぽど楽な仕事のはずだ。一瞬縛ってやるから今度はきっちりぶっ飛ばせ!」
「同じ炎だったら猶更当たり負けしたくないからね!任されたよ!」
急所を突かれたスカルドラゴンに対し、デュラハンは構うことなく進軍している。
ケンタウロスのような見た目になり、そのスピードはなかなかのものになっているが乱入者はそこも織り込み済みのようで。
相手もこの時ようやく新手を察知したのか、元々の『点火する偶像』由来の火属性魔法を放とうと魔力を滾らせようとする……が。
「どうどう、一旦止まれ!ここは馬限定の強制停止区間だ」
ダークエルフの宣言通りに闇属性の鎖で縛られ、半ば強制的にその場に束縛状態を掛けられることとなる。
その場で拘束されると共に、魔法の詠唱も強制的にキャンセルさせられた。
唐突にご自慢の脚力に異常をきたしては戸惑いを見せては、その場でただ藻掻くのみとなってしまっている。
この時、アニスフィアは覚えのある魔力の流れにようやく顔を上げては新たな状況を認知することとなった。
(この感じ……あの時私が貰った呪い……え、何で3人も新手が来ているの?しかも内二人はエルフっぽい耳で、最後の一人は……)
そもそも先ほどの声からしても聞き覚えがあり、その後ろ姿にも覚えがあった。
会ったのは一度きりではあるが、視覚と聴覚情報があれば末弟の幼馴染と完全一致させることは容易である。
そんな自身にとっても遠からずな存在が、デュラハンに向けて駆けだすという一見すると自殺行為に及んでいることにいきなり肝を冷やす。
止めに入ろうとするが、唐突に沸き起こった怒涛の魔力を前にして口を開くことは叶わず。
「ドレッド・ドラゴンの炎にガトプスの土!これぞ、竜種同士の……えっと、夢のコラボ?ってやつでいいのかな!」
「そこはぶっ飛び侍女のように間違ってでも言い切っておけよ、余計に歯切れが悪くなってるぞ」
ボケとツッコミが為されるような空気だが、その突進は正確無比な魔力制御と高いレベルの属性共鳴を果たしている。
火力追求と妨害力を並行して高めようとした結果、ただの突進に打ち合いではそうそう負けないほどの総合力をもたらすこととなった。
友より受け継がれた探求心がもたらした、新たな古龍の突進を避ける術など今のデュラハンにあるわけがなく。
頑強さを誇るであろうその肉体がギャグマンガのようにすっ飛んでいくのも至極当然である。
「食材的な意味で0点なドラゴンも一旦あっちに行ってなさい!とにかく臭いのよアンタは!」
アンデッドなんだから食用なわけがないだろう、そんなツッコミが入りそうなセリフである。
ドラゴンを食用肉にしているのか……というところまでは流石に頭が回らないようだが。
そんな軽い口調とは裏腹に、スカルドラゴンに襲い来る圧力は瞬間的とはいえとんでもないものであった。
狙撃手が接近するという愚を犯してこそいるが、だからこそこのノックバックを発生させることが出来ている。
接近における加速で用いられた風属性魔力すらも取り込んだ風砲は、まさに
足の爪を傷つけられ、一時的に混乱状態のスカルドラゴンにとってはこの上なく強烈な横殴り風であった。
「あのバカが見たらぶっ飛ばしコンテストでも開きかねない絵面だな……2体とも綺麗にすっ飛んでいきやがった」
「それ、場所さえちゃんと取れたら案外盛り上がりそうね。キュイは当然として、ウィンも張り切って参加しそう」
「セラとかプリシラまで参戦しだしたら収集つかなくなりそうだけど、打診してみるのも面白いかもね。各々の術の開発力に磨きがかかりそうだし」
先ほどまで絶望的状況に追いやっていた3体の内、2体はどこへやらと飛んで行った。
そこそこのダメージも与えただろうから、すぐさま復帰するということはないだろう。
……それよりも、アニスフィアの関心は別のところにあった。
「……ラスくん、だよね?それとエルフっぽいお二人は……」
「あ、そうだった……とりあえず改めて
至極真っ当な問いを投げかけられると、エルフ耳を持つ2名は即座にラスの方に顔を向けた。
すると、即座に何のことかと察して一瞬苦笑を浮かべて……すぐに空気を締める。
「俺たちはマッド……いや、マドラーシュ・リヴェ・パレッティア王子殿下に仕える特別近衛騎士団。ちなみに団長は俺が務めさせてもらうことになってるよ」
「まあ、実質的にはまだ見習いだけどな……ああ、俺はカルト。まあ適当によろしく頼む」
「この場に赴いたのは当のバカ王子から救援を命じられたからってところね。私はナマリエ、以後お見知りおきを王女殿下」
次の瞬間、奇天烈王女から驚愕全開の絶叫が飛んでくるのは当然であった。
大体想像はついていたのか、ラスとエルフ2名……ナマリエとカルトも事前に耳は塞いでいたので何ということは無かった。
……今でも動けないほどに疲弊しているはずなのに、どこにそれだけの余力が残っているのかは甚だ疑問を抱いてはいるが。
というわけで、アニスフィアはガス欠+疲弊ピークで戦線離脱です。
そもそも刻印を酷使することがリスクな上に、魔力の出力調整をやってる描写があまり無いからということこうなりました。
結構粘りはしましたが、まあ魔改造状態の章ボス相手では厳しかったということで。
そしてモーリッツが後から宿した魔石はアーリマン……これまた最後の幻想からのゲストですね。
ただ名前的に有名であろう3作目じゃなくて、マイナーな12作目の方です。
地味になりがちなストーリーボスなんですが、銃耐性持ってたりヘイト管理が独特だったり面倒なやつ。
とはいえ、流石にこんな魔力残滓集めたりそこからアンデッド創造なんてことはしませんが……。
まあアレです、映画とかで原作勢が『何それ知らないんだけど』ってなるのをキーストーン絡みでちょちょいとやってもらっただけです(おい)
さて、これで本格的にグランサガ側が合流ですね。
ここから3章終盤に向けて一気に駆け抜け……たいなあ
Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)
-
転天キャラでのNLとか他絡みを所望
-
グランサガの二次がレアすぎて
-
バトルハードモードに釣られた
-
ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
-
その他(そもそもの作風とか)