転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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切り分け方の都合、ちょっと今回は短めです
何故か盛大に口喧嘩をして、落ち着いたら互いにやってしまったとなって……



9.破天荒は不安と共に再会する

 

その後、マドラーシュは改めて工房に籠っていた。

結局どう動けばいいのか、あれから自分一人で考えても纏まっていない。

そういう時こそ顕魂術研究で気晴らしをと思ったのだが……。

 

「こういう時、同年代との付き合いの少なさとかその他諸々が響くんだよな」

「ラス様とキュイ様だけですものね。貴族との交友は完全皆無ですし、もはや新しい顕魂術開発と同レベルの難易度ですね」

 

どこか楽しそうな侍女のセラの言うことは的を射ている。

そもそも、その数少ない同世代友人のラスとキュイと喧嘩らしいことをあまりしていない。

強いていうならラスとは、自分と同じ修行がしたいって話になってちょっとしたいざこざになったことはある。

その時のマドラーシュも、『ラスの母を半ば独占しているのでは』という罪悪感もあって強く返さなかったのだが。

キュイとの付き合いは3年ほどだが、こちらは顕魂術研究補佐の報酬関係でトラブルになるくらいか。

普段は一緒にバカをやってはデイジーやカルリッツに怒られるところまでがセット、これが通常運転である。

これらの事象は、マドラーシュ自身があまりに大人との交流が多かったことが要因だろう。

兄・姉・父・母の役割をそれぞれ担ってきたグランナイツの面々と、偉志ノ大陸での友人知人……全員が当然のように年長者だ。

そもそもが、マドラーシュは自身の年少っぷりを言い訳にするどころか逆にバネにして活動してきたから必然の流れとも言える。

年齢故仕方ない部分ですら足りないところとして、ひたすら埋めようと苛烈な努力をしてきた。

そんなマドラーシュにある思わぬ落とし穴は、実年齢に対してどこか歪な交友関係であった。

 

「ちょいと幻滅したか?変なところに欠点がある主で」

「そんなことありませんよ。むしろより愛らしく思っているくらいです」

 

そもそもセラがマドラーシュについていくことを決めたのは、年不相応にも程がある圧倒的な戦い理不尽に抗う姿に神性のようなものを感じたからだ。

一般的にも災害級と呼ばれる魔物に対し、ちっぽけな子供のはずなのに笑みすら零して相対する。

ボロボロになりながらも抗うことを止めないその足取りに、無力な自分を呪うこの身がどれほど鼓舞されたものか。

そんな主にも弱点と言うほどではなくともちょっとした欠点があると知ることが出来た。

侍女としてとしては、やはり彼は人間なのだとある種の安堵と親愛の情を感じていた。

 

「愛らしいは恥ずかしいから止めい……ダメだ。こんな状況じゃ顕魂術の新イメージも来ない」

「よほど件の公爵令嬢が気になるのですね。話を聞く限りでは分からないことはないですが」

 

セラの言葉には揶揄うような意図は一切ないからか、マドラーシュもただ頷くのみだ。

細かいところはともかく行動はしようと決心はほぼついている。

だが、普段は『変に考えるより動け』な彼にしては珍しく踏み切れていないのも確かだ。

 

「……会ったとして、また我を忘れかねないのが怖いんだよな」

 

マドラーシュにしてはこれまた珍しく弱音を吐いてしまう。

初対面の際に激情に支配されかかったことがどうにも気がかりになっている。

謝罪のために会ったとして、また同じことを繰り返さないか。

本来ならこのような未知は成長の糧と喜ぶマドラーシュだが、今回は少々ばかりの恐れが生まれてしまっている。

一時的に自我を失うということは、彼にとってかつての自分に戻るということと同義なのだから。

 

「マッド様、結局のところは『案ずるより産むが易し』ですよ」

「……だよなあ。どんだけ止まっても埒が明かねえか」

 

偉志の大陸で教わった、今の二人の座右の銘の1つ。

止まっていてもしょうがない状況なら、自身も動いて状況も動かせ。

ただ停滞を受け入れ、ただ秩序を受け入れるだけでは何も変わりはしない。

止まって考えてダメなら、動きながら考える。

その先にある混沌にこそ更なる可能性が生ずるもの。

女神であり師匠の修行の傍ら、彼女と交わしたちょっとした議論で彼が行き着いた1つの理である。

 

「──やっぱ盛大に開き直った上で動かんと何も始まらねえな!セラ、ちょっと行ってくるわ」

「いってらっしゃいませ。私も少々整理をしたら上に戻っていますね」

 

迷いがすっきりしたわけじゃないが、動けるだけの気合は十分出て来た。

両頬を軽く叩いて気付け1発。意を決して、マドラーシュは工房の外へ駆け出していく。

セラから見たその後ろ姿は、いつもの1割くらい増しで躍動しているように見えて微笑ましいものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、普通の子供からすれば些細かもしれないが俺にとっては結構一大事な理由で一発奮起だ。

セラには感謝しなきゃならねえな。

何だかんだで俺のことをよく見てるいい従者だよ、本当に。

工房から飛び出し、いざマゼンタ公爵家へ全速前進だ!

……あ、流石に馬を用意しなきゃダメか?

まさか顕魂術で高速移動したり空を駆けるわけには行かんし。

時間はかかるだろうが……知らん!ラインヒルト先生とかには上手く誤魔化してもらう!

未知を恐れて停滞など俺らしくもない。

激昂しかねないならば抑えてやるまでだ。

来るかもって事前に分かってるならある程度は抑えが利く可能性もあるだろ?

と意気揚々と駆け出して暫くして……。

 

「良かった、いらっしゃいました……!えっと……こんばんは」

「うおぅ!?俺は急に止ま……れる!……えっと、こんばんはでいいのか?」

 

──俺は急停止することとなった。

件の公爵令嬢、ユフィリア・マゼンタ嬢が何故かいきなり視界に入って来たのだから。

さっきと違って落ち着いてはいるんだが、いきなり出てきた俺に驚いているのかその挨拶はどこか引きつっている。

というか、その口ぶりからしてまさかわざわざ戻ってきたのか?

こちらとしてもありがたいことだが……こんな時間に大丈夫なのか?

まあいい、想定外の事態だが俺の頭はこの状況を即利用しようと思うことが出来るくらいには回ってる。

ここはその流れに乗る攻め時だろう。

言い方がおかしいって?その場のノリだ、言わせんな。

 

「……ユフィリア嬢、先ほどは大変な失礼を働いてしまって申し訳ない。何故かついカッとして強く言ったり侮辱したりと言いたい放題はどう考えてもこちらの愚行が極まっていた。平手の1つくらいなら甘んじて受けさせてもらう」

 

綺麗に90度、デイジー師匠とかカルリッツ父さんへのそれと同じく完璧な謝罪の姿勢だ。

流石に土下座は相手を困惑させるだろうから、これが次点のやり方だ。

ああ、平手とは言ったが別にグーでも構わんよ?

こちとら軟な鍛え方してないから、その程度でどうにかなるってことはないし。

 

「あ、頭を上げてくださいマドラーシュ王子殿下!私こそむしろ、大変不敬なことばかり口にしてしまい、心よりお詫び申し上げます!」

 

おいおい、まさかのあちらも謝罪からスタートってどういうことだ?

先に暴言ぶちまけたの俺だから、非はこちらにあると思うんだがね。

っていうかこれ、お互いに頭下げての無限ループになるオチじゃねえか?

 

「いやいや先に暴言かましたのは俺だし、流石に売り言葉に買い言葉は仕方ねえさ。そちらが律儀に謝る必要はないぞ」

「で、ですが……学が無いとか親の顔を見てみたいとか風に吹かれそうな軽薄な殿方とかもう弁明のしようもないほどの暴言を……」

「混乱で悪い方向に記憶改変しないでくれ、最後は言ってない。それ言ったら俺もカエルの方がマシとか余裕でアウトだっての」

 

俺が軽薄っていうのも思いっきり合ってるから、本来は暴言でもないけどな。

──ダメだ、どんだけ宥めても全然あっちの罪悪感が無くなる気配がねえぞ。

ここは強引に事を収めるしかねえ!

ええい、ままよ!

 

「ああもうこれ埒が明かないヤツだ!ここは大丈夫ですよってことで握手でもするぞ!はいこれで仲直り、ヨシ!」

「あ、握手……ですか?」

 

何で握手か?

ラスがキュイにやってたこと真似しただけだが。

流れをぶった切るためにこういう方法しか浮かばない自分が恨めしい。

口が軽い上に悪いのにコミュ障な第二王子って、奇天烈王女以上にひっでえ属性盛りだな。

つくづくこういう同年代との付き合いに慣れてないって事実が身に染みてきやがる。

 

「王子殿下が先に頭を下げたり、臣下と握手なんて……」

「そういう王族が一人くらいいてもいいんじゃないか?まあ、俺はそういうやつってことで理解しておいてくれ」

 

まだ畏まっていて渋々ではあるが、何とか応じてもらえて一安心だ。

……種族的な意味でキュイの方が小さいはずなのに、こちらもまた小さく感じるな。

おっと、あんまり変なこと考えるのは止めだ。

確かにやりたい放題している自覚はあるが、そういう方向に働かせるつもりは一切ねえからな?

しかも相手は兄上の婚約者、変な気は起こすのは御法度だ。

 

「血のつながったご兄弟、それも双子なのに、アルガルド様とはまるで違うんですね。その、より個性的というか」

「環境の問題だろ。俺の出自は大体分かってるんだろ?本来の家族は母上以外殆ど関わってねえし、そもそも王族らしく育てられていないし俺もそうやって育ったからな」

 

むしろそんな風に生きる気が少しでも残ってたとしたら、多分とっくに命なんか無かっただろうな。

特に魔物との実戦は大体が泥だらけに血濡れの死闘だったんだ。

そこに血筋とか地位とかは関係ない、ただの食うか食われるかの生か死かの世界に俺は身を置いていた。

姉上と方向性は似ているかもしれねえが、その過程は大いに異なるだろう。

 

「……最初から代替としてしか王位継承権しか与えられなかったのですよね?その上で魔法が使えないから、王族としては無価値という烙印持ちと呼ばれて……他にも心無い言葉を耳にしたことがあります」

 

何だ何だ、俺の面倒くさい地位に話が移ってきてるぞ?

まあ、掘り返されての謝罪ループよりかはマシだがな。

王族として無価値とか、代替用の継承権とか別に俺としてはどうでもいいんだよなあ……。

無価値っていうのも、あながち間違ってはいないからな。

むしろ魔法が使えないと即座にそういう評価が立つってことそのものに反発したからこそ、顕魂術を作り出せたわけだし。

別にユフィリア嬢が心を痛める必要も無いってのに……変なところで律儀なこって。

 

「俺自身は変なやっかみとか無く、傍観者でいられるから満足してるくらいだけどな。少なくとも他の国に島流ししないだけマシだと思ってる。その上で優秀かつ楽しい教育係を付けてくれたんだ、そんな評価もどうでもよくなるってものさ」

 

あっけらかんと言う俺に対して、先ほどまでの慌てっぷりから今度は沈痛な顔を浮かべるユフィリア嬢。

俺のその辺の境遇って、傍から見たらやっぱ悲惨なものなのかね。

偉志ノ大陸でもそんな意見は全く聞かなかったってのに……。

あ、でも勿体ないくらいは言われたか。

それ以前の話、こんなやりたい放題な俺が未だ普通の王族としてやってたら、絶対に国がヤバいことになってたと思うぞ?

悲惨に見えるかもしれない立ち位置も考え方一つで薬にも出来る。

これぞポジティブマインドとネガティブマインドの使い分けってやつさ。

 

「……血筋は正統そのものなのに、王族として生きる道なんて最初から無かったも同然だったのですよ?更にはこの国での存在意義が無いとすら言われて、何でそこまで平然としていられるのですか……?」

 

こらこら、どんどん沈痛な面持ちになってんぞー?

それにしても、最初と違って普通に表情出てるな……。

そういうところもあるなら、早く見せてくれれば良かったものを。

その可愛げに免じて、もうちょい踏み込んで答えるとしますかね。

 

「王族としての生は望み薄なら別の生き方を模索すればいい。魔法は所詮技術で手段だ、使えないなら代替手段を探せばいい。年齢の問題で腕力が足りない事態になった?不利を補う技術を搔き集めたね。既存概念だけでどうにもならなくても、とにかく歩みを止めず新たな地平を探った。俺は常にそうやって試行錯誤と共に生きてきた。襲い来る現実に散々殴られながらも対抗策を常に練っては挑んで……負けたり勝ったり色々な退屈とは無縁の日々だ。最後に、存在意義についてだが──そんなものは最終的に自分で決めればいい。この国での存在意義が無いから何だ?俺という人間は、他人に意味を決められるほど安い存在じゃない」

 

最後はカルシオンからの受け売りだけどね。

長生きしてるエルフだからこその刹那主義思考って自分で言ってたが。理に適ってると俺は思っている。

デイジー師匠からはあんまり見習うなと言われてるけど、こればかりは譲れないね。

その導があったからこそ、俺はここまで強くなれたわけだからな。

そんなカルシオンだからこそ、俺にとっての兄貴分の一角なんだよ。

 

「マドラーシュ様は……お強いのですね。私はとてもそんな考えには至れません」

「俺の場合はただの結果論、そうならなければならなかったから選び続けただけさ」

 

なりたい自分が明確にあったから、そのための選択肢をひたすら選び続けた。

その結果が12歳時点での今の俺なだけだ。

あの日に宣言した革命を為し、憧れに近づくために出来ることをひたすら重ねてきた。

立ち止まってる暇すらない激流の日々は、常に自分でどう動くかを決め続ける日々だった。

充実もしていたが、血反吐を吐いたこともどれほどあったものか。

 

「ずっとそうやってきたからこそ、まだ12年とは言え俺はこの生に誇りを持っているよ。これからもそこだけは変わらないでいるつもりだ」

 

さて、俺の話はこれくらいにしておこうか。

ユフィリア嬢が俺の綺麗なまとめを反芻しているところ大変申し訳ないんだが、流れをぶった切らせてもらう。

最初は謝罪して丸く収まったから及第点、ヨシ!って思ってたんだがな……。

こうやって面と向かってユフィリア嬢と話したことで、あの時の怒りの原因を再確認出来た。

やっぱりあの時の怒りの対象は彼女ではなく、向けるべき対象がいないからこその八つ当たりだったってわけだ。

本来の対象は、彼女の奥底に根付いてしまっている一つの理不尽だ。

その言葉は、過度な秩序とかと同格に嫌いあまつさえ壊したくなるものだ。

そりゃああの時とどこか似ている破壊衝動みたいなのも出てきていたのは頷けるね。

タネが分かれば、もう内面に襲い来るそれを恐れる必要はない。

──そして、相手が理不尽となれば挑む他ないだろう?

グランナイツの皆と共に過ごして、ずっとやってきたことの対象が人の内面に変わるだけさ。

それに、彼女は自分では意識こそしていないだろうが……その内には僅かながらの抗いが見受けられる。

俺との口喧嘩で綻びが生まれたからかもしれねえが、それなら尚更手を貸してやりたくなった。

ちょいと荒療治になっちまうだろうが、そこは許してほしい。

優しくするだけでこの手の壁は壊せない……北風という概念も時には必要だ。

 

「ユフィリア嬢。ここまでの話を踏まえ、再度申し訳ないがあえて言わせてもらう。今の貴女は生き方が人形になりかけている。自身の中に生きているって感覚はあるか?また、その生に心の底から誇りを持てているのか?」

 

さあ、今度は論理的に口論と行こうではないか。

ユフィリア嬢、ちゃんとついてきてくれよ?

 




互いに謝罪をして受け入れたら、次は議論が始まる。
原作ブレイクは加速していきます。
結構加筆修正しまくったところですが、それでも完全に納得できるかというと分かりません。
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