転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

90 / 112

【悲報?】まさかのストックから切り離し増加からの文字数倍化
読み返している内に『いくらか書き足せないか?』となったらこんなことに……。
断じて先延ばし行為ではありません、本当に書き足したくなったからやっただけです。


83. 凶悪狂風、吹き荒れる時

 

いきなり思いっきり耳を塞がせてしまったのは悪いと思っている。

でも、その伝説的な単語がいきなり出てきてしまったら……驚くのも無理はないと思うんだよね。

グランナイツは13年前に表向きはその座から追われてしまったけど、今なお隠れながらも活動しているほどだし。

それは要するに父上と母上が未だに彼らを信頼しているということだ。

そんな彼らを継ぐ者……隠れた次世代がここに現れるなんて、誰が思うことか。

しかも、これまでマッドくんと共に裏で動いていたなんて……もはや想定外にも程がある。

 

「ちなみに俺とこっちのナマリエ、カルトに加えて後3人いるよ。多分アニスフィア様も顔は合わせたと思うけど……」

「……もしかして、あのクラマ族のおじさんとやんちゃネコ娘と箱入りっぽい女の子のこと?」

「ぷっ……お、おじさん?本人が聞いてたら間違いなく大ダメージね」

「おじいさんじゃねえだけまだマシじゃねえか?ああ、やんちゃと箱入りってのはまんま大当たりだな」

 

更には、グランナイツと同じようにエルフだろうとミケ族だろうと、何ならクラマ族でも亜人種であろうとお構いなしと来たものだ。

どんだけやりたい放題っぷりなのか……とも思うが、ものすっごく納得している自分がいた。

というより、点と点が色々とつながったとも言うべきか。

マッドくんが王国東部で動いていた理由、そしてやはり『東の賢者』は……。

 

「とりあえず間に合って良かったよ……ところでアニスフィア様、あのデュラハンに見覚えがありそうだったけど」

「あ、えっと……あれは講演会場で私が遭遇したやつなんだ。オルタやティルティが相手取ってたんだけど……」

「なるほど、問題なく倒したってわけね。今はアルガルド様達と合流して雑魚掃討ってところかしら」

 

し、至極当然と言わんばかりに話しておられる……。

何だろう、こういうところからしてマッドくん仕えというか直属って感じがヒシヒシと伝わってくるなあ……。

どれだけ無茶振りされて、そして応えさせられてきたのか……。

──だからこそ、あれだけの敵を相手にしても問題ないってことなのか。

実際、この3人はあっさりとアンデッド化したドラゴンとデュラハンを吹っ飛ばしているわけで。

残りの3人、そしてオルタも遜色ないほどに強いってことだ……何ならティルティまでもがそこに混ざることが出来て?

……頼もしいとは思うんだけれど、ね。

 

「クソ、王女殿下の捕獲に拘り過ぎたか……これまでの施設破壊といい、貴方がたのような不信者たちは何故こうも目障りなことしか出来ないのでしょうか」

「目障りって言うなら、てめえら狂信者の方がよっぽどだと思うがな」

「精霊契約とやらに近づけたってだけで国家転覆を狙うなんて、仰々しいって以外にまるで褒め所が無い所業よね」

「あんた達が俺の親友、尊敬している人たちに何をしてきたか……それを思うと、今すぐにでも鉄槌を下してやりたいくらいだよ」

 

3人の口調は確かに軽いように見える。

しかし、そこには相当な敵意……というより嫌悪感が含まれていた。

平民と貴族には溝があるというのはよく分かっていたけど、そんなものが生温いと思えてしまうほど。

皮肉気に語るエルフ二人もそうだけど……ラスくんも相当腸が煮えくりかえっているんだ。

マッドくんと……多分、尊敬する人たちというのはグランナイツのことだろう。

……あの温厚で、マッドくんがお人好しと称する彼がこうまでなるだなんて。

静かに迸る複数の殺気に、思わず息を呑んでしまうほどだ。

 

「随分と威勢のいいことだ。しかし、現実問題貴様ら3人だけでレイニも含めて守りながら戦えるのかな?」

 

対するモーリッツは、相変わらず人の事を食ったような空気を醸し出している。

特別近衛騎士たちが加わって数の上では逆転しているはずなのに……よほど自信があるのだろうか。

ただ、言っていることは事実でしかない。

今はレイニだけでなく完全に動けない私だっているのだから。

要するに、今の私は完全に足手まといでしかない。

オルタの苦言がそのまま現実になってしまっているわけだ……。

いくらそれぞれが強くても、このハンデは相当大きい。

 

「そこは確かにアンタの言う通りね、そもそもあの娘や王女様を回復させる手段がないもの」

「では、二人を巻き添えにしてでも私たちを倒しにかかるか?それはまた、随分と薄情なことだな!」

 

って、言ってる間にモーリッツが魔法を放とうとする。

が、その前にエルフのお姉さんが何かを早撃ち……って、あれってまさかライフル!?

魔学ではそんなところに至ってない……というより、至ったとしても公表する気は一切起こらない兵器の類。

それがどうしてか、こんなところで目にすることになるなんて……。

 

「ああそうでした。エルフにはそれがありましたね……相変わらず、何とも卑しい戦い方で嫌になる」

「死霊とはいえ、既にやられた手下に鞭打って魔力を奪うようなクズ上司には言われたくないわねえ」

「同じ上司でも、無茶振りこそすれど必ず成功の糸口も保証してくれるアイツがよっぽどマシだってことだよな!」

「ちょっとスパルタ気味ってところが玉に瑕、だけどね!」

 

上司批評会なんて暢気なことをしながらラスくんとダークエルフのカルトが斬りかかってる……って待った!

相手は空に浮いてるのに、それはいくら何でも雑過ぎじゃあ……!

 

「とりあえず置いたから、適当に使いなさい二人とも!」

「本当に片手間って感じだな……まあ、あるだけありがてえけどよ!」

 

──なんて心配は杞憂だったようで。

二人は何てことない風に空中を足場にして立ち回り始める。

空を飛ぶのではなく、足を着けて舞う……空中舞踏とはこのことか。

しかも、こんな曲芸染みたことをしながらも3人は決して攻めにおいてかち合うことがない。

各々が好き勝手に動きながらも、互いの動きを理解している……不協和音でありながら形になっているという感じか。

絶妙な感じの攻め方に、モーリッツはどこか面白く無さげに颯爽と後方に下がる。

 

「貴様らのような人間が空に足を着けるなど……どこまでも不遜で卑しいことだな!」

「そもそもが地に足がついてない連中にだけは言われたくねえな!」

「我々はそもそもつける必要性がない……それだけのことだ。貴様らの相手などこいつらがしてくれればよい!」

 

モーリッツからいきなり強烈な魔力が湧いて……まるで覚えのない流れが発せられる。

一体何を放つのかと、動けないながらも警戒していると……唐突に2つの大きな気配が。

そしていつの間にか、その凶悪な空気の発生源であるデュラハンとアンデッド化したドラゴン──スカルドラゴンって言うべきか。それらが舞い戻ってきていた。

しかも、さっき3人がつけた傷が完全に修復されているというおまけつきで。

それを指し示すかのように、仮初の主を守らんと意気込んで二人に不意打ちを浴びせていた。

 

「転移に加えて完全回復ってか?つくづく面倒な輩だな!」

「まあ、分かってたからいいんだけどさ!」

 

それすらも読んでいたのか、3人の対応はとにかく早かった。

口調が捻くれ気味なダークエルフ君は得物である鎖で繋がれた剣を器用にデュラハンに刺すと、そのサーカスのような動きで空中を舞って一気に距離を取る。

ラスくんはスカルドラゴンの方に突っ込んだかと思えば、剣を突き付ける。

どうやら相手はあんな状態でも魔力障壁が使えるのか、当然のように展開するが……その剣は貫通することはなくともきちんと突き刺さり。

そこで終わるかと思って、スカルドラゴンは骨だけになってなお獰猛な魔力由来のブレスを吐こうと口を開く。

……が、それより先に剣先で爆発が起こる。

その反動を利用して、ラスくんも一気に離脱に成功させた。

ブレスの方はさっきの狙撃手エルフが顎下に強烈な弾丸を見舞って強制的に軌道を真上に向けさせることで事なき事を得る。

 

「って、魔力障壁を平然と破ってるんですけどー!?」

「え?ああ、そういえばドラゴンってそういうスキル持ってたわねえ……その程度なら私の弾丸の前では障害にならないわ」

「……マナ・ブレイドの出力限界突破でようやく突破した私の苦労って一体……」

 

武器の性質の問題とかあるのかもしれないけど……それでもますます悔しいんですけど!?

うう、私のドラゴンスレイヤーという相対的立ち位置がどんどん落ちて行ってる……って今はそれどころじゃない。

せっかく3人が奇襲で強制離脱させた2体の大物が戻ってきてしまい……状況は再度最悪なものになってしまってるのだから。

 

「この私を速攻で仕留めればと思ったのでしょうが……見事に目算が狂ってしまい残念ですねえ」

「いや、どうせそうするであろうことは読めてたし……別にいちいち絶望するようなことでもないんだけど」

「とんだ負け惜しみを。主に倣って軽口を叩いても、今の状況下ではただただ空しくなるだけではないでしょうに……」

 

数が戻ってきたら調子づいてるよあんの腐れ野郎……!

あの傲慢さ極まる口調で、間違ったことはまるで言ってないのが余計に腹が立つ。

しかし、こうなったら流石にラスくん達も苦しいはず──

 

「思ったよりかは時間食ってるのかしらね、突風第一陣の方は」

「おいバカ、余計な事言ってるとこっちに飛び火するぞ」

 

って、ぜんっぜん余裕そうなのはなんでなのさ……?

明らかに状況不利だってこと、わかってるはずだよね。

おかしい、この場はいつから傲慢口調大会の会場になってしまったのか。

これまた変な暗号っぽいこと呟いてるし、一体何を期待して──ってええええ!?

 

「な、なんだこれは……っ!?眩しすぎて、目が開けられぬ……!」

「どうやら無事に来たみたいだよ二人とも。ええっと、こういうのフラグ回収って言うんだよね?」

 

目が、目がああああああ……なんてなるような距離感じゃないけど、それでも眩しい!

おかしいなあ、ウチっていつから天空の離宮になったんだっけ……ってそうじゃなくてだね!?

一体誰だ、こんな電気ネズミ冤罪引き起こしかねない事態をしでかしたのは──

 

「上手い登場の仕方というのもなかなか難しいものですね。是即ち、私程度には主役は向いていないということでしょう」

 

こ、この聞いてすぐに分かる何かをしでかすような声は……っ!

言うほど長い付き合いではないけど、どれほどズッコケたりツッコミを入れたか数知れずなあの姿が目に浮かぶ。

暫くすると、その場の全員の目を瞑らせていた眩い光は止む。

そうなれば、新たな乱入者の姿が全員の目に留まるのは必然で……。

 

「呼ばれて飛び出てじゃんじゃじゃーん、皆さまお待ちかねの筆頭侍女でございます。アニスフィア様、レイニ様これでもう大丈夫でございますよ」

 

……知ってた。

知ってたんだけどもここはズッコけていいよね?

何で緊迫した空気をぶち壊すように、それこそ『待ったー?』とでも言いたげなノリなのさ。

いやそもそも、何でここにマッドくんの懐刀であるぶっ飛び侍女筆頭が紛れ込んでくるわけ?

しかも謎の歩行でレイニの元に歩み寄っては、早速光属性っぽい何かをかけ始めてるし。

ああもう、次から次へと情報が来て魔力切れの頭に響くんですけど!?

脳みそ爆発なんて間抜け極まりない死因は勘弁願うんですが。

 

「気持ちは分からなくもないですが、いっそそういうものだと流す方が早いと思いますよ」

 

なんて頭を抱えたくなる状況下で蜘蛛の糸が。

具体的に言えば、やっと私の歩調に合わせてくれる声が聞こえてきた。

何とかそちらの方を向くと、案の定見慣れた長く綺麗な銀髪の我が友が駆け寄ってくれる。

 

「ユフィ!やっと合流できた……イリアは無事なの?」

「かすり傷はいくつかありそうでしたが問題はないはずです。今はプリシラと共に捕らえた貴族崩れ2名を監視しております」

 

別行動をしていたから同じく心配していたけど、その何ともないような声調で一気に安心感が漂う。

……この滅茶苦茶な状況の割に冷静過ぎる気はするけど、それはそれだ。

とにかく、これまでのあっちの状況とこちらのこの混沌然を何とか整理しないと……。

 

「要はそっちは完全に落ち着いて、後は首謀者であろうあのキーストーン持ちを捕らえればいいってわけね」

「やはり彼も持っていたのですね……となると、レイニがやられてしまうのも無理は無かったと。救助要員も兼ねられるセラと同行したのはまさに正解だったということですね」

「ぜんっぜん戸惑いがないねユフィ……」

「イリアが戦えるのですから、事例としては問題ないはずですが?」

 

確かにそれもそうなんだけど……っ

メンツが集まって徐々に安堵感が出てきたからか、刻印を使いすぎたことによる反動が後からぶり返してきた。

……正直とんでもなくキツイ。

でも簡単に寝たきりになったらそれこそ……なんて意気込もうとした途端に、優しい魔力が私を包み込み始める。

 

「魔力が切れている上に、刻印の力を過剰に使ったせいで身体のダメージも相当深刻ですね……どれだけ煽られたらこうなるのですか?」

「……こればかりはまるで返す言葉もないなあ」

 

そもそも浮かぶ余裕もありはしない、それくらいにキツイ。

それに下手に誤魔化そうとしてもユフィなら一発で見抜くだろうし……なんなら苦笑で誤魔化すくらいに留めておくべきだ。

そんな私に呆れたような溜息を吐きながらも、ユフィは手早く私の回復に取り掛かってくれた。

流石に回復の方面の顕魂術はまだ履修していないのか、魔法らしき詠唱付きだ。

それなら、この間のスタンピードでも見たことあるから安心して身を任せられる。

──さて、そうなってくると心配なのはレイニの方なんだけども。

 

「ヴァンパイアが種として持つ緊急対応、保有魔力の逆変換が稼働していますね。魔石がなくとも、頭の中のイメージだけできっちり術を組み上げています」

「流石、マッドの新しい直弟子だね。ただ念には念を入れてお願いできるかな」

「モチのロンでございますとも、今の私は癒し手でございますが故に」

 

良かった……と安堵すると共に、新たな驚愕。

セラの説明からするに……レイニは魔石に宿る知識を少しだけでも組み上げて再現したということだ。

それは、人の身でありながら魔物の能力を再現すると同義で……。

 

「かの『光誓の座天使』にユフィリア様、それに加えて悪名高き次代の特別近衛騎士が揃っただと?……あの無価値極まる王子如きが、まさかここまで読んでいたと?」

「俺にとってグランナイツと同義の幼馴染兼主を無価値だって?あんまりふざけたこと言うのは控えて欲しいかな……無様に燃やされたくなかったらね」

 

いつも通りと言えばいつも通りの、魔法が使えない者への嘲笑。

相手が王族でもお構いなしのそれに対して……ラスくんはそれはもうストレートな怒りで返した。

さっきまでの軽口とは打って変わって、本当に周辺を燃やしかねないような強烈な火の魔力も伴っている。

どれほどヤバいのかって?

……隣にいるユフィが思わず回復作業を止めてしまうほどって言えば分かるかな。

更に言うと、それを暴走させるギリギリのところで制御しては止めているのが……威圧感を加速させていた。

 

「落ち着け……と言いたいところだが、まあラスの言いたいことも分かるな。そもそもアイツは見据えているところに行き着くためなら何でもやる、そんな泥まみれなトチ狂い野郎だ。お前らのような三下が理解するなぞお門違いってもんだ」

「アンタたちはいつもいつも言うこと為すこと薄っぺらな上にワンパターン、こちとらもう耳タコなのよ。キーストーンを使って尚幽霊もどきにしかなれないってのはそういうことね。こんなお高く留まってるだけのクズが次代の王様気取ってこんなしょうもないクーデター起こすんだから、世も末よね」

 

残り二人の言葉も辛辣そのもので、改めて魔法が使える者と使えない者の溝を理解してしまう。

いや、この3人が抱えている負の感情はそんなところで留まってはいない。

単なる不平不満をぶちまけるどころか、その欺瞞を破壊せんとする意思すら垣間見えた。

……過激にも程がある言いようなんだけど、まさにその通りではあるんだけども。

 

「言わせておけば随分と粗野な物言いですね……ご覧になりましたかユフィリア様。これこそ、貴女が次代の未来と夢見ているあちら側の正体なのですよ。我々貴族は精霊より賜った恩恵をそのまま国へ還元しているというのにこの言い草……恩を仇で返すどころか牙を向けてくるなど、もはや救いようのない傲慢な行い。この国の未来を担う貴族として、到底見過ごせない所業です」

 

何が粗野な物言いだ、どう考えたって傲慢なのはそっちの方でしょうが。

恩恵をそのままに貢献してるんだったら、平民との溝が深くなっていく今の現状をどう思っているのやらか。

どうせ精霊に選ばれたが故の特権だ何だ言い出すに決まってる。

──ああ、本当に苦々しい構造でイヤになってしまう。

そして今や、その苦悩は魔法が使えない側の特権ではなくなってる。

 

「一度道を違えたとて、貴女の才が失い難いものであることに変わりはない。お戻りになって頂けるならば、これまでの全てを不問に……」

「……世迷言染みた御高説はまだ続くのでしょうか、シャルトルーズ伯爵子息」

 

あっちからすれば本当に慈悲をかけているつもりなんだろう。

まあ、魔法的な能力で見ればユフィは未だ稀代の天才だからねえ?

そりゃあ多少の事は目を瞑ってでも欲しいんだろうけどさあ……。

でもさ、毎度のことながら押し付けがましいことこの上ないよね。

そんな調子のままで、このいい意味でおかしくなった公爵令嬢が靡くわけがないんだ。

 

「なっ……世迷言ですと?ユフィリア様、それは一体どういう……」

「あら、そこまで難解な言葉を使ったつもりは無いのですが……それとも、精霊との交流では別の意味で使われたりとかするのでしょうか」

 

これ、本当に馬耳東風しててもおかしくない感じだねえ……。

その言い回しには、もはや『精霊の申し子』とか『完璧令嬢』とか遠巻きに言われていた頃の面影はまるでない。

不遜にして不敵、これまでの慣習に抵抗という名の弓を射ることも辞さない構え。

……口調こそ取り繕ってるけど、言いまわしは完全に悪童そのものだね。

これ、父上とかグランツ公が知ったらどんな顔するんだろう……。

 

「……その不遜な物言いは、もはやこれまでの地位を捨てるとみなしてよろしいのですね?」

「そんなものはむしろ邪魔ですので、喜んで捨てさせて頂きますとも」

「貴女も既に手遅れということですか。精霊の加護をドブに捨てては貴族としての在り方も否定する……もはや手の施しようがない、まさしく壊れた道具だ」

「揃いも揃って同じことしか口に出来ない、そんな人形風情に成り下がるくらいでしたら……壊れていた方が遥かにマシですよ」

「は、ははは……ははははは!ああ本当に残念だ、こんな形で栄えある才を潰さないといけないのだから!ああ本当に惜しい!だが仕方ないですよね!」

 

壊れたように笑いながら、モーリッツはおぞましい魔力の雨を背後に降らせる。

てっきり奇襲でもするものかと思い、セラやユフィも一緒に身構えたけど……起こったのはそれよりも嫌な事態だった。

──何せ、その魔力降雨地帯からそいつらが現れたから。

 

「ちょっ……まだあれだけの量を出せる余裕があったの!?」

「『精霊の申し子』までもが邪道へと堕ちてしまう……そんな事態に精霊も嘆き悲しんでおられるのだよ。そこまで徹底して反抗するのならば、もはや慈悲などいらないだろう?」

「あらあら、まさに愛と憎しみは表裏一体ですねユフィリア様?」

「傍迷惑極まりないですね。ここまでしつこいと犬でも寄り付きませんよ」

 

まあそうだよねー、そもそも追われるより追う方だもんねユフィは……じゃない!

君たちは暢気にバッサリ漫才してる場合かなあ!?

これ明らかに数の暴力込みでやられかねないんですけど!

 

「雑兵がちょっと増えただけで慌て過ぎよアニスフィア様──カルト、そろそろかしら?」

「ああ、この空気はそろそろ乱入してくるな。──リーダーとぶっ飛び侍女を見てみろ、王女サマ」

 

え、ラスくんとセラ……あれ、ついでにユフィも視線がおかしな方を向いてる。

思わずそれに倣って私たちもそちらに目を向けると……いきなり風が吹いてきた。

──それも、不自然なまでに魔力やら何やらを感じさせる奇妙な風だ。

その手の感覚に鈍いであろうモーリッツ、そして重症状態から治療中のレイニですらもそちらに目をやったその時だった。

見事な夜空が映る中、唐突にその轟音が鳴り響く。

 

「今度は何だ、随分急な雷なことで……何だあの使い魔は!?」

 

あまりの不意打ちだったため、ゆっくり進軍していた骸骨騎士たちも足を止めてしまう。

落雷地点はスカルドラゴンのすぐ近くのようだ。

更に言うなら、落雷かと思われたそれが全く違うものだと気付かされる。

そこにいたのは、鷲に似た頭に獅子の如く手足を持つ何か。

紫電の色彩と、雷由来であろう魔力が迸る様子からして……グリフォンを模した使い魔といったところか。

恐らく、アレが急降下して落雷のようになったんだろう。

 

「『空は鳥の為、海は魚の為にあるが如く、下劣な者には軽蔑を』……この3つ目こそお前らに相応しいよ、狂信者どもめ」

 

そこから聞こえてきたのは、これまた聞いたことがあるような、ないような……そんな一節だった。

これまた空気を読んでいない軽薄な口調……うん、これは完全にあの時がデジャヴとして蘇るやつだ。

なんてことを思っていたら、改めてその強烈で濃密な魔力が発せられる。

その魔力は忘れようがない……間違いなく彼のものだった。

 

(ここまで来てくれたんだ……ケルビム)

 

ただ、てっきり無慈悲に奇襲でもかけるのかと思ったけど……

次の瞬間、そんな考えすら甘いことに私は分からされることとなる。

 

「主役はやはり空から登場してなんぼだよな!イヤッホオオオオオオオオウ!

 

その乱入者は、あろうことか奇声を上げながら滑り降りてきたのだから。

……ああーなるほど、グリフォンっぽい使い魔から鎖っぽいのが伸びてるねえ。

そこを伝うことでグラウンドレールにしてるってことかー、うんうん確かにこれまた映える登場の仕方だ。

だから上空にいたのか、これで色々合点が……

 

「──って待ったあ!何ですか『イヤッホオオオオオオオオウ!』って!そういうキャラじゃないよね!?」

「そして挨拶代わりに悪いね!」

 

しかもそんな滑走と共にとんでもない加速をそのまま利用するときた。

しかも最初に突進させた雷の使い魔を翼の形にすると、その速度は更に爆発的に上げる。

そんな勢いのまま……ケルビムはデュラハンに突進回し蹴りを放つ。

あんまりな奇襲にデュラハンは怯み、更にケルビムは縦方向に回転しながら連続でかかと落としを浴びせていた。

 

「おいリーダー、今度はお前の術がパクられてるぞ?」

「あっはっは、参考にしてもらえたならむしろ光栄だよ」

 

しかもラスくん達は明らかに知り合いという新たな情報まで入ってきた。

というか、顕魂術って著作権とかそういうのお構いなしなの……?

何というやったもん勝ち精神で、あまりに自由が過ぎる気が……。

 

「さて、そろそろ掃除のお時間か。魔力圧縮結合(パワー・ボンド)、発動」

 

適当な頃合いでデュラハンを蹴り飛ばすと、今度は真下の骸骨騎士たちに照準を合わせる。

短いながら聞き慣れない詠唱を唱えるや否や──空気が震えた。

え、ちょっ……一体何をしでかしたのあのやりたい放題魔!?

 

「まさか、体外の魔力をも取り込んで凝縮しているのですか……?」

「そんなところでしょうねえ……全く、相変わらずの無茶苦茶っぷりね」

 

とんでもないくらいに魔力を圧縮した結果がこの圧、というわけだ。

ただ、それは圧縮したってだけで総量は変わってない……いや身体の外の魔力もってなったらむしろ増えてるくらいだよね。

体内に魔力を満ち溢れる状況……まさかさっきからやたらハイになってるのはそれが原因ではなくて!?

いくら彼とて、そんな状況が続いたら──!

 

「アンデッドでも例外などない。限界(いのち)を知ってしまったのならば、後は寝かせておくべし。──まあ、俺ごときが言うべきことじゃあないがね」

 

何て杞憂を吹き飛ばすかのような、一転して静かな言葉だった。

すると、先ほどから纏っている雷属性魔力とは異なる……静謐ながら存在感を示す水属性魔力も同時に纏われて。

聞き入りそうになる涼やかな音と共に、ケルビムは骸骨騎士の群れの中を駆けている……ように見えた。

私の視界では、紫色の翼を生やした何かが駆けずり回っているようにしか見えていないんだけども。

音でかろうじて刀の方で抜刀と納刀を繰り返していることが分かるくらいだ。

疾走しながら居合を連打する、どこか矛盾しながら彼らしいやり方で……骸骨騎士たちはあっさりと蹂躙されてしまう。

……MATTE、何であの量がこんなあっさりと全滅しちゃってるわけ?

しかも遠目で見ても分かるくらいのバラバラっぷり……吹雪のペンションでの事件が何度でもリバイバル上映できちゃうよ、これじゃあ。

 

「お次はこの化石を標本に戻してやるとするかね!」

 

涼やかな斬撃音の次は、打って変わっての轟音だ。

その音と共に、スカルドラゴンは先ほどのラスくんがしでかしたように再度吹っ飛ばされる。

どうやら圧縮魔力の影響はまだ続いているようで、今度は背負っていた両刃剣の一突きで重量差を簡単に覆したようだ。

もう驚くのも疲れるくらいだけど、今回はそれで終わらなかった。

先ほどの骸骨騎士を殲滅した時と同じく、ケルビムは紫電を纏って駆けて──吹っ飛ぶスカルドラゴンをあっさりと先回りしていたのだから。

そこから再度突貫を放って、今度はスカルドラゴンの巨体が重力に逆らうかのように上空に吹き飛んでいく。

当然のように雷光の翼を展開して再度追尾しては追い越して、完全に上を取る形となった。

 

「リトルグリフォン解放(リリース)──そのままダイレクトアタック、行ってよし」

 

まるで空中に天井があるかのように足をつけると、ケルビムはあろうことか翼を解除する。

代わりに現れたのは、最初に突進をかましていた小さめの使い魔(グリフォン)

それはきっちりと主の宣言に倣い、全身全霊の突進を実行していた。

が、流石のスカルドラゴンもまだまだ終わる気はないようで。

先ほどと同じように、私に刻まれているドラゴンでも馴染み深い魔力障壁を展開していた。

いくらグリフォンに込められた魔力が相当に凝縮されたとしても……この障壁ばかりは流石に相性が悪い。

それを指し示すかのように、グリフォンはあっさりとただの魔力に還ってしまう。

──しかし、あのやりたい放題にとってはそれすらも予定調和のようで。

 

「はい必勝パターン入りましたー『アブソリュート・パワー・フォース』!」

 

それはもうとてもいい笑顔と共に放つのは、宙を足蹴に急降下しながらの魔力を伴った右の掌底突き。

しかし、その魔力の凝縮度合いが今日見たどの魔法・顕魂術の比でなかった。

あまりの密度に、その右手だけドラゴンのような何かを象っているように見える程で。

──まるで紙切れのように、魔力障壁をぶち破りながら更なる落下方向のベクトル加算を直に叩きつけていた。

 

「時代は魔力リサイクル、こんな紙切れ(クソザコ)障壁でも役立てることを誇りに思いな!『デモン・メテオ』!」

 

砕かれた障壁は魔力に還る前にケルビムが即座に掌握。

そこから再度自分の魔力も混ぜ込んで凝縮させて……降り注がれるのは大きな紅い隕石だった。

その光景を見ての反応は、まさに三者三様。

目を輝かせるぶっ飛び侍女と要救護人とか、呆れ果てる過半数に開いた口が塞がらない私。

あ、ちなみにスカルドラゴンはバラバラになってて標本どころじゃないので悪しからず。

 

「な……ななななな……いくら貴様とてあの軍勢を一瞬で殲滅しては我が魔力で強化したドラゴンを一種する、だと……!?」

「強化?何だよ、ただの消費期限切れじゃなかったのか?そうなるとクソトカゲにとったらただの弱り目に祟り目じゃねえか……哀れに思えてきたぞ」

 

モーリッツに至っては、ただただ狼狽している始末だった。

いきなり手駒の大半を潰されてしまえば、まあ怒りすらもどこへやらだろう。

残った手下のデュラハンもあまりの惨状にどこか縮こまっている風に見えるほどだし。

そんな滅茶苦茶な空気の中、ケルビムは威風堂々とこちらに歩み寄ってくる。

そういうところ、相変わらずだな……って、あれ?

 

「……待って、何で髪……いやそもそも君だったの……!?」

「髪色に髪型、これだけでも簡単に化けられるって師匠は言ってたっけなあ。参考にしておいて損はないぞ、姉上」

 

確かケルビムは黒髪だったはずだ。

髪型もオールバックにしていたし、

しかし、目の前にいる今の彼の髪の色は私と同じく白金色で……更に降ろしている。

さっきまで魔力を纏っていたり動きが早すぎて分からなかったんだけど……その姿は私の良く知る誰かさんそのものだ。

ただ、纏う衣服はあの時のケルビムと全く同じ。

黒を基調として金の装飾がなされていて、どこか異国風が漂う感じ……見間違うはずがない。

それにさっきまでのやりたい放題とか、ラスくん達が知っていた風に話していたことも合致をより加速させたのも大きかった。

ここまで出揃ったら、幼子でも分かってしまうだろう。

 

『無慈悲な主役』(マーシレス・プリンシパル)ケルビム……改め、マドラーシュ・リヴェ・パレッティアのご登場だ。精霊狂信者(クソッタレ)にお仕置きするという最高の舞台の主演、きっちり務めさせて頂くとしよう」

 

堂々且つ慇懃無礼、まさにそんな様でお辞儀をする末弟。

オルタやティルティの話しぶりからすれば、ずっと裏で駆けずり回っていた。

それだけの激務をこなしてきたはずなのに、何でまだ童心丸出しの顔が出来るのか。

……無慈悲なまでに主演染みた我が末弟を見て、私はどんな表情をすればいいのかまるで分からなくなってしまっていた。

 





というわけで、ようやっと主人公合流。
いやもう加筆もやりたい放題状態で、どこに綻びがあるか分からん状態です。
どこぞのベベル突入のようなグラインドとか、本家レモンの効果使ったりとか、パワー・ボンドと言う名の魔人化からの連続疾走居合とか……
後からちょこちょこ修正かけるかもですが、ご了承ください。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。