転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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【悲報?】次章の大筋がここにきて変わること確定
まあ書いている途中で違和感があったし、全部書き直しってわけじゃないからそう悪いことでは無かったり
ただ、休養挟む選択で良かったですねこれ……


85. 狂風破天荒の系譜

 

陣営の頭領同士のぶつかり合いが熾烈を極める頃。

もう片方の殺し合いもなかなかのせめぎ合い、鍔迫り合いが繰り広げられることとなっていた。

あちらが互いが放つ口火により加熱されているが、こちらも物理的な意味で場は沸騰しつつある。

間もなく特別近衛騎士になると9割確定している見習い3人の前に立ち塞がるのデュラハン……こいつが得意とする属性が主な原因である。

 

「元異界棲みってのは伊達じゃねえようだな。魔力だけならアイツが扱うドレッド・ドラゴンすら上回るんじゃねえか?」

「マッドも興味深そうに何度も目を通してたからなあ……さもありなんってやつ?」

「あんなバ火力を前に暢気すぎでしょアンタ!?」

 

放たれるものは主に火属性魔法。

基本の『ファイアボール』は前菜のように雨あられと降り注がれ、脇を固めるように『フレイムウィップ』やら『フレイムナーガ』。

一つ一つの魔力の込め方が異なっているからか、その軌道やら威力の発し方が彼らの知るものと大きく異なっていた。

特に火力の面は目を見張るものがあり……直撃は実質即オワタとすら言えるもの。

最初は驚愕したものだが、ラス達もこれまでウガルーやグリフォンを筆頭に経験を積んできた──マドラーシュ基準でも立派な強者に類される。

即座に対応しては、すぐに適宜反撃態勢を整えるくらいはなんてことない。

 

「にしても、ウガルーと比較しても遜色ねえ硬さの上に速さもそれなりとはな……首を無くしてそれだから、デュラハンという種には恐れ入るところだ」

「その足でそのまま突進してくるから割と冷や汗ものなんだけどね……ナマリエもなかなか綺麗な狙撃をさせてもらえてないようだし」

 

とはいえ、そうは問屋は卸さないのもまた事実。

ベースとなる疑似『点火する偶像』は、確かにオルタ達を相手にして惨敗を喫してこそいる。

しかしその敗因は、まさに魔法至上主義者ならではのお高く留まっているその精神性。

圧倒的生物的優位を下らないノイズでダメにした、戦闘を行う者としては愚の骨頂と言える負け方とすら言える。

その愚かさがそのまま残っていれば、いくら人数が少なくなっていてもラス、カルト、ナマリエという組み合わせならば何てことない相手だったことだろう。

しかし、アンデッドと化してしまえばその前提は容易く崩れ去ってしまう。

更に言うなら、亡者の王と化したモーリッツの魔力、加えてキーストーンにおんぶにだっことはいえフィジカル面の強化はそれなりの強化が施されている。

更に、オルタ達が戦った時は基盤の精神性から遠距離戦が主となってしまいその肉体を半分も生かせているか怪しいところだった。

対するデュラハンとなった今は、遠近が嫌な感じで織り交ざった猛攻を繰り広げている。

ラスとカルトは真っ先にスピードと防御性能に愚痴を入れるが、それ以上に面倒なのは……。

 

「回避の更に先に火球やら火の鞭なんて勘弁してほしいわね!アンデッドって何でこう粘着質なのよ……!」

 

アンデッドという種は、己が失った『生』に執着する魔物の総称というのが通説だ。

妬みやら僻みやら。それは当人にしか分からないが……その特徴は生者に対する強い攻撃性に繋がっている。

無機質に寄っているが故の遠慮や躊躇がまるでない殺意は、並の魔物のそれを遥かに凌駕する。

それはどうしようもないと言えるほどで、これまで王国内で表立っての出没例がないことが幸いと言えるものでもあった。

更に上位になってしまえば、その執着は魔力や呼吸の察知にまで繋がってしまうほどで。

結果、このデュラハンは正確無比に近しい行動を見せる殺戮機械に近い存在となってしまっていた。

それでいて前述のステータスを持つので、恐らく相手が出来るのは王国内でもかなり少ないことだろう。

幸いなのは、その連続行動にはタイムラグがあること。

分かってさえいれば致命打を貰わないで済む……本当にそれだけのことなのだが。

そのせいで、堅い相手でもピンポイントにダメージを期待できるナマリエの長所がまるで生かしきれない事態に陥っていた。

では、ラスとカルトが抑えれば……というところだが。

 

「クソ、ここにもトラップがあったか!」

「こっちからの接近に反応して『ファイアウォール』が放たれる仕掛け……どれだけ用心深いのさ」

 

その様は電脳世界でも通じるような壁とも言えるか。

明確な意図を持った接近を封じるということは、相手に攻めあぐねさせることと同義である。

慢心が招いた敗北を一度魂に刻まれたが故に、極端なまでに不確定要素に対する慎重さが窺える。

その手段が片手間であることが厄介極まりなかった。

しかし、後の特別近衛騎士団長の目には曇りも無ければ恐れすら見えない。

むしろその行動にとある存在の行動と類似性を見出して、次に確かめるべきことを考えてすらいる。

 

「なるほどね……ちょっと試しにやってみようかな!」

「俺も付き合ってやろう。どうせ考えてることは同じだろうからな」

 

本当に試しがてら放つのは、マドラーシュやオルタの得意とする放出型の魔力斬撃だ。

剣を振るいながら遠距離攻撃に転ずることが出来る術だが、ラスはこの類を苦手としている。

それでも魔力制御の一環で最低限で放つことは出来るようにはしており、まさにこの場は試し時にするにもいい機会。

本家2名に比べたらややぎこちない動きで剣戟を放ち、それに続く形でカルトは闇属性魔力で生み出した手裏剣を大量に投げつける。

デュラハンは何の動きも見せないので、あわよくば……と言ったところだが、そう問屋は降ろさなかった。

 

「どうやら遠距離攻撃に特化した障壁も兼ねてる……案の定だね」

「……いやよく見てみろ、魔力斬撃の方は同じ属性の互換性のせいで消されたって感じじゃねえか?」

「あ、本当だ……カルトの方は2,3発通ってる。そこまでの耐久ではないってことかな?」

 

現に、その焔色の胴体には闇色の装飾がほんの少し為されている。

それは本当に当てたというだけの話であるが……それでも情報の更新には貢献している。

防御できる攻撃量に限界があるのならば、まだかろうじてやりようは残っているか。

……新たに思考を回そうとしたところで、リーダーは素早く新たな危険を察することとなった。

 

「っ!?しれっと溜め込んでた魔力を何かかしらの形でぶっ放すつもりだよ!」

「……あの様子だと、馬鹿みたいに突進して蹂躙ってところ?一旦上に退避するから二人とも続いて!」

 

ナマリエが魔力空中足場を即座に連続展開をしては跳ねていき、ラスとカルトもそれに続く。

明らかにデュラハンの上を取ったと言えるタイミングで、あちらは密かに溜め込んでいた魔力を解放する。

その様はまさに暴走と言ってもよく、縦横無尽に周辺を荒らしていた。

軌道はまるで読めず、更にはスピードも跳ね上がっているので闘牛士のような真似事は絶対に出来ない。

どこぞの派手好き破天荒でもそんな愚を犯すことはない……それだけの範囲攻撃である。

 

「その度にこうして避けるってのも、無駄に時間と魔力を食うだけね……ただ、こちらに有利な情報がまるで足りないわ」

「何というか、このやりづらさはノヒルリア様やマッドに通ずるところがあるんだよね。欠点を悉く潰すやり方っていうか……」

「あー……お前の言いたいことは何か理解できたぜ。だが、あのあくどさ極まりない悪童っぷりに比べたら屁でもねえな」

 

すなわち、彼らにとっては主の方が本家本元でしかないということ。

初見殺しをかましてくる辺りは特に似ているところではあるが、そこに絡めた一撃必殺の類が存在しないだけまだまだツメが甘い。

カルトの言う悪童っぷり……初見殺し+分からん殺し+分岐殺し+一撃必殺という性悪さに比べれば遥かにマシ。

そんな逆境ポシティブ意見が出てきて、ラスとナマリエの表情からも僅かに険が取れた。

そのお陰で、思考回路の回転も緊張から解放されてはより早くなる。

 

「ただ、アレの場合はアンデッドならではの思考回路のはずなのよね……あの猿山の大将に無理やり蘇らされてるわけだし」

「一度死んでるが故の思考ってか?それだけ単純なら案外何とかなるかもしれねえな」

「あの伯爵子息のせいで相当ねじ曲がってるだろうし、まあやりようよねえ」

 

着目すべきはやはり、アンデッドという種そのものの特性だ。

一度屍から蘇った種だからこその長所と短所、3人はそこを改めて纏め上げては共有する。

無論、そうこうしている内にデュラハンの魔力突進暴走は収まるのでそこまで悠長にしていられないのが現実なわけだが。

 

「見たところマッドの方もまだかかるみたいだし、俺たちも腰を据えて戦おう。これで最後だろうから、魔力を遠慮する必要は無いしね」

「ウィンやチビの合流を待つつもりはねえぞ?アイツらには王宮内の掃除に徹してもらわねえとな」

「それは勿論。キュイに報酬を横取りされたら洒落にならないものね……さあ、第二ラウンドに行くとしましょうか」

 

猛々しかった魔力が収まるのを確認する前に既に3人は地に降り立っていた。

各々の顔は、まさに主譲りの不敵っぷり全開だ。

確かに強大な相手かもしれないが、『それがどうした』と言わんばかりの面構え。

かの破天荒から授かった力と共に研鑽を重ねてきた自信から来るものなのは間違いないだろう。

だが、それ以上に彼らの中にあるのは……。

 

「あんまり時間をかけてたら、嫌な笑みを浮かべたマッドに『世話が焼ける』なんて言われちゃうからね。それだけは絶対にイヤだ!」

「右に同じくだ。むしろこっちが先に終わらせて煽りまくってやろうぜ」

「はいはい、いつもの負けず嫌いモードね。まあ置いてかれるってのも癪だから付き合ってあげるわよ!」

 

生意気な年下な破天荒馬鹿王子への対抗心、ただそれだけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亡者の王やその末端たる混沌から生み出されし魔物を相手に演舞のような振る舞いを見せるマドラーシュ。

ただでさえ種として凶悪な『点火する偶像』のアンデッドという、最悪な組み合わせとすら言える相手でも一歩も引く様子を見せない近衛騎士3人。

どちらの戦場も徐々にヒートアップしつつある。

そんな様子を特等席で眺める者たちの反応は、それはもう三者三様という他ないだろう。

なお、この観客席にはセラが治療の片手間で作り上げた魔力城壁が築かれているので流れ弾等の心配は無用である。

 

「それにしても、ジワジワ押されているようにも見えるのに誰一人悲壮感を抱かないのですね……」

「ふふふ、まああの程度は日常茶飯事ですので。特にマッド様としてはいい感じの調味料(スパイス)でしょうね」

「いつから戦いが料理になったのですか──ああもう、またあんな危なっかしいことをして……見ているこちらの身にもなって欲しいものですね」

 

ケルビムとしての戦い方は一度見ているが、その時と勝手が異なっている。

挑発含む軽口も多く、「何でそうする?」という思考を誘発させるような仰々しい行動も目立つ。

ただ、それらを混ぜてなおまともな戦闘に見せている辺りは流石の技術というべきか。

……その余裕っぷりから発せられるギャップがユフィリアをよりハラハラさせるわけなのだが。

 

「マッド先生もそうですが……特別近衛騎士の皆様もなかなかですよ?」

「……そうですね。危なっかしさを含みつつも図ったような感じで……主従でこうも似るものなのですか?」

「ユフィリア様がそれを言っていいのでしょうか……?」

「と言いつつも熱を隠しきれておりませんよ?特にラス様達の方をそんなに見て……その心境を是非お聞きしたいところですね」

 

そしてラス達にも視界を向けてはきっちり批評を行う。

これにはセラもだが、レイニも口を開かずとも意外そうな表情を見せることで同調していた。

ちなみに、誰も戦況について心配をしていないのは深く突っ込んではならない。

そこにあるのは、いちいち言葉にする必要もないような信頼だけなのだから。

 

「意地でも主から突き放されまいと食らいつけるあの姿勢と根性、あれがどうしても輝かしく見えますね。羨望、嫉妬もありますが……一番沸き上がるのは闘争心ですね」

「負けず嫌い令嬢、ここに極まれりといったところですか。ふふ、マッド様が見たら楽しそうな顔を浮かべそうですね」

「……誰のせいですか、とは思うところですけれどね。本当に無自覚に罪状を増やす方で困ってしまいます」

「そのやりたい放題については、私としても擁護出来ませんね。そうしたら私自身を否定することになってしまいますので」

 

彼らの強くなろうとする源泉は至って単純なものである。

高みに至ってやろうという傲慢、出来ることをひたすら増やしたいという強欲、理不尽的圧力が許せないという憤怒、先を行く者への羨望から来る嫉妬。

それらから生み出されるのは、生物が共通して抱くであろう闘争心といった代物だ。

かつてのユフィリアは、これをマドラーシュにしか抱かなかったからこそ過度な執着に繋がってしまっていた。

そこから依存染みたものに繋がり、導どころか道そのものとして見ていたからこそ一度は昇り始めていた道から転げ落ちてしまう。

それでもと這い上がった結果、ただ背中を見据えるだけでは足りないという己の欲求に気付くことも出来たわけで。

ラス達に抱くそれは、言うなれば同族に抱く対抗心というべきだろうか。

類は友を呼ぶという言葉になぞらえれば、ライバル意識とでも言うべきか。

そのお陰で、講演で語った荒波への対処についても彼女なりの道筋は出来上がりつつあった。

……それに対して、どんどん暗雲が立ち込める者もここにはいる。

ユフィリアの回復魔法を受けながら観戦するアニスフィアの表情は、とても熱戦を眺めているようなものではなかった。

心ここにあらず、とでも言うべきだろうか。

 

(……マッドくんがケルビムだった、これはまだいい。私と違って名を隠して冒険者していたってだけの話だから……むしろ上手くやってるなってだけの話だ)

 

気付けるきっかけはいくらでもあった、今ならばそう思い返せる。

先ほど挙げたレイニとの初対面の時もそうだが、それ以前でも掘り進めれば疑念は抱けたはずなのだ。

しかし、この事実に気付けなかったことなど彼女の暗雲のほんの一旦に過ぎない。

『無慈悲な主演』ケルビムが、『ただの』最上級冒険者だったならば驚きながらもある程度は流せたところである。

最大の問題は、自分ととある共通事項を持つところにある。

 

(……何で姉弟揃って『稀人』ないしそれと似たような認定受けちゃってるのさ。それにモーリッツのあの言い草では、顕魂術という別の異端を生み出したのは……)

 

超越種に特別の何かのような認定を受けたこと。

そして、この世の常識を打ち破るような何かを生み出していること。

過程や根幹はまるで違えど、この長女と次男はそれなりのところで似た経歴を辿っていると言ってもいい。

ただ、決定的に違う点がいくつもあることもまた事実であった。

 

(何だかんだで姉と弟で、結構似ているところもある。それなのに、何で君は……)

 

──そんなにも受け入れられているの?

思わず口に出してしまったが、あまりにか細いもので誰の耳にも届かない。

その様子がまた、奇天烈王女の深淵を表すかの如くであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦局が終盤に差し掛かっているのは離宮の戦いだけではない。

マドラーシュ達が首謀者であるモーリッツを留まらせている間で、王宮内部の掃討戦も詰めの段階真っ最中であった。

元々機動力のあるアルガルドと手数と殲滅力に長けるジュンがいるお陰でスムーズだったところに、ティルティやキュイが合流したことが何より大きかった。

最前衛もここまで出突っ張りのガークがウィンと適宜交代、更に後衛も厚くなっている。

特に現時点で補助のスペシャリストセリアードの働きも大きい。

室内戦であり、更に相手はアンデッドメインと考えれば被弾のリスクは否でも高まる。

そこを補うヒーラー兼サポーターの存在が霞むわけがない。

離宮側に比べれば地味な活躍かもしれないが、それでも役割としては十分大きなもの。

その御蔭で、彼らは先を見据えた動きが取れるわけで……。

 

「あの様子ならば、ここに雪崩れ込む心配はないだろうな……アイツ専属の近衛になるならばこれくらいは当然だろうが」

 

防衛側の旗印が表に出たことで、共に裏方をしていた3人もまた新たな持ち場についていた。

その場所は、まさに今回最大の死守ポイントである。

襲撃側の最終目標とも言えるその場所にイグノックス、クリスティーナ、エリオという裏・主戦力という配置はもはや堅牢とかそういう次元の話ではない。

しかし、あまりに簡易的な役割は退屈を招くというもので。

……弟分の影響がまだまだ著しいイグノックスにとっては、やはりもどかしさしかなかった。

 

「こーらイグノックス。こうして私たちが久しぶりに本懐を成せてるのもあの子達のお蔭なんだよ?もうちょっと弟分以外の若者の成長を楽しんだ方が絶対にいいと思うな!」

「……俺はそこまで老けたつもりはないぞ。何なら前に出てもっと早く片付けてもいいくらいだが」

「いやいや、今回はマッドと愉快な仲間たちに任せようって話ですよね!?私たちの手伝いがいらないならそれに越したことはないと思うのですが!?」

「全くもう、マッドがあれだけ大暴れしてるからって感化されすぎだよ~……いつまで経っても変わらないんだから」

 

危なっかしいやり取りに見えるが、イグノックスとしてはこれでもかなり抑えている方ではある。

そもそも、彼とて下の世代が育たない事には始まらないことは重々承知の上だ。

どちらかと言えば、しれっと紛れてやりたいくらいの気分なのだろう。

それはそれでどうかと思うが、まあ尖り口の割には微笑ましいやり取りである。

 

「やれやれ……申し訳ございません。何分マドラーシュ様の晴れ舞台ということで普段より口が回ってしまい……」

「ははは、別に構わん。むしろいつも通りでいてくれる方が緊張が和らぐもの。それに、アニスがもたらす胃痛に比べれば遥かにマシであろう」

「それもそれで……いえ、これ以上は言わない方がいいですね」

 

グランナイツ裏の立役者、ラインヒルトも当然この場に駆け付けていた。

この一連の出来事を常に睨んではあらゆる調整を施してきた者としては当然の役目といえる。

そして、当の王とは問題児を抱える者同士としても互いにシンパシーを感じていたりも。

……今回は違うのだが、事が事ならば今絶賛大暴れ中の破天荒もその渦中にいたことだろう。

 

「私も少しばかり熱で浮かされそうなくらいですからね……いっそ少しだけで前線に顔を出してもいいでしょうか」

「やめなさい、いい歳して──そんなだからアニスちゃんに未だ現役として行けるなんてやれるって勘違いされるのよ?」

「待ちなさいデイジー、それは貴女の言えた義理ですか?」

 

十中八九冗談なのは分かっているが、それでも親友としてきっちり釘を刺すのを忘れずに。

そもそも王族の内2名が迎撃の前線にいる時点で異常なのだ。

そこにトップが割って入ったりでもしたら、もはや混沌に窮することだろう。

末の息子はそんな狂気的状況を楽しみかねないが。

かつてはやむを得ぬ事情から主従関係を解消した者達だが……まるでわだかまりを見せる様子もなく。

それでいて王国随一の顔ぶれが警戒を怠っていないのだから、攻める側としても知ったら涙目確定であろう。

 

「しかし、マドラーシュが危惧した通りのことがこんな形で起こるとはな……」

「これでもだいぶ状況は制御できている方ではありますがね。あちらもなかなかの手勢をギリギリまで隠しておりまして。僅かなボロを出してくれたのが本当に救いでした……ところで、シャルトルーズ伯爵もやはり?」

「この事態を前に全く姿を見せないとなれば、恐らく親子ともどもといったところでしょうか。そうなれば魔法省にもどれほど内部犯が潜んでいることか……」

 

こうなれば、もはやモーリッツの単独犯ということはほぼ有り得ないと言える。

彼も魔法省内ではそこそこの地位に居座る存在ではあるが、長官である父の助けもあると考える方が自然。

今回の人魔入り乱れる王城襲撃は、クーデターとしてもかなりの規模と見て間違いないだろう。

 

「では、その最悪な方向で舵を取りましょう。そうでなくても魔法省が揺れることは確実ですからね……我々にとっては最大の好機でありますが」

「物騒なことを笑みを浮かべながら告げないでください……どれだけ腹に据えかねていたのですか」

「おっと、これは失礼いたしました。長年苦しまされたところをようやく一発返すことが出来るのでついつい」

 

魔法省長官であるシャルトルーズ伯爵、その息子がこれだけのクーデターを起こしただけでも失脚は免れないであろう。

当の父親も行方を眩ませているとあれば、親子が共謀している可能性は高いとみていい。

そんなことになれば、魔法省そのものへの激震はもはや避けられない。

無論それはラインヒルト含むグランナイツ、そしてマドラーシュ達の望むところでもあるわけで。

無論、過度になりすぎても寝覚めが悪いのでそこはきっちりと調整していく。

クーデターへの対処だけでなく、その事後処理についてもある程度の見通しは事前に立たせている。

 

「しかし、相手の思惑を利用してこの暴動を誘うとは……マドラーシュもそうだが、ラインヒルトもなかなか豪胆になったものよ」

「マドラーシュ様やラス達が表舞台に立つにあたり、最高の形の門出を与える…それこそが私の本懐ですので」

「色々なところからの後押しも多かったですからね……学会の方からもまだかまだかと催促があったほどですし」

「あはは……あの辺の人たちにはマッドも凄いお世話になってましたからねえ……」

 

そもそも、こんなクーデターが画策されている段階で水面下では滅茶苦茶な事態なのだ。

それならば、少しでも抑えが利くよう自ら御するように動く方がまだマシであろう。

滑るならばこちらから滑らせる理論で、受動的になるくらいなら能動的に。

とはいえ、あまりに思い切りが良すぎて大丈夫なのかと懸念を抱くのも致し方ないところで。

済まし顔でいながら、ラインヒルトもなかなかに破天荒の影響を受けている一人だることの証明でもあった。

 

「それにしても……ある意味では親の心子知らずというべきか。大元の問題は我々にあるのだから知らぬ存ぜぬを貫けばよいものを……何故やりたい放題ついでにやらなくてもいい尻拭いなどしてしまうのだ、あの問題児は」

「その結果、また色々と背負わせることになってしまいますね……親としてこれほど情けないと思ったことはありません」

 

国の安寧の為に双子の片割れを捨てるも同然の扱いをしたのだ、どう罵られようと構わない。

そんな覚悟の下で苦渋の決断を下したというのに。

それが奇妙な縁その他の結果論とはいえ、よもや王族の昏いところにまで首を突っ込んでしまっている始末だ。

長女と長男にすらまともに話せていないというのに、末っ子はすんなりと入り込んでしまい……その挙句これまた奇怪な因縁で戦いを繰り広げる始末だ。

本来ならば、過去から積み重なった、それこそ二人にとってはどうしようもないこと……だからこそ、自分たちの手でケリをつけたかった。

ひょんなことからとはいえ、子を巻き込むなどあってはならない。

だからこそ、親としてはただただ懺悔するしかなかったが……それはすぐさま杞憂となるのは言うまでもなく。

 

「今回の件もあくまであの方の自由意志、いつもの「気に入らないから首を突っ込むぞ」というだけでございます。我々もそこに勝手についていってるだけの話……お二方は気に病む必要は微塵もございませんよ」

「もう運命共同体とすら言えますし、何なら私たちも一緒に暴れてる節すらありますからねえ……年甲斐もなくてお恥ずかしいところですが」

「きっとあの子だって『ここで途中下車なんて死んでもゴメンだ』って言うはずですよ。それでこそやりたい放題なおバカさんなんですから」

 

今頃当人が戦いながらクシャミでもしていてもおかしくはなさそうだ。

あんまりな言いようとしか形容出来そうにもないが、それでも容易にその様が浮かぶほど適切と思える言われよう。

先ほどとは打って変わって苦笑いを浮かべるのは無理もないことで。

 

「……これほどお前たちはやはり欠かせない存在だと再認識した時はない。このままでは一生頭が上げられそうにないぞ……」

「あいつと引き合わせてくれなければ俺達とてどうなっていたか分からなかった。結果的に救われたのはこちらも同じく、むしろ堂々としていていいと思うが」

「陛下はもう少し自嘲の念を抑えた方がよろしいかと。イグノックスが口を開くなどよほどのことですよ?」

「おいデイジー、一体どういう意味だそれは」

 

どうもこうも、ここまで口数が少ないのが全て。

弟分に対する情が深い分、イグノックスとしてはこの場では逆に口を開きづらいだけのことで。

ここにカルシオンやルドミラがいないことは幸いである。

 

「それと……シルフィーヌは相変わらずマッドのことになると甘々としおらしさを同居させて、そういう器用な真似を何でアルガルドくんやアニスちゃんにも向けられなかったのかしら」

「……相変わらず容赦ないですね貴女は。棘を刺すにも手加減してほしいのだけれど」

「そりゃあ刺さるように言ってるのだから容赦ないのは当然でしょうに……とにかくもっとどっしりと構えていなさい。それが親というものでしょう」

「お主にそこまで言われてしまったら、もうぐうの音も出ないな……」

 

最後の締めに問題児を多く取り纏めてきたデイジーがピシャリと。

もはや破天荒に言うのと同じような喝で、その様はまさに肝っ玉母さんと言えるか。

これで剣を握っていれば、活人剣になっていてもまるで違和感はない。

現に、そんな不敬スレスレな言葉に二人はものの見事に顔を上げていたのだから。

 

「……重ね重ね申し訳ないが、これからも彼らを支えてやってくれるか?当然我らも手は尽くすが、未だ人材が不足気味でな」

「あの方の『あるべき世界』に繋がるのならば、是非もなしですね」

「ラインヒルトも何だかんだであの子に心酔してるわよねえ……セラとプリシラといい勝負じゃないかしら」

「否定できませんねえ……あの、ところでイグノックスは何故外に出ようとしてるのでしょうか」

「言質は取ったからには手本を見せるのも先達の役目……そうではないのか?」

「私たちは裏方で予備戦力に回るってさっき言ったばかりじゃない!どれだけ一緒になって暴れたいのー!?」

「やはり貴方はあの子の兄貴分ですねイグノックス……お蔭でだいぶ気が晴れてきました」

 

人から外れて超越せんとする者たちと人であり続ける者たちが火花を散らしている中の舞台裏。

自陣営の勝利をきっちり見据えているからこそで、暢気とかそういうものでもない。

そこには次世代への確かな信頼があり……だからこそ先を思い、裏方に回ることができるわけで。

それに、かの狂風にも下準備はあって損はない。

そんな目的意識の合致とともに、この世代もようやく主従らしからぬ空気でかつてのわだかまりを解き放つこととなった。

 





というわけで久々に場面転換多め。
ラス達はまあ相変わらず強敵を前に悲壮感まるでなしです。
ユフィリアとレイニにも伝染しつつある中、アニスフィアは……?
そしてそのしっちゃかめっちゃか主従は親世代からということで……。
グランナイツも何だかんだクセ者集団ですからね……しかもデイジーが生存なら尚の事でしょう。
フルメンバーならもはや収集つかない分、ラス達より際立ってるかも。
この辺りは加筆の際にブレまくって、結果投稿が遅れてしまいました……スランプ怖い。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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