転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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サブタイそのまま推奨曲シリーズまで別作品ネタを持ってくる始末でございます
鉱山道場やる場合はイヤというほど聞くあの曲ですね
系譜はまるで違えど、やはりサガだからシンパシーあるのかとも思うところですね



86. The Soul Of Fire

 

──ああ、暑いったらありゃしない。

さっきまで夜風が冷たいと思ってたのに、これじゃあ風情もあったものじゃないね。

まあ、相手が相手だから致し方ないんだけど……。

 

「こんな鎧つけてるから尚更キツイんだよね……!」

「んな愚痴が言えてるんなら、給水はいらなさそうだな?」

「そもそもそんな暇、ないでしょうが!」

 

どことなく俺とシンパシーを感じる色彩の首無しの魔物(デュラハン)の攻撃は、その度に差異も伴っている。

多用しがちな突進の時点で、いきなり低級魔法が付随されたりそうじゃなかったりだ。

火球(ファイアボール)やら火の鞭(フレイムウィップ)、はたまた単調な魔力衝撃波だったり。

今回飛んできたのは『ファイアボール』なので、上手いこと足元を潜ることで難を凌ぐ。

この際には不用意な攻撃の構えをしないことも肝だ。

さもないと、俺とカルトの斬撃の兆候に反応しては障壁に阻まれる。

挙句カウンターを貰って、足を焼かれでもしたら目も当てられないからね。

 

「ちっ、やっぱ踏みつけも込みか……!」

「危ないわねえ、わざわざ撃ち時を誘発させてからなんて趣味悪すぎよ!」

 

時折リズムを崩すように地面を踏みつけて熱の波を引き起こしてきたりもする。

嘶きという前動作込みだから、察知さえ出来れば避けること自体不可能ではない。

ただ、周辺温度を上げてくるからじわりじわりとこちらの持久戦の構えを削いでくる。

そこを判断出来るだけの知能が残ってるかはさておき……結果として状況をどんどん悪くされてることに変わりはない。

 

「でもこれで一旦飛び込める……!」

 

回避ばかりでは何もならないので、当然反撃も入れていくわけなんだけど……ここでも対策は忘れずにだ。

先に剣戟を入れるのは、火属性に対する防御を高めた俺であることは徹底する。

ウィンほどの堅牢さはないけど、一応俺も防御役としての務めは果たせるのだから。

特に今回は得意属性が一致してるから、尚更切り込み隊長は俺の為すべき役目となる。

近接攻撃に対応する炎の障壁は連続攻撃には対処しきれないという穴を突くためでもある──多段攻撃はカルトの領分だ。

 

「──潜り込んだからって呆けるなリーダー!」

「分かってる!まだ突っ張りどきじゃない!」

 

ここまでして上手く懐に入っても油断ならないのはアンデッドならではなのか。

図体の大きい槍使いにとっては最も嫌な立ち回りをしているけど、ならばと襲わせるのは大量の魔力槍だ。

間隙を縫うように放たれたそれらは、空間の狭さも相まって避けようがない。

──ならば、弾いてやればいいだけのことだけどね。

 

「キュイじゃないけど、置き土産がてらに爆発もプレゼントだ!」

 

手頃な位置にある右脚に剣を突き刺し、流れるようなイメージのまま切っ先で魔力を爆散させる。

その余波で迫る魔力槍の大半を弾きつつ、俺自身にも推進力を与えて自分から吹っ飛びその場を脱した……っ!

 

「やっぱり当たるか……しかもこれ、出血の呪い込みか!」

 

……流石は上級アンデッドのデュラハンと言うべき、でいいのかなこれ。

掠っただけだから傷口は浅いけど……お陰で僅かながらでも余計なダメージが蓄積されてしまう。

──こんな面倒な呪いもしれっと付与してくるとなったら、ますます持久戦は最悪の選択になりかねない。

 

「この粘着質っぷりはまさに狂信者らしいけど、槍にも怨念が憑いてたりするの!?」

「ちっ……いちいち世話が焼けるな!」

 

その上、遠距離担当のナマリエへの警戒も怠らずと来た。

いつの間にか槍を投擲、更には追尾をさせるなんて器用な真似までやってのけている。

しかも一度弾いても何度でも向かってくるというしつこさのおまけつきだ。

何とかカルトが鎖を放つことで縛り上げて、二人してある程度攻撃を与えたみたいだけど……壊れる気配はまるでない。

多分、あの槍がデュラハンの連動している……ということなのだろう。

以上、これらの攻め手のバリエーションの豊かさはこれまで戦ってきた魔物と比べたら段違いと言える。

──これだけ多彩な攻撃を全てやり過ごしては致命的な一撃は貰わないでいるわけだから、正直これだけでも勲章ものな気がするよ……。

 

「──っと、アンタたち!大技がまた来るわよ!」

「言われるまでもねえ、そっちこそとっとと足場用意しとけ!」

 

そしてもう3度目になる、大掃除と言わんばかりの豪快な連続突進の兆候が表れる。

これは一番分かりやすい攻撃パターンなんだけど、楽なんて言えるのはまだ余裕があるからだ。

ナマリエの魔力が切れたり、俺やカルトの足に支障が出たら……もはや言うまでもない。

要するに、見た目ほど状況は楽観視できるわけではない。

 

「さーて……どんどん都合の悪い要素が出てきているわけなんだけども、長引けばそれだけ不利になるってところかしらね」

「そういうところも含めて、攻撃面はどこかマッドに似てるね……欠点を潰すような波状攻撃したりとか、単純にパターンが多いところなんかが特に」

「『点火する偶像』なんて大層な二つ名だが、名前負けはしてないってのはイヤというほど理解したな……まあ、倒し甲斐があって結構なことだが」

 

そういう意味では、偏りこそ多少あれど全属性で千差万別な動きを見せる誰かさんは一体何なのだろうかとと思うところだ。

武器2つに徒手空拳もやってきたり、接近戦も遠距離戦もまるで苦にしない。

しかもそれらを熟練度を言い訳に出来ない程に必ず成熟させるんだからね。

改めて考えると、それは化け物だよなあ……としか言えなくなる。

 

「やっぱりアンデッドとして自我を放り出されたのがそのままメリットになってるのがとにかく面倒ね。生への執着がそのまま多彩な行動パターンに現れてると言っていいほどよ」

「そうだね。物理的に拙いと思ったら俺たちを遠ざけたり迎撃をする、ナマリエが何かしようとしたらウガルーより攻撃的な突進できっちり妨害……状況的適応はこれまで戦った相手でも格別だ」

「更に面倒なのが正確なまでの感知能力だな。アンデッドっていうのは生者に群がるって話も割と聞くから、きっとその延長線上で感覚が鋭いんだろうが……お陰で並の不意打ちは対策されてると言っていい。ったく、人の持ち味を尽く潰しやがって……」

 

3度目の大暴走を前にして、俺たち3人はここまでの展開を纏めていた。

今回の戦闘において、俺、カルト、ナマリエの立ち位置はまるで違う。

本来の最前衛であるウィンがいないことから、俺が代役としてタンク&アタッカーを兼ねて、カルトとナマリエはいつも通り。

この1名ずつバラバラ配置の最大のメリットは、各々が働きさえすれば多角的に敵を捉えやすいということ。

近距離・中距離・遠距離……これだけでも見え方というのはガラリと変わってくるもの。

マッドが恐ろしいまでの観察力と洞察力を持っているのは、この全てのレンジに適応できることも一因だからね。

 

「ただ、どうしてもアイツほどの圧は感じられねえんだよな……」

「それは同意ね。早い、激しい、広いと要素は揃ってるんだけどそこ止まり──手数はあるけど底は浅いって感じ」

「……多分、アンデッドという種はその単純さこそが強みと弱みの表裏一体になってると思う」

 

実を言うと、この推測自体は今回が初めてというわけではない。

それこそマッドの依頼であちこちの拠点を潰していた頃……要するに、この手の魔物と相対するようになった辺りから思ってはいた。

死霊騎士(ゴーストナイト)は如何せん質が悪くて数の暴力、そのお陰で多少は性質は掴めてはいたからね。

同じアンデッドだとすれば、ある程度傾向としては似ているのではないかと推測したわけなんだけども……。

カルトとナマリエは、それを聞いて納得するような顔をしてくれたから互いの認識としてズレは少ないことは再認識できたね。

 

「となれば、大まかな方針は固まったも同然ね。私はいくつか練ってあるけど、アンタたちは大丈夫?」

「へっ、その点は心配いらねえよ。斬り込み隊長もそうだろ?」

「どうせいつも通り、互いの強みのぶつけ合いになるんだ。今回も帳尻合わせればいいだけの話だよ」

 

己が魂を顕すこの術は、その自由さが故にチーム戦だと個性のぶつかり合いにもなりがちだ。

キュイなんかがいい例だけども……そこで縮こまっていては進歩など有り得ない。

マッドは7年前からそうしてきたんだし、俺たちがそうしないでどうするのさって話でもある。

 

「ついでに言うと、いい加減外からの心配する目線が気になってきたところなんだよね。大苦戦してるって思われるのも何だか癪だし、ここらで度肝を抜いてやろう」

「いっそおひねり狙いで、徹底的にやっちゃいましょうか!」

 

この戦いには、先達から受け継ぎ自分たちで研鑽してきたものを見せつけるという意義もある。

カルリッツから教わり、カルシオンやイグノックス様に叩き込まれ……俺たちの導(マッド)と共に鍛えたり、時に盗み見て得てきたもの。

──強くなることに血筋とかそんなものは一切関係ない、それを俺たちが示してやるんだ。

 

「さあ、狼煙を上げるとしようか!」

 

俺の言葉を合図に、目線などを合わせずに各々独自に動き始める。

大暴走を終えて、デュラハンは一時待機状態に入っている。

そこに、まずは基本通りの二人がかりでの接近だ。

当然それは何てことない普通の行動でしかない。

相手も反応してきっちり行動をとってくるわけだけども……。

 

「どん、ぴしゃり……ってマッドなら言うだろうね!」

 

恐らくは零距離と言える懐へ大技を叩き込むと読んだのだろう。

デュラハンはその場でいななくように暴れ出し、更に槍を振り回し始める。

無論そのまま零距離をキープしようとしていたならば、極めて有効な行動だ。

こちらの攻撃は間違いなく不発、それどころか地ならしの様な地団駄と不規則な槍をやり過ごす必要が出てきた。

だけど、今回の俺たちは最接近を図ったわけではない。

あくまで、相手がこちらの行動に対する『こうするであろう』対抗策を引きずり出しただけのこと。

これこそがアンデッドの本能から発せられる正確さへの答えだ。

マッド風に言うなら、後の先の更に先を制してやればいいだけのこと。

その結果、俺とカルトは共にそこそこの近距離からの突進攻撃……言うなれば、確実なヒットアンドアウェイを最重要視する行動を選択する。

 

「そのでけえ図体だ、こんな小回りは利かねえよなあ!?」

 

その手の変速技術がカルシオン譲りのカルトは、即座に急加速しつつ若干不規則な軌道を描いては一直線に足を斬りつける。

そこからマッドも扱う闇属性の鞭……カルトの場合は第3の鎖剣になるけど、それを突き刺して空中に移動して魔力手裏剣を同じ位置目掛けて投げつけることで追撃を図っていた。

対する俺は、スライディングでデュラハンの股下を間一髪で潜り抜けながら炎の円刃を展開してカルトの付けた切り傷を少しでも広げるようにしてやる。

直接的突進じゃないからダメージは少ないが、カルトが一度通した斬撃に続いているから通りは多少は良くなっているはずだ。

本当は剣を突き刺してやって魔力を爆発させようかと思ったけど、初っ端からリスクを負うのは流石に躊躇が出てしまった。

マッドなら……俺と同じようにしているはずだと信じたいけど、絶対いい一撃を与えるんだろうなあ。

 

「いつまで暴れてほんっとに喧しいわね!王女様から迷惑料取り立てられたいのかしら!?」

 

振り回される槍はかなり細身、だからその速度は単純に速いものだ。

だから俺とカルトはかすり傷すら負わないことを優先して攻撃出力を抑えることとなったけど、ナマリエだけは別の枠組みにいる。

この行動を誘発させたのは、むしろここでそれなりの打撃を与えるためでもある。

いくら暴れて動きは滅茶苦茶に見えるけど、ナマリエから見たら違うのであろう。

凝縮魔力弾を何の躊躇もなくぶっ放し、俺たちの付けた傷を更にねちこく抉る形で命中させていく。

その衝撃はなかなかのもので、デュラハンもその場で癇癪を起すことを中止せざるを得ないようだった。

 

「赤い布なんて持ってないんだけどねえ……まあ、分かりやすいのはいいことだけど」

「火の球と魔力波、更に鞭とは徹底してんな?だが関係ねえな、全部壊しちまえばいい!」

 

きっちり一撃を浴びせたナマリエ目掛けて、デュラハンは突進と遠距離魔法の併用波状攻撃を仕掛ける。

しかし、それもまた生物感知と危険意識の併用に過ぎない……要するに、想定内の反撃だ。

珍しく2つの魔法を両立してきたけど、カルトがどちらも纏めて処理をしてくれるようだった。

魔力手裏剣で的確に火の球を落としながら、魔力波は同じく魔力を帯びた鎖剣で木っ端微塵に。

──しれっとそういうこと出来るようにする辺り、流石というべきなのかな……?

こういう同時発動は、マッドの十八番だからきっと対抗してのことなんだろうけども。

残った鞭についても、ナマリエはきっちり対策は講じているようだ。

 

「要はその軌道を制限しちゃえば何も怖くはないってわけよ!」

 

デュラハンが突進からぴたりと止まって踏みつけに移行するというタイミング、まさにそこで風属性魔力を爆発させる。

これまでナマリエは、この突進に対して後退か横転でのみ対処をしていた。

だからこそデュラハンはそのまま突進を実行しつつ鞭も前方にしか向けていなかったが……当然それは早計が過ぎる選択だ。

きっちり回避したナマリエだけでなく、俺とカルトもここで確信を得て核心に至ることとなる。

そして、俺の方はとある準備が整ったので突進を空振りに終わらせたデュラハンに積極的に突進に向かう。

まさに最接近する人物がコロコロ入れ替わる戦い、相手からすれば鬱陶しいことこの上ないだろう。

──無論、そう思うだけの感性が残っていればの話だけども。

 

「新作の置き土産は用意しておくわ!」

「俺の方はいつもの装飾だ、悪く思うなよ」

 

後方に下がりながらナマリエが放ったのは、どこかで見たことのあるものだった。

──それはマッドが時折高々に術名を宣言して発動する、あの雷光ブレスにどこか似通っている。

アレは同じ術を3本凝縮したという割とトンデモだから、色々と取り回しは異なるんだろうけども……少なくとも見た目で区別はつきづらいね。

対するカルトは見慣れた毒蛇を放つのだが、その場所がこれまた厭らしい。

先ほどのナマリエの電撃砲も含めて、ものの見事に初撃で与えた脚の傷を抉る形になっているのだから。

 

「まあ、俺も同じことを狙うわけなんだけど……!」

 

デュラハンはナマリエとカルトの攻撃に反応しては、突進の反動から復帰するや否やこちら側を向いて槍を構えている。

恐らくは魔力を伴った薙ぎ払い辺りを放ってくるんだろうけど、あまりに分かりやすすぎる。

攻撃が起こるまでの時間も大体読めているし、その後も見越して俺は突貫してるわけだからさ。

……いざ懐に潜り込まんとする辺りで、発生するのはあの防衛機構である。

薄くも確実にカウンターを与えてくる炎の壁、槍を構えながらこちらを見据えることが出来るから今回はきっちり健在……って、あれ?

 

(近づいてもダメージを貰っている感じが薄い……俺の接近に反応している感じはあるんだけど)

 

さっきまでの見の段階に比べたら、その反撃はそれなりに弱体化されている。

この障壁のカウンターの対策に、俺自身にもちょっとした細工をしてあった。

キュイよりも古い悪友ってマッドも太鼓判を押す呪い蒐集家から借りた書物から発想を得たものだ。

本来は攻撃で用いられることが殆どの火属性魔力を、自身にのみとはいえ回復に宛がうという耳にしただけではトンチキと言われること間違いなしの術だ。

何故人間は風邪みたいな病にかかったさいに熱が出るのか、ここがこの回復術のヒントとなっている。

それと共に、精霊石を用いて火属性耐性をより高めた防御向上術も合わせて強引な突破を図った。

ただそれは、あくまで貰うダメージを減らし更に自己治癒で帳消しにするという狙いであって……威力を弱めるわけでは決してない。

……何かしたとなったら、後ろにいる二人になるわけなんだけども。

まあ、答えは一人しかいない……もはや苦笑せざるを得なかった。

 

「なるほど、置き土産ってそういう意味か……流石ナマリエ、しれっと抜け目ないね」

「これからは頼れるお姉さま扱いしてもいいのよ?ほら、障害物取り除いてあげたんだからちゃっちゃと行きなさい!」

 

カルトはあくまで傷口に毒を塗り込んだだけだから、必然的にナマリエが何かしでかしたって結論に至るわけで。

──あの電撃砲、その手の壁の防御性能を落とす効果も兼ねていたみたいだ。

恐らく、マッドの放つ掌底突きやウィンの大斧粉砕がベースだったんだろうけど……遠距離でそれが出来るのは凶悪でしかないね。

きっとウガルーの盾を貫けなかったことが結構悔しかったんだろうなあ……。

ナマリエも案外そういうところあったりするし……カルトとかマッドに似てね。

グリフォンの魔石からイメージを拝借したことも大きかったんだろう。

既存の風属性のパワーアップは勿論の事、雷属性についてもマッドと変わらないくらいの適性持っているし。

……そんなのを見せられたら、俺もちょっとばっかり火がついてしまう。

得物をあえて両手に、そして剣先を地に這わせながら散々傷を与えた右の後ろ足に向けて突貫。

火と土の混合魔力を歩を進めると共に蓄えていき、デュラハンの槍の範囲から逃れながら懐に潜り込んで……。

 

「跳躍と共に、動力と魔力を同時に解き放つ……!」

 

マッド曰く、俺の魔力は使い方一つで体系に関係なしの衝撃を与えられるとのこと。

今回はそこにダッシュから踏み止まり、跳躍する際の力も合わせて決定的一撃と為すように合わせた。

この時の俺の剣は、まるで三日月のような軌道を描いていたことだろう。

さながら『地擦り残月』……まあ、魔力色からして月というのは無茶があるのかもしれないけど。

だが、これだけで終わるような魔力の込め方はしてないんだよね……!

 

「在庫はあるようだし、ここから炎刃展開──更に上昇だ!」

 

せっかく加速しながら切り上げたけど、一度だけじゃもったいない。

ということで、アドリブ紛いでいつもの炎刃を回転上昇と共に展開する。

これまでと違って突進から放つわけでは無い上に逆回転だから若干勝手が違う。

当然威力は落ちるけど、追撃には申し分ないはずだ。

──いや、火属性魔力が噴射される形となって、更に高度を上昇させる勢いだ!

 

「……このまま更に蹴り穿つ!カルト、欲張るのもいいけど頭上注意だよ!」

「誰に向かってもの言ってんだ、俺はそんな間抜けじゃねえよ!」

 

高度上昇の勢いのまま、いい具合に顎下にサマーソルトを浴びせることができた。

流石にこれ以上は無理だから、一旦反動を抑えるために息を整える目的でナマリエの発したであろう空中足場(エアハイク)を利用する。

足元に追撃をかけるカルトの援護をしながら、よく戦況が見えているのはいつものことだ。

お陰で一瞬息を整え、俺の方でも更に右の後ろ脚への追撃を狙っていく。

 

「通りすがりに悪いね!そして今度は逆側!」

 

ピンポイントに飛び蹴りを右後ろ脚に命中させて地に足を着けるけど、残存魔力を用いて逆サイドへの再度の飛び蹴りを浴びせてやった。

いつまでもデュラハンの懐にいたら、何をされるか分からないからね。

脱出と共に、これまで右サイドばかりを攻撃してきたところに唐突の逆への奇襲も兼ねてだ。

丁度右脚を振り上げて反撃を試みようとしていたデュラハンも、これには虚を突かれたようだね。

 

「ラス、お前もだんだん性格悪くなってきてねえか?」

「ユフィリア様も大概だけど、アンタもなかなかいい感じじゃない!」

 

二人してそんな言い方は酷くないかな……。

というかカルト、左側に置き土産設置しておいてその言い草って……俗にいう『おまいう』だよね?

ナマリエもしれっと追撃がてら多数の小型誘導弾使ってるから、着弾時の爆発とかも兼ねて完全にデュラハンは混乱状態だ。

お陰でさっきまでの完璧な対応はどこへやら、ただただ藁を求めて藻掻くだけの哀れな木偶の坊……ってこんな言い方するから性格悪いとか言われるのかな!?

ああもう、こうなったらヤケで締める!地味に勢いがある状況だから今こそ死ぬ気で突っ込めだ!

 

「これ以上焼け野原を増やすのも気が引けるから、そろそろレッドカード突きつけて力づくでも出走停止にさせてもらうよ!」

 

トドメはやはり、俺のお得意とする突進型顕魂術だ。

剣先を向けながら、火と土の魔力と共に1本の矢となりながら突貫。

相手は未だ混乱状態だからこそ、狙うのは初志に戻って右後ろ脚だ。

吹き飛ばしではなく、衝撃を叩きつけることを第一にした型……それも、ここにきて魔力がいい感じで滾ってきている。

いくらアンデッドで強化されているとはいえ、執拗にここまで集中的にいたぶっておいた脚がその一撃に耐えられるわけがなかった。

 

「よし、右後ろは完全にぶっ潰れたな。ここいらで大盤振る舞いとさせてもらおうじゃねえか!」

「どこぞのバカ王子風にフィーバータイムと洒落込もうじゃない。二度と這い上がってこれないようにハチの巣にしてあげる!」

 

この時を待ってました、そう言わんばかりに二人はここまで温存していた魔力をフル解放だ。

ここまでは攻撃に対して確実性を重視していたところからの変動に、僅かだけど大気も震えてすらいるくらいだ。

カルトはキュイのファイヤームム召喚とマッドのグリフォン型使い魔に影響されて、闇の精霊石まで用いて召喚した影(シャドウサーバント)と共にひたすら連続攻撃。

自分の攻撃に続くようにしていた以前とは違い、カルトの持つイメージから勝手に攻撃している。

これまたとんでもなく器用なものを習得したものだね……流石。

ナマリエはカルトに当たらないように気を遣っていること以外はもう弾幕祭と言っていい状態だ。

あまり移動しないような術と素直な剣戟を交えては、俺も続くようにラッシュをかけていく。

元々は異界の偶像で、アンデッド化する形でパワーアップしたとしても……俺たち3人の全力攻撃は相当堪えるものがあるはず。

現に装甲のひび割れは大きくなっていき、デュラハン自身の苦悶の声もどんどん大きくなっていく。

──それと共に、俺たちに対抗するかのような膨大な魔力が溜まっていく気配も感じ取った。

 

「■■■──!」

 

それはアンデッド化して失われたはずの憤怒、ないし闘争本能というものだった。

底知れぬ怒りから発せられる咆哮に俺たちは思わず耳を塞ぎながら一旦離脱してしまっていた。

その隙を良しとして、デュラハンは特大級の魔力を維持しながら空中に浮かび上がっていく。

……その時点で一体何をしようとしているのか、俺たち3人は同じく本能で察していた。

 

「くたばるくらいなら残存魔力で俺たち諸共ってか!?こういうところだけクソ貴族引き継ぐとは笑うに笑えねえぞおい!」

「そうなる前に本当のトドメを刺してやる!ナマリエ、速度面の支援をお願い!」

「──ああもう、何で一瞬でどんな無茶しでかすか理解しちゃうのよ私!」

 

魔力の解放に集中しているから、反撃障壁は使われていない。

ならば、一番手っ取り早いのは引き離した上で自爆を誘発させることだ。

その為には、とんでもない速度を生み出す必要があった。

ナマリエは手頃な位置に空中足場(エアハイク)を設置する。

そして、すぐさまその術を展開して……合わせるように足場を壁にしては足蹴にする

その直後、背後から純粋な風魔力による特大風圧が発せられた。

その行為に何かを察したのか、デュラハンはその場を離れようとするが……もう一人、忘れているようだね!

 

「流石カルト、本当にしれっと気が利くよね!」

「どこぞのチビみたいに一言余計だ!とっととぶちのめせ、リーダー!」

 

いつもの鎖でデュラハンを拘束したことを確認すると共に、俺は既にトドメの体勢に入る。

俺が実行したのは、凝縮された風魔力を動力として自分と足場を吹っ飛ばして加速を得るという荒業だ。

マッドの風属性の魔力砲は近接扇形で展開されるけど、ナマリエのものは綺麗なトンネルを描いていると言ってもいいからね。

そこから着想を得て、即席の運搬手段として活用した、というわけだ。

当然とんでもない空気の壁も感じるわけだけど、そこで役に立ったのがさっきはお流れになった特定属性防御力向上と自動治癒のコンボ。

装甲強化で風属性の耐性を僅かでも上げながら、受けるダメージを強引に回復して攻撃の余裕を残す。

どっかのぶっ飛び侍女によりかは頼りないけど、致命傷さえ避けられればそれでいい。

ファイナルアタックで全滅なんて憂き目に遭うよりかは、一人が軽傷の方が遥かにマシだからね!

 

「自分からその姿になったんだ、介錯はこれでいいよね!」

 

勢いのままに得物を突き刺して、すかさず貯めておいた自分の魔力を爆発させる。

その反動と、魔力を込めた足蹴を以てして即座に離脱!

地上に逆戻りしていく俺とは対照的に、既に鎖から解放されたデュラハンは更に高度を上げていく。

俺の魔力の爆発が先に発生したことにより、デュラハン自身の自爆はその中に閉じ込められた。

更に誘爆も上手いこと発生した結果、二重の爆発となり……無様にも自分だけ巻き込まれるという結果となった。

──流石にここまでやれば、もう復活はしないはずだ。

 

「地味だけど、撃破は撃破っと……いてて、流石にちょっとだけダメージが残ったか」

 

自爆の際に妄執じみた魔力を浴びたからか、さっきの出血呪詛が見事にぶり返してる。

俺の自動治癒も呪詛にまでは効果は及ぼさないから、こればかりは甘んじて痛覚で受ける他なかった。

 

「あんな無茶かましといてちょっとで済ませてるのが異常なんだよ……お前も大概じゃねえか」

「どこぞの破天荒王子に比べれば対策を講じてるだけマシではあるけれど……何か、私たちの感覚もすっかり麻痺してきたわね」

 

ナマリエなんかぼやきつつも、思わず遠い目になりかけるよ……。

大体の原因はマッドとキュイの破天荒&天災コンビなのは分かっているんだけどさ……うん。

何というか、無茶の基準がどんどん上がってきているから自制を意識するべきかもしれない。

じゃないと、日常的に自分自身をチップにする……なんて洒落にならないことになってしまう。

まあ、今はとりあえず俺たちの仕事は終えたことを労わるとして……。

 

「──横目でラスのしでかしたことを見て、触発されないといいのだけれど」

「見たところ嫌な予感しかしねえけどな……こんだけ遠くても雰囲気で分かっちまうくらいだ」

 

……うん、カルトの言う通りだ。

シャルトルーズ伯爵子息だっけ?彼はよく相手してる方だとは思うよ。

自分たちで生み出した魔物の基本となった部分から、ああやって色々魔物を出す辺りは、見事なまでのなりふり構わずっぷり。

そのお陰でデーモンやガトプス、他にもドラゴンまで出てくると言う……普通だったら間違いなく地獄絵図だ。

それでいて、亡霊の王(アーリマン)とヴァンパイアの性質が融合したことでかなり死にづらくなってるときた。

随分と自信ありそうだったけど、まあそうなるのも無理はない。

……ただ、正直相手が悪すぎたね。

 

「仇のはずなのに、戦いを楽しむ余裕があるのがおかしいんだよね……」

 

あのふてぶてしく笑う余裕は、俺たちには……キュイやウィン、オルタ、ジュンでも無い。

──そう考えると、やはり別格。

だからこそ追い続けてなんぼのもの……とも言えるけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんなとんでもないのをたった3人で、しかもこんなにすんなり……?」

 

──人数だけならば、オルタ達よりも少ないっていうのに。

しかも顔ぶれを見る限りヒーラーやらサポーターがいないという攻め一辺倒な組み合わせときたものだ。

一発まともに貰えば終わる、まさに生か死。

それをきっちり渡り切り、取りこぼしもしない……。

──これが、この後でマッドくんに仕える特別近衛騎士の実力。

 

(……井の中の蛙ってまさに……いや、それはもういい。もう一つの戦況は……)

 

ここ最近頻発する負のスパイラルを寸でのところで振り切る。

今はそんなものにハマってる暇はない……まだクーデターは鎮圧しきっていない。

肝心の大将同士の戦いはどうなって……っ!

 

「……やっぱり、押されてる」

 

あちらの方に目をやれば、それはもう悲惨な絵面だ。

その光景は、完全に私の時よりも凄惨極まりない。

いや、群がっているのが多種多様な魔物な分更にタチが悪いのは当然あっちの方だ。

ドラゴンやらデーモンやら、他にも巨大目玉なんてのも現れ始めているし……。

もはや西洋版の百鬼夜行と言ってもいい惨状、そう形容する他なかった。

 

「せっかく近衛の3人が首をお忘れになったくたばり損ないを倒したというのに……と言いたげですね?」

「……そりゃあ、あんな状況見たらそう言いたくもなるよ」

 

主の勝利を微塵も疑っていないセラの前で気が引けるけど、どうしても心配だ。

ラスくん達3人も確かにあの首無しには手を焼かされてはいた。

それでもその圧倒的戦力を前に恐れを抱かず、かといって自棄にもならず……ひたすら冷静沈着そのもので。

結果、それなりの無茶はあってなお誰一人欠けることなく大物を撃退して見せたのだ。

かつてのグランナイツを引き継ぐような形で、マッドくんが特別近衛騎士として選んだ片鱗を見せつけられた。

……リーダーが私と同い年くらいだと言うのに、その様は騎士団長を上回って……少なく見積もっても母上に匹敵するほどな気がする。

更には、その同僚であるあの3人も控えている……正直、どれだけの縁を結べばそうなるのだと思うほどだ。

だが、今モーリッツと相対しているのはマッドくん単騎だ。

対するモーリッツは、百鬼夜行をぶつけると言わんばかりの物量作戦だ。

これ、普通なら心配するなって方が無理あるよね……?

 

「……私から見たら何かを試しているか遊んでいる風にお見受け出来るのですが。顕魂術を使って目がおかしくなったのでしょうか……」

 

……何でユフィ()はそんなに落ち着いてるわけ?

 

「ええ?いや、いくらマッドくんでもそれは無いと思うんだけども……」

「……あんな仰々しく登場しておいてこの体たらくというのが妙というか、おかしいと思いますけどね」

「……私もユフィリア様と同じことを思ってました。あのマッド先生が物量程度であっさり押されるのは違和感だらけというか」

 

レ、レイニまでそこまで言うか……。

ただ、現実問題目の前のマッドくんが苦戦気味なのは間違いないはずだ。

あの新種ドラゴンこそ出て来ないけど、それ以外は結構オンパレードだよ?

私の時と違って、モーリッツ自身も攻め手に加わってるからかなり激しい攻勢だし。

数の暴力の質が明らかに良いこともあって、完全に防戦一方。

一切の傷を負っていないのが奇跡とも思えるくらいで、試したり遊んでる風にはとても……。

 

「あら、ユフィリア様と新たなお弟子ちゃんにもそう見えるのね。アイツの理解がだいぶ深まってて何よりだわ」

「ようこそこちら側へ……とでも言うべきかもな?」

「クリスティーナ様がいなくて良かった……絶対収拾がつかなくなるのが目に見えてるし」

 

そんな私の不安を吹き飛ばしにかかったのは、戦いを終えて合流した特別近衛騎士3人だった。

言い方は三者三様だけど、主の心配をまるでしていないのは共通している。

……いや待って、随分と薄情というか主に対してそれでいいのか。

普通心配とか、何なら負傷してでも駆けつけるべきなんじゃないの……?

 

「……君たち、マッドくん付きの特別近衛騎士にこの後なるんだよね。加勢に行かなくていいの?」

「んな余計な事したら後が怖えっての。余計に何をしでかすか分かったもんじゃねえからな」

「今回はその兆候が強いから猶更ね……『触らぬ神に祟りなし』、だったっけ?そんなところよ」

「マッド様にお触りすれば祟りを頂けるのですか!?でしたらこの後遠慮なく……」

 

コラそこ我が末弟に何しでかすつもりかなあ!?

諺間違いを制されたと思ったらそういう方向に持っていく、本当にブレないねこのぶっ飛び侍女は!

ああ、ユフィは『知ってる』と言わんばかりにきっちりスルー出来てる……ジト目すらも向けてないし。

良かった、変な修羅場は自然と回避されてる。

 

「……まあ、今の私ではどうせ救援に行こうにも足を引っ張るだけです。貴方がたがそう仰るならば従いますが……無茶はしませんよね?」

「あー……それはちょっと保証しかねるね。それだけの場が整っちゃってるし……さっきからイヤな予感がひしひし来るから」

「っつうか、無茶をしないアイツってまるで想像できねえよな?こうなったらもう慣れるしかねえだろ……」

「毎度毎度事後承諾と言わんばかりに、『やれると思ったからやった、後悔はしてない』だものねえ……言っても聞かないし」

 

ユフィ、そこでなんでこっちを見るのさ。

確かに私も結構無茶したなーって我ながら思うことも少なくないけど、反省はしてるよ?

それに比べてマッドくんは明らかに反省も後悔もしてない、完全に我が道を行ってるいわば究極形。

立場が違えば確実に暴君のそれのはず……そう、そのはずなんだ。

 

「苦労なさっているのですね……そして、私もそんな無茶に食らいつかなければならないと」

「っていう割には随分とノリノリだな?ったく、あのバカ王子はマジで沼のような概念になってきてやがる」

「ははは……絶対に勝手に嵌った方が悪いって豪語されそうだけどね」

「もはや詐欺よね……まあ、それでよしとする方も大馬鹿者ってことなんでしょ」

 

それだけやりたい放題をかまして尚、文句やら苦言やらを掲げながらもついてきているのがこの面々だ。

セラやプリシラのような神格視する侍女もいるし、ティルティはあのネコ娘と同じく完全な怪しい悪友ポジション。

父上と母上からの信頼も厚いし、アルくんだって完全に追いつき追い越せを思いながらも裏で繋がっている。

最初は吹いては消えるような立場だったのに、いつの間にかこれだけ強固な立ち位置を得てしまっているわけだ。

……それに対して、私はどうなんだ?

 

「……私もそうなれる可能性ってあったの?」

 

マッドくんと比較すると、どうしても他にいくらでも道があったのではないかと疑念を持ってしまう。

その度に、私はどんどん自分の立ち位置を下げてしまうことも……否でも自覚させられる。

みんなが確信しているように、このラストバトルを無事マッドくんが制したとして。

恐らく、かなりの激変が起こり得ることだろうが……果たしてそこに、私の居場所などあるのだろうか。

──こんな異端まみれで、どう考えても不気味な私は……必要とされるのか。

皆が戦いを見守る中、私は一人答えが出る兆しの無い先のことをひたすら考えていた。

 





※実際のイグナイト・アイドル及びデュラハンは常時セルフバーニングなんて纏っていません。
更にグランサガ側のカイザー及びエリゴスのような攻撃もしだすというとんでもキメラモンスター、そしてそれを何とか短期決戦気味で倒すラス・カルト・ナマリエ。
いやこれ普通に原作より2ランクくらい強くないか……?

途中でラスが使ったのはロマサガ3初出の大剣技『地擦り残月』。
そこに上昇の勢いを増やしてはウラエルのスキルも発動も込々。
やってることの見た目はネロのEXハイローラーの更なる強化版だったりも(スタン効果あるからね)
他にもクラススキルのバーニングハートだったり、ナマリエはメズラエルスキル、カルトはぶっ壊れ術シャドウサーバントの劣化版のゼルカ変身スキル一部
ああ、術集更新がきつくなる

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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