転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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推奨曲→石関係の曲だけどそっちじゃねえから!
というわけで、原作から大出世した章ボス中盤戦です。


87. 邪聖の旋律

 

もう片方の戦いの終結は魔力の流れ一つで察することは出来た。

勝者は当然ラスカルナマトリオ……まあ、当然の帰結だろうよ。

ここまで経験を積んだアイツらならばあの程度はどうってことない、見るまでもなく分かるっての

そして上空からチラホラと見える景色から推測するに、他の場所も軒並み防衛完了といったところ。

アル兄さんやジュンも問題ないだろうし、イグノックス兄さん達もとっくに仕事は終わってる。

ラインヒルト先生とデイジー師匠も父上と母上の護衛ついでにこれまでの事情説明、後顧の憂いを減らしてる最中だ。

そうなれば後は……俺だけってわけだ。

 

「さてさて──こちらもそろそろ決着と行きたいんだが、どうやって閉めてやるべきか。ここは見晴らしこそいいが、参加型劇場に出来ねえのが難点だ」

「閉める?それは大口叩いた末に無様な敗北を喫する失笑物語のフィナーレということかな!?」

 

何てことをほざきながら、自称ノーライフキングは自発的に腕をぶった切っては魔物を生み出していく。

仮にも貴族ならこの程度のジョーク、いい感じに返してくれてもいいだろうに。

ユフィとかティルティならその辺りには大いに期待できるんだが……まあ、狂信者に何を期待してるんだかって話だ。

 

(にしても、ラインナップが変わり映えしなくなってきたな……)

 

毎度毎度飛行トカゲを混ぜてる辺り、味をしめてるのがよーく分かる。

正直なところ、いい加減飽きてきたんだよな。

せっかくベースとなった魔物を色々使えるというのに、肝心の担い手の考え方があまりに稚拙が過ぎる。

数の暴力に質を加える……そのやり方はいいんだが、まあ方向性が何より気に入らねえ。

ただ単に強いの上から並べてみましたー、たまにちょっとだけ変えてみましたー……何が面白いんだ?

こんなやり方じゃあ、後々『………………雑でした』って色んなヤツに後ろ指もんだろ。

主役の俺が失笑するって意味では失笑物語ってのも正しいが……マジで三文芝居だ。

 

「全く、俺はいつから生ゴミ処理業者になったんだかねえ!」

 

真っ先に飛行トカゲに斬りかかるんだが、再現があまりに甘すぎて既に失笑モノだ。

何せ魔法障壁に籠ることすら出来てねえ始末だからなあ……。

他に出来ることと言えば、空飛ぶことと敵対者にブレス吐くだけ。

これじゃあ、正真正銘の飛行トカゲ……ガトプスの方がよほど遊びがいがある。

こんなん顕魂術を使うのも惜しい。

っていうかセイリオスと千紫万紅も勿体ねえ……素手で十分だ。

 

「ちっ、やはりお前の方から斬りかかられた方が能率よく生み出せるというわけか……」

「威を借ることしか能が無いからこうなるんだよ。ったく、キュイ(俺の相棒)の方がよっぽど出来るぜ?」

 

あーうん、ここまで手抜きで倒してやってもまるで学習してねえ。

マジでだんだんイライラしてきたな……変な意味でフラストレーションが溜まりまくりだ。

ただ、ここでいきなりトップギアに入れて即時解決……ってわけにも行かねえんだよなあ。

カッカして突っ込んだら、それこそなあ……?

 

(さっきの姉上と似たような堂々巡りになるだけ。確信がまるで持てない一撃に意味はねえな)

 

あくまでゴミクズ評価しているのは、あのイタイ頭の構造だけだ。

仮にもアーリマンとヴァンパイアの魔石、更にはキーストーンも用いられてるわけで……内部構造だけならこれまででも上位に位置する。

制約はいくらかあるとはいえ、生前より弱くなることはそうそうないアンデッド……その中でも亡者の王と恐れられるアーリマンと来ている。

そこにヴァンパイアの魔石が因子として加わり、その優れた魔力変換能力分裂による死にづらい能力をより一層磨きをかけてきたわけで。

キーストーンによる強化も、そちらの方に重きを置かれていることは確認済みだ。

 

「考え事とは随分余裕だな!『サイクロンスクィーズ』!『ショックウェイブ』!『ライフスティール』!」

 

単純な魔力も強化されているせいで、このようになかなかお強い魔法の3連打を平然と行ってくる始末だ。

特に最後の呪術紛いは完全に上位アンデッド由来のものだ。

魔法名そのまんま、生者の生命力を奪い取るのでなかなか凶悪っぽい。

……っぽいと称しているのは、あくまで放たれた魔力から推察してのことだ。

──効力を知るためにいちいち当たるなんて出来るわけがないだろうが。

んなことしたらぜってーあちこちからお説教確定だ……特に連行からの拘束コンボをかましかねないユフィが怖え。

 

「デーモンとワイバーンとの波状攻撃ならどうだ!『ダークライトウェブ』!『フレイムナーガ』!『デスレイン』!」

「おいいう……いつから波状攻撃ってフレンドリーファイアと同義語になったんだ?」

 

全く、随分と楽しそうだねえ……。

2種の魔石とキーストーンがもたらす強大な魔力と能力はもはや麻薬のごとしなんだろうよ。

高威力広範囲をバンバン打つことばっかりで、もはやただのごり押し戦法。

弱体化しているとはいえ、挟撃要員くらいには事足りるデーモンとワイバーンの一部が見事に巻き込まれちまってるし……。

いや、無論俺も同士討ちを狙ってたわけなんだが……だからこそこれはひどい。

レイニを不意打ちでやって姉上のメンタルを崩したっていうのに、結局やり切れてないのはこの辺が要因だろうな。

力を持って、ひとまず暴走させてないだけで扱えると高を括っているからこその思考。

 

(まあ、所詮はズブの素人。東のクラマ族一人を相手にする方がよっぽど苦労するってもんだ)

 

力を誇示してるだけで、当てようって意図がまるで見いだせない。

そんな攻撃、正直視覚やら聴覚がなくとも容易く避けられる。

正直当たってやろうと思わなきゃまず当たらないだろこんなのってレベルだ。

よって、相手の攻撃面など微塵も考える必要などない。

問題は言うまでもなく耐久面……早い話が、撃破の定義付けだな。

 

「──これくらいの出力でどうなる?」

 

一時的にグリフォンを己が身に宿し、千紫万紅をいつもの居合で構える。

そこから雷光となり、五芒星を一筆で描き幾重もの斬撃を放って行く。

ようやく形にすることが出来た、グリフォンモチーフの雷属性魔力を纏った紫電を纏う『疾走居合』。

しかもグォレンダァのおまけつき、まあこれまた魔力凝縮やら操作精度が上がった成果の一つだ。

あの時は奪い取った過剰魔力で無理やり引き出したが、その時の経験が実を為したとも言える。

恐らく、この場ではセラ以外は大いに驚いていることだろう。

ナマリエとカルト、ユフィと姉上はそれぞれ見覚えがあるから尚更じゃないかね。

何せ、使われている魔力の質がそれぞれの知る俺のそれよりも大幅に上がっているんだからな。

……だが、この会心に見える一撃でもこれまでの光景の焼き直しが発生するだけで終わる。

 

「王女殿下よりも遥かに凄まじい攻勢であることは認めてやろう……だが、それでもまだ届かんなあ!更に追撃だ、『ポイゾナスブロウ』!」

 

闇と水の混合魔力で生み出された毒水が襲い掛かってくる。

それなりの出力で放った五連撃でもやりきれなかったことで、何度目か分からない魔物の因子が発生するおまけつきだ。

まあ、そうなるであろう確率を高めに見積もっていたからこそ対策も既に用意してある。

 

「いちいち分別なんて言ってられねえよな!」

 

瞬間的に千紫万紅を収めて、代わりにセイリオスを取り出しては回転投擲(ラウンドトリップ)を放つ。

誘引効果を持つ風と闇の魔力を纏った愛剣は、大量に現れた魔物を纏めるとともに『ポイゾナスブロウ』も引き寄せていく。

これで避ける手間を無くすとともに火力増強に繋げ、再度俺は千紫万紅で居合の構えに。

今度はその場から移動することなく、誘引で纏め上げた残滓(ゴミ)を『次元斬』で纏めて掃除してやった。

空中でもお構いなしの誘引殲滅コンボ、精度が上がってるからやはり強いねえ。

あんま使いたくなかったがな……手軽が過ぎて、依存しちまいそうだから。

 

「まだそんな手品を用意していたか……我々に歯向かうだけあって、小細工だけは一流のようだな」

「お前らが一芸特化過ぎなんだよ。氷の上だったらとっくに無得点の嵐じゃねえの?」

 

軽口を叩きながら役目を終え戻ってきたセイリオスを労わりつつも背負い直す。

しかしまあ、ここまで手札を切らされるとは……もはやディスアド塗れで笑えねえな。

情報、体力、魔力……まあ、少しずつだが削られているのは確かなわけで。

対するあちらは情報面はそもそも隠す気は無いし、体力と魔力はある意味無尽蔵。

このような感じで、あっちは持久戦と言う意味ではこのままでは無尽蔵そのものってわけだ。

逐一ゴミ掃除したとて、すぐにアイツに戻ってくるから明確なダメージにならないのが極めつけだ。

当人の頭がサル未満の絶望的なものだとしても、キーストーンその他の効力を前面に出してそれなりの形にしてしまっているってこと。

 

(アンデッドとヴァンパイアの死にづらさを併せ持つなんてのは流石に初だからな……お陰で流れがグチャグチャだ)

 

しかもキーストーンの魔力まで混ざってるから気持ち悪すぎる。

魔力の流れだけで見たら、もはや定義不明のキメラか何かだぞこれ。

見た目が人間体の姿のままだからこそ余計に面倒くさい。

これならいっそ、怪人よろしく巨大化でもしてくれた方がよっぽどやりやすかった。

まあ、精霊契約を目指すってお題目だから人型のままじゃねえとってことなんだろうけどよ。

中身がこうも醜悪では目も瞑りたくなるってもんだ……。

そんなグチャグチャ状態でも……いやだからこそ?無駄に生命力は凄まじいと来てるから面倒極まりない。

 

(過剰な『魔』の根源を潰すほうが早いだろうが……)

 

そのイメージはジュンの援護で暴れていたときから浮かんではいた。

退魔……というほど神聖っていうか仰々しいものではなく、あくまで魔を強制的に分かつような感じか?

境界線を見極めては切り離す……まあ、それが一番しっくりくる表現だな。

恐らくはヴァンパイアの魔石からのイメージと、レイニの魔力制御や吸血からの魔力変換を直に見たことが要因なのだろう。

魔の更なる奥底を垣間見たからこその感覚ってやつなのかもしれんね。

感覚ねえ……むしろそうなってくると……。

 

「──やはり、邪魔になっちまうよなあ」

「何をブツブツ呟いているのだ!遺言ならもっと堂々と言い放ったらどうだこの夢遊病者が!『ファイアストーム』!」

 

──その言葉を耳にして、俺の中のパズルが綺麗に嵌ったような感覚がした。

そうだ、さっきはまだ足りないとか言ってしまったが……そんなのまだ甘えの段階じゃねえか。

まだまだ絞りだせていない……要するに、俺自身の無駄があっただけのことだ。

ならば、削ぎ落してやればいい。

……とりあえず、目の前に襲い来る熱い感じの風は打ち消しておかねえとか。

 

「お?これは……いい具合じゃねえか!」

「これまでは避けていたところを、魔力斬撃だけで相殺だと!?一体何が……っ!」

 

右手に千紫万紅、左手にセイリオスでX字の斬撃を描いてやる。

すると、場違いな熱風らしき気配はすぐに無くなったようだ……相殺成功だな。

俺の考えていることはこれまたきっちりかっちりハマったようだ。

やはり心地良いな、難問を解けた瞬間っていうのは。

 

「それにしても、その夢遊病者ってのは気に入ったぞ。自分の中の現実を見据えるってんなら、それは一種の無我夢中という名の夢の中……ちょっと上手いこと言った気がするな?」

「き、貴様……一体何をしている?現実逃避なのか?戦闘中とはいえ、本当にそうするヤツがどこに……」

「世界的に見てもこれくらいはいくらでもいるんじゃねえの?この程度、何も大したことじゃねえよ」

 

よしよし、いい感じで流れが変わっては早くなっているな。

モヤモヤも色々と晴れたから、むしろ感覚は良好になっているし言うことはない。

 

「ありがとなハリボテライフキング……お陰で色々スッキリしたよ。せめてもの礼に今からお前を──踏み台にしてやるよ」

 

……魔力の流れは狙い通りだ。

ヴァンパイアという存在にはこれまた感謝しなくてはね。

お陰で俺は更なるステージに……進化を加速させることが出来たのだからな。

だがこの程度ではまだまだ満足できない……高みとも深淵とも取れる場所は当分先のこと。

どこまでも駆けてやるよ、それこそ死ぬまでな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……その時までは私も半信半疑だった。

今のモーリッツは、文字通り亡者の王で……その不死性は御伽噺のそれをも上回りかねないもの。

ある意味では、あの黒龍の呪詛を受けたドレッド・ドラゴンより厄介と言えるでしょう。

 

(とはいえ、マッド様はやはり強い……現代における頂を見据えていると言っても過言ではありませんね)

 

マッド様の戦い方は明らかに技巧に寄っている……というより、ほぼ極致とすら言えるでしょう。

いつものように軽口を叩きながらも、モーリッツが放つ中規模以上の魔法を苦も無く避けているのだから。

掠り傷一つ負っていない辺り、まだまだ余裕があるようにも見受けられますね。

攻撃の方も最小限最大効率を心掛けているのか、特に無限に繰り出される魔物に対してはまるで無駄がない攻撃のみを繰り出す。

派手な攻撃にそうそう頼ることなく、一切の慢心もなくひたすら手早く確実に殲滅していくその様は……鉄人と称するべきなのでしょうか。

相手が魔法至上主義を過剰に掲げる者であったとしても、嫌悪や憎しみは内に留めてあくまで冷徹な仕事を果たす。

私がずっと描いていた空想、それとさほど差異の無い戦いぶりで……こんな時でなければずっと見て居たいくらいには魅入られていたことだろう。

これまでやってきた方向性がちゃんと合致していたことを、静かに喜んでいたことだろう。

しかし、今は悲しいことにそれどころではない。

 

(確かに手傷は一切負っていませんが……マッド様側に決め手が無いことも事実。このままでは消耗戦は必至ですね)

 

そして、それはまさにモーリッツの望むところであろう。

あちらは明らかに自身の性質を押し出した……マッド様風に言えば長所のゴリ押し戦法を取っている。

きっとマッド様は『つまらねえ戦い方しやがって』と愚痴を零しているでしょうが、有効手段の一つなので仕方がない。

……つまらないという意味では激しく同意したいところですけども。

 

「やっぱり私の時と一緒だ……モーリッツ自身に致命打が入ってない。そこを分かって攻撃は最小限に抑えてるんだろうけども……」

 

自身も同じ光景を見てきたからか、アニス様の弟君を心配する空気は強まるばかりだ。

かく言う私は、最初に申した通り……言い換えれば半分くらいは同じ気持ちです。

ただ、私が乱入したところでどうにもならないという事実が理性となって押し留めているだけのこと。

また、特別近衛である彼らも静かに見守っていることもいい具合に歯止めになっていた。

無論、彼らが突貫するようであれば私も躊躇する理由はないのですが……!?

 

「な、なんですかこの魔力は……!」

 

その変化……いえ、異変は唐突に起こった。

発生源は言うまでもない……こんな意味不明ながらとんでもないことをしでかすなど、マッド様以外有り得ない。

しかし、今回は流石に私も驚かざるを得なかった。

──意志を持たないはずの精霊が、怯えるように震えているのだから。

 

「ちょっとマッドくん、何でいきなり目を瞑ってるのさ!?」

 

ドラゴンの刻印の影響がまだ残っているからか、アニス様は遠目でもマッド様の様子を窺える。

そんな彼女の口から、一体何のこっちゃと言わんばかりの事態が告げられる。

戦闘中に目を瞑るって……一体何をしでかしているのですか貴方は!?

 

「王女様の言う通りだが、思いっきり笑ってやがる……やけっぱちというよりは、またなんかトンデモを思いついたって方が自然だろうな」

「意図的に視覚を無くしてるってこと?何してんのよあのバカ……」

 

エルフのお二方は呆れ顔を浮かべていた。

無茶に慣れているであろう近衛の方々でもこうなってしまうのですね……。

クリスティーナがいたら、さぞ怖い笑みを浮かべて……いや、今はそれどころではない。

その突拍子の無い行動は、完全にアニス様のそれを超えてしまっていると言ってもいい。

戦闘の最中に自ら視覚を破棄するなど、一体何を考えてそんな酔狂な行動に……。

 

「もしかして……セラ、これもひょっとしてヴァンパイア由来だったりする?」

「ラス様はお分かりのようですね。そのようなことを戸惑いなく出来る辺りがまさにマッド様……ああ、その狂気こそまさに私の求める尊き御姿でございますとも」

「尊いかはともかく、躊躇なしにそれが出来るところはやっぱり凄いな……はあ、また背中が遠ざかった気がするよ」

 

困惑と呆れがこの場を支配する中、ラスとセラのみが真相に辿り着いているようだった。

見るだけで彼が何をしでかしたかを理解してしまう辺り、流石は幼馴染と筆頭侍女というべきなのか。

……セラはまあいいとして、ラスに先を越されたのはそれなりに悔しさがこみあげてくる。

 

「ヴァンパイア由来……そういうことか。何だかんだ、理に適ったことをしやがるところはアイツらしい」

「そんなところで発揮してほしくなかったわ……グリフォンの時といい、何でこう心臓に悪いことしかしないのよ」

「……果てしなく嫌な予感がするのですが、説明して頂けないでしょうか」

「右に同じく……ヴァンパイアって単語が出てきてレイニも困惑しちゃってるし」

 

まさか師がヴァンパイア由来の何かをしでかしているなんて思わないですからね……。

僅かに耐性を得た程度では無理もありません。

 

「ヴァンパイアの基本特性の一つとして、血液を魔力に変換するものがありますが……端的に申すと、マッド様はここに着目しては応用したのです」

「マッドはアイツに勝つ手は浮かんでいたんだけど、そのための魔力が足りなかった。その上で視覚が不要だと判断して……一時的に失明状態にして目に回していた血流を強引に余剰なものとして扱ったんだ。それらを魔力に置き換えてああなったんじゃないかな」

「その時点で無駄になるならば、五感すらも一時的とはいえ切り落とせる。まあ、あのバカにとってはいつもの取捨選択ってわけね……」

 

……一時的とはいえ、自分から失明した上で魔力に宛がう?

それは要するに、人間としての当たり前を平然と放り投げるのと同義だ。

その場の勝利を取りに行くためとはいえ、何てことを……!

 

「それって元通りになる保証あっての行動だよね……?」

「勿論、最悪の事態も計算づくのことでしょう。マッド様ならばその手の当てでしたら最高級のものがございますからね」

「普段から視界を封じて戦う訓練なんてザラだからな……それも出来て当然って豪語しやがるくらいに日常茶飯事にしてやがる。アイツのほざく当然ってどういう意味だよって尋問したくなるぜ」

 

……そうでもしないと、あの状態のモーリッツを……このクーデターを抑えることが出来ないのは理解できる。

ですが、明らかに一個人で抱えるには大きく度が過ぎる滅茶苦茶っぷりだ。

私たちが控えているというのに、何故そこまで自己責任に拘るのですか。

出来て当然、だからやっただけ……ああ、絶対に言いそうですね。

最悪の場合も計算づくだから心配するな……これもまた何てことなく笑みを向けながら言うのでしょうね。

 

(……ふざけるのも大概にしてください、バカマッド様)

 

ああ、本当にふざけている……それでいて物凄い腹立くもあった。

そんな涼しい顔で滅茶苦茶をかますマッド様に対しての怒りも、まあ当然ながらある。

が、大半はあの方にそうさせてしまっているというこの現状への……力がまるで足りない己への憤怒だ。

せめて隣で戦えるだけの力があれば、そんな無茶苦茶をさせずに済むと言うのに……。

ただ顕魂術を学んだだけでは到底足りないし届き得ない。

そもそも後続など知らんとばかりに……深淵を求める自我に殉じて動いている。

──ああ、これは私も更に深く攻め入らなければダメなようですね。

全く本当に……どうしようもないくらいにバカで困ってしまいますね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラスが真っ先に行き着いた強引な魔力変換方法は全く持って正しいものだ。

視覚をシャットアウト、それと共に目に送る血液と魔力を強制的に余剰として扱う手法。

一時的とはいえ、人間として自然に在る五感の一つを容易く手放す辺りも異常とすら言える。

しかし、これは単に急を擁して行わざるを得なかったこと……というわけでもない。

アニスフィアとユフィリアはこの点で若干ネガティブに捉えていると言えるか。

カルトが『理に適っている』という文言は、より強大な魔力を扱うためという側面だけではないのだから。

 

(やはり余計な情報に踊らされない分戦いやすい……パルヴァネ師匠やイグノックス兄さんが言ってたのはまさにこういうことだな)

 

視覚を消した時のマドラーシュの笑みには2つの理由がある。

片方は、ヴァンパイアの能力由来の魔力運用に先を見出したことへの若干ながらの歓喜。

一睡もせずにひたすら周囲の雑兵を狩り続けたのは、そもそもヴァンパイアの魔石から得たイメージの実験が主な理由だ。

その結果として、『次元斬』や『疾走居合』に代表される繊細な魔力運用が求められる術の完成度……否、熟成度合いが更に上昇することとなった。

そしてもう1つについては……視覚を完全に消し去った後のマドラーシュの動きそのものに答えがある。

 

「クソ、目を瞑ったフリをしてその速さは流石に有り得んだろう……!どうせ使い魔越しで見ているのではないのか!?」

「おいおい、神獣様がそんな雑用に付き合ってくれるように見えるのか?そんな視覚じゃあ頼りないだろうに……」

「ならばここまで悪運による偶然が積み重なっただけと!?それで動揺を誘って神の霊石の暴走でも誘っているつもりか!?」

 

口では罵倒しているものの、その様子は先ほどとはまるで異なる……畏れという感情すら垣間見えるものだった。

それを振り払うかのように、モーリッツは強大な魔力を噴射させて高速移動しては手刀で斬りかかる。

アルガルドが常用する『ウォーターカッター』、これを己が血をも用いる形で発動させていた。

鉄分を含み、更に自身の魔力も浸透させやすい血液を媒体とすれば、必然的に切れ味は爆発的に増す。

更に、ここまで中規模以上の殲滅系魔法を中心にして攻めていたところからの接近戦だ。

峠道をも思わせる独特のリズムの変化は、並の人間ならばまず戸惑うことだろう。

 

「『愚者の時は時計で計れても、賢者の時は計れない』──まあ、お前がそう思いたいなら勝手にそうしてな!」

 

これまたどこかで聞いた詩の一節を口ずさみながらの行動だった。

その手の変調は、この破天荒にとっては十八番そのもので驚く理由もない。

そもそも魔力が飛躍的に加速して巡る彼にとってはあってないような変化。

既に知っていたと言わんばかりに、ただ相手の更に先を行くのみ……一歩どころか二歩三歩と。

早い話、魔力の巡りに引きずられるように感覚そのものが加速してしまっているのだ。

その結果として、これまで体験したことのないゾーンに突入してすらいる。

これこそがもう1つの歓喜の理由である。

未体験領域を前にして脳内麻薬をドバドバ吐き出してははしゃぎまくる。

要するに、いつものトチ狂い全開と童心全開なだけだった。

 

「この程度ならば無価値な賢者もいたものだな!往生際の悪さと言う意味では、貴様がむしろ愚者だろう!」

 

事前に設置していたのではと言わんばかりの闇属性の槍(ダーク・スピア)2本の雷光砲(エヴォリューション・ツイン・バースト)が行く手を阻んでいく。

トラップのように仕掛けられたそれらを、モーリッツはあえてかろうじて避ける。

マドラーシュに肉薄することを優先したのだろう。

そこから生まれた傷から、魔物の因子が零れては新たな使い魔として現れる……ここまではまるで同じ流れ。

 

「その枝に対しては『極獄の絶対独断』(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!そしてそこからドンピシャリだ」

 

折角仕掛けた術を突破されたにも関わらず、むしろ計算づくと言わんばかりの笑みを浮かべつつマドラーシュは反射的に動く。

強引に突っ込んできたモーリッツに対してはお得意の獄炎纏いし拳で最大効率のカウンターを見舞っていた。

その拳を振り上げた反動をそのまま利用しては千紫万紅を構え、魔物の出現地点を巻き込むように空間を斬り裂く。

ヴァンパイアの能力を参考にした魔力運用の見直しにより、その魔技は更なる高速化を果たしている。

零れた因子が形になる前に塵に帰るほど、まさに瞬きの間すら与えない。

……先ほどまでとまるで違う状況、その要因の一つがここにあった。

 

「魔物の因子が返ってこないだと!?──貴様、何をした!」

「敵に教えを乞うくらいなら自分で考えな。ああ、首の上についてるそれがただの装飾品ってことなら無理な話か……悪いね」

「どこまでも人の事をコケにしやがって……!『ウォーターガン』!『ヘルファイア』!『エナジーストーム』!」

 

唐突な状況変化に異常事態、そこに加わる過剰な煽り。

これらはモーリッツの中にある、本来あるはずの精神的優位を吐き出すには十分なものであった。

激昂と共に放たれる魔法は威力こそ申し分ないのだが……その指標性には混濁さえ見受けられる。

分かりづらいようで分かりやすいその隙を、この悪童が見逃すわけがなかった。

 

「ガキみたいな癇癪起こして悲しくならねえか?耳が良くなってるせいで余計にやかましくてしょうがねえ」

 

千紫万紅を一旦納め、次に構えるは第一の相棒セイリオス。

圧縮水弾、闇と炎の基本混合魔法、更に闇色の嵐の前では心もとない装備に思えるところだろう。

しかし、今のマドラーシュにとってはもはやこれで十分とすら言える。

 

(……原点に立ち返るとするかね)

 

暗闇という領域に身を置けるようになったからこそ、思い起こされるものもある。

『光輝くもの』を冠するセイリオス、そこに込められたのは遥かなる高みである彼らへの憧憬と渇望だ。

そして、その中でもより強く光を彷彿とさせる人物はただ一人。

だからこそ、マドラーシュは彼と共にこれを作り上げた。

その情景があれば、目の前に展開されているであろう混濁まみれの魔法の嵐を恐れる理由などない。

魔力の足場(エアハイク)を足蹴にしては発生した加速を一切逃すことなくマドラーシュは突貫をぶちかます。

光を主にしながら、風と雷を纏った……障害を貫くという点にイメージを特化させた一撃。

シンプルながら強固なイメージを基とした一つの術が、モーリッツの放つハリボテの嵐を容易く突破するのは言うまでもないことだった。

 

「そんなただの突進で突破されるだtガフッ!?」

「周回遅れならおとなしく道を譲りなノロマ!」

 

魔法の嵐を突破するだけでなく、その突貫は詠唱主であるモーリッツにすら襲い掛かっていた。

まるで衰えを知らないその速さがそのまま衝撃として叩きつけられ、モーリッツは容易く吹っ飛ばされる。

と、同時に魔力足場を生成しながら適切かつ手早い魔力転換で残った勢いをそのまま回転の為の推進力に変換し纏う属性も即座に変化させる。

素早い1回転と共に、マドラーシュはセイリオスを闇、風の魔力と共に投擲した。

『ラウンドトリップ』による誘引で、吹っ飛ぶモーリッツは再度マドラーシュの領域に引きずり込まれることとなった。

仮にオルタやアルガルドがこの場にいれば、次に行われるであろう攻撃のえげつなさに乾いた笑みを浮かべることだろう。

 

「ここまででようやく一呼吸ってなあ!ついてこれねえヤツにはターンなんて回してやらねえからな!」

 

まさに『ずっと俺のターン』、狂戦士の魂は誰が発動したのやらか。

その手からセイリオスが離れていれば、必然的に使われるのは千紫万紅。

幾度めか誰も数えてすらいない居合の構えから、闇と雷の魔力を圧縮して纏いながら駆け出す。

次元斬と同様の恩恵を受けた疾走居合だが、魔力の巡りが爆発的に上がり集中力も増したマドラーシュはここで遊び心を発揮する。

最初のすれ違いでは、居合の師が得意とする水属性を込めての静謐な切れ味を見せる。

二度目のすれ違い、ここでは打って変わって怒涛の侵略を見せるが如くの炎の斬撃を放ち、三度目は氷点下を思わせる冷徹な斬撃が急所を無慈悲に斬っては抉り込む。

四度目では風を纏い斬撃を放つ手数を増やしてはその速さを顕し、五度目は対照的に巌をも砕かんとする重い斬撃。

六度目は落雷が轟くような音を響かせ、七度目は魔を滅するかのような眩き光を纏わせては最後の八度目で闇をも食らわんとする暴食の斬撃で飲み込む。

八つの属性が代わる代わるで顕れるその様は彩色に溢れており、まさに千紫万紅と言える様だった。

 

「折角の全属性持ちだからな、やっぱ遊び心ってのも見せつけてなんぼだろ?」

「こ、の……!我々が至った叡智に比べれば取るに足らん愚物を、よくもまあ披露してくれた、ものだな……!」

「やれやれ、芸術観の不一致ってやつか?まあお前らと話が合っても虫唾が走るんだけどな!」

 

拘束の役目を終えたセイリオスを労いつつ背に戻すマドラーシュは、相変わらず目を瞑りながらも童心表現を忘れない。

とはいえ、ただただ遊んでいたわけではなく……そこには即席の実験の意図も含まれていた。

先ほどの次元斬と同じ現象が疾走居合でも起こるであろうことは想定内の事だが、折角だからと刀身に纏わせる属性を一回一回変えて見せた。

かろうじて適性が一流レベルかと言える最初の水と五度目の土では、少々ばかりの魔物因子が零れるも……他の属性できっちり耳を揃えて潰し切っていた。

次元斬に比べれば、疾走居合は移動でも魔力を用いる分斬撃そのものの密度は落ちる。

それでなお、魔物因子とモーリッツの間にある魔の繋がりを断ち切ることが出来る異常事態……その原因はただ一つ。

 

(『魔と人を分かつ』ってところか。我ながら恐ろしいイメージを植え付けちまったもんだ)

 

今のモーリッツは、屍となった多数の魔物因子を取り込んではアーリマンとヴァンパイアの魔石、更にキーストーンで纏め上げている。

2種の上級クラスの魔石に神の霊石、これらをベースに明確に人の域を飛び越えるというアプローチ。

そんなやり口で精霊契約の更なる奥に至れるかについてはこの際横に置いておくとしても、その恩恵は絶大ではある。

しかし、その本質は魔法至上主義が基であることに変わりはない。

マドラーシュやセラ、プリシラの口からは幾度も『威光を借り受けるだけの傀儡』と吐き捨てられるその心根は、途方もない超越にも表れていた。

早い話が、魔石の力も神の霊石も見かけ通りの力しか発揮できていないのである。

偉志ノ大陸に点在する妖魔王を始めとする本物と謁見してはその度に尊敬と畏怖を抱いてきたマドラーシュからすれば、それを『本物の魔』と認めるつもりは欠片もなかった。

──この調子に乗ったまがい物をどうにかして粉砕してやりたい。

マドラーシュは怒りと共に失笑しながら、それを可能とするイメージを抱いてきた。

そこに視界を封じることによる魔力高揚を発生させ、『魔と人を分かつ』というどこかで聞いたことのある具現に辿り着いた。

無論、何故そこまで明確な結果に至ったかは本人は知る由もない。

 

「ま、精霊からしても傍迷惑なクソ信仰をぶっ潰せるなら何だっていい。魔を以て退魔を為すなんて偉志ノ大陸ではよく聞くし……何より俺らしい」

 

そう、結局は何だっていい。

これまで数多くの魔石からイメージを借り受けては己が糧としたマドラーシュにとっては、何を今更と言う話だ。

どこから来たかも分からない、それこそ世界すら隔ててすらいそうなイメージが何だというか。

結局はそれが己を形作り糧となってくれるならば、強欲に傲慢に食らうのみ。

そんな達観から来る呟きに、モーリッツは耳聡く反応を見せた。

 

「この国の礎となった信仰を唾棄しては完膚なきまでに潰す……本当にそんなことが許されると思っているのか?」

「同じことばっか言いやがって……そもそもその気持ち悪い妄信が精霊側にとってもありがた迷惑かもって考えねえのか?それこそ精霊の意志ってものを冒涜してるかもしれねえってのによ」

「……黙れ。少し人を超える兆しを見せた程度でしかない貴様如きが、偉大なる者の意志を語るな!」

 

分かっているからこそ、もはやこの問いも仕方なく義務感から発しているに過ぎない。

そうでない者もいることは百も承知だが、それでもこの信仰は相当に性質の悪い毒だ。

強すぎる毒は薬足り得るとティルティが発していたことも思い出すが、この毒性は強いのではなくひたすら性質が悪いだけとマドラーシュは断ずる。

そこに使いようがなければ、それはただの掃き溜め。

もはやそこに救いの余地などありはしない……分かってはいたが、改めて溜息を吐かざるを得なかった。

 

「未だ人間を捨てきれずにいたこの身を投げうちましょう。そして祈りましょう!どうしようもない愚か者共に鉄槌を下すだけの力をこの私に与え給え!」

 

もはやそれは祈りと呼べるようなものなのだろうか。

少なくとも、当の本人以外にとってはただの独りよがり……または傲慢な戯言にしか聞こえない。

しかし、性質に目を瞑ればそれは確かな『願い』と言える。

更にはこれまでただ力を与えるだけだったキーストーンが共鳴する。

自分たちの依り代が潰されかねない──その脅威を排除するという歪んだ願いを増幅させる。

とはいえ、意志が無いとされる精霊にとっては願いの方向性はまるで関係ない。

むしろ純粋無垢が故に、どちらの秤にも傾き得てしまう。

よって、このような願いも具現してしまう。

純粋が故に、その善悪やら余計なもので増幅されたり半ば呪いだったりも判断がつかないのだから。

その危うさが功を喫してしまい、一人の魔法至上主義者は至ってしまった。

彼らが敬って止まない存在──大精霊に近しいところへと。

 





マドラーシュは単に目を瞑ってるのではなく純粋に視覚を潰しております。
五感の一部そのものを魔力変換させ、更に目の神経に回す血流などなども一時的にシャットアウトしてこちらも魔力に。
疑似的魔力量、そして回路周回が短くなることにより強制的に魔力量と濃度を強化……という滅茶苦茶荒業です。
どっかの『零感』の視覚だけバージョンと思って頂ければ分かりやすいかなと。
まああっちはチート級技能への対抗策に対し、こっちはデメリットありバフですね(デメリットあるとは言ってない)

そしてモーリッツ、更にもう一段階先を残しておりました。
キーストーンの力も用いた疑似精霊契約……完全にグランサガ8章・12章ラスボスのオマージュです。
クロスということもあり、この形が一番個人的にスッキリしました。

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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