転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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はい、もうド直球サブタイです。
本章最後にして最大のやりたい放題回となります。
前回あれだけかましたのに主人公はまーだ暴れ足りないようです。




88. その所業、大精霊も泣き出す

 

「これこそ、我等が貴族が掲げる大義の結晶!やはり精霊は敬虔な我らに慈悲を下さるようだな!王の地位に坐し、国を支え統治するに相応しい威光とはまさにこのことを指すのだ!」

 

モーリッツが願いの糧としたのは、国の礎となる精霊信仰をここまで守ってきたことへの矜持だ。

それを指し示すかのように、元々内に留めていた魔力は新たな器の中に満たされていく。

願いの大きさに比例するかのような新たな器は、確かに権威やら威光やらを示すことは出来ていると言える。

精霊信仰を果てにあるのであろう、巨大で尊大で……その姿は神を髣髴とすらさせる。

しかし、マドラーシュにとってそれは陳腐かつ稚拙にしか思えなかった。

視覚を封じられても分かるほどの滑稽さは、もはや感心すら抱くほどである。

本物の神……というより女神を師とするのだから、ある意味当然な感想だが。

 

「まずはその偉大なる血筋に汚泥をぶちまけた貴様からだ、マドラーシュ・リヴェ・パレッティア!偉大なる存在の化身たるこの私から罰を与えられることに誉れに思え!そして地獄で悔いるがいい!」

「やれやれ、怪人モノのお約束は創作の中だけにしておけっての。お国柄だなんて思われたらどうするんだ?」

「未だそのような口を叩くか、痴れ者が!」

 

本人比で精霊の尊大さと威光をこれでもかとぶつけているというのに、当の愚者には柳に風。

その不遜極まりない態度に鉄槌を下さんとばかりにモーリッツは巨拳を浴びせにかかる。

残った魔物因子を全て束ね、その上で精霊への祈りの恩恵を最大限に受け取った肉体は、ただ拳を振るうだけでも多大な魔力波を生み出している。

が、相手は現在進行形でどんどん魔力への感覚が鋭敏になってきている破天荒王子。

避けるどころか、その安全圏内ギリギリを見極めては受け流し……そのまま魔力の流れに身を任せる。

楽をするためか、振り上げられた拳をそのまま足場にすらしていた。

 

「この神聖な身に触れるどころか土足で踏みにじるか。どこまで侮辱すれば気が済むのでしょうな!」

「その程度でいちいち角を立てるとは随分と狭量なこって。大精霊ってのは随分と病的な潔癖症持ちなんだな」

「この期に及んで吠えるか、病的な不信者めが!」

 

ただの戦闘中における成り行きな行動でしかなく、いちいち咎を入れられる理由などない。

殺し合いの場でそのような品を持ち出す言動は、イグノックスやカルシオンが耳にしても呆れ果てることは間違いなし。

現に観戦している面々も、響き渡る尊大な言動に溜息をついていた。

 

「まあいい、虫けらには最期の役目を与えてやろう。道化として、せいぜい踊り狂うがいいわ!」

 

モーリッツの猛攻はここから先ほどよりも更に激しさを増していく。

精霊を媒体とした巨大な肉体がもたらすものは、単純に質量による暴力に留まらない。

ドラゴンに匹敵……否、上回るほどの巨体の内部には夥しいほどの魔力が流れている。

それが意味をするのは、ただ単に大精霊に近しい存在になったというある種のこけおどしだけではない。

 

「真に国を治めるに相応しき大精霊よ、いざ合唱せよ『ファイアボール』!」

 

その詠唱は聞かずにただの火球を放つだけの初級魔法と分かる者がどれほどいるだろうか。

もはや火球どころか、小規模の隕石群──見えてこそいないが、マドラーシュはこの時キュイのやらかしが脳裏に浮かんだとか。

強大な魔力をふんだんに使い、更に身体を構成する精霊への祈りも込めているお陰かその規模はもはや大魔法に匹敵し得る。

精霊信仰が揺るがされ、挙句崩されかねないという状況を前にしての窮鼠猫を噛むという事例と言える。

とはいえ、単に範囲が広いだけで元々は『ファイアボール』に過ぎない。

規模に惑わされず、視覚封鎖により鋭敏になった感知能力をフル活用して避ける……それだけのこと。

 

「視界を自ら塞いでいるから逃げの一手しか取れまい!そらそらまだ行くぞ『ウィンドカッター』!」

 

破裂しては竜巻を起こす風の刃、こちらももはやカッターと言えるかすら怪しいものだ。

直撃したら打ち上げられながらミキサーにかけられること間違いなし、単品で立派な災害である。

必然的にただの『ウィンドカッター』よりも制圧力が増し、回避をしてもなお立ち位置の制限と言う足枷をかける面倒な魔法と化していた。

とはいえ、今の戦場は王城上空であることは幸いと言えるか。

空中足場設置(エアハイク)を半ば無数に作成できるマドラーシュにとってはフィールド全体が足場と言える状況。

数ある広範囲殲滅も、むしろマージンを残して避けられるほどだ。

とはいえ、回避一辺倒と言われたら否定できない状況であるのも確かだった。

 

「まだまだ行くぞ!貴様の罪を贖うには全然足りませんからなあ!」

 

そこからも数多くの凶悪無比な魔法と言う災害に見舞われる。

多数の水の刃でなます切りにされかけたかと思いきや、蜂の巣を作らんと多数の氷の槍をけしかけられたり。

本来の属性適性すら飛び越えた、全属性を網羅せんとする勢いでもある。

しかし、それであっさり圧されるマドラーシュではない。

 

「──そうか。そういえば貴様も紛い物とはいえユフィリアと同じく全属性を扱えるのだったな?」

「綺麗な図形を描くであろうアイツと違っててんでバラバラ、それはもう醜いもんだがね」

 

その特性を守備の方面でも生かすのが破天荒流。

魔力放出の気配がする度に異なる属性が発せられるが、回避だけでなく時には最大効率の相殺も行う。

偉志ノ大陸や世界の果てで習った基本をふんだんに含みながら、自ら視覚をはく奪した結果のバフ込みで正確無比に。

当人が言うように水と土の扱いはやや難があるも、そこは技能の魅せどころ。

最初から持つ『才』などただの初手でしかない──自身への蔑みは、これまでの道筋への自信の裏返しだった。

 

「だがこの場において最強の全属性使いはこの私!ここいらで『無慈悲な主役』などという大層な二つ名と共に廃業したらどうだ!」

 

再度距離を取ったところに襲い来るは、マドラーシュの扱う弾幕と類似する雷の弾幕。

その密度はグリフォンが放った本家本元に負けず劣らず。

接近しようにも四苦八苦するのは必然、ここはリスクは取らずに確実な回避ルートを即時模索してはトレースする。

締めとばかりに、けたたましい闇属性の魔力由来の嵐がフィールド全体を襲い掛かる。

一見逃げ場が無いように思えるが、そこで発揮されるは反射的神算鬼謀っぷり。

魔力感知から即座に範囲を洗い出し、あえて相手との距離を詰めることで無傷で脱することに成功。

その際には闇属性の鞭(ダーク・ウィップ)をモーリッツの腕に抉り込ませていた。

 

「大精霊の身に汚らわしい魔力を打ち込むな、無礼者が!」

 

鞭が刺さった状態では自由に動けず、そこを好機と見て手刀を振るわれる。

しかし、マドラーシュが刺したのは己の魔力産のワイヤーと言えるもの。

伸縮も湾曲もかなり自由が利くならば、咄嗟の空中芸など造作もないことだ。

登場では自前でレールを用意してのグラインド、この破天荒はサーカス団員やらスタントマンにでもなったのやらか。

あまりに世界観にそぐわないその動きを、観客で理解できるのは知識で頭に入ってはいるアニスフィアのみだろう。

 

「ハエにように周りを舞うな痴れ者が!一気に叩き落としてくれよう!」

 

あまりの変幻自在なすばっしこさに業を煮やしたモーリッツは強引な解決法を導き出した。

多少自爆気味になろうと周囲を一気に薙ぎ払う──存在格差があってこそ出来る切り口である。

その兆候を嗅ぎ取ったマドラーシュは即座に『ダーク・ウィップ』を解除。

無論、ただ鞭を解除しただけでは自由落下の開始とかち合うこととなるだけだが、そこを織り込んだ解決法も既に導き出していた。

左手はですぐさまセイリオスを握り、下向きに構える。

刀身からお得意の風の散弾放ってはあえて空ぶらせ、鞭を魔力に帰した際の反動も最大限に利用して強制的に理想的な上昇軌道を描かせる。

振るわれた手刀はかろうじて宙を裂く形で外れることとなり、破天荒はそのまま足場を設置してモーリッツと再度対面する形となった。

 

「よもやここまでの猛攻を耐え凌ぐとは……だが、先ほどまでの勢いはどうした!お得意の軽口でもう少し場を沸かせたらどうなのだ!」

 

尊大極まる口調でこそあるが、モーリッツのこの言葉だけは確かに真を突いていた。

実際、その猛攻を捌いている間のマドラーシュは一切口を開いていない。

視覚を封じているからこそ回避に集中している、と言えば確かに尤もな話だろう。

しかし、そんな時でも不敵な言葉を振りまいては場を重くしないのがこの破天荒だ。

そのあまりのらしくない様子に観客席の一部からは動揺が、そうでなくても重い沈黙を貫いている。

 

「だが仕方あるまい、この身は既に大精霊となったのだからな。そんな私を相手にして生き延びているだけでも十分な奇跡、または立派な健闘だ!その生き汚さは誇っても良いぞ」

 

そこまで言われても、マドラーシュは返しの言葉を口にしない。

図星なのか、はたまた余裕が無いのか……どちらにせよ旗色は悪いようにしか見えない。

 

「だが、それもこれで仕舞いにするとしよう。『ファイアストーム』!」

 

この土壇場で飛んでくる火と風の混合属性魔法。

これまでの手数任せとは異なる、その膨大な魔力に任せた本物の災禍。

今度こそ万事休す……幾人かの悲観的な者はそう思っていた。

 

「……やっぱ、いきなり口数減らしたら黒歴史になっちまうよな」

 

唐突に再開された鮮やかな軽口、共に放たれるは二刀による特大の魔力刃。

火と風が織りなす暴虐に比べれば頼りなく見えるが、それは無用の心配と言うもの。

あっさりと炎の嵐を鎮圧しては、火災を未然に防いで見せたのだから。

 

「なっ……!?いや、今のはトドメだからと油断しただけだ!今度こそ仕留めて……」

「せっかく聞き手に徹してやったっていうのにこの体たらく……やっぱてめえのセリフ回しはつまらなくてかなわんな」

「ほざけ!それならば口を楽しく回して見せてみろ負け犬風情があ!『サイクロンスクィーズ』!『ブラッドフリーズ』!『ストーンシャワー』!」

 

唐突に口を開いたかと思えば、状況にまるで合わない不敵な言い回し。

そこには押されてばかりでいることへの悲壮感も、手も足も出ないのではという絶望もありはしなかった。

大精霊はそれを明確に否定する。

先程のは自身の油断によるもの──それを証明するがごとくの幕閉じのリテイクだ。

 

「やれやれ、やられ専門がお望みってんなら……そうさせてもらおうか」

 

無論、現実はそんな都合のよいものではない。

水風の竜巻も血を凍てつかせる呪詛染みた冷風もぺしゃんこのミンチにせんと降り注ぐ多量の岩の雨も確かにマドラーシュを囲うことはできていた。

しかし、最初の炎の嵐と同様に全て弾かれてしまう──一切の例外も許さずに。

油断も慢心もなく、明確にトドメの意思を込めた暴力……そのはずだったのに。

何故、目の前の不信者は五体満足且つ平然としているのか。

 

「なっ……まぐれでは、無いというのか……!?」

「三文役者がだんまり決め込んでるんで、ここらで人間代表の力を見せてやりますかね」

 

答えの出ない自問自答を繰り返している内に、時間切れとなる。

この時、大精霊モドキはようやく異変の一端を感じることが出来た。

それと共に、必要ないと捨て去ったものが早速蘇ってくる。

 

「そっちがクソな信仰を見せつけるなら、こっちは人魔調和の過程を見せてやる──魔力圧縮結合(パワー・ボンド)、発動」

 

静かな宣言とともに、ソレはその場を震撼させた。

術者の魔力だけではないのは先程のモーリッツの大精霊化に似ているが、その質はまるで違う。

あちこちに散布されたり、疑似大精霊から漏れ出るキーストーンの魔力……更には一部の面々は一度見た力の気配。

そこに極限に凝縮した自身の魔力──否、魂すらも調和の材料にする。

まさに人魔一体……ヒトの身でありながら破天荒はその領域に足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正直に言おう、これは完全に思いつきからのぶっつけ本番だ。

火力が足りないからと、視覚を潰してはひたすら魔力に変換して……まあ結構しんどい道中を描いてなおこのザマとはねえ。

余計なものに縛られない分、確かに魔力制御に集中出来てはいたが……一歩どころか半歩間違えたら暴走待ったなし。

狂信者がマジの大精霊紛いになってから暫くは、それこそあまり口を回す余裕がなかったくらいで。

白鳥の如く綱渡りを演じても足りない……全く、笑うに笑えないよな?

そんな八方塞がりになりかけたところで思い至った。

『あっちが散々ばら撒いた魔力を利用しちまえばいいんじゃね?』──と。

キーストーンを軸としたぐっちゃぐちゃの魔力、それすらも俺が律して見せたら果たしてどうなるか。

……出来ると思ったら、もう勝手に魔力の方から集まってるくらいだったね。

その際に思い描いた……というより思い浮かんだのがアレの残滓なのがまた面白い。

 

「その姿、そしてこのおぞましい魔力圧……まさか貴様、黒龍を……!?」

「厚顔無恥なてめえと違って、単に纏ってるだけだがね」

 

クソ狂信者の反応からして、笑みを浮かべてよさそうなのはよーくわかった。

相手が大精霊で来るなら、もういっそのこと天敵の中の最たるものを再現しようと思ってしまったのが全ての始まり。

精霊から見ての対極の存在、それは言うまでもなく魔物……その最たるものと言えば、まあ龍だろうと思ってな。

その中でも知り得る最凶……それは、ドレッド・ドラゴンの魔石から幾度も垣間見たあの黒龍だった。

イメージではちょいとばっかし黒の中に紅を走らせたような外装だが……魔力の感じからそれなりに再現は出来てるはずだ。

 

「さて、これで名実ともにお前は俺の踏み台だ。ただの狂信者で終わらなくて良かったな?」

「この身を踏み台、だと……!?戯言を抜かすなァ!『ファイアボール』!『ウォーターカッター』!『エナジーストーム』!」

 

何かを振り払うように、再び小規模と詐称している魔法を連続発動の兆候を見せるモーリッツ。

やれやれ、すっかりメッキが剥がれて小物臭がすげえことになってやがるな……。

ひとまず、軽いジャブ程度にセイリオスを振っては魔力剣戟をぶつけておくとしますかね。

これまでと違って世界そのものに災厄を放たんとした黒龍だからな。

その一端の更に一欠片とはいえ、実験はきっちりしておかないとだ。

 

「ただ剣を振っただけで、我が叡智が破られるだと……!?」

 

──現実ってのは本当に残酷ってもんだ。

あっちはどれだけ馬鹿みたいに祈ろうが、結局強大な壁(現実)にぶつかる羽目になるんだからな。

そしてこいつらは、そこにぶつかった際の対処法をまるで知らない。

それこそが俺たちとの決定的な差……持たざる者の足掻きを嗤った無知蒙昧どもの末路とでも言うべきか?

 

「『悪意ある真実は、でっち上げられるあらゆる嘘を打ち負かす』……赤子の手を捻るってのはまさにこのことかね?」

「不信者が調子に乗るな……!ならばより精霊を集めて……!」

「んな頭の悪いことさせねえよ!『アブソリュート・パワー・フォース』!」

 

戯言なんざ聞く耳もない……そう言わんばかりに急接近してはお得意の掌底打ちを放ってやった。

まあ見た目は魔力を込めただけで、いくら龍とはいえ体術ならばまだ問題は無い……なんて慢心が見えた。

よって、迎撃するまでもないと受ける判断したようだが……それこそ甘く浅い、そして温い考えというものだ!

 

「この力……まさか、デーモンの因子までも……!黒龍だけでは飽き足らないその様、貴様は節操というものを知らんのか!?」

「それこそが顕魂術であり、このなりふり構わずが俺の進化の在り方……それを軽んじた己の愚行を悔いることだな!」

 

しかも遊び場で散々相手したグレーターデーモンが副素材だ。

悪魔と龍、まさに悪夢の共演って言われそうだが……。

無慈悲だ人でなしだ言われる俺にはこれ以上に無く相応しい、そうだよなあ観客共!

 

「先ほどまでまるで余裕などなかった風だったではないか!だから口すら閉じて無駄に逃げ惑って……」

「その鬼手そのものは想定していたが、流石に一発勝負とあっちゃあ俺とて慎重にはなる。知も理も、何なら志も持たず、この程度の対話の意志もねえってんならとっとと退場願おうか!『極獄の絶対独断』(アブソリュート・ヘル・ドグマ)!」

 

呆然とするモーリッツにこれ幸いにと、当然のように肉薄していく。

今度は掌底打ちではなく、爪が食い込むほどに握りしめられた拳をそのままモーリッツの顔にストレートに放ってやった。

巨人を殴りつけるただの人間、これまた絵画を嗜む連中にとってはいい題材になったんじゃねえか?

 

「このっ……いつまでも調子に乗るなあ!」

「そうだ、そうでなくては興醒めもいいところ。俺ももう少しこの状態を試したいから、せいぜいサンドバッグになってもらおうか!」

 

どうやら、あっちも色々と慣れてきたようだな。

ここからは大精霊モドキと邪龍モドキのガチンコの殴り合いの始まり始まり。

互いが模した存在が対極だからか、その戦い方も完全に真逆そのものだ。

あちらは頭に血が上ってか馬鹿みたいに高火力魔法をぶっぱしまくる。

対する俺は、それに対して適切な回避・迎撃・受け流しを徹底する。

それでいながら、適宜攻め手にスイッチすることでジリジリとダメージレースを制する形を取っていく。

 

「何故だ何故だ何故だ……!我らが積み重ねてきた伝統が、叡智が、何故こんな不信者如きに届かぬのだ!」

「そんなことに費やしてきた年月が耄碌の日々だった、それだけだろ」

 

元々魔法とはどういうもので、貴族としての在り方も禄に考えてこない。

胡座をかくだけで日々を消費した結果がその有り様……まあ、反面教師ではある。

しかしなあ、これ以上は流石にお嬢様がたの情操教育によろしくないんで──そろそろ締めさせてもらおうか?

 

「ここで更なる特別ゲストだ──魔力過剰圧縮(オーバーロード)、『パワー・ボンド』再発動!」

 

最初に張り巡らせるのは、これまででも強烈な雷属性の魔力。

術者への接近を禁ずるかのように轟雷は響き渡り、光と闇、それぞれの精霊石を基軸として2つの魔力核が生み出す。

これまたいい具合に魔力制御が慣れてきたから、こちらも進化させるとしよう。

我が悪友であり相棒が編み出した先鋭技術に、独自性(己の魂)を混ぜ込んだ結果、純粋な魔力で編まれた2体の龍が産声を上げる。

 

「あ、新たなドラゴンを魔力だけで作り上げた、だと……!?」

「名無しってのも不便だからな……ここは偉志ノ大陸っぽく光の方を『機光竜』、闇の方を『鎧黒竜』としておこう」

 

光の方は白銀色に眩く輝く竜らしき首が3本。

闇の方は1つながらもあらゆるものを食らい尽くさんとする獰猛な空気を醸し出す。

どちらも雷属性をベースとしながらも、俺の内の陰陽をカタチとさせてもらった。

完全に実体を持つに至らないのはそりゃあ当たり前だが……我ながら、なかなか悪くない威容だ。

 

「元来人に仇なす魔物を自分から生み出すなど……貴様はこの国を魔の道に陥れる気なのか!?」

「こいつらは俺たちがこれまで足掻き藻掻いてきた末の現時点での結果だ。何の疑問もなく、ただ古ぼけた伝統を受け継いで無為に積み重ねて威張り散らすだけのクズと一緒にすんじゃねえ」

 

確かにドレッド・ドラゴンの魔石から黒龍の呪詛のイメージは垣間見ることは行っている。

しかし、それはあくまでイメージでそれ単体では何も意味は成すことはない。

顕魂術は、その名の通り魂を顕す術で……すべては担い手次第。

一般的には清廉なイメージでも、魔力の込め方一つであっさりと邪悪に翻るケースも当然のように存在する。

──だが、それは精霊を用いる魔法とて同じことじゃねえのか?

ただただ継がれてきた伝統だからと、脳死状態で崇めては振りかざしてきた連中はそこを見落としている。

そもそもそこまで大層なものだったら、ここまで貴族と平民の間に溝が出来てたまるかってんだ。

 

「代々継がれてきた伝統を守り、その威光を示して我々はこの国を守ってきたのだぞ!この構造を崩せば、この王国は間違いなく崩落する!王族の血を継ぐ貴様がそんな混沌を望むと言うのか!?」

「真綿で首を締められることを決定づけられた腐った秩序よりかは、あらゆる可能性に繋がる混沌の方が幾分かマシさ。雁字搦めにしか出来ねえ伝統なんざ不要だし、そもそも俺が気に入らねえ──だから、ここらで一発シバく!」

「そんな恐ろしき暴挙、成就させてなるものかあ!」

 

モーリッツは最大出力で魔力を解き放ってきた。

明確に襲い来る対極の脅威を問答無用で打ち払わんとする一撃……はっ、まるで駄々っ子だな。

これまで積み上げてきたものへの矜持、築いてきた時代が崩れるのがどれだけ怖いんだかなあ……これぞまさに老害思考ってやつか?

まあ、魔力量だけなら圧倒的だが……所詮傀儡ではそこが限界だ。

 

「てめえら如きがどれほどのヤツからどれだけ力を与えられようと……全部無駄なんだよ!『フル・ダークネス・バースト』!『エターナル・エヴォリューション・バースト』!」

 

機光竜と鎧黒竜、属性違いの兄弟龍が同時に持ち味を発揮する。

いつもの三連凝縮電撃ブレスと呪詛轟音波だが、その威力は見なくても分かる程段違いそのもの。

いきなりこの大舞台だっていうのに、こいつらも随分と乗り気なようだ。

飼い主に似るっていうのはこういうことを言うんだったら、悪い気はしない。

ちなみに、真正面からの魔力のぶつけ合いの勝敗は言うまでも無いよな?

 

「──おのれ、おのれおのれおのれえ……!このような汚らわしい呪詛に、我らの信仰の塊を縛られてなるものか……!」

 

鎧黒竜の咆哮に備わる呪詛の束縛もきっちり入ったようだな。

そこから逃れんとばかりに藻掻くモーリッツだが、もう余計なことはさせるつもりはない。

2体の竜はもう魔力に還っているが、まだ俺の分が残っている。

トドメってのは、自分で刺してなんぼだろ?

 

「喚いてる暇があったらおとなしく跪いてろ」

 

セイリオスを構え、黒龍モドキの上からグリフォンも纏いながらの『スティンガー』。

もはやその場のノリ、メチャクチャってのは自分でも分かってるがここまで来たら勢いのまま突っ走らせてもらう。

更にそこからいつもの連携……剣先からの風の散弾、更には二対の翼で強烈な風圧を放って一気に吹っ飛ばす!

先ほどの竜たちの共演に比べたら迫力に欠けてしまうが……それもまた至極当然。

これはあくまで、終幕への布石なのだから。

 

「──これがお前(狂信)の墓標だ、覚えておけ」

 

宙に足を着け、セイリオスをその場に突き立てる。

この絶対宣告と共に、先ほどまでの熱狂っぷりは冷たき殺気に様変わり。

絶対量はそのままに、意識はその妄執染みた狂信を切り刻むことにのみ向ける。

ここまでの仰々しい流れのお陰で、もう片割れ(千紫万紅)の方もチャージは完了している。

こちらもまた、いつもよりも濃密で獰猛な魔力を扱えることに喜びを感じているようだ。

瞬時に相応の仮面に切り替え……いつもの居合の構えを取る。

──放つのは、ノヒルリアとの稽古死合いで閃いた魔技……現在におけるその完成形だ。

 

「My power shall be absolute!」(世界の意志をも砕きし我が力、思い知れ!)

 

より精度の増した自身の攻撃を模倣する影法師、付与されるグリフォン由来の雷と風の魔力。

『無慈悲な主演』(マーシレス・プリンシパル)の裏の顔をも用いた極限の集中力を以てそれらをギリギリの境界線で制御。

構成する全ての要素が大幅向上したことで、威力・範囲・手数・速度全ての面で文字通り切り札足りえる一撃に達することとなった。

人と魔の境界を踏み誤る者を断罪する斬撃……ここまで来れば、名前をつけてやってもいいだろう。

……『次元斬・禍』(ジャッジメント・カット・カラミティ)、そんなところか?

 

「まだ……まだだ!まだ私は、やれるぞ……!」

「やれやれ、空気くらい読んでほしかったんだが……」

 

どっかからか『お前が言うな』って聞こえてきそうだが、俺でもこんなことはやらねえっての……。

キーストーンとの繋がりは完全に断ってやったが……魔石の影響がギリギリ残されていたようだ。

あまりに過ぎた妄執で、もはや感心すらしてしまうよ。

だからって突進する気力まで残しちまったら駄目なんだがね……。

やれやれ、我ながらあまりに下手が過ぎるねえ……お陰で締めが台無しだ。

 

「──マッド!今こそあのセリフ(合言葉)の使い時だよ!」

「ったく、言われるまでもねえっての。だがよく言った親友!」

 

ここで馬脚を露呈するなど、主演にとってあってはならない。

幼馴染にして理解者の愛ある合いの手は、いい具合にスイッチを切り替えさせてくれた。

わざわざ魔力を使ってまで大声を張り上げてくれたんだ、その声援には応えてやらんとな。

 

「死ねえええええええ!貴様だけでも、道連れにしてやる!」

 

一瞬だけ視線を外している内に、既にいいところまでモーリッツは迫ってきていた。

もはやなりふり構わずで、特大の魔力をひたすら放出しているだけの無様な突貫。

とはいえ、その速さは大したもの……威力も恐らく言わずもがな。

あっという間に魔手の射程圏内に入ってきており、勝ったと言わんばかりの醜悪な笑みを浮かべている。

どうやら、最後の最後で講義が必要なようだな。

──ピンチからチャンスに、これぞまさしくエンターテインメントを叩き込んでくれる。

 

「敗者はすっこんでいろ──JackPot(大当たり)

 

その軌道と速度が分かっていれば、視界が潰れて居ようと関係ない。

最小限の回避から、特大サイズの龍拳、『極獄の絶対独断』(アブソリュート・ヘル・ドグマ)

無慈悲で苛烈なその一撃がもたらしたのは、当然のようにKO勝ちであった。

 





3章最後の最後で魔人化ならぬ龍人化(偽)です。
DMCっぽくもありながらグランサガの変身スキルっぽくもある、まさにいいところどりで変身先もまた色々要素てんこもり。
挙句表裏サイバー流のエースを魔力で編んだり、遂に名前が付いた次元斬・絶の本作バージョンだったり、最後はカウンターぶん殴りバージョン『JackPot』
そしてDMCアニメの方のオマージュもあったり、もう詰め放題させて頂きました。
英語と日本語のルビがノヒルリアの時と違うのは……まあ真に近づいたということにしてください。
何度も言いますが、転生要素は基本ありませんので。

2024/07/15 最後の最後をよりそれっぽく直しました

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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