転生疑惑な破天荒の彫魂革命   作:スダホークを崇める者

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というわけでアップ休みからの4章始動でございます。
話の方は比較的おとなしくなるはず……はず。
原作からは結構外れたりそうでなかったりの予定。


Chapter 4『それぞれの闇光広がる道』
90. 内戦明けて


 

『ヤツの力……アレはもはや、潜在的に精霊やら魔物の域ですらないというのか……?』

 

……夢だ、と認知したのはこの声のせいだった。

私の内より響くように聞こえる声は、身に宿す超常的存在のもの。

紆余曲折を経て、私に知識を与えてくれた……この世界の最強種──はずだった存在。

普段はその地位に相応しい威厳を示しているのだが、現状は見事なまでにその権威は陰っていた。

その声色は、明らかに畏れが滲み出ていたから。

 

『……そうか、忌々しいあの■■が……それならば辻褄が合う。あの旧きくたばり損ないめ、とんでもない置き土産をしてくれたものだ……!』

 

くたばり損ない……?置き土産……?

ドラゴンが何を言っているのか、あまりに抽象的過ぎて理解に至ることができない。

そもそも私に語り掛けているわけではない風だからってこもあるけど、少しは宿主のことを考えてほしい。

そんなことを思っていると、ドラゴンの口調に焦りが滲み出てくるようになってきていた。

 

『幸い未だ兆候は見受けられんが、ヤツが下手に覚醒でもしたらどうなる?──言うまでもない、大いなる秩序が確実に壊れる』

 

ダメだ、あまりに未知の情報量が多すぎて意味が分からない。

ただ……何故だろうか。

彼の焦燥感だけは、何故か我が事のように共感出来てしまう。

あちらの原因は分からないんだけど、でもその結果はどこか私と似ているような……そんな気すらする。

 

『あの古臭い連中に再臨の機会を与えるなど以ての外。我らが場から弾かれるなどあってはならぬ……!』

 

『場から弾かれる』……その言葉の意味もよく分かっていない。

しかし何故だろう、だんだんドラゴンの空気に同調してしまう。

段々とその掻き立てられるような、追い立てられるような感覚が駆け巡るようになって……

 

『随分と他人事みたいに言ってるけど、同じ穴の貉だってのは自覚してるんじゃないの?』

 

感傷に浸っていたら、いつの間にかドラゴンの声は聞こえなくなっていた。

代わりに響くのは厭味をこれでもかというほど含んだ女の声。

ズケズケと人の夢の中に土足で入り込んでくるとは、一体何様のつもりなのか。

ドラゴンは刻印越しだから説明はつくけど、こいつは完全に不法侵入ってやつだよね?

 

『見事な吠えっぷり、これまた逃げてばかりの夢遊病王女様らしさ全開……あっちとはてんで大違いね』

 

誰が逃げてばかりですって……?

それに夢遊病って……完全にケンカ吹っ掛けてきてるってことでいいのかな。

ただ、相手の姿が見えない以上安易に爪を振るったりブレスを放ったり出来ない。

お陰で行き場のないイライラが募るばかりだ。

 

『その苛立ちもアンタ自身が言わない見ない聞かないっていう何よりの証。そういうところは見事なまでに同類ねえ?』

 

──そして何より、コイツが何を言っているのか本当にさっぱりなのも腹が立つ。

変なことを言って煙に撒いてる……そう捉えるのは簡単だ。

しかしそれは出来ない……いや、してはいけないとそんな警鐘ばかりが鳴り響く。

夢の中なのに頭痛すらしてくる状態の中、嫌味な声の追撃は続いていく。

 

『こちとらせいぜいボロボロになってく様を見物させてもらうだけなんだけどね!存在そのものを奪ってるんだから、これくらいの罵詈雑言なんてことないでしょ?』

 

──コイツ、平然と人の地雷を踏み抜いて……!

夢の中だからということもあってか、さっきまでドラゴンの独り言を聞いていたから分からないが……無意識で刻印に魔力を流していた。

そこから爪を薙ぎ払うように振るってやるが……まるで手応えが無い。

 

『そう、結局アンタはそれしか出来ないのよ。何てかにて壊すことしか……ああ、どうやらお目覚めの時間ね。もっと言ってやりたかったけど今日はこれくらいにしておきましょうか』

 

徐々に目の前が見えなくなってきている。

イヤミったらしいことしか言えないんなら二度と出てきて欲しくないはずなんだけど、何故か気分は幸か不幸かといったところで。

結果、言われっぱなしで色々引っかかったまま私の意識は覚醒することとなった。

見慣れた天井を目の前にしながらも、あまりいい寝覚めとは言えないのがその証拠であった。

 

「……誰も彼も言いたい放題のやりたい放題だよね、本当にさ」

 

夢の中で一方的に言われたことの内容、その大半は覚えがない。

……いや、具体的に言えば半分は覚えがあるものではあるのだが。

正直、今はそんな鬱屈なことを考えたくも無かった。

悪夢とまでは行かずとも、いい夢見ではないのは確かだろう。

お陰で嫌な感じが纏わりついてきて鬱陶しいことこの上ない。

こういう時はとにかく動いてなんぼ……なんだけども。

 

「……無理に動いたらダメなんだった」

 

そもそも飛び起きようとしても、身体がまるで追いついてこない。

先日のモーリッツとの長時間の殺し合いが未だに尾を引いているみたい。

大半の時間で刻印を動かしていたわけだから、魔力もカラッカラな上に身体もボロッボロ。

そこまで無理に無茶を重ねても、結局途中退場という無様を曝したわけなんだけど。

まあ、最強の援軍のおかげで誰一人欠けることなく鎮圧できたのはいいこと──のはずなんだけど。

 

(……何だろうね、この空虚な感じは)

 

──誰もいないことをいいことに、思わずらしくもない溜息を吐いてしまう。

こういう時こそ魔学に没頭すべきなのに、それも出来ないとは何と歯痒いことか。

では、ここからどうするべきか。

気怠さに身を任せ、強引にでも夢の世界に逃亡を企てようにも……先程の嫌味が頭に残ってしまっていた。

 

(誰が夢遊病患者よ。それはあの暗部連中のことでしょうが……)

 

ただただぶつけようの無い苛立ちは誰もいない内に解消しなければならない。

自己完結でしかどうにも出来ないならば、そうするまでのこと。

そんな現実はとうに受け入れていた、そのはずなのに。

これまで無かったほどの強烈な負の螺旋はアニスフィアを強烈に縛り上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大胆にも王城で発生したクーデターから早いこと数日が経過していた。

本来ならばそれほど時間が経っていないこともありてんてこ舞いになっていても不思議ではない。

……のだが、次期国王は何故かゆったりを腰を落ち着けることが出来てしまっていた。

目の前には、裏の協力者の国家監視員である侯爵子息もいるというおまけつきで。

 

「マドラーシュ様の近衛もなかなか働き者だったな?特にあのお人好しは本当にあの破天荒の幼馴染かよって思ってしまったくらいだ」

「愚弟のやりたい放題に気を揉みながらも憧憬を抱いた結果らしいがな……それに関しては俺が言えた話ではない」

 

鎮圧後の事後処理はラインヒルト、デイジー、カルリッツを筆頭とした顔ぶれが裏に控えていたお陰で時を要することはあまりない。

人的被害も結局のところ軽微……せいぜい、防衛に当たった騎士で軽傷が多少見受けられた程度である。

そちらもマドラーシュの別動隊として動いていたクリスティーナとセリアードがきっちり役目を果たしたことで、まるで問題にはならず。

むしろ顕魂術における治癒技術を証明する結果となり、ますますもってプラスに働くという結果に転じてすらいたり。

物的被害についてもラス達やガーク、エイパが顕魂術をフルに使っては手早く片付けたり修繕したりとここぞとばかりに大盤振る舞い。

まさに、魔法を使い渋りが無い場合はこうなることを体現してやると言わんばかりである。

率先して動いた張本人も『マッドでもこうするし、俺も見て見ぬ振りをするつもりはない』と一点張りである。

そのお陰で戦後の後始末の大部分は想像以上に早く済んでしまい、今に至る。

 

「改めて間近で見たわけなんだが、いやはや凄惨極まるとはこのこと──この国の貴族にとっては天敵そのものだ。ラングとか危うく失神しかけてたぜ?」

「大精霊紛いを叩き潰せるほどの存在となったら、それこそアイツだけだろうがな。騎士という意味ではグランナイツもいるが……」

「そのグランナイツが殆ど表に出ないで、というのが大きいんだよ。マドラーシュ王子殿下もそうだが、その下についてる騎士や協力者の活躍も相当なものだったんだぜ?ああ、勿論アルガルド様を評価する声もあるからそこはご安心を」

「俺は王城内で雑魚の掃除に勤しんでいただけだ。更に言うならアイツが隠れた人材やら将来有望な顔ぶれを用意してくれたお陰だろう」

 

それは見事なまでの謙遜である。

確かに大物を潰したマドラーシュ、ラス班、オルタ班に比べたら逃走経路の確保が主だったので役割としては地味ではある。

しかし、その動きは多くの人間の目に留まっていることもまた事実だ。

『フリーライド・メガロアビス』という鬼札を遠慮なく使っていたことも視覚的印象を強めている。

これまで凡才などの評で固まっていたが、『顕魂術を使い出したら武力面で花開いた』という言葉もチラホラ並ぶようになっているとか。

 

「更には講演会であのユフィリア様が同調するって表明したのも相当波紋を呼んでる。あの人、ラインヒルト顧問と繋がってるって話なんだろ?」

「イグノックス達が急ごしらえで基本を叩き込んで、先日の防衛においても初実戦だったらしいな。主戦力の到着までの時間稼ぎ程度しか働いていないと悔しがっていたが」

「いやいや、あの状況で時間稼ぎ出来ただけでも勲章ものだろうが……」

 

これもまた地味ながらも立派な功績に値する。

上手いこと相手の戦力を分散させてそれぞれ足止めを担うことで、王城内の上位戦力である顔ぶれにバトンを渡すことが出来たのだから。

そしてその行動をラインヒルトからもたらされた事前情報と実際の戦場の流れで適切に取れたことが何よりも大きい。

普通ならば魔法、魔学、顕魂術を扱う多才っぷりに目が行くが、ミゲルはそのような節穴では断じてない。

 

「それらが色々噛み合って、勝ち方すらも文句なしの大勝利。魔法依存からの脱却という石を投げつけるというそちらの企みもそれなりに達成したってわけだ」

「首謀者とその父親……更にはシャルトルーズ伯爵家の人間が軒並み行方知れずなのが気がかりだがな」

「『神の霊石』は取り返せたのが救いだが、珍しく愚弟が歯切れ悪そうにしていたからな……」

 

モーリッツは何者かに回収されたのはラスからの報告により知る人は知る状態。

そしてその父親であるシャルトルーズ伯爵はクーデターが起こる前から行方を眩ませている状態。

この時点で息子が起こしたクーデターを黙認、ないし加担していたと疑いを向けるには十分であろう。

そこまではマドラーシュ達も予測はついていたことなのだが……そんな彼らでも、流石に伯爵家の人間が丸ごといなくなっていることまでは想定していなかった。

クーデターの日程が発覚した際に、ラインヒルトが独自戦力をシャルトルーズ持ちの屋敷に向かわせたが……結果は見事な入れ違い。

結果的に、今回のクーデターを無事防いだとしてもまだまだ戦いは続くこととなった。

 

「まあ、暗部連中もそれなりにお縄についたわけで、暫くは再起を図らざるを得ない。俺のような中立もやっと身動きが取れるってな」

「……お前たちはもう少し早く手を組むべきだったんじゃないか?」

「グラファイト家としても、ずっとマドラーシュ様のことは気にかけていたさ……それこそアニスフィア王女よりもな。些か危険因子としても強力すぎだったからずっと様子見をしてたってだけのことで」

 

あんまりな言いようだが、国の存続を第一とするなら間違った考えではない。

王家を監視する役目を担う侯爵一族ならばなおのこと。

そこはあちら側も同じことを考えていたが、故に引っかかる部分さえ無くなったら後は迅速連結のみなわけで。

 

「それに、あちらが暗部にちょっかいをかけながら地盤も固めるなんて器用な真似してくれたから出来た針の穴の様な好機あってこその今だ。そういう意味では悪くない時期だったさ」

「滅茶苦茶しながらも好機を逃さない、清々しいくらいにアイツらしさ全開のやり口だ」

 

皮肉な笑みと共に繰り出されるアルガルドの言いようにミゲルも笑って同調の姿勢を見せる。

彼としても、王族やら貴族やらの立場を取っ払って考えられるならばむしろ真っ先に同調したいくらいであった。

無論、既得権益を弱体化させつつ新たな益を生み出すという意味でも以前より評価もしている。

それでも今のパレッティア王国にとっては危険物であるのは間違いなく、取り扱いは慎重にする必要があるのは当然のことで。

そこを理解した上で、自身なりのやり方を貫きつつ隠し刃を発揮させる豪胆さと適度な悪辣さにはミゲルも賞賛と共に、共感から愉悦すら覚えたほどだった。

 

「にしても、アルガルド様も愚弟だ何だ毒言いながら厚い信頼を寄せているようで。普通なら王位継承の面で目の上のたん瘤だと思うところじゃないのか?」

「ある意味、今でもそう思っているが?だからこそ俺にとって利用価値があり、それでいて超え甲斐があるとも言える……今回も便乗させてもらったまでだ」

「その開き直りも弟君との殺し合いで至ったんだったか。ははは、アンタら双子は本当に面白い……だからこそ裏で組み甲斐がある」

 

本来なら王家の監視役としては頭痛のタネになるはずの関係性なのだ。

それをあえて無理やり整合性を取るのではなく、互いをぶつけ合い研磨させる形で更なる形に持っていく。

妥協ではなく、不協和音を徹底的に貫くというこれまでではあり得ない型破りっぷり。

そんな狂気紛いの光景をも面白いと断ずることが出来るミゲルも、十分同じ穴の貉と言える人物であった。

 

「しかし、そうなってくるとユフィリア様と婚約解消したのは些か早合点じゃなかったか?最後の1年は多少は歩み寄れていたって話も聞こえてたくらいだというのに」

「ただでさえアイツの足跡を辿ってはその影響を最大限受けていて、今では手がつけられないほどだ。そんな爆走令嬢の手綱をずっと握れと?」

「先日の講演会は俺も見物していたんだが、アレは確かに凄まじかったねえ……」

「それでまだ序の口なのが、今のユフィリアの恐ろしい所だ。──そもそもアイツが顕魂術を会得した経緯を考えるとな」

 

これまでの話を統合すれば、確かにミゲルの言い分は筋が通っている。

裏でやりたい放題且つ益を生み出している弟との関係をきっちり良好に保てているならば、ユフィリアとの関係を保つのもさほど難しいことではない。

その恩恵は国単位で見ても大きいもので、アルガルドも理解はしていた。

そこで思い起こされるのは色々魔改造された後のユフィリア本人。

元々が使命感だ義務感だで突き動かされているだけだったところをぶち壊され、良くも悪くも人間らしさを取り戻すことは出来た。

しかし、抑圧されていた分の反動がこれまた凄まじくきっちりと元凶の余波を反映させてしまうこととなる。

それ以上はアルガルドも無理やりシャットアウトする。

その様子を見やっては、ミゲルはアルガルドの言わんとすることに少しずつ辿り着こうと糸を手繰り寄せていく。

 

「単に魔法至上主義に疑問視してるってだけじゃないのか?そういえば、ユフィリア様の浮上のきっかけもマドラーシュ様って話──待て、まさかそんな単純なことだったりするのか?」

 

そこにたどり着いた理由は特に無かった。

断片的に語られたり自然と集まった情報を搔き集めただけのでっち上げとすら言える。

その中でストレートでありながらヘビーな理由を選び抜いただけのことだ。

結果、物凄いバカらしい推察となってしまったわけだが……それに対するアルガルドの反応はまさかの首肯。

 

「無自覚ではあるが、ユフィリア側は間違いなくそうだろうな……流石に俺でも分かる」

「元次期王妃、まさかのお次は第二王子狙いってか?あの人が色恋沙汰にかまけるってのはいまいち想像出来ないが……」

「アイツの辞書にそんな言葉があるかも怪しいところだがな。更に言うなら、愚弟にはそんな気がまるでない」

「うわ、要するに現状一方通行かよ……元々完璧とまで称されていたご令嬢相手にまるでその気が無いっていうのも凄いな」

「そこがアイツの大きな欠点の一つだからな。それでいて妙なたらし属性持ちだから別の意味で手に負えん」

「……そういえばあのクラーレット侯爵令嬢とも仲いいって話も聞こえてきたな。なるほど、確かに天然に加えてどこかズレたたらしっぷりだ──兄としてはやはり心配ですかね?」

「面倒を吸い取ってくれる分、むしろ俺は気楽で助かってる」

 

本人がいたら双子の殺し合いラウンド2待ったなしである。

とはいえ、そこまで間違っていないのが何とも悲しいところ。

彼の元に集うのはどうにも癖が強い顔ぶれであるのは、もはや覆しようのない事実なのだから。

その中でまとも寄りに位置するであろう最初の師匠や幼馴染についても、常人からすればどこかズレているわけで。

そこに傷あり令嬢やら、伯爵が戯れに買い叩いた奴隷との庶子やら、ヴァンパイアの魔石持ち、更に呪い蒐集家……そんな腫物扱いされかねない面々まで揃う始末。

果たして本人の気質なのか、はたまたあの時の人形遣いが呟いた星の下という言葉なのかはいざ知らずだが。

 

「……そういえばアルガルド様。色々落ち着いてきたら貴方の方も気に掛けた方がいいのでは?」

「待てミゲル、そこで俺にその話題を振る必要はあるのか?」

「いやいやいや何を言いますか次期国王様。ユフィリア様がもう弟君に狙いを定めているのならばこちらも一歩踏み出さないと──ほら、ここからまた東部に戻るのでしょう?」

「……確かにユフィリアから見て出遅れているように見えるのは癪だが、そこまで前のめりになってどうするんだ」

 

婚約者についてはいずれ考えなくてはならないこと、それ自体はアルガルドも承知している。

しかし、アルガルド自身はその次期国王足るべく更なる自己鍛錬に勤しみたいというのが最大の本音だ。

ただでさえ先日の魔法省暗部騒ぎ周りで最近疎かになってしまったから、一瞬でも早く遅れを取り戻したい。

かの『青い炎』から『無慈悲な主演』を経由して受け継がれた、鍛錬狂いとすら言われる悪癖はなかなかに難儀なものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王城のとある大きめの一室にて騎士たちが集っていた。

そこで執り行われているのは、正騎士任命式。

見習いという雛鳥たちが文字通り正式な一人前として認められる場が設けられることとなった。

騎士団の詰所でひっそりと行われるのが常である催しが、何故今回は大掛かりになっているのか。

しかも、本来ならば足を運ばないであろう貴族もちらほらと混ざっているのだからとんでもないことであろう。

その要因は、この場の視線を全てさらう者たちに集約しているわけだが。

 

「先の内乱鎮圧のパレッティア王国の守護者であり、王族に名を連ねる者として諸君を正騎士として任命する。これからもより一層研鑽を重ね」

 

堂々と真ん中で句を述べるのは、我らが破天荒王子マドラーシュ・リヴェ・パレッティア。

王族の仮面をきっちりと被り切り、普段の軽薄な雰囲気は微塵も見せていない。

見習い騎士の卒業式というだけの場を取り仕切るのを、実質継承権が無いとはいえ第二王子が行っているのは本来ならば異様な光景だ。

そんな彼の前で恭しく跪くのは、ぴったり10人の騎士。

こちらもまた、この場を傍聴する者たちにとっては知らない顔ではない。

何せ、先日勃発した王城内でのクーデターの鎮圧において並以上の戦果を挙げた面々なのだから。

何から何まで異例まみれだが、そこに口を挟む者は誰もいなかった。

そもそも、たかが見習いの羽ばたきの瞬間に幾人かの貴族が足を運んでいることも相当異様な光景である。

 

「パレッティア王国、そして王家に栄光を!」

『栄光を!』

 

異様さを加速させる要素は任命される側にもある。

普通の人間だけでなく、亜人種……それもエルフ、ダークエルフ、ミケ族、クラマ族とてんでバラバラときたものだ。

そして宣誓を口にした代表は、短き影の伝説が生み出したサラブレッドと来ればもはや混沌以外どう例えればよいのやらか。

そんな彼らが一同に集っていることも、これまでとは違う何かを感じさせるには十分な要素と言える。

任を与えるのが王国、ないし世界をも先導するやもしれない第二王子ということもあり、その異風はより強靭なものとなっていた。

 

「……さて、もう1つ重大告知がある。──ラス、セリアード、ウィン、キュイ、カルト、ナマリエ……前に」

 

正騎士の任命を終えたと共に6人の名前が告げられる。

傍聴側は少々ばかり揺らぎを見せる中、呼ばれた6人は堂々と前に出ていく。

幼馴染である二人にとっては、ずっと待ち焦がれていた時であり。

最初こそは成り行きという側面も大小なりともあった残りの4人も、今となっては既定事項と笑って許容できる。

その認識が、遂に公の場に広がることに対する一種の高揚感が壇上を支配していた。

 

「この場にいる者ならば理解していることだろうが、世界は徐々に変遷の様相を見せつつある。そしてこの王国でも、先日の精霊信仰過激派によるクーデターが勃発した。その蔑むべき傲慢が元で起きた狼藉は今なお大きく国を揺らしているのは言うまでもないことだろう」

 

実際のところ、精霊信仰過激派……または魔法省暗部の起こしたクーデターの影響はかなり根深い。

かつての王族同士が争うこととなったクーデターの時よりかは、流れる血は明らかに減っていることが救いと言えなくもないのだが……。

それでもその爪痕は断じて浅いということにはならない。

しかし、この状況は裏事情を知る者としては想定の範囲内……そもそも、相手をそのように誘導してやったのだから当然だ。

だからこそ、この後にマドラーシュが紡ぐ言葉はこの場の誰もが予想がついている。

 

「一つの秩序に綻びが出来れば、混沌が顔を出すのは必然のことだが……そこに嘆く理由などどこにもない。『可能性は混沌より生ず』──禍を転じて福と為したその先にこそ新たな地平があるのだから。──私たちが導となり、そのことを証明してみせよう。この6人はこの私が最も近しい所にいるべきと見定めた忠臣であり、共に研鑽の道を歩むと決めた同志であり好敵手(とも)でもある。この新進気鋭の騎士たちと共に混迷を切り拓き、それこそこれまでにない色で彩られし新たな光明を見出して進ぜよう」

 

自身の愛用する武器、セイリオスと千紫万紅にちなんだ句を混ぜていく。

徐々に本来の式典の在り方からズレているようにも見えるが、そもそも特別近衛騎士の任命式などまだ2回目だ。

型などあるはずもなく、むしろこの破天荒らしいとすら言えるだろう。

現に、かつてラス達の位置にいた者たち……特にクリスティーナとエリオはどこか微笑まし気だ。

 

「この場を以て、グランナイツを最後に凍結されていた特別近衛騎士の復活をここに宣言し、この6名の騎士を私の特別近衛として任命する!今こそ閉ざされし世界を切り裂く烈風となり、この私の三歩先を行く活躍を期待しているぞ!」

『この命果てるまで!』

 

普段は気安いやり取りをしている面々の荘厳なやり取り。

それぞれの思い描くとは異なれど、形式上取り繕う者は誰もいない。

良くも悪くも灰汁が強い原石が互いにやりたい放題をしつつ、不協和音のまま調和したからこそあるその光景は、時代の変遷を予感させるとこの場の誰もが思った。

──それは、ラインヒルトやイグノックスと同じ所から見守る公爵令嬢も強く感じ入るところであった。

 

(人生というものは本当に分からないものですね。このような場に立ち会うことになるだなんて)

 

3年前どころか、少し前の自分だったとしても思い至らなかったであろう。

自身に課せられた楔を砕き、その後も導となってくれた唯我独尊やりたい放題な悪童そのものの友人……まあとりあえずそういうこととして。

そんな彼が溜めに溜めた豪脚を発揮しては完全に悪い意味で皆無であった存在感を一気に開花させてしまい。

挙句、かつてはタブーの一環でもあった特別近衛騎士制度を復活させるという突貫っぷりまで見せつけた。

勿論、その裏にはこの破天荒を必要とする面々の後ろ盾あってこそであることも重々承知ではある。

しかし、密かにそのような存在にまで駆け上がってしまっていたこと……そして、その様に今でも驚きを隠せないのは覆せない事実であった。

 

(普段はあれだけ危なっかしくもあくどく、童心塗れで変なところで抜けてたりするのに……ここぞとばかりにその輝きを見せるのは些かズルいですね

 

その悪態は好ましいと思っていることの裏返しであることは言うまでもない。

ほんの僅かながら、専属侍女2名の『尊い』という言語の新たな一端を理解してしまったからこそ浮かぶ言葉でもある。

……そして、そう思うだけでは今では満足できない。

影響元と同じく、ユフィリアの内にもそれなりの欲が点火してしまっていた。

 

(三歩先を行け、ですか……そこまで仰るのでしたら食らいついてやりますとも)

 

その場の誰にも悟られぬよう、ユフィリアは密かに笑みを浮かべる。

この時点での立ち位置こそ異なれど、纏う空気はラス達のそれと同じくで。

どのような情が灯っているかは、当人も分かっていないのが玉に瑕と言ったところか。

 





初っ端から暗雲漂っていたりちょっと微笑ましいシーンだったり。
原作では殆ど話すことなかったアルガルドとミゲル、こちらではオリ主という愉悦を肴に楽しそうにしております。
任命式はグランサガでは結構さらっとしていたので、ちょっとオリジナル肉付け。
参考資料を見ながら色々書きましたが、正直怪しいところあるので指摘あったらご遠慮なく。
そしてユフィリア様が何か猪突猛進になりそう?さて、どうでしょうねえ(白い目

Youは何を求めてこの作品を?(要するに需要調査です)

  • 転天キャラでのNLとか他絡みを所望
  • グランサガの二次がレアすぎて
  • バトルハードモードに釣られた
  • ちらほらある(?)デビルメイクライ要素
  • その他(そもそもの作風とか)
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